MEATHOOK SEED『EMBEDDED』(1993)
NAPALM DEATHのギタリスト、ミッチ・ハリスがOBTUARYのトレヴァー・ペレス(G)とドナルド・ターディ(Dr)とともに立ち上げたプロジェクト、MEATHOOK SEEDが1993年3月(日本では同年6月)にリリースした1stアルバム。トレヴァーは本プロジェクトではボーカルを担当、ミッチはギターのほかベースやプログラミングを担当しています。
グラインドコアバンドのギタリストとデスメタルのオリジネーターのひとつが合体したことで、どんなグロい音のアルバムができるのかと思いきや、本作で彼らが挑戦したのはインダストリアルメタルでした。とはいえ、両バンドの名残もところどころに見え隠れするのですが、適度なインダストリアル感とアンビエント感をフィーチャーした、1993年という時代ならではの音に仕上げられています。
確かにデスメタルっぽくもあるのですが、それよりも本作で主張しているのは「HELMEL以降のヘヴィサウンド」のアップデート。ミディアムテンポ中心のグルーヴメタル的なノリは確かにHELMETっぽいですし、ボーカルもデス声一辺倒ではなく、ノーマルトーンで歌い叫んでいる楽曲もあったりと、1993年という時代性を考えると非常に“らしい”作風だと思っています。
実際、リアルタイムで本作と初めて接したときも、NAPALM DEATH絡みでインダストリアルメタルという事前知識があったにも関わらず「……あれ、HELMET? ヘヴィすぎないPANTERA?」なんて思ってしまったのですから。
正直、当時ですら「これは新しいのか?」と疑問に思ったものです。が、あれから25年経った今聴いてみると……あれ、意外と古びてない? ていうか、この手のサウンドってある時点で止まってしまっている? なんて思ってしまったのですが……そんなことないですよね?
いや、僕自身も20数年ぶりに引っ張り出して聴いているのですが、本当に今聴いても恐ろしいくらいマッチするというか、普通に楽しめたんですね。こういったカオティックでヘヴィなバンド、今もたくさんいますけど、なんだかんだでオリジナリティの塊だったんだな、このアルバム……と2018年に再認識しているところです。
ちなみに本作、全11曲中10曲が2〜4分台とコンパクトな楽曲ばかりなのですが、ラストの1曲「Sea Of Tranquility」のみ13分台という大作でして。まあ大作というか、この1曲こそがインダストリアル/アンビエント/トランス路線の本領発揮しまくりなナンバーなのですよ。結局、この1曲の特異性とそれ以外の楽曲との乖離している感じが、本作のアンバランスさを示しているようで、そこが当時がっつりのめり込めなかった理由なのかな、とも思ったり。
MEATHOOK SEEDとしては1999年にもう1枚、『BASIC INSTRUCTIONS BEFORE LEAVING EARTH (B.I.B.L.E.)』というアルバムをリリースしていますが、こちらに関しては僕は未聴のまま。なお、同作はミッチ以外1stアルバム『EMBEDDED』とは異なる編成になっております。