MONSTER MAGNET『SPINE OF GOD』(1991)
1991年12月6日にリリースされたMONSTER MAGNETの1stアルバム。日本盤未発売。
バンドとしては続くメジャーのA&M Recordsと契約した2ndアルバム『SUPERJUDGE』(1993年)、特に4作目の『POWERTRIP』(1998年)以降に日本でもその知名度を高めていったと記憶しています。が、インディーズのCaroline Recordsから発表された唯一のアルバムである本作はバンドの歴史を語る上では欠かせない、原点的な1枚であり、2006年には現在のアートワークに変更されてSteamhammer Recordsからの再発も実現。いまだに日本盤化は実現していないものの、現在はストリーミングサービスを通じて気軽に触れることができるようになっています。
現在まで在籍するメンバーはフロントマンのデイヴ・ウィンドーフ(Vo, G)のみ。プロデュースはウィンドーフと当時のギタリスト、ジョン・マクベインが共同で手がけています。作風、内容的には現在まで踏襲され続けているストーナーロック/サイケデリックロックをベースに、時代を超越した音・曲作りを展開。1991年というとTROUBLEがメジャーリリースを続けていたり、KYUSSも1stアルバム『WRETCH』をリリースしたりと、ストーナーロック界隈に注目が集まり始めていた時期と言えるかもしれません。メジャー感の強い一般的なハードロック/ヘヴィメタルから一歩踏み込んで、よりマニアックかつ新たなヒーローが求められていたタイミングとも言えるのかなと。
そういった意味では、ウィンドーフのカリスマ性やBLACK SABBATHをよりUSガレージロック的に表現したバンドサウンド、マニアックなようで意外にもキャッチーな楽曲群は“新たな波”としてシーンで高く評価されたようです。その結果が、次作でのメジャー進出につながるわけですからね。思えば、SOUNDGARDENやALICE IN CHAINSのようなシアトル産バンドがすでにメジャー進出していた時期であり、MONSTER MAGNETのようなバンドが持て囃されるのは時間の問題だったのかもしれません。
インディーズだからとか1作目だからとか、そういった枕詞がいならいほどにすでに個性が完成されており、以降の作品と比較しても引けを取らない内容。もちろん2作目以上はメジャーのプロダクションで制作されていることもあり、音の質感やお金のかけ方に違いはありますが、楽曲面に関してはこの荒々しさをはらむアレンジ含め、この時期にしか出せない個性も楽しむことがでる。中でも、「Node Scene」や「Black Mastermind」「Spine Of God」「Ozium」といった長尺曲で展開されるスペーシーさやサイケデリック感は特筆すべきものがあり、リリースから30年経った今聴いても素直にカッコいいと思える仕上がりです。
あと、ほかのストーナー勢と比較するとMONSTER MAGNETの楽曲や演奏には“華”が感じられ、それはこの1作目の時点からすでに備わっていることにも気付かされます。危うさや妖しさの中に存在する、このメジャー感の強い華がのちのブレイクにもつながっていくんでしょうね。GRAND FUNKの「Sin's A Good Man's Brother」をカバーしている点も、そのへんにつながっているような気がしてなりません。
どんどん骨太になっていくメジャー進出後はもちろんですが、本作も初心者にマストで聴いていただきたい良作。特にカバー曲中心の最新アルバム『A BETTER DYSTOPIA』(2021年)との共通点もたくさん見つけられるので、同作とあわせてチェックしていただきたい1枚です。
▼MONSTER MAGNET『SPINE OF GOD』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ)