2017/05/29

MR. BIG『HEY MAN』(1996)

1996年初頭にリリースされた、MR. BIG通算4作目のオリジナルアルバム。2作目の『LEAN INTO IT』(1991年)でその地位を確かなものにするも、時代がHR/HMからグランジへと移行し、続く『BUMP AHEAD』(1993年)は前作ほどの成功を収めることができず。しかし、ここ日本では前作以上の成功(セールス、動員)を成し遂げたことで、なんとか活動を継続することができたわけです。

『BUMP AHEAD』ではレーベルの意向がかなり反映されたこともあり、非常にソフトな曲が多く、1stアルバム『MR. BIG』(1989年)からかなり遠いところにたどり着いたなぁという印象がなきにしもあらずですが、この4thアルバム『HEY MAN』はどうかというと……きっと、そのオープニングから驚かされることでしょう。なにせ、過去3作ではおなじみだった「アルバム1曲目は楽器隊のテクニックを駆使したファストチューン」というお約束が初めて破られてしまったのですから。

その「Trapped In Toyland」は、不穏なメロディからスタートするヘヴィなミドルナンバー。1995年〜1996年というとすでにグランジブームも落ち着き、HR/HM系でいえばMACHINE HEADのような“PANTERA以降”のヘヴィバンド、KORNやTOOL、DEFTONESみたいに後のラウドロックへと通ずるオリジネイターたちがシーンに台頭し始めた時期。そこに影響されてということはないと思いますが、『HEY MAN』の楽曲はミドルテンポ中心で、ずっしりと構えた印象の強い作風となっています。

アルバムからのリードシングル「Take Cover」もHR/HM特有の“リフで引っ張る”タイプではなく、コードストロークやアルペジオを多様したギターフレーズにリズミカルなタム回しが印象的なドラムという、どこかU2あたりにも通ずる楽曲。そりゃあ『LEAN INTO IT』以降の“楽曲至上主義”路線が強まったと考えれば納得できはしますが、「これをあのMR. BIGがやるんだ……」と当時は若干ショックを受けたのを、今でもよく覚えています(とはいえ、聴き込むうちに好きになりましたけどね)。

そのほかにも、ついにビリー・シーン(B)のベースすら入っていないアコースティックナンバー「Goin' Where The Wind Blows」、明らかにPEARL JAM以降の影響下にあるダーク&スローな「The Chain」、純粋にポップソングとしては優れているものの「これをあの(以下略)」な「Dancin' Right Into The Flame」など異色作は含まれていますが、意外と前作ほどバラード色が強くないイメージを受けます。きっと全体的を覆う“なんとなくダーク”な空気感のせいかもしれませんね。これも時代感が反映されたものなんだと、今なら納得できますが、当時はいろいろ疑問を感じていたものです。

あ、もちろん従来のMR. BIGらしい楽曲も存在しますよ。ファンキーな「Jane Doe」、ソウルフルなハードロック「Where Do I Fit In?」、BON JOVIあたりにも通ずるソウルバラード「If That's What It Takes」、ここで楽器隊のテクニックが炸裂するか!というヘヴィな「Out Of The Underground」、ヘヴィさとサイケさが融合した「Mama D.」、そしてヘヴィなファンクロック「Fool Us Today」。こうやって挙げていくと、実はここ数作で一番「従来のMR. BIGらしい」ような錯覚に陥るのですが、全体を通して聴くとそう感じないのですから不思議です。

ちなみに本作はここ日本で、オリコンのアルバム週間ランキングで1位を獲得。アメリカではついにチャートインしなかったことを考えると、改めて不幸なのか幸せなのか……いや、なんでもないです。同作を携えたジャパンツアーは1996年4月から1ヶ月かけて、過去最大規模の全18公演が行われています。僕も武道館に足を運んだ記憶があります(「Trapped In Toyland」から始まった、あのツアーですね)。そしてバンドは、ツアー終了後の同年秋からしばしの活動休止に突入するのでした。



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投稿: 2017 05 29 12:00 午前 [1996年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/05/28

MR. BIG『BUMP AHEAD』(1993)

1993年秋にリリースされた、MR. BIG通算3作目のスタジオアルバム。アメリカでは前作ほどのヒットには及ばず、最高82位止まり。シングルカットされた「Wild World」(キャット・スティーヴンスのカバー)が全米27位、アコースティック楽曲「Ain't Seen Love Like That」が全米83位と、それほど大きな結果は残せませんでした。が、すでにこの頃はNIRVANA、PEARL JAM、STONE TEMPLE PILOTSといったグランジバンドが全盛期だったことを考えれば、それでも成功したほうと言えるでしょう。

前作『LEAN INTO IT』(1991年)からのシングル「To Be With You」、およびアルバムが日本のみならずアメリカなどでも大ヒットしてしまったため、バンドはレーベルから「『LEAN INTO IT』に続くヒット作を……」とプレッシャーを与えられます。バンドは1993年春に一度アルバムを完成させるのですが、これを聴いたレーベルからは「さらにヒット曲を」とリリースを延期させてまで収録内容を変更させるのです。

バンド結成時のコンセプトを貫き通したいバンド側(主にビリー・シーン)と、第二の「To Be With You」を欲しがるレーベル。結果として再構成されたアルバムは、バラード成分多めで80年代半ばのNIGHT RANGERを見ているようで若干つらくなります。

アルバムは究極のファストチューン「Colorado Bulldog」からスタート。続くソウルフルなHRナンバー「Price You Gotta Pay」、ここまでの流れは前作の延長線上にある、非常に納得のいくものです。が、3曲目「Promise Her The Moon」で早くもバラード。ファンキーな「What's It Gonna Be」で持ち返すものの、カバー曲「Wild World」で再びバラードに。多いってば。

6曲目「Mr. Gone」は前作における「Green-Tinted Sixties Mind」をもっとロック色強くしたみたいで、これはこれでアリかなと。そこから泣きメロHRの「The Whole World's Gonna Know」で唸らせられるものの、8曲目に本作3つめのバラード「Nothing But Love」が登場。ファンクメタル「Temperamental」で気をとり直そうとするものの、4曲目のバラード「Ain't Seen Love Like That」に閉口。さすがにやりすぎでしょ。最後はバンド名の由来となったFREEの名曲「Mr. Big」のカバーでエンディング。日本盤にはここに「Long Way Down」というハードロックナンバーが追加されますが、これが加わったところで本作のバラード成分が薄まるわけではないので、正直どうでもいいです。

というわけで、バラード4曲はさすがにやりすぎ。そりゃシンガーのエリック・マーティンからすれば気持ち込めやすいし、歌が目立つから良いでしょうけど、ポール・ギルバートやビリー・シーンにしてみればプレイヤーとしての個性を発揮する場を奪われたわけですから、いい気はしないですよね(もちろん、こういう作風になったのはエリックのせいではないですよ。そこは誤解なきよう)。

にしても、カバー曲の「Wild World」を除いたバラード3曲中、本当に良いと感じるのが(個人的には)「Nothing But Love」くらいしかないのもどうかと思うなぁ。「Ain't Seen Love Like That」も「To Be With You」の二番煎じ感が強くてインパクト皆無だし、「Promise Her The Moon」に至っては空気。完全に空気。ないわぁ〜。

で、このアルバムがまた日本でそれなりに売れてしまったというのが、さらに不幸。確かこのアルバムのツアーでは2回来日してるんじゃなかったかな。アルバムリリース直後と、1年後くらいに。どっちも行った記憶があるわ。

もし実現可能なら……バンドが当初想定していた収録内容&曲順の『BUMP AHEAD』を聴いてみたいものです。それによって、評価が変わるのかしら……。



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投稿: 2017 05 28 12:00 午前 [1993年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/05/27

MR. BIG『LEAN INTO IT』(1991)

MR. BIGが1991年春にリリースした通算2作目のオリジナルアルバム。前作『MR. BIG』(1989年)発表後、バンドは来日公演を行ったほか、翌1990年には6曲入りミニライブアルバム『RAW LIKE SUSHI』をリリース。1作目こそ海外公演の音源でしたが、これ以降続く『RAW LIKE SUSHI』シリーズは日本公演の模様を収めたものが発表されていくことになります。

さて、本国以上にここ日本で高い人気を誇り、文字通り“Big in Japan”になりつつあった彼らが、次の作品で挑んだのは、エリック・マーティン(Vo)の歌唱力を存分に生かした、より純度の高いソウルフルなアルバムを作ること。そこにポール・ギルバート(G)とビリー・シーン(B)のユニゾン&インタープレイを取り込むことで、歌モノ目線でもプレイヤー目線でも楽しめる、1枚目の延長線上にあるアルバムを作るはずでした。実際、このアルバムの大半の楽曲はそういうものに仕上がっていると思います。

ところが、この時期からポールのソングライターとしての才能が一気に開花。バンマスのビリーが想定していなかった「Green-Tinted Sixties Mind」みたいに、THE BEATLESの影響下にあるポップ色の強い楽曲が上がってきます。と同時に、エリックからもアコースティックバラード「To Be With You」が上がり、この2曲をアルバムに収録するかどうかでバンドは議論になるわけです。結果はご存知のとおり、この2曲は無事収録され、それぞれシングルカットもされることに。このシングル化にはレコード会社の思惑も働いているのではないかと思いますが、最初にシングルカットされた「Green-Tinted Sixties Mind」はイギリスで小ヒットし、ここ日本では好意的に受け入れられたと記憶しています。

で、問題は次のシングルとして発表された「To Be With You」。1991年末にシングル発売されると、翌1992年初頭にかけて全米チャートを上昇していき、気づけばNo.1を獲得。しかも4周連続1位というおまけつき。イギリスでも最高2位という、バンドを代表する1曲になるわけです。

ブルースやソウルをベースにしたハードロックバンドを始めたはずのMR. BIGが、ソングライターとしてのエゴを優先したがために、当初と違った方向でブレイクしてしまう。この成功と引き換えに、バンドはこの先、想像もつかないような苦難の数々に遭遇することになるわけです。

……が、それはまた別の話。純粋にアルバムの内容は素晴らしい以外の言葉が見つからないほど最高です。1曲目「Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song)」の疾走感と電動ドリルを使ったギター&ベースユニゾンソロ、“これぞMR. BIG”と断言したくなるソウルフルな「Alive And Kickin'」、前述のサイケデリックポップ「Green-Tinted Sixties Mind」、本作中唯一メンバーのペンではない楽曲(のちに作者のジェフ・パリスもレコーディングした)「CDFF-Lucky This Time」、“これぞMR. BIG”その2「Voodoo Kiss」、エリックならではのポップさとバンドのワイルドな演奏のバランスが絶妙な「Never Say Never」、王道歌モノバラード「Just Take My Heart」、もっとも前作の延長線上にあるHRチューン「My Kinda Woman」、冒頭のビリーによる低音Vo含め最高なヘヴィブルーズ「A Little Too Loose」、オープニングのハーモニーから最高なシャッフルナンバー「Road To Ruin」、そして締めにふさわしい「To Be With You」。日本盤にはここにポップだけど疾走感のある「Love Makes You Strong」も加わりますが、とにかく捨て曲なし。発売から26年経ったものの、今聴いても色褪せない名盤だと思います。

確かに1stアルバムで掲げたコンセプトはブレブレですが、そのこだわりを凌駕するほどの傑作。以降の迷走ぶりを考えると複雑な気持ちにはなるものの、このアルバムでの成功(全米15位、100万枚以上の売り上げ。またシングルとしても「Just Take My Heart」が全米16位にランクイン)がなければバンドの寿命はもっと短かったでしょうし、2000年代後半の再始動もなかったと思うのです。

まだ聴いたことない……というHR/HMファンはほぼいないと思われますが、もしいたら悪いことは言いません。今すぐ購入しましょう。



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投稿: 2017 05 27 12:00 午前 [1991年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/02/06

MR. BIG『MR. BIG』(1989)

ここ数日BLUE MURDER、BADLANDSを取り上げてきましたが、今回紹介するMR. BIG含めて……思えば1989年って“スーパーバンド”と呼ばれる大物アーティストや名プレイヤーが結成した新バンドが続出した1年だったんですよね。ジョン・ウェイトと元JOURNEY組が結成したBAD ENGLISHも1989年デビューでしたし。この風潮は、1986年を起点としたアメリカでのHR/HMブームが過渡期に突入したことを表していたのかもしれません。

さて。今回は日本のHR/HMファンなら誰もが知っている“BIG IN JAPAN”ことMR. BIGのデビュー作を紹介します。メンバーはソロシンガーとして活躍してきたエリック・マーティン(Vo)、元RACER-Xのポール・ギルバート(G)、元TALAS〜デヴィッド・リー・ロス・バンドのビリー・シーン(B)、IMPELLITTERIやテッド・ニュージェント・バンドなどに在籍したパット・トーピー(Dr)の4人。アルバムは全米46位という成績を残し、続く大ヒット作『LEAN INTO IT』(1991年)につなげることになります。

デヴィッド・リー・ロスのアルバム『EAT 'EM AND SMILE』でスティーヴ・ヴァイとのテクニカルなユニゾンプレイでHR/HMファンやギター&ベースプレイヤーを沸かせたビリーが、RACER-Xで強烈な速弾きを披露したポールとバンドを組んだことで、ファンは当然同様のユニゾンプレイを期待するわけですが、それは1曲目「Addicted To That Rush」で早くも実現します。

しかし、アルバムを聴き進めていくと本作は決してギター&ベース中心のアルバムではなく、エリックの歌が軸になっているブルースベースのハードロックアルバムであることに気づかされるわけです。「Wind Me Up」「Merciless」とグルーヴィーなミドルチューンが続き、4曲目でようやくタッピングを多用したビリーのベースソロが聴こえてきて「おおっ!」と期待してしまうのですが、当の「Had Enough」自体は泣きメロの歌がメインのバラードナンバー。その後も「Big Love」や「How Can You Do What You Do」「Anything For You」、「Rock & Roll Over」とキャッチーでメロウな楽曲、「Blame It On My Youth」や「Take A Walk」などのブルーステイストのロックチューンが続きます。

とはいえ、そういった歌主体の楽曲の中でもビリー&ポールは常人にはとても弾けないような、テクニカルなフレーズを散りばめています。そのへんがMR. BIGの個性につながっているわけですが、ここまでブルース色、テクニカルさを前面に打ち出すのは、この編成では本作が最初で最後。次作以降、ポールのカラーが色濃くなっていき、ポップさを強めた楽曲志向のバンドへと変化していきます。



▼MR. BIG『MR. BIG』
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投稿: 2017 02 06 12:00 午前 [1989年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2005/07/13

寝る前にこれ聴け!(3)

 えーっと、急ではありますが、9月18日(日/祝前日)にDJイベントやります。「AIN'T IT FUN」とはまた違った、濃ゆいイベントです‥‥題して「MOTLEY CRUE NIGHT」というクラブイベントを‥‥11月のモトリー・オリジナルメンバーでの来日を記念して、HM/HRややさぐれロケンローを中心としたイベントを一晩中やります。詳細はまた後日に発表しますが、メタル熱復活がこんなところにまで影響を及ぼそうとは‥‥怖いです自分でも。

 そんな感じで、11月の「AIN'T IT FUN」Vol.2まで、こちらのイベントで楽しんでください。遊びなし、相当マジな内容でいきますんで。

 さて本題。まだまだ続く「夜のオカズ」。 今夜のテーマは「1989年のスーパーグループ」です。


・BLUE MURDER「BLUE MURDER」('89)
 ジョン・サイクス(元THIN LIZZY〜WHITESNAKE等)、カーマイン・アピス、トニー・フランクリンという鉄壁のトリオによるデビュー盤。本来はドラムがコージー・パウエル、ボーカルにレイ・ギランが入るはずだったんだけど、いろいろあってこの3人で落ち着いたのね。
 とにかく、モダンでテクニカルなハードロックが聴けます。WHITESNAKE程湿っぽくなく、乾いた感じが曲から漂ってます。ちなみにボブ・ロックのプロデュース。ホント、正に「ギターアルバム」といった印象。今でも好きな1枚。


▼BLUE MURDER「BLUE MURDER」(amazon


・BADLANDS「BADLANDS」('89)
 元オジー・オズボーン・バンドのジェイク・E・リーによるニューバンド。ボーカルがBLUE MURDERをクビになったレイ・ギラン、ドラムにその後KISS入りするエリック・シンガーがいたりで、興味深い。
 ジェイクの「らしい」ストラト・サウンドが魅力的。意外にもZEP的ブルーズ・ロックが好きだということがここで判明、ボーカルもロバート・プラントばりのハイトーンで対抗。凄く時代を感じさせる1枚じゃないかな。久々聴いたらホント良かった。


▼BADLANDS「BADLANDS」(amazon


・MR.BIG「MR.BIG」('89)
 元TALAS〜デイヴ・リー・ロス・バンドのビリー・シーン、元RACER-Xのポール・ギルバートによるニューバンド。ボーカルはVAN HALENにも誘われたことのあるエリック・マーティン。
 まだMR.BIGが「Big in Japan」になる前の、本当の意味での「ルーツロック」的な音を鳴らしてた名盤。ギター&ベースによるユニゾンプレイもさることながら、とにかく曲が良い。その後のポップ路線とは違った、枯れつつも派手という相反する要素を見事に融合した1枚に仕上がってる、と思う。評価的には2ndなのかな、やっぱり。けど "Anything For You" がある時点で、俺的にはこっちの方が上。まだポール・ギルバートの色が濃く表出する前の、「ビリー・シーンのバンド」だった頃の、輝かしき1枚。


▼MR.BIG「MR.BIG」(amazon


 というわけで、同期デビューの「有名プレイヤーによるスーパー新人バンド」を集めてみたんだけど、BADLANDSが久々聴いたらすげーカッコ良かった!

投稿: 2005 07 13 11:00 午後 [1989年の作品, Badlands, Blue Murder, Mr. Big] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック