MARMOZETS『THE WEIRD AND WONDERFUL MARMOZETS』(2014)
2014年9月下旬にリリースされたMARMOZETSの1stフルアルバム。日本盤は『SUMMER SONIC 2015』および『UKFC on the Road 2015』での初来日に合わせ、『マーモゼッツの奇妙で素敵な世界』という邦題で2015年7月に発売されています。
2007年にイギリス・ウェストヨークシャーにて結成されたMARMOZETSは、ベッカ(Vo)&サム(G)&ジョシュ(Dr)のマッキンタイアきょうだいと、ジャック(G)&ウィル(B)のボトムリー兄弟の5人組。紅一点ベッカの時にメロウに歌い、時にカオティックに叫ぶボーカルスタイルと、AT THE DRIVE-INを彷彿とさせる変幻自在なポストハードコア/マスロック的サウンドで注目を集め、2014年にRoadrunner Recordsと契約。セルフタイトルEP『MARMOZETS』に続いて、このフルアルバムを世に送り出しました。
プロデューサーに元HUNDRED REASONSのギタリスト、ラリー・ヒビット(NOTHING BUT THIEVES、DON BROCO、DINOSAUR PILE-UPなど)を迎えて制作された本作は、女性ボーカルのポストハードコアバンドということもあって、どこかPARAMOREを彷彿とさせる要素も散りばめられています。が、注目すべきポイントはそこではなく、先にも書いた「AT THE DRIVE-INを彷彿とさせる変幻自在なポストハードコア/マスロック的サウンド」であり、序盤こそクセはあるけどわかりやすいパンク/ポストハードコアナンバーが続きますが、聴き進めていくうちにヘンテコなアレンジや奇想天外な曲展開が続くことになります。
例えば、「Cry」のようなバラード調の楽曲ひとつ取っても、美しいピアノバラードかと思えば、途中でエモ的な盛り上がりを見せたり、ちょっとしたバンドアンサンブルにクセの強さを見出せたりと、一筋縄ではいかない感じにハマるリスナーも少なくないのでは。最初こそ「ありがちなガールズパンク/エモ」かと思わせておいて、その中身は変態的スタイルでした(笑)という……リリース直後に輸入盤で本作を購入していたのです(試聴なし、完全のジャケ&タイトル買いでした)が、しばらく狂ったようにリピートしていたことを今でもよく覚えています。
このアルバムの場合、どんなに変態的な行為に及んでも(「変態的な行為に及ぶ」て。笑)、メジャー感やキャッチーさが損なわれることがないんですよね。というのも、ベッカの歌声の親しみやすさと、メロディの普遍性が大きな武器になっているから、マスコア的な「Vibetech」みたいな行き過ぎた変態行為(笑)があっても、ほかがキャッチーだから「個性のひとつ」として受け入れることができる。そう、バランス感が絶妙なんですよ。
ここまでやらかしておいて、続く2ndアルバム『KNOWING WHAT YOU KNOW NOW』(2018年)は変態行為一切なし。無修正ハードコアポルノからモザイクありのイメージAVに移行したくらいの変化に、ちょっと驚きました(それでも完成度は非常に高かったので、個人的には評価に困りましたが)。
続く3rdアルバムが待たれる今、今度はどんな変化を見せてくれるのか。非常に楽しみでなりません。
▼MARMOZETS『THE WEIRD AND WONDERFUL MARMOZETS』
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