カテゴリー「Motley Crue」の62件の記事

2024年8月11日 (日)

THE SMASHING PUMPKINS『MONUMENTS TO AN ELEGY』(2014)

2014年12月9日にリリースされたTHE SMASHING PUMPKINSの9thアルバム。日本盤は翌2015年2月25日発売。

前作『OCEANIA』(2012年)から約2年半ぶりの新作。再結成以降、Warner(『ZEITGEIST』)〜EMI(『OCEANIA』)とアルバムごとに移籍を繰り返しているスマパン。それは今作も同様で、新たにBMGと契約(日本では新たにソニーからリリース)。ニコール・フィオレンティーノ(B)、マイク・バーン(Dr)と新メンバーが相次いで脱退する中、ビリー・コーガン(Vo, G)はジェフ・シュローダー(G)という再結成後の新たな右腕に、ゲストドラマーとしてMÖTLEY CRÜEトミー・リーを迎えて制作に取り組みます。

全9曲、大半の楽曲が4分に満たないコンパクトな構成で、トータル32分強という彼らのオリジナルアルバムとしてはもっとも短尺。その後に訪れるサブスク中心の音楽シーンを予兆するような内容と言えなくもありません。また、楽曲の作風自体も前作『OCEANIA』で確立した“新生スマパン”らしさの延長線上と言えるものではなく、キャッチーなオルタナロックという装いの楽曲が中心。どこか『MELLON COLLIE AND THE INFINITE SADNESS』(1995年)前後の作風を彷彿とさせるものがあるも、かといって焼き直しというわけでもない。もちろん、聴きやすさという点においては前作にも負けず劣らずの仕上がりだと思います。

確かに、前作は名手ジミー・チェンバレンの後釜としてハタチそこそこの若手ドラマーを迎えたことで、リズム面に関しては若干地味だったのは否めません。そこを考慮して、今回は80'sスタジアムロックの象徴といえるMÖTLEY CRÜEのメンバーを迎えたのだとしたら、なるほどと言わざるを得ません。実際、リズム面に関しては前作よりも強調されている印象がありますし、そのノリのよさや軽やかさはトミーのドラミングによるものが大きいと思います。

また、サイケ色が強めに出ていた前作と比較すると、今作はニューウェイヴ的な色合いが強い。それはアレンジやサウンドメイクに顕著で、過去の『ADORE』(1998年)のようなゴシックテイストとはまた異なるものでもある。そう、ダークさよりも陽の印象が強い質感なんですよね。『ZEITGEIST』はビリー&ジミーの2人が中心となって作り上げたものでしたが、今作もビリー&ジェフの2人が中心と同じ傾向。しかし、そこにトミー・リーといよ陽の塊のような存在が加わることでこの軽やかさが生まれたのだとしたら、そのコラボレーションは大成功だったと言えるでしょう。ただ、バンドの新作というよりはスピンアウト的な実験作という印象も否めないので、個人的には評価が難しいところです。

個人的には前作の方向性がツボで、ここからどんな方向へと進化していくのかと楽しみにしていたのですが、結果は短命に終わってしまったため、また新たな形で仕切り直すことに。バンドって難しいですね。

 


▼THE SMASHING PUMPKINS『MONUMENTS TO AN ELEGY』
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2024年4月30日 (火)

V.A.『NASHVILLE OUTLAWS: A TRIBUTE TO MÖTLEY CRÜE』(2014)

2014年8月19日にリリースされた、カントリー系アーティストによるMÖTLEY CRÜEトリビュートアルバム。日本盤未発売。

かのテイラー・スウィフトを輩出したナッシュビルのカントリー系レーベルBig Machine Recordsが企画した本作。そのテイラーを中心に、当時はカントリーミュージックもロックやハードロックを通過したオルタナティヴなものが増え始めていた時期でもあり、本作はそうした若い世代を中心に、カントリーとクラシックロック/ハードロックのクロスオーバーを目指して制作されたようです。

アルバムにはRASCAL FLATTS、FLORIDA GEORGIA LINE、リアン・ライムス、ジャスティン・ムーア、BIG & RICH、クレア・ボウエン&サム・パラディオ(2人とも俳優で、ドラマ『ナッシュビル カントリーミュージックの聖地』出演)、ELI YOUNG BAND、ローレン・ジェンキンス、THE CADILLAC THREE、THE MAVERICKS、ブラントリー・ギルバート、グレッチェン・ウィルソン、ダリアス・ラッカー(HOOTIE & THE BLOWFISHのフロントマン)と、カントリーに限定せずその周辺で活躍するアーティストが多数集結。また、ポップパンクバンドHEY MONDAYのキャサディー・ポープ(Vo)、ニューメタルバンドSTAINDのアーロン・ルイス(彼はソロではカントリーにチャレンジ)といった変わり種も名を連ねているほか、CHEAP TRICKのロビン・ザンダー(Vo)や、本家からヴィンス・ニールもゲスト参加しています。

アルバムはRASCAL FLATTSによる「Kickstart My Heart」からスタート。「えっ、これカントリー?」って疑問が生じそうサウンドメイクは、モロにハードロック。本家ほどのドギツさこそないものの、ヘアメタルバンドのカバーと言われても通用しそうな仕上がりです。続くFLORIDA GEORGIA LINE「If I Die Tomorrow」もダウンチューニングしたディストーションギターを使用していることから、ハードロック的側面が強く打ち出されている。その一方で、マンドリンのようなアコースティック楽器を取り入れることで、カントリーらしさもしっかり漂わせたアレンジに「なるほど」と納得。この2曲はHR/HMリスナーも入っていきやすいのではないでしょうか。

リアン・ライムス「Smokin' In The Boys Room」は、原曲がもともとカバーということもあって、どうとでも料理しようがありますよね。かなりレイドバックしたアレンジで、ここでようやく本作がカントリーミュージックによるトリビュートだと強く認識し始めます。ジャスティン・ムーア「Home Sweet Home」にはヴィンス・ニールがゲスト参加しており、原曲のダイナミックさを後退させたスモーキー&ソウルフルな仕上がり。キャサディー・ポープ&ロビン・ザンダー「The Animal In Me」はカントリーというよりも、ロック系アーティストによる普通のカバーといった印象かな。

アーロン・ルイス「Afraid」は原曲を一度解体して再構築した、これぞカバーと呼べるような1曲。歌詞のみ一緒といった印象で、言われないと同じ曲だと気づかないのではないでしょうか。BIG & RICH「Same Ol' Situation (S.O.S.)」も同様のテイストで、テンポ感やコード感を変えることで王道カントリー色を強めることに成功しています(ただ、こちらはサビになってようやく「ああ、あの曲か」と気づくのでは)。

クレア・ボウエン&サム・パラディオという俳優さん2人によるカバー「Without You」は、原曲のイメージを残しつつアーシーにカバー。ELI YOUNG BAND「Don't Go Away Mad (Just Go Away)」は原曲が持っていたロッド・スチュアート(というかFACES)色をさらに枯れさせるとこうなるかな、な印象。ローレン・ジェンキンス「Looks That Kill」は原曲の邪悪さ皆無の、レイドバック感満載の良質なカバー。THE CADILLAC THREE「Live Wire」は原曲の印象的なキメフレーズは残しつつもテンポダウンし、スライドギターを取り入れることで滑らかさが強調されています。THE MAVERICKS「Dr. Feelgood」はチカーノミュージック的テイストを強めることで、原曲とは別の意味でのノリのよさが際立つ仕上がりです。

ブラントリー・ギルバート「Girls, Girls, Girls」は原曲に沿ったアレンジ/サウンドメイクで、1オクターブ下で歌うことで“らしさ”を表現。グレッチェン・ウィルソン「Wild Side」は“もしもZZ TOPがMÖTLEY CRÜEをカバーして、女性ボーカルで表現したら?”というお題で制作されたような、なかなか面白な1曲。ダリアス・ラッカー「Time For Change」は「HOOTIE & THE BLOWFISHにこういう曲、ありそうだよね?」って仕上がりで、全然アリ。

以上、全15曲。普段HR/HMしか聴かないというハードコアな方々には少々厳しいかもしれませんが、1枚のロック/ポップスのコンピとしては比較的楽しめる内容ではないでしょうか。リリース当時、結構な頻度でリピートした記憶がありますし、久しぶりに引っ張り出して聴いてみてもその印象は変わることはありませんでした。MÖTLEY CRÜEファンのためのものよりも、MÖTLEY CRÜEをお題にしたカントリー系コンピとしてフラットに接するほうがより本質を掴めるかもしれません。

本作はリリース当時、Billboard 200(アルバムチャート)で最高5位、同Top Country Albumsで2位を記録。なお、リリースから5年後の2019年3月22日には「Home Sweet Home」のシングルエディットとライブバージョン(ともにジャスティン・ムーアのもの)を追加したExtended Editionも配信されています。

 


▼V.A.『NASHVILLE OUTLAWS: A TRIBUTE TO MÖTLEY CRÜE』
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2024年4月28日 (日)

MÖTLEY CRÜE『DOGS OF WAR』(2024)

2024年4月26日にデジタルリリースされたMÖTLEY CRÜEの新曲。同年6月14日にはアナログ盤でのフィジカルリリースも予定されています(海外のみ)。

2019年3月、Netflixにて自伝映画『ザ・ダート:モトリー・クルー自伝』を公開したのに合わせて、新曲4曲(うち1曲はカバー)を含むサウンドトラックアルバム『THE DIRT SOUNDTRACK』をリリース。同年秋には2015年末の活動停止から4年を経てライブ活動を再開させることを発表し、コロナ禍での苦しい時期を乗り越えて2022年にはDEF LEPPARDとのダブルヘッドラインスタジアムツアーを実現させたMÖTLEY CRÜE。2023年にも同じ組み合わせによるワールドツアーを実施(同年11月には日本公演も実現しました)するも、このツアーにはミック・マーズ(G)は参加せずツアー引退(事実上の解雇)。後釜としてMARILYN MANSONなどとの共演で知られるジョン・5を迎えて活動を続けています。

2023年春に、SNS上でこの新ラインナップによるボブ・ロックとのレコーディング風景が公開され、「いよいよ新曲リリースか?」とざわついたことも記憶に新しく、その際の制作した1曲のタイトルが「Dogs Of War」だ、などと噂されたことを覚えている方もいらっしゃることでしょう。同年初夏にロンドン・The Underworldにて実施したシークレットクラブギグではこの“DÖGS OF WAR”という名前でライブも実施され、年内にはリリースされるのかと期待されましたが、結局お披露目までには約1年もの歳月を要してしまいます。

ということで、「The Dirt (est. 1981)」から5年ぶりに届けられた新曲「Dogs Of War」。新たにBig Machine Recordsと契約して発表される、最初の楽曲となります。Big Machine Records自体は10年前、カントリー系アーティストによるMÖTLEY CRÜEのトリビュートアルバム『NASHVILLE OUTLAWS: A TRIBUTE TO MÖTLEY CRÜE』(2014年)を発表しており、近年はかのHYBE America傘下で運営されているとのこと。いろんな縁があってとはいえ、なかなかに興味深い組み合わせです。

楽曲自体は90年代後半以降のヘヴィ路線をベースに、適度にモダンな要素(リフの組み立て方やデジタルサウンドでの味付けなど)を取り入れたミドルヘヴィナンバー。「Shout At The Devil」あたりのズッシリ感を現代的解釈で表現した、といったところでしょうか。また、「The Dirt (est. 1981)」が(映画の舞台にちなんで)80年代の彼らをリフレッシュさせたものだとすると、こちらは『SAINTS OF LOS ANGELES』(2008年)の延長線上にある“現在進行形”と呼べるのかな。個人的には好みのテンポ感&音像で、第一印象も悪くありません。

ヴィンス・ニール(Vo)もAメロで低音〜中音域中心、サビで中音域に高音を織り交ぜたメロディを難なく歌いこなしており、安定感が伝わります。これをライブで維持できたら文句なし(笑)。ジョン・5のギターワークはミック・マーズのそれとは違った変態的味わいがあり、そのアレンジ含め彼の演奏面での参入がバンドの若返りに大きな影響を及ぼしているようです(とはいえ、ジョン自身もすでに50オーバー。ほかのメンバーよりはひと回り若いのですが)。

楽曲クレジットを見ると、ニッキー・シックス(B)とトミー・リー(Dr)、そしてジョン・5の名前を見つけることができます。実はジョン、すでに『THE DIRT SOUNDTRACK』に収録された新曲(「The Dirt (est. 1981)」「Ride With The Devil」「Crash And Burn」)でもコライトで参加済み。あの時点でジョンの功績に対してニッキーが手応えを感じていたことで、彼をバンドに引き込んだのでしょうかね(当初はソングライティングやレコーディングサポートで参加する予定だったところを、ミックと揉めた……とかね)。何にせよ、個人的にはジョンに対して悪い感情もないので、こういういい仕事を続けてくれるなら大歓迎です。

ちなみに、恒例の“Gang Vocal”(いわゆるコーラスですね)のクレジットにTHE OFFSPRINGのデクスター・ホランド(Vo)と、近頃当サイトでのアクセスにおいて常に上位にランクインしているCLASSLESS ACTのデレク・デイ(Vo)の名前を見つけることができます。両バンドともボブ・ロックがプロデュースを手掛けていることもあって、このゲスト参加が実現したようです。

おそらく、ミックとの裁判云々でMÖTLEY CRÜE名義の新曲を思うように発表できなかった&新レーベルとの契約締結までに時間がかかってしまったことが影響し、レコーディングからリリースまでにここまで時間を要してしまったのでしょう。昨年のレコーディングでは3曲制作したとトミーは昨年末のインタビューでコメントしていますし、ヴィンスはそのうちの1曲をライブでも披露済みのBEASTIE BOYS「Fight For Your Right」であることも明かしています。昨年11月のライブでこのカバーを聴いたとき

「Fight For Your Right」は(手垢がつきまくっているものの)音源化すべきカバーではないかな。アルバム制作は望めなさそうだから、3〜4曲程度のEPくらいは作ってもらいたいものです

と感じていたので、早くリリースしてもらいたいものですね(笑)。

アルバム発売の見込みは限りなくゼロに等しいですが、せっかく再始動したのですから、こうして定期的に新曲を届けて現役感を存分にアピールしていただきたいものです。

P.S.
この新曲リリースに際し、トミー・リーへのインタビューが実現しました。ぜひ併せてお楽しみください。

 


▼MÖTLEY CRÜE『DOGS OF WAR』
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2024年3月11日 (月)

MICK MARS『THE OTHER SIDE OF MARS』(2024)

2024年2月23日にリリースされたミック・マーズの1stアルバム。日本盤は同年2月28日発売。

ご存知のようにミックはMOTLEY CRUEのギタリストですが、ニッキー・シックス(B)とともに結成以来常にバンドに残っていたものの、2022年10月に強直性脊椎炎の影響によりツアーから引退を発表。しかし、この引退発表についてミック自身は「ツアーから離れるだけ」、バンド側は「バンドから脱退する」という解釈の違いがあり、その後裁判騒ぎとなっています。MOTLEY CRUE側はミックの後釜としてジョン・5(ex. DAVID LEE ROTH、ex. MARILYN MANSON、ex. ROB ZOMBIEなど)を迎えて、昨年秋には久しぶりの来日公演も成功させたばかりです。

これまでもソロアルバムの噂はゼロではなかったし、バンド自体でもEP『QUATERNARY』(1994年)にソロインスト曲「Bittersuite」を発表した経験があります。しかし、こうしてバンドを離れたからこそ実現したソロ作でそんなことにトライするのか。それが実現のものとなろうとした頃から、その内容に自然と期待が高まっていました。

アルバムのプロデューサーには著名なマイケル・ワグナー(ACCEPTDOKKENSKID ROWなど。MOTLEY CRUEの1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』をメジャー再発する際にはリミックスを担当)を迎え、曲作りはWINGERのポール・テイラー(Key, G)、そして2000年代初頭にMARS ELECTRICとしてメジャーデビューし、現在はLYNAMの一員として活動を続けるジェイコブ・バントン(Vo)と中心に進めることに。レコーディングにもこの2名は全面的に参加し、ほかにはレイ・ルージアー(Dr/KORN)、クリス・コーリアー(B)、ブリオン・ガンボア(Vo)といった面々が名を連ねています。

内容的にはモダンメタルと呼ぶに相応しいテイストで、楽曲自体はMOTLEY CRUEで演奏したとしても何ら不思議ではないものばかり。ミックのギターはバンド自体よりもエッジの効いたサウンドで、72歳という年齢をまったく感じさせないほどに攻撃的。そんなギタープレイをレイを中心とするタイト&ヘヴィなリズムが下地を作り、そこにジェイコブのハスキーな中音域ボイスが乗ることで、フレッシュながらも安定感のある強固なアンサンブルを作り上げている。かつ、楽曲自体のクオリティも高いので、全10曲/約39分を最後まで心置きなく楽しむことができるわけです。

プロデューサー名や参加メンバーの名前から古き良きヘアメタルをイメージするかもしれませんが、そういう方には本作はちょっと退屈に映るのかな? 僕自身はセルフオマージュに走ることなく、新たなことにトライしようとするおじいちゃんの心意気に胸を打たれましたし、ミックの暴力的なギターサウンドを思う存分楽しめる『MOTLEY CRUE』(1994年)がもっとも好きなので、今作で試みていることに対して肯定的なんですよ。本家がいつまで経っても新曲にとりかからないし、アルバムなんて出す気配もなさそうなんだから、僕はこのアルバムを大歓迎しますよ。

個人的には全編で気持ち良い歌声を響かせているジェイコブのことを再評価する、いいきっかけをくれた1枚でもあります。MARS ELECTRIC、当時よく聴いていたんですよ。唯一のメジャー作『BEAUTIFUL SOMETHING』(2000年)はストリーミング配信も実施されているので、本作で興味を持った人はぜひチェックしてほしいな。

 


▼MICK MARS『THE OTHER SIDE OF MARS』
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2023年11月 6日 (月)

DEF LEPPARD & MOTLEY CRUE: THE WORLD TOUR 2023@Kアリーナ横浜(2023年11月4日)

Img_7754 実は2020年に予定されていたMOTLEY CRUEDEF LEPPARD(そしてスペシャルゲストのPOISONジョーン・ジェット)のダブルヘッドライン・スタジアムツアーを観に、夏頃に渡米する予定でした。2公演分のチケットも確保していたものの、2020年2月以降の情勢の変化によりツアーは2021年夏に延期に。さらに、2021年も情勢が安定しないということで、最終的には2022年にまで延期されました。チケットは有効だったものの、個人的に渡米に不安を感じ泣く泣く断念。この2組以上にPOISONやジョーン・ジェットが観たかったんだけどね……こればかりは仕方ない。加えて、ミック・マーズが2022年をもってツアーからの引退を宣言。ああ……。

同組み合わせによるツアーは2023年にも続行され、2023年にはついに日本でも実現。残念ながらPOISONやジョーン・ジェットは来るはずもなく、同年のジョインツアーにゲスト参加したアリス・クーパーの来日もなし。いつぞやのWHITESNAKEとDEF LEPPARDのダブルヘッドラインツアー(2008年)みたいな形になるのかな、とは思いながらも、やっぱり行かないわけにはいかないと、チケットを確保。2公演で順番の入れ替わりがあり、僕はDEF LEPPARDが後攻を務める11月4日公演を選びました。その後11月3日に『NEX_FEST 2023』が決定したので、結果オーライでした。

 

当日は、開場時間に伊藤政則氏がオープニングアクトとしてDJを披露。懐かしの『HEAVY METAL SOUNDHOUSE』を思い浮かべながら、オールドスクールな演奏に耳を傾けつつビールを味わい続けました。


MOTLEY CRUE

Img_7768 1年前にミック・マーズ(G)がツアーからの引退を発表(のちに、一方的に解雇されたことが発覚)。代役としてMARILYN MANSONやアリス・クーパーで知られるジョン・5が加入し、今回が初来日。ルックスはもちろん、テクニック的にも申し分のない人選ですが、セットリスト的にはここ20年くらいほぼ変化がないのでそこまで期待していませんでした。

事実、動画サイトやSNSにアップされた演奏は全盛期よりもBPMが落とされ、かなりもっさりした印象で「みんな年取ったな……」と悲しくもなりましたし、この日のオープニングナンバー「Wild Side」でもその印象は変わらず。椅子から立ち上がることなく、観察気分でその動向を見守りました。

ジョンの演奏はオリジナルをなぞりつつ、彼らしいフレージングや運指を交えたモダンな仕上がりで、ミックのプレイに慣れた耳には若干の違和感を覚える瞬間もいくつかあったものの、概ね好意的に受け取ることができました。トミー・リー(Dr)のプレイも曲が進むにつれて熱が感じられたし、ニッキー・シックス(B)も老けて汚らしくなったものの(笑)、カリスマ性は衰えていない。その一方で、肝心のフロントマン様は……まあ、比較的歌えているほうだったかな。

個人的な見どころは3つ。ひとつはジョンのギターおよび三線を用いたソロパート。三線は来日して触れたみたいだけど、彼流の奏法を交えたプレイは非常に見応え/聴き応えがあり、ミックにはない魅力や個性をしっかり感じ取ることができました。ワンマンプレイっぽいというか我が強そうなころも、このバンドに合っているんじゃないかな。

2つめは、再結成後に発表された新曲「The Dirt (Est. 1981)」の存在。これがあるとないとで全然違う。基本懐メロセットリストなんだけど、現役感を醸し出す点でもこの曲は重要だなと思いました。映像と音源を使ってマシンガン・ケリーのパートもしっかり用意されていましたし、今後もツアー(=活動)を続けるのならもっとこういう曲を増やすべきでは。

もうひとつは、カバー曲のみで構成されたメドレーパート。ゲイリー・グリッターの「Rock And Roll, Part 2」から「Smokin' In The Boys Room」へとつなげるメドレーは解散前にも披露されてきたけど、そこにビートルズ「Helter Skelter」やピストルズ「Anarchy In The U.K.」を加え、さらにRAMONES「Blitzkrieg Bop」とBEASTIE BOYS「Fight For Your Right」をくっつけた10分強にわたる構成は、「The Dirt (Est. 1981)」同様に本ライブのハイライトだったのではないでしょうか。つうか、「Fight For Your Right」は(手垢がつきまくっているものの)音源化すべきカバーではないかな。アルバム制作は望めなさそうだから、3〜4曲程度のEPくらいは作ってもらいたいものです。

約80分(今回は2バンドとも持ち時間80分と同じ条件)と往年のワンマンライブよりも少々短いものの、セトリ的には文句なしの内容だったのではないでしょうか。つうか、もうそろそろ「20年ぶりにやります」とか「30年ぶりにライブで披露」って曲、増やしてくれてもいいんだけどなあ。

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セットリスト
01. Wild Side
02. Shout At The Devil
03. Too Fast For Love
04. Don't Go Away Mad (Just Go Away)
05. Live Wire
06. Looks That Kill
07. The Dirt (Est. 1981)
08. John 5 Guitar Solo
09. Medley: Rock And Roll, Part 2 / Smokin' In The Boys Room / Helter Skelter / Anarchy In The U.K. / Blitzkrieg Bop / Fight For Your Right
10. Home Sweet Home
11. Dr. Feelgood
12. Same Ol' Situation (S.O.S.)
13. Girls, Girls, Girls
14. Primal Scream
15. Kickstart My Heart

 


DEF LEPPARD

Img_7787 日本公演は『HYSTERIA』(1987年)完全再現ライブ(2018年10月)以来だから、実に5年ぶり。今回は最新作『DIAMOND STAR HALOS』(2022年)リリース後なので、こちらの楽曲を含めた内容になることは想像に難しくなく、実際そういったセットリストになっていたと思います。通常の彼らのワンマンよりも2〜30分短いことから、単独来日ならもう3、4曲多く聴けたのかなと思ったけど、前回も17曲(本編12曲、アンコール5曲)だったから、曲数的には一緒か。

「Rock! Rock! (Til You Drop)」を現代的にアップデートさせたような「Take What You Want」からスタートしたライブは、直前のモトリーとは異なり不思議と現役感濃厚。そういえば、Kアリーナってめちゃめちゃ音がいいって評判だったけど、それはモトリーのときにはあまり感じなかったのね。だけど、DEPPSになった途端にその恩恵をより強く味わえた気がします。もともと音の良いライブというイメージが強い彼らだけど、この日は今まで観た中でも一番だったと断言できるほどの気持ち良さ。結果、モトリーは終始座って観覧していた自分も、DEPPSではイントロと同時に立ち上がり踊りまくりでした。

新作からの楽曲は先の「Take What You Want」と新たなアンセム「Kick」、そしてジョー・エリオット(Vo)がアコギを手にして歌う「This Guitar」の3曲にとどまり、ほかはお馴染みのヒットナンバー。前回の来日時にはオミットされた「Foolin'」や「Promises」、そして名バラード「Bringin' On The Heartbreak」からインスト「Switch 625」(リック・アレンのドラムソロ含む)へのメドレーも久しぶりに復活し、こちらも文句なしのセトリでした。

個人的には「Fire It Up」や「SOS Emergency」「Gimme A Kiss」といった新作からのロックチューンをもっと聴きたかったかな。そんな不満が出るってことは、それくらい現在進行形で充実ぶりを発揮し続けているという事実の裏返しでもあるわけで、そこがモトリーとの大きな違い。言ってしまえば、両バンドとも懐メロを求めてくるオーディエンスが大半なわけですが、僕自身にとってはこんなにも観る側のモチベーションが変化する対バンも珍しかったな。

なんとなくだけど、DEF LEPPARDはまた近いうちに再来日してくれそうな気がするので、その際には企画色の強いセトリで日本のファンを楽しませてもらいたいところです。

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セットリスト
01. Take What You Want
02. Let's Get Rocked
03. Animal
04. Foolin'
05. Armageddon It
06. Kick
07. Love Bites
08. Promises
09. This Guitar
10. When Love & Hate Collide
11. Rocket
12. Bringin' On The Heartbreak
13. Switch 625 [inc. Drum Solo]
14. Hysteria
15. Pour Some Sugar On Me
16. Rock Of Ages
17. Photograph

2022年11月 8日 (火)

V.A.『THE RETALIATORS: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』(2022)

2022年9月16日にリリースされた映画『THE RETALIATORS』のサウンドトラックアルバム。日本盤未発売。

この映画はMOTLEY CRUEPAPA ROACHなどが所属するレコードレーベル・Better Noise Music系列のBetter Noise Filmsが制作したスリラーホラー映画。MOTLEY CRUEのトミー・リー(Dr)がストリップクラブのDJとしてスポット出演しているほか、FIVE FINGER DEATH PUNCH、PAPA ROACH、ESCAPE THE FATEのメンバーらも劇中で見つけることができる、ホラー映画マニア&メタルファンの筆者のような人間にはたまらない内容となっています(だからといって内容や完成度が高いとは思いませんが。笑)。

サントラに参加するアーティストもBetter Noise Musicに所属するバンド/アーティストばかりで、映画の面テーマである「The Retaliators Theme (21 Bullets)」はニッキー・シックス(B/MOTLEY CRUE、SIXX:A.M.)とジェイムズ・マイケル(Vo/SIXX:A.M.)の書き下ろしであると同時に、MOTLEY CRUEの面々やASKING ALEXANDRIAICE NINE KILLS、FROM ASHES TO NEWのフロントメンバーがコラボ参加。アルバムにはこのほかにもPAPA ROACHやTHE HU、EVA UNDER FIRE、FROM ASHES TO NEW、ASKING ALEXANDRIA、トミー・リー、CLASSLESS ACT、FIVE FINGER DEATH PUNCH、NOTHING MORE、CROSSBONE SKULLY、BAD WOLVES、コリィ・マークス、TEMPT、HYRO THE HERO、ALL GOOD THINGSなどが楽曲提供しています。

また、FROM ASHES TO NEWはアンダース・フリーデン(Vo/IN FLAMES)と、ASKING ALEXANDRIAはWITHIN TEMPTATIONと、CLASSLESS ACTはヴィンス・ニール(Vo/MOTLEY CRUE)、THE HUはジャコビー・シャディクス(Vo/PAPA ROACH)と、BAD WOLVESはスペンサー・チャーナス(Vo/ICE NINE KILLS)と、HYRO THE HEROはダニー・ワースノップ(Vo/ASKING ALEXANDRIA)&ミック・マーズ(G/MOTLEY CRUE)と、コリィ・マークスはタイラー・コノリー(Vo/THEORY OF A DEADMAN)&ジェイソン・フック(G/ex. FIVE FINGER DEATH PUNCH)と、ALL GOOD THINGSはHOLLYWOOD UNDEADと、それぞれコラボレーションが実現。CLASSLESS ACT×ヴィンス・ニール「Classless Act」は既発曲ですが、それ以外は本作のために新たに制作されたものが大半です。

僕は盤(CD)では購入しておらず、bandcampでDL購入したものを聴いているのですが、フィジカルは全18トラック、デジタル/ストリーミングは全27トラックとなっており、デジタル版には曲の合間に映画からのスキットが9トラック用意。CDのほうは単純に曲のみの収録なんでしょうかね。

ニッキーが新たに書き下ろした「The Retaliators Theme (21 Bullets)」はMOTLEY CRUEというよりはSIXX:A.M.寄りの楽曲なので、できることならSIXX:A.M.名義でレコーディングしてほしかったかな。

個人的な収穫はモダンメタルの王道といえるASKING ALEXANDRIA feat. WITHIN TEMPTATIONの「Faded Out」、AC/DCライクなクラシックロック感が強いCrossbone Skully「Evil World Machine」あたりかな。Crossbone Skullyは覆面バンドっぽくてまだその正体がわからない存在ですが、今度の動向を追ってみたいバンドのひとつです。

ニューメタル以降のモダンメタルに、ヒップホップに振り切ったトミー・リー、スリージーなハードロックを主旨するCLASSLESS ACTやCROSSBONE SKULLY、TEMPTなど、Better Noise Musicというレーベルのカタログ的な1枚は、映画云々を抜きにしても気持ちよく楽しめる良質なコンピだと思います。

 


▼V.A.『THE RETALIATORS: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』
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2022年6月29日 (水)

CLASSLESS ACT『WELCOME TO THE SHOW』(2022)

2022年6月24日にリリースされたCLASSLESS ACTの1stアルバム。日本盤未発売。(※2024年5月追記)ボーナストラック追加や曲順変更を加えた日本盤が2024年6月19日に発売決定しました。

CLASSLESS ACTは2018年に結成された、ロサンゼルス出身の5人組ハードロックバンド。80年代を彷彿とさせる時代錯誤なヘアメタル/グラムメタルサウンドが魅力で、2021年にASKING ALEXANDRIAFIVE FINGER DEATH PUNCHSIXX:A.M.などが所属するBetter Noise Musicと契約。今年6月からスタートしたMOTLEY CRUEDEF LEPPARDPOISONジョーン・ジェットの全米スタジアムツアーのオープニングアクトに抜擢されるなど、現在大プッシュを受けている存在です。

先にも書いたような往年のスリージーなハードロックサウンドは、かつてのものをそのままリバイバルさせただけではなく、THE DARKNESSBUCKCHERRY以降の現代的な質感も備わっており、懐かしさと同時に若干の新鮮さも伝わる仕上がり。メタルというよりはロックンロール寄りの質感で、ブルースロックをベースにしたまとまりの良いアレンジと、一緒にシンガロングしたくなるようなキャッチーなフレーズを要するスタジアムロック的側面を併せ持つ、ある意味では新人離れした完成度と言えなくもありません。

また、デビュー作ながらもバンドのテーマソングともいえるオープニング曲「Classless Act」にはMOTLEY CRUEのヴィンス・ニール(Vo)がゲスト参加し、冒頭から華を添えています。さらに、続く「This Is For You」にはイギリスのTHE DARKNESSからジャスティン・ホーキンス(Vo)をフィーチャー。80〜90年代から2000年代を見事につなぐこの人選は、さすがの一言。世が世なら、これだけで白米5杯くらいいけそうです(笑)。

派手で豪快なアップチューンに加え、ヘヴィ&ダークな「On My Phone」やグルーヴィー&サイケポップな「All That We Are」、グラムポップ調の「Made In Hell」、シャッフルビートを活用したリズミカルな「Walking Contradiction」、豪快でアーシーなギターリフが80年代のHR/HM黄金期を思い出させる「Give It To Me」、渋みもはらんだパワーバラード「Circles」、アルバムラストにふさわしいパワーバラード調のミドルナンバー「Thoughts From A Dying Man」など、どの曲も非常に練り込まれている。単に80年代回帰で終わらず、90年代や2000年代以降のヘアメタル/グラムメタルもしっかり研究しており、その成果がどの曲にもしっかり反映されているから、とにかく聴き応えがあって最後まで飽きさせない。この手の新人ハードロックバンドのデビューアルバムとしては、上出来な1枚ではないでしょうか。

ある意味ではイギリスのTHE STRUTS、イタリアのMÅNESKINに対するLAからの解答と言えなくもない彼ら。だからこそ、日本含めもっといろんな形で注目されてほしいなと思わずにいられません。もしモトリーとLEPPSのスタジアムツアーが日本にも上陸するチャンスがあったら、その際にはぜひ帯同してもらいたいところです。

 


▼CLASSLESS ACT『WELCOME TO THE SHOW』
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2021年11月18日 (木)

MOTLEY CRUE『TOO FAST FOR LOVE (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』(2021)

2021年11月10日にリリースされた、MOTLEY CRUEの1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1981年)最新リマスター盤。現時点ではフィジカルでの発売なしの、デジタル限定作品となっています。

今年6月に4thアルバム『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)と3rdアルバム『THEATRE OF PAIN』(1985年)、9月には5thアルバム『DR. FEELGOOD』(1989年)、そして10月に2ndアルバム『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)の最新リマスター盤を立て続けにリリースしたMOTLEY CRUE。これらはバンド結成40周年の記念企画の一環として制作されたもので、今春のRecord Store Dayではこれら5作品のカセットテープが限定販売され話題を集めたばかりです。

これにて初期作品の最新リマスター盤企画はひとまず完結かな。最後にこの1stアルバムが選ばれたのは、リリース日の11月10日が40年前に今作が初めてリリースされた日だから。つまり、真の意味での40周年企画クライマックスなわけです。

さて、その40年前の音源の2021年最新リマスターの効果についてです。今回リマスターされた音源は、1981年初出時のオリジナルLeathürバージョンではなく、1982年のメジャーデビューに際してロイ・トーマス・ベイカーがリミックスを施したElektraバージョン。そもそもLeathürバージョンはすでにマスターテープが存在していないようなので、こうなりますわな(なので、過去ボックスなどでCD化された際のLeathürバージョンは、アナログ盤から起こした音なのです)。

気になるリマスタリング効果ですが、過去に触れてきた4作品同様に“音量をできる限りあげてコンプをかけて均一化したようなバランス感”でまとめ上げられています。なので、オリジナル版やその後のリマスターバージョンほど、ギターの尖った感が抑えられており、耳障りはだいぶ良いのではないでしょうか。「Starry Eyes」あたりを聴くと、そのへんの効果がよりわかりやすい気がします。

一方で、ドラムの低音がかなり効いており、イマドキのサウンドメイクに寄せられている印象も。「Live Wire」冒頭のツーバスでドコドコ突進するパートや、「Come On And Dance」でのドラムはこの効果がもっとも強く表れているような気がします。

まあ1981年のラフな録音をその後の作品と違和感なく聴かせること自体困難を極める作業ですし、ましてや『DR. FEELGOOD』のように鉄壁なサウンドと比較されたらたまったものじゃない。そう、この頃の音はオリジナルのチープさこそが売りであって、そこをなかったことにして現代的にドーピングするのはちょっと違うんじゃないかと思うんです。

なもんで、個人的には最初のLeathürバージョンの音が一番好きなんですよ。もっとも、僕がこれまで聴いてきた同作の音はレコード起こしの海賊盤と、正規版ながらも同様の起こしで若干のミックスを加えたバージョン。もしかしたら、レコードを通じて響く音がお気に入りなのかもしれません。『SHOUT AT THE DEVIL』のときにも

以前、レギュラーで出演しているDJイベントで本作のアナログ(1983年当時の日本プレス盤)を大音量で回したのですが、そこで耳にした音がこれまで聴いてきた『SHOUT AT THE DEVIL』の中ではベストだった、という一言だけは付け加えておきます。

と書きましたが、本作に関しても同様のことが言えると思います。だってこれ、CDが存在していなかった時代の作品ですからね。

まあ、なにはともあれ。これからMOTLEY CRUEのカタログに手を出そうとしている奇特な方(笑)には、ぜひこのデビュー作から順を追って彼らの進化を追体験してみてください。

 


▼MOTLEY CRUE『TOO FAST FOR LOVE (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』
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2021年10月11日 (月)

SIXX:A.M.『THIS IS GONNA HURT』(2011)

2011年5月3日にリリースされたSIXX:A.M.の2ndアルバム。日本盤は同年5月4日発売。

MOTLEY CRUEの頭脳ニッキー・シックス(B)が、プロデューサーやシンガーソングライターとしても活動するジェイムズ・マイケル(Vo)、当時GUNS N' ROSESにも参加していたDJアシュバ(G/ex. BULLETBOYS、ex. BEAUTIFUL CREATURESなど)とともに立ち上げたサイドプロジェクト。彼らのデビューアルバム『THE HEROIN DIARIES SOUNDTRACK』(2007年)は文字どおりニッキーの自伝的書籍『THE HEROIN DIARIES』のサウンドトラック的役割も果たしていましたが、その翌年に発表されたMOTLEY CRUEの(現時点での)最終作『SAINTS OF LOS ANGELES』(2008年)との共通点も見受けられ、ニッキーが今一番やりたいことはこの方向性なんだろうなということが伺える良質なメロディアスハードロックアルバムでした。

そんなサイドプロジェクト、1枚こっきりで終わるのかと思いきや、しっかり2作目も届けてくれました。しかも、今回もニッキーによるアルバムと同タイトルの書籍に紐づいた作品なのですが、前作以上の完成度を誇る傑作。びっくりです。

前作同様にジェイムズがボーカルやリズムギター、キーボード、ドラムを担当したことで、この3人のみでレコーディングは完結。しかもプロデューサー気質の強いメンバーが集まっていること、ソングライターとしても非凡な才能を発揮するニッキー&ジェイムズがいることで、前作をより濃厚に煮詰めたような、極上の作品に仕上がっているのです。

オープニングを飾るタイトルトラック「This Is Gonna Hurt」を筆頭に、メロディアスでツボを押さえた良質ハードロックチューンがずらりと並ぶ冒頭。特に4曲目「Live Forever」までの流れは圧巻ではないでしょうか。そして、5曲目でバラードタイプのミディアムナンバー「Sure Feels Right」で小休止し、豪快な「Deadlihood」で攻撃再開。アコースティックテイストの美しいバラード「Smile」、シンガロングしやすいフレーズが並ぶ「Help Is On The Way」、大陸的な壮大さを持つ「Oh My God」、ピアノの音色とオペラ調メロディラインがゴシック色を強めるアップチューン「Goodbye My Friends」、ピアノ&ストリングスが切なさとエモーショナルさを際立たせるスローバラード「Skin」と、とにかく良曲しか存在しない。かつ、曲の並び/構成も非常によく練られており、バラードタイプの楽曲が3曲と多めながらもすべてタイプが異なるので、そこまで多いと感じさせないのも良し。

要するにこのアルバム、傑作なわけです。ニッキー・シックスが関わってきた作品の中でも5本指に入るほどの完成度を誇る1枚だと思います。その結果が、全米10位というキャリア最高位を獲得するわけですから。

と同時に、本作はSIXX:A.M.というプロジェクトが初めてバンドになった瞬間を捉えたアルバムとも言えるのではないでしょうか。前作ほどの悲壮感もなく、頭からラストまでシンプルに楽しむことができる、このバンドの入門編に最適な内容だと思います。

ヴィンス・ニールが悪いわけではないですが、本当は『SAINTS OF LOS ANGELES』もここまで練り込まれた作品になるはずだったんじゃないかな……いや、そんなことないか。そりゃね、MOTLEY CRUE(のワールドツアー)で集金して、SIXX:A.M.の活動に本腰入れたくなる気持ちもわかります。結果、MOTLEYは数年後に活動終了(その後再結成)し、SIXX:A.M.をメインバンドとして動かしていくことになるわけですから(それも、最近では再び逆転しつつあるのが悲しいんですけどね...)。

 


▼SIXX:A.M.『THIS IS GONNA HURT』
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2021年10月10日 (日)

MOTLEY CRUE『SHOUT AT THE DEVIL (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』(2021)

2021年10月1日にリリースされた、MOTLEY CRUEの2ndアルバム『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)最新リマスター盤。現時点ではフィジカルでの発売なしの、デジタル限定作品となっています。

今年6月に4thアルバム『GIRLS, GIRLS, GIRLS』(1987年)と3rdアルバム『THEATRE OF PAIN』(1985年)、9月には5thアルバム『DR. FEELGOOD』(1989年)の最新リマスター盤を立て続けにリリースしたMOTLEY CRUE。これらはバンド結成40周年の記念企画の一環で、残すは1stアルバム『TOO FAST FOR LOVE』(1981年)のリマスター盤発表を待つばかり。こちらはオリジナル盤の発売と同日の11月10日を予定しているようです。

過去に取り上げてきた作品の中では1983年制作と、本作がもっとも古いアルバム。当時の録音技術や機材の影響もあり、例えば『DR. FEELGOOD』と比べたらそのプロダクションに大きな差を感じてしまうのは仕方のないところ。しかし、この生々しさを伴うサウンドプロダクションこそ『SHOUT AT THE DEVIL』の魅力であり、ブレイク直前のはちきれんばかりのパッションと勢いが見事な形で表現された良作(および良ミックス)だと思っております。

で、実際に2021年の技術および価値観で最新リマスタリングが施された本作ですが、全体的に丸みを帯びた、非常にバランスの整えられた音像に変化しています。これまでの作品もそうであったように、その違いがもっとも表れているのがドラムサウンド。オリジナルバージョンおよび以前のリマスター作ではスネアにヒットがかなり刺々しく、それが本作に収録された楽曲群/テイストにフィットしていました。

ところが、これらも今の耳で聴くと若干古臭く感じられる。時代的にアナログ録音だと思うので、そのへんの個性/魅力が端的に表れているのだと思います。また、時代的にはすでにCDは存在していたものの、マスタリングでそこまで意識していなかったはず。アナログレコードで聴くとその魅力/威力を遺憾なく発揮するものの、CDだと若干チープに感じられ、ぶっちゃけ70年代の音像とさほど変わらない(ちょっと言い過ぎか)。そのへんが、時代時代のリマスタリングで徐々に変化していったわけですが、今回の配信を意識したリマスタリングはまさに2020年代にフィットしたものと言えるのではないでしょうか。

ほかの作品ほどギターの音像には変化は感じられず、若干音量が増したくらいの違いかな。ボーカル含め、コンプをかけて均一化したようなバランス感の良さは、ヘッドフォンやイヤフォンで聴けばより深く理解できると思います。ただ、この均一化が果たして『SHOUT AT THE DEVIL』という作品に最適なのかどうかは、ちょっと疑問も残りますが。

以前、レギュラーで出演しているDJイベントで本作のアナログ(1983年当時の日本プレス盤)を大音量で回したのですが、そこで耳にした音がこれまで聴いてきた『SHOUT AT THE DEVIL』の中ではベストだった、という一言だけは付け加えておきます。結局、アナログ主流の時代に制作された音源はアナログ盤で聴くのが一番!(趣旨が変わってる)

 


▼MOTLEY CRUE『SHOUT AT THE DEVIL (40TH ANNIVERSARY REMASTERED)』
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