カテゴリー「Michael Monroe」の12件の記事

2019年8月20日 (火)

MICHAEL MONROE『LIFE GETS YOU DIRTY』(1999)

1999年10月にリリースされた、マイケル・モンロー通算4作目のソロアルバム。当初日本のみで発売されたJERUSALEM SLIM唯一のアルバム『JERUSALEM SLIM』(1992年)DEMOLITION 23.名義でのアルバム『DEMOLITION 23.』(1994年)を含めると通算6作目ということになります。

前作『PEACE OF MIND』(1996年)前後でニューヨークから故郷フィンランドへと帰国し、音楽の拠点を地元に移したマイケル。前作はドラム以外のパートをほぼマイケルひとりで担当するというセルフ・メイド感の強い、ある種“閉じた”作品でしたが、続く本作は非常に豪快な“開けた”1枚に仕上がっています。

リズム隊のみ地元のプレイヤーに担当させ、自身はボーカルのほかギター、ハーモニカ、サックス、ピアノなど相変わらず多才ぶりを発揮。楽曲に関しても全13曲中、カバー2曲を除く11曲を(公私ともに当時のパートナーだった)ジュード・ワイルダーと共作しています。

ぶっちゃけ、楽曲のタイプ的には前作の延長線上にあるシンプルでパンキッシュなハードロックなのですが、前作を覆っていた“緩さ”が完全に払拭され、非常にタイトな印象を受けるのが本作の特徴。「Life Gets You Dirty」から「Just Because You're Paranoid」へと続く冒頭の構成からは、絶妙な緊張感も感じられ、良い意味で“怒っている”なと。正直、90年代前半のマイケルはいろんなゴタゴタに巻き込まれ、本来なら怒るべきだと思っていたんです。なのに、パンクバンドであるDEMOLITION 23.は怒りよりも享楽的な雰囲気が強いし、すべてを捨てて故郷に戻って制作した『PEACE OF MIND』からはある種の“諦め”すら感じられた。

おいおい、こっちはそんなマイケル・モンローを求めてねぇぞ、と。

もちろん、前作での原点回帰が本作の完成に必要な要素だったことは間違いありません。すべては結果論でしかないですが。

良くも悪くもアメリカナイズされた2ndアルバム『NOT FAKIN' IT』(1989年)から10年を経て、ようやくマイケルは“自分らしさ”を手に入れたんだ。当時はそう思いました。しかし、その後ジュードとの死別が訪れるとは、この頃は思ってもみませんでしたが……。

あ、あと当時はBACKYARD BABIESといったフォロワーたちがマイケルと共演したりすることで、マイケルに対する再評価が始まった時期でもあったんでしたっけ。そういう意味では、本作の登場は必然だったのかもしれません。

ちなみに、本作に収録されているカバー曲のひとつに、HANOI ROCKS「Self Destruction Blues」が含まれています。のちに再結成するハノイもこちらのバージョンを再カバーしていましたね(ハノイ・バージョンは2007年のアルバム『STREET POETRY』収録)。タイトさではハノイ・バージョンが優っていますが、荒々しさはソロ・バージョンのほうが格段に上なので、機会があったら聴き比べてみてください。

 


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2019年5月17日 (金)

MICHAEL MONROE『BLACKOUT STATES』(2015)

2015年10月に発表された、マイケル・モンローの同名バンド名義による3rdアルバム。マイケル個人としては通算8枚目のソロアルバムに当たります(JESUSALEM SLIMDEMOLITION 23.を含むと10枚目)。

前作『HORNS AND HALOS』(2013年)から加わったドレゲン(G / BACKYARD BABIESTHE HELLACOPTERS)が早くも脱退(こちらは健康上の理由とBACKYARD BABIES再始動が理由)。ジンジャー・ワイルドハート、ドレゲンとスター性の強いギタリスト、かつソングライターとしても強烈な個性を持つ人間がアルバムごとに変わる状況含め、いかにもマイケル・モンローらしいなと思ってしまいましたが、ドレゲンに代わり加入したのはリッチ・ジョーンズ(ex. THE BLACK HALOS、ex. AMEN、ジンジャー・ワイルドハードなど)。

……あれ、今回地味じゃね?(苦笑)

そう思った人、仲間だね(笑)。リッチは2013年のジャパンツアーに参加できなかったドレゲンの代役として帯同したキャリアの持ち主で、加入も自然な流れだったんでしょう。要は“人間性”が求められたのかな。

前作の時点でソングライティング能力を遺憾なく発揮していたもうひとりのギタリスト、スティーヴ・コンテは本作でも大半の楽曲に名を連ねており、改めてこのバンドのメインソングライターとして手腕を振るっていますが、さて、リッチ・ジョーンズはどうかといいますと……。

全13曲中8曲にクレジットされており、そのすべてがスティーヴとの共作、あるいはその2人とサミ・ヤッファ(B)やマイケルとの共作という形となっています。スティーヴのように単独名義での楽曲はないものの、少なからずバンドの曲作りに貢献できているようです。ひと安心。

さて、肝心の内容ですが、どこからどう切り取ってもマイケル・モンローそのもの。ソロになってから、特にこのバンド編成になってからの彼のパブリックイメージそのままのサウンド/楽曲を楽しむことができます。つまり、「ポップで親しみやすいメロディが備わった豪快なロックンロールとパンクロック、ときどきレイドバックしたカントリーロック風ポップチューンも」楽しめるというわけです。あと、ディー・ディー・ラモーン(RAMONES)が生前書き残した未発表曲「Under THe Northern Lights」が、マイケルの手によって正式レコーディングされているのも本作の特徴かな。

ただ、悪い言い方をしてしまうと、何の驚きもない予定調和とも受け取れる。これはもう、聴き手に委ねるしかありませんが……僕はわりと好きです。いや、かなり好きかな。飛び抜けてすごい!と思える楽曲が1曲くらい欲しかった気がするけど、前作と前々作『SENSORY OVERDRIVE』(2011年)が良すぎたというのも大きいのかしら。ちょっと贅沢ですよね。

そんな中、個人的には「R.L.F.」という高速パンクチューンが大のお気に入り。これ、マイケルが昔から口にしてきた信条「Rock Like Fuck」のことですからね。そりゃ嫌いになれるわけがない。いまだにこの姿勢でロックと向き合ってくれていることに感謝します。

さて、本作リリース後は30年のソロキャリアを総括するベストアルバム『THE BEST』(2017年)をリリースしていますが、オリジナルアルバムは4年待っても届かない状況。そんな中、この夏には『SUMMER SONIC』で3年ぶりの来日が実現……ってことは、そろそろってことですよね? 期待してもいいですよね? 過剰に期待して待ってます。

 


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2018年6月10日 (日)

DREGEN『DREGEN』(2013)

BACKYARD BABIESのリードギタリスト兼ボーカリスト、ドレゲンが2013年10月に発表した初のソロアルバム。当時BYBは活動休止中で、どれ元は2011年半ばにMICHAEL MONROEに加入。ちょうど2013年8月にはギタリスト&ソングライターとして参加した2ndアルバム『HORNS AND HALOS』がリリースされたばかりでした。

Universal Music傘下のSpinefarm Recordsと契約して発表された本作は、THE WANNADIESのフロントマンであるパール・ウィクステン(Vo)との共同プロデュースで制作。ニッケー・アンダーソン(THE HELLACOPTERS、IMPERIAL STATE ELECTRIC、ENTOMBED)がドラム(3曲のみ)、ベース、リズムギターで、カール・ロックフィスト(MICHAEL MONROE)がドラムで、サミ・ヤッファ(MICHAEL MONROE、ex- HANOI ROCKS)がベースで参加しており、ダンコ・ジョーンズ(DANKO JONES)や女性シンガーのティティヨもゲストボーカルでフィーチャーされています。

ドレゲンというと、キース・リチャーズ系譜のナチュラル・ボーン・ロックンロールギタリストというイメージがありますが(それは間違いではないのですが)、実はソングライターとして非常に器用な人であることが本作で証明されています。その片鱗は、もちろんこれまでのBYBのアルバムでも感じられましたし、直近のMICHAEL MONROEのアルバムでも存分に発揮されていました。

が、本作で聴ける楽曲の幅広さは想像以上のものがあります。BYBを彷彿とさせるメロウなミディアムナンバーが中心ではありますが、例えばTHE HELLACOPTERS〜初期BYBお約束の疾走チューンが皆無なことに、きっと多くのファンが驚くのではないでしょうか(本編ラストの「Mojo's Gone」を疾走ナンバーと捉えれば1曲ある、ということになりますが、これはもっとKISSみたいなアップチューンという認識で、ガレージロックのそれとは異なるイメージ)。

ソングライティングにニッケも加わっているにも関わらず、そういった楽曲がないといのは、おそらくドレゲンもニッケもソングライターとしてあの頃よりも成長/進化しているから、そして今表現したいものがそこにはないから……なんじゃないかなと勝手に想像しています。

じゃなかったら、渋いスローブルース「Flat Tyre On A Muddy Road」や、ドロドロしたファンクチューン「6:10」にまで挑戦しないと思うし。むしろ、THE HELLACOPTERSやBYBにたどり着く前の、もっとガキの頃に愛聴したロックやポップス、ブルースといったルーツミュージックを、今の表現力で形にしたらこうなった、と言ったほうが正しいのかもしれません。

正直、このアルバムを聴いたとき、そしてソロツアーに専念するためにMICHAEL MONROEをすぐに脱退したときには、「ああ、ドレゲンはもうBYBではなくソロでやっていくんだな」……なんて思ったものです。しかし、そこから1年後にはBYBとしてスタジオ入り。2018年中には早くも再始動後2作目となるアルバムもリリースしてくれそうですし、そういった意味ではこのソロアルバムは良い意味での“ガス抜き”だったんでしょうかね。



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2018年6月 9日 (土)

MICHAEL MONROE『HORNS AND HALOS』(2013)

2013年8月にリリースされた、マイケル・モンローのバンド名義による2ndアルバム。マイケル個人としては7枚目のソロアルバムになります(JERUSALEM SLIMDEMOLITION 23.も含めると9枚目)。

前作『SENSORY OVERDRIVE』(2011年)リリース後、ツアーを1本終えたところでジンジャー・ワイルドハート(G)が自身の活動に戻るためバンドを脱退(この編成では同年6月にジャパンツアーを実施)。入れ替わるようにMICHAEL MONROEに加入したのが、当時BACKYARD BABIESが活動休止中だったドレゲンでした。ドレゲンが加わった編成で、バンドはツアーを再開。ここ日本にも新編成で同年10月に『V-ROCK FESTIVAL '11』で、早くも再来日を果たしました。

前編成もツアーから始まったMICHAEL MONROEですが、ドレゲンのように華と毒を併せ持つギタリストが加わったことで、彼らのステージはよりアグレッシヴになったように感じました。そんなドレゲンを迎えた編成で、バンドの新作制作に突入。いざ完成したアルバムは、前作の中にあったパンキッシュでストレートなロックンロールのテイストに特化した、1本芯の通った力作に仕上がりました。

もともとマイケルとドレゲンの相性の良さは、BACKYARD BABIES時代に共演した「Rocker」で証明済みでしたが、本作の中にもBYB的な哀愁漂うパンクロックチューンは含まれており、良い味を出しております。

が、本作で特筆すべきはドレゲン以上に、もうひとりのギタリストであるスティーヴ・コンテの作曲能力でしょう。前作でもその才能は開花させていましたが、本作でもリードトラック「Ballad Of The Lower East Side」や「Saturday Night Special」、そして海外盤スペシャルエディション収録の「Don't Block The Sun」をひとりで書き下ろしており、HANOI ROCKS時代やDEMOLITION 23.を彷彿とさせるパンクロックにファンは「これこれ! これぞマイケル・モンロー!」と歓喜しました(少なくとも自分は)。

また、スティーヴはドレゲンとともに「Stained Glass Heart」「Child Of The Revolution」の2曲を曲作。特に後者のグラムロック感はたまらないものがあり、2人の化学反応に思わずガッツポーズを取ったことを今でもよく覚えています。

そのほかにも、レゲエを取り入れたパンクロック「Soul Surrender」や、『NOT FAKIN' IT』(1989年)時代にも通ずるミディアムナンバー「Ritual」、ひたすらテンションが上がるマイナーキーのタイトルトラック「Horns And Halos」など、聴きどころ満載。本作が自国フィンランドのチャートで1位を獲得したのも頷ける、脂の乗った1枚です。



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2017年11月21日 (火)

MICHAEL MONROE『PEACE OF MIND』(1996)

スティーヴ・スティーヴンスとのJERUSALEM SLIM空中分解、続いて結成したDEMOLITION 23.もメンバー脱退などを経て気づけば4分の3がHANOI ROCKSという中途半端な形となり、こちらもあえなく空中分解。そんな失敗を繰り返した90年代前半を経て、マイケル・モンローはニューヨークから故郷フィンランドへと戻ることになります。

そんな状況下で、文字どおり“心の平穏”を求めるかのように制作されたのが、ソロ名義では3作目のスタジオアルバムとなる本作『PEACE OF MIND』。本来なら「“あの”マイケル・モンローの新作!」と大々的にプッシュされてもおかしくないのに、当時は意外とひっそりリリースされたことをよく憶えています。

全10曲で33分というCD全盛時代にしては短いトータルランニング、10曲中3曲がカバー(THE DAMNED「Machine Gun Etiquette」、MC5「Kick Out The Jams」、THE DEAD BOYS「Not Anymore」という、マイケルにしてはわかりやすすぎる選曲)という内容も特にプラスに働くことはなかったのも、そういった大プッシュされなかった理由でしょうし、それ以上に本作のレコーディングにおいてドラム以外の楽器をほぼマイケルが演奏したという事実が、スタープレイヤー揃いだったバンド時代と比較して地味だという理由で足を引っ張ったのかもしれません。事実、リリース当時は「サウンド的にもボーカル的にも派手さに欠けるなぁ……」と感じ、あまり聴き返さなかった記憶があります。

が、あれから21年経った今聴き返してみたら、意外と良いんですよね。ドラムは全部DEMOLITION 23.のジミー・クラークが叩いていおり、ベースやギターなどのベーシックトラックはマイケルがプレイ。数曲で地元のギタープレイヤーが参加していますが、基本はマイケルが自身の“タイム感”をもとに演奏してるわけだから、悪いわけがない。

オリジナル曲は全体的にミディアムテンポ中心で、オープニングの「Where's The Fire John?」や「Always Right」あたりは2ndソロ『NOT FAKIN' IT』(1989年)にも通ずるものがあるし、マイケルらしいセンチメンタリズムは「Loneliness Loves Me More」で表現されている。かと思うとDEMOLITION 23.時代に制作したと思われる「Relationship Wrecked」ではあの世界観がそのまま展開され、肩の力が抜けたパンクチューン「Rent Free」もある。うん、全体的に悪くないんですよね。突出した1曲はないんだけど、まったり楽しめる1枚という印象です。

で、問題なのは本編ラストのタイトルトラック「Peace Of Mind」。これ、いわゆるコラージュトラックなんですが……“心の平穏”というより“心の混沌”が表現された2分間なんですよね。ああ、そうか。本当の意味での平穏を取り戻すために、マイケルはここで混沌を吐き出さなくちゃいけなかったのか。バンド編成をとらずに大半の楽曲を自分で演奏したのは、そこに到達するための通過儀礼だったのか……そんなことを感じました。けど、ここでの吐露があったからこそ、続く『LIFE GETS YOU DIRTY』(1999年)で復活の狼煙が上げられたわけですもんね。

なお、本作は2000年にボーナストラック2曲を追加したリイシュー盤が海外でリリースされています。こちらにはスティヴ・ベイターズ(THE DEAD BOYS)がゲスト参加したRASPBERRIESのカバー「I Wanna Be With You」と、ソロ1stアルバム『NIGHTS ARE SO LONG』(1987年)収録曲「It's A Lie」のスティヴ・ベイターズ参加バージョンが追加されています。後者は今年発売されたマイケルのソロベスト『THE BEST』でも聴くことが可能です。

また、残念ながら本作はデジタル配信&ストリーミング配信されておりません。先の『THE BEST』には本作から「Where's The Fire John?」「Make It Go Away」、そしてボーナストラックの「It's A Lie (feat. Stiv Bators)」の3曲が収録されているので、まずはそこから触れてみてはどうでしょう。



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2017年9月 9日 (土)

MICHAEL MONROE『NIGHTS ARE SO LONG』(1987)

マイケル・モンローがソロ活動を開始してから、今年で30周年とのこと。この夏にはソロキャリアを総括した2枚組ベストアルバム『THE BEST』が発売され、12月には来日公演も控えています。そんなタイミングに、改めて彼のソロキャリアの原点を振り返ってみようということで、1987年リリースのソロ1作目『NIGHTS ARE SO LONG』を紹介します。

1985年のHANOI ROCKS解散を経て、マイケルはひとり渡米して音楽活動を模索します。そこで元THE DEAD BOYSのスティーヴ・ベイターズやE. STREET BANDのリトル・スティーヴンスとの出会いに刺激され、1987年にようやく初のソロレコードを完成させるわけです。

が、いざ蓋を開けてみると全10曲中オリジナル曲は3曲のみ(「Can't Go Home Again」「Too Rich To be Good」「Keep it Up」)。そのほかは次作『NOT FAKIN' IT』(1989年)でも再び取り上げるHEAVY METAL KIDS「She's No Angel」を筆頭に、THE DEAD BOYS、FLAMIN' GROOVIES、MC5、ジョニー・サンダースなどマイケルお気に入りのロックンロール/パンクナンバーがカバーされています。

ちなみに本作は、HANOI ROCKS時代のマネージャーが新たに設立したレーベルからのリリース。さらにレコーディングにはイアン・ハンター(Piano)などが参加しており、気心しれた面々のバックアップによってなんとかソロを軌道に乗せようとしていた節が感じられます。この時点ではまだいろいろと引きずるものもあったんでしょうね。

実際、その音も『NOT FAKIN' IT』以降と比べると非常にユルいもので、どこか初期〜中期のHANOI ROCKSにも通ずるものが。とはいえ、当時は「マイケル・モンロー、ついに復活!」ぐらいの勢いで飛びついたことを記憶しています。けど、そのユルさに(しかも世の中は世紀のメタルブームでしたし)ちょっとだけ落胆したっけ。

けど、今聴くとそのユルさ(=肩の力が入りすぎてない加減)が非常に心地よくて、これくらいのテンションでパンクの隠れた名曲たちをカバーしてくれると気軽に聴くことができるのもある。『NOT FAKIN' IT』が隙のない無敵さを誇る1枚だけに、両極端といえばそれまでですが、これもマイケル・モンローの持ち味なんだよな、とあれから30年経った今は非常に納得できるわけです。



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2017年6月21日 (水)

MICHAEL MONROE『SENSORY OVERDRIVE』(2011)

先日55歳の誕生日を迎えたばかりのマイケル・モンロー。再生HANOI ROCKS解散を経て、現在彼の活動拠点となるのが自身の名前を冠したMICHAEL MONROEというバンドです。今回紹介するのは、2011年春にリリースされたMICHAEL MONROE名義での1stアルバム(ソロとしては通算6枚目)。当時のメンバーはマイケルのほか、ジンジャー・ワイルドハート(G)、スティーヴ・コンテ(G)、サミ・ヤッファ(B)、カール・ロックフィスト(Dr)。ジンジャーは本作に伴う活動途中で、案の定バンドを離れています。

バンド編成になったからといって急激に音楽性が変わるわけもなく、ここで聴ける楽曲やサウンドは過去のマイケル・モンローを知る人なら納得の内容。パンクロックを通過した軽快なロックンロールがたっぷり詰め込まれています。HANOI ROCKSだろうがDEMOLITION 23.だろうが、なんでもあり。どの時代の曲と混ざり合っても違和感のない、普遍的なロックンロールソング集と言えるでしょう。

とはいえ、ソングライティングに携わる人間が変われば、そのテイストが多少異なる楽曲もいくつか含まれるわけで。本作でいえば、ポップなメロディを持つ「Superpowered Superfly」は明らかにジンジャーの手腕によるもの。この曲と「Later Won't Wait」はジンジャーが単独で書き下ろしたもので、「Later Won't Wait」もどこかTHE WiLDHEARTSやその他ジンジャーが携わってきたバンドに共通するストレンジさが含まれており、それがマイケルの個性とぶつかり合うことで生じた化学反応を楽しむことができます。

こういった新境地もいくつか含まれていたことから、個人的には「MICHAEL MONROE、これから面白くなるんじゃね?(但しジンジャーが抜けなければ)」と思っていたのですが……さすがに2枚目はなかったと。ただ、次は次で面白いコラボレーションが生まれるので、また別の意味でワクワクしたわけですが。

ちなみに、ジンジャーの後釜としてバンドに加わったのが、当時BACKYARD BABIESが活動休止中だったドレゲン。マイケルとBYBは過去にコラボ経験があるとはいえ、この邂逅にはさすがに驚きました。

なお、本作の本編ラストに収められている「Debauchery As A Fine Art」は、前年に発表されたライブアルバム『ANOTHER NIGHT IN THE SUN: LIVE IN HELSINKI』に先行収録されていた「Motorheaded For A Fall」を改作したもの。基本構成は一緒ですが、このスタジオテイクにはオリジナルタイトルにその名が含まれていたMOTORHEADのレミーがゲスト参加しています。

2017年のこのタイミングに「マイケル・モンローってどんな人? どれから聴けばいいの?」と質問されたら、まずはこのアルバムをオススメすると思います。そこから新作まで順々に聴いてもいいし、過去をさかのぼってもいい。あるいは、HANOI ROCKSに進むのもアリ。本作を拠点にすれば、マイケルのどのキャリアにもたどり着けるはずです。



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2017年4月12日 (水)

MICHAEL MONROE『ANOTHER NIGHT IN THE SUN: LIVE IN HELSINKI』(2010)

2001年から始まった“再生”HANOI ROCKSが2009年に活動終了し、再びソロアーティストとして音楽活動を続けると思われていたフロントマンのマイケル・モンロー。しかし彼はあくまでバンドにこだわり、“MICHAEL MONROE”というバンドを組むことを決意するのです。あれですね、初期のアリス・クーパーがALICE COOPERという名前のバンドとして活動していたのと一緒で。MARILYN MANSONもある意味一緒だし。

2010年1月、マイケルのもとに集まったのは“再生”HANOI ROCKSには未参加だった旧友のサミ・ヤッファ(B)、THE WiLDHEARTSのシンガーとしてもお馴染みのジンジャー(G)、DANZIGへの在籍経験を持つトッド・ユース(G)、そしてDEMOLITION 23.のメンバーだったジミー・クラーク(Dr)という布陣。しかしリハーサル段階でジミーが脱退し、代わりにカール・ロックフィスト(Dr)が加入。続いて、そのカールを推薦したトッドもバンドを離れ、ある者には再結成したNEW YORK DOLLSのギタリストとして、またある者には菅野よう子とのコラボレーターとして知られるスティーヴ・コンテ(G)が加わり、第1期MICHAEL MONROEの布陣が完成します。

この第1期メンバーで制作したのが、今回紹介するライブアルバム『ANOTHER NIGHT IN THE SUN: LIVE IN HELSINKI』。本作は2010年6月7日にフィンランド・ヘルシンキのクラブでライブレコーディングされたもので、内容はHANOI ROCKSからソロ、DEMOLITION 23.とマイケルのキャリアを総括するオリジナルナンバーのほか、ジョニー・サンダースやTHE DAMNED、THE STOOGES、DEAD BOYSなどマイケルのルーツとして重要なバンドのカバー曲、そして新バンドMICHAEL MONROEとして制作中の新曲2曲を含む、“過去・現在・未来”をつなぐ豪華なセットリストとなっています。

個人的にはHANOI ROCKSと同じくらいTHE WiLDHEARTSのファンでもあるので、あのジンジャーがHANOI ROCKSの名曲たちをプレイするというだけで生唾モノ。楽曲は新曲含め、どれも“いかにもマイケル”といったものばかりなので、悪いわけがない。演奏も名うてのプレイヤーが揃っているので、タイトでカッコいい。“再生”HANOI ROCKS終了から間髪入れずに動いたことも功を奏し、マイケルの状態もベストに近いものと言えます。

まぁ本作は、翌2011年春にリリースされる1stスタジオアルバムへの前哨戦として録音されたもので、ここ日本では2010年8月の『SUMMER SONIC 10』に出演したことから、興奮冷めやらぬうちに出しておこうということで同年9月に先行リリースされたのでした(海外では10月発売)。そこから半年足らずで真の1stアルバム『SENSORY OVERDRIVE』が届けられるわけで、ファンの熱量を保つという意味でもこのライブアルバムは重要であり、“再生”HANOI ROCKSを終えて改めてマイケル・モンローというシンガーのキャリアを振り返るという意味でも非常に意味のある作品なのです。

それと「You're Next」と「Motorheaded For A Fall」と題された、『SENSORY OVERDRIVE』の片鱗を感じさせる新曲2曲の存在も重要です。「You're Next」はDEMOLITION 23.をよりタイトにさせたスタイルのロックンロールで、「Motorheaded For A Fall」はその名のとおりどこかMOTORHEADを彷彿とさせる疾走ナンバー。マイケルがMICHAEL MONROEで何をやろうとしてるのか、この2曲からも存分に伝わるはずです。ちなみに前者は『SENSORY OVERDRIVE』海外盤のボーナストラックとして、後者は「Debauchery As A Fine Art」と改名され、さらにかのレミー(MOTORHEAD)をフィーチャーした形で『SENSORY OVERDRIVE』に正式収録されています。



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2017年4月11日 (火)

DEMOLITION 23.『DEMOLITION 23.』(1994)

HANOI ROCKS以来のパーマネントなバンドとなるはずだったJERUSALEM SLIMが短期間で、しかもアルバム完成を待たずして空中分解してしまったマイケル・モンロー。傷心のまま再びソロに戻るのかと思いきや、懲りずに新たなバンドを結成します。

マイケル以外のメンバーは、JERUSALEM SLIMから引き続きサミ・ヤッファ(B)、元STAR STARのジェイ・ヘニング(G)、そしてジミー・クラーク(Dr)という布陣。もともとはニューヨークのクラブで演奏していたカバーバンドがベースになっており、それがそのままDEMOLITION 23.という名前のパーマネントなバンドへと進化していきます。そして1994年6月、日本先行リリースという形で“最初で最後の”アルバム『DEMOLITION 23.』が発表されました。

JERUSALEM SLIMではかっちり作り込まれたLAメタル的サウンドが特徴でしたが、DEMOLITION 23.ではマイケルのルーツであるパンクロックに再びフォーカスを当てています。サウンドも生々しくてルーズなものばかり、楽曲も非常にシンプルでわかりやすさ重視といった印象。『NOT FAKIN' IT』にも参加していたリトル・スティーヴンスもプロデュース&曲作りに加わっていることから、『NOT FAKIN' IT』をよりラフにした作風、といえばわかりやすいかもしれませんね。

また、カバー曲も「Ain't Nothin' To Do」(DEAD BOYS)、「I Wanna Be Loved」(ジョニー・サンダース)、「Endangered Species」(UK SUBS)と、バンドとしてのコンセプトが非常にわかりやすいものばかり。さらにJERUSALEM SLIM時代に制作された「The Scum Lives On」も、DEMOLITION 23.の手にかかるとSEX PISTOLS的なカラーへと一変しています。

1本筋の通った男気溢れるアルバムだけど、“これ!”といったキメの1曲がないのもまた事実。それもあってか、全体的にB級感が漂っており、初めてこのアルバムを聴いたときは「もう表舞台に舞い戻るのは無理かも……」とちょっとだけガッカリしたものです。決して悪くはないんだけど、ベストでもない。この作風自体が、当時のマイケルの心情を表しているようで、なんとも言えない気持ちになります。

ちなみにDEMOLITION 23.にはその後、ジェイ・ヘニングに代わり元HANOI ROCKSのナスティ・スーサイドが加わるのですが、程なくして脱退。これによりバンドも短命で終わることになり、さらに傷心のマイケルは10年近く住んだニューヨークを離れ、故郷のフィンランドへ戻ることを決意するのでした。



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2017年4月10日 (月)

JERUSALEM SLIM『JERUSALEM SLIM』(1992)

2ndソロアルバム『NOT FAKIN' IT』がそれなりの成功を収め、またHANOI ROCKSフォロワーたちのおかげでその名をより広めることができたマイケル・モンロー。しかし、アルバムは成功したものの、バンド時代に得た充足感を当時のソロバンドメンバーから得ることができず、『NOT FAKIN' IT』に伴うバンドは解体。きっとソロツアーでナスティ・スーサイドと共演したことで、改めて自分の隣にはアクの強いギタリストが必要なんだと気付かされたんでしょうね。

さて、そんなマイケルが新たなパートナーとして白羽の矢を立てたのが、当時ビリー・アイドルのもとを離れてATOMIC PLAYBOYSとして活動していたギタリスト、スティーヴ・スティーヴンスでした。いやいや、アク強すぎだろ!?とツッコミを入れたくなったのは、ここだけの話です。

その頃からすでに「JERUSALEM SLIM」というプロジェクト名は挙がっており、これがそのまま新バンド名へと移行していきます。バンドのメンバーはマイケル、スティーヴのほか、HANOI ROCKS時代の盟友サミ・ヤッファ(B)、元SHARK ISLANDのグレッグ・エリス(Dr)。マイケル&サミはよいとして、それ以外の2人は完全にLA流れだよなぁ、合うのかなぁ……でも怖いもの見たさで、音も聴きたいしライブも観たいし。

確か1992年春発売の音楽誌『BURRN!』の表紙&巻頭インタビューをマイケル&スティーヴが飾り、いかに2人のケミストリーが素晴らしいものか、やっぱり俺には個性の強いギタリストが必要だったんだ的なことをマイケルが嬉しそうに話していた記憶があります。この時点で『ATTITUDE ADJUSTMENT』と題されたアルバムは完成間近、おそらく初夏にはリリースされるんだろうなと思っていました。

が、その後はご存知のとおり。スティーヴはマイケルのもとを離れ、HANOI ROCKS解散のきっかけを作ったヴィンス・ニール(当時は元MOTLEY CRUE)のソロバンドへと加わるのです。悪夢再び。マイケルは相当なショックを受け、最終的にJERUSALEM SLIMはアルバムの完成を待たずして正式に解散することとなるのです。

ところが、1992年10月に決定したマイケルの来日ツアー。おそらくこれ、当初はJERUSALEM SLIMのアルバムツアーとして計画されていたものだったと思うんです。しかしバンドはすでにない、アルバムもできてない。来日はするけどプロモーションするアイテムも何もない。じゃあ……ってことで、同時期に日本限定で発表されたのが、今回紹介するJERUSALEM SLIM唯一の音源であるアルバム『JERUSALEM SLIM』なのです。

プロデューサーに当時SKID ROWなどで知られていたマイケル・ワグナーを迎え制作された本作。こうやって聴くとほぼ完成してるじゃん!と不思議に感じるのですが、全11曲中正式なスタジオ音源は9曲、残り2曲は本編収録曲のデモトラックということで、おそらくはもう1〜2曲制作していたのかな、それらが完成する前にスティーヴがトンズラしちゃったのかな、なんて思うわけですよ。まぁ9曲でも十分に通用する内容だと思いますけどね。

マイケルにとっての前作『NOT FAKIN' IT』が“NYバージョン”だとすると、本作『JERUSALEM SLIM』は楽曲、演奏、アレンジ、質感すべてが“LAバージョン”と呼ぶにふさわしい内容。そしてバンドの作品、マイケルのアルバムというよりも“スティーヴ・スティーヴンスのアルバム”という印象も強い。もちろん大半の楽曲をスティーヴが手がけていたことも大きいけど、ここまでアクの強いギタープレイが全面的に押し出されているせいで、マイケルの印象が非常に薄いのです。ボーカルvsギターの対決に、完全に飲まれてしまっている。分が悪すぎるよさすがに。

「Criminal Instinct」みたいにダークな曲、「Gotta Get A Hold」「World Is Watching」みたいな泣きの曲はマイケルにも合ってる。けど、一番マイケルらしい楽曲が、実は「Teenage Nervous Breakdown」(LITTLE FEATのカバー)というのも納得というか悲しいというか……。

あと、アルバム前半はスティーヴ色濃厚、6曲目「Lethal Underground」以降はマイケル色強めという構成も興味深いかな。偶然そうなったのかもしれないけど、個人的には後半4曲が特にお気に入りです。中でも、KING CRIMSON「Epitaph」を彷彿とさせるラストナンバー「World Is Watching」は、スティーヴ相手じゃなければ間違いなく生まれていなかった1曲。ライブでは披露されることはないだろうけど、これを聴くことができただけでも、このマイケル的には不本意なリリースも意味があったんじゃないかな。

ちなみに本作、数年後には海外でもリリース済み。その際には日本盤未収録の「Scum Lives On」(のちに結成するパンクバンド、DEMOLITION 23.で再録音される「The Scum Lives On」の原曲。JERUSALEM SLIM版はどこかTHE WHOっぽさも感じられたり)が追加収録されています。やっぱり9曲で完成ではなかったのですね。

今では完全になかったことにされているJERUSALEM SLIM。マイケルとスティーヴの和解なんて考えられないし、今のマイケルを見ていたらJERUSALEM SLIMでやってたことを今再びやるなんて想像もつかないけど……本当に、一度だけでも観てみたかったです。



▼JERUSALEM SLIM『JERUSALEM SLIM』
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