2003/11/05

MOGWAI『HAPPY SONGS FOR HAPPY PEOPLE』(2003)

スコットランドの「ノイズ・テロリスト」、MOGWAIが'03年春にリリースした通算4作目のオリジナルアルバム「HAPPY SONGS FOR HAPPY PEOPLE」は、ある種それまでの活動に一区切りつけるかのような集大成的内容になっているだけでなく、それまでとは違う「色合い」も見出すことができます。前作「ROCK ACTION」はそれまでの轟音ギターサウンドを後退させ、ムーディーで聴かせる曲(そう、前作ではアルバムの半数がボーカル入りだった)、穏やかな空気感を持った曲に支配されていたけど、今度のアルバムはどうだろう‥‥確かに前作の延長線上にある作風でもあり、尚かつ前作以上に轟音サウンドをちゃんと取り入れつつ(ま、そうはいっても初期程のうるささや狂気は感じないですけどね)、曲もコンパクトにまとまっていて(殆どの曲が4~5分台)、非常に聴きやすくて取っ付きやすいアルバムになっています。

新作では普通のボーカル・トラックは皆無。ボコーダー等を使ったコラージュ的なナンバーは幾つかありますが、とても歌モノと呼べる代物ではなく、完全に「楽器のひとつ」として機能しています。

穏やかさや緩さといった点では前作に近い印象を受けますが、ドラマチックに盛り上がっていく曲が多く、例えば静かにギターのアルペジオから始まり、徐々に徐々にとノイズギターが被さっていってクライマックスを迎える "Killing All The Flies" や、3本のギターが微妙に違ったフレーズ(アルペジオ)を絡ませていき、轟音ギターが加わった瞬間に何かが取り憑いたかのような激しさを見せる "Ratts Of The Capital" といった辺りは最も「MOGWAIらしさ」を感じることの出来る楽曲なのではないでしょうか。この辺りの楽曲は「COME ON DIE YOUNG」辺りを好むファンにもアピールする内容かと思いますし、また前作しか知らない人には(って、そういう人は少ないと思いますが)驚きに値する楽曲かもしれませんね。

前作を覆っていた独特な暗さ・冷たさが減退し、多少なりとも幸福感のようなものを感じられる‥‥正にタイトル通りかもしれませんが‥‥それもこのアルバムの特徴のひとつと言っていいでしょう。それは良い意味での「殺伐さ」の減退かもしれませんし、またある種のファンにとっては「緊張感の緩和」を意味するものかもしれません。確かに初期のような怒りに満ちた轟音サウンドも彼等の魅力であり、自分自身もそういった面に魅了されたひとりなのですが、前作の路線も好む自分としてはこの新作のサウンドもまた「MOGWAIらしさ」を存分に感じ、楽しむことが出来るものとして成り立っているんですよね。

例えば5曲目 "Boring Machine Disturbs Sleep" で聴ける、まるで賛美歌のような穏やかさ、そして7曲目 "Golden Porsche" で感じることのできる優しさ、等‥‥そういった「これからのMOWAI」的な新しい面もまた、こういう形で取り込まれると「ああ、何かMOGWAIらしいよな‥‥」と思えちゃうんですよね。決して違和感は感じることなく、ごく自然な形で変化・進化してるように感じられますよね。

バンドはこのアルバムを「作っていて楽しかった」そうです。そういった「純粋に音楽を楽しむ心」が、このタイトルに繋がっているのかもしれません。しかし、ここで俺はひとつ、わざと曲解をしてみようと思います。「ハッピーや人々の為の、ハッピーな曲」というタイトルの作品集ではあるんですが、これって逆説的に捉えちゃってもいいんじゃないかな、と‥‥つまり「決してハッピーになれない人達に向けた、現実的な曲達」‥‥そんな中からほんの一筋の光を見出すように、このアルバムには轟音や静寂に紛れて、ひと握りの幸福感も添えられている。全てがハッピーの塊じゃないからこそ、そういった人々にとってよりリアルに響く‥‥そういう類のアルバムなのかなぁ、と。深読みし過ぎだとは思いますが、この音の渦の中に身を委ねていると、自然とそういう気持ちになってくるんですよね‥‥



▼MOGWAI『HAPPY SONGS FOR HAPPY PEOPLE』
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投稿: 2003 11 05 02:50 午前 [2003年の作品, Mogwai] | 固定リンク