カテゴリー「Michael Schenker Fest」の9件の記事

2022年7月28日 (木)

BLACK SWAN『GENERATION MIND』(2022)

2022年4月8日にリリースされたBLACK SWANの2ndアルバム。

ロビン・マッコーリー(Vo/MICHAEL SCHENKER FEST、ex. McAULEY SCHENKER GROUP、ex. GRAND PRIXなど)、レブ・ビーチ(G/WINGERWHITESNAKEなど)、ジェフ・ピルソン(B/FOREIGNER、ex. DOKKENなど)、マット・スター(Dr/MR. BIGエース・フレーリーなど)というクラシックメタル界のスーパープレイヤーたちが一堂に会し、2020年に1stアルバム『SHAKE THE WORLD』を発表したBLACK SWAN。デビュー作はロビン、レブ、ジェフの3人を軸にしたもので、レコーディング直前にマットが参加するという形でしたが、今作は初めて4人が膝を突き合わせて制作したものになります。

前作リリース後の早い段階から続く2ndアルバムの制作準備に取り掛かっていたそうで、今作も再びジェフ・ピルソンのプロデュースのもと彼のプライベートスタジオでじっくりレコーディングに取り掛かったそうです。

楽曲やサウンド自体は前作の延長線上にあるもので、その完成度はより高いものへと昇華。この4人が過去に参加したバンドのサウンド……80年代のスタジアムロック/ハードロックを、2020年代のクオリティでまとめ上げたのがこのアルバムではないでしょうか。

ロビンもまもなく70歳とは思えないほどのパワフルさを見せており、「これぞハードロックシンガー!」という代表例のような歌唱を楽しむことができます。マット&ジェフのリズム隊もヘヴィ&タイトで、非常に躍動感の強いものとなっており、その上で縦横無尽に弾き倒すレブのギタープレイも圧巻の一言。4人に求める要素がバランス良く、ひとつの漏れなく凝縮された奇跡の1枚だと思います。

豪快なアメリカンハードロックを軸に、要所要所で適度な湿り気を感じさせる楽曲群も2作目とあってか、より焦点が絞れたような印象も。個人的には「Eagles Fly」みたいなシャッフルビートの楽曲、WINGERを彷彿とさせるイントロのギタープレイとカラッとしていながらも色彩豊かなリフワークが耳に残る「See You Cry」あたりは、次作への可能性を感じさせる良曲ではと思っています。

とにかくこのバンド、レブのギターリフが素晴らしい。もちろん、よくありがちなフレーズの組み合わせではあるんだけど、それでも耳に残るってことはセンスが抜群なんじゃないかな。ちょっとした工夫でここまでのものが作れるのは、これぞ職人技といったところでしょうか。さらに、メロディラインもなかなかのもので、このへんはロビン、あるいはジェフの手腕によるものが大きいのかな。

すべて80点台の高クオリティなので、あとは90点超えのキラーチューンの誕生を待つだけ。これが意外と大変なんですよね……でも、このバンドなら次のアルバムあたりで「BLACK SWANの代表曲」と誰もが納得する1曲を作ってくれるはず。その期待も込めて、(もし点数を付けるとしたら)本作には総合で90点を与えたいな。

 


▼BLACK SWAN『GENERATION MIND』
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2022年7月26日 (火)

MICHAEL SCHENKER GROUP『UNIVERSAL』(2022)

2022年5月27日にリリースされた、MICHAEL SCHENKER GROUP名義での12thアルバム。

MSG名義では約13年ぶりだった前作『IMMORTAL』(2021年)から1年4ヶ月という、とても2020年代とは思えないほど短いスパンで届けられた新作は、MICHAEL SCHENKER FESTからの流れを考えると「おいおいレコード会社さんよ、老体に鞭打ちすぎじゃねえか?」とマイケル・シェンカーが再び心を壊さないかと心配になるほど。だって、MICHAEL SCHENKER FESTの1stアルバム『RESURRECTION』(2018年)から4作連続で1年半に満たないスパンで新作出し続けてますからね。

さて。MSG名義に戻ったからといって、やっていること自体はMICHAEL SCHENKER FESTと一緒。曲ごとにボーカルやリズム隊を変えながら、オムニバス感の強いテイストでアルバムは進行します。前作から引き続き、ロニー・ロメロ(Vo)が大半の曲で歌唱しているものの、例えばM-4「A King Has Gone」ではマイケル・キスク(HELLOWEEN)、M-5「The Universe」ではロニー&初代シンガーのゲイリー・バーデンのデュエット、M-7「Wrecking Ball」には前作にもゲスト参加したラルフ・シーパース(PRIMAL FEAR、ex. GAMMA RAY)、日本盤ボーナストラックのM-15「London Calling (Alternative Vocal Mix)」にはオリジナルバージョンのロニーに代わりマイケル・フォス(マイケル・シェンカーの別バンド・TEMPLE OF ROCKのシンガー)も名を連ねるなど、相変わらず節操なし(マイケル本人なのかレーベル側なのか)。

バリー・スパークス(B, Key)、ボブ・デイズリー(B/ex. RAINBOW、ex. GARY MOORE、ex. OZZY OSBOURNEなど)、バレンド・クルボワ(B/BLIND GUARDIAN)、サイモン・フィリップス(Dr)、ボド・ショプフ(Dr)、ボビー・ロンディネリ(Dr/ex. RAINBOW、ex. BLACK SABBATHなど)、ブライアン・ティッシー(Dr/THE DEAD DAISIES、ex. WHITESNAKE、ex. FOREIGNERなど)、スティーヴ・マン(Key)、トニー・カーレイ(Key/ex. RAINBOWなど)と、演奏陣もクラシックロックファンには豪華な布陣。特に今回は元RAINBOW組が多い印象を受けますが、実際曲/音を聴くとそれも納得といいますか。マイケル・シェンカーらしさが薄まっており、逆にRAINBOW的なカラーが強まっているんですよね。

思えば、ロニー・ロメロも現在RAINBOWのフロントマンですし……かつ、キスクやラルフが歌う曲までもがRAINBOWっぽいという。え、それでいいの? しかも2022年にこれやるの?っていうさ。

いやね、シェンカー自身がリッチー・ブラックモアへ敬意を表してこのアルバムを作ったというのならわかるよ。だとしても、タイミング的になぜ今?というのがまず引っかかるし。もはや、レコード会社の思惑が否が応でも見え隠れするわけです。

まあ、だとしてもこれが世界的に売れるのか?という話ですけどね(日本という特殊なマーケットのみをターゲットにしているのなら、なおさらバカにするな!と思いますが)。

楽曲に関しては、数回聴いて「もういいかな」と思えるものばかり。可もなく不可もなくという仕上がりで、突出した名曲は皆無。すべてが70点台の「よくあるRAINBOWフォロワー」的楽曲ばかりで、そこに申し訳程度にシェンカー節のギターソロが乗る。けど、そのソロ(やリフ)も近作の中ではもっとも精彩さを欠き、まじで印象に残らないものばかり。これだったらMcAULEY SCHENKER GROUPの諸作品を聴いているほうがマシだと思えるほどです。

本サイトでは、基本的に気に入ったものだけを紹介する方針なんですが、好きなアーティストがあまりにもな作品を作ったとあっては、やはり声として記録を残しておかなければと思い執筆しました。これで満足する一定層がここ日本に存在していることは重々承知していますが、今やサブスクで簡単にフル試聴できてしまう時代。昔みたいなハッタリはかませません。

こんな時代だからこそ「短いスパンで新作を」と思いがちですが、本来は逆では? こんな時代だからこそ、時間を気にせずに良作作りに励んでもらいたいところです。シェンカーよ、まだ行けるでしょ?

 


▼MICHAEL SCHENKER GROUP『UNIVERSAL』
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2021年2月 2日 (火)

MICHAEL SCHENKER GROUP『IMMORTAL』(2021)

2021年1月29日にリリースされた、MICHAEL SCHENKER GROUP名義での11thアルバム。前作がゲイリー・バーデン(Vo)と組んだ『IN THE MIDST OF BEAUTY』(2008年)とのことなので、約13年ぶりということになります。といっても、マイケル・シェンカー(G)自身は現在MICHAEL SCHENKER FESTとしても活動しているので、そこから数えると『REVELATION』(2019年)から1年4ヶ月ぶりの新作。ここ数年、かなりハイペースで制作していますね。

さてさて。MSG名義としては1980年のデビューから約40年、シェンカー自身も音楽活動を開始してから50年という節目のタイミングということもあって、今回はMSG名義での制作となったようですね。ところが、いざ蓋を開けてみるとあまりMSGである意味が感じられないというか……ぶっちゃけ、MICHAEL SCHENKER FESTとの差別化をあまり意識していないんじゃないか、という印象を受けます。

それもそのはず、アルバム自体複数のボーカリスト、バンドメンバーと制作しているんですから。過去のMSGのように固定メンバーでアルバムまるまる1枚作るという発想は、もはやシェンカーの中には存在しないのではないでしょうか。

歌い手に関してはTEMPLE OF ROCKでタッグを組んだマイケル・ヴォスやFEST参加のロニー・ロメロといったおなじみの面々に加え、ラルフ・シーパース(PRIMAL FEAR、ex. GAMMA RAY)、ジョー・リン・ターナー(ex. RAINBOWなど)という過去にはありえなかった人選。さらにSCORPIONS「In Search Of Peace Of Mind」のセルフカバーにはロニーのほかゲイリー・バーデン、ドゥギー・ホワイト、ロビン・マッコーリーという過去バンドに携わった/現在FESTにも名を連ねるオールスターズが勢揃い。ゲイリー・バーデンをメインに使わないのは良しとして(笑)、彼とはFESTで活動を共にしているからあえてMSGからは外したってことなんですかね。だとしても、それはMSGなのかって話ですが。

演奏陣もバリー・スパークス(B)、サイモン・フィリップス(Dr)、ボド・ショプフ(Dr)、ブライアン・ティッシー(Dr)、スティーヴ・マン(Key)、デレク・シェリニアン(Key)という興味深いメンツが参加。デレクは意外なところですね。ちなみに、サイモンは先のSCORPIONSのセルフカバーのみ参加です。

サウンドや楽曲の質感自体は、先にも書いたようにFEST寄りの80年代後半以降の正統派HR/HM。キラキラした質感やモダンなテイストは、初期MSGのそれとは結びつかないものばかりですが、だからといって楽曲自体が優れていないわけではなく、どれも非常によく作り込まれたHR/HMチューンばかり。そういう楽曲なもんだから、ラルフがあのメタリックな高音で歌えばそれっぽく仕上がるし、ジョーが歌えば彼が参加した過去のバンドっぽくも聴こえる。だけど、楽曲の軸やギタープレイ自体はシェンカーそのもので、ドキッとさせられたり惹きつけられたりするポイントは思った以上にたくさんありました。

そんな中、後半に入り「The Queen Of Thorns And Roses」や「Come On Over」あたりからは初期のMSGっぽさ(後者はMICHAEL SCHENKER GROPというよりはMcAULEY SCHENKER GROUPっぽいかもしれませんが)も表出している。で、そういう楽曲をマイケル・ヴォスやロニー・ロメロという安心安定のシンガーが歌うというのも非常に腑に落ちるという。あと、ジョーが歌う「Sangria Morte」もMSGとRAINBOWの中間ぽくて好印象。リフワークやソロは完全にシェンカーそのものですが。

結局ね、聴く前は「なんでこれをMSG名義でやるかなあ」と貶そうくらいの気持ちでいたんですが、最初に聴き終えたときに満喫しまくっている自分に気づいたんです。ああ、いいアルバムだなあって。そういうことなんです。名前や枠やガワなんて今のシェンカーにはどうでもよくて、中身こそがすべてなんだと。本当にいいHR/HMアルバム、それで十分です。

 


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2020年8月 4日 (火)

ALCATRAZZ『BORN INNOCENT』(2020)

2020年7月末にリリースされたALCATRAZZの4thアルバム。『DANGEROUS GAMES』(1986年)以来、実に34年ぶり(!)のニューアルバムです。

『NO PAROLE FROM ROCK'N'ROLL』(1983年)ではイングヴェイ・マルムスティーン、『DISTURBING THE PEACE』(1985年)ではスティーヴ・ヴァイというクセの強いギタリストを迎えてきたALCATRAZZ(というかグラハム・ボネット)。『DANGEROUS GAMES』ではダニー・ジョンソンという前任2名と比べるとネームバリューもカリスマ性も劣る人選だったためか、バンドは同作を最後に解散することになります。

その後、2006年に再結成してからはハウイー・サイモンを迎えてライブ活動を行っていましたが、2019年にジョー・スタンプという技術的にも知名度的にも文句なしのアックスマンが加入。ゲイリー・シェア(B)やジミー・ウォルドー(Key)といったオリジナルメンバー、そしてマーク・ベンケチェア(Dr)という新編成でオリジナルアルバム完成へと至るわけです。

気になる内容ですが、ネオクラシカルを基盤にした「いかにもグラハム・ボネットらしい」ハードロックが展開されています。ALCATRAZZらしいと言えば「らしい」仕上がりですし、別にALCATRAZZ以外の名前で発表されたとしても「グラハム・ボネットが関わったバンド」として捉えたら納得のいく内容ではないでしょうか。つまり、ALCATRAZZでデビューして以降のグラハムは常にこういった楽曲スタイルが求められ続けてきた、という表れかもしれません。そういう意味では、文句なしに満足できる「HR/HMの良作」だと断言できます。

ジョー・スタンプのプレイはどうかといいますと、「London 1666」や「Darkness Awaits」などではジョー・スタンプらしいテク&フレーズ炸裂のリフ&ソロワークを楽しむことができます。が……実は日本盤ボーナストラック含む全15曲中、6曲でゲストギタリストをフィーチャーしており、せっかくの見せ場が少なくなっている気がしないでもありません。だって、タイトルトラック「Born Innocent」にはクリス・インペリテリ、「Finn McCool.」には若井望、「I Am The King」にはボブ・キューリック(R.I.P.)などが参加しているわけですから。それでも、クセの強いゲストに負けない個性を発揮しているので、最後まで安心して楽しめるのではないでしょうか。

とにかく本作、34年ぶりの新作というお祭り感が強く、スティーヴ・ヴァイが「Dirty Like The City」の作曲に携わったのに加え、RIOTRIOT Vのドン・ヴァン・スタヴァン(B)やMICHAEL SCHENKER FESTのスティーヴ・マン(今回はブラス・アレンジ)などもゲスト参加。その他のゲストプレイヤー含め、グラハムとALCATRAZZを祝福するような豪華な仕上がりとなっています。その結果が全15曲で68分半という長尺にも表れているのでしょう。海外盤は「Darkness Awaits」と「Reality」を除く13曲入りで60分以内に収まっていますが、はやり長すぎて1曲1曲のインパクトが薄まってしまっているのは否めません。特にその感覚は、後半に進めば進むほど……絞りに絞って、全10曲くらいのコンパクトな内容だったら、もっと手放しで喜べたんですけどねえ。

まあ、だからといって捨て曲が含まれているわけではないので、ここからじっくり時間をかけて、すべての曲を堪能できればと思います。良い曲が多いというのも困りものですね(苦笑)。

 


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2020年2月20日 (木)

BLACK SWAN『SHAKE THE WORLD』(2020)

BLACK SWANが2020年2月中旬に発表したデビューアルバム。日本盤は海外に数日遅れでリリースされています。

BLACK SWANはロビン・マッコーリー(Vo/MICHAEL SCHENKER FEST、ex. MCAULEY SCHENKER GROUPなど)、レブ・ビーチ(G/WINGERWHITESNAKEなど)、ジェフ・ピルソン(B/FOREIGNER、ex. DOKKENなど)、マット・スター(Dr/MR. BIGエース・フレーリーなど)という80年代以降のHR/HMシーンにてたびたび名前を目にする名手たちが一堂に会した“スーパーバンド”のひとつ。昨年の今頃、ジェフがこのバンドについて言及する場面があったそうで、もともとはロビン、レブ、ジェフの3人で進めていたプロジェクトからマットに声がかかり、その数日後にはレコーディングに参加したとのこと(すでにドラム以外のパートはレコーディング済みだったそう)。

ソングライティングは上記のようにマット以外の3人で進めたのでしょう。一体この3人でどんな曲/音が作れるのか……要はMSGとWINGERとDOKKENですからね。80年代的なスタジアム・ハードロックを想像した人、ある意味正解です。けど、思ったよりも湿り気の強いメロディの正統派HR/HMだったのは、良い意味で予想を裏切ってくれてうれしかったな。

ロビンの哀愁味が強い歌声を前面に打ち出しつつ、メジャー感の強いHR/HMを表現する。もちろん、親しみやすい歌メロを備えつつ、楽器隊(主にギター)の派手さを見せることも忘れない。BON JOVIやWHITESNAKE、DEF LEPPARDなどがヒットチャートを席巻した80年代後半のUSメタルシーンを彷彿とさせる楽曲群はどれもクオリティが高いもので、ぶっちゃけ2020年の今これをやる必要があるのか?と疑問を感じることもゼロではありませんが、“やれる”人たちが“やるべきこと”をやっただけのこと。逆に、“やれる”人たち今これをやっていないから、彼らがやったと考えればいいわけで、こういったバンドが今誕生してこういうアルバムを世に放ったことは必然だったのです。

マイナーキーのミドルナンバー中心ながらも、シャッフルビートが心地よい「Big Disaster」、疾走感の強い「Shake The World」や「Unless We Change」、HEARTにも通ずるポップバラード「Make It There」、じっくり聴かせるスローナンバー「Divided/United」など楽曲も緩急に富んでいる。全11曲(日本盤ボーナストラック除く)で約57分と決して短くなないトータルランニングながらも、最後まで飽きずに楽しめるのは1曲1曲の完成度の高さや個性が際立っているからこそ。さすが職人!と納得してしまう高品質の1枚です。

ロビンはMSFではゲイリー・バーデンやグラハム・ボネットに次ぐ3番手だし、レブはWHITESNAKEでは常に2番手的扱いで、ジェフは現在のFOREIGNERでも裏方的印象が強い。マットもMR. BIGではパット・トーピーのサポートという意味合い濃厚だったので、全員が現在のシーンの中で“日陰”的存在なわけです。そういった人たちがBLACK SWAN(=黒い白鳥、コクチョウ。「予測できないことが出来事が起こる」の意)という名前で再び日陽に飛び出していく。そりゃ応援したくなりますよね。各メンバーとも自身のメインバンドでの活動が忙しいので、ツアーや来日公演などは今のところ望めそうもありませんが、ぜひ機会があったら一度ライブを観てみたいものです。きっとそのときは、各バンドのカバーもあるでしょうしね(笑)。

 


▼BLACK SWAN『SHAKE THE WORLD』
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2019年9月11日 (水)

MICHAEL SCHENKER FEST『REVELATION』(2019)

マイケル・シェンカー(G)率いるスーパープロジェクト、MICHAEL SCHENKER FESTの2ndアルバム。CDリリースは2019年9月20日のようですが、Spotifyでは8月下旬からアルバムが先行配信されているので、今回はCD発売に先駆けてこちらを聴いた感想を書いていきたいと思います。

前作『RESURRECTION』(2018年)から1年半強という短いスパンで届けられた本作。参加メンバーは基本的に変わっておらず、ボーカリストはゲイリー・バーデン、グラハム・ボネット、ロビン・マッコーリーというMSG(MICHAEL SCHENKER GROUPおよびMcAULEY SCHENKER GROUP)組にMICHAEL SCHENKER'S TEMPLE OF ROCKからドゥギー・ホワイトを加えた4人編成。ただ、演奏組に変化が生じております。

ご存知のとおり、テッド・マッケンナ(Dr)が今年1月に急逝。これを受けて、レコーディングでは名手サイモン・フィリップス(MICHAEL SCHENKER GROUPの1stアルバム制作に参加)とボド・ショプフ(ex. McAULEY SCHENKER GROUP)の2名がプレイ。もちろん、クリス・グレン(B)とスティーヴ・マン(G, Key)も変わらず参加しております。

また、今回はゲストとして“第5のシンガー”(笑)ロニー・ロメロ(RAINBOW、DESTINIA)が1曲「We Are The Voice」で歌唱。さらに、日本盤のみのボーナストラック「The Beast In The Shadows feat. Akira Takasaki / Loudness」(グラハム・ボネット歌唱曲)でLOUDNESSの高崎晃(G)がギターソロを披露しています。うん、豪華豪華。

楽曲を聴く限りでは、基本的には前作の延長線上にあると言えるでしょう。ただ、前作よりも肩の力が抜けた印象も受けます。それって悪く言えばマンネリ化していると捉えられるところで、僕も1曲目「Rock Steady」(4人歌唱曲)を聴いたときは「あれっ、もしかして今回は……」と不安になりかけたのですが、全体的にはそんなこと全然ありませんでした。

方向性的にはMcAULEY SCHENKER GROUP以降のモダンさを強めたもので、あまり古臭さは感じない……かな? もちろん、昨今のモダンメタルと比べたら幾分年寄り臭いですけど、そこは聴き手の価値観に委ねるとして……僕は前作以上にスルスルと聴き進められました。

ただ、前作では歌い手に合わせて曲をセレクトしていたように感じられたのですが、本作ではそのへんがちょっと曖昧になり始めているかもしれません。そういった意味では、意外性のある1枚とも言えるのかな。これはこれでアリだと思います。

ゲストのロニー・ロメロも“らしさ”全開で好印象。ただ、本家4人の歌が2作目にして早くも馴染み始めているのに対して、ロニーの歌は良い意味での異物感を放っているのが興味深いかな。全体を通して良いアクセントになったんじゃないかと思います。

本編ラストに収められたインスト「Ascension」も非常にアグレッシヴですし、全体的に“攻め”の1枚なのかな。となると、俄然ライブが楽しみになってくるのですが……来日は早くても来年かな。うまくスケジュールを調整してもらって、今度は単独公演で戻ってきてもらいたいですね。

 


▼MICHAEL SCHENKER FEST『REVELATION』
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2018年12月26日 (水)

2018年総括(番外編):HR/HM、ラウドロック編

隔月の奇数月に「リアルサウンド」さんにて、HR/HMやラウドロックの新譜キュレーション記事を書いているのですが、2018年のまとめ記事となる年間ベスト10紹介エントリー「西廣智一が選ぶ、2018年ラウドロック年間ベスト10 ネガティブな話題の中にも豊作が揃った1年」が12月25日に公開されました。

基本的には順位を付けるのは苦手なのですが、ここでま毎回思い切って1位から10位まで順番をつけて10枚紹介しています。今年に関しては上位3作品に関しては不動なのですが、4位以降は日によって変動があると思うので、セレクトの際に泣く泣く10枚から落とした準候補10枚を加えた20枚を紹介する意味で、SpotifyとApple Musicに記事と同名のプレイリストを作成しました。

改めて、20枚を紹介しておきますね(基本的には順位は付けていませんが、先のリアルサウンドさんで1〜10位と順位付けしているため、便宜上20までナンバリングしておきます)。


01. DEAFHEAVEN『ORDINARY CORRUPT HUMAN LOVE』(レビュー
02. VOIVOD『THE WAKE』(レビュー
03. ALICE IN CHAINS『RAINIER FOG』(レビュー
04. Crystal Lake『HELIX』
05. AZUSA『HEAVY YOKE』(レビュー
06. IHSAHN『ÁMR』(レビュー
07. JUDAS PRIEST『FIREPOWER』(レビュー
08. SIGH『Heir to Despair』
09. LOVEBITES『CLOCKWORK IMMORTALITY』(レビュー
10. ARCHITECTS『HOLY HELL』(レビュー
11. CORROSION OF CONFORMITY『NO CROSS NO CROWN』(レビュー
12. FEVER 333『MADE AN AMERICA』(レビュー
13. GHOST『PREQUELLE』(レビュー
14. THE STRUTS『YOUNG & DANGEROUS』(レビュー
15. MANTAR『THE MODERN ART OF SETTING ABLAZE』
16. NINE INCH NAILS『BAD WITCH』(レビュー
17. NOTHING『DANCE ON THE BLACKTOP』(レビュー
18. SHINEDOWN『ATTENTION ATTENTION』(レビュー
19. SLEEP『THE SCIENCES』
20. CHTHONIC『BATTLEFIELDS OF ASURA』


最初の10曲が「リアルサウンド」さんで紹介した10枚から。一応順位どおりに楽曲を並べています。で、後半の10曲が選から漏れた10枚から。こちらは基本的には順不同ですが、まあ大体こんな並びかなと。基本的には当サイトで紹介した作品、あるいはキュレーション連載で紹介した作品ばかりですが、個人的にはこういう1年だったのかなとこれを聴いて振り返っているところです。

せっかくなので、この20枚から漏れた「今年よく聴いたHR/HM、ラウドロック系アルバム」も紹介しておきます。こちらはアルファベット順に並べています。


・BEHIMOTH『I LOVED YOU AT YOUR DARKNESS』
・BURN THE PRIEST『LEGION: XX』(レビュー
・COHEED AND CAMBRIA『THE UNHEAVENLY CREATURES』
・Crossfaith『EX_MACHINA』
・DIMMU BORGIR『EONIAN』(レビュー
・DIR EN GREY『The Insulated World』
・Graupel『Bereavement』
・GRETA VAN FLEET『ANTHEM OF THE PEACEFUL ARMY』(レビュー
・HALESTORM『VICIOUS』(レビュー
・HER NAME IN BLOOD『POWER』
・JONATHAN DAVIS『BLACK LABYRINTH』(レビュー
・LOUDNESS『RISE TO GLORY -8118-』(レビュー
・MICHAEL SCHENKER FEST『RESURRECTION』(レビュー
・OBSCURA『DILUVIUM』
・A PERFECT CIRCLE『EAT THE ELEPHANT』
・SAXON『THUNDERBOLT』(レビュー
・SHINNING『X - VARG UTAN FLOCK』
・SKINDRED『BIG TINGS』(レビュー
・SURVIVE『Immortal Warriors』
・THERAPY?『CLEAVE』(レビュー
・U.D.O.『STEELFACTORY』(レビュー
・UNITED『Absurdity』
・VENOM『STORM THE GATES』(レビュー
・陰陽座『覇道明王』

2018年3月 1日 (木)

MICHAEL SCHENKER FEST『RESURRECTION』(2018)

さて、昨日からの続きです。

2016年のヨーロッパでのフェス出演、および日本での奇跡の来日公演でMICHAEL SCHENKER FESTというプロジェクトに手応えを感じたマイケル・シェンカーは、2017年に入ってから同メンツでのアルバム制作に乗り出します。確かに、それが実現したら最高だなと思うわけですよ。

しかも、ゲイリー・バーデン、グラハム・ボネット、ロビン・マッコーリーというMSG(MICHAEL SCHENKER GROUPおよびMcAULEY SCHENKER GROUP)のシンガー3人だけでなく、現在マイケルが活動の主としているMICHAEL SCHENKER'S TEMPLE OF ROCKの現シンガーであるドゥギー・ホワイトまで加えた4人ボーカル編成でのアルバム作りですよ……正直、「うまくいくの、それ?」と不安に思ったわけですよ。

アルバムをほぼ完成させ、その流れでドゥギーを除くMICHAEL SCHENKER FESTの面々(2016年と同じ編成)は2017年10月、『LOUD PARK 17』2日目のヘッドライナーとして来日。そして年が明けた2018年2月末、ついにアルバムはリリースされました。

実はこのアルバム、雑誌のレビュー向けにひと足先に聴かせてもらってました。そこで僕は、短いながらも下記のようなテキストを用意しました。


マイケル・シェンカーが歴代ボーカリストと現行バンドのシンガーの計4名を迎え制作した異色のスタジオアルバム。完全オリジナル作品ながらも、“フェスト=祭典”というワードを含むプロジェクト名どおり彼の全キャリアが総括されたお祭り的内容は圧巻の一言。各シンガーの特性が見事に使い分けられている点もさすがだが、シェンカーの作曲能力やギタープレイがここにきて新たな黄金期に突入していることにも驚かされる。


いや、本当にこれ以上書きようがないくらい、良いんですよ。楽曲面も過去にシェンカーが関わってきたバンドを総括するかのようであり、それでいて今のTEMPLE OF ROCKにも匹敵する良質のHR/HMが展開されている。曲によって4人のシンガーがパートごとに歌い分けていたり、あるいは1曲まるまる歌っていたり、あるいはあるいは豪華な面々によるバッキングコーラスがあったりと。これ、世が世なら“マイケル・シェンカー版HEAR 'N AID”として機能してたんじゃないかな。そう思えるぐらい、夢の競演であり、サプライズ感満載の1枚なんです。

しかも、シェンカーのギタープレイも冴えまくっている。昨年秋の段階ではそこまで彼の近況に明るくなかった僕ですが、あれから数ヶ月でかなり勉強しました。過去作はもちろんのこと、近年の作品も聴き漁り、見事にハマってしまいました。だからこそ、このタイミングにこんな豪華な布陣を迎え、彼のキャリア中でもトップクラスの作品を生み出すことができて、なんとも幸せなことじゃないですか……今がベスト、本当にそのとおりだと思います。

過去にマイケル・シェンカーの楽曲やアルバム、プレイに心を動かされたことのある人なら、間違いなくピンとくる1枚。それがこの『RESURRECTION』というアルバムだと断言できます。いやあ、年始早々に最高なアルバムに出会えた僕も、本当に幸せな気分でいっぱいです。



▼MICHAEL SCHENKER FEST『RESURRECTION』
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2018年2月28日 (水)

MICHAEL SCHENKER FEST『LIVE: TOKYO INTERNATIONAL FORUM HALL A』(2017)

オリジナルアルバム『RESURRECTION』をリリースするマイケル・シェンカーの最新プロジェクトMICHAEL SCHENKER FEST。このアルバム制作のきっかけとなったのが、2016年に行われたMICHAEL SCHENKER FEST名義でのライブです。初夏にヨーロッパのフェスへ出演するのを機にスタートしたこのプロジェクトは、そのまま8月に日本上陸。僕が来日を知った頃にはすでにチケットはソールドアウトしており、残念ながらこのときは観ることができませんでした。が、翌2017年10月には『LOUD PARK 17』の2日目ヘッドライナーとして再びMICHAEL SCHENKER FESTとして来日。このときは僕も無事観ることができ、前回とは異なるセットリストで楽しませてくれました。

今回紹介するのは、2016年8月24日の東京国際フォーラム ホールA公演の模様を完全収録したもの。国内盤は2枚組CDとDVD&Blu-ray、海外盤は2CD+DVDのセットと2CD単品、Blu-ray単品がそれぞれ発売されています。Blu-rayのクリアな映像で楽しめるのはありがたいですが、僕は安価で音源と映像が楽しめる海外盤2CD+DVDのセットを購入しました。

言うまでもなく、MICHAEL SCHENKER FESTはゲイリー・バーデン、グラハム・ボネット、ロビン・マッコーリーというMSG(MICHAEL SCHENKER GROUPおよびMcAULEY SCHENKER GROUP)に在籍した3人のシンガーが一堂に会して、それぞれが在籍した期間の楽曲を披露していくというスタイル(デレク・セント・ホルムスやレイ・ケネディといった人たちはこの際無視しておきましょう)。2016年も2017年も同様の形で、その登場順は在籍順(ゲイリー→グラハム→ロビン)となっており、在籍期間や制作アルバムの枚数などにより披露する楽曲数も異なります(当然のようにゲイリーが一番多く、1枚のみのグラハムは3曲のみ。とはいえロビンも自身の楽曲は3曲のみで、そこにUFOの楽曲を歌うことで歌唱曲数を増やしています)。

バックを支えるのはクリス・グレン(B)、テッド・マッケンナ(Dr)のMICHAEL SCHENKER GROUP組と、スティーヴ・マン(G, Key)というMcAULEY SCHENKER GROUP組。下手にポール・レイモンドやサイモン・フィリップスに声をかけないところがさすがです。

さて、長々と解説を書いてきましたが……これまで熱心にMSGを聴いてこなかった僕でも知っている曲ばかりだし、各ボーカリストもそれぞれ味わい深さ(特にゲイリー)や圧倒的な存在感(特にグラハム)や意外な現役感(主にロビン)をアピールする素晴らしい歌唱を聴かせてくれる。が、何よりすごいのがマイケル・シェンカーのギターでしょう。『LOUD PARK 17』のレポートにも書きましたが、とにかくこの人のギタープレイは今がベストじゃないかと思っていしまうほど生き生きとしている。プレイスタイル的にも音色的にも非常にバランスが良く、MSG初期の楽曲と「Love Is Not A Game」みたいな80年代後期のポップメタルが並んでも、ギタープレイ的には違和感を受けることは皆無。冒頭のインストナンバー「Into The Arena」からして圧巻だし、「Captain Nemo」や「Save Yourself」のソロワークも決してダレることなく、適度な緊張感が備わっている。だからこそ、ラストのUFO「Doctor Doctor」の泣きのフレーズとは相反して、シンガー衆(主にゲイリーとグラハム)のお気楽な歌いっぷりの落差に苦笑してしまうのですが。まあ自分の持ち曲じゃねえし知らねーよ、ってとこなんでしょうか。その一方で、一生懸命歌おうとするロビンの献身ぶりは涙なしで観ること(聴くこと)ができません(若干誇張してますが)。

Spotifyでは配信されていない本作の音源ですが、Apple Musicでは無事聴くことができるので、まだ買おうか迷っている人はぜひ一度チェックしてみてください。それで気に入ったら、ぜひ映像版にも手を出してみることをオススメします。オールドファンはもちろんのこと、若年層にもこの素晴らしいギタリストのことを2018年というこのタイミングにしっかり知ってほしいので。

そして、本作が気に入ったら迷わずオリジナルアルバム『RESURRECTION』のチェックもお忘れなく。ひと足先に聴かせてもらいましたが、“らしさ”満載の素晴らしい出来ですので。このアルバムを提げて、ぜひ3年連続でFESTでの来日にも期待したいですね。

ということで、明日は続いてMICHAEL SCHENKER FESTのオリジナルアルバム『RESURRECTION』について触れたいと思いますので、お楽しみに。



▼MICHAEL SCHENKER FEST『LIVE: TOKYO INTERNATIONAL FORUM HALL A』
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