2005/06/14

THE MARS VOLTA『FRANCES THE MUTE』(2005)

 2005年前半は本当に面白い、且つ素晴らしい作品に恵まれた年だったと思います。特にこの4〜5月辺りのリリースラッシュはもの凄いものがあったし、そこで連発された作品の数々がホントに素晴らしかったもんだから、こちらとしても毎週リリースされる作品達と自分の財布の中身とのにらめっこの連続でしたよ。

 そんな名作ラッシュ、今年はこのアルバムのリリース辺りからスタートしたんじゃないでしょうか。少なくとも俺にとっては「今年最初の名盤決定」だったように思います、このアルバムとの出会いは。いや‥‥アルバム聴く前にライヴ観ちゃったから、余計にそう感じたのかもしれません。

 今や『元AT THE DRIVE-IN』なんて形容詞はいらないだろう、THE MARS VOLTAの2ndアルバム「FRANCES THE MUTE」。日本では本国アメリカより約1ヶ月も早くリリースされました。これは2月上旬に来日し「SONIC MANIA」に出演するため、こういう措置を取ったんでしょうね。ま、結果としてはそれが吉と出たように思いますが‥‥ネット上ではソニマニでの彼等の勇姿、及び単独公演を観た数少ない人達からの絶賛の嵐に、みんな心動かされたんじゃないでしょうか。かくいう俺も、アルバムを買ったその日に彼等のライヴをソニマニで初めて観て、噂以上に凄いことになってたもんで、本気で身震いしましたよ。1st「DE-LOUSED IN THE COMATORIUM」は俺的にも2003年を代表するアルバムの1枚と認識していたし、そのサウンドを聴けばライヴが如何に凄いかが想像に難しくなかったわけですが、まさかここまでとは‥‥もうね、ライヴ中ノるとかそういう身動きが全く取れず、約50分の間、微動だにできず、ただただステージ上のバンドを凝視するのみでしたもん。それくらい衝撃的だったんですよ、生のTHE MARS VOLTAは。

 今回のアルバムは前作以上に入り組んだ複雑な作りになっていて、例えばCD自体は5曲としかカウントされてないんですが、その総収録時間は約77分にも及ぶ異常事態になってます。内1曲、シングルカットされた "The Window" のみ5分ちょっとの小楽曲なんですが、それ以外の4曲のトータルが72分‥‥おかしい、明らかにおかしい! しかもラストの超大作 "Cassandra Geminni" に至っては32分半ですからね! こんなに長い曲をアルバムに入れちゃうのは、自分が思いつく限りではDREAM THEATERくらいしか思いつかないわけですよ、現役のバンドの中では。

 でさ、勿論それだけ長いと1曲の中では歌パートよりも楽器パートの比重が高くなってるんだけど、これもまた全然飽きさせない構成になっていて。非常に強弱/明暗を使い分けたアレンジで、その辺は1stよりも更に拍車が掛かってるように思います。なんというか‥‥アルバムという計算された場なんだけど、まるでスタジオライヴでも聴いてるかのようなインプロビゼーションの応酬‥‥実際のレコーディングではPro-Toolsを駆使してるようですけどね‥‥正に古き良き時代の「プログレッシヴ・ロック」といった印象です。勿論ただのプログレで終ってませんよ。そこにはいろんな要素がある。LED ZEPPELIN的な色だったり、サンタナ的な色だったり、'70年代末のパンク色だったり、'80年代のニューウェーブ色だったり、'90年代以降のオルタナ色だったり‥‥そういったロックの歴史全てを呑み込み、THE MARS VOLTAというフィルターを通すと‥‥こういう非常に判りやすいんだけど複雑なサウンドになるんだろうなぁ、と。

 何だろ‥‥とにかくカッコいいの一言なんだけど、それだけで終ってないのもまた事実でして。ホントのところ、彼等のサウンドなりライヴなりって、暴れたりして楽しむよりも、目を瞑ってじっくりと楽しむものなのかもしれないね‥‥いや、目を瞑っちゃだめだ、セドリックやオマーの鬼気迫るパフォーマンスを楽しめなくなるからね。ライヴじゃそれだけは止めておこう。

 とにかく。AT THE DRIVE-IN時代も歴史に残るんじゃなかろうか!?と思わせる名盤を作っておきながら、すぐに解散。そして新たに作ったTHE MARS VOLTAでは、これまでにリリースした2枚のアルバムどちらもが歴史的名盤だったりするんだから‥‥セドリックとオマー、本当に凄い奴なんだろうなぁ。SYSTEM OF A DOWNの例もあるけど、これからは純粋なアメリカ人には作り出せない、こういった特異なサウンドが時代を作り上げてくのかもしれないね。



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投稿: 2005 06 14 01:04 午前 [2005年の作品, Mars Volta, The] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2003/12/22

THE MARS VOLTA『DE-LOUSED IN THE COMATORIUM』(2003)

我々の前に衝撃的な登場をしたAT THE DRIVE-IN。しかしアルバム「RELATIONSHIP OF COMMAND」をリリースした翌'01年。まさかの分裂/解散。予定されていたフジロックへの出演も果たせぬまま、彼等はバンドとしてずるい幕引き‥‥勝ち逃げの状態で我々の前から姿を消したのでした。

そして'02年。彼等はふたつのバンドで我々の前に戻ってきます。SPARTAと、そして今回紹介するTHE MARS VOLTA。正直に言っていいですか?‥‥俺、SPARTAには全然興味が湧かなかったのね。何故なら、俺にとってのATDIってのは、セドリックのボーカルそのものなんですよ。勿論バンド全体としての雰囲気や生み出されるサウンド・楽曲、全てにおいて好きでしたが、やはりあの「声」があってこそ、俺は好きになったんですね。

だからこそ、その「声」を有するTHE MARS VOLTAの方に興味が行くのは、当たり前の話なんですね。けどさ‥‥やっぱり怖かったわけですよ。ATDIが最高だっただけに、その後に出てくるものが‥‥しかも分裂してしまった後ですから。あの5人だからこそ成し得たサウンドだというのは重々承知してるんです。だからこそ、聴くのが怖かった‥‥結果、昨年リリースされていたEPは聴かなかったんですよ。

で、このデビューアルバムですが‥‥実はこれもリリース後すぐには手を出しませんでした。同様にずっと引きずってたんですね、そういった思いを‥‥けど、ある切っ掛けで踏ん切りがついた。それは彼等のPVをたまたま観てしまったから。もうね、一発でノックアウトですよ。そうそう、俺がずっと待ってたのはこういうものだったんだ!って。それを一瞬にして思い出させてくれたのが、THE MARS VOLTAだったんです。やっぱりセドリックの「声」だったわけですよ。

ゲストとしてベースにRED HOT CHILI PEPPERSのフリーを迎えているとか、更にジョン・フルシアンテもゲスト参加してるとか、かのリック・ルービンがプロデュースしてるとか、いろいろ話題となるポイントはあると思うんですが、そんなことがどうでもよくなる程に、アルバム全体を覆う雰囲気やヴァイブ感が抜群に良い、良すぎるんです。ATDIに見られたパンク的要素は若干後退し、ラテン要素はそのままに、更にジャズやプログレ、ジャムバンド的フリースタイルなインプロビゼーション、そしてエレクトロニカ等‥‥とにかく他ジャンル/多ジャンルを包括した独自の感覚で構築されたロックがここには詰め込まれています。ATDIを気に入っていた人なら間違いなく受け入れられるだろう1枚。

とにかくね‥‥言葉にならない、いや、出来ない凄みを感じるんですね。感情の塊をそのまま素手でぶつけられたかのような、胸に大きな穴がポッカリ空いてしまったかのような衝撃。第一印象はとにか「衝撃」。ATDIのアルバムを初めて聴いた時にも似たような感覚を受けましたが、あれ以上でしたね。まさかこんなご時世に、こんなアルバムを聴こうとは‥‥嬉しいのと、焦って冷や汗かいたのと‥‥何だかよく判らない感情と、いろんな思いが入り交じる音。「アート」とか「ラウドロックの新星」とか‥‥そんなのどうでもいい。とにかく熱いロックンロール。感情を揺さぶるロックンロール。それだけが真実なんです、このアルバムの中では。

何でもっと早く聴かなかったんだろう‥‥と後悔したし、結局来日公演にも間に合わなかったし(来年1月にも再来日公演が予定されていますが、日程的に無理なんですよね)‥‥そしてアルバムリリースを待たずに、このアルバムでも大きな役割を果たしているサウンド・エフェクト担当のジェレミーがツアー先で亡くなってしまったこと。結局間に合わなかった‥‥って残念な気持ちもあるんですが、まだまだバンドは健在。ATDIのように短命に終わることなく、このままセカンドアルバムまで突っ走って欲しいです。



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投稿: 2003 12 22 09:28 午後 [2003年の作品, Mars Volta, The] | 固定リンク