2017/07/01

MR. BIG『DEFYING GRAVITY』(2017)

苦しい環境下で最善を尽くした前作『...THE STORIES WE COULD TELL』(2014年)から3年ぶりに発表された、MR. BIG通算9作目のスタジオアルバム。ツアーではパーキンソン病で体が思うように動かなくなってきたパット・トーピー(Dr)に替わり、マット・スターがサポートで参加。もちろんパットもパーカッションとコーラスでライブに加わり、新たな5人編成というスタイルでツアーを完遂します。

で、そこから今作に向かっていくわけですが、今回のプロデューサーは初期4作を手がけてきたケヴィン・エルソン。バンドとしても来年で結成30周年を迎えることもあり、ここで改めて原点に戻ろうという思いがあったのかもしれません。ドラムトラックは前作のようにプログラミングではなく、パットが方向性を指示しながらマットがプレイ。楽曲制作にはもちろんメンバー4人が中心となり、これまで同様の外部ライターを迎えて書き下ろされていくのですが……。

なんですか、この突き抜け方は!? 1曲目「Open Your Eyes」のオープニングでは、1stアルバム『MR. BIG』(1989年)のオープニングに収められていたエンジニアの声がそのまま流用され驚いたところで、そのまま軽やかにスタート。かと思えば、続いて爽やかなパワーポップチューン「Defying Gravity」が飛び出す。さらに、ブギーのリズムが気持ち良い「Everybody Needs A Little Trouble」、カントリー調のミディアムナンバー「Damn I'm In Love Again」、ど頭のギター&ベースによるテクニカルなフレーズに驚かされる「Mean To Me」、どこか影のあるソウルバラード「Nothin' Bad ('Bout Feelin' Good)」と良曲が続くこの構成……再結成後の2枚(『WHAT IF...』『...THE STORIES WE COULD TELL』)がバンドの原点である「ブルージーでソウルフルなHR」に立ち返ったかと思っていたら、今作ではその一歩先にある『LEAN INTO IT』(1991年)で見せた“開け方”が存在する。そう、バンドが今回目指した“原点”は最大のヒット作となった『LEAN INTO IT』期に立ち返ることだったのかもしれません。

事実、本作には「To Be With You」が全米1位を獲得した時期を振り返る「1992」という楽曲も存在します。これなんてメロディに「Green-Tinted Sixties Mind」の匂いが感じられますしね。もちろん、すべてがあの頃の焼き直しではありません。あのアルバムから26年後のエリック・マーティン(Vo)、ポール・ギルバート(G)、ビリー・シーン(B)、そしてパット・トーピーの姿がここには存在するのですから。

唯一、難癖をつけるとしたら……やはり1曲目はギター&ベースのユニゾンバリバリのファストチューンでキメてほしかったな、と。まぁそれをやらないからこそ、「2017年のMR. BIG」なわけで、それも重々理解できるんですけど……たぶん、それをやらないというのも彼らなりの意地なのかもしれません。本当はそんな意地、捨ててほしかったんですけどね。

まぁ苦言は本当にそれくらいで、あとはもうひたすら楽しくて聴き応えのある、いかにもこのバンドらしい作品集だと思います。そして、このアルバムに触れてから過去2作を聴き返すと、また違った聴こえ方をしてくるから本当に不思議。30周年を前にネクストレベルに到達しそうな、そんな力作。ここ日本だけでなく、久しぶりに海外でもヒットしてほしいな。



▼MR. BIG『DEFYING GRAVITY』
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投稿: 2017 07 01 12:00 午前 [2017年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/06/24

MR. BIG『...THE STORIES WE COULD TELL』(2014)

2014年9月にリリースされた、通算8枚目のオリジナルアルバム。再結成後としては、2010年末に発表された前作『WHAT IF...』から3年9ヶ月ぶり。ここまで時間が空いたのには理由があり……ご存知のとおり、パット・トーピー(Dr)のパーキンソン病が発覚。また、ポール・ギルバート(G)の難聴が悪化したことや、ビリー・シーン(B)がリッチー・コッツェン(Vo, G)、マイク・ポートノイ(Dr)と新たに結成したバンド、THE WINERY DOGSの活動が好調だったことが、制作の遅れにつながったと言われています。

さて、そうなると誰がバンドの新作制作を引っ張るのか。意外にも、その役割を引き受けたのがエリック・マーティン(Vo)でした。エリックは全13曲中(ボーナストラック除く)11曲にクレジットされ、プロデューサーのパット・リーガンとともに根気よく作業を続けたようです。そこには、病気でドラムが叩けなくなったパット・トーピーが自身がプログラミングしたドラムトラックを採用するという、気の遠くなる作業も含まれているのですから……。

そういう難産の末完成した本作ですが、評価は前作ほど高くないのも事実。ドラム云々は抜きにしても(実際、シンバルなど金モノ系を集中して聴かない限り、プログラミングしたドラムトラックとは気づかないのでは?)、なんとなくバンドが完璧に噛み合ってない印象を受けるのです。

楽曲自体は前作の延長線上にあり、メロディラインなど比較的優れたナンバーが多いのですが、ギターとベースが遠慮がちというか。このへんはポールの病気の影響も大きいのかもしれませんが、それに引っ張られるようにベースもボトムを支えることに専念している印象を受けます。そこにパットの件が加わるもんだから……言い方は悪いけど、「エリック・マーティンのソロアルバム(MR. BIG寄り)」と感じてしまうのです。

いえ、エリックはそうならないよう、しっかりMR. BIGというバンドのことを意識して作業に当たったと思うんです。しかしエリック以外のメンバーが地味すぎるがために、結果エリックの個性のみが突出してしまう。それが先の「バンドが完璧に噛み合ってない」につながるわけです。

改めて聴き返してみても、決して悪いアルバムではないんですよ。だけど、地味さが前面に出てしまい、前作よりも聴く頻度が落ちてしまった。悲しいかな、そういう残念な1枚であります。

また、本作は日本盤の初回限定盤のみ、初期編成で発表した4枚のアルバムからのベスト選曲を再録音したボーナスティスク付き。なぜこのタイミングで再録ベスト?と思ったけど、実はこれ、パットが過去の楽曲でプログラミングの練習をしたってことなんじゃないでしょうか。ここでの“リハーサル”があったから、オリジナル新作では違和感のない“ドラミング”を披露することができた。そう思うと、この『...THE STORIES WE COULD TELL』というアルバムがいかに難産だったかが理解できると思います。

もうひとつ残念なのは、新作本編よりもこっちのボーナスディスクのほうが聴く頻度が高かったということ。声域が若干低くなったエリックに合わせて半音下げで再録された名曲の数々は、原曲よりテンションが落ちるものではありますが、曲によっては大人の色気を感じるものも含まれており、まったくナシではないかな。とはいえこれ、単なるオマケなのであまり高い評価は付けないでおきます。

本作を携えたツアーでは、パットもステージ上に姿はあるものの、基本的にはサポートドラマーのマット・スターがプレイ。パットはタンバリンを叩いたりコーラスを入れたりしつつ、限られた楽曲でドラムを披露してくれました。ここでの変則編成がメンバー的にもお気に召したようで、新たな未来へとつながっていくわけです。



▼MR. BIG『...THE STORIES WE COULD TELL』
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投稿: 2017 06 24 12:00 午前 [2014年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/06/17

MR. BIG『WHAT IF...』(2010)

2009年にエリック・マーティン(Vo)、ポール・ギルバート(G)、ビリー・シーン(B)、パット・トーピー(Dr)のオリジナル編成で復活したMR. BIG。まずは日本を含むワールドツアーを行い、バンドの健在ぶりを存分にアピールしました。そのツアーでの手応えを制作活動に向け、日本で2010年末(海外では2011年初頭)に発表した通算7枚目のスタジオアルバムがこの『WHAT IF...』です。

オリジナル編成としては1996年の『HEY MAN』から14年ぶりの新作となった本作は、IRON MAIDENやAEROSMITHとの仕事で知られるケヴィン・シャーリーをプロデューサーに迎えて制作。作風的にはリッチー・コッツェン在籍時の2枚よりもむしろ、『HEY MAN』までのMR. BIGに近いかもしれません。オープニングがファストチューンではなく、ずっしりとしたリズムでじっくり聴かせる「Undertow」というところは『HEY MAN』やリッチー時代にも通ずるものがありますが、続く「American Beauty」は初期ファンには嬉しいファストチューン。ギター&ベースのユニゾンプレイもふんだんに取り入れられており、「なぜこの曲を1曲目にしなかった!?」と憤るファンも多いのではないでしょうか。

が、しかし。この曲を2曲目に配置することで、「Undertow」も「American Beauty」も映えると思うんですよ、実際のところ。そこから若干ダークなバラード「Stranger In My Life」(終盤のポールのギターソロが最高)、パーカッシヴなドラムパターンがクールな「Nobody Left To Blame」、再びアッパーな「Still Ain't Enough For Me」と続いていく前半の構成も、より新鮮に聴こえるんじゃないでしょうか。実際、僕はそうでした。

エリックの高音が出にくくなったことから、再結成後は半音下げチューニングでライブもレコーディングも実施していることから、必要以上にダークさが前に出てしまいがちですが、それが本作の作風にはぴったり合っていると思う。

それと『HEY MAN』以降減少傾向にあった、曲中の“オカズ”が一気に増えていること。ちょっとしたギター&ベースのユニゾンや、いきなり飛び込んでくるギターやベースの速弾きフレーズ。この“オカズ”という名の無駄があってこそ、MR. BIGなんだよなぁ〜と、このアルバムを聴いたときにふと考えたことを、今思い出しました。

大ヒット作『LEAN INTO IT』(1991年)というよりは、バンドのルーツである1stアルバム『MR. BIG』(1989年)に『HEY MAN』の手法でもう一度チャレンジした。そんな印象を受けるのが、再結成1作目のこのアルバム。佳曲は多いけど、突出した名曲はない。だけど、全体で勝負する。結果、アルバムを聴き終えたときに「ああ、MR. BIGの新作だった」と納得させられる。もう今さら“ドリルソング”や「To Be With You」の第二弾なんて望んでないし、今はこの体制で再び長く続けてくれることを祈るばかり。そう、リリース当時はそう思っていたんです……。



▼MR. BIG『WHAT IF...』
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投稿: 2017 06 17 12:00 午前 [2010年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/06/02

MR. BIG『GREATEST HITS』(2004)

2002年に解散したMR. BIGの、ポール・ギルバート時代(1989〜1996年)とリッチー・コッツェン時代(1999年〜2001年)の両期をまとめたオールタイムベストアルバム。2004年という微妙な時期に発表されていますが、解散前までのキャリアを総括するという意味では非常に手軽な1枚と言えます。

最初のベストアルバム『BIG BIGGER BIGGEST! THE BEST OF MR. BIG』(1996年)がポール時代、しかもチャート的に成功した『LEAN INTO IT』(1991年)と『BUMP AHEAD』(1993年)の楽曲が半数を占めるという偏った内容でしたが、本作は1st『MR. BIG』(1989年)から3曲、2nd『LEAN INTO IT』から5曲、3rd『BUMP AHEAD』から3曲、4th『HEY MAN』から1曲、5th『GET OVER IT』(1999年)から2曲、6th『ACTUAL SIZE』(2001年)から2曲と、まぁ妥当な割合となっています。

そこに加えて、本作にはアルバム未収録曲「Strike Like Lightning」が追加されているのが大きなポイント。1990年に映画『ネイビー・シールズ』のサウンドトラックに提供したこの曲は、一部のファンのみの間で知られる隠れた名曲。1st『MR. BIG』の延長線上にあるストレートなハードロックチューンですが、実はこの曲、メンバーのペンによるものではないんですね。そこも含めて、非常に貴重なナンバーではないかと。

ちなみに同サントラにはもう1曲「Shadows」というアルバム未収録曲も収められていますが、こちらはベストアルバムには入っていません。どうせならこっちも入れてほしかった。

さて、アルバムの構成ですが、年代順(リリース順)となっており、純粋にバンドの成長・変化を楽しむことができるはずです。「Big Love」や「Take A Walk」「Alive And Kickin'」「Price You Gotta Pay」といったライブならではの非シングル曲もそれなりに入っているし、なによりもバラード率が低いのが良い(笑)。「MR. BIGといえば美しいバラード!」という人には、2000年にバラード系楽曲をまとめた『DEEP CUTS』というコンピレーションアルバムも発表されているので、ぜひそちらを。

ただ、オールキャリア総括というのを頭ではわかっていても、「Take Cover」のあとに突然「Dancin' With My Devils」が来ると「?」となってしまうのはどうにかならないでしょうか。まぁ自分自身の問題ですけどね。

まぁつまりは……結局僕自身の中でのMR. BIGとは「エリック・マーティン、ポール・ギルバート、ビリー・シーン、パット・トーピーの4人」っていうことなんです。リッチー・コッツェンには悪気はないんだけど。あ、『MOTHER HEAD'S FAMILY REUNION』(1994年)や『WAVE OF EMOTION』(1996年)、大好きです(笑)。



▼MR. BIG『GREATEST HITS』
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投稿: 2017 06 02 12:00 午前 [2004年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/06/01

MR. BIG『ACTUAL SIZE』(2001)

2001年夏に発表された、MR. BIG通算6枚目のスタジオアルバム。プロデューサーには、リッチー・コッツェン(G, Vo)が連れてきたリッチー・ズィート(リッチーが参加したPOISON『NATIVE TONGUE』(1993年)やリッチーの『MOTHER HEAD'S FAMILY REUNION』(1994年)などを手がけたプロデューサー)が迎えられ、ほぼリッチー・コッツェン主導のもと制作された1枚と言っていいでしょう。

事実、ソングライティングの面ではバンドの創始者であるビリー・シーン(B)が1曲(「How Did I Give Myself Away」)のみクレジットされているだけで、大半がリッチー、そしてエリック・マーティン(Vo)、さらにはパット・トーピー(Dr)がそれぞれメインで書かれた楽曲が中心。ビリーのプレイもオープニングの「Lost In America」や「Suffocation」でこそテクニカルなフレーズが登場するものの、全体的には地味の一言。完全に存在感を消されているような印象すら受けます。

だって、アルバムからのリードシングル「Shine」(リッチー・コッツェンとリッチー・ズィートで書かれたポップチューン)の地味さといったら、前作『GET OVER IT』(1999年)以上ですから。途中、ギターとベースのユニゾンフレーズも登場しますが、決してテクニカルなものではないし。ボーカルにしても、コーラスをとるリッチーの存在感が前作以上で、エリックが歌っているからMR. BIGのアルバムであることを思い出すくらい。リッチーの声に気を取られてたら、確実に彼のアルバムと勘違いしちゃうんじゃないでしょうか。

確かに、リッチーの持ち味を生かした「Suffocation」(しかもこの曲、パットがチャック・ライトらと書いた楽曲なのだから驚き)をはじめカッコいい曲も複数存在します。しかし、それらは別に「MR. BIGである必要のないもの」ばかり。エリックやリッチーがソロでやればまったく問題のない楽曲ばかりなんです。

そういえば、先の「Suffocation」しかり、本作ではパットが今まで以上に大活躍しています。意外にもフックになってくるのは「Crawl Over Me」「Cheap Little Thrill」など、パットが書いた曲ばかりですし。それも、どこかポール・ギルバート時代に通ずる不思議な魅力があるんですから……もしかしたらMR. BIGがこの時点でもMR. BIGらしさを保てていたのは「エリックの声」という対外的な要素と、パットのソングライターとしての才能だったのかもしれませんね。

そんなパットの頑張りがあったものの、ビリーからしたらそりゃあ不満たらたらですよね。実際、リリース前のインタビューでビリー、かなり本音を漏らしていたはず。その結果、リリースを待たずしてビリーがバンドから解雇されるという青天の霹靂。その直後にバンドは本作とそのツアーをもって解散することを発表し、そのツアーにもビリーが参加することを改めてアナウンスするのです。要はビリー、サポートメンバー扱いですよ。

2002年春にはここ日本でもフェアウェルツアーを行いましたが、僕は行ってません。そんなギスギスしたバンド、見たくないもの。

そんなネガティブな思い出が多い作品だけに、個人的にはどうしても正当な評価を下しにくいのですが……バンドが無事再結成した今聴くと、そこまで悪くない作品だなと思いました。ただ、「これをMR. BIGがやるべきか?」と問われたら「NO」と即答しますけどね。



▼MR. BIG『ACTUAL SIZE』
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投稿: 2017 06 01 12:00 午前 [2001年の作品, Mr. Big, Richie Kotzen] | 固定リンク

2017/05/31

MR. BIG『GET OVER IT』(1999)

1996年秋以降に活動休止期間に突入し、それぞれソロワークなどを経てバンド活動を再開させようとしたMR. BIG。しかしポール・ギルバート(G, Vo)がバンド脱退を表明し、再始動が暗礁に乗り上げそうになります。そんな彼らにもとに救世主として登場したのが、すでにソロアーティストとしての地位を確率していたギタリスト、リッチー・コッツェンでした。「えっ、あのPOISONの?」というツッコミはナシの方向で。むしろそこは「あのMOTHER HEADS FAMILY REUNIONの?」くらいにしておきましょう。

冗談はさておき、ブルージーかつファンキーなプレイ&楽曲が信条のリッチーを迎えて制作され、1999年秋に無事発表されたのがこの通算5作目のオリジナルアルバム『GET OVER IT』になります。

ソングライターとしてポップマエストロ方向へと進みつつあったポールのカラーが消えたことで、バンドは再び原点である「ソウルフルでブルージーなハードロック」を取り戻すことに成功。1曲目「Electrified」から枯れまくりなハードロックを楽しむことができるし、続く「Static」ではエリック・マーティン(Vo)とリッチーのツインボーカルをフィーチャーした、これまでのMR. BIGにはない武器も登場します。

……あれ、これが“みんなの求めていたMR. BIG”でいいんだっけ? アルバム1曲目はもっと派手で、ギターとベースが激しいインタープレイを聴かせてくれるんじゃなかったの? ギターの音もこんなに枯れまくりでいいんだっけ?

そう、これがリッチー加入後のMR. BIG最大のハードルなのです。ギターが玄人好みのプレイ&質感になったことで、80年代的な派手さは払拭。代わりに“無駄に本格派”という地味さを獲得してしまう。エリックのボーカルやビリー・シーン(B)のソングライティング力(もちろんリッチーのソングライティング力も)を生かすには十分すぎる武器ですが、きっと90年代前半にMR. BIGに夢中になったHR/HMファンには「これじゃない」感が強かったのではないでしょうか。事実、僕がそうでしたから。

確かに要所要所にテクニカルなプレイは登場しますが、それも本当に味付け程度。決してメインの武器となることはありません。アコースティックバラード「Superfantastic」やROLLING STONESばりにアーシーなR&R「A Rose Alone」、リッチーのファンクギターとエリックのソウルフルな歌が融合した「Hole In The Sun」、本作中もっとも演奏が派手な「Dancin' With My Devils」、セッション色の強い「Mr.Never In A Million Years」など確かに聴きどころが多い作品ではあるものの、それでも前作にあたる『HEY MAN』(1996年)にあった派手さはここにはない。それを「物足りない」と取るか「本格派志向になった」と取るかで、本作の評価は大きく二分するのではないでしょうか。

決して悪いアルバムではないけど(むしろ良い作品だけど)、これをMR. BIGでやらなくてもいいんじゃないか。リリースから20年近く経った今でもそう思わずにはいられません。けど、このへんの作品があったからこそ、のちのTHE WINERY DOGSへとつながっていくんだから、そういう意味ではテン年代以降のHR/HM史を語る上で重要な過去作なのかもしれませんね。



▼MR. BIG『GET OVER IT』
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投稿: 2017 05 31 12:00 午前 [1999年の作品, Mr. Big, Richie Kotzen] | 固定リンク

2017/05/30

MR. BIG『BIG BIGGER BIGGEST! THE BEST OF MR. BIG』(1996)


1996年秋に発表された、MR. BIG初のベストアルバム。同年1月に最新オリジナルアルバム『HEY MAN』を発表したものの、ここ日本以外では大したヒットにも恵まれず、バンドはしばらく活動を休止することに。そのお休み前の贈り物として、この新曲入りのベストアルバムが発表されたわけです。

日本盤と海外盤とでは収録内容と曲順が一部異なる本作。ここでは日本盤を軸に話を進めていきます。

なんとなくライブを意識して曲順が組まれた印象があるこのアルバム。「Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song)」から「Take Cover」へと続く流れは、その後の再結成ライブを彷彿とさせますし(きっと再始動後、そのへんは意識したんでしょう)、終盤も「Colorado Bulldog」で圧巻のテクニック合戦を見せてから「To Be With You」という“お約束”があり、最後はバンドの原点である「Addicted To That Rush」で終了。その中にはパワーポップ然としたストレートな「Stay Together」、ポール・ギルバート(G)がリードボーカルをとる変拍子のストレンジポップス「Unnatural」、いかにもエリック・マーティン(Vo)が書きそうな歌モノバラード「Not One Night」という新曲、海外盤ではこれが初出となるアコースティックナンバー「Seven Impossible Days」(日本では1994年発売の『RAW LIKE SUSHI III -JAPANDEMONIUM-』で発表済み)も含まれており、単なるグレイテストヒッツ作品で終わってないところに、バンドのこだわりが感じられます。

選曲は、いわゆるライブの定番曲というよりもシングルカットされた楽曲が中心。1作目『MR. BIG』(1989年)の「Wind Me Up」あたりがカットされていたり、そもそも1stからの楽曲が定番「Addicted To That Rush」と「Rock & Roll Over」だけというのも寂しいかぎり。このへんに、1996年当時のバンドのスタンスが見え隠れするような、しないような。そして、どうしても『LEAN INTO IT』(1991年)からの楽曲が多くなってしまうという悲しい流れ(全16曲中4曲)。あ、『BUMP AHEAD』(1993年)からも4曲だった。「Promis Her The Moon」とか誰の選曲なんだろう……とか考え始めるといろいろキナ臭くなりそうなので、選曲についてはこのへんで(苦笑)。

ちなみに日本盤にはボーナストラックとして、ポールが電動ドリルでお世話になっているマキタへプレゼントした「I Love You Japan」のライブテイクを追加。「Nothing But Love」がライブテイクなのが個人的にはマイナスポイントなのですが(海外盤はスタジオテイクを収録)、それを抜きにしても入門編としてはまずまずの1枚ではないでしょうか。

……と、昔は思っていたんです、自分も。でも現在ではMR. BIGのベストアルバムは複数発売されおり、ポール脱退後の楽曲を含むもの、別の未発表曲を含むものなどいろいろあるので、そのへんについても後々触れられたらと思います。



▼MR. BIG『BIG BIGGER BIGGEST! THE BEST OF MR. BIG』
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投稿: 2017 05 30 12:00 午前 [1996年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/05/29

MR. BIG『HEY MAN』(1996)

1996年初頭にリリースされた、MR. BIG通算4作目のオリジナルアルバム。2作目の『LEAN INTO IT』(1991年)でその地位を確かなものにするも、時代がHR/HMからグランジへと移行し、続く『BUMP AHEAD』(1993年)は前作ほどの成功を収めることができず。しかし、ここ日本では前作以上の成功(セールス、動員)を成し遂げたことで、なんとか活動を継続することができたわけです。

『BUMP AHEAD』ではレーベルの意向がかなり反映されたこともあり、非常にソフトな曲が多く、1stアルバム『MR. BIG』(1989年)からかなり遠いところにたどり着いたなぁという印象がなきにしもあらずですが、この4thアルバム『HEY MAN』はどうかというと……きっと、そのオープニングから驚かされることでしょう。なにせ、過去3作ではおなじみだった「アルバム1曲目は楽器隊のテクニックを駆使したファストチューン」というお約束が初めて破られてしまったのですから。

その「Trapped In Toyland」は、不穏なメロディからスタートするヘヴィなミドルナンバー。1995年〜1996年というとすでにグランジブームも落ち着き、HR/HM系でいえばMACHINE HEADのような“PANTERA以降”のヘヴィバンド、KORNやTOOL、DEFTONESみたいに後のラウドロックへと通ずるオリジネイターたちがシーンに台頭し始めた時期。そこに影響されてということはないと思いますが、『HEY MAN』の楽曲はミドルテンポ中心で、ずっしりと構えた印象の強い作風となっています。

アルバムからのリードシングル「Take Cover」もHR/HM特有の“リフで引っ張る”タイプではなく、コードストロークやアルペジオを多様したギターフレーズにリズミカルなタム回しが印象的なドラムという、どこかU2あたりにも通ずる楽曲。そりゃあ『LEAN INTO IT』以降の“楽曲至上主義”路線が強まったと考えれば納得できはしますが、「これをあのMR. BIGがやるんだ……」と当時は若干ショックを受けたのを、今でもよく覚えています(とはいえ、聴き込むうちに好きになりましたけどね)。

そのほかにも、ついにビリー・シーン(B)のベースすら入っていないアコースティックナンバー「Goin' Where The Wind Blows」、明らかにPEARL JAM以降の影響下にあるダーク&スローな「The Chain」、純粋にポップソングとしては優れているものの「これをあの(以下略)」な「Dancin' Right Into The Flame」など異色作は含まれていますが、意外と前作ほどバラード色が強くないイメージを受けます。きっと全体的を覆う“なんとなくダーク”な空気感のせいかもしれませんね。これも時代感が反映されたものなんだと、今なら納得できますが、当時はいろいろ疑問を感じていたものです。

あ、もちろん従来のMR. BIGらしい楽曲も存在しますよ。ファンキーな「Jane Doe」、ソウルフルなハードロック「Where Do I Fit In?」、BON JOVIあたりにも通ずるソウルバラード「If That's What It Takes」、ここで楽器隊のテクニックが炸裂するか!というヘヴィな「Out Of The Underground」、ヘヴィさとサイケさが融合した「Mama D.」、そしてヘヴィなファンクロック「Fool Us Today」。こうやって挙げていくと、実はここ数作で一番「従来のMR. BIGらしい」ような錯覚に陥るのですが、全体を通して聴くとそう感じないのですから不思議です。

ちなみに本作はここ日本で、オリコンのアルバム週間ランキングで1位を獲得。アメリカではついにチャートインしなかったことを考えると、改めて不幸なのか幸せなのか……いや、なんでもないです。同作を携えたジャパンツアーは1996年4月から1ヶ月かけて、過去最大規模の全18公演が行われています。僕も武道館に足を運んだ記憶があります(「Trapped In Toyland」から始まった、あのツアーですね)。そしてバンドは、ツアー終了後の同年秋からしばしの活動休止に突入するのでした。



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投稿: 2017 05 29 12:00 午前 [1996年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/05/28

MR. BIG『BUMP AHEAD』(1993)

1993年秋にリリースされた、MR. BIG通算3作目のスタジオアルバム。アメリカでは前作ほどのヒットには及ばず、最高82位止まり。シングルカットされた「Wild World」(キャット・スティーヴンスのカバー)が全米27位、アコースティック楽曲「Ain't Seen Love Like That」が全米83位と、それほど大きな結果は残せませんでした。が、すでにこの頃はNIRVANA、PEARL JAM、STONE TEMPLE PILOTSといったグランジバンドが全盛期だったことを考えれば、それでも成功したほうと言えるでしょう。

前作『LEAN INTO IT』(1991年)からのシングル「To Be With You」、およびアルバムが日本のみならずアメリカなどでも大ヒットしてしまったため、バンドはレーベルから「『LEAN INTO IT』に続くヒット作を……」とプレッシャーを与えられます。バンドは1993年春に一度アルバムを完成させるのですが、これを聴いたレーベルからは「さらにヒット曲を」とリリースを延期させてまで収録内容を変更させるのです。

バンド結成時のコンセプトを貫き通したいバンド側(主にビリー・シーン)と、第二の「To Be With You」を欲しがるレーベル。結果として再構成されたアルバムは、バラード成分多めで80年代半ばのNIGHT RANGERを見ているようで若干つらくなります。

アルバムは究極のファストチューン「Colorado Bulldog」からスタート。続くソウルフルなHRナンバー「Price You Gotta Pay」、ここまでの流れは前作の延長線上にある、非常に納得のいくものです。が、3曲目「Promise Her The Moon」で早くもバラード。ファンキーな「What's It Gonna Be」で持ち返すものの、カバー曲「Wild World」で再びバラードに。多いってば。

6曲目「Mr. Gone」は前作における「Green-Tinted Sixties Mind」をもっとロック色強くしたみたいで、これはこれでアリかなと。そこから泣きメロHRの「The Whole World's Gonna Know」で唸らせられるものの、8曲目に本作3つめのバラード「Nothing But Love」が登場。ファンクメタル「Temperamental」で気をとり直そうとするものの、4曲目のバラード「Ain't Seen Love Like That」に閉口。さすがにやりすぎでしょ。最後はバンド名の由来となったFREEの名曲「Mr. Big」のカバーでエンディング。日本盤にはここに「Long Way Down」というハードロックナンバーが追加されますが、これが加わったところで本作のバラード成分が薄まるわけではないので、正直どうでもいいです。

というわけで、バラード4曲はさすがにやりすぎ。そりゃシンガーのエリック・マーティンからすれば気持ち込めやすいし、歌が目立つから良いでしょうけど、ポール・ギルバートやビリー・シーンにしてみればプレイヤーとしての個性を発揮する場を奪われたわけですから、いい気はしないですよね(もちろん、こういう作風になったのはエリックのせいではないですよ。そこは誤解なきよう)。

にしても、カバー曲の「Wild World」を除いたバラード3曲中、本当に良いと感じるのが(個人的には)「Nothing But Love」くらいしかないのもどうかと思うなぁ。「Ain't Seen Love Like That」も「To Be With You」の二番煎じ感が強くてインパクト皆無だし、「Promise Her The Moon」に至っては空気。完全に空気。ないわぁ〜。

で、このアルバムがまた日本でそれなりに売れてしまったというのが、さらに不幸。確かこのアルバムのツアーでは2回来日してるんじゃなかったかな。アルバムリリース直後と、1年後くらいに。どっちも行った記憶があるわ。

もし実現可能なら……バンドが当初想定していた収録内容&曲順の『BUMP AHEAD』を聴いてみたいものです。それによって、評価が変わるのかしら……。



▼MR. BIG『BUMP AHEAD』
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投稿: 2017 05 28 12:00 午前 [1993年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/05/27

MR. BIG『LEAN INTO IT』(1991)

MR. BIGが1991年春にリリースした通算2作目のオリジナルアルバム。前作『MR. BIG』(1989年)発表後、バンドは来日公演を行ったほか、翌1990年には6曲入りミニライブアルバム『RAW LIKE SUSHI』をリリース。1作目こそ海外公演の音源でしたが、これ以降続く『RAW LIKE SUSHI』シリーズは日本公演の模様を収めたものが発表されていくことになります。

さて、本国以上にここ日本で高い人気を誇り、文字通り“Big in Japan”になりつつあった彼らが、次の作品で挑んだのは、エリック・マーティン(Vo)の歌唱力を存分に生かした、より純度の高いソウルフルなアルバムを作ること。そこにポール・ギルバート(G)とビリー・シーン(B)のユニゾン&インタープレイを取り込むことで、歌モノ目線でもプレイヤー目線でも楽しめる、1枚目の延長線上にあるアルバムを作るはずでした。実際、このアルバムの大半の楽曲はそういうものに仕上がっていると思います。

ところが、この時期からポールのソングライターとしての才能が一気に開花。バンマスのビリーが想定していなかった「Green-Tinted Sixties Mind」みたいに、THE BEATLESの影響下にあるポップ色の強い楽曲が上がってきます。と同時に、エリックからもアコースティックバラード「To Be With You」が上がり、この2曲をアルバムに収録するかどうかでバンドは議論になるわけです。結果はご存知のとおり、この2曲は無事収録され、それぞれシングルカットもされることに。このシングル化にはレコード会社の思惑も働いているのではないかと思いますが、最初にシングルカットされた「Green-Tinted Sixties Mind」はイギリスで小ヒットし、ここ日本では好意的に受け入れられたと記憶しています。

で、問題は次のシングルとして発表された「To Be With You」。1991年末にシングル発売されると、翌1992年初頭にかけて全米チャートを上昇していき、気づけばNo.1を獲得。しかも4周連続1位というおまけつき。イギリスでも最高2位という、バンドを代表する1曲になるわけです。

ブルースやソウルをベースにしたハードロックバンドを始めたはずのMR. BIGが、ソングライターとしてのエゴを優先したがために、当初と違った方向でブレイクしてしまう。この成功と引き換えに、バンドはこの先、想像もつかないような苦難の数々に遭遇することになるわけです。

……が、それはまた別の話。純粋にアルバムの内容は素晴らしい以外の言葉が見つからないほど最高です。1曲目「Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song)」の疾走感と電動ドリルを使ったギター&ベースユニゾンソロ、“これぞMR. BIG”と断言したくなるソウルフルな「Alive And Kickin'」、前述のサイケデリックポップ「Green-Tinted Sixties Mind」、本作中唯一メンバーのペンではない楽曲(のちに作者のジェフ・パリスもレコーディングした)「CDFF-Lucky This Time」、“これぞMR. BIG”その2「Voodoo Kiss」、エリックならではのポップさとバンドのワイルドな演奏のバランスが絶妙な「Never Say Never」、王道歌モノバラード「Just Take My Heart」、もっとも前作の延長線上にあるHRチューン「My Kinda Woman」、冒頭のビリーによる低音Vo含め最高なヘヴィブルーズ「A Little Too Loose」、オープニングのハーモニーから最高なシャッフルナンバー「Road To Ruin」、そして締めにふさわしい「To Be With You」。日本盤にはここにポップだけど疾走感のある「Love Makes You Strong」も加わりますが、とにかく捨て曲なし。発売から26年経ったものの、今聴いても色褪せない名盤だと思います。

確かに1stアルバムで掲げたコンセプトはブレブレですが、そのこだわりを凌駕するほどの傑作。以降の迷走ぶりを考えると複雑な気持ちにはなるものの、このアルバムでの成功(全米15位、100万枚以上の売り上げ。またシングルとしても「Just Take My Heart」が全米16位にランクイン)がなければバンドの寿命はもっと短かったでしょうし、2000年代後半の再始動もなかったと思うのです。

まだ聴いたことない……というHR/HMファンはほぼいないと思われますが、もしいたら悪いことは言いません。今すぐ購入しましょう。



▼MR. BIG『LEAN INTO IT』
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投稿: 2017 05 27 12:00 午前 [1991年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2017/02/06

MR. BIG『MR. BIG』(1989)

ここ数日BLUE MURDER、BADLANDSを取り上げてきましたが、今回紹介するMR. BIG含めて……思えば1989年って“スーパーバンド”と呼ばれる大物アーティストや名プレイヤーが結成した新バンドが続出した1年だったんですよね。ジョン・ウェイトと元JOURNEY組が結成したBAD ENGLISHも1989年デビューでしたし。この風潮は、1986年を起点としたアメリカでのHR/HMブームが過渡期に突入したことを表していたのかもしれません。

さて。今回は日本のHR/HMファンなら誰もが知っている“BIG IN JAPAN”ことMR. BIGのデビュー作を紹介します。メンバーはソロシンガーとして活躍してきたエリック・マーティン(Vo)、元RACER-Xのポール・ギルバート(G)、元TALAS〜デヴィッド・リー・ロス・バンドのビリー・シーン(B)、IMPELLITTERIやテッド・ニュージェント・バンドなどに在籍したパット・トーピー(Dr)の4人。アルバムは全米46位という成績を残し、続く大ヒット作『LEAN INTO IT』(1991年)につなげることになります。

デヴィッド・リー・ロスのアルバム『EAT 'EM AND SMILE』でスティーヴ・ヴァイとのテクニカルなユニゾンプレイでHR/HMファンやギター&ベースプレイヤーを沸かせたビリーが、RACER-Xで強烈な速弾きを披露したポールとバンドを組んだことで、ファンは当然同様のユニゾンプレイを期待するわけですが、それは1曲目「Addicted To That Rush」で早くも実現します。

しかし、アルバムを聴き進めていくと本作は決してギター&ベース中心のアルバムではなく、エリックの歌が軸になっているブルースベースのハードロックアルバムであることに気づかされるわけです。「Wind Me Up」「Merciless」とグルーヴィーなミドルチューンが続き、4曲目でようやくタッピングを多用したビリーのベースソロが聴こえてきて「おおっ!」と期待してしまうのですが、当の「Had Enough」自体は泣きメロの歌がメインのバラードナンバー。その後も「Big Love」や「How Can You Do What You Do」「Anything For You」、「Rock & Roll Over」とキャッチーでメロウな楽曲、「Blame It On My Youth」や「Take A Walk」などのブルーステイストのロックチューンが続きます。

とはいえ、そういった歌主体の楽曲の中でもビリー&ポールは常人にはとても弾けないような、テクニカルなフレーズを散りばめています。そのへんがMR. BIGの個性につながっているわけですが、ここまでブルース色、テクニカルさを前面に打ち出すのは、この編成では本作が最初で最後。次作以降、ポールのカラーが色濃くなっていき、ポップさを強めた楽曲志向のバンドへと変化していきます。



▼MR. BIG『MR. BIG』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 02 06 12:00 午前 [1989年の作品, Mr. Big] | 固定リンク

2005/07/13

寝る前にこれ聴け!(3)

 えーっと、急ではありますが、9月18日(日/祝前日)にDJイベントやります。「AIN'T IT FUN」とはまた違った、濃ゆいイベントです‥‥題して「MOTLEY CRUE NIGHT」というクラブイベントを‥‥11月のモトリー・オリジナルメンバーでの来日を記念して、HM/HRややさぐれロケンローを中心としたイベントを一晩中やります。詳細はまた後日に発表しますが、メタル熱復活がこんなところにまで影響を及ぼそうとは‥‥怖いです自分でも。

 そんな感じで、11月の「AIN'T IT FUN」Vol.2まで、こちらのイベントで楽しんでください。遊びなし、相当マジな内容でいきますんで。

 さて本題。まだまだ続く「夜のオカズ」。 今夜のテーマは「1989年のスーパーグループ」です。


・BLUE MURDER「BLUE MURDER」('89)
 ジョン・サイクス(元THIN LIZZY〜WHITESNAKE等)、カーマイン・アピス、トニー・フランクリンという鉄壁のトリオによるデビュー盤。本来はドラムがコージー・パウエル、ボーカルにレイ・ギランが入るはずだったんだけど、いろいろあってこの3人で落ち着いたのね。
 とにかく、モダンでテクニカルなハードロックが聴けます。WHITESNAKE程湿っぽくなく、乾いた感じが曲から漂ってます。ちなみにボブ・ロックのプロデュース。ホント、正に「ギターアルバム」といった印象。今でも好きな1枚。


▼BLUE MURDER「BLUE MURDER」(amazon


・BADLANDS「BADLANDS」('89)
 元オジー・オズボーン・バンドのジェイク・E・リーによるニューバンド。ボーカルがBLUE MURDERをクビになったレイ・ギラン、ドラムにその後KISS入りするエリック・シンガーがいたりで、興味深い。
 ジェイクの「らしい」ストラト・サウンドが魅力的。意外にもZEP的ブルーズ・ロックが好きだということがここで判明、ボーカルもロバート・プラントばりのハイトーンで対抗。凄く時代を感じさせる1枚じゃないかな。久々聴いたらホント良かった。


▼BADLANDS「BADLANDS」(amazon


・MR.BIG「MR.BIG」('89)
 元TALAS〜デイヴ・リー・ロス・バンドのビリー・シーン、元RACER-Xのポール・ギルバートによるニューバンド。ボーカルはVAN HALENにも誘われたことのあるエリック・マーティン。
 まだMR.BIGが「Big in Japan」になる前の、本当の意味での「ルーツロック」的な音を鳴らしてた名盤。ギター&ベースによるユニゾンプレイもさることながら、とにかく曲が良い。その後のポップ路線とは違った、枯れつつも派手という相反する要素を見事に融合した1枚に仕上がってる、と思う。評価的には2ndなのかな、やっぱり。けど "Anything For You" がある時点で、俺的にはこっちの方が上。まだポール・ギルバートの色が濃く表出する前の、「ビリー・シーンのバンド」だった頃の、輝かしき1枚。


▼MR.BIG「MR.BIG」(amazon


 というわけで、同期デビューの「有名プレイヤーによるスーパー新人バンド」を集めてみたんだけど、BADLANDSが久々聴いたらすげーカッコ良かった!

投稿: 2005 07 13 11:00 午後 [1989年の作品, Badlands, Blue Murder, Mr. Big] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/06/23

TMG『TMG I』(2004)

  B'zのギタリスト/コンポーザーである松本孝弘のソロ・プロジェクト、「TMG(TAK MATSUMOTO GROUP)」のファーストアルバム。参加メンバーはギター/作曲が松本、ボーカルに元MR.BIGのエリック・マーティン、ベース&ボーカルにNIGHT RANGERのジャック・ブレイズ、ドラムにザック・ワイルドやスラッシュとの共演等セッション活動がメインとなるブライアン・ティッシーという、一部の属性の方々にとっては非常に豪華な面々(一部の曲で、レニー・クラヴッツのツアーメンバーとしても有名な女性ドラマー、シンディ・ブラックマンも参加)。特にエリックとジャックという「'80年代のMTVハードロック世代」にとっては懐かしいメンツの参加は、ある意味親しみやすいんじゃないかな。

  基本的には'80年代~'90年代前半によく聴けた「アメリカン・ハードロック」。そこに松本らしいアイディア(B'z的なリズムやリフを導入等)を散りばめつつ、普通に「洋楽ハードロック」として楽しめるクオリティを保っています。これは松本云々というよりも、エリックが歌っているからってのが大きいように思います。

  けど、これをMR.BIGやNIGHT RANGERといったバンドと比べた場合、やはり若干見劣り(聴き劣り)するのは否めないかな、という気も。またメロディに関していえば、本家であるB'zよりも‥‥って書いたらファンに怒られるんでしょうか? 正直なところ、そこが一番気になりましたね。シングルとなった "OH JAPAN ~OUR TIME IS NOW~" は聴き慣れたこともあって結構キャッチーに感じられるんですが、他のアルバム曲は‥‥正直、似たり寄ったりなイメージが強いですね。曲調やテンポ的なもの、そしてキーなんかが似通った楽曲が並んでいる、しかも14曲という曲数もそれに影響してるのかな、と。10曲くらいでもっとメリハリある選曲/曲順だったら、ファーストインパクトももっと強烈なものだったんじゃないかな‥‥って気がするんですが。そういうわけで、1~2回聴いた感じでは非常に散漫な印象を受けました。

  勿論、聴き込んでいくうちに「らしさ」が見えてきて、ドンドン気に入っていくんだろうとは思うけど‥‥そこまで熱心なファンでもないしなぁ、俺。

  ただ、演奏に関してはさすがと言わざるを得ないかな、と。意外と過小評価されているジャックのベースプレイも、一時期のNIGHT RANGER以上に活かされているし。松本のプレイもソロ・プロジェクトの割にB'zの時みたいな派手な弾きまくり感があまり感じられず、どちらかというとバランスを重視したプレイになってるような気がしますね。最近のB'zのアルバムとか聴いたことがないから比較のしようがないですが‥‥最近は隙間を埋めるようなプレイよりも、ワザと隙を作るようなプレイに目覚めたんですか、松本は? いや、よく判らないけど‥‥少なくともこのアルバムでの彼のプレイからは、そういう雰囲気を感じました。

  個人的に気に入っているのは5曲目辺りから‥‥"I wish you were here" みたいな王道アメリカンロック路線、そして如何にもB'zチックなアレンジを持つ "THE GREATEST SHOW ON EARTH" が特に気に入ったかな。後者のアレンジなんて、普通の欧米ハードロックでは考えられない味付け(アレンジ)ですからね。日本人的というか、フュージョン的というか、ホント独特ですよね。こういう曲を聴いちゃうと‥‥どうせなら、B'zの代表曲を英語詞でセルフカバーしたアルバムでも作ればいいのに、とか思っちゃうんですが。それは稲葉の手前できないのかな、なんて。実はB'zの楽曲をセルフカバーした方がよりポピュラーなハードロックアルバムになったんじゃないかな‥‥って思うんですが。如何でしょう?

  思ってた程派でではなく、どちらかといえば地味な部類のアルバムですよね。MR.BIGでいったら4作目の「HEY MAN」、NIGHT RANGERでいったら同じく4作目の「BIG LIFE」とか(って両方共ファンからは駄作扱いされることの多い1枚じゃないか! いや、俺は気に入ってるんですけどね)。あ、そうか。その分ツアーでは派手な曲‥‥NIGHT RANGERの "(You Can Still) Rock In America" とかMR.BIGの曲をカバーすればいいのか!(って実際やるみたいな発言をエリックはインビューでしてますよね。さて、どうなることやら‥‥)

  最後に‥‥このアルバムをここ日本でのみリリースすることによって、一番「得」をする人って誰なんでしょうね? いや、金銭面での話じゃないですよ。松本がこのアルバムをリリースすることで、B'zを小馬鹿にするようなハードロック・ファンから受け入れられるとも思えないし、逆にB'zしか眼中にないようなファンにエリックやジャックがどう受け入れられるのか‥‥結局その答えって、2作目を作って初めて見えてくるものなのかも。というわけで、何年先になるか判らないけど、セカンドアルバムを熱望します。勿論、今回のメンバーでね!



▼TMG『TMG I』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD+DVD

投稿: 2004 06 23 12:00 午前 [2004年の作品, B'z, Mr. Big, Night Ranger, TMG] | 固定リンク