METALLICA『SOME KIND OF MONSTER』(2004)、『LIBERTÉ, ÉGALITÉ, FRATERNITÉ, METALLICA!』(2016)
『SOME KIND OF MONSTER』は2004年7月13日にリリースされたMETALLICAのEP。
本作は前年6月5日に発売されたアルバム『ST. ANGER』からのリカットシングル「Some Kind Of Monster」を軸に、同曲のエディットバージョンや初期楽曲のライブ音源をまとめた全8曲入り作品。トータルで約43分とかなりの尺があり、世が世なら企画アルバムとして通用する1枚です。
『ST. ANGER』からはタイトルトラックを筆頭に、「Frantic」「The Unnamed Feeling」すでにシングルが3枚発表済みでしたが、この「Some Kind Of Monster」が新たにシングル化されたのは同名のドキュメンタリー映画『メタリカ:真実の瞬間』が同年7月9日から北米で劇場公開されたことが理由でしょう。映画の中でも、この曲が完成していく過程が描かれていますし、本作はいわばサントラ盤の延長線上にある1枚かなと。
「Some Kind Of Monster」はアルバムの3曲目に収録された、8分半にもおよぶ大作。ミドルテンポを軸にヘヴィなギターリフを織り交ぜながら、要所要所でアップテンポになったりとプログレッシヴな展開が用いられますが、過去のMETALLICA楽曲と比べると劇的なアレンジというわけでもなく、唐突さが際立ちます。また、リフに次ぐリフの構成で、ギターソロも皆無。起承転結のしっかりしたドラマチックな展開を期待した層には肩透かしの1曲(アルバム)だったのではないでしょうか。
それに比べ、ランディ・ストーブ&ボブロックによるエディットバージョンは4分半を欠くという、原曲の半分の尺に編集され、かつカンカンと耳障りだったスネアの音色も編集され、『ST. ANGER』以前のMETALLICAらしい音質にリミックスされている。良くも悪くもダラダラとセッションしてる感の強かった原曲から“ダラダラ”感を見事に排除することに成功したものの、曲としては山なし谷なしなアレンジになってしまった感もあり、個人的には原曲を超えられていない気がしました。ただ、ドラムサウンドに関しては興味深いものがあり、このリミックスでアルバムまるまる1枚編集しなおしたら面白いのに……なんて思ってしまったほどです。
そして、全6曲におよぶライブテイクについても。こちらは2003年6月11日に行われたパリ公演から。『ST. ANGER』発売翌週に行われた11日のパリ公演は、1日のうちに異なる3会場でライブが実施されており、本作には13時からの公演の「Motorbreath」、18時からの公演の「The Four Horsemen」「Leper Messiah」「Ride The Lightning」「Damage, Inc.」、22時からの公演の「Hit The Lights」がそれぞれピックアップされています。各公演とも10曲前後とコンパクトなものとはいえ、20年前の彼らはそんなにもアクティブかつエネルギッシュな活動をしていたんだなと、改めて驚かされます。
▼METALLICA『SOME KIND OF MONSTER』
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このパリ公演のうち2公演目の模様は、2016年4月22日に『LIBERTÉ, ÉGALITÉ, FRATERNITÉ, METALLICA!』と題した限定EPがリリースされており、そちらで全9曲を聴くことも可能です。
EP『SOME KIND OF MONSTER』に収録された「The Four Horsemen」「Leper Messiah」「Ride The Lightning」「Damage, Inc.」と聴き比べると、2016年版のミックスは非常に低音を効かせたふくよかなもので、オーディエンスの盛り上がりなど臨場感もより強まっている印象。楽器1つひとつの表情は2004年版のほうが聴きとりやすいので、若干好みの分かれるミックスかもしれませんね。
ちなみに、この2公演目のセットリストですが、
01. The Four Horsemen
02. Leper Messiah
03. No Remorse
04. Fade To Black
05. Frantic
06. Ride The Lightning
07. Blackened
<ENCORE>
08. Seek & Destroy
09. Damage, Inc.
といったもので、最新作『ST. ANGER』(2003年)からは「Frantic」1曲のみ。残りは1stアルバム『KILL 'EM ALL』(1983年)から3曲、2ndアルバム『RIDE THE LIGHTNING』(1984年)から2曲、3rdアルバム『MASTER OF PUPPETS』(1986年)から2曲、4thアルバム『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)から1曲という内訳です。これは直前5月にバンドのデビュー20周年を記念した企画ライブなどで、初期曲を多数披露したことも大きく影響しているのでしょう。
「Leper Messiah」や「No Remorse」のような楽曲がライブ音源として公式に残されることに非常に大きな意味がある本作、サブスク未配信かつ当時限定盤としてリリースされたもので、現座は入手困難な1枚。僕も手元に残してありますが、1時間強のコンパクトさながらも非常に聴き応えのある良盤なので、もし中古ショップで見かけた際には迷わずゲットすることをオススメします。
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