カテゴリー「Mr. Big」の15件の記事

2019年4月22日 (月)

浜田麻里 The 35th Anniversary Tour Gracia@日本武道館(2019年4月19日)

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圧巻の一言。それ以上でもそれ以外でもなく。

10代の頃に初めてライブを観て、それから30年近くの間に何度か拝見していますし、特にここ5年くらいは単独以外にもフェスなどでも目にするチャンスがあった浜田麻里。デビュー35周年、武道館は26年ぶりということで、これは行かないわけにはいかない……そう思っていたら、友人がチケットをダブつかせていたので便乗。2階の上のほうでしたがかなり観やすく、じっくり腰を据えて楽しむことができました。

昨年の最新アルバム『Gracia』を携えたツアーには足を運ぶことができなかったので、そことの比較はできませんが、同ツアーからツアーメンバーが一部交代。BABYMETALの神バンドメンバーでもあるBOHさん(B)、ISAOさん(G)といった7〜8弦ギターや6弦ベースの使い手、原澤秀樹(Dr)というまだ30代半ばのテクニカルな若手ドラマーをフィーチャーしたバンドサウンドは、以前と比べてかなりフレッシュ感が強く、攻撃性が増したここ最近の楽曲にもフィットしていました。特にジェントっぽさを醸し出す「Disruptor」みたいな楽曲には今の編成はぴったりなんじゃないでしょうか。

で、浜田麻里大先生のお歌が、近年観た中でもベストに近い状態でして。無駄に前に出過ぎず、それでいて存在感は圧倒的。歌詞がしっかり聴き取れて、声量もあって高音の伸びもハンパない、しかも音圧の高いバックの音像にも埋もれていない。これって簡単なようでなかなかできることじゃない。ミキシングのテクニックでどうにでもできるんじゃ……なんて言われそうだけど、そういう問題じゃないし、そういうレベルの話じゃない。

で、もっとすごいのがコーラスの絵里さん(浜田麻里の実妹)。キーだけでいったら姉上よりも高いところを難なく歌っているんだけど、だからといってリード(姉)を潰すようなこともない。姉妹だからこその相性はもちろんだけど、長年培ってきたハーモニーバランスがここ武道館で完璧な形で表現されていたように思います。

選曲に関しては下記のセトリを参考にしていただき。一部楽曲(シングル曲やライトサイドの楽曲)はいわゆる“ワンハーフ”だったりメドレー形式だったんだけど、それでもやらないよりはマシ。むしろ、ご本人としてはここ10年くらいのメタル路線を前に打ち出して、そこで勝負している印象。そういった楽曲は歌うのも難しいものが多いし、演奏との息含め一歩間違えばグズグズになってしまってもおかしくないのに、それが一糸乱れぬ完璧なアンサンブルで繰り出される。不快さなんてこれっぽっちもない、常に気持ち良い音圧とサウンドが繰り出される2時間半。これに7000円とか8000円って、正直安いもんですよ。

途中、ビリー・シーンが出てきたときは隣にいた友人に「ビリーっ! ビリーだよ! MR. BIGの!」と叫んでしまったほど興奮(セッティング時にミントグリーンのベースが見切れていて、一部には事前にバレていたようですが)。そのビリーのプレイ含め、歌や演奏の技術の高さで人をここまで興奮させ、感動させる音楽って本当にすごいと思う。別にテクニック至上主義の人間ではないし、下手なモノの中にも素晴らしいもの、輝いているものはたくさんあるけど、こういう音楽の素晴らしさに感動できるのもまた事実。1曲終わるごとにため息が溢れるし、また1曲新たに始まるごとに拳を振り上げる(実際には振り上げなかったけど)。それくらい興奮していたと思います。

本当の意味で圧巻だったのは、本編ラストの「Zero」。20数名のストリングス隊をこれ1曲のためだけに準備し、ドラマチックな歌と演奏でライブを大々的に締めくくるわけですが、最後の最後、麻里さんのロングトーンに鳥肌……気づいたら涙が流れてました。感情がグワーっと持って行かれましたね……どんな気持ちなのか表現しがたい、グチャグチャにかき乱された状態でした。あんな経験、初めてですよ。

聴きたい曲はまだまだ山ほどあったし、「Stay Gold」を聴けなかったのは残念以外のなにものでもないけど、それはまた次回以降に。にしても、現在56歳の彼女……まだまだ活動を続けていくと宣言していましたが、このスタイルでどこまで更新し続けられるのか。その鍛錬も相当な大変さを要するだろうし、もしそれができなくなったときの恐怖といったら……ロブ・ハルフォードもある意味そっち側の人間であり、ギリギリのラインで戦っていますが、この人もきっと同じ孤独な道をひとり突き進むんだろうな。

いやあ。にしてもね、もっともヘヴィな楽曲が最新アルバム『Gracia』の楽曲って、どういうことだろうね。「Black Rain」や「Disruptor」「Zero」のカッコよさと言ったら……。

<セットリスト>
01. Right On
02. Disruptor
03. Blue Revolution
04. Carpe Diem
05. Return to Myself 〜しない、しない、ナツ。〜
06. No More Heroes
07. Nostalgia
08. Memory in Vain
09. Cry For The Moon
10. Promise In The History [Acoustic]
11. Canary [Acoustic]
12. Mangata
13. Sparks [feat. Billy Sheehan]
14. In Your Hands [feat. Billy Sheehan]
15. Dark Triad
16. Jumping High
17. Black Rain
18. Historia
19. Orience
20. Zero [with Orchestra]
--ENCORE--
21. Forever 〜
  All Night Party 〜
  Heart and Soul
22. Heartbeat Away From You
--ENCORE--
23. Momentalia
24. Tomorrow

 

2017年11月26日 (日)

SONS OF APOLLO『PSYCHOTIC SYMPHONY』(2017)

ヘヴィメタルが世界的に大きなヒットを飛ばした80年代後半になると、“スーパーグループ”と呼ばれるような組み合わせの新バンドがいくつか結成され話題になりました。MR. BIGなんてまさにそれでしょうし、BLUR MURDERBAD ENGLISHもそう呼べるでしょう。90年代に入りメタルシーンが低迷し始めると、解散したバンドのメンバーが集まって新しいバンドを組み始める。必然的にそれらは“スーパーバンド”と呼ばれても不思議じゃないメンツになっており、もはや「“スーパー”とは?」とスーパー感がごく当たり前になってしまったことで有り難みが薄れてしまった。それは2017年になった現在、より強まっているのではないでしょうか。

しかし、そんな自分ですら「そうきたか!」と思わせられた最新の“スーパーバンド”が、今回紹介するSONS OF APOLLO。マイク・ポートノイ(Dr)、デレク・シェリニアン(Key)、ロン・“バンブルフット”・サール(G)、ビリー・シーン(B)、ジェフ・スコット・ソート(Vo)という80〜90年代のHR/HMファンなら誰もが一度は名前を耳にしたことがあるであろう面々ばかり。マイクとデレクは90年代後半にDREAM THEATERで一緒だったし、ビリーは現在MR. BIGのみならずTHE WINERY DOGSではマイクと活動をともにしている。バンブルフットは元GUNS N' ROSESで現在はART OF ANARCHYのメンバーだし、ジェフは初期YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCEのシンガーで、一時はJOURNEYにも在籍していた。過去に在籍したバンドをカードに勝負することがあったら、間違いなく“勝てる”組み合わせです。

そんな彼らが組んだSONS OF APOLLOのデビューアルバム『PSYCHOTIC SYMPHONY』は、このメンツから想像できる音=プロヴレッシヴメタルが展開されています。DREAM THEATER的でもあり、昨今のヘヴィ/ラウドロック的でもある。ボーカルがジェフという時点でDREAM THEATERに似ないことはわかっていましたが、ここまでオリジナリティに満ちあふれた存在感を打ち出すかと、一聴して驚かされました。

80年代以降のDEEP PURPLE的な側面もあり、90年代以降のプログレメタルのカラーもしっかり受け継いでいる。それでいて現代にも通用するラウド感を持ち合わせているんだから、強いったらありゃしない。

楽曲もいきなり11分超の大作「God Of The Sun」から始まり、中盤に9分超えの「Labyrinth」を配置しながら、ラストは11分近いインストナンバー「Opus Maximus」で幕を降ろす。その間には4分前後のコンパクトな楽曲が配置されており(それでも十分に“プログレ”してるんですが)、とにかく情報量と聴きどころ詰め込みすぎな印象。すべてを理解するには、3回、4回と何度も聴き込む必要があります。

けど、最近のアルバムって数回聴いて「しばらくいいか」と思ってしまうようなものも少なくないので、こういう密度が高くて「もっと理解したい!」と思わせてくれる力作との出会いは正直嬉しくもあるんですよね。

5人の個性と技術が克明に打ち出されたこのデビュー作をもって、彼らは2018年に本格的なツアーを行うそうです。これ、ライブで観たら本当にどうなっちゃうんだろう……今からドキドキとワクワクが止まらない、そう久しぶりに感じさせてくれた1枚です。

 


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2017年7月 1日 (土)

MR. BIG『DEFYING GRAVITY』(2017)

苦しい環境下で最善を尽くした前作『...THE STORIES WE COULD TELL』(2014年)から3年ぶりに発表された、MR. BIG通算9作目のスタジオアルバム。ツアーではパーキンソン病で体が思うように動かなくなってきたパット・トーピー(Dr)に替わり、マット・スターがサポートで参加。もちろんパットもパーカッションとコーラスでライブに加わり、新たな5人編成というスタイルでツアーを完遂します。

で、そこから今作に向かっていくわけですが、今回のプロデューサーは初期4作を手がけてきたケヴィン・エルソン。バンドとしても来年で結成30周年を迎えることもあり、ここで改めて原点に戻ろうという思いがあったのかもしれません。ドラムトラックは前作のようにプログラミングではなく、パットが方向性を指示しながらマットがプレイ。楽曲制作にはもちろんメンバー4人が中心となり、これまで同様の外部ライターを迎えて書き下ろされていくのですが……。

なんですか、この突き抜け方は!? 1曲目「Open Your Eyes」のオープニングでは、1stアルバム『MR. BIG』(1989年)のオープニングに収められていたエンジニアの声がそのまま流用され驚いたところで、そのまま軽やかにスタート。かと思えば、続いて爽やかなパワーポップチューン「Defying Gravity」が飛び出す。さらに、ブギーのリズムが気持ち良い「Everybody Needs A Little Trouble」、カントリー調のミディアムナンバー「Damn I'm In Love Again」、ど頭のギター&ベースによるテクニカルなフレーズに驚かされる「Mean To Me」、どこか影のあるソウルバラード「Nothin' Bad ('Bout Feelin' Good)」と良曲が続くこの構成……再結成後の2枚(『WHAT IF...』『...THE STORIES WE COULD TELL』)がバンドの原点である「ブルージーでソウルフルなHR」に立ち返ったかと思っていたら、今作ではその一歩先にある『LEAN INTO IT』(1991年)で見せた“開け方”が存在する。そう、バンドが今回目指した“原点”は最大のヒット作となった『LEAN INTO IT』期に立ち返ることだったのかもしれません。

事実、本作には「To Be With You」が全米1位を獲得した時期を振り返る「1992」という楽曲も存在します。これなんてメロディに「Green-Tinted Sixties Mind」の匂いが感じられますしね。もちろん、すべてがあの頃の焼き直しではありません。あのアルバムから26年後のエリック・マーティン(Vo)、ポール・ギルバート(G)、ビリー・シーン(B)、そしてパット・トーピーの姿がここには存在するのですから。

唯一、難癖をつけるとしたら……やはり1曲目はギター&ベースのユニゾンバリバリのファストチューンでキメてほしかったな、と。まぁそれをやらないからこそ、「2017年のMR. BIG」なわけで、それも重々理解できるんですけど……たぶん、それをやらないというのも彼らなりの意地なのかもしれません。本当はそんな意地、捨ててほしかったんですけどね。

まぁ苦言は本当にそれくらいで、あとはもうひたすら楽しくて聴き応えのある、いかにもこのバンドらしい作品集だと思います。そして、このアルバムに触れてから過去2作を聴き返すと、また違った聴こえ方をしてくるから本当に不思議。30周年を前にネクストレベルに到達しそうな、そんな力作。ここ日本だけでなく、久しぶりに海外でもヒットしてほしいな。



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2017年6月24日 (土)

MR. BIG『...THE STORIES WE COULD TELL』(2014)

2014年9月にリリースされた、通算8枚目のオリジナルアルバム。再結成後としては、2010年末に発表された前作『WHAT IF...』から3年9ヶ月ぶり。ここまで時間が空いたのには理由があり……ご存知のとおり、パット・トーピー(Dr)のパーキンソン病が発覚。また、ポール・ギルバート(G)の難聴が悪化したことや、ビリー・シーン(B)がリッチー・コッツェン(Vo, G)、マイク・ポートノイ(Dr)と新たに結成したバンド、THE WINERY DOGSの活動が好調だったことが、制作の遅れにつながったと言われています。

さて、そうなると誰がバンドの新作制作を引っ張るのか。意外にも、その役割を引き受けたのがエリック・マーティン(Vo)でした。エリックは全13曲中(ボーナストラック除く)11曲にクレジットされ、プロデューサーのパット・リーガンとともに根気よく作業を続けたようです。そこには、病気でドラムが叩けなくなったパット・トーピーが自身がプログラミングしたドラムトラックを採用するという、気の遠くなる作業も含まれているのですから……。

そういう難産の末完成した本作ですが、評価は前作ほど高くないのも事実。ドラム云々は抜きにしても(実際、シンバルなど金モノ系を集中して聴かない限り、プログラミングしたドラムトラックとは気づかないのでは?)、なんとなくバンドが完璧に噛み合ってない印象を受けるのです。

楽曲自体は前作の延長線上にあり、メロディラインなど比較的優れたナンバーが多いのですが、ギターとベースが遠慮がちというか。このへんはポールの病気の影響も大きいのかもしれませんが、それに引っ張られるようにベースもボトムを支えることに専念している印象を受けます。そこにパットの件が加わるもんだから……言い方は悪いけど、「エリック・マーティンのソロアルバム(MR. BIG寄り)」と感じてしまうのです。

いえ、エリックはそうならないよう、しっかりMR. BIGというバンドのことを意識して作業に当たったと思うんです。しかしエリック以外のメンバーが地味すぎるがために、結果エリックの個性のみが突出してしまう。それが先の「バンドが完璧に噛み合ってない」につながるわけです。

改めて聴き返してみても、決して悪いアルバムではないんですよ。だけど、地味さが前面に出てしまい、前作よりも聴く頻度が落ちてしまった。悲しいかな、そういう残念な1枚であります。

また、本作は日本盤の初回限定盤のみ、初期編成で発表した4枚のアルバムからのベスト選曲を再録音したボーナスティスク付き。なぜこのタイミングで再録ベスト?と思ったけど、実はこれ、パットが過去の楽曲でプログラミングの練習をしたってことなんじゃないでしょうか。ここでの“リハーサル”があったから、オリジナル新作では違和感のない“ドラミング”を披露することができた。そう思うと、この『...THE STORIES WE COULD TELL』というアルバムがいかに難産だったかが理解できると思います。

もうひとつ残念なのは、新作本編よりもこっちのボーナスディスクのほうが聴く頻度が高かったということ。声域が若干低くなったエリックに合わせて半音下げで再録された名曲の数々は、原曲よりテンションが落ちるものではありますが、曲によっては大人の色気を感じるものも含まれており、まったくナシではないかな。とはいえこれ、単なるオマケなのであまり高い評価は付けないでおきます。

本作を携えたツアーでは、パットもステージ上に姿はあるものの、基本的にはサポートドラマーのマット・スターがプレイ。パットはタンバリンを叩いたりコーラスを入れたりしつつ、限られた楽曲でドラムを披露してくれました。ここでの変則編成がメンバー的にもお気に召したようで、新たな未来へとつながっていくわけです。



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2017年6月17日 (土)

MR. BIG『WHAT IF...』(2010)

2009年にエリック・マーティン(Vo)、ポール・ギルバート(G)、ビリー・シーン(B)、パット・トーピー(Dr)のオリジナル編成で復活したMR. BIG。まずは日本を含むワールドツアーを行い、バンドの健在ぶりを存分にアピールしました。そのツアーでの手応えを制作活動に向け、日本で2010年末(海外では2011年初頭)に発表した通算7枚目のスタジオアルバムがこの『WHAT IF...』です。

オリジナル編成としては1996年の『HEY MAN』から14年ぶりの新作となった本作は、IRON MAIDENAEROSMITHとの仕事で知られるケヴィン・シャーリーをプロデューサーに迎えて制作。作風的にはリッチー・コッツェン在籍時の2枚よりもむしろ、『HEY MAN』までのMR. BIGに近いかもしれません。オープニングがファストチューンではなく、ずっしりとしたリズムでじっくり聴かせる「Undertow」というところは『HEY MAN』やリッチー時代にも通ずるものがありますが、続く「American Beauty」は初期ファンには嬉しいファストチューン。ギター&ベースのユニゾンプレイもふんだんに取り入れられており、「なぜこの曲を1曲目にしなかった!?」と憤るファンも多いのではないでしょうか。

が、しかし。この曲を2曲目に配置することで、「Undertow」も「American Beauty」も映えると思うんですよ、実際のところ。そこから若干ダークなバラード「Stranger In My Life」(終盤のポールのギターソロが最高)、パーカッシヴなドラムパターンがクールな「Nobody Left To Blame」、再びアッパーな「Still Ain't Enough For Me」と続いていく前半の構成も、より新鮮に聴こえるんじゃないでしょうか。実際、僕はそうでした。

エリックの高音が出にくくなったことから、再結成後は半音下げチューニングでライブもレコーディングも実施していることから、必要以上にダークさが前に出てしまいがちですが、それが本作の作風にはぴったり合っていると思う。

それと『HEY MAN』以降減少傾向にあった、曲中の“オカズ”が一気に増えていること。ちょっとしたギター&ベースのユニゾンや、いきなり飛び込んでくるギターやベースの速弾きフレーズ。この“オカズ”という名の無駄があってこそ、MR. BIGなんだよなぁ〜と、このアルバムを聴いたときにふと考えたことを、今思い出しました。

大ヒット作『LEAN INTO IT』(1991年)というよりは、バンドのルーツである1stアルバム『MR. BIG』(1989年)に『HEY MAN』の手法でもう一度チャレンジした。そんな印象を受けるのが、再結成1作目のこのアルバム。佳曲は多いけど、突出した名曲はない。だけど、全体で勝負する。結果、アルバムを聴き終えたときに「ああ、MR. BIGの新作だった」と納得させられる。もう今さら“ドリルソング”や「To Be With You」の第二弾なんて望んでないし、今はこの体制で再び長く続けてくれることを祈るばかり。そう、リリース当時はそう思っていたんです……。



▼MR. BIG『WHAT IF...』
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2017年6月 2日 (金)

MR. BIG『GREATEST HITS』(2004)

2002年に解散したMR. BIGの、ポール・ギルバート時代(1989〜1996年)とリッチー・コッツェン時代(1999年〜2001年)の両期をまとめたオールタイムベストアルバム。2004年という微妙な時期に発表されていますが、解散前までのキャリアを総括するという意味では非常に手軽な1枚と言えます。

最初のベストアルバム『BIG BIGGER BIGGEST! THE BEST OF MR. BIG』(1996年)がポール時代、しかもチャート的に成功した『LEAN INTO IT』(1991年)『BUMP AHEAD』(1993年)の楽曲が半数を占めるという偏った内容でしたが、本作は1st『MR. BIG』(1989年)から3曲、2nd『LEAN INTO IT』から5曲、3rd『BUMP AHEAD』から3曲、4th『HEY MAN』から1曲、5th『GET OVER IT』(1999年)から2曲、6th『ACTUAL SIZE』(2001年)から2曲と、まぁ妥当な割合となっています。

そこに加えて、本作にはアルバム未収録曲「Strike Like Lightning」が追加されているのが大きなポイント。1990年に映画『ネイビー・シールズ』のサウンドトラックに提供したこの曲は、一部のファンのみの間で知られる隠れた名曲。1st『MR. BIG』の延長線上にあるストレートなハードロックチューンですが、実はこの曲、メンバーのペンによるものではないんですね。そこも含めて、非常に貴重なナンバーではないかと。

ちなみに同サントラにはもう1曲「Shadows」というアルバム未収録曲も収められていますが、こちらはベストアルバムには入っていません。どうせならこっちも入れてほしかった。

さて、アルバムの構成ですが、年代順(リリース順)となっており、純粋にバンドの成長・変化を楽しむことができるはずです。「Big Love」や「Take A Walk」「Alive And Kickin'」「Price You Gotta Pay」といったライブならではの非シングル曲もそれなりに入っているし、なによりもバラード率が低いのが良い(笑)。「MR. BIGといえば美しいバラード!」という人には、2000年にバラード系楽曲をまとめた『DEEP CUTS』というコンピレーションアルバムも発表されているので、ぜひそちらを。

ただ、オールキャリア総括というのを頭ではわかっていても、「Take Cover」のあとに突然「Dancin' With My Devils」が来ると「?」となってしまうのはどうにかならないでしょうか。まぁ自分自身の問題ですけどね。

まぁつまりは……結局僕自身の中でのMR. BIGとは「エリック・マーティン、ポール・ギルバート、ビリー・シーン、パット・トーピーの4人」っていうことなんです。リッチー・コッツェンには悪気はないんだけど。あ、『MOTHER HEAD'S FAMILY REUNION』(1994年)や『WAVE OF EMOTION』(1996年)、大好きです(笑)。



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2017年6月 1日 (木)

MR. BIG『ACTUAL SIZE』(2001)

2001年夏に発表された、MR. BIG通算6枚目のスタジオアルバム。プロデューサーには、リッチー・コッツェン(G, Vo)が連れてきたリッチー・ズィート(リッチーが参加したPOISON 『NATIVE TONGUE』(1993年)やリッチーの『MOTHER HEAD'S FAMILY REUNION』(1994年)などを手がけたプロデューサー)が迎えられ、ほぼリッチー・コッツェン主導のもと制作された1枚と言っていいでしょう。

事実、ソングライティングの面ではバンドの創始者であるビリー・シーン(B)が1曲(「How Did I Give Myself Away」)のみクレジットされているだけで、大半がリッチー、そしてエリック・マーティン(Vo)、さらにはパット・トーピー(Dr)がそれぞれメインで書かれた楽曲が中心。ビリーのプレイもオープニングの「Lost In America」や「Suffocation」でこそテクニカルなフレーズが登場するものの、全体的には地味の一言。完全に存在感を消されているような印象すら受けます。

だって、アルバムからのリードシングル「Shine」(リッチー・コッツェンとリッチー・ズィートで書かれたポップチューン)の地味さといったら、前作『GET OVER IT』(1999年)以上ですから。途中、ギターとベースのユニゾンフレーズも登場しますが、決してテクニカルなものではないし。ボーカルにしても、コーラスをとるリッチーの存在感が前作以上で、エリックが歌っているからMR. BIGのアルバムであることを思い出すくらい。リッチーの声に気を取られてたら、確実に彼のアルバムと勘違いしちゃうんじゃないでしょうか。

確かに、リッチーの持ち味を生かした「Suffocation」(しかもこの曲、パットがチャック・ライトらと書いた楽曲なのだから驚き)をはじめカッコいい曲も複数存在します。しかし、それらは別に「MR. BIGである必要のないもの」ばかり。エリックやリッチーがソロでやればまったく問題のない楽曲ばかりなんです。

そういえば、先の「Suffocation」しかり、本作ではパットが今まで以上に大活躍しています。意外にもフックになってくるのは「Crawl Over Me」「Cheap Little Thrill」など、パットが書いた曲ばかりですし。それも、どこかポール・ギルバート時代に通ずる不思議な魅力があるんですから……もしかしたらMR. BIGがこの時点でもMR. BIGらしさを保てていたのは「エリックの声」という対外的な要素と、パットのソングライターとしての才能だったのかもしれませんね。

そんなパットの頑張りがあったものの、ビリーからしたらそりゃあ不満たらたらですよね。実際、リリース前のインタビューでビリー、かなり本音を漏らしていたはず。その結果、リリースを待たずしてビリーがバンドから解雇されるという青天の霹靂。その直後にバンドは本作とそのツアーをもって解散することを発表し、そのツアーにもビリーが参加することを改めてアナウンスするのです。要はビリー、サポートメンバー扱いですよ。

2002年春にはここ日本でもフェアウェルツアーを行いましたが、僕は行ってません。そんなギスギスしたバンド、見たくないもの。

そんなネガティブな思い出が多い作品だけに、個人的にはどうしても正当な評価を下しにくいのですが……バンドが無事再結成した今聴くと、そこまで悪くない作品だなと思いました。ただ、「これをMR. BIGがやるべきか?」と問われたら「NO」と即答しますけどね。



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2017年5月31日 (水)

MR. BIG『GET OVER IT』(1999)

1996年秋以降に活動休止期間に突入し、それぞれソロワークなどを経てバンド活動を再開させようとしたMR. BIG。しかしポール・ギルバート(G, Vo)がバンド脱退を表明し、再始動が暗礁に乗り上げそうになります。そんな彼らにもとに救世主として登場したのが、すでにソロアーティストとしての地位を確率していたギタリスト、リッチー・コッツェンでした。「えっ、あのPOISONの?」というツッコミはナシの方向で。むしろそこは「あのMOTHER HEADS FAMILY REUNIONの?」くらいにしておきましょう。

冗談はさておき、ブルージーかつファンキーなプレイ&楽曲が信条のリッチーを迎えて制作され、1999年秋に無事発表されたのがこの通算5作目のオリジナルアルバム『GET OVER IT』になります。

ソングライターとしてポップマエストロ方向へと進みつつあったポールのカラーが消えたことで、バンドは再び原点である「ソウルフルでブルージーなハードロック」を取り戻すことに成功。1曲目「Electrified」から枯れまくりなハードロックを楽しむことができるし、続く「Static」ではエリック・マーティン(Vo)とリッチーのツインボーカルをフィーチャーした、これまでのMR. BIGにはない武器も登場します。

……あれ、これが“みんなの求めていたMR. BIG”でいいんだっけ? アルバム1曲目はもっと派手で、ギターとベースが激しいインタープレイを聴かせてくれるんじゃなかったの? ギターの音もこんなに枯れまくりでいいんだっけ?

そう、これがリッチー加入後のMR. BIG最大のハードルなのです。ギターが玄人好みのプレイ&質感になったことで、80年代的な派手さは払拭。代わりに“無駄に本格派”という地味さを獲得してしまう。エリックのボーカルやビリー・シーン(B)のソングライティング力(もちろんリッチーのソングライティング力も)を生かすには十分すぎる武器ですが、きっと90年代前半にMR. BIGに夢中になったHR/HMファンには「これじゃない」感が強かったのではないでしょうか。事実、僕がそうでしたから。

確かに要所要所にテクニカルなプレイは登場しますが、それも本当に味付け程度。決してメインの武器となることはありません。アコースティックバラード「Superfantastic」やROLLING STONESばりにアーシーなR&R「A Rose Alone」、リッチーのファンクギターとエリックのソウルフルな歌が融合した「Hole In The Sun」、本作中もっとも演奏が派手な「Dancin' With My Devils」、セッション色の強い「Mr.Never In A Million Years」など確かに聴きどころが多い作品ではあるものの、それでも前作にあたる『HEY MAN』(1996年)にあった派手さはここにはない。それを「物足りない」と取るか「本格派志向になった」と取るかで、本作の評価は大きく二分するのではないでしょうか。

決して悪いアルバムではないけど(むしろ良い作品だけど)、これをMR. BIGでやらなくてもいいんじゃないか。リリースから20年近く経った今でもそう思わずにはいられません。けど、このへんの作品があったからこそ、のちのTHE WINERY DOGSへとつながっていくんだから、そういう意味ではテン年代以降のHR/HM史を語る上で重要な過去作なのかもしれませんね。



▼MR. BIG『GET OVER IT』
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2017年5月30日 (火)

MR. BIG『BIG BIGGER BIGGEST! THE BEST OF MR. BIG』(1996)

1996年秋に発表された、MR. BIG初のベストアルバム。同年1月に最新オリジナルアルバム『HEY MAN』を発表したものの、ここ日本以外では大したヒットにも恵まれず、バンドはしばらく活動を休止することに。そのお休み前の贈り物として、この新曲入りのベストアルバムが発表されたわけです。

日本盤と海外盤とでは収録内容と曲順が一部異なる本作。ここでは日本盤を軸に話を進めていきます。

なんとなくライブを意識して曲順が組まれた印象があるこのアルバム。「Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song)」から「Take Cover」へと続く流れは、その後の再結成ライブを彷彿とさせますし(きっと再始動後、そのへんは意識したんでしょう)、終盤も「Colorado Bulldog」で圧巻のテクニック合戦を見せてから「To Be With You」という“お約束”があり、最後はバンドの原点である「Addicted To That Rush」で終了。その中にはパワーポップ然としたストレートな「Stay Together」、ポール・ギルバート(G)がリードボーカルをとる変拍子のストレンジポップス「Unnatural」、いかにもエリック・マーティン(Vo)が書きそうな歌モノバラード「Not One Night」という新曲、海外盤ではこれが初出となるアコースティックナンバー「Seven Impossible Days」(日本では1994年発売の『RAW LIKE SUSHI III -JAPANDEMONIUM-』で発表済み)も含まれており、単なるグレイテストヒッツ作品で終わってないところに、バンドのこだわりが感じられます。

選曲は、いわゆるライブの定番曲というよりもシングルカットされた楽曲が中心。1作目『MR. BIG』(1989年)の「Wind Me Up」あたりがカットされていたり、そもそも1stからの楽曲が定番「Addicted To That Rush」と「Rock & Roll Over」だけというのも寂しいかぎり。このへんに、1996年当時のバンドのスタンスが見え隠れするような、しないような。そして、どうしても『LEAN INTO IT』(1991年)からの楽曲が多くなってしまうという悲しい流れ(全16曲中4曲)。あ、『BUMP AHEAD』(1993年)からも4曲だった。「Promis Her The Moon」とか誰の選曲なんだろう……とか考え始めるといろいろキナ臭くなりそうなので、選曲についてはこのへんで(苦笑)。

ちなみに日本盤にはボーナストラックとして、ポールが電動ドリルでお世話になっているマキタへプレゼントした「I Love You Japan」のライブテイクを追加。「Nothing But Love」がライブテイクなのが個人的にはマイナスポイントなのですが(海外盤はスタジオテイクを収録)、それを抜きにしても入門編としてはまずまずの1枚ではないでしょうか。

……と、昔は思っていたんです、自分も。でも現在ではMR. BIGのベストアルバムは複数発売されおり、ポール脱退後の楽曲を含むもの、別の未発表曲を含むものなどいろいろあるので、そのへんについても後々触れられたらと思います。



▼MR. BIG『BIG BIGGER BIGGEST! THE BEST OF MR. BIG』
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2017年5月29日 (月)

MR. BIG『HEY MAN』(1996)

1996年初頭にリリースされた、MR. BIG通算4作目のオリジナルアルバム。2作目の『LEAN INTO IT』(1991年)でその地位を確かなものにするも、時代がHR/HMからグランジへと移行し、続く『BUMP AHEAD』(1993年)は前作ほどの成功を収めることができず。しかし、ここ日本では前作以上の成功(セールス、動員)を成し遂げたことで、なんとか活動を継続することができたわけです。

『BUMP AHEAD』ではレーベルの意向がかなり反映されたこともあり、非常にソフトな曲が多く、1stアルバム『MR. BIG』(1989年)からかなり遠いところにたどり着いたなぁという印象がなきにしもあらずですが、この4thアルバム『HEY MAN』はどうかというと……きっと、そのオープニングから驚かされることでしょう。なにせ、過去3作ではおなじみだった「アルバム1曲目は楽器隊のテクニックを駆使したファストチューン」というお約束が初めて破られてしまったのですから。

その「Trapped In Toyland」は、不穏なメロディからスタートするヘヴィなミドルナンバー。1995年〜1996年というとすでにグランジブームも落ち着き、HR/HM系でいえばMACHINE HEADのような“PANTERA以降”のヘヴィバンド、KORNやTOOL、DEFTONESみたいに後のラウドロックへと通ずるオリジネイターたちがシーンに台頭し始めた時期。そこに影響されてということはないと思いますが、『HEY MAN』の楽曲はミドルテンポ中心で、ずっしりと構えた印象の強い作風となっています。

アルバムからのリードシングル「Take Cover」もHR/HM特有の“リフで引っ張る”タイプではなく、コードストロークやアルペジオを多様したギターフレーズにリズミカルなタム回しが印象的なドラムという、どこかU2あたりにも通ずる楽曲。そりゃあ『LEAN INTO IT』以降の“楽曲至上主義”路線が強まったと考えれば納得できはしますが、「これをあのMR. BIGがやるんだ……」と当時は若干ショックを受けたのを、今でもよく覚えています(とはいえ、聴き込むうちに好きになりましたけどね)。

そのほかにも、ついにビリー・シーン(B)のベースすら入っていないアコースティックナンバー「Goin' Where The Wind Blows」、明らかにPEARL JAM以降の影響下にあるダーク&スローな「The Chain」、純粋にポップソングとしては優れているものの「これをあの(以下略)」な「Dancin' Right Into The Flame」など異色作は含まれていますが、意外と前作ほどバラード色が強くないイメージを受けます。きっと全体的を覆う“なんとなくダーク”な空気感のせいかもしれませんね。これも時代感が反映されたものなんだと、今なら納得できますが、当時はいろいろ疑問を感じていたものです。

あ、もちろん従来のMR. BIGらしい楽曲も存在しますよ。ファンキーな「Jane Doe」、ソウルフルなハードロック「Where Do I Fit In?」、BON JOVIあたりにも通ずるソウルバラード「If That's What It Takes」、ここで楽器隊のテクニックが炸裂するか!というヘヴィな「Out Of The Underground」、ヘヴィさとサイケさが融合した「Mama D.」、そしてヘヴィなファンクロック「Fool Us Today」。こうやって挙げていくと、実はここ数作で一番「従来のMR. BIGらしい」ような錯覚に陥るのですが、全体を通して聴くとそう感じないのですから不思議です。

ちなみに本作はここ日本で、オリコンのアルバム週間ランキングで1位を獲得。アメリカではついにチャートインしなかったことを考えると、改めて不幸なのか幸せなのか……いや、なんでもないです。同作を携えたジャパンツアーは1996年4月から1ヶ月かけて、過去最大規模の全18公演が行われています。僕も武道館に足を運んだ記憶があります(「Trapped In Toyland」から始まった、あのツアーですね)。そしてバンドは、ツアー終了後の同年秋からしばしの活動休止に突入するのでした。



▼MR. BIG『HEY MAN』
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