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2022年6月16日 (木)

SHERYL CROW『SHERYL: MUSIC FROM THE FEATURE DOCUMENTARY』(2022)

2022年5月6日にリリースされたシェリル・クロウの最新コンピレーションアルバム。日本盤は同年5月18日発売。

本作は今年3月11日にアメリカのカルチャーコンベンション『SXSW』にてプレミアム公開され、5月6日に米・テレビネットワークSHOWTIMEにて放送されたドキュメンタリー映画『SHERYL』にあわせて制作された、サウンドトラック的立ち位置のベストアルバム。映画では1993年のメジャーデビュー以降に直面した性別や年齢での差別、うつ病やがんとの対峙など名声の代償と戦いながら才能を発揮していく彼女の約30年間を追った内容とのことです。

1962年生まれのシェリルが正式デビューしたのは、1993年8月発売のアルバム『TUESDAY NIGHT MUSIC CLUB』にて。当時、すでに31歳と遅咲きの印象ですが、このアルバムから生まれた「All I Wanna Do」(全米2位)、「Strong Enough」(同5位)の大ヒットが手伝い、アルバムも最高3位、アメリカだけで700万枚を超えるメガヒット作となりました。続く2ndアルバム『SHERYL CROW』(1996年)も全米6位/300万枚以上のヒットを記録し、このコンピレーションアルバムのオープニングを飾る代表曲のひとつ「If It Makes You Happy」(全米10位)や日本のテレビCMソングでもおなじみの「Everyday Is A Winding Road」(同11位)などを輩出しました。さらに、この時期には映画『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年)の主題歌「Tomorrow Never Dies」(本作未収録)も担当するなど、早くもアーティストとして大きなピークを迎えています。

そんな黄金期の楽曲は、このコンピ盤のDISC 1にまるまる収録。最初の2枚のアルバムから15曲も選出されているあたりに、この時期に対する思い入れが伝わります。悪い言い方をしてしまえば、それ以降は初期2作の成功には追いつけていないと見なすこともできるわけですが……。まあとにかく、彼女の黄金期をリアルタイムで知らない世代には、おさらいとして十分な役割を果たす1枚ではないでしょうか。おまけ的に映画『カーズ』(2005年)のサウンドトラックから「Real Gone」のスタジオライブ音源も追加されていますしね。

そして、DISC 2は3rdアルバム『THE GLOBE SESSIONS』(1998年)以降の楽曲および新録曲3曲で構成。『THE GLOBE SESSIONS』から5thアルバム『WILDFLOWER』(2005年)あたりまでは僕自身もリアルタムで触れていたのですが、本作には『WILDFLOWER』からは1曲もセレクトされず。6thアルバム『DETOURS』(2008年)以降の3作はスルーされ、10thアルバム『BE MYSELF』(2017年)からは1曲のみ。しかし、最新作『THREADS』(2019年)からは6曲と多くセレクトされています。これは同作がコラボ曲で構成されていることも大きく影響しているのかなと。例えば、ジョージ・ハリスンのカバー「Beware Of Darkness」ではエリック・クラプトンスティング、ブランディ・カーライルと共演していますし、THE ROLLING STONESのカバー「Thw Worst」では本家キース・リチャーズとコラボを果たしていますしね。無駄に豪華。

新録3曲もある意味ではその流れを汲んでおり、ストーンズのカバー「Live With Me」にはミック・ジャガーがブルースハープでゲスト参加。アレンジ/演奏含め、本家に匹敵するカッコよさなので、ぜひストーンズファンやアーシーなハードロックを愛聴するリスナーにも触れてほしい1曲です。そのほかの新曲「Forever」と「Still The Same」はこれまでの彼女のスタイルの延長線上にある、ミディアム/スローナンバー。「Live With Me」でロックアーティストとしての存在感を示し、残りの2曲でシンガー/表現者としての深みを提示しているのかなと。

残念ながら、先のドキュメンタリー映画は今のところ日本では視聴不可ですが、この作品を観てからサントラに触れるとより味わい深く楽しめるのかな。もちろん、彼女のキャリアを総括するという点においても、本作はそれなりに効力のある内容なので、これからシェリル・クロウというアーティストに触れてみようとおもうビギナーにもうってつけの作品だと思います。僕もこのアルバムを聴いて、抜け落ちていた2000年代後半以降の音源(特にコラボ作『THREADS』)を積極的にチェックしてみようと思えたくらいでしたから。

 


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2021年5月 7日 (金)

RONNIE WOOD『I'VE GOT MY OWN ALBUM TO DO』(1974)

1974年9月13日に発売されたロニー・ウッドの1stソロアルバム。

当時FACESのギタリストだったロニーにとってキャリア初となるソロアルバムは、そのFACESのメンバーでもあるロッド・スチュワート(Vo)やイアン・マクレガン(Key)のほか、のちに加入することになるTHE ROLLING STONESミック・ジャガー(Vo)、キース・リチャーズ(G, Vo)、ミック・テイラー(G, B)、さらにはジョージ・ハリスン(G, Vo)なども参加する、まさに邦題の『俺と仲間』どおりの内容となっています。

FACESはもちろん、ストーンズの血が濃く混じっていることもあり、本作は両バンドの個性をロニーなりに消化したルーズなロックンロール&ソウルを存分に堪能することができます。ジャガー&リチャーズ書き下ろし曲「Act Together」「Sure The One You Need」や、ジョージとロニーの共作曲「Far East Man」、のちにイジー・ストラドリン(ex. GUNS N' ROSES)が本家ロニーをゲストに迎えてカバーする「Take A Look At The Guy」、ミックのボーカルもしっかりフィーチャーされた「I Can Feel The Fire」など、とにかく印象的な楽曲が多いのですが、どの曲もロニー以上にゲストミュージシャンの主張が強く(苦笑)、そういったところにロニーの人柄が表れているような気がしないでもないです。

だって、「Am I Grooving You」なんてミック・ジャガーとキース・リチャーズの掛け合いボーカルの印象が強いですし、「Far East Man」もジョージ・ハリスンのスライドギターが主役みたいなものですし(なんなら曲自体もジョージのそれだし)。いくら『I'VE GOT MY OWN ALBUM TO DO』とタイトルに掲げていても、「俺が俺が」の性格ではないことが良くも悪くも“フロントマン=ロニー・ウッド”の影を薄くしてしまっている。もっと言えば、迎え入れたゲストのアクが強すぎるんです。初のソロ作、ご祝儀がわりにゲストが豪華なのはよろしいのですが、もうちょっと考えたほうがいいんじゃないの?とこちらが心配になるという(苦笑)。

でも、アルバムとしてのまとまりや個々の楽曲の完成度は非常に高く、1枚のロックンロールアルバムとしてはかなりクオリティが高い。正直、個人的には同時期に制作されたFACESのアルバムよりもダントツに好きなんですよね、こっちのほうが。それは別にロッドがダメとかじゃなくて、単純にフィーリングの問題。本当は比べようがないんですが、趣味的にこっちのほうがど真ん中というだけの話です。

あと、このアルバムを聴いたあとにストーンズの『IT'S ONLY ROCK 'N ROLL』(1974年)を聴くと、非常に納得するものがあるという……ああ、そうか。単に自分がストーンズ側の人間なだけか。納得です。

ストーンズ・ワークスとしては先の『IT'S ONLY ROCK 'N ROLL』と、ロニー加入後の『BLACK AND BLUE』(1976年)の間にある1枚。実は両作をつなぐ上でも重要な作品ではないかと思うのですが、いかがでしょう。

 


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2020年4月27日 (月)

MICK JAGGER『GODDESS IN THE DOORWAY』(2001)

2001年11月に発表されたミック・ジャガーの4thソロアルバム。

ソロ名義では前作『WANDERING SPIRIT』(1993年)から8年9ヶ月ぶりのアルバム。同作以降、THE ROLLING STONESとして『VOODOO LOUNGE』(1994年)『BRIDGES TO BABYLON』(1997年)と精力的な活動が続き、それに伴うワールドツアーも大々的に行われていたので、ミック個人としてもアク抜き、もしくはインプットの意味でこのソロアルバムを制作したのでしょう。

ビル・ラズウェルやナイル・ロジャース(1st『SHE'S THE BOSS』)、デイヴ・スチュワート(2nd『PRIMITIVE COOL』)、リック・ルービン(3rd『WANDERING SPIRIT』)と毎回旬のプロデューサーを迎えて制作してきたソロ作ですが、この『GODDESS IN THE DOORWAY』ではストーンズでの仕事で知られるマット・クリフォード、AEROSMITHオジー・オズボーン、キャリー・アンダーウッド、フェイス・ヒルなど幅広いアーティストを手がけるマーティ・フレデリクセンとミック自身の3人による共同プロデュースで制作。楽曲の大半はミック単独で書かれたものですが、数曲でマット・クリフォードと共作、さらにロブ・トーマス(MATCHBOX TWENTY)、レニー・クラヴィッツ、ワイクリフ・ジョン(THE FUGEES)ともコラボしています。

前作がナマ感の強いバンドサウンドを軸にした作風だったのに対し、今作では曲ごとにバンドサウンドや打ち込みをセレクトした初期の路線に回帰。ただ、ポップス色濃厚だった『SHE'S THE BOSS』とも異なり、ゴスペルやソウル、ラテンなどのルーツミュージックを現代的に解釈した作風の、比較的地味な楽曲が揃った1枚に仕上がっています。

そういった意味では、過去3作と比較すると非常に肩の力が抜けているのが明確な作品かもしれません。それが、先のアク抜きにもつながり、ルーツミュージックの現代的解釈(および、さまざまなアーティストとのコラボ)がインプットになったのかなと。つまり、本作はアーティストとして制作することに意味を見出す、リスナー視点では評価の難しい1枚とも言えるでしょう。

もちろん、ミックが作っているんですから悪いわけがない。平均点以上の仕上がりですし、こちら側も今まで以上にリラックスして聴くことができる作品だと思います。でも、視点を変えると“アクの弱い”アルバムとも言えるわけでして。確かに、先のロブ・トーマスやレニー・クラヴィッツに加え、ボノ(U2)やジョー・ペリー(AEROSMITH)、ピート・タウンゼンド(THE WHO)といった豪華ゲストも多数参加しています。でも、そういったスタープレイヤーの華やかさが表出した作風というわけでもなく、過去のソロ作と比較してもどうにも影の薄い1枚とも言えるわけでして。

ライトリスナーにはオススメはしないけど、ストーンズファンなら聴いておいて損はしない。そんな1枚かもしれません。まあミックのソロに手を出すなんて、確実にストーンズにヤラれた人以外いないでしょうから(偏見です)。

 


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2018年10月11日 (木)

MICK JAGGER『WANDERING SPIRIT』(1993)

1993年2月にリリースされた、ミック・ジャガーの3rdソロアルバム。1989年に発売されたTHE ROLLING STONESのアルバム『STEEL WHEELS』とそれに伴う大々的なワールドツアー、その模様を収めたライブアルバム『FLASHPOINT』(1991年)のリリースと、ストーンズに関する大仕事を終え、ひと段落したタイミングに制作されたのが、この5年半ぶりのソロアルバムでした。イギリスでは前作の26位を上回る12位、アメリカでは過去最高の11位にランクイン(50万枚以上の売り上げ)。「Sweet Thing」(全英24位、全米84位)、「Don't Tear Me Up」(全英86位)というシングルヒットも生まれています。

過去2作ではビル・ラズウェルやナイル・ロジャース、デイヴ・スチュワートといった旬のプロデューサーを迎えましたが、本作ではRED HOT CHILI PEPPERSなどでおなじみのリック・ルービンと初タッグ。すでにこの頃、リックはAC/DCの新作に着手したりと、オールドロック復興支援的な役割に不可欠な存在となっていました。もしかしたらミック、ここでのリックとのタッグがうまくいったら次のストーンズの新作も……なんてことも考えていたのかしら。

そして、過去2作との最大の違いはバンドサウンドに特化した作風だということ。前2作はジェフ・ベックを迎えつつも、バンド的な楽曲とダンサブルなポップソングをうまくミックスした作風でしたが、今回は曲によってゲストプレイヤーとしてレッチリのフリーやレニー・クラヴィッツが参加しつつも、ほぼ固定のバンドメンバーで制作。1988年のソロツアーに参加したジミー・リップ(G)がバンマス的な役割を果たしたのでしょうか、彼は本作を携えたソロライブにも参加しております。また、ストーンズの『STEEL WHEELS』や同ツアーに携わったマット・クリフォードもハープシーコードなどでその名前を見つけることができます。

まあとにかく、オープニングの「Wired All Night」からドライブ感あふれるロックンロールを聴かせてくれ、続く「Sweet Thing」ではブラックテイストの強いファンクチューン、「Out Of Focus」ではアメリカ南部風ロックでストーンズファンを楽しませてくれます。レニー・クラヴィッツとのデュエット「Use Me」(ビル・ウィザースのカバー)やジェームズ・ブラウンでおなじみの「Think」のファンクロックカバーなど、ストーンズでやるにはちょっと……と思われる楽曲もピックアップされているのが、いかにもソロっぽくて良いです。

「そうそう、こういうミックが聴きたかった!」と、80年代のストーンズファンならそう評価したことでしょう。しかし、この頃にはすでにストーンズは息を吹き返しており、本作の翌年1994年夏には早くも次作『VOODOO LOUNGE』を発表しているので、また本作の評価は変わってくるのかなと。とはいえ、その内容の良さにはまったく文句はありませんし、ミックのソロでここまでワクワクさせられたのも初めてのこと。今でも聴く頻度の多いお気に入りの1枚です。



▼MICK JAGGER『WANDERING SPIRIT』
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2017年8月 8日 (火)

LIVING COLOUR『VIVID』(1988)

1988年春に発表された、アメリカの4人組ハードロックバンドによるデビューアルバム。エド・ステイシアム(RAMONES、TALKING HEADS、MOTORHEADなど)が全体のプロデュースを手がけたほか、自身のソロアルバム『PRIMITIVE COOL』(1987年)にヴァーノン・リード(G)が参加したことがきっかけとなり、ミック・ジャガーのプロデュース曲が2曲(「Glamour Boys」「Which Way To America」)含まれているほか、「Broken Hearts」ではブルースハープでゲスト参加も果たしております。

メンバー全員が黒人ということで、当時は“黒いツェッペリン”などと呼ばれておりましたが、メタリックなギターリフとファンキーで跳ね気味なリズムのミックスはまさにその例えにぴったり。まだRED HOT CHILI PEPPERSのブレイク前夜で、いわゆる“ミクスチャー”と呼ばれるようになるバンド群(FAITH NO MOREJANE'S ADDICTIONなど)が日の目を浴びる前のタイミング。そんな中で、LIVING COLOURは当時のHR/HMブームに(幸か不幸か)乗ることができ、その結果アルバムは全米6位、シングル「Cult Of Personality」は全米13位、「Glamour Boys」も全米31位と好成績を残しました。

個人的には、アルバムのオープニングを飾るヒット曲「Cult Of Personality」にこのバンドの個性が集約されているんじゃないかと思うほど、先の“黒いツェッペリン”的要素が存分に楽しめます。もちろん、それ以降の楽曲もよりファンキーさを強めたもの、よりハードロック色を強調したものが次々と飛び出し、またコリー・グローヴァー(Vo)のボーカルもヘヴィメタル特有のハイトーンでなく、かといってR&Bシンガーのようにひたすらうますぎるわけでもない、適度なソウルフルさを持ったロックボーカリストといった印象。これがファンキーだけどハードロック的タイトさを持つリズム隊とリフワーク/ソロワークが個性的なギタープレイの上に乗ることで、当時ほかには見られなかった個性的なサウンドを確立することができたわけです。

と同時に、このバンドにはパンクの香りも漂っており、そこが「黒人だから」「リズムが跳ねてるから」と同じくらいメタルファンから敬遠される要因のひとつになっている気がします。特に旧来のメタルファンってノンポリのイメージが強いですしね!(ひどい偏見)

そうそう、本作収録の「Funny Vibe」にはPUBLIC ENEMYのチャック・Dとフレイヴァー・フレイヴがゲスト参加しています。この3年後にANTHRAXがPUBLIC ENEMYと「Bring The Noise」でコラボすることを考えると、かなり時代を先取りしていたハードロックバンドと解釈することもできそうですね。



▼LIVING COLOUR『VIVID』
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2017年8月 5日 (土)

MICK JAGGER『PRIMITIVE COOL』(1987)

1987年9月にリリースされた、ミック・ジャガー2枚目のソロアルバム。前年春にROLLING STONESとしての新作『DIRTY WORK』を発表したものの、ミックはツアーに取り掛かることなる今作の制作に取りかかります。ソロ1作目『SHE'S THE BOSS』(1985年)がミリオンヒットになったこともあり、味をしめたんでしょうかね。

ミック、ビル・ラズウェル、ナイル・ロジャースという異色ながらも個性的にならざるを得ない布陣がプロデュースに携わった前作から、今回はミック、キース・ダイヤモンド(ドナ・サマーやマイケル・ボルトン、シーナ・イーストン、ビリー・オーシャンなどを手がけたR&B寄りのプロデューサー兼ソングライター)、そしてEURYTHMICSのデイヴ・スチュワーというこれまた個性的な組み合わせで制作。レコーディングには前作にも全面的に参加したジェフ・ベックに加え、オマー・ハキム(Dr)、サイモン・フィリップス(Dr)、ダグ・ウィンビッシュ(B)、ヴァーノン・リード(G)、ビル・エヴァンス(Sax)、デヴィッド・サンボーン(Sax)など豪華な面々がレコーディングに参加しております。

作風的にはストーンズのポップサイドをより煮詰めたような『SHE'S THE BOSS』から、今回はよりロック色が強まり、しかもメインストリームでスタジアムロック的なテイストが強まっています。リードシングルとして中ヒットした(MVが酷い。笑)「Let's Work」(全米39位、全英31位)こそ打ち込み主体のダンスポップでしたが、アルバムオープニングの「Throwaway」を筆頭にブラックミュージックのテイストを散りばめたハードロックナンバーがずらりと並びます。思えば1987年はBON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』(1986年)のメガヒットを機に、WHITESNAKE『WHITESNAKE』DEF LEPPARD『HYSTERIA』GUNS N' ROSES『APPETITE FOR DESTRUCTION』などがチャート上位を占めた時期。少なからずミックもこういった流行を意識したのでしょうけど、そこは“腐っても”ミック・ジャガー。結局はこういった“ストーンズの匂いを感じさせるスタジアムロック”が限度だったねしょうね。

結果、本作は全米41位、全英26位という微妙な結果で終了します。翌年にはキースの初ソロアルバム『TALK IS CHEAP』も世に放たれ、いよいよストーンズも終わりか……と思わせておいてからの、1989年の本格的復活へと続いていくという。その復活作『STEEL WHEELS』とこのミックのソロアルバム『PRIMITIVE COOL』、実は非常に共通点が多いと思うのは気のせいでしょうか? 最近この2作をよく聴くのですが、改めて『PRIMITIVE COOL』で得た知識や経験が『STEEL WHEELS』に反映されていると実感しています。

大きなヒットにはつながらなかったけど、“いかにも80年代後半”な産業ロック的サウンドは意外と悪くない。もちろん好き嫌いがはっきり分かれる作品だと思いますが、もし『STEEL WHEELS』が苦手じゃなかったら手にしてみてもいい1枚かもしれませんよ。

なお、本作発表後にミックはソロツアーをここ日本で行うため、初来日。1988年3月、東京ドーム2公演を含む東名阪5公演で17万人を動員しました。ちなみにアルバム2作に参加したジェフ・ベックはツアーには不参加。代わりにジョー・サトリアーニがリードギターを担当するという、驚きの展開になったことも記憶に残っています。



▼MICK JAGGER『PRIMITIVE COOL』
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2017年7月25日 (火)

MICK JAGGER『SHE'S THE BOSS』(1985)

ROLLING STONESのフロントマン、ミック・ジャガーが1985年2月に発表した初のソロアルバム。これまで映画のサウンドトラックにソロ名義の楽曲を提供したことはあったものの、アルバムまるごとソロで制作するのはこれが初めてのこと。1983年11月に発表したストーンズのアルバム『UNDERCOVER』で時代の最先端のサウンドを取り入れようとしたミックと、それまでのスタイルにこだわりを持っていたキース・リチャーズとの仲が険悪になり、さらに追い討ちをかけるようにミックの本格的ソロ活動開始と、2人の仲はさらに悪化していくことになります。

そんな不安定な状況下で制作されたこのアルバム。オープニング曲「Lonely At The Top」がいきなりジャガー/リチャーズ名義……つまり、ストーンズのアウトテイク曲をソロ用にリテイクしたトラックからスタートすることで、当時多くのファンを驚かせました。サウンド的には現代的な電子ドラムやシンセを多用したモダンなもので、そりゃここまでやったらキースはさらにブチギレるだろうな……なんて、今聴いても思ってしまいます。

しかも、本作のほぼ全編でギターを弾きまくっているのがジェフ・ベック。さらにTHE WHOのピート・タウンゼント、CHICのナイル・ロジャース、エディ・マルティネスなど“いかにも”な面々を招集しています。ベーシストに目を向けても、CHICのバーナード・エドワーズやビル・ラズウェル、SLY AND ROBBIEのロビー・シェイクスピア、WHITESNAKEなどで活躍したコリン・ホッジキンソン、ドラムにはSLY AND ROBBIEのスライ・ダンバー、CHICのトニー・トンプソン、アントン・フィグ、スティーヴ・フェローンなど……クレジットを全部書いていくだけで、このコラムが埋まってしまうほど多数(苦笑)。

楽曲自体は先の「Lonely At The Top」以外はほぼミック単独で書いたもので、2曲(「Lucky In Love」「She's The Boss」)のみカルロス・アロマーとの共作。ミックらしい非常にポップで親しみやすいメロディを持つ佳曲が満載で、ストーンズでの彼らしさもありつつも、「そうそう、ミックってこういうの好きそうだもんね」と納得させられるような新機軸もあり。そんな中、「Hard Woman」みたいにソウルフルなバラードを入れてしまうあたりに、ストーンズとは離れられない彼の“弱さ”も感じてしまうんですよね。

シングルヒットした「Just Another Night」(全米12位)の印象が強いアルバムかもしれませんし、今聴くとそのサウンドの“80年代っぽさ”に時代を感じてしまうかもしれませんが、楽曲自体は良いものが多く、ゲストミュージシャンたちのプレイにも聴きどころが多いので、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょう。ストーンズは苦手だけどこれはアリ、ってこともあるかもしれませんしね。



▼MICK JAGGER『SHE'S THE BOSS』
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