STRYPER『TO HELL WITH THE DEVIL』(1986)
1986年10月24日にリリースされたSTRYPERの2ndフルアルバム。日本盤は同年11月21日発売。
全米84位を記録&50万枚以上を売り上げ、彼らの人気を決定づけた前作『SOLDIERS UNDER COMMAND』(1985年)から1年5ヶ月で届けられたスタジオアルバム。名バラード「Honestly」が全米23位という好記録を樹立したこともあり、本作は最高32位まで上昇し、100万枚を超えるキャリア最大のヒット作となりました。
スピードチューン「Soldiers Under Command」から始まった前作から一変、今作は仰々しいイントロダクション「Abyss (To Hell With The Devil)」に続いてミドルヘヴィのタイトルトラック「To Hell With The Devil」で幕開け。続くキャッチーな「Calling On You」、哀愁味の強いキラーチューン「Free」とミディアムテンポの楽曲で序盤が固められています。さらにそこからバラード「Honestly」へと流れる構成含め、アルバム前半の聴きやすさでリスナーを一気に引き込むことに成功。そりゃ売れるわと納得させられます。
かと思えば、中盤にはオズ・フォックス(G)が書き下ろした前のめりなアップチューン「The Way」でヘヴィメタルバンドらしさを追求し、打ち込みベースを同期させたミドルヘヴィ「Sing-Along Song」、爽快感の強いハードロックナンバー「Holding On」で緩急を付ける。そこから再びヘヴィなスピードナンバー「Rockin' The World」で勢いを付けたかと思えば、讃美歌のようなスローバラード「All Of Me」で空気を一変させ、最後はストレートなメタルチューン「More Than A Man」で締めくくり。全11曲/41分があっという間に感じられるほど夢中になれる、非常に完成度の高い1枚です。そりゃ売れるわと納得させられます(二度目)。
いわゆるグラムメタル/ヘアメタルに分類されるバンドの中でも、比較的ヘヴィメタル度の高いサウンド/楽曲が多い彼らですが、本作では元来持ち合わせていたポップ感が一気に開花。それが「Calling On You」や「Honestly」のようなメジャーチューン、「Free」や「To Hell With The Devil」みたいなマイナーキーの楽曲に集約されているのではないでしょうか。それをマイケル・スウィート(Vo, G)の伸びやかなボーカルで表現することにより、嫌味なく楽しめることができるのは改めてすごい才能です。そりゃ売れるわと納得(三度目)。
加えて、彼らは敬虔なクリスチャンということで、歌詞などでキリスト教への信仰の強さが示されている。いわゆるクリスチャンメタルと呼ばれるジャンルの先駆者なわけですが、宗教観にそこまで意識的ではない日本人にとっては純粋に楽曲そのものが評価された……と、筆者は当時を振り返り、そう記憶しています。うん、単純に曲が良くて聴きやすかったんですよ。
今聴くとサウンド的に多少の古臭さも否めませんが、楽曲の良さは決して色褪せない。そんな80年代後半を代表する“マスト”な1枚です。
▼STRYPER『TO HELL WITH THE DEVIL』
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