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カテゴリー「Ministry」の9件の記事

2021年10月 2日 (土)

MINISTRY『MORAL HYGIENE』(2021)

2021年10月1日にリリースされたMINISTRYの15thアルバム。

前作『AMERIKKKANT』(2018年)から約3年半ぶりの新作。前作は当時のドナルド・トランプ政権に対するアメリカへの怒りがそのまま作品として昇華されていました。では、当時と状況が大きく変化した現在、アル・ジュールゲンセン(Vo, G)はどんな思いを抱え、表現の源泉としているのでしょう。

プレスリリースには、本作に対して「トランプも退陣し、民主党政権となった現在のアメリカで、アルは何を思うのか。彼によれば、『道徳的衛生』と題された本作は、『怒りよりも教訓的な内容』になっているとのこと。レーガンが新自由主義を掲げると、強欲が美徳となった。人々は他人を顧みず、自分のことだけを考えるようになってしまった。今こそ、そんな世の中を変える時だ。我々が必要としているのは『道徳的衛生』なのだ。そんなメッセージが、おなじみのミニストリーのヘヴィなビート乗って、紡ぎ出されていく」との説明があります。作品のテーマは前作での怒りとは異なるものですが、世界を変えようとする彼の意思はまったくブレておらず、そのへんが過去作の延長線上にある作風にて表現されているように感じます。

確かに前作ほどストレートなアングリー感はありませんが、それでもMINISTRYらしいご機嫌のヘヴィなインダストリアルサウンドは健在。従来の作品を楽しんできたファンなら問答無用で楽しめる内容と言えるでしょう。ここ数作で再び復活した「TV」シリーズの新曲「TV Song #6 (Right Arount The Corner Mix)」も収録されていますしね。

ゲストミュージシャンも相変わらず豪華の一言。「Sabotage Is Sex」では元DEAD KENNEDYSのジェフ・ビアフラ(Vo)が、いかにも彼らしいボーカルを披露しており、イギー・ポップ率いるTHE STOOGESの名曲「Search And Destroy」のインダストリアル風カバーではビリー・モリソン(G/ビリー・アイドル、ex. THE CULTなど)が豪快なギタープレイを聴かせてくれます。このほか、プロフェッサーXことアラビアン・プリンス(DJ)がオープニングトラック「Alert Level」が参加しているほか、ロイ・マイヨルガ(Dr/STONE SOUR)、デイヴィッド・エレフソン(B/ex. MEGADETH)などの名前を見つけることもできます。

個人的には「ちょっとユルいかな……」と感じる場面もある1枚で、正直言え均的、いかにも普通な仕上がりなんですよ。全体的に楽曲1つひとつがコンパクトなのもそうですし、ちょっと薄味かな、と。それはこのバンド/ユニットに対する期待値が、常に一定水準以上のものを求めてしまっているからなのかもしれません。特に、サウンドに関してはもはや新しいテイストを求めていないような気もしますし(もちろん、MINISTRYという存在にとってはそれが正解かもしれませんが)。

となると、このバンドにとっての正解は、やはり歌詞やメッセージ、姿勢、体制で作品の真価を問うことなのかな。こと日本人にとっては、そのへんを深く理解するにはちょっと難しいのかもしれませんが(対訳だけでは伝わらない、英詞から垣間見えるものもありますし)、そのへんも含めしっかり評価できるようになりたいなと、個人的には考えています。

なので、音的には70点、メッセージ性を含めてプラス15点くらいの内容かな、と。あくまで個人的観点ですが。

 


▼MINISTRY『MORAL HYGIENE』
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2020年11月21日 (土)

ELLEFSON『NO COVER』(2020)

2020年11月20日にリリースされたデイヴィッド・“ジュニア”・エレフソン(B/MEGADETH)のソロアルバム第2弾。

日本では今年3月に発売された初のソロアルバム『SLEEPING GIANTS』(海外では2019年7月リリース)に続く今作は、全曲豪華ゲストを迎えたカバー集。全19曲の大半はエレフソンのルーツ的楽曲になるのでしょうが、そんな中にFIGHTの「Nailed To The Gun」があったり、ビリー・アイドル「Rebel Yell」やW.A.S.P.「Love Machine」といったMEGADETHのデビューと非常に近しい時期の楽曲も含まれています。これは相方のトム・ハザート(Vo)の趣味なんでしょうかね。

さてさて。そんな本作のレコーディングメンバーですが、ベーシックはトム、エレフソン、アンディ・マルトンジェリ(G/ARTHEMIS)の3人が中心で、曲によって以下のようなゲストが参加しています(とにかく長いのでご注意を)。

※ボーカル
ジェイソン・マクマスター(DANGEROUR TOYS、WATCHTOWER)、ドロ・ペッシュ、ジェイコブ・バントン(ミック・マーズ、LYNAM、ex. STEVE RILEY'S L.A. GUNS、ex. MARS ELECTRICなど)、アンドリュー・フリーマン(LAST IN LINE)、アル・ジュールゲンセン(MINSTRY)、ブランドン・イーグレイ(CROBOT)、デイヴ・アルヴィン(WHITE TRASH)、トッド・カーンズ(THE AGE OF ELECTRIC)、マーク・スローターSLAUGHTER)、チップ・ズナフENUFF Z' NUFF

※ギター
ロン・“バンブルフット”・サール(一部ボーカルも/SONS OF APOLLOASIAなど)、ガス・G(FIREWIND)、アンディ・ジェイムズ(ex. SACRED MOTHER TONGUE)、エディ・オヘダ(ex. TWISTED SISTER)、グレッグ・ハンデヴィット(KUBLAI KHAN、ex. MEGADETH)、フランク・ハノン(TESLA)、ラス・パリッシュ(STEEL PANTHER、ex. FIGHT)、ジョン・アクイリノ(ICON)、タイソン・レズリー、デイヴ・シャープ(DEAD BY WEDNESDAY)、シャニ・キメルマン、ドリュー・フォーティアー(ZEN FROM MARS)

※ドラム
パオロ・カリディ(HOLLOW HAZE、ex. KILLING TOUCH)、デイヴ・マクレイン(SACRED REICH、ex. MACHINE HEAD)、チャック・ビーラー(ex. MEGADETH)、チャーリー・ベナンテ(ANTHRAX)、デイヴ・ロンバード(SUICIDAL TENDENCIESDEAD CROSSMR. BUNGLE、ex. SLAYER)、ジミー・デグラッソ(ex. BLACK STAR RIDERS、ex. MEGADETH、ex. Y&Tなど)、ダーク・ヴェルビューレン(MEGADETH、ex. SOILWORK)、オーパス(DEAD BY WEDNESDAY)、トロイ・ルケッタ(TESLA)、マイク・ヘラー(RAVEN、ZEN FROM MARS、ex. FEAR FACTORY

演奏はどれも原曲に忠実で、可もなく不可もなくといったところ。トム・ハザートがメインで歌う前半はダミ声中心なので、曲によっては「う〜ん……」と思うものも含まれています。が、中盤から後半……「Riff Raff」(AC/DC)、「Over The Mountain」(オジー・オズボーン)、「Sweet F.A.」(SWEET)、「Downed」(CHEAP TRICK)あたりはトム不参加でそれぞれマイク・マクマスター、アンドリュー・フリーマン、トッド・カーンズ、チップ・ズナフが歌っているので安心して楽しめるはずです。また、「Sheer Heart Attack」(QUEEN)や「Love Me Like A Reptile」(MOTÖRHEAD)にはドロ・ペッシュが、「Say What You Will」(FASTWAY)にはマーク・スローターがそれぞれ参加しており、聴けばそれとすぐにわかるボーカルで楽しませてくれます。

まあ、こういうアルバムはああだこうだ言わずに無心で楽しむのが一番なんでしょうね。強いて言うなら……ジュニアってそんなにCHEAP TRICK好きだったんだ、と(笑)。あと、DEF LEPPARDもね(アートワークの話)。なんだかんだこの人、ポップなものが好きなんでしょうかね。

 


▼ELLEFSON『NO COVER』
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2020年7月18日 (土)

INTER ARMA『GARBERS DAYS REVISITED』(2020)

2020年7月上旬発売の、INTER ARMAのカバーアルバム。日本盤未発売。

INTER ARMAはバージニア州リッチモンド出身の5人組みスラッジ/デス/ポスト・メタルバンド。2006年の結成以降、これまでに4枚のオリジナルアルバムを発表しており、今作は4thアルバム『SULPHUR ENGLISH』(2019年)に続くスタジオ作品となります。

このバンドに関してはほぼ知識がなく、本作で初めて触れることになります。カバーの内訳は以下のとおり(カッコ内は原曲アーティスト名)。

01. Scarecrow [MINISTRY]
02. Southern Man [ニール・ヤング]
03. Hard Times [CRO-MAGS]
04. March Of The Pigs [NINE INCH NAILS]
05. The Girl Who Lives On Heaven Hill [HÜSKER DÜ]
06. In League With Satan [VENOM]
07. Runnin' Down A Dream [TOM PETTY & THE HEARTBREAKERS]
08. Purple Rain [PRINCE & THE REVOLUTION]

メタルというよりはオルタナ・メタル/インダストリアル系、ブラックメタルやクロスオーバー系ハードコアが中心で、そこにニール・ヤングやトム・ペティ、プリンスといった王道(かな?)をミックスしたセレクト。カバー自体も比較的原曲に忠実なものが多く、MINISTRY「Scarecrow」やNIN「March Of The Pigs」なんてマシーンビートをそのままヒューマンビートに置き換えたくらいで、まんまですよね。

かと思えば、ニール・ヤング「Southern Man」はスラッジ色かつエモ味が激増したヘヴィバージョンに生まれ変わっている。「Runnin' Down A Dream」も原曲よりハードロック色が増しており好印象だし、素直に歌うあたりにバンドとしてのカバーのこだわりが垣間見えます。

「Hard Times」や「The Girl Who Lives On Heaven Hill」あたりのどハードコアなカバーも捨てがたいし、その流れで取り上げた元祖ブラックメタルVENOMのカバーもナイスセンス。そんな中、最後の最後にスラッジー&サイケデリックなテイストに仕立てた「Purple Rain」も素晴らしい。全8曲で37分という短さと合間って、腹八分目で楽しめる好カバー集です。

このアルバムが入口となって、ここから過去作をさかのぼって聴いてみようかなと思える、そんなきっかけを与えてくれた貴重な1枚です。アルバムタイトルはMETALLICA名カバー集が元ネタなのもご愛嬌。そこも含めて愛すべき良作ですね。

 


▼INTER ARMA『GARBERS DAYS REVISITED』
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2020年7月12日 (日)

STATIC-X『PROJECT REGENERATION VOL.1』(2020)

2020年7月にリリースされたSTATIC-Xの7thアルバム。

前作『CULT OF STATIC』(2009年)から約11年ぶりの新作となりますが、バンドはその間に一度解散し、ウェイン・スタティック(Vo, G)を中心に再結成するものの2013年に再解散。ウェインはソロ名義で活動を続けようとするものの、2014年に急逝。しかし、2018年頃からケン・ジェイ(Dr)、トニー・カンポス(B)、コーイチ・フクダ(G, Prog)のオリジナルメンバーが集結し、ウェインが残した未発表音源を再録音する「Project Regeneration」と称したプロジェクトが立ち上がります。と同時に、Xer0(ゼロ)と称する覆面シンガーをフロントに据えてライブ活動も再開しました。

「Project Regeneration」での音源には、Xer0のボーカルテイクのほか、デヴィッド・ドレイマン(DISTURBED)やアイヴァン・ムーディ(FIVE FINGER DEATH PUNCH)、アル・ジュールゲンセン(MINISTRY)、エドセル・ドープ(DOPE)、デズ・ファファーラ(DEVILDRIVER、COAL CHAMBER)、バートン・C.ベル(FEAR FACTORY)らがゲスト参加した音源が収録される噂がありましたが、いざ完成したアルバムはウェインとXer0のボーカルが半々といったところ(ウェインのみが4曲、Xer0のみが4曲、2人歌唱が3曲)。ゲストボーカルは「Dead Souls」でのアル・ジュールゲンセンのみとなっています(ちなみにXer0の正体は先のエドセル・ドープだという噂がありますが、こちらは本人が否定しているそうです。だけど、彼だと思うんだよなあ。笑)。

楽曲の大半は2003〜4年頃(3rdアルバム『SHADOW ZONE』から4thアルバム『START A WAR』の時期)と2013〜14年頃(ウェインのソロ名義)に書かれたもので、ソングライターのクレジットをみるとコーイチ・フクダの後任として加入したトリップ・アイゼンの名前も見つけられます。リードトラック「Hollow」は『START A WAR』制作時のアウトテイクとのことですが、元のデモからかけ離れたサウンド、アレンジになっているとのこと。同曲のクレジットにトリップ・アイゼンとコーイチ・フクダの名前が並ぶのはそういう意味なんですね。

さて、気になるサウンド/楽曲ですが、STATIC-Xのことを知っている人がイメージするものそのまんまで、良くも悪くも時代を感じさせる音と言えるかもしれません。が、それが不思議と心地よく響くんですよね。オープニングを飾る「Regeneration」には過去の楽曲をサンプリングしたテクストが多数含まれており、これだけで初期のファンはアガるわけですが、続く「Hollow」以降の流れに「これこれ!」と満足するはずです。

ぶっちゃけ、これ本当にアウトテイク?と思えるほどクオリティは高く、さすがボーカルトラックのみ残してバックトラックおよびアレンジはすべて今の音で置き換えているだけあります。Xer0のボーカルもそこまで違和感なく楽しめますし、ラストのアル・ジュールゲンセンとのトリプルボーカル曲含め“あの”STATIC-Xの新作として楽しむことができます。

STATIC-Xを知らないリスナーにはこのアルバムがどう響くのか少々気になりますが、2000年代前半のニューメタル真っ只中な時期に青春を過ごしたリスナーには懐かしくも新しく響く1枚ではないでしょうか。なお、このプロジェクトは第2弾も予定されているようなので、もしかしたら上記のゲストボーカル曲はこちらに収録されるのかもしれませんね。なんにせよ、続報を楽しみに待つことにしましょう。

 


▼STATIC-X『PROJECT REGENERATION VOL.1』
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2020年1月12日 (日)

MINISTRY『ΚΕΦΑΛΗΞΘ(PSALM 69)』(1992)

1992年7月にリリースされた、MINISTRYの5thアルバム。

MEGADETHの来日公演(1991年初頭)の開場SEとして『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』(1989年)が使用されたことで注目を集め、同作が1991年11月にようやく日本盤化。同時期には海外でニューシングル「Jesus Built My Hotrod」がリリースされ、このスラッシュメタル化した楽曲を通じて同ユニットにさらなる注目が集まり始めます。

こうして翌年に届けられたニューアルバムは、『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』での「Thieves」「Burning Inside」、そして先の「Jesus Built My Hotrod」を気に入ったリスナーなら一発でハマる内容に仕上げられました。

アルバム冒頭の「N.W.O.」から5曲目「Jesus Built My Hotrod」までの流れはとにかく圧巻で、メタル化したMINISTRYの真骨頂といえる内容です。スラッシーなギターリフを軸に、時に生ドラムに近いリズム、時に「Thieves」「Burning Inside」路線のマシンビートを用いて展開される楽曲群は、スラッシュメタルとハードコアパンクの中間といったところでしょうか。「TV II」での曲調や、それに乗せたアジテートはメタルというよりもハードコアのそれですしね。それに続く「Hero」なんて完全にメタルマナーですから、そりゃニヤニヤものでしょう。

圧巻は、アルバム中盤に置かれた「Jesus Built My Hotrod」。この曲の殺傷力と中毒性はリリースから30年近く経った今も衰えることなく、2020年の今聴いてもクセになる魅力を放ち続けています。ちなみに、この曲でボーカルを担当しているのはBUTTHOLE SURFERSのギビー・ヘインズ。この組み合わせも最高ですね。

……と、前半5曲でインダストリアル・メタルの真骨頂を楽しめる本作。ところが、続く6曲目「Scare Crow」で空気が一変します。BPMをグイッと落とし、引きずるようなミディアムヘヴィなリズムの上で単調なギターリフとボーカルが繰り返されるのみ……これが8分半も続くのですから(笑)。続く「Psalm 69」もシンフォニックなサウンドを用いつつも単調に繰り返されるフレーズ、途中でテンポチェンジしてヘヴィメタル的な展開を見せますが、再びスローに戻り、またテンポチェンジして……の反復。「Corrosion」は若干BPMが上げ気味ですが、メタルというよりはインダストリアル側に思いっきり寄った作風。ラストの「Grace」もヘヴィさを保っていますが、楽曲というよりはコラージュと呼ぶに近い作風。こうして前半の高揚感とは相反する、カオスな展開でアルバムは幕を降ろすのでした。

前作の「Thieves」「Burning Inside」や、シングル「Jesus Built My Hotrod」でMINISTRYに興味を持ったライト層をアルバム前半で惹きつけて、後半のダウナー4連発で地獄の底に落とし込む(笑)その悪意こそ、MINISTRYの本領発揮といったところでしょうか。傑作度という点においては前作のほうがはるかに上ですが、リスナーを挑発する作風という点では本作の右に出るものはないのではないか。そう思わずにはいられない快作です。

 


▼MINISTRY『ΚΕΦΑΛΗΞΘ(PSALM 69)』
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2018年3月22日 (木)

MINISTRY『AMERIKKKANT』(2018)

MINISTRYの4年半ぶり、通算14作目のスタジオアルバム。前作『FROM BEER TO ETERNITY』(2013年)を最後にもうオリジナルアルバムは作らないなんて話があったような気がしますが、アル・ジュールゲンセン(Vo, G)はこのアルバムを作らずにはいられなかった。そういうことなんでしょう。

それもそのはず、本作は現在のアメリカでのドナルド・トランプ政権に対する怒りが大きなきっかけになっているのですから。

これまでもMINISTRYは『PSALM 69: THE WAY TO SUCCEED AND THE WAY TO SUCK EGGS』(1992年)を筆頭に、ブッシュ政権を批判する楽曲や作品を発表しています。こういったポリティカルな要素はアルにとって、創作活動における大きな起爆剤になっていることは間違いないでしょう(もちろん、それがすべてだとは言いませんが)。

そして、アルはただトランプ政権を批判・攻撃するだけではなく、そういった人物を国のトップに選んだ社会に対する批判もこのアルバムで繰り広げています。それがまさしく、アルバムタイトルである『AMERIKKKANT』に示されているのでしょう。

とにかく、本作に関しては対訳の付いた国内盤を購入して、アルが表現したいこと、伝えたいことをしっかり理解してほしいところです。

そして、サウンドについて。お聴きいただけばわかるように、“これぞMINISTRY”というインダストリアルサウンドが終始展開されています。序盤こそヘヴィなミドルチューンが続くように思われますが、M-3「Victims Of A Clown」の終盤から始まるデジタルスラッシュビート……おなじみの“TVシリーズ”最新章「TV5/4 Chan」に続いて、突っ走りまくりの「We're Tired Of It」へと流れる構成は、往年のファンなら思わず手に汗握るものなんじゃないでしょうか。

後半もグルーヴィーな「Wargasm」、パワフルなインダストリアルビートが気持ち良い「Antifa」や「Game Over」、本作の主題ともなるエピックナンバー「AmeriKKKa」と、好きな人にはたまらない内容と言えるでしょう。とうことは、初心者には……決してキャッチーな作品とは言い切れないので、初めてMINISTRYの作品を手に取る人には本作はちょっとだけ難易度が高い1枚かもしれません。しかし、時代と対峙するという点においては、今このタイミングに聴いておくべき重要な“パンク”アルバムとも言えるでしょう。

なお、本作にはFEAR FACTORYのフロントマン、バートン・C・ベルが数曲にゲスト参加しています。さらに、N.W.A.のオリジナルメンバーのひとり、アラビアン・プリンス、ベックのバックバンドなどでおなじみのDJスワンプなども名を連ねています。このへんの名前にピンと来た人、ぜひチェックしてみてください。

なお、個人的には本作、ここ数作の中で一番好きな1枚です。



▼MINISTRY『AMERIKKKANT』
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2017年7月12日 (水)

MINISTRY『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』(1989)

MINISTRYが1989年に発表した通算4作目のスタジオアルバム。初期はニューウェイブやエレクトロニックボディミュージックの流れにあるサウンドが特徴でしたが、1988年の3rdアルバム『THE LAND OF RAPE AND HONEY』あたりからインダストリアル色が強まり、続く本作ではそこにメタリックな要素が加わり、のちの方向性が定まることになります。

リリース当初はここ日本でも一部のマニアにしか知られていなかった彼らが、一躍ここ日本のメタルファンの間で注目を集めることになったのは、1991年初頭に行われたMEGADETHの来日公演の開演前SEに、本作の冒頭2曲「Thieves」「Burning Inside」が使用されたことから。僕も当時、中野サンプラザでMEGADETHを観ていますが、確かに客入れ時に流れていたこの2曲が異常にカッコよかったことをよく憶えています。当時は今のようにインターネットもなく、それがMINISTRYというバンド(ユニット)の楽曲だと知るのは数ヶ月後、音楽誌『BURRN!』を読んでからでした。

反復する性急なデジタルビートの上に、ザクザクと気持ち良いスラッシュメタル風ギターリフが乗る。ボーカルもメロディを歌うのではなく、がなるように叫び散らすだけ。タイミング的にはちょうどNINE INCH NAILSに注目が集まり始め(彼らはGUNS N' ROSESとの共演などにより、1989年に発表したデビュー作『PRETTY HATE MACHINE』でプチブレイク)、日本でもSOFT BALLETがボディミュージックを極め、デジタルサウンドを本格的に取り入れる前のTHE MAD CAPSULE MARKETSがメジャーデビューした時期。そういう時代背景を考えると、この時期にMINISTRYが日本で“見つかった”のは興味深いところです。

本作の魅力は、スラッシーな楽曲一辺倒ではないところ。冒頭3曲はその系統の楽曲ですが、「Cannibal Song」はゴスやニューウェイブのカラーが感じられるし、「Breathe」はパーカッシブなドラムパターンが印象的。終盤の「Faith Collapsing」はダークなミドルチューンだし、ラストの「Dream Song」なんてどこか宗教じみた世界観が展開されている。「Thieves」「Burning Inside」のカラーを求めて本作に手を出したメタルファンにはちょっと厳しい内容かもしれませんが、のちのゴシックメタルなどにも通ずる世界観が繰り広げられていると考えれば、意外と入っていきやすいのではないでしょうか。

メタル度という点においては、次作『PSALM 69: THE WAY TO SUCCEED AND THE WAY TO SUCK EGGS』(1992年)より劣るものの、やはり冒頭2曲の完璧さを考えたら、まずは本作から聴いてほしい。そう力説したくなるほど、お気に入りの1枚です。



▼MINISTRY『THE MIND IS A TERRIBLE THING TO TASTE』
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2006年4月25日 (火)

MINISTRY『RIO GRANDE BLOOD』(2006)

 ポール・バーカーが抜け、完全にアル・ジュールゲンセンのワンマンプロジェクトとなったMINISTRY。約2年ぶり、ワンマン化から2作目となるこの「RIO GRANDE BLOOD」は、レーベルを「Sancuary」から「Megaforce」に移って初の作品となります。前作「HOUSES OF THE MOLE」が非常に攻撃的で、内容も反ブッシュ政権的なものだったこともあり、初期のファンからは「ここ数作のヘヴィ&ダーク路線よりはいいけど、ちょっとウルさい」なんて声も聞こえてきたほど、ド頭から攻めまくってました。あ、俺は嫌いじゃないですけどね(ただ、確かに前述のファンの気持ちも理解できるんだけどね)。

 んじゃこの新作はどうなってるのかというと‥‥前作を気に入ってるファンは、間違いなくこのアルバムも気に入ると思います。いや、もしかしたら前作以上に気に入るかもしれませんね。ジャケットもこれ、ブッシュですよね(苦笑)。そして、オープニング曲 "Rio Grande Blood" 冒頭での演説‥‥ブッシュ親子のことを相当嫌っているのは知っていましたが、ここまで引っ張るのはある意味尊敬に値しますわ。曲名とか見ても、そういう「怒り」を匂わせるタイトルが多いし。

 MINISTRYっていうと、やはり'90年前後から「PSALM 69」までが好きって人が多いかと思うんですよ。実は俺自身もそれに当てはまるわけで、特に2000年前後以降の作品ってあまり聴いてなかったんですよね。多分久しぶりに聴いたのが、ここ1~2作辺りからだったんですが‥‥確かにちょっと(いや相当か)変わってしまったとは思うけど、本質的な部分はあんまり変わってないのかなぁという気もして。ま、前作やこの新作辺りは、スラッシュギターと打ち込みドラムという「攻撃性」の部分に特化してる気はしますけど。バランス感がね‥‥よい意味で持ってたはずなんですよ、前述の頃は。ま、気づけばメンバーも減り、アルのワンマン体制ですからね。こうならざるを得ないのかな、とも思いますけど。

 あ、決してつまらないとか嫌いって言ってるわけじゃないですよ。むしろ自分の好みのサウンドだし、俺は気に入ってますよ。頭2曲の突っ走りっぷりはMINISTRY以外の何者でもないですしね。その後出てくるミドルヘヴィチューンもまた「らしい」曲ばかりだし。しかもただミドルのままで終わるんじゃなくて、途中でテンポアップする展開が入ったりで、結局は突っ走りっぱなし、みたいな。「PSALM 69」の攻撃的な部分が好きな人も、きっとこれなら気に入ってくれると思うんですけどね。

 今回、アメリカでも5/2にリリース予定のこのアルバムを真っ先に聴く機会を得て、こうやって紹介してるわけですが‥‥うん、楽しみにしていていいと思いますよ。なにやらこのアルバムのツアーでは、SLIPKNOTのジョーイ・ジョーディソンがドラムを担当するそうじゃないですか‥‥このアルバムにピッタリの人選だと思います。むしろSLIPKNOTのマスク&衣装を纏ったジョーイにバックを固めてもらって、アルにはフロントを陣取らせて。もうそれだけでさまになってるし。すっげー観たいなぁ、それ。どうやら日本にも9~10月頃には来てくれそうなので、ちょっと楽しみに待ちましょう。ポール・レイヴン(元KILLING JOKE)もツアーメンバーとして参加してるしね。



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2004年5月 5日 (水)

V.A.『ROCK AGAINST BUSH VOL.1』(2004)

  勿論、ここに紹介する26組のバンド全てが必ずしもパンクロックだとは限りません。が、本質的な部分からすれば、俺から見れば全部パンクバンドだと思えるんですよね。

  NOFXのメンバー、ファット・マイクが運営するレーベル、「FAT WRECK RECORDS」が、反ブッシュ政権、というか次期大統領選でブッシュが当選することを危惧して立ち上げたのが「www.punkvoter.com」というサイト。そしてそれが高じて、「ROCK AGAINST BUSH」というプロジェクトまで立ち上げ、それに賛同するミュージシャンを集めてこのアルバムまで完成させてしまいました。

  参加アーティストは26組。有名どころだとOFFSPRING、SUM41、NEW FOUND GLORY、PENNYWISE、LESS THAN JAKEといったパンク勢、そしてTHE GET UP KIDSやMINISTRYといったちょっとパンクからは外れたラインにいるバンドもその趣旨に賛同して参加。中にはジェフ・ビアフラ(元DEAD KENNEDYS)みたいな大御所も参加しています。しかもこの26組中18組が現時点で未発表の新曲を提供しています。太っ腹! OFFSPRINGなんて、オリジナルアルバムでは耳障りのいいポップパンクを聴かせておいて、このアルバムでは "Baghdad" という直球のパンクソングを持って来ているんだから‥‥

  アルバムの内容については、まぁオムニバス特有のバラツキがあるので絶賛こそしませんが、まぁ好きな人なら楽しんで聴ける1枚だと思います。実際、このアルバムがこの内容で、しかもDVDまで付いて1,000円前後で買えるという事実‥‥如何に作り手が儲けを度外視して、如何に多くの人の手元に、耳に届けたいか‥‥その意思が伝わってきますよね。

  パンクって何だろうね‥‥いや、ロックでもいいや。別に必ず政治的なことに関わるべきだとは思わないよ。けどさ、言いたい事さえも言えない今の風潮の中、こうやってリスクを伴う活動を矢面に立って実践している人がいる事実。これを日本の「自称・パンクロックバンド」の皆さんにも見習ってもらいたい。カッコだけのパンクや、「俺等はメジャーとは関わりたくない」とかポーズ決めてるインディーパンクやその周辺、少なからず「パンク」というものに影響を受けているのなら、そして「パンク」と名の付くシーンや音楽に携わっているのなら、(その内容はともかくとして)このやり方だけでも見習って欲しいと切に願うよ。

  別に今一部の音楽ファンの間で問題視されている輸入権の問題だけじゃないよ。日本の政治は本当にどうしようもないところまで来てると思う。それを見て見ぬ振りして「パンク」を名乗るのは、正直カッコ悪いと思う。どうしようもなくね。まだまだ日本には、こんなもんじゃない、本当にカッコいい「真の」パンクロックバンド、沢山いるはずでしょ? ジョー・ストラマーがこの現実を知ったら、向こうで泣いてるよきっと。

  ファット・マイクの主張、全てを受け入れることは出来ないけど、彼が言わんとしてることは理解できる。そしてその手段(=今回のリリース)も非常に判りやすくて好感が持てる。日本でもこういうことが出来ないのかなぁ‥‥インディーズレベルでさ。もっとカッコいいとこ、俺に見せて欲しいよマジで。



▼V.A.『ROCK AGAINST BUSH VOL.1』
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