2017/07/12

MINISTRY『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』(1989)

MINISTRYが1989年に発表した通算4作目のスタジオアルバム。初期はニューウェイブやエレクトロニックボディミュージックの流れにあるサウンドが特徴でしたが、1988年の3rdアルバム『THE LAND OF RAPE AND HONEY』あたりからインダストリアル色が強まり、続く本作ではそこにメタリックな要素が加わり、のちの方向性が定まることになります。

リリース当初はここ日本でも一部のマニアにしか知られていなかった彼らが、一躍ここ日本のメタルファンの間で注目を集めることになったのは、1991年初頭に行われたMEGADETHの来日公演の開演前SEに、本作の冒頭2曲「Thieves」「Burning Inside」が使用されたことから。僕も当時、中野サンプラザでMEGADETHを観ていますが、確かに客入れ時に流れていたこの2曲が異常にカッコよかったことをよく憶えています。当時は今のようにインターネットもなく、それがMINISTRYというバンド(ユニット)の楽曲だと知るのは数ヶ月後、音楽誌『BURRN!』を読んでからでした。

反復する性急なデジタルビートの上に、ザクザクと気持ち良いスラッシュメタル風ギターリフが乗る。ボーカルもメロディを歌うのではなく、がなるように叫び散らすだけ。タイミング的にはちょうどNINE INCH NAILSに注目が集まり始め(彼らはGUNS N' ROSESとの共演などにより、1989年に発表したデビュー作『PRETTY HATE MACHINE』でプチブレイク)、日本でもSOFT BALLETがボディミュージックを極め、デジタルサウンドを本格的に取り入れる前のTHE MAD CAPSULE MARKETSがメジャーデビューした時期。そういう時代背景を考えると、この時期にMINISTRYが日本で“見つかった”のは興味深いところです。

本作の魅力は、スラッシーな楽曲一辺倒ではないところ。冒頭3曲はその系統の楽曲ですが、「Cannibal Song」はゴスやニューウェイブのカラーが感じられるし、「Breathe」はパーカッシブなドラムパターンが印象的。終盤の「Faith Collapsing」はダークなミドルチューンだし、ラストの「Dream Song」なんてどこか宗教じみた世界観が展開されている。「Thieves」「Burning Inside」のカラーを求めて本作に手を出したメタルファンにはちょっと厳しい内容かもしれませんが、のちのゴシックメタルなどにも通ずる世界観が繰り広げられていると考えれば、意外と入っていきやすいのではないでしょうか。

メタル度という点においては、次作『PSALM 69: THE WAY TO SUCCEED AND THE WAY TO SUCK EGGS』(1992年)より劣るものの、やはり冒頭2曲の完璧さを考えたら、まずは本作から聴いてほしい。そう力説したくなるほど、お気に入りの1枚です。



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投稿: 2017 07 12 12:00 午前 [1989年の作品, Ministry] | 固定リンク

2006/04/25

MINISTRY『RIO GRANDE BLOOD』(2006)

 ポール・バーカーが抜け、完全にアル・ジュールゲンセンのワンマンプロジェクトとなったMINISTRY。約2年ぶり、ワンマン化から2作目となるこの「RIO GRANDE BLOOD」は、レーベルを「Sancuary」から「Megaforce」に移って初の作品となります。前作「HOUSES OF THE MOLE」が非常に攻撃的で、内容も反ブッシュ政権的なものだったこともあり、初期のファンからは「ここ数作のヘヴィ&ダーク路線よりはいいけど、ちょっとウルさい」なんて声も聞こえてきたほど、ド頭から攻めまくってました。あ、俺は嫌いじゃないですけどね(ただ、確かに前述のファンの気持ちも理解できるんだけどね)。

 んじゃこの新作はどうなってるのかというと‥‥前作を気に入ってるファンは、間違いなくこのアルバムも気に入ると思います。いや、もしかしたら前作以上に気に入るかもしれませんね。ジャケットもこれ、ブッシュですよね(苦笑)。そして、オープニング曲 "Rio Grande Blood" 冒頭での演説‥‥ブッシュ親子のことを相当嫌っているのは知っていましたが、ここまで引っ張るのはある意味尊敬に値しますわ。曲名とか見ても、そういう「怒り」を匂わせるタイトルが多いし。

 MINISTRYっていうと、やはり'90年前後から「PSALM 69」までが好きって人が多いかと思うんですよ。実は俺自身もそれに当てはまるわけで、特に2000年前後以降の作品ってあまり聴いてなかったんですよね。多分久しぶりに聴いたのが、ここ1~2作辺りからだったんですが‥‥確かにちょっと(いや相当か)変わってしまったとは思うけど、本質的な部分はあんまり変わってないのかなぁという気もして。ま、前作やこの新作辺りは、スラッシュギターと打ち込みドラムという「攻撃性」の部分に特化してる気はしますけど。バランス感がね‥‥よい意味で持ってたはずなんですよ、前述の頃は。ま、気づけばメンバーも減り、アルのワンマン体制ですからね。こうならざるを得ないのかな、とも思いますけど。

 あ、決してつまらないとか嫌いって言ってるわけじゃないですよ。むしろ自分の好みのサウンドだし、俺は気に入ってますよ。頭2曲の突っ走りっぷりはMINISTRY以外の何者でもないですしね。その後出てくるミドルヘヴィチューンもまた「らしい」曲ばかりだし。しかもただミドルのままで終わるんじゃなくて、途中でテンポアップする展開が入ったりで、結局は突っ走りっぱなし、みたいな。「PSALM 69」の攻撃的な部分が好きな人も、きっとこれなら気に入ってくれると思うんですけどね。

 今回、アメリカでも5/2にリリース予定のこのアルバムを真っ先に聴く機会を得て、こうやって紹介してるわけですが‥‥うん、楽しみにしていていいと思いますよ。なにやらこのアルバムのツアーでは、SLIPKNOTのジョーイ・ジョーディソンがドラムを担当するそうじゃないですか‥‥このアルバムにピッタリの人選だと思います。むしろSLIPKNOTのマスク&衣装を纏ったジョーイにバックを固めてもらって、アルにはフロントを陣取らせて。もうそれだけでさまになってるし。すっげー観たいなぁ、それ。どうやら日本にも9~10月頃には来てくれそうなので、ちょっと楽しみに待ちましょう。ポール・レイヴン(元KILLING JOKE)もツアーメンバーとして参加してるしね。



▼MINISTRY「RIO GRANDE BLOOD」(amazon:US盤UK盤

投稿: 2006 04 25 12:14 午前 [2006年の作品, Ministry] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/05/05

V.A.『ROCK AGAINST BUSH VOL.1』(2004)

  勿論、ここに紹介する26組のバンド全てが必ずしもパンクロックだとは限りません。が、本質的な部分からすれば、俺から見れば全部パンクバンドだと思えるんですよね。

  NOFXのメンバー、ファット・マイクが運営するレーベル、「FAT WRECK RECORDS」が、反ブッシュ政権、というか次期大統領選でブッシュが当選することを危惧して立ち上げたのが「www.punkvoter.com」というサイト。そしてそれが高じて、「ROCK AGAINST BUSH」というプロジェクトまで立ち上げ、それに賛同するミュージシャンを集めてこのアルバムまで完成させてしまいました。

  参加アーティストは26組。有名どころだとOFFSPRING、SUM41、NEW FOUND GLORY、PENNYWISE、LESS THAN JAKEといったパンク勢、そしてTHE GET UP KIDSやMINISTRYといったちょっとパンクからは外れたラインにいるバンドもその趣旨に賛同して参加。中にはジェフ・ビアフラ(元DEAD KENNEDYS)みたいな大御所も参加しています。しかもこの26組中18組が現時点で未発表の新曲を提供しています。太っ腹! OFFSPRINGなんて、オリジナルアルバムでは耳障りのいいポップパンクを聴かせておいて、このアルバムでは "Baghdad" という直球のパンクソングを持って来ているんだから‥‥

  アルバムの内容については、まぁオムニバス特有のバラツキがあるので絶賛こそしませんが、まぁ好きな人なら楽しんで聴ける1枚だと思います。実際、このアルバムがこの内容で、しかもDVDまで付いて1,000円前後で買えるという事実‥‥如何に作り手が儲けを度外視して、如何に多くの人の手元に、耳に届けたいか‥‥その意思が伝わってきますよね。

  パンクって何だろうね‥‥いや、ロックでもいいや。別に必ず政治的なことに関わるべきだとは思わないよ。けどさ、言いたい事さえも言えない今の風潮の中、こうやってリスクを伴う活動を矢面に立って実践している人がいる事実。これを日本の「自称・パンクロックバンド」の皆さんにも見習ってもらいたい。カッコだけのパンクや、「俺等はメジャーとは関わりたくない」とかポーズ決めてるインディーパンクやその周辺、少なからず「パンク」というものに影響を受けているのなら、そして「パンク」と名の付くシーンや音楽に携わっているのなら、(その内容はともかくとして)このやり方だけでも見習って欲しいと切に願うよ。

  別に今一部の音楽ファンの間で問題視されている輸入権の問題だけじゃないよ。日本の政治は本当にどうしようもないところまで来てると思う。それを見て見ぬ振りして「パンク」を名乗るのは、正直カッコ悪いと思う。どうしようもなくね。まだまだ日本には、こんなもんじゃない、本当にカッコいい「真の」パンクロックバンド、沢山いるはずでしょ? ジョー・ストラマーがこの現実を知ったら、向こうで泣いてるよきっと。

  ファット・マイクの主張、全てを受け入れることは出来ないけど、彼が言わんとしてることは理解できる。そしてその手段(=今回のリリース)も非常に判りやすくて好感が持てる。日本でもこういうことが出来ないのかなぁ‥‥インディーズレベルでさ。もっとカッコいいとこ、俺に見せて欲しいよマジで。



▼V.A.『ROCK AGAINST BUSH VOL.1』
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投稿: 2004 05 05 03:29 午後 [2004年の作品, Compilation Album, Dead Kenedys, Get Up Kids, The, Ministry] | 固定リンク