カテゴリー「Motorhead」の26件の記事

2023年3月 1日 (水)

MOTÖRHEAD『BAD MAGIC: SERIOUSLY BAD MAGIC』(2023)

2023年2月24日にリリースされたMOTÖRHEADのリイシューアルバム。日本盤未発売。

本作はMOTÖRHEAD通算23作目にして最後のオリジナルアルバム『BAD MAGIC』(2015年)に、未発表楽曲および未発表ライブ音源を追加したデラックスエディション。CDは2枚組、アナログは4枚組仕様で、特に日本のファンにはうれしい(というか絶対に聴いておくべき)内容となっています。

CDのDISC 1には、アルバム『BAD MAGIC』本編13曲に、のちにカバーアルバム『UNDER COVER』(2017年)に未発表音源として収録されるデヴィッド・ボウイのカバー「Heroes」、『BAD MAGIC』と同時期に録音されたものの今日まで未発表だったオリジナル曲「Bullet In Your Brain」と「Greedy Bastards」を追加。「Heroes」については『UNDER COVER』の項目に譲るとして、ここでは「Bullet In Your Brain」「Greedy Bastards」の2曲について触れましょう。

「Bullet In Your Brain」はいかにもMOTÖRHEADらしい、疾走感の強いスピードチューン。ほかのアルバム曲として劣るかと言われるとそういうわけもなく、単純にアルバムの中でバランスを取って外したのかなと。ただ、完全な形で完成させる前の段階だったのか、レミー・キルミスター(Vo,B)のボーカルは若干ピッチも甘くてラフな印象。演奏に関してはあとからいくらでも手直しできるので、まあそういったことなのかな。フェードアウトで終わるアレンジからもそういった印象を受けますし。

続く「Greedy Bastards」は、冒頭の時点でデモの延長であることが伺える作風。レミーのトークから始まり、そこに演奏が加わっていくミディアムスローのバラード調ナンバーは、『BAD MAGIC』のほかの楽曲とは一線を画する仕上がり。こういう曲も作っておこうといったノリで作ったものの、アルバムにはすでに「Till The End」が存在していたので外されたんでしょうかね。これはこれでいい曲だし、全然アリなんですが。

そして、DISC 2。『LIVE AT MT. FUJI FESTIVAL 2015 - SAYONARA FOLKS!』というタイトルが付けられたこちらは2015年7月24日、新潟・苗場スキー場で開催された『FUJI ROCK FESTIVAL '15』DAY 1のGREEN STAGEでのパフォーマンスを完全収録したライブアルバム。同年12月に亡くなったことで、結果として最後の来日公演となった貴重なライブを追体験することができます。

当日はヘッドライナーFOO FIGHTERSの直前、セミヘッドライナーとしてステージに登場しました。僕も当日は会場でこのステージを目撃しておりましたが、真裏のWHITE STAGEがBOOM BOOM SATELLITESで、結果としてどちらもラストとなってしまったという……確かMOTÖRHEADを観て、途中でBBS観て、再びMOTÖRHEADだったような。お客の入りは満員とまでいかないものの、ダイハードなMOTÖRHEADファンがたくさん駆けつけ、それなりに盛り上がっていた記憶があります。ただ、レミーの調子は絶好調とは言い難かった印象も。少しモヤモヤも残りましたが、最終的には「Ace Of Spades」「Overkill」の2連発で帳消しといういつもの流れでした。

本作は記録用に残された録音が元になっているようで、音質的には決してベストとは言い難い内容。日本のCS放送向けに収録もされていたので、そちらの音源をどうにか入手してミックスし直すという方法もあったはずですが(あるいはもう残っていなかったか)、結果としてはオマケ程度の代物となってしまいました。まあ、このラフさもMOTÖRHEADらしいと言えばそれまでですが。それに、資料としての価値は十分に高いので、これはこれでいいか……という気もします。

すでに『BAD MAGIC』をCDで所持している筆者のような人間には、貴重なリイシューというよりもファンアイテム的側面が強く映る本作。今はサブスクでも気軽に楽しめる時代ですし、気になる方は新曲とライブ音源だけでもチェックしてみてはどうでしょう。あ、『BAD MAGIC』本編は問答無用の力作なので、安心してお楽しみいただけるはずです。

 


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2022年12月25日 (日)

MOTÖRHEAD『IRON FIST』(1982)

1982年4月17日にリリースされたMOTÖRHEADの5thアルバム。

1980年晩秋に発表された『ACE OF SPADES』 が、本国で勃発していた新たなヘヴィメタルの波(NWOBHM=New Wave Of British Heavy Metal)に見事に乗り全英4位を記録。続くライブアルバム『NO SLEEP 'TIL HAMMERSMITH』(1981年)に関しては勢い余って初(かつキャリア唯一)の全英1位を獲得したことで、名実ともにトップバンドの仲間入りを果たしました。

しかし、バンドにとってはそんな数字は単なる飾りでしかなく、約1年半ぶりに届けられたこの新作スタジオアルバムでもマイペースぶりを発揮。HR/HMの範疇で語られることの多い彼らですが、パンクロック的側面を随所に散りばめたスピード感に満ち溢れた良作で、前作に次ぐ全英6位という好成績を残しています。

前作『ACE OF SPADES』ではスピード感に頼りすぎることなく、緩急に満ちた構成で聴き手を飽きさせませんでしたが、今作は冒頭のタイトルトラック「Iron Fist」から4曲連続で疾走系の楽曲で固められています。「Ace Of Spades」の成功に味をしめて……なんてことはまったくないとは思いますが、ここまで突っ走りまくりなのは、メタルの範疇で語られることに対する彼らなりのアンチテーゼだったのかな……なんて解釈するのはお門違いでしょうか。スピードメタルの元祖とも言われるものの、ここでのしなやかなファストナンバー群は間違いなくパンク直系のそれ(なにせ「Speedfreak」なてストレートなタイトルの曲まであるくらいですから)。ギターソロこそハードロックの影響下にあると受け取ることができますが、全体的にはやはりパンクが軸になっていることは間違いないと思います。

そんな中で、ミドルテンポ寄りのグルーヴィーなM-5「Loser」やM-7「America」は全体の中で非常に良いフック に。スピード感が強調されたアルバムの中だからこそ、より映える仕上がりと言えるでしょう。また、アルバム終盤にも「(Don't Let 'Em) Grind Ya Down」「(Don't Need) Religiion」とミドルナンバーが2曲配置されておりますが、前半が突っ走り気味だっただけに終盤ちょっとトーンダウンしてしまった印象もなきにしもあらず。このへんは曲順でもうひと工夫あったら、最初から最後まで熱量を落とすことなく楽しませられたのではという気もします。本作唯一の欠点はそこだけかな。

あとは、全12曲どれも純度200%のMOTÖRHEAD節炸裂。結果としてレミー・キルミスター(Vo, B/2015年12月没)、“ファスト”・エディ・クラーク(G/2018年1月没)、フィルシー・“アニマル”・テイラー(Dr/ 2015年11月没)の黄金期トリオによる最後の作品となってしまいましたが、『ACE OF SPADES』とこの『IRON FIST』でバンドとして臨界点を迎えたという意味では、この布陣が崩れてしまったのは仕方ないことかなと、40年経った今になって実感しています。

なお、本作は1996年以降のCDリイシューに際して、さまざまな“ボーナストラック付きエディション”や“周年デラックスエディション”が制作されてきましたが、2022年9月23日にはその最新版として“40TH ANNIVERSARY EDITION”がフィジカル(CD、アナログ)とデジタルでリリースされています。CDは豪華ブックスタイルのパッケージに2枚のCDが同梱され、DISC 1に最新リマスタリングが施されたアルバム本編にシングルカップリング曲「Remember Me, I'm Gone」、“Jackson's Studio Demo”と題したアルバム収録曲のデモ音源や未発表テイクを追加。DISC 2には1982年3月18日にグラスゴーで収録された未発表ライブ音源が19曲にわたり収録されています。『IRON FIST』リリース1ヶ月前ながらも、同作からも7曲ほど先行披露。音質的にベストとは言い難いものの黄金期の生々しさを追体験することができます。かつてリリースされていた2枚組デラックス盤(Sancuary Recordsバージョン)はDISC-2に1982年5月のトロン公演の模様が収められていたので(こちらも音質的に難あり)、そちらを所有している方にもオススメの最新バージョンではないでしょうか。

 


▼MOTÖRHEAD『IRON FIST』
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2005年デラックス盤も貼っておきますね。

 

2022年3月 1日 (火)

SCORPIONS『ROCK BELIEVER』(2022)

2022年2月25日(イギリスのみ22日)にリリースされたSCORPIONSの19thアルバム。

前作『RETURN TO FOREVER』(2015年)から約7年ぶりという、過去最長スパンを経て届けられた新作。もっとも、その間にはバンド結成50周年を記念した過去作のリイシュー企画や、新曲を含むバラード中心のコンピレーションアルバム『BORN TO TOUCH YOUR FEELINGS: BEST OF ROCK BALLADS』(2017年)のリリースもあり、さらには長期にわたるワールドツアーもありました。実際、バンドはツアー終了後の2018年から次作の準備を始めていたそうで、当初はプロデューサーにグレッグ・フィデルマン(METALLICASLIPKNOTSLAYERなど)を迎えLAにてレコーディングを行う予定だったとのこと。しかし、ご存じのとおり2020年以降のコロナ禍が影響し、そのプランは頓挫することになります。

結果として、バンドは主要メンバーのクラウス・マイネ(Vo)、ルドルフ・シェンカー(G)、マティアス・ヤプス(G)が生活する地元・ドイツのハノーファーにてレコーディングに着手。移動制限が緩和されてから、ポーランド在住のパウエル・マチヴォダ(B)、スウェーデン在住のミッキー・ディー(Dr)が合流し、ポップス畑出身のハンス=マーティン・バフとの共同プロデュースによる1年がかりのレコーディングが完了します。

MOTÖRHEADでの活動を経て加入したミッキー・ディーの初参加オリジナルアルバムにして、『UNBREAKABLE』(2004年)以降長きにわたり在籍したSony MusicからUniversal系のVertigo Recordsへの復帰第1弾作品となる本作。ちょうどデビューアルバム『LONESOME CROW』(1972年2月発売)からまる50年という節目に届けられることもあってか、その内容は原点回帰的であると同時に50年の集大成ともいえる内容に仕上がっています。

楽曲の作風的には前2作(『STING IN THE TAIL』(2010年)と『RETURN TO FOREVER』)ほど80年代の大ブレイク期に寄せたものではなく、もうちょっとオールドスタイルで70年代の諸作品へと接近したテイストかな。序盤2曲「Gas In The Tank」「Roots In My Blood」が珍しくアップチューン続きというのも、大ブレイク後のそれとは明らかに異なりますし、抜けの良いメジャーキーのアンセムナンバー「Rock Believer」も良い意味で“バタ臭さ”が抜けている。かと思えば、「Is There Anybody There?」にも匹敵するレゲエタッチの「Shining Of Your Soul」もあり、バラエティ豊かさでいえば近作イチではないでしょうか。

また、ミドルテンポ中心だった直近の2作と比べると、先の冒頭2曲以外にも「Hot And Cold」や「When I Lay My Bones To Rest」「Peacemaker」といったアップテンポの楽曲が多数用意されている。さらに、全11曲(ボーナストラック除く)中バラードが本編ラストの「When You Know (Where You Come From)」のみという潔さ。このアルバムタイトル含め真の意味で原点=ロックに回帰し、それでいて過去のさまざまな片鱗が随所に散りばめられている、そんなSCORPIONSの強い意志が伝わる力作ではないでしょうか。

確かにルドルフ・シェンカーのカミソリリフはここには存在しませんし、安定感あふれる大人のロックサウンドからはエッジが効いた往年のバンドサウンドを見つけることもできない。クラウス・マイネもすでに73歳ということで音域的にも衰えを感じずにはいられない。それでも彼らはロックを信じて〈I'm a Rock Believer Like You〉という一節にすべての思いを詰め込んだ(この一節、アルバムパッケージの“ある場所”でも見つけることができるくらい重要なものなのです)。過去は過去として、今をありのままに生きようとするその姿を、このリアルな音から感じ取り、しっかり楽しみたいと思います。

なお、本作は全11曲入りの通常盤に加え、ボーナストラック5曲を追加したデラックスエディションも用意。海外盤は本編とボーナストラックを分けたCD2枚組仕様となっていますが、日本盤はすべて1枚のディスクにまとめられています。さらに、日本盤にはかつての「Big City Nights」のように日本での思い出を綴った新曲「Out Go The Lights」も追加収録(UK盤には別に「Hammersmith」、フランス盤には「Language Of The Heart」を用意)。基本的には「When You Know (Where You Come From)」で一度締めくくって、ちょっと余韻を楽しんでから「Shoot For Your Heart」以降のボートラを楽しむのがベストかな。

もはや刺激を求めるような存在ではないものの、王道感の強さは随一。これぞSCORPIONSという名作をとくとご堪能あれ。

 


▼SCORPIONS『ROCK BELIEVER』
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2021年9月20日 (月)

MOTÖRHEAD『MARCH ÖR DIE』(1992)

1992年8月14日にリリースされたMOTÖRHEADの10thスタジオアルバム。日本盤は同年8月22日発売。

前作『1916』(1991年)でEpic RecordsのサブレーベルであるWTG Recordsにメジャー移籍したMOTÖRHEADでしたが、同作がリリースされた1991年初頭はちょうど湾岸戦争に突入したタイミング。これ以降、世の中の情勢が少しずつ悪化し、不景気の煽りも受けて思ったほどの成績を残せず(全米142位/全英24位)。さらに、JUDAS PRIESTアリス・クーパーMETAL CHURCH、DANGEROUS TOYSといったレーベルメイトとのパッケージツアー『Operation Rock'n'Roll』も途中で頓挫してしまいます。

バンドは『1916』から1年7ヶ月という、比較的短いスパンで次作を完成させます。プロデューサーには前作でエド・スタシアムと名を並べた、PROCOL HARUMなどにも所属したピーター・ソリーが単独で再着任。『1916』はハードロックというよりも荒々しい暴走ロックンロール/パンクロックと呼ぶにふさわしい仕上がりだったので、続く今作にもその路線を期待しますが……あれっ?と誰もが思うわけです。

まず、極力スピードを抑えたミディアムテンポ中心の作風が疑問のひとつ。アップテンポの楽曲も含まれてはいるものの、いわゆるパンク的な疾走感というよりはヘヴィメタルに近い重さとスピード感(しかもそこまで速くない)。さらに、カバー曲が2曲も収められている。ひとつはテッド・ニュージェントの代表曲「Cat Scratch Fever」で、もうひとつはオジー・オズボーン「Hellraiser」。まあ後者はレミー(Vo, B)がオジー&ザック・ワイルドと共作したオリジナル曲なので、カバーと呼んでしまうにはちょっと可哀想かな。

「Stand」とか「Asylum Choir」とか、確かにカッコいいですよ。でも、前作にあったスピード感が伝わらない。硬質なサウンドプロダクションと相まって、重さが強調されすぎているんです。確かに先のカバー2曲や「Bad Religion」、ブルース色を強めた「You Better Run」やダークな「March Or Die」など、ミディアムナンバーの仕上がりは上出来です。ただ、序盤にスピード曲が少なく、後半に固められている構成もよくなくて、せめて交互に並べるとか工夫が欲しかった(そのへんの失敗が次作『BUSTARDS』(1993年)につながるわけですが)。

とはいえ、本作にはGUNS N' ROSES的グルーヴ感を全面に打ち出した「Jack The Ripper」(前作にも似たテイストはありましたが)、オジーとのデュエットが楽しめる初の本格的パワーバラード「I Ain't No Nice Guy」、先の「March Or Die」など新たな魅力を伝える楽曲も用意されている。バンドとしての新たな挑戦と受け取ることもできるけど、果たしてファンはMOTÖRHEADにこういったスタイルを求めているのかどうか……そこは当時から謎でしたが。

あ、そうだ。今作ではフィル・“アニマル”・テイラー(Dr)は「I Ain't No Nice Guy」のみ参加で脱退(理由はなんとなく想像できる)。レコーディングではトミー・アルドリッジ(WHITESNAKE、オジーなど)が大半を叩き、「Hellraiser」にて当時DON DOKKENを抜けたか抜けないかの時期だったミッキー・ディーがプレイ。このへんのメタル勢がドラマーを務めたのも、ペタペタした重さの理由の一因かもね(結局、アルバム完成後にミッキーが加入。以後、解散まで席を置くことになります)。このほか、先のオジーやGN'Rのスラッシュ(G)が「I Ain't No Nice Guy」で客演しています。

以上のような要因を踏まえると、バンドが“やりた”かったというよりは、メジャーレーベルがいろいろ“やらせた”かった1枚なのかな。どことなく迷走感が伝わりますが、それは数字にもしっかり表れてしまいます(全英60位。全米ではチャートインせず)。その悔しさがすべて『BUSTARDS』につながったと考えれば、ここでの失敗も悪くはなかったのかな。

個人的には嫌いになれない1枚です。だって、出来が悪いわけではないので。ファットなサウンドプロダクションのMOTÖRHEADなんて、後にも先にもこれしかないですからね(笑)。

 


▼MOTÖRHEAD『MARCH ÖR DIE』
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2021年9月19日 (日)

OZZY OSBOURNE『NO MORE TEARS (30TH ANNIVERSARY EXPANDED EDITION)』(2021)

2021年9月17日に配信リリースされた、オジー・オズボーンの6thアルバム『NO MORE TEARS』(1991年)30周年記念エディション。

80年代後半にバンドに加わったザック・ワイルド(G, Vo)参加2作目のオリジナルアルバムにして、1stアルバム『BLIZZARD OF OZZ』(1980年)にも匹敵する売り上げを誇る名盤。特に今作からは「No More Tears」(全米71位/全英32位)、「Mama, I'm Coming Home」(全米28位/全英46位)というヒットシングルに加え、「Time After Time」「Road To Nowhere」「Mr. Tinkertrain」というラジオヒットも生まれるほどで、以降の音楽活動においてひとつの基盤となった“多彩なサウンド/音楽性を詰め込んだハードロックアルバム”としても知られています。

なにげに30年前のリリースも9月17日だったようで、正真正銘の30周年を祝福する本作は全25トラックから構成されています。オリジナル盤に収録された11曲に加え、2000年代以降のリマスター盤にボーナストラックとして追加された「Don't Blame Me」「Party With The Animals」(この2曲は日本盤初出時からボーナストラックとして収録されていたので、日本のファンにはお馴染み)、『NO MORE TEARS』制作時のデモ音源6曲、アルバムリリースツアーからのライブ音源5曲、そして今回のアニバーサリー盤のために新編集された「Hellraiser」のオジー&レミー(MOTÖRHEAD)デュエットバージョンという内容。

まず、デモ音源6曲は1992年にプロモ用に制作された『THE NO MORE TEARS DEMO SESSIONS』という限定CDが初出で、のちに「Mrs J.」を除く5曲がボックスセット『PRINCE OF DARKNESS』(2005年)で一般流通されました。ストリーミングサービスでは今回が初出のようですね。どの曲もノーマルチューニングで録音されており、ザックのギタープレイも現行版とは若干異なっていたり、「I Don't Want To Change The World」の冒頭にオジーのハーモニーが追加されていたりと、違いを見つけるのも楽しいです。あと、個人的にはデモでのランディ・カスティロ(Dr)のドラム音が好み。

「Mrs J.」はザックによるアコースティックインスト。なんとなく『BLIZZARD OF OZZ』におけるランディ・ローズの「Dee」を彷彿とさせるものがありますが、「Mrs J.」のほうはもっとメロディアスで、このまま歌を乗せても成立する仕上がり。ドラムとシンセがかぶさっていることもあって、箸休め感が薄まっているのも好印象。ただ、アルバムに入れるスペースがなかったのもわかります。バラード多いですものね、『NO MORE TEARS』。

そして、ライブ音源。こちらはDVD『MEMOIRS OF A MADMAN』(2014年)に収められていた1992年のサン・ディエゴ公演(4曲)とMTVでのライブ(1曲)。音源化はこれが初となります。どれも今日までライブの定番ばかりなので、新鮮味は薄いかな。しっかりボーカルに修正(ダブルボーカル)も加わってますしね。

で、問題なのがラストナンバー「Hellraiser」。この曲はもともとオジー/ザック/レミーの共作曲で、レミーも『MARCH ÖR DIE』(1992年)にMOTÖRHEADバージョンを収録しています。今回の新バージョン、バックトラックはオジー版がベースで、若干リミックスも施されているようです(ドラムの出音やベースの質感が違いますしね……ってもしかして、ベースはレミーのプレイをミックスしてる?)。MOTÖRHEAD版もキーやアレンジがほぼ一緒なので、オジーのボーカルとミックスしたり、歌い分けているように編集したりしても違和感ゼロ。むしろ、このバージョンをもっと早くに聴いていてもおかしくなかったんじゃないの?というくらい自然な仕上がりなのです。オジーは健在だけど、レミーはすでに旅立って5年以上経ちますしね……「勝手なことをしやがって!」と向こうでニヤニヤしているといいな。

この「Hellraiser」新バージョンは年末にアナログ盤のリリースも予定されているようなので、ファンアイテムとしてそちらも手に入れておきたいところ。まずは名盤を改めて振り返りつつ、貴重なデモ音源と新たな共演曲(ライブはおまけ)を中心に楽しめたらと思います。

 


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2021年8月14日 (土)

BUDDERSIDE『SPIRITUAL VIOLENCE』(2021)

2021年3月26日にリリースされたBUDDERSIDEの2ndアルバム。日本盤未発売。

MOTÖRHEADファミリーのバックアップにより2016年9月にセルフタイトルアルバムでデビューしたBUDDERSIDEは、前作制作時はシングルギターの4人編成でしたが、知らない間にツインギターの5人組バンドに。4年半ぶりの今作も前作同様、Motörhead Music / Silver Lining Musicからのリリースとなります。

プロデューサーにジェイ・バウムガードナー(BUSH、GODSMACKPAPA ROACHなど)を迎えた本作は、前作の延長線上にある“バッドボーイズロックンロール”満載のハードロックアルバム。味付けの面でサイケデリック度が増したことが影響してか、全体的にミディアムテンポの楽曲が増えた印象もありますが、MUSYCA CHILDREN'S CHOIRをフィーチャーした「Things We Do」のような楽曲含め、メロディおよびアレンジが相当練られているので、最後まで安心して楽しむことができます。

1stアルバムから引き続きフィル・キャンベル(G)がゲスト参加した「Pardon Me」やBUTCHER BABIESのカーラ・ハーヴェイ(Vo)をフィーチャーした「Amber Alert」、日本の“禅”をテーマにした「Zen」など、キャッチーで色とりどりなハードドライヴィンロック満載。ちなみに「Zen」のMVはわざわざ東京まで訪れて撮影したんだとか。歌詞の世界観を映像で表現するには必須だったとのことで、この大変なご時世にここまでこだわって日本まで来てくれて……日本人として感謝の言葉を贈らせてください。

思えば前作リリース時はまだレミーが存命だったんですよね……フロントマンのパトリック・ストーン(Vo)はレミーのローディーだった経験を持ち、前作のプロデュースはレミーの息子ポール・インダー・キルミスターが担当。サウンド的にはLAのバンドらしく派手さを持ち合わせたハードロックでMOTÖRHEADとは程遠いかもしれませんが、その精神性はMOTÖRHEADから引き継がれているはず。そう思わずにはいられない、1本筋の通った豪快なサウンドと妖艶さをにじませたアレンジは2021年という時代において、とても新鮮に響くはずです。

時代錯誤を通り越して、むしろ新ジャンルを確立するんじゃないかとすら思えてくるこのサウンド&楽曲群。パトリックの両生類的ボーカル含め、クセになります。

 


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2021年8月13日 (金)

SEPULTURA『SEPULQUARTA』(2021)

2021年8月13日にリリースされたSEPULTURAの企画アルバム。

2020年2月発売のアルバム『QUADRA』に続く今作は、2020年4月からスタートしたストリーミング・ライブセッション“SepulQuarta”からのベストセレクション。これまでに発表された多数の名曲群を、毎回著名なゲストミュージシャンを迎えてセッションするという企画で、その選曲および参加アーティストの豪華さはベストアルバムを超えた1枚と言えるかもしれません。

収録曲および参加ゲストは下記のとおり([ ]内は参加ゲスト名)。

01. Territory [David Ellefson (B/ex. MEGADETH)]
02. Cut-Throat [Scott Ian (G/ANTHRAX)]
03. Sepulnation [Danko Jones (Vo)]
04. Inner Self [Phil Rind (B/SACRED REICH)]
05. Hatred Aside [Angélica Burns (Vo/HATEFULLMURDER)、Mayara Puertas (Vo/TORTURE SQUAD)、Fernanda Lira (Vo/CRYPTA)]
06. Mask [Devin Townsend (Vo, G)]
07. Fear, Pain, Chaos, Suffering [Emmily Barreto (Vo/FAR FROM ALASKA)]
08. Vandals Nest [Alex Skolnick (G/TESTAMENT)]
09. Slave New World [Matthew K. Heafy (Vo, G/TRIVIUM)]
10. Ratamahatta [Joao Barone (Dr)、Charles Gavin (Dr)]
11. Apes Of God [Rob Cavestany (G/DEATH ANGEL)]
12. Phantom Self [Mark Holcomb (G/PERIPHERY)]
13. Slaves Of Pain [Frédéric Leclercq (G/KREATOR、AMAHIRU)、Marcello Pompeu (Vo)]
14. Kaiowas [Rafael Bittencourt (G/ANGRA)]
15. Orgasmatron [Phil Campbell (G/ex. MOTÖRHEAD)]

M-4, 13 : from 3rd AL『BENEATH THE REMAINS』(1989年)
M-14 : from 4th AL『ARISE』(1991年) Japanese Bonus Track
M-1, 9, 14 : from 5th AL『CHAOS A.D.』(1993年)
M-2, 10 : from 6th AL『ROOTS』(1996年)
M-5 : from 7th AL『AGAINST』(1998年)
M-3 : from 8th AL『NATION』(2001年)
M-11 : from 9th AL『ROORBACK』(2003年)
M-6 : from 12th AL『KAIROS』(2011年)
M-8, 12 : from 14th AL『MACHINE MESSIAH』(2017年)
M-7 : from 15th AL『QUADRA』(2020年)

知名度の高いアーティストばかりが参加しており、これも長きにわたりブラジルを代表するエクストリームメタルバンドとして活躍し続けるSEPULTURAならではと言えるでしょう。選曲的には「Arise」や「Dead Embryonic Cells」「Under Siege (Regnum Irae)」といった『ARISE』収録曲や「Roots」のような代表曲を外しているのが気になりますが(実際の“SepulQuarta”セッションでは、「Arise」などはゲスト抜きで演奏されています)、それでもベストアルバムとしても見劣りしない内容なのはさすがといったところでしょうか。

基本的にはリモートスタジオセッションアルバムなので、生々しさはスタジオ音源以上/ライブアルバム以下といった質感。しかし、これくらいの生々しさは彼らのようなバンドにはちょうどいいような気がします。そして、マックス・カヴァレラの跡を継いで加入したデリック・グリーンはすでに20年選手。マックス時代の楽曲でも原曲に負けない凄みが伝わる歌唱で、非常に好意的に受け取ることができます。

各ゲストに関してですが、この人ならでは!という音源はそう多くはないです。女性Vo3人が参加した「Hatred Aside」はかなり色が出ていて面白いし、デヴィン・タウンゼンド参加の「Mask」もそれとわかる仕上がり。マーク・ホルコムらしいエフェクティブなギターサウンドで原曲に彩りを加えた「Phantom Self」も非常にらしい完成度ですね。同じブラジル出身のラファエル・ビッテンコートとコラボした「Kaiowas」は、現在シングルギター編成のSEPULTURAには実現できないアンサンブルなので、これも聴きどころかもしれません。あとは、本家MOTÖRHEADのフィル・キャンベルをフィーチャーした「Orgasmatron」もかな。特別新鮮さはないですが、感慨深さという点で記しておこうかと思います。

この手の企画盤は「あの曲がない、この曲がない」と言い出したらキリがないので、深いこと考えず、素直に(かつ無心で)楽しむのが一番。特にSEPULTURAはオールタイムベストアルバムが1枚も存在しないので、(選曲が多少偏ってはいるものの)これを『ARISE』『CHAOS A.D.』『ROOTS』に次ぐ入門盤として捉えるのもアリかもしれませんね。

 


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2020年12月28日 (月)

MOTÖRHEAD『NO SLEEP 'TIL HAMMERSMITH』(1981)

1981年6月にリリースされたMOTÖRHEAD初のライブアルバム。

1980年11月に発表した4thアルバム『ACE OF SPADES』が全英チャート4位という過去最高位を獲得したことを受け制作された今作は、同時点でのベスト盤的選曲ということもあり、初の全英1位に。当時の勢いを語る上で欠かせない1枚となりました。

タイトルから、本作は(当時の名称)Hammersmith Odeonでのライブ音源かと思いきや、レコーディング自体は1981年春のリーズやニューカッスルでの音源を中心に構成。『ACE OF SPADES』より前のアルバムではそのレコーディング環境含めて本来のMOTÖRHEADらしさがうまく表現できていないものもありましたが、より生々しさを強調した今作ではそういった初期の楽曲が見事な形で“再生”されており、MOTÖRHEADというバンドの魅力が余すことなく、最良の形で表現されているように思います。

また、ライブアルバムにありがちな「演奏中、過剰な声援をオーバーダブ」するということもなく、バンドの荒々しく“うるさい”演奏に集中することができます。ぶっちゃけ、オープニングの「Ace Of Spades」を聴いている途中、本作がライブアルバムであることを忘れる瞬間があるくらいですから(演奏が終わり、急にワーッと歓声が上がって「そうだった、これライブアルバムだ」と思い出すくらい)。それほど当時のバンドの勢いとエネルギーに満ちた、MOTÖRHEADの世界に没頭できる名演ではないでしょうか。

緩急に富んだ選曲もさることながら、要所要所に歴史的な代表曲が配置されていることも、本作を飽きさせないものにしており、頭に「Ace Of Spades」、中盤に「Overkill」、終盤クライマックスに「Bomber」というアゲ曲が用意され、合間に「Stay Clean」や「Metropolis」「(We Are)The Roadcrew」などミディアムテンポのロックンロールが並ぶ。どれも活動後期まで演奏される機会の多かった名曲たちであり、改めてこの時点でMOTÖRHEADとしての型は確立されていたんだなと気づかされます。

なお、本作は1990年代以降さまざまな形でリイシューされており、現在流通している2枚組バージョン(2001年バージョン)には「Over The Top」「Too Late, Too Late」といったアルバム本編未収録音源に加え、本編み収録の1981年3月21日のニューカッスル公演からの11曲(演奏曲目も一部異なる)を楽しむことができます。現在ストリーミングサービスではこちらのバージョンが配信されているので、アルバム本編との違い含めて確認してもらえたらと思います。

昨年から『OVERKILL』(1979年)以降のアルバムが40周年記念で何度目かのリイシューを迎えていますが、おそらく来年にはこのライブアルバムも新たな形で再発されるのでしょうか。音源的には新たなものが加わることはないかと思いますが、なんにせよそちらも動向も気になるところです。

 


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2020年12月11日 (金)

PHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONS『WE'RE THE BASTARDS』(2020)

2020年11月12日にリリースされたPHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONSの2ndアルバム。日本盤は同年12月4日発売。

MOTÖRHEADのフィル・キャンベル(G)がトッド(G)、デイン(Dr)、タイラ(B)という実子3人とニール・スター(Vo)の5人で結成したロックンロールバンド、前作『THE AGE OF ABSURDITY』(2018年)から約3年ぶりの新作です。フィル自身は昨年ソロアルバム『OLD LIONS STILL ROAR』(2019年)を発表しているので、ここ数年は年に1枚アルバムを制作している計算になります。MOTÖRHEADが事実上の解散状態になり、かつ今年はコロナ禍でライブが思うようにできなかったことも影響してか、思いのほかバンドとしての新作が早く届けられた印象があります。

中身に関しては、あれこれ解説するのが野暮ってくらいにロックンロールなアルバム。このアルバムタイトルがすべてを物語っているのではないでしょうか。スピートチューンに頼りすぎず、実はミドルテンポの楽曲が意外と心地よく響くアルバムで、「Promises Are Poison」あたりの哀愁味を帯びたメロディはTHE HELLACOPTERSあたりのガレージロックにも通ずるものがあり、個人的にかなり好印象。

かと思えば、「Born To Roam」や「Desert Song」のようにブルージーなハードロックがあったり、豪快なギターリーフとダイナミックなリズムが気持ちいい「Bite My Tongue」、MOTÖRHEAD直系の男臭いミドルチューン「Keep Your Jacket On」、若干ストーナーロックっぽいミドルヘヴィの「Lie To Me」、軽やかなリズムが印象に残るブギー「Riding Straight To Hell」、泣きのスローバラード「Waves」といった前作以上にバラエティに富んだ楽曲が増えており、バンドの音楽性の幅を一気に広げています。フロントマンのニールのボーカルはレミーのような男臭いタイプとは異なり、適度なハスキーさを持ったハードロック寄りの声質なので、こういった幅広い音楽性にもしっかり対応できているのが良いですよね。

で、こういった音楽性の幅広さが増したからこそ、「Animals」や「Hate Machine」「Destroyed」などのMOTÖRHEAD流ファストチューンがさらに活きるわけです。実はこのへんのメリハリの付け方って、フィルがソロアルバムでさまざまなフロントマンとコラボすることで学んだ知識なのかな、という気がします。あれを1枚挟んだことは、PHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONSというバンドにとってかなり多いな経験だったのですね。

こういうライブ向きのアルバムに出会うたびに、今年は非常に歯がゆい思いを何度も経験しているわけですが……このバンド、いつになったら日本で観られるんでしょうね。MOTÖRHEAD亡き後、彼らがシーンで果たす役割はそれ相応のものがあるはずなので、この力作を携えた日本公演が近い将来……健康な世の中とともに訪れることを願わずにはいられません。

 


▼PHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONS『WE'RE THE BASTARDS』
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2020年11月12日 (木)

BIFF BYFORD『SCHOOL OF HARD KNOCKS』(2020)

2020年2月21日にリリースされた、ビフ・バイフォード(SAXON)の1stソロアルバム。日本盤未発売。

ご存知のとおり、ビフは1977年から現在にいたるまでポール・クィン(G)とともにSAXONを守り続けているオリジナルメンバーのひとり。約43年におよぶキャリアの中で、初めて個人名義でのアルバムをこのタイミングに発表しました。

プロデュースはビフ自身が担当。レコーディングにはフレドリック・オーケソン(G/OPETH)、フィル・キャンベル(G/PHIL CAMPBELL AND THE BASTARD SONSMOTÖRHEAD)、ガス・マクリコスタス(B/FUTURE SHOCKなど)、ニッブス・カーター(B/SAXON)、クリスチャン・ルンドクヴィスト(Dr/ex THE POODLES)、アレックス・ホルツヴァルト(Dr/TURILLI、LIONE RHAPSODY)、ニック・バーカー(Dr/VOICES)、デイヴ・ケンプ(Key, Sax/WAYWARD SONS)といったメンツが参加。大半の楽曲のベーシックトラックはフレドリック、ガス、クリスチャンが担当し、ビフは一部でベースもプレイしているようです。

内容的にはポップさが際立つ80年代後半以降のSAXON的ハードロックと、ここ数作で目立つアグレッシヴなSAXON的メタリックさが融合した1枚といったところでしょうか。序盤2曲(「Welcome To The Show」「School Of Hard Knocks」)がまさに前者の代表的楽曲群で、アルバム聴き始めで「なるほど、ソロではこっち側なのね」と思わせておいて、1分少々のインターバル「Inquisitor」を挟んで「The Pit And The Pendulum」「Worlds Collide」で後者路線でパワフルに攻める。

かと思えば、サイモン&ガーファンクルでおなじみの名曲「Scarborough Fair」でしっとり聴かせるスタイルも提示。序盤こそ原曲に近いアコースティックアレンジで、齢69歳のビフが渋みの増したボーカルを響かせますが、途中からバンドが加わり、フレドリックのムーディなギターソロとともに味わい深いアレンジで楽しませてくれます。

アルバム後半も、これぞというタイトルのパワーメタル「Pedal To The Metal」や「Hearts Of Steel」、トーンの落ち着いたメタルバラード「Throw Down The Sword」、アコースティック色の強い「Me And You」、目の前が開けるような壮大さのあるミディアムナンバー「Black And White」とバラエティに富んだ楽曲が並びます。要は「昨今のSAXONでのスタイルを軸に、もうちょっと幅の広いこともできるんですよ、そういう歌が歌えるんですよ」ということを提示した、バンドの延長線上のある1枚なのかな。『THUNDERBOLT』(2018年)のようなストロングスタイルのアルバムの後だけに、バンドではそのスタイルを崩すのを避け、ソロで“プラスα”に挑んだということなんでしょうかね。でも、それでいいと思います。

ビフの言葉によると、本作は彼の人生を振り返るようなものであると同時に、イングランドの歴史を踏まえた伝統的なものなんだとか。「Scarborough Fair」のような英国民謡をピックアップしたのも、その一環なのでしょう。

なんにせよ、年明けで70歳になるビフがこのタイミングに自身の半生を振り返るソロアルバムを発表したことは、NWOBHM40周年を迎えた2020年にとっては非常に重要なことではないでしょうか。非常によく作り込まれた王道ハードロックアルバム、オススメです。

 


▼BIFF BYFORD『SCHOOL OF HARD KNOCKS』
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