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カテゴリー「Metallica」の48件の記事

2022年4月23日 (土)

KIRK HAMMETT『PORTALS』(2022)

2022年4月23日にリリースされたカーク・ハメットの1st EP。日本盤未発売。

METALLICAのギタリスト、カーク・ハメットが同バンドでのデビューから40年近くを経て初めて制作したソロ名義の作品集。バンドの自主レーベル・Blackened Recordingsからアナログ盤、CDやデジタル、ストリーミングにて流通されています。

プロデュースはカーク自身が務め、レコーディングにはQUEENS OF THE STONE AGEのジョン・セオドア(Dr/ex. THE MARS VOLTAなど)、ポール・マッカートニーのツアードラマとして知られるアブラハム・ラボリエル・Jr.(Dr/名ベーシスト、アブラハム・ラボリエルの息子)、そしてMETALLICAのプロデューサーとしてお馴染みのグレッグ・フィデルマン(B)やボブ・ロック、エミー賞受賞のアレンジャーとして名高いブレイク・ニーリーなど旧知の仲間たちが多数参加。さらに「High Plains Drifter」「The Incantation」では一昨年のアルバム『S&M2』(2020年)でコラボしたエドウィン・アウトウォーターと共作を果たし、エドウィンはキーボードを担当したほかLAフィルハーモニー管弦楽団の指揮者も務めています。

全曲インストゥルメンタルナンバーで構成されているので、過去のMETALLICA作品における「The Call Of Ktulu」や「Orion」あたりをイメージする方も多いかもしれません。でも、それは半分正解であり、半分不正解なのかな。そこまでメタリックなインストをイメージすると、ちょっと面を食らうかもしれません。

前半2曲(「Maiden And The Monster」「The Jinn」)は確かにMETALLICAらしい要素も感じ取ることができますが、ストリングスなどを効果的に用いた抒情的な楽曲群はMETALLICAのメロディアスなナンバー……例えば「Nothing Elese Matters」をはじめとするバラード曲を下地に、ドラマチックで流麗なメロディを活かすようなアレンジが施されています。もっといえば、ライブの合間に披露されるカークのショートソロ、あれを拡大解釈してひとつの作品にまとめ上げていくとこうなるのかな?という想像もできなくないかな。

そして、LAフィルハーモニー管弦楽団を大々的にフィーチャーした後半2曲(「High Plains Drifter」「The Incantation」)は先の『S&M2』の延長線上にある作風。ホルンの音色や弦楽器を全面に打ち出すことで、カークのソロというよりは“カーク&LAフィルハーモニー管弦楽団の作品”という印象を与えてくれます。もしこの2曲が『S&M2』に収録されていたとしてもまったく違和感はなく、あの世界の延長線上にある“物語の続き”がここで展開されていると言っても過言ではありません。前半、後半とで若干の空気感の違いこそあれど、軸自体はブレていないので、ひとつの作品としては文句なしに楽しめるはずです。

全編通して想像していた以上に琴線に触れるメロディが多数用意されており、カークって意外にもメロディメイカーとしてもそれなりに優れていたんだなと再認識させられると同時に、ジェイムズ・ヘットフィールド&カーク・ハメットという“METALLICAのブレイン”抜きでカークが本気で制作に臨むとこうなるんだという驚きと発見の多い1枚。METALLICAのメロディアスな側面が大好物というリスナーには、文句なしでオススメできる1枚です。全編インストながらも全4曲/約27分という尺も程よく、ギターインスト作品に苦手意識を持つリスナーにも最適な作品ではないでしょうか。

 


▼KIRK HAMMETT『PORTALS』
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2022年3月19日 (土)

V.A.『SPAWN: THE ALBUM』(1997)

1997年7月29日にリリースされた、映画『スポーン』のサウンドトラックアルバム。日本盤は同年9月10日発売(日本盤はオリジナルアートワークを採用)。

本作は『JUDGEMENT NIGHT: MUSIC FROM THE MOTION PICTURE』(1993年)のように、当時旬のロック/メタルバンドと先鋭的なクラブミュージックアーティストを組み合わせた、コラボ曲のみで構成されたコンピレーションアルバムで、純粋なサウンドトラック盤とは異なる仕様となっています。また、『JUDGEMENT NIGHT: MUSIC FROM THE MOTION PICTURE』がメタル/グランジ系バンドとヒップホップアーティストとのコラボレーションが中心だったのに対し、この『SPAWN: THE ALBUM』ではメタル/グランジ/オルタナティヴロック/ニューメタル勢とエレクトロニカ/テクノ系アーティストとのコラボで構成されています。

楽曲の大半はジャンルの異なる2組との共作で制作されたものですが、中にはMETALLICA「For Whom The Bell Tolls」をDJスプーキーがリミックスしたテイクや、ORBITALの1990年のヒット曲「Satan」をカーク・ハメット(G/METALLICA)がギタリストとして参加した形での再録バージョンも含まれており、すべてが純粋な新曲とは言えません。ですが、いろんな変遷を経た2022年の耳で聴くとどれも非常に親しみやすいテイクばかりで、リリース当時よりも今のほうがフィットするような印象を受けます。

ロック系からの参加アーティストはFILTERMARILYN MANSON、カーク・ハメット、KORN、BUTTHOLE SURFERS、METALLICA、STABBING WESTWARD、MANSUNトム・モレロRAGE AGAINST THE MACHINE)、SILVERCHAIR、ヘンリー・ロリンズ、INCUBUSSLAYER、SOUL COUGHING。テクノ系からはTHE CRYSTAL METHOD、SNEAKER PIMPS、ORBITAL、THE DUST BROTHERS、モービー、DJスプーキー、ジョシュ・ウィンク、808 STATE、THE PRODIGY、ヴィトロ、ゴールディ、DJグレイボーイ、ATARI TEENAGE RIOT、ロニ・サイズとかなりバラエティに富んだ面々が揃っています。

FILTER×THE CRYSTAL METHOD「(Can't You) Trip Like I Do」やマンソン×SNEAKER PIMPS「Long Hard Road Out Of Hell」、KORN×THE DUST BROTHERS「Kick The P.A.」などはそれぞれのバンドのカラーが強く、このままオリジナルアルバムに入っていたとしても不識じゃない仕上がり。ドラムンベース調に味付けされたMETALLICA×DJスプーキー「For Whom The Bell Tolls (The Irony Of It All)」も当時は「……へっ?」と困惑したものの、今聴くと全然アリに思えるから不思議。当時全米1位を記録したノリノリのTHE PRODIGYは「One Man Army」でトム・モレロをギターに迎えたことで、非常にロック色濃厚なトラックを楽しむことができます。

かと思えば、当時はまだブレイク前だったINCUBUSは、早くも独特のテイストを持つ「Familiar」で個性を発揮しまくっているし、SLAYER×ATARI TEENAGE RIOTという最強&最狂の組み合わせによる「No Remorse (I Wanna Die)」では前のめりなアゲアゲドラムンベースを堪能できる。曲によって出来のまちまちはあるものの、全体を通して非常に気持ちよく“踊れる”ラウドロックアルバムではないかと思っています。

とはいえ、リリース当時は『JUDGEMENT NIGHT: MUSIC FROM THE MOTION PICTURE』ほどのインパクトは与えられず、かつメタル寄りリスナーからはあまり歓迎された記憶もなかったかな。チャート的にはBillboard 200(全米アルバムチャート)で最高7位まで上昇し、50万枚以上のヒットになっているので、ここ日本では“早すぎた”1枚だったのかもしれません。

現在のミクスチャーロック的スタンスを考えると、90年代に映画のサウンドトラックとして制作された『JUDGEMENT NIGHT: MUSIC FROM THE MOTION PICTURE』とこの『SPAWN: THE ALBUM』って、実は非常に重要な役割を果たした作品集だと思うんですよね。日本では評価は低いのかもしれないけど、このタイミングだからこそ改めて触れておきたい重要作だと断言しておきます。

 


▼V.A.『SPAWN: THE ALBUM』
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2021年12月22日 (水)

TOM MORELLO『THE ATLAS UNDERGROUND FLOOD』(2021)

2021年12月3日にデジタルリリースされたトム・モレロの、ソロ名義では3作目のオリジナルアルバム。海外でのフィジカルリリースは2022年1月7日、日本では同年1月26日発売予定。

2021年10月15日に『THE ATLAS UNDERGROUND FIRE』を発表したばかりのトムですが、そこから1ヶ月強で届け届けられた本作は『THE ATLAS UNDERGROUND』(2018年)からスタートした“THE ATLAS UNDERGROUND”シリーズの第3弾。過去2作同様、すべての楽曲に異なるコラボレーターをフィーチャーし、楽曲ごとに異なる世界観/音楽性を展開してたコンピレーションアルバム/プレイリスト風な内容に仕上げられています。

前作『THE ATLAS UNDERGROUND FIRE』ではブルース・スプリングスティーンエディ・ヴェダーPEARL JAM)、BRING ME THE HORIZON、デニス・リクセゼン(REFUSED)など比較的派手なロックスターも多数フィーチャーしていたものの、今作はロック度は比較的低め。HR/HM層に引っかかるメンツといえば「I Have Seen The Way」でのアレックス・ライフソン(G/RUSH)、カーク・ハメット(G/METALLICA)程度でしょうか。もちろん、それ以外にもベン・ハーパーを迎えた「Raising Hell」やRODRIGO Y GABRIELA参加のWarrior Spirit」、元SOMETHING CORPORATEのシンガー、アンドリュー・マクマホン(Vo)率いるANDREW McMAHON IN THE WILDERNESSとのコラボ曲「The Maze」、IDLES参加の「The Bachelor」なども用意されているので、幅広くロックを聴くリスナーなら文句なしで楽しめる内容かと思います。

序盤の2曲(「A Radical In The Family」「Human」)ではいわゆるモダンポップに接近した作風で、ロックのロの字も感じられないものの、続く3曲目「Hard Times」では多くのファンがトムに求めるスタイル(いわゆるRAGE AGAINST THE MACHINE的なもの)に近い音/曲調が飛び込んでくるので、少しは安心できるはず。とはいえ、過去2作同様ジャンルレスなアルバムなので、ロックやハードロック的な側面だけを求める層には今作も厳しい内容と言えるかもしれません。そこだけははっきり言っておきます。

筆者的にはこの“音のごった煮感”は非常に楽しめるものなので、過去作同様に文句なしに楽しめるものがあるのですが、前作のレビューでも述べたようにトムはギタリストというよりはソングライターに徹している節があり、彼の変態的ギタープレイはそこまで多くフィーチャーされていません。「I Have Seen The Way」のように世代の異なる名ギタリストたちとのギターバトルが楽しめる曲や「Ride At Dawn」みたいにリフのカッコいい曲もあるにはありますが、「You'll Get Yours」のようにアコギメインの楽曲もあれば、「The Lost Cause」や「Parallels」を筆頭とした歌中心の楽曲もある。要は、ひとつのスタイル/音楽性に固執するリスナーには少々厳しい内容であり、ジャンル問わず“音楽”を楽しめる層にはカラフルに映るバラエティ豊かな1枚である、と。聴き手の立ち位置の違いにより、評価が分かれるアルバムと言えるでしょう。

個人的には、今回も十分に満足できる内容であり、それこそ先に書いたようにプレイリスト感覚で気軽に接することができる良作だと思っています。

さまざまなコラボレーターと共作することで、ソングライターとしての実力/個性に磨きをかけているトムですが、この実験は今後も“THE ATLAS UNDERGROUND”という名の下に続いていくことになるのでしょうか。もちろんHR/HM界隈にこだわる必要はありませんが、今後も若手/ベテラン問わずジャンルレスな面々とのコラボに期待しつつ、時には豪快なギタープレイも披露していただきたいところです。

 


▼TOM MORELLO『THE ATLAS UNDERGROUND FLOOD』
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2021年11月26日 (金)

INFECTIOUS GROOVES『THE PLAGUE THAT MAKES YOUR BOOTY MOVE... IT'S THE INFECTIOUS GROOVES』(1991)

1991年10月9日にリリースされたINFECTIOUS GROOVESの1stアルバム。日本盤は同年12月1日発売。

INFECTIOUS GROOVESはSUICIDAL TENDENCIESのマイク・ミューア(Vo)とJANE'S ADDICITONのステファン・パーキンス(Dr)を中心に、1989年に結成されたサイドプロジェクト。当時のメンバーはディーン・プレザンツ(G/1996年からSUICIDAL TENDENCIESのメンバー)、アダム・シーゲル(G/ex.EXCELなど)、ロバート・トゥルヒーヨ(B/METALLICA、ex. SUICIDAL TENDENCIES、ex. OZZY OSBOURNEなど)という布陣。今考えるとものすごいメンツですね。

音楽性は当時のSUICIDAL TENDENCIESにファンクロックのカラーを織り交ぜたミクスチャーロック。ソングライティングのクレジットを見ると、大半がマイクとロバートの共作で、SUICIDAL TENDENCIESでやれないスタイルをここで実践したのかなという気も。結果、すでにスラッシュシーンでは流れていたロバートがその存在感を本作でさらに強めることになります。

レコーディングにはSUICIDAL TENDENCIESのロッキン・ジョージ(G)や、のちにVELVET REVOLVERに加入するデイヴ・クシュナー(G)なども参加。リードトラック「Therapy」ではオジー・オズボーンがゲストボーカルで参加しており、曲タイトルを歌っているだけでその異様な存在感を発揮しております。

RED HOT CHILI PEPPERSにスラッシュメタルギターを乗せたようなその独特のサウンドは、当時すでにブレイクしていたFAITH NO MOREなどにも通ずるオルタナティヴ感が備わっており、その手のバンドに偏見なく触れてきたメタルファンにも好評を博した記憶が。ぶっちゃけ、本家SUICIDAL TENDENCIESよりこっちのほうがカッコいい!という声も少なくありませんでした(SUICIDAL TENDENCIES自体はもともとハードコアですから、そっちが苦手なメタルファンもいたでしょうし。個人的にはどっちも好きだったけど)。

ちょっとしたフレーズやプレイからは1991年という時代ならではの質感が伝わるものの、全体を通して聴くと意外と2021年にも通用するんじゃないかという気がします。それくらい古さがなく、フレッシュさが保たれていると同時に、この手のサウンドが1991年当時は先鋭的だったという事実を示しているのかなと。それくらいモダンなカッコよさがあり、いろいろ一周した今だからこそ再評価したい作品。と同時に、今の若い世代に届いてほしい1枚です。

なお、SUICIDAL TENDENCIES同様にINFECTIOUS GROOVESも今日に至るまで活動継続中。現在のメンバーはマイク、ロバート、ディーンのほか、元FAITH NO MOREのジム・マーティン(G)、現AVENGED SEVENFOLDのブルックス・ワッカーマン(Dr)の5人で、2020年には最新EP『TAKE U ON A RIDE - SUMMER SHRED SESSIONS VOL.1』を発表しています。

 


▼INFECTIOUS GROOVES『THE PLAGUE THAT MAKES YOUR BOOTY MOVE... IT'S THE INFECTIOUS GROOVES』
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2021年10月24日 (日)

SANTANA『BLESSINGS AND MIRACLES』(2021)

2021年10月15日にリリースされたSANTANAの26thアルバム。日本盤未発売(サンタナの新作が日本盤リリースされない時代が来るとは……)。

『AFRICA SPEAKS』(2019年)から2年4ヶ月ぶりの新作。ここ2作は固定のバンドメンバー&シンガーという編成でアルバム作りに臨んできたカルロス・サンタナですが、今作ではメガヒットした『SUPERNATURAL』(1999年)以降定着している、フィーチャリングアーティストを曲ごとに変えたスタイルに回帰しています。

その参加メンバーも大ヒット曲「Smooth」でお馴染みのロブ・トーマス(MATCHBOX TWENTY)を筆頭に、スティーヴ・ウィンウッド、チック・コリア、カーク・ハメットMETALLICA)、ナラダ・マイケル・ウォルデンなどジャンルを超えた多彩な顔ぶれ。もちろんボーカルレスのインストナンバーも多彩で、頭2曲と終盤3曲にインストを置くという構成からも、単に歌モノに頼っているだけじゃないんだよというサンタナの意思が伝わります。

どの曲もサンタナらしいラテンフレイバーが散りばめられた個性的なものばかりで、全体を通してリラックスして聴くことができるはず。そんな中、「おいおい、どうしてこうなった?」な珍作/異色作も含まれています。

例えば、スティーヴ・ウィンウッドをボーカルに迎えた「Winter Shade Of Pale」。ご存知PROCOL HARUMの名曲「青い影」のカバーなんですが、ラテンフレイバーを散りばめたアレンジで表現するという暴挙ぶり(笑)。でも、これが意外と悪くない。いや、不思議とクセになるんです。聴く人によっては原曲レイプにほかならないカバーですが、僕的にはありかな。面白いし(笑)。

メタルリスナー向けにはLIVING COLOURのコリー・グローヴァー(Vo)をフィーチャーした「Peace Power」のグルーヴィーなファンクロックもおすすめ。この熱量、たまらないっす。また、カーク・ハメット(G)とDEATH ANGELのマーク・オセグエダ(Vo)が参加した「America For Sale」も濃厚なファンク/ブルースハードロックといった印象で、なかなかの仕上がり。マークがメタル以外の、ストーンズっぽい楽曲を歌うのも興味深いし、なによりサンタナとカークのギターバトルが面白いったらありゃしない。カーク、頑張っているんだけど若干サンタナに押されているのが微笑ましい(笑)。手癖っぽいフレーズも多少見受けられるけど、ファンなら聴いておいて損はない1曲でしょう。

もちろん、ロブ・トーマス参加の王道ナンバー「Move」だとかカントリーシンガー/ギタリストのクリス・ステイプルトンを迎えた「Joy」だとか、聴きどころは豊富なので、クラシックロックファンはプレイリスト感覚で触れてみてはいかがでしょう。

 


▼SANTANA『BLESSINGS AND MIRACLES』
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2021年9月15日 (水)

DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: MASTER OF PUPPETS - LIVE IN BARCELONA, 2002』(2021)

2021年9月15日に日本先行リリースされた、DREAM THEATERのライブアルバム。海外では同年9月17日発売予定。

本作は今年6月に発売された『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: IMAGES AND WORDS - LIVE IN JAPAN, 2017』、7月発売の『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: A DRAMATIC TOUR OF EVENTS - SELECT BOARD MIXES』、8月発売の『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: TRAIN OF THOUGHT INSTRUMENTAL DEMOS (2003)』に続く、オフィシャル・ブートレッグシリーズ第4弾。過去に自主レーベルYsejam Recordsを通じてさまざまな貴重音源を限定販売してきたDTですが、現在バンドが所属するInsideOutMusic Recordsとのコラボレーションで2021年から定期的にオフィシャルリリースされることになったわけでね。

これまで同企画でリリースされてきた音源の多くは、過去にYsejam Recordsを通じて発表されてきたもののリマスタリング音源でしたが、今回もその流れにある1枚。2002年2月のバルセロナ公演にて披露された、METALLICAの出世作『MASTER OF PUPPETS』(1986年)を完全再現演奏したものとなります。当時のDTは同じ会場で2公演続けてライブがあると、2日目の公演では前日と異なるセットリストを……ということで、バンドが愛聴してきた他アーティストの名盤をまるまる完全再現していました。

Ysejam Records経由の初出盤も当時話題になりましたが、DT待望の新作発表目前、そしてMETALLICAが『ブラックアルバム』(1991年)の30周年記念盤を発表した同タイミングにリマスタリングが施された新規盤が一般流通されることは、非常に大きな意味があるような気がします。

プログレッシヴメタルバンドのDTにとって、元祖スラッシュメタルバンドが確変したタイミングの1枚をまるまるカバーするというのは、どういう意味を持つのか。それこそツインギターバンドのMETALLICAの楽曲を「シングルギター&キーボード含む」編成のDTがどうカバーするのか。聴いていただいたとおり、アコギやクリーントーンギターのパートをジョーダン・ルーデス(Key)がキーボードでカバーしたり、ギターソロパートもジョン・ペトルーシ(G)がある程度弾いたあとにジョーダンがシンセでソロをかましたり、ツインリードパートではギターとシンセがハモったりと、DT流のアレンジが見事に施されています。

もともとプログレッシヴな展開を持つ楽曲が多い『MASTER OF PUPPETS』ですが、こうやってDTが演奏すると意外にもプログメタル的に聴こえてくるんですから、本当に不思議なものです。当時のドラマー、マイク・ポートノイ(Dr)の活き活きとしたプレイ、プリミティヴなスラッシュメタルには不向きなジェイムズ・ラブリエ(Vo)のボーカルなど、プラス面/マイナス面ともにありますが、こと演奏に関しては文句なしではないでしょうか。「Battery」のイントロダクションや「Master Of Puppets」でのエフェクトなどオリジナルアルバムから流用したSEも多く、このカバーを披露したあとに本家のラーズ・ウルリッヒ(Dr)が完全再現ライブ音源をDTに求めたという逸話もあるくらいですから、最終的には本家公認のライブアルバムということなんでしょう。

DTがこういったプログレッシヴスラッシュに特化したアルバムを作る……なんて淡い夢を見ていた層が果たしてどれくらいいるかわかりませんが、個人的には「こんなDTもアリだな」とYsejam Records盤を初めて聴いたときに思った記憶があります。そこから10周年ぶりに本作に触れてみて、再び「こんなDTもアリだな」と同じ感想を抱くことになるとは。ということは、何年経っても良いものは良いし、その出典元となる『MASTER OF PUPPETS』は時代を超えて長く愛される傑作/名盤なのだなと再認識させてくれる、非常にありがたい1枚と言えるのではないでしょうか。

DTは10月22日にニューアルバム『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』をリリースするので、この『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES』シリーズはしばらくお休みするのかな(新作の売り上げの邪魔しちゃアレですものね)。DTは過去にIRON MAIDEN『THE NUMBER OF THE BEAST』(1982年)PINK FLOYD『THE DARK SIDE OF THE MOON』(1973年)、DEEP PURPLE『MADE IN JAPAN』(1972年)の完全再現ライブ実施およびオフィシャル・ブートレッグでのCD化を手がけてきたので、2022年以降はこれらの音源の再リリースにも期待したいところです。

 


▼DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: MASTER OF PUPPETS - LIVE IN BARCELONA, 2002』
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2021年9月14日 (火)

METALLICA『METALLICA: DELUXE EDITION』(2021)

2021年9月10日にリリースされた、METALLICAの5thアルバム『METALLICA』(1991年)発売30周年記念デラックスエディション。

本作は新規リマスターを施したアルバム本編(CD1枚/過去日本盤ボーナストラックとして追加されたカバー「So What」を除く12曲入り)のほか、貴重なデモ音源&ライブテイクをコンパイルしたデラックス盤(CD3枚組)、そして『METALLICA』に関連するレア音源を網羅したボックスセット(CD14枚、アナログ6枚、DVD6枚、120Pハードカバーブック、雑誌表紙リトグラフ3枚など特典多数封入)の3仕様が用意されています。

2010年代後半以降、1stアルバム『KILL 'EM ALL』(1983年)&2ndアルバム『RIDE THE LIGHTNING』(1984年)のリマスター&デラックス盤(2016年)を筆頭に、3rdアルバム『MASTER OF PUPPETS』(1986年)リマスター&デラックス盤(2017年)、4thアルバム『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)リマスター&ボックス(2018年)が随時リリースされてきましたが、ついに真打ち登場といったところでしょうか。新たなプロデューサー、ボブ・ロック(MOTLEY CRUEAEROSMITHBON JOVIなど)とともにたっぷり時間をかけて制作に臨んだ通称『ブラックアルバム』が完成に至るまでの過程が、余すところなく凝縮されているだけでなく、2年以上におよんだワールドツアーの中からハイライトとなるモスクワ公演、フレディ・マーキュリーのトリビュートライブ@ウェンブリー・スタジアムなどの音源を、改めて正式音源としてCDやデジタルで楽しむことができるようになりました。

METALLICAはこの『ブラックアルバム』の頃から、シングルのカップリングにアルバム収録曲のデモ音源を小出しにするようになりました。当時はシングルもソニーから日本盤が発売されており、今でも中古ショップで目にすることがありますが、こういった音源がデジタルでも聴けるようにならないかなと思ったこともあったので、これはいちファンとしてはうれしい限り。しかも、これまで世に出ていなかった制作段階の超初期の、アイデアレベルのデモまで含まれているのですから、マニア心をくすぐります。ぶっちゃけ、過去4作以上にこういった貴重音源を聴きたかったのがこの『ブラックアルバム』なので、そりゃあボックスセットのCD14枚、アナログ6枚という膨大さには喜びを隠しきれません(笑)。

その前に触れておきたいのが、リマスタリング効果について。実は『ブラックアルバム』ってリリースから30年経った今聴いてもその音質、ミックスバランスが非常に優れたアルバムで、ぶっちゃけリミックスに関してはそこまで期待していませんでした。実際、最新リマスタリング効果はそこまで劇的なものではなく、エッジの効いたハイの音域が若干丸みを帯びて、低音が少々強調された現代的な音像になり、ヘッドフォンやイヤフォンで聴きやすくなったという程度でしょうか。僕自身、ここ10年くらい新規でDJ用ヘッドフォンやスマホ用イヤフォンを購入する際、必ず『ブラックアルバム』で試聴するぐらい、自分の中での“基準の音”となっていた作品なので、そう大きく変わられても困るんですけどね(苦笑)。

そして、デモやライブなどのレア音源。こちらは完全にマニア向けなので、ビギナーにはオススメしません。METALLICAのアルバムはすべて聴いてきて、過去のリマスター&ボックスを素直に楽しめた方向けですね。もちろん、あの名盤がどんな過程を踏んで完成まで至ったのか、という歴史的価値は大きいので、近代音楽史を学びたいという方や自身で音楽制作を嗜んでいる方なら意味のある音源集ではないでしょうか。ビギナーだけどちょっとだけ触れてみたい……という方は、CD3枚組のデラックス盤で十分でしょう。デモトラック集で個人的オススメは、やはり「Nothing Else Matters」。ストリングス抜きのラフミックス(ボックスのみ収録)や、リズムトラック&エレキギターを排除したボーカル+クリーンギター+ストリングスのみの“Elevator Version”(デラックス盤、ボックスともに収録)が楽しめるのがね、うん。“Elevator Version”は過去にシングルで発表済みですが、20数年ぶりに聴けて感涙ものです。

ライブ音源は、ボックスセットだとアナログのみで聴けるものなどが生じてしまうので、ここはデジタルで手軽に楽しむのがベター。ここでの個人的オススメは1992年4月のウェンブリー・スタジアム公演の3曲(「Enter Sandman」「Sad But True」「Nothing Else Matters」)プラス、QUEENをバックにジェイムズ・ヘットフィールドがハンドマイクで歌う「Stone Cold Crazy」でしょうか。前者3曲は90年代前半、ライブシングルとして海外で限定発売された代物なので、こちらもデジタル化はうれしい限り。加えて、数十万人も集めたと言われる伝説の1991年9月のモスクワ公演も正式音源化されているので、ぜひこちらもマストでチェックしておきたいところです。

ちなみに、3枚組デラックス盤で39トラック/トータル3時間22分、ボックスセットになると(デジタル版で)全193トラック/計15時間37分(笑)になります。フィジカルのボックスはここにインタビュー音源やDVD6枚が加わるので……これ1作で余生を過ごすに十分すぎますね(笑)。

 


▼METALLICA『METALLICA: DELUXE EDITION』
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2021年9月11日 (土)

V.A.『THE METALLICA BLACKLIST』(2021)

2021年9月10日にデジタルリリースされたコンピレーションアルバム。フィジカル(CD、アナログ)は10月1日発売予定。

本作はMETALLICAの5thアルバムにして“ブラックアルバム”の愛称で知られる最大のヒット作『METALLICA』(1991年)の発売30周年を記念して、同作の最新リマスター盤&ボックスセットと合わせて制作・発表された、同作の録り下ろしカバー曲53曲を集めたCD4枚組/アナログ7枚組のコンピレーションアルバム。オリジナルの全12曲を53組が1曲単位でカバーしていくわけですから、そこは当然同じ曲のダブりも発生します。そのへんは、下の内訳を見ていただければご理解いただけるかと。

M-1. Enter Sandman [6組]
M-2. Sad But True [7組]
M-3. Holier Than Thou [6組]
M-4. The Unforgiven [6組]
M-5. Wherever I May Roam [4組]
M-6. Don't Tread On Me [3組/うち1組はM-8との組曲]
M-7. Throught The Never [2組]
M-8. Nothing Elese Matters [13組/うち1組はM-6との組曲]
M-9. Of Wolf And Man [1組]
M-10. The God That Failed [2組]
M-11. My Friend Of Misery [3組]
M-12. The Struggle Within [1組]

M-1、2、4、5、8といったシングルカット曲に人気が集中するのは理解できます。しかし、そんな中でMETALLICA初のスローバラードM-8を13組もがカバーするというのは、非常に興味深いものがあります。まあ、こういったシンプルでわかりやすいバラードのほうが使い勝手も良いのかもしれませんね。

参加アーティストはHR/HMの範疇に含まれるバンドからオルタナ系、パンク/ハードコア、ヒップホップ、R&B、クラブミュージック、ジャズ、ラテン、カントリーなどジャンルさまざま。そういった方々が少なからずMETALLICA(というか『ブラックアルバム』)から影響を受けているというのもあるのでしょうか。「え、その人がその曲をカバーするの?」という驚きから「想定の範囲内!」という安心安定のカバーまで、色とりどりの名曲群カバーを楽しむことができます。

「Enter Sandman」のように個性が確立され切った楽曲はアレンジが難しいのか、基本的にはメインリフを軸に歌やリズムで味付けをしている感が強いかな。そんな中で、フアネスの「Enter Sandman」はメインリフに味付けを加えることで、独特のカラーを作り上げていて好印象。リナ・サワヤマも4つ打ちダンスビートにメタルギターを被せ、歌でぐいぐい引っ張る方法で良き味付けを示しています。WEEZERは途中まで普通かな……と安心していると、途中に“らしい”フレーズを散りばめており、思わずニヤリ。彼らにしては淡白ですが、これはこれでアリかな。

「Sad But True」はリズムがシンプルなので、意外といじりがいがあるのかな。サム・フェンダーのピアノバラード風アレンジも良いし、JASON ISBELL AND THE 400 UNITのブルースロック風も良き。MEXICAN INSTITUTE OF SOUNDもラテンアレンジも、ST. VINCENTの70年代中盤ボウイ風もよかった。

……と細々解説していったらキリがないので、以下はお気に入りのカバーのみ挙げていきます。サイケデリックメタル調に再構築したBIFFY CLYROの「Holier Than Thou」、ゴシック風オルタナロックのCAGE THE ELEPHANT「The Unforgiven」、サイケなヒップホップに進化したJ.バルヴィン「Wherever I May Roam」、ドラムンベース調リミックスのTHE NEPTUNES「Wherever I May Roam」、不穏なピアノの音色にゾクゾクするPORTUGAL. THE MAN「Don't Tread On Me」、メロディを独自に解釈し浮遊感の強いクラブミュージックとミックスさせたトミ・オウォ「Through The Never」、エルトン・ジョンやヨーヨー・マ、ロバート・トゥルヒーヨ、チャド・スミスをバックに従えたマイリー・サイラスの正統派パワーバラード「Nothing Else Matters」、悲しみに満ちた鎮魂歌風のデイヴ・ガーンDEPECHE MODE)「Nothing Else Matters」、逆にメジャーキーに転調したことでパワーポップ風に生まれ変わったMY MORNING JACKET「Nothing Else Matters」、このバージョンで本家にもカバーしてほしいGOODNIGHT, TEXASのオルタナカントリー風「Of Wolf And Man」、スリリングな演奏が心地よいカマシ・ワシントン「My Friend Of Misery」、アコギ2本のみで構築されるインストアレンジがさすがのRODRIGO Y GABRIELA「Struggle Within」……といったところでしょうか。

さすがに4時間以上ある音源集なので、すべてを細々と紐解いていくにはいくら文字があっても足りないくらい。なので、これは配信から半日以上かけて2、3度通して聴いた初日の感想ということで。同じ曲が6曲とか10数曲とか続く構成なので、通して聴く頻度はそう多くはないと思いますが、気になるトラックを複数ピックアップしてプレイリストで聴くというのもアリかな。もちろん、『ブラックアルバム』からの印象的/特徴的なカバーは本作に収録された以外にもたくさん存在するので、それらを混ぜ込んだプレイリスト作りもありかもしれませんね。

 


▼V.A.『THE METALLICA BLACKLIST』
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2021年8月24日 (火)

EXODUS『BLOOD IN, BLOOD OUT』(2014)

2014年10月14日(欧州では10月10日)にリリースされたEXODUSの10thアルバム(リメイクアルバム『LET THERE BE BLOOD』を含めると11枚目のスタジオアルバム)。日本盤は同年10月22日発売。

連作となった前作『EXHIBIT B: THE HUMAN CONDITION』(2010年)から4年5ヶ月ぶりの新作。今作発売半年前に約10年在籍した前任ボーカルのロブ・デュークスが脱退(事実上のクビ)。その後任として加わったのが、80年代後半から90年代前半、そして2000年代初頭にバンドで活躍したスティーヴ・“ゼトロ”・スーザでした。ゼトロがEXODUSのアルバムに参加するのは6thアルバム『TEMPO OF THE DAMNED』(2004年)以来以来のこと。これでゼトロ、ゲイリー・ホルト(G)、リー・アルタス(G)、ジャック・ギブソン(B)、トム・ハンティング(Dr)という現編成が完成することとなります。

バンドのセルフプロデュース、レコーディングエンジニア&ミックスにアンディ・スニープという布陣で制作された本作。実は前任のロブがボーカリストとしても、そしてステージ上のフロントマンとしても非常に存在感の強い人間だっただけに、彼を放出してまで三度ゼトロをバンドに呼び戻す理由がわかりませんでした。しかし、本作を聴けば「やっぱりEXODUSにはゼトロが必要であり、ゼトロがいてこそEXODUS」という事実が理解できるはず。楽曲もゼトロ在籍時の路線に寄せたのか、王道のベイエリアクランチを存分に堪能することがで、“あの頃”をリアルタイムで通過した自分のような人間には心の底から楽しむことができました。

全11曲中大半がスラッシーなアップチューンというのも良いですし、ゼトロ復帰に華を添えるように元メンバーのカーク・ハメット(G/METALLICA)が「Salt The Wound」でギターソロを、盟友チャック・ビリー(Vo/TESTAMENT)は「BTK」で豪快なボーカルを聴かせてくれます。さらに、異色ともいえるダン・ジ・オートメーターとの共演(「Black 13」のオープニングパート)も見逃せません(まあ、こちらは本当に味付け程度ですが)。

メインソングライターのゲイリー・ホルトは2011年からSLAYERとの活動兼任もあり、多少なりともそのアグレッシヴ加減や初志貫徹なスタイルに影響を受けたはず。そこに原点回帰ともいえるゼトロの復帰とあれば、こういうスタイルに戻るのも納得の一言です。ロブ時代の作品ももちろん大好きですし、あの歌声も非常に好みでしたが、これを聴かされたらぐうの音も出ませんよね。恐れ入りました。

なお、本作の海外限定盤およびデジタル版にはボーナストラックとして、ANGEL WITCHのカバー「Angel Of Death」を収録。こちらでボーカルを務めているのはトム・ハンティングというのも見逃せません。お遊びとはいえ、こういうのもアリっちゃあアリですね。

全米38位という過去最高記録を打ち出した本作以降、ゲイリーのSLAYERでの活動が忙しくなり新作の予定がなかなか見えなかったEXODUS。しか、2019年のSLAYER活動終了を経て、ついに2021年11月19日に7年ぶりの新作『PERSONA NON GRATA』をリリース予定。現在公開されている新曲もなかなか良さげなので、今作を超える内容にも期待できそうです。

 


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2021年6月24日 (木)

METALLICA『LIVE SHIT: BINGE & PURGE』(1993)

1993年11月23日にリリースされたMETALLICA初のボックスセット作品。日本盤は『メタルVOX・ライヴ!』という邦題で、ほぼ同タイミング(1994年年明けだったかな?)に発売。

本作は1993年2月25〜7日および3月1〜2日のメキシコ・シティ公演のベストテイクで構成された3枚組CDと、1992年1月13、14日のサンディエゴ公演と1989年8月29、30日のシアトル公演を収めた2枚のDVD(初出時はVHSテープ3本)を同梱したもの。初盤(VHS)にはバックステージパスのレプリカやTシャツ、ブックレットも封入された豪華仕様でしたが、とにかく箱が大きくて収納に一苦労したことをよく覚えています(苦笑)。2003年頃に最初された形態は、3枚組CD+DVD2枚(DVDはシングルCDなどに用いられる薄いケース)のみのコンパクトな形に変わったので、こちらの記憶が強いという若いリスナーも少なくないかもしれませんね(もはやVHSを再生する機器も中古じゃないと手に入らないでしょうし)。

ワールドツアーの模様が逐一音源化される『LIVE METALLICA』企画が始まる前は、本作が唯一のMETALLICAライブ音源ということもあり、特に90年代半ばから2000年代初頭はかなり重宝された作品だったのではないでしょうか。特にバンドの絶頂期であるブラックアルバム(1991年)を携えたツアーの模様を、フルスケールで楽しめるライブアルバムですしね。ブラックアルバムのツアーではここ日本にも2度(1991年大晦日の東京ドームと1993年3月)訪れているものの、以降は1998年、2003年とほぼ5年おきの来日でしたし(リリースもしばらく途絶えたしね)、その間にファンになったリスナーがライブを追体験するという点でも、本作はかなり重要な役割を果たした作品だったと断言できます。

全24トラック、約3時間という特大ボリュームのライブはまさに当時の彼らそのもの。ミックスの派手さも非常に90年代的ですよね。ブラックアルバムの楽曲が軸になるものの、要所要所で「Creeping Death」や「Fade To Black」「Seek & Destroy」「Whiplash」など初期の楽曲が挿入されるセットリストは、意外と今と変わりないんですよね。ただ、『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)収録曲をメドレー形式で10分にまとめた「Justice Medley」なるコーナーがあったり、「Seek & Destroy」をジェイソン・ニューステッド(B)が歌っていたりするのはこの時期ならですし、QUEEN「Stone Cold Crazy」カバーがあったりするのもお得感満載。ベストアルバム的コンピレーションアルバムが存在しない彼らにとっては、初期5作品をおさらいする上でも実はかなり有能な1枚(CD3枚組)ではないでしょうか。

そして、映像のほうに関して。確か1992年のライブはこの時期のMVなども手がけたウェイン・アイシャムがディレクションを担当していたと記憶します。それもあってか、冒頭のドキュメンタリー的イントロダクションが20分もあって煩わしかったりするのですが、そこを除けば非常に90年代初頭らしい“MTV感覚のライブ映像“と言えるのかな。今の目で観るとちょっと作りすぎ感が否めませんが、歴史的資料としては十分かなと。

もうひとつの1989年の映像は、もともと商品化を予定していなかったこともあり、質はイマイチ。ですが、当時オフィシャルで現存する『...AND JUSTICE FOR ALL』期のライブ映像はこれだけだったので、特にブラックアルバム以降ファンになった方々にはうれしい逸品だったはずです。正直、僕は1992年のほうよりこっちばかりリピートしたなあ……それこそVHSテープが擦り切れるほどに(誇張なし)。

2021年9月10日にはブラックアルバム発売30周年を記念したボックスセットが発売されます。こちらにもさまざまなライブ映像が収録される予定ですが、そことはまた違った、作品性の高いライブ映像という意味でも、本作は事前にチェックしておくべき重要作品だと言っておきたいです。

さ、もう一回1989年のライブ映像を再生しますか(今はDVDなのでご安心を。笑)。

 


▼METALLICA『LIVE SHIT: BINGE & PURGE』
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