実は2020年に予定されていたMOTLEY CRUEとDEF LEPPARD(そしてスペシャルゲストのPOISONとジョーン・ジェット)のダブルヘッドライン・スタジアムツアーを観に、夏頃に渡米する予定でした。2公演分のチケットも確保していたものの、2020年2月以降の情勢の変化によりツアーは2021年夏に延期に。さらに、2021年も情勢が安定しないということで、最終的には2022年にまで延期されました。チケットは有効だったものの、個人的に渡米に不安を感じ泣く泣く断念。この2組以上にPOISONやジョーン・ジェットが観たかったんだけどね……こればかりは仕方ない。加えて、ミック・マーズが2022年をもってツアーからの引退を宣言。ああ……。
同組み合わせによるツアーは2023年にも続行され、2023年にはついに日本でも実現。残念ながらPOISONやジョーン・ジェットは来るはずもなく、同年のジョインツアーにゲスト参加したアリス・クーパーの来日もなし。いつぞやのWHITESNAKEとDEF LEPPARDのダブルヘッドラインツアー(2008年)みたいな形になるのかな、とは思いながらも、やっぱり行かないわけにはいかないと、チケットを確保。2公演で順番の入れ替わりがあり、僕はDEF LEPPARDが後攻を務める11月4日公演を選びました。その後11月3日に『NEX_FEST 2023』が決定したので、結果オーライでした。
当日は、開場時間に伊藤政則氏がオープニングアクトとしてDJを披露。懐かしの『HEAVY METAL SOUNDHOUSE』を思い浮かべながら、オールドスクールな演奏に耳を傾けつつビールを味わい続けました。
■MOTLEY CRUE
1年前にミック・マーズ(G)がツアーからの引退を発表(のちに、一方的に解雇されたことが発覚)。代役としてMARILYN MANSONやアリス・クーパーで知られるジョン・5が加入し、今回が初来日。ルックスはもちろん、テクニック的にも申し分のない人選ですが、セットリスト的にはここ20年くらいほぼ変化がないのでそこまで期待していませんでした。
事実、動画サイトやSNSにアップされた演奏は全盛期よりもBPMが落とされ、かなりもっさりした印象で「みんな年取ったな……」と悲しくもなりましたし、この日のオープニングナンバー「Wild Side」でもその印象は変わらず。椅子から立ち上がることなく、観察気分でその動向を見守りました。
ジョンの演奏はオリジナルをなぞりつつ、彼らしいフレージングや運指を交えたモダンな仕上がりで、ミックのプレイに慣れた耳には若干の違和感を覚える瞬間もいくつかあったものの、概ね好意的に受け取ることができました。トミー・リー(Dr)のプレイも曲が進むにつれて熱が感じられたし、ニッキー・シックス(B)も老けて汚らしくなったものの(笑)、カリスマ性は衰えていない。その一方で、肝心のフロントマン様は……まあ、比較的歌えているほうだったかな。
個人的な見どころは3つ。ひとつはジョンのギターおよび三線を用いたソロパート。三線は来日して触れたみたいだけど、彼流の奏法を交えたプレイは非常に見応え/聴き応えがあり、ミックにはない魅力や個性をしっかり感じ取ることができました。ワンマンプレイっぽいというか我が強そうなころも、このバンドに合っているんじゃないかな。
2つめは、再結成後に発表された新曲「The Dirt (Est. 1981)」の存在。これがあるとないとで全然違う。基本懐メロセットリストなんだけど、現役感を醸し出す点でもこの曲は重要だなと思いました。映像と音源を使ってマシンガン・ケリーのパートもしっかり用意されていましたし、今後もツアー(=活動)を続けるのならもっとこういう曲を増やすべきでは。
もうひとつは、カバー曲のみで構成されたメドレーパート。ゲイリー・グリッターの「Rock And Roll, Part 2」から「Smokin' In The Boys Room」へとつなげるメドレーは解散前にも披露されてきたけど、そこにビートルズ「Helter Skelter」やピストルズ「Anarchy In The U.K.」を加え、さらにRAMONES「Blitzkrieg Bop」とBEASTIE BOYS「Fight For Your Right」をくっつけた10分強にわたる構成は、「The Dirt (Est. 1981)」同様に本ライブのハイライトだったのではないでしょうか。つうか、「Fight For Your Right」は(手垢がつきまくっているものの)音源化すべきカバーではないかな。アルバム制作は望めなさそうだから、3〜4曲程度のEPくらいは作ってもらいたいものです。
約80分(今回は2バンドとも持ち時間80分と同じ条件)と往年のワンマンライブよりも少々短いものの、セトリ的には文句なしの内容だったのではないでしょうか。つうか、もうそろそろ「20年ぶりにやります」とか「30年ぶりにライブで披露」って曲、増やしてくれてもいいんだけどなあ。
セットリスト
01. Wild Side
02. Shout At The Devil
03. Too Fast For Love
04. Don't Go Away Mad (Just Go Away)
05. Live Wire
06. Looks That Kill
07. The Dirt (Est. 1981)
08. John 5 Guitar Solo
09. Medley: Rock And Roll, Part 2 / Smokin' In The Boys Room / Helter Skelter / Anarchy In The U.K. / Blitzkrieg Bop / Fight For Your Right
10. Home Sweet Home
11. Dr. Feelgood
12. Same Ol' Situation (S.O.S.)
13. Girls, Girls, Girls
14. Primal Scream
15. Kickstart My Heart
■DEF LEPPARD
日本公演は『HYSTERIA』(1987年)完全再現ライブ(2018年10月)以来だから、実に5年ぶり。今回は最新作『DIAMOND STAR HALOS』(2022年)リリース後なので、こちらの楽曲を含めた内容になることは想像に難しくなく、実際そういったセットリストになっていたと思います。通常の彼らのワンマンよりも2〜30分短いことから、単独来日ならもう3、4曲多く聴けたのかなと思ったけど、前回も17曲(本編12曲、アンコール5曲)だったから、曲数的には一緒か。
「Rock! Rock! (Til You Drop)」を現代的にアップデートさせたような「Take What You Want」からスタートしたライブは、直前のモトリーとは異なり不思議と現役感濃厚。そういえば、Kアリーナってめちゃめちゃ音がいいって評判だったけど、それはモトリーのときにはあまり感じなかったのね。だけど、DEPPSになった途端にその恩恵をより強く味わえた気がします。もともと音の良いライブというイメージが強い彼らだけど、この日は今まで観た中でも一番だったと断言できるほどの気持ち良さ。結果、モトリーは終始座って観覧していた自分も、DEPPSではイントロと同時に立ち上がり踊りまくりでした。
新作からの楽曲は先の「Take What You Want」と新たなアンセム「Kick」、そしてジョー・エリオット(Vo)がアコギを手にして歌う「This Guitar」の3曲にとどまり、ほかはお馴染みのヒットナンバー。前回の来日時にはオミットされた「Foolin'」や「Promises」、そして名バラード「Bringin' On The Heartbreak」からインスト「Switch 625」(リック・アレンのドラムソロ含む)へのメドレーも久しぶりに復活し、こちらも文句なしのセトリでした。
個人的には「Fire It Up」や「SOS Emergency」「Gimme A Kiss」といった新作からのロックチューンをもっと聴きたかったかな。そんな不満が出るってことは、それくらい現在進行形で充実ぶりを発揮し続けているという事実の裏返しでもあるわけで、そこがモトリーとの大きな違い。言ってしまえば、両バンドとも懐メロを求めてくるオーディエンスが大半なわけですが、僕自身にとってはこんなにも観る側のモチベーションが変化する対バンも珍しかったな。
なんとなくだけど、DEF LEPPARDはまた近いうちに再来日してくれそうな気がするので、その際には企画色の強いセトリで日本のファンを楽しませてもらいたいところです。
セットリスト
01. Take What You Want
02. Let's Get Rocked
03. Animal
04. Foolin'
05. Armageddon It
06. Kick
07. Love Bites
08. Promises
09. This Guitar
10. When Love & Hate Collide
11. Rocket
12. Bringin' On The Heartbreak
13. Switch 625 [inc. Drum Solo]
14. Hysteria
15. Pour Some Sugar On Me
16. Rock Of Ages
17. Photograph