2018年10月11日 (木)

MICK JAGGER『WANDERING SPIRIT』(1993)

1993年2月にリリースされた、ミック・ジャガーの3rdソロアルバム。1989年に発売されたTHE ROLLING STONESのアルバム『STEEL WHEELS』とそれに伴う大々的なワールドツアー、その模様を収めたライブアルバム『FLASHPOINT』(1991年)のリリースと、ストーンズに関する大仕事を終え、ひと段落したタイミングに制作されたのが、この5年半ぶりのソロアルバムでした。イギリスでは前作の26位を上回る12位、アメリカでは過去最高の11位にランクイン(50万枚以上の売り上げ)。「Sweet Thing」(全英24位、全米84位)、「Don't Tear Me Up」(全英86位)というシングルヒットも生まれています。

過去2作ではビル・ラズウェルやナイル・ロジャース、デイヴ・スチュワートといった旬のプロデューサーを迎えましたが、本作ではRED HOT CHILI PEPPERSなどでおなじみのリック・ルービンと初タッグ。すでにこの頃、リックはAC/DCの新作に着手したりと、オールドロック復興支援的な役割に不可欠な存在となっていました。もしかしたらミック、ここでのリックとのタッグがうまくいったら次のストーンズの新作も……なんてことも考えていたのかしら。

そして、過去2作との最大の違いはバンドサウンドに特化した作風だということ。前2作はジェフ・ベックを迎えつつも、バンド的な楽曲とダンサブルなポップソングをうまくミックスした作風でしたが、今回は曲によってゲストプレイヤーとしてレッチリのフリーやレニー・クラヴィッツが参加しつつも、ほぼ固定のバンドメンバーで制作。1988年のソロツアーに参加したジミー・リップ(G)がバンマス的な役割を果たしたのでしょうか、彼は本作を携えたソロライブにも参加しております。また、ストーンズの『STEEL WHEELS』や同ツアーに携わったマット・クリフォードもハープシーコードなどでその名前を見つけることができます。

まあとにかく、オープニングの「Wired All Night」からドライブ感あふれるロックンロールを聴かせてくれ、続く「Sweet Thing」ではブラックテイストの強いファンクチューン、「Out Of Focus」ではアメリカ南部風ロックでストーンズファンを楽しませてくれます。レニー・クラヴィッツとのデュエット「Use Me」(ビル・ウィザースのカバー)やジェームズ・ブラウンでおなじみの「Think」のファンクロックカバーなど、ストーンズでやるにはちょっと……と思われる楽曲もピックアップされているのが、いかにもソロっぽくて良いです。

「そうそう、こういうミックが聴きたかった!」と、80年代のストーンズファンならそう評価したことでしょう。しかし、この頃にはすでにストーンズは息を吹き返しており、本作の翌年1994年夏には早くも次作『VOODOO LOUNGE』を発表しているので、また本作の評価は変わってくるのかなと。とはいえ、その内容の良さにはまったく文句はありませんし、ミックのソロでここまでワクワクさせられたのも初めてのこと。今でも聴く頻度の多いお気に入りの1枚です。



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投稿: 2018 10 11 12:00 午前 [1993年の作品, Lenny Kravitz, Mick Jagger, Red Hot Chili Peppers] | 固定リンク

2017年8月 8日 (火)

LIVING COLOUR『VIVID』(1988)

1988年春に発表された、アメリカの4人組ハードロックバンドによるデビューアルバム。エド・ステイシアム(RAMONES、TALKING HEADS、MOTORHEADなど)が全体のプロデュースを手がけたほか、自身のソロアルバム『PRIMITIVE COOL』(1987年)にヴァーノン・リード(G)が参加したことがきっかけとなり、ミック・ジャガーのプロデュース曲が2曲(「Glamour Boys」「Which Way To America」)含まれているほか、「Broken Hearts」ではブルースハープでゲスト参加も果たしております。

メンバー全員が黒人ということで、当時は“黒いツェッペリン”などと呼ばれておりましたが、メタリックなギターリフとファンキーで跳ね気味なリズムのミックスはまさにその例えにぴったり。まだRED HOT CHILI PEPPERSのブレイク前夜で、いわゆる“ミクスチャー”と呼ばれるようになるバンド群(FAITH NO MOREJANE'S ADDICTIONなど)が日の目を浴びる前のタイミング。そんな中で、LIVING COLOURは当時のHR/HMブームに(幸か不幸か)乗ることができ、その結果アルバムは全米6位、シングル「Cult Of Personality」は全米13位、「Glamour Boys」も全米31位と好成績を残しました。

個人的には、アルバムのオープニングを飾るヒット曲「Cult Of Personality」にこのバンドの個性が集約されているんじゃないかと思うほど、先の“黒いツェッペリン”的要素が存分に楽しめます。もちろん、それ以降の楽曲もよりファンキーさを強めたもの、よりハードロック色を強調したものが次々と飛び出し、またコリー・グローヴァー(Vo)のボーカルもヘヴィメタル特有のハイトーンでなく、かといってR&Bシンガーのようにひたすらうますぎるわけでもない、適度なソウルフルさを持ったロックボーカリストといった印象。これがファンキーだけどハードロック的タイトさを持つリズム隊とリフワーク/ソロワークが個性的なギタープレイの上に乗ることで、当時ほかには見られなかった個性的なサウンドを確立することができたわけです。

と同時に、このバンドにはパンクの香りも漂っており、そこが「黒人だから」「リズムが跳ねてるから」と同じくらいメタルファンから敬遠される要因のひとつになっている気がします。特に旧来のメタルファンってノンポリのイメージが強いですしね!(ひどい偏見)

そうそう、本作収録の「Funny Vibe」にはPUBLIC ENEMYのチャック・Dとフレイヴァー・フレイヴがゲスト参加しています。この3年後にANTHRAXがPUBLIC ENEMYと「Bring The Noise」でコラボすることを考えると、かなり時代を先取りしていたハードロックバンドと解釈することもできそうですね。



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投稿: 2017 08 08 12:00 午前 [1988年の作品, Living Colour, Mick Jagger, Public Enemy] | 固定リンク

2017年8月 5日 (土)

MICK JAGGER『PRIMITIVE COOL』(1987)

1987年9月にリリースされた、ミック・ジャガー2枚目のソロアルバム。前年春にROLLING STONESとしての新作『DIRTY WORK』を発表したものの、ミックはツアーに取り掛かることなる今作の制作に取りかかります。ソロ1作目『SHE'S THE BOSS』(1985年)がミリオンヒットになったこともあり、味をしめたんでしょうかね。

ミック、ビル・ラズウェル、ナイル・ロジャースという異色ながらも個性的にならざるを得ない布陣がプロデュースに携わった前作から、今回はミック、キース・ダイヤモンド(ドナ・サマーやマイケル・ボルトン、シーナ・イーストン、ビリー・オーシャンなどを手がけたR&B寄りのプロデューサー兼ソングライター)、そしてEURYTHMICSのデイヴ・スチュワーというこれまた個性的な組み合わせで制作。レコーディングには前作にも全面的に参加したジェフ・ベックに加え、オマー・ハキム(Dr)、サイモン・フィリップス(Dr)、ダグ・ウィンビッシュ(B)、ヴァーノン・リード(G)、ビル・エヴァンス(Sax)、デヴィッド・サンボーン(Sax)など豪華な面々がレコーディングに参加しております。

作風的にはストーンズのポップサイドをより煮詰めたような『SHE'S THE BOSS』から、今回はよりロック色が強まり、しかもメインストリームでスタジアムロック的なテイストが強まっています。リードシングルとして中ヒットした(MVが酷い。笑)「Let's Work」(全米39位、全英31位)こそ打ち込み主体のダンスポップでしたが、アルバムオープニングの「Throwaway」を筆頭にブラックミュージックのテイストを散りばめたハードロックナンバーがずらりと並びます。思えば1987年はBON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』(1986年)のメガヒットを機に、WHITESNAKE『WHITESNAKE』DEF LEPPARD『HYSTERIA』GUNS N' ROSES『APPETITE FOR DESTRUCTION』などがチャート上位を占めた時期。少なからずミックもこういった流行を意識したのでしょうけど、そこは“腐っても”ミック・ジャガー。結局はこういった“ストーンズの匂いを感じさせるスタジアムロック”が限度だったねしょうね。

結果、本作は全米41位、全英26位という微妙な結果で終了します。翌年にはキースの初ソロアルバム『TALK IS CHEAP』も世に放たれ、いよいよストーンズも終わりか……と思わせておいてからの、1989年の本格的復活へと続いていくという。その復活作『STEEL WHEELS』とこのミックのソロアルバム『PRIMITIVE COOL』、実は非常に共通点が多いと思うのは気のせいでしょうか? 最近この2作をよく聴くのですが、改めて『PRIMITIVE COOL』で得た知識や経験が『STEEL WHEELS』に反映されていると実感しています。

大きなヒットにはつながらなかったけど、“いかにも80年代後半”な産業ロック的サウンドは意外と悪くない。もちろん好き嫌いがはっきり分かれる作品だと思いますが、もし『STEEL WHEELS』が苦手じゃなかったら手にしてみてもいい1枚かもしれませんよ。

なお、本作発表後にミックはソロツアーをここ日本で行うため、初来日。1988年3月、東京ドーム2公演を含む東名阪5公演で17万人を動員しました。ちなみにアルバム2作に参加したジェフ・ベックはツアーには不参加。代わりにジョー・サトリアーニがリードギターを担当するという、驚きの展開になったことも記憶に残っています。



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投稿: 2017 08 05 12:00 午前 [1987年の作品, Jeff Beck, Mick Jagger] | 固定リンク

2017年7月25日 (火)

MICK JAGGER『SHE'S THE BOSS』(1985)

ROLLING STONESのフロントマン、ミック・ジャガーが1985年2月に発表した初のソロアルバム。これまで映画のサウンドトラックにソロ名義の楽曲を提供したことはあったものの、アルバムまるごとソロで制作するのはこれが初めてのこと。1983年11月に発表したストーンズのアルバム『UNDERCOVER』で時代の最先端のサウンドを取り入れようとしたミックと、それまでのスタイルにこだわりを持っていたキース・リチャーズとの仲が険悪になり、さらに追い討ちをかけるようにミックの本格的ソロ活動開始と、2人の仲はさらに悪化していくことになります。

そんな不安定な状況下で制作されたこのアルバム。オープニング曲「Lonely At The Top」がいきなりジャガー/リチャーズ名義……つまり、ストーンズのアウトテイク曲をソロ用にリテイクしたトラックからスタートすることで、当時多くのファンを驚かせました。サウンド的には現代的な電子ドラムやシンセを多用したモダンなもので、そりゃここまでやったらキースはさらにブチギレるだろうな……なんて、今聴いても思ってしまいます。

しかも、本作のほぼ全編でギターを弾きまくっているのがジェフ・ベック。さらにTHE WHOのピート・タウンゼント、CHICのナイル・ロジャース、エディ・マルティネスなど“いかにも”な面々を招集しています。ベーシストに目を向けても、CHICのバーナード・エドワーズやビル・ラズウェル、SLY AND ROBBIEのロビー・シェイクスピア、WHITESNAKEなどで活躍したコリン・ホッジキンソン、ドラムにはSLY AND ROBBIEのスライ・ダンバー、CHICのトニー・トンプソン、アントン・フィグ、スティーヴ・フェローンなど……クレジットを全部書いていくだけで、このコラムが埋まってしまうほど多数(苦笑)。

楽曲自体は先の「Lonely At The Top」以外はほぼミック単独で書いたもので、2曲(「Lucky In Love」「She's The Boss」)のみカルロス・アロマーとの共作。ミックらしい非常にポップで親しみやすいメロディを持つ佳曲が満載で、ストーンズでの彼らしさもありつつも、「そうそう、ミックってこういうの好きそうだもんね」と納得させられるような新機軸もあり。そんな中、「Hard Woman」みたいにソウルフルなバラードを入れてしまうあたりに、ストーンズとは離れられない彼の“弱さ”も感じてしまうんですよね。

シングルヒットした「Just Another Night」(全米12位)の印象が強いアルバムかもしれませんし、今聴くとそのサウンドの“80年代っぽさ”に時代を感じてしまうかもしれませんが、楽曲自体は良いものが多く、ゲストミュージシャンたちのプレイにも聴きどころが多いので、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょう。ストーンズは苦手だけどこれはアリ、ってこともあるかもしれませんしね。



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投稿: 2017 07 25 12:00 午前 [1985年の作品, Jeff Beck, Mick Jagger, Rolling Stones] | 固定リンク