2015/12/31

2015年総括(2):邦楽アルバム編

洋楽アルバム編に続いて、邦楽アルバム編。こちらのエントリーでは2015年もっとも気に入った邦楽アルバム10枚(+次点10枚)を紹介します。


■邦楽10枚(アルファベット→五十音順)

・BOOM BOOM SATELLITES『Shine Like A Billion Suns』(amazon

・callme『Who is callme?』(amazon

・Ken Yokoyama『Sentimental Trash』(amazon

・Mr.Children『REFLECTION {Naked}』(amazon

・NOT WONK『Laughing Nerds And A Wallflower』(amazon

●WANIMA『Are You Coming?』(amazon

・トリプルファイヤー『エピタフ』(amazon

・星野源『YELLOW DANCER』(amazon

・真心ブラザーズ『PACK TO THE FUTURE』(amazon

・吉井和哉『STARLIGHT』(amazon

<次点>
・3776『3776を聴かない理由があるとすれば』
・MONOEYES『A Mirage In The Sun』
・NoisyCell『Sources』
・→Pia-no-jaC←『BLOOD』
・skillkills『Ill Connection』
・筋肉少女帯『おまけのいちにち(闘いの日々)』
・私立恵比寿中学『金八』
・水曜日のカンパネラ『ジパング』
・ドレスコーズ『オーディション』
・乃木坂46『透明な色』


いろいろ悩んだ挙句、WANIMAを2015年の1枚に選びました。これは2016年への期待値も込めて、ということで。実際何と悩んだかというとミスチル、星野源、吉井和哉だったりします。前者2組のポップネスは今の自分にとってど真ん中だし(そういう意味ではWANIMAが持つポップネスもこれに値するかなと)、吉井に関してはTHE YELLOW MONKEY時代から今日までの総括的内容だったもので。まあ吉井の場合は「次」がより楽しみなんですけどね。

あ、邦楽のほうも洋楽同様、次点含めた20枚は日によって上下します。ので、12月末現在の記録ということで。

3776は最後の最後にやられた感じです。これはズルい。あと乃木坂46は半ばベストアルバムですが、いろんな思い入れ込み、かつ念願の紅白おめでとうの意味を含めての次点入り。結局、なんだかんだで一番聴いたアルバムはこれかもしれない(苦笑)。

アイドルソング&印象的なライブ編へ続く)

投稿: 2015 12 31 11:58 午後 [2015年の作品, Mr.Children, 「1年のまとめ」] | 固定リンク

2007/12/26

Mr.Children『HOME』(2007)

今の仕事の良いところは、人よりもひと足先に新作に触れる機会が多いということ。もちろんそれ以外にもたくさんあるんだけど、まず最初に、単純にそう感じました。ある意味ではうらやましいと思われるかもしれないけど、例えば……子どもの頃みたいにアルバムの発売日を心待ちにしてた、あの気持ちは少しずつ失ってしまったかな、という気もします。ま、もっともすべての新作をサンプルで聴いているわけではないし、実際CDを買う量は今の仕事を始める前と後では、そんなに変わらないんですけどね(もしかしたら増えてる可能性のほうが高いんだけど)。

Mr.Childrenのこのアルバムを聴いたのは、確かリリースの1ヶ月くらい前だったと記憶してます。ちょうどインフルエンザで寝込んでた頃で、そんなときにこのアルバムが到着したことに気付いて、熱でフラフラの状態の中かけて……それがこのアルバムとの第一接触。自然と、スーッと体の中に溶け込んでくるような暖かくて、優しい音だなぁと感じたのを今でも覚えています。

その後何十回、何百回(は大袈裟か)と聴いてきたこのアルバム。6月に行く予定だった横浜アリーナでのライブは、残念ながら仕事の都合で行けなかったんだけど、初めて耳にしたときから「ブレない」アルバムなんですよね。アルバムによっては聴いたときの体調や感情、あるいは年齢によって聞こえ方・感じ方が変わってくるアルバムが多いんですが(それはミスチルのアルバムにしても同じで、リアルタイムではよく聴いていたけど、最近はほとんど聴かないという作品もありますよね)、この「HOME」という作品集は本当にブレないんです。

デビュー15周年とか、大ヒット曲「しるし」が入ってるとか、そういった要素はあるものの、個人的にはあまりそういった『おまけ』に左右されないし、最初から最後までバランス良く楽しめる1枚。確かに過去の作品と比べればかなり地味なアルバムです。でも、その地味さが個人的には『自然体』に感じら、自然体なようで実はかなり手の込んだアレンジだったりするもんで、聴きごたえがある1枚に仕上がってるなぁというイメージがあるんですね。曲によっては初期ミスチル的なポップ感が戻ってきてるものもあるし、「深海」以降のギラギラさも随所に散りばめられている。そして前作「I♥U」からもしっかりと地続きの内容となっている。桜井和寿の私小説集と解釈できると同時に、しっかり『バンド・Mr.Children』のアルバムとしても機能している。これはそういうバランス感がバツグンに優れたアルバムなんだと思います。

ミスチルはギミックやインパクトを追求するようなバンドじゃない。デビュー時からつねに「いい曲」「聴き手に響く曲」を徹底的に追求してきたバンドなんですよ。確かに全体的に地味かもしれないけど、これが「君がいた夏」から15年後の成長の『しるし』なんじゃないでしょうか?

シングルヒットの影響もあるだろうけど、こういうアルバムが2007年度もっとも売れた作品というのも、また興味深いです。「時代なんだろうなぁ……」なんて安直なことは言いたくはないけど、でもそう言いたくなるようなご時世だし、そう言いたくてたまらないアルバムなんですけどね。



▼Mr.Children「HOME」(amazon:日本盤

投稿: 2007 12 26 02:00 午前 [2007年の作品, Mr.Children] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005/12/22

Mr.Children@東京ドーム(11/27)

 Mr.Childrenの単独ツアーに行って来ました。夏の「ROCK IN JAPAN FES」で久し振り(4年振り!?)に観てちょっと感動し、次のアルバムを引っ提げたツアーは必ず観たい!と思ってたのですが、なかなかチケットが取れなくてね。ギリギリになって何とか確保できて正直ホッとしましたよ。

 新作「I♥U」はセールス的には過去の作品に匹敵しないものの(それでも100万枚突破してますが)内容的には申し分ない傑作に仕上がっていると確信してるだけに、ライヴもそれに沿った素晴らしいものになるだろう‥‥そう思ってたのですが、実際にはそれ以上のクオリティで正直「やられた!」と思いましたね。いやもう、スケール感が違うもの。アリーナクラスのライヴはこの1週間前にMOTLEY CRUEを観てたわけですが、あれとはまたベクトルの向きが違うけど、とにかく大会場でなくてはならないステージだったと思います。選曲の主軸は勿論新作なのですが、そこに肉付けされているここ数作の楽曲。ある意味では「復活」後の楽曲の総決算的、グレイテストヒッツ・ツアーと呼べなくもない(シングルヒットという意味ではなく、ね)。そしてセットは「深海」ツアー以降の彼等らしい、非常に凝っていてお金を存分にかけたものに仕上がってる。エンターテイメントとしてのショーと、表現者としてのパフォーマンス。そのバランス感が絶妙なのは言うまでもないでしょう。人によってはそれを「説教臭い」と感じてしまうかもしれませんが、古くからのファンにとっては「相変わらずだなぁ」と親しみを込めた苦笑いをしてしまう内容だったんじゃないかな?(少なくとも俺はそうでしたが)

 ツアーメンバーは「DISCOVERY」ツアー以降固定なんで馴染みある面々ばかりだけど、こうやって長時間(約3時間のステージ!)改めてじっくり観て思ったのは、演奏が非常にタイトにまとまってるなぁってこと。ドーム云々による音響面は仕方ないとしても、演奏自体がタイトになってるのは十分に伝わってきました。リズム隊もしなやかだったし、田原のギターもこれまでで一番自己主張してるように感じられたし。鍵盤ふたりの仕事振りも目を見張るものがあったし。多分この辺のまとまりって、夏のイベントやフェスに出演したことも大きく影響してるんでしょうね。ただアルバムを作りました、じゃあリハーサルしてツアーに出ましょう、ってノリじゃなかったしね今回。アルバム自体も思ってたよりも早くに出来上がっちゃったし。この辺、今が非常に良い状態なのが伝わってきます。

 序盤に演奏し慣れた曲を並べ徐々に場を温めていく。頭4曲にダンサブルなノリのナンバーを並べ、その後に必殺の "innocent world"。流れとしては完璧じゃないですかね? 勿論、この辺のセットリストに関しては日によって少しずつ変わっているので、観た人にとっては自分が参加した日こそがベスト!って考えがあるかもしれませんけど(例えば大阪初日では "シーラカンス" やってますしね!)。ここアルバム2作のツアーを観れてなかっただけに、その辺の曲を多めにやってくれて、尚かつ「Q」といった作品からもバンバンやってくれる今回のセットリスト、非常に好感が持てました。

 俺が参加したのは東京2公演のうちの2日目だったのですが、初日と違ったのは弾き語りだけかな(前日は "君が好き" を披露)。但し、この日の "SAY YES"(勿論あのCHAGE & ASKAのヒット曲な)はさわりのみだし、"抱きしめたい" は2コーラス目に入るところの転調を間違え(サビで転調して、2コーラス目のAメロでまた元に戻るんだけど、間違えてそのままのキーで歌おうとして素っ頓狂な歌い出しになってしまった。苦笑)途中2コーラス目からやり直し。思いっきり苦笑しましたよ。ま、その辺のドジさも込みで「いかにも」ミスチルらしいなーって思ったりもしたんですが(シリアスで込み上げるような "抱きしめたい" は過去散々聴いてきてるし、こういう笑顔であったかいのもいいなーって思ったもので)。そういえば前回のドーム(1997年3月)でもこの曲、アコースティックバージョンで演奏されてたよなーって今ふと思い出しました。

 やはり "蘇生" からの温度の上がり具合はもの凄いものがありましたね。"Hallelujah" ってアルバムで聴くとそんなにいい曲だとは思わないんだけど、ライヴだといつも込み上げるものがあるんだよなー。そしてそのまま自然に "and I love you" へと続く構成も、初めてこの曲を聴いた時から何となく「パート2っぽいよな」と思ってた自分の考えが繋がったようで、ちょっと嬉しかったり。

 アンコールラストの "潜水" が終わった後にS.E.として "Sign" が流れるんだけど(今回のツアーでは演奏されず)、それを左右の花道への移動中、桜井はずっと歌ってて、丁度真ん中に戻って来た時サビの最後の方で、思わず会場と一緒に歌ってしまってました、マイク通して。ちょっとしたファンサービスなんだけど、さすがにちょっとホロッときた。いや、終始ホロッときまくりでしたけど。"くるみ" なんて歌い出した瞬間に涙腺ヤバかったし。あの新しいアレンジもよかったね。

 それにしても‥‥今時ここまで大掛かりなセットを組んだライヴ、海外でも少ないんじゃないの? 恐らく「深海」の頃から一緒にやってる海外製作チームなんだろうけど(ROLLING STONESとかU2のステージセットを手がけてる連中)、今やここまでやるのはPINK FLOYDくらいなんじゃないかな、と。それくらい金かけた、見応えあるセットでしたよ。映像もFLOYDっぽいしね。まぁこの辺はいつも通りか。

 不満はないことはないけど、それを言い出したらキリがないし、別にそんなこと口にしなくても十分に金額に見合っただけのものを得たと思います。やっぱりミスチルはどこまでいってもミスチルだ、と。それを改めて実感でき、嬉しかったですよ。確かにこの集大成的内容を観て「再度活動休止?」なんて声が挙がってますが、まぁそう思っても不思議じゃないくらいの(彼等なりの)サービス振りだったし。

 でもまぁ‥‥間違いなく「続き」ますよ。この状態を観たら、終わるなんてことはありえないし。多少休むことはあっても、それは次に繋ぐための休息・充電期間でしかないわけですし。まだまだ登り詰めますよ、このバンド、そして桜井和寿という男は。


  [SETLIST]
  01. LOVEはじめました
  02. Dance Dance Dance
  03. ニシエヒガシエ
  04. 跳べ
  05. innocent world
  06. 言わせてみてぇもんだ
  07. くるみ
  08. CANDY
  09. 靴ひも
  10. 隔たり
  11. ファスナー
  12. Monster
  13. CENTER OF UNIVERSE
  14. ランニングハイ
  15. SAY YES(さわりのみ)〜抱きしめたい(弾き語り)
  16. ラララ
  17. overture〜蘇生
  18. Worlds end
  19. Hallelujah
  20. and I love you
  ---encore---
  21. 未来
  22. 僕らの音
  23. 潜水
  24. Sign [S.E.サビのワンフレーズのみ桜井歌う]



▼MR.CHILDREN「I♥U」(amazon

投稿: 2005 12 22 09:06 午後 [2005年のライブ, Mr.Children] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005/09/22

MR.CHILDREN『I♥U』(2005)

 いろいろ考えたんだけど、「とみぃの宮殿」時代からの恒例行事となっている、『全曲解説レビュー』は今回だけはやらないことに決めました。それは決してこのアルバムが語り難いからとかそういったネガティヴな理由からではなく、本当に光り輝き過ぎてるからなんです。1曲1曲を取り出して分析するんじゃなくて、1枚のアルバムとして、13編の私小説を綴った1冊の長編物語を読むようにこのアルバムと接してもらいたい、そういう風に楽しんでもらいたい‥‥っていう願いが強いんです。曲に関しては、前に取り上げたシングルのレビューでも読んで復習してみてください。といっても、このアルバムに収められた13曲の内、たった4曲についてしか触れてないですけどね‥‥

 Mr.Childrenの通算12作目となるオリジナル・アルバム「I♥U」がいよいよリリースされました。前のシングルレビューの時は‥‥7/20とかなんだね。あれから「ROCK IN JAPAN FES」があって、それと前後するようにアルバムのリリースが発表されて‥‥あのシングルについて語った時点では俺、「こうなると‥‥やはりアルバムに期待せざるを得ないよね。年内リリースは‥‥可能性薄いよなぁ。早くても年明け、やっぱり来春くらいかなぁ。」って書いてるんだよね。あの「四次元 Four Dimensions」における、尋常じゃないテンションとグルーヴ感を体験してしまった後となっては、やはりどうしてもアルバムに期待してしまうんだけど、まさかこんなに早く完成しちゃうとはね‥‥要するに、あのシングルに収録された4曲を含め、昨年後半辺り(恐らく昨年9月のツアー終了後)からドンドンと曲を作っていき、合計13曲もの素晴らしい新曲群を完成させてしまっていたんですね‥‥本当に驚くと同時に、それらが先のシングルと同等、あるいはそれ以上のポテンシャルとクオリティを備えている事実に驚愕するというか‥‥前作「シフクノオト」を聴いた後となっては、ただただ驚くばかりというか‥‥嬉しくて涙すら溢れてくるよ。それくらい、このアルバムを聴くと、どうしようもない程に嬉しくなっちゃんだな、うん。

 実はこのアルバム、フラゲ(フライング・ゲット。リリース日前日、店頭に並び始めた時に購入)すていたものの、当日は聴く余裕がなくて。そのまま封も開けずに寝ちゃってさ。その時点では、メディア(テレビや雑誌)やネット上での評判は殆ど目にしてなくてさ。けどまぁ、何となく「絶対的な1枚になる」という予感めいたものはあって。そりゃね、あのシングルを聴けばね。

 でさ、翌日。通勤時間を使って、10曲目くらいまでザーッと聴いて。

 頭3曲("Worlds end"、"Monster"、"未来")の時点で、まず前作に何が足りなかったのかを再確認できたよ。ありきたりの言葉だけど、

  「グルーヴ(あるいはロール感)」「破綻」

このふたつだったんだな、と。シングルの時は「毒」って表現したけど、ほぼ「破綻」と同じ意味合いでこの表現を使ったんだな、うん。そして後で「とみ宮」時代に書いた「シフクノオト」レビューを読み返したけど、既にあの時点で同じような事を書いてるのね。この新作を通過することで、そこを再認識できたという意味では、本当に良かったのかもしれないな。

 他人はどう思ってるか知らないけど、自分にとって「IT'S A WONDERFUL WORLD」ってアルバムは、音楽オタクとしての桜井が思う存分『音』で遊んだ、正しく音楽(=ポップス)オタクのためのアルバムだったのね。んで、リリース後に本当の意味での『破綻』が一回あってリセット。手探りで作られた「シフクノオト」は世間的(所謂「ファン」ではなく、浮動票といえる一般層)に歓迎はされたものの、それは作品云々というよりも「病み上がりへのご褒美」的評価だったんじゃないかな、と。もしかしたらあのアルバムがホントの意味で評価されるのって、もっと時間が経ってからなんじゃないか、とも思うし。

 でさ、前作の時に非常に歯切れの悪い文章を書いた俺だけど、結局あのアルバムはライヴツアーを通過しないで作られた、いわば「密室音楽」だったのかな、と。オタク作品「IT'S A WONDERFUL WORLD」は良くも悪くも「外」に向けて放たれたけど、「シフクノオト」って非常に「内」に向かって放たれてるんだよね。音的にも、歌詞の面でも(これは前作リリース時点で既に書いてましたね。自分の事なのに改めてビックリした)。だから、バンド特有のグルーヴ感やロール感も希薄だったし、破綻もなかった。悪い意味で『出来上がっちゃった感』が強かった。バンドとしての『あがり』が見えちゃったんだよね。あー、ミスチルはこのままこういうスタイルで、今後何年もずーっとヒットチャートの常連を続けて行くんだろうな、でもそれはそれで悪くはないんだけどなぁ‥‥淋しいよなぁ、と。

 けど、今度の「I♥U」というアルバムは、過去のどれとも比較しようのないものが感じられるんじゃないかな。例えば‥‥俺自身がこのアルバムを最初に聴いた時ふと思い浮かべたんだけど‥‥「深海」とか「Q」辺りと比較することは容易いけど、明らかにあれとは異質の『何か』が潜んでる。それが何なのかは‥‥実は俺自身、まだそれを見極めることができてなかったりするんだよね。単なるグルーヴ感や破綻だとか毒といったものではなく、もっとこう、根本的なものというか‥‥そうか‥‥それが全てアルバムタイトルに集約されてるのか‥‥何となくそんな気がしてきた。ただの「I LOVE YOU」ではなく、トマトが潰れてハートの形なってるジャケット。トマトは自然と床に落ちたのか、あるいは意図的に叩き付けられたのか‥‥その違いだけでも「I LOVE YOU」のニュアンスがだいぶ違ってくる。母国語じゃない日本人からすればとても容易く口にすることができるフレーズなんだけど、実は最も日本人が苦手とする表現手段でもある。凄く奥が深いよな‥‥

 でさ、そういった様々な表現や想いを13編の歌詞とメロディに乗せて、ひとつの大きな『うねり』(=アルバム)を作り出す。それぞれがバラバラの個性を持っていながら、実は13曲がこの順番に並んだ時にこそ、その言葉の重み・意味合いは更に増す。この配置じゃなきゃいけないんだよ、"未来" も "and I love you" も。"ランニングハイ" の後にあの "Sign" のピアノフレーズが響かなきゃいけないんだよ。

 なんか‥‥音楽面(メロディがどうとかアレンジがどうとか、そういった類のお話)については全くといっていい程触れてない気がするけど‥‥今回だけは、余計な先入観なしに‥‥そう、こんな駄文を読む前に、真っ先に聴いて欲しいんだよ。そうだよ、これ読んでる暇があったらCD買ってこいよ!

 このアルバムに関してはさ‥‥もしかしたらこの人達(「この人」ではなく「この人達」ね)、とてつもなくもの凄い作品を生み出しちゃったのかもしれない‥‥全部聴き終えてない時点でそう言わせるだけのパワー・熱量を持った作品集だと思いますよ。そしてアルバムを通して聴いた今、その思いは確信へと変わりました。最高傑作とかそういう容易い表現は使いたくないけど、間違いなく過去のどの作品から遥か彼方の高みへと到達してしまったなぁ。

 ていうかさ‥‥ミスチルのアルバムを聴いて、泣きそうになったのなんて何時以来だよ‥‥嬉しくてガッツポーズを取ることはあっても、目に涙を滲ませるなんてことは暫くなかった気がするんだけどな。


 嗚呼‥‥今後ずーっと付き合っていけるアルバムが、また1枚増えちゃったなぁ。



▼MR.CHILDREN「I♥U」(amazon

投稿: 2005 09 22 12:05 午前 [2005年の作品, Mr.Children] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005/07/20

Mr.Children『四次元 Four Dimensions』(2005)

 Mr.Children約13ヶ月振りの新音源は、4曲それぞれベクトルが異なる個性的な楽曲を収めた、正しくタイトル通りの作品集に仕上がってます。4曲共CMやテレビ番組、映画とタイアップしていることから、今年に入ってから必ずどこかしらで耳にしたことがある曲ばかり。良くも悪くも‥‥けど、今回ばかりは悪い方には作用してないように思えます。この1年、音源のリリースがなかったことから(Bank Bandとしてのリリースはあったけど)ファン側の飢餓感も強かったし、また今年の頭辺りから徐々にCM等で彼等の未発表新曲("and I love you" や "未来")が15秒だったり30秒だったりがブラウン管から流れ出す‥‥そりゃ否が応でも期待するわけですよ、何時聴けるんだ、この新曲は!?って。

 昨年春にリリースされたアルバム「シフクノオト」、その延長線上にあるシングル「Sign」は、確かに素晴らしい作品だったし、2004年の日本の音楽シーンを代表する作品と呼んでも何ら差し支えないと思う(実際これらは、昨年年間チャートの、それぞれトップ5入りしているし)。

 でも‥‥

 何か物足りなかったのも事実なんですよ。何だろう‥‥もの凄く「心地よ過ぎる」作品だったんだよね、この一連の作品群って。多分‥‥多分だけど、俺にとっては「毒」の要素が足りなかったのかな、と。勿論そんなのは結果論でしかないんだけど、今回リリースされた4曲を聴くと何となくそう思えるんだよね。

 勿論これらの4曲全てに櫻井和寿なりの「毒」を盛ったとは思わないけど、4曲通して聴いた時に見えてくる風景、伝わってくる感情ってのがあるんだよね。そういう意味で、凄くバランスの良い組み合わせだなぁ、と。決して革新性とかそういった類のものはないけど(そしてもはや彼等にそういう類のものを期待しない方がいいのかもしれない)、前作以上に強く感じられる揺るぎなさだったり、更なる余裕や心のゆとりだったり、ちょっとだけ斜に構えた皮肉さだったり、そういったものがダイレクトに伝わってくるんだよね。彼等の曲を聴いてこんな風に感じられたの、何時以来だろう。

 曲によっては過去の楽曲の延長線上にあるものもあるし、懐かしい匂いのするアレンジもあるし、そして久し振りに胸躍るような高揚感を持つ楽曲もあれば、切なくて胸に沁みる歌詞もある。恐らく「ミスチルといえば、こういう音」というイメージの最大公約数を忠実に再現しつつ、その上で「今だからこそ/今しか表現できない音/言葉」を上手に取り込んだのが、今回の4曲なんだろうな、と。だから100万人近い人間の心を瞬時に動かすことが出来、そしてこの俺の心も揺さぶることが出来た。文句ないよ、今回ばかりは。

 どの曲が一番好きか‥‥ってのは正直なところ愚問かな、と思うんだけど‥‥こればっかりは、その日その時で全然違うし、ドンドン変わってくんだよね。今だったら‥‥そうだね、"and I love you" かもしれない。ついさっきまでは "ランニングハイ" だったけど。どの曲もそれぞれに違った個性と魅力を持っているから、どれが一番とか選べないってのが本音。人によっては「俺は/私は、ミスチルのこういう要素/曲調が好きだから、○○が好き」とハッキリ選べるのかもしれないけどね。

 こうなると‥‥やはりアルバムに期待せざるを得ないよね。年内リリースは‥‥可能性薄いよなぁ。早くても年明け、やっぱり来春くらいかなぁ。この夏は精力的に各フェスティバルに出演してくれるし、俺も幸い「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」で彼等を観ることができるので、非常に楽しみにしてるところ。ここ2枚のアルバムに伴うツアーには参加出来てないんで、ホントに久し振りなんだよね。前にRIJFに出た年が最後だから‥‥4年振りくらい!? ひ、ひえぇ‥‥



▼Mr.Children「四次元 Four Dimensions」(amazon

投稿: 2005 07 20 12:30 午前 [2005年の作品, Mr.Children] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/04/11

Mr.Children『シフクノオト』(2004)

  前作「IT'S A WONDERFUL WORLD」から1年11ヶ月振りとなるMr.Childrenの最新アルバム「シフクノオト」。2002年7月リリースのシングル "Any" から始まり、同年12月の "HERO" とそのカップリング "空風の帰り道"、更に2003年9月にラジオ・オンエアのみで発表された話題曲 "タガタメ" と同年11月のシングル "掌" と "くるみ" といった既出曲6曲を含む全12曲ということで、「新曲が少ない」という声が発表前からあったようですが、何故そういう構成に至ったのかは完成したアルバムを聴けば答えが自ずと見えてくるだろうから、これまで特にそれについてはコメントしてきませんでした。確かに最初にアルバム曲目が発表になった時、「あれー、カップリング曲も入れちゃうんだ」とは思ったものの、肝心なのは残りの新曲であり、そして既出曲と並んだ時のバランス、アルバムとしての完成度だったので、それに対して不満は抱かなかったですね。

  既にいろんなところで桜井和寿が発言している通り(また、初回盤付属のDVDでも語られているように)、アルバムタイトルには『至福の音』と『私服の音』というダブるミーニングがかけられています。それ以外にも音の響きでいえば『至福(私服)ノート』と受け取ることができるし、実際にそれらの言葉の意味合いが納得できるような内容に仕上がっているのではないでしょうか? 最初の仮タイトルが「コミック」だったということから、個人的には『~ノート』という響きが妙にしっくりくるんですけどね‥‥ま、それは皆さんひとりひとりが実際にアルバムを聴いた感想を当てはめていけば、またタイトルの意味合いも少しずつ変わってくるんだろうなぁ‥‥と。そういう自由なアルバムなんだろうな、という気はしますね。

  で‥‥レビューやるに当たって、これまでミスチルのアルバムで必ずやっていた全曲レビューを、今回は止めようかな、と思ったんですね。時間が取れないというのもあるし、それ以上に‥‥最初に数回聴いた時、良い作品集だとは思ったけど、前数作のような傑作とは言い難いよなぁ‥‥と感じたもので。けどまぁ乗りかかった船だ、期待してる人もいるみたいだし、思い切ってやってみようか‥‥というわけで、リリースからちょっと遅れましたがレビューすることになりました。今日は朝から天気も良かったので、延々リピートして聴いてましたよ。それではいってみましょう‥‥


◎M-1. 言わせてみてぇもんだ
  サーカスか、場末のキャバレーか、と思わせるようなジャジーなイントロから、中~後期BEATLES的ヘヴィ&サイケなミドルチューンへ。これまでのミスチルのアルバムとは明らかに違うスタート。オープニングにSE的なインストを持ってこなかったのも新鮮だし(とはいっても「DISCOVERY」や「Q」にもその手のSEはないんですけどね)、何しろこの手の曲自体が随分と久し振りな気がするので(ある意味「深海」以来!?)。とにかくこの曲の要はギターでしょうね。田原、頑張ったなぁ、と。

◎M-2. PADDLE
  既に2月から某テレビCMに起用されていたので耳に馴染みのある1曲。意表をついたミドルヘヴィでスタートし、曲間も殆どなく2曲目に。前作からの流れにある、ある意味ミスチルの王道パターン。聴き手としてはここでひと安心。サビ後半での崩した譜割りが印象的。

◎M-3. 掌
  言うまでもなく最新シングル。詳しくはこちらで。ミスチルの「王道ポップ・サイド」から「王道ロック・サイド」へと流れていき、続く「王道バラード」へと続くこの流れは、正しく前半部のハイライトといえるでしょう。曲自体は地味なものが続くんだけどね。

◎M-4. くるみ
  前曲から、シングル収録時と全く同じ流れ。"掌" との両A面シングル。詳しくはこちらで。何も言うことはないでしょう。名曲。

◎M-5. 花言葉
  初回盤付属DVDエンディングでの「コスモスの花言葉は『乙女の純情』」 というあの言葉が印象深いですが、楽曲の方も印象的‥‥いや、地味か。「versus」の後半辺りに入ってそうな印象の1曲。地味だけど味わい深く、後半の展開部(転調前ね)で思わずググッときてしまいました。

◎M-6. Pink~奇妙な夢
  スロウでヘヴィ、しかもダーク‥‥けど「BOLERO」の頃とは違った種のダークさ。芯から病んでいるのではなく、雰囲気としてのダークさ、表現としてのダークさ、といったところかな。とにかく音作りが非常に凝っていて、とても興味深い内容。ちょっとだけ抽象的で夢を具体化したような歌詞も印象的。多分世間の受けは悪いだろうけど、個人的にはアルバム中かなり好きな部類の1曲。

◎M-7. 血の管
  で、そのダークな空気をちょっとだけひきずったかのようなイントロ。ピアノとストリングスだけをバックに歌われる、ちょっとだけ重苦しい印象を持つパラード。1曲目 "言わせてみてぇもんだ" といい、前の "Pink~奇妙な夢" といい、全体的にこのアルバム、地味でダークで穏やか‥‥という印象。勿論、前半を聴いた限りの感想だけどね。

◎M-8. 空風の帰り道
  シングル "HERO" のカップリング曲として既出。このアルバムのレコーディング自体は2003年春頃からスタートしたと思うんだけど、こうやって聴いてみると既に2002年秋‥‥"HERO"レコーディング時から、おぼろげながらそのイメージは見えていたんだろうね。違和感なくアルバムに収まっているこの曲を聴いて、そう実感しました。

◎M-9. Any
  アルバム中唯一、前作「IT'S A WONDERFUL WORLD」とほぼ同時期に制作された1曲。結局実現しなかった前作でのツアーでも、間違いなくハイライトのひとつとなったであろう曲だよね。詳しくはこちらを。やっぱりどこか、「前作の音」かな‥‥偏見かもしれないけど、音のゴージャスさは明らかに「IT'S A WONDERFUL WORLD」のものだよね。あのアルバムが16色のパステルをいろいろ組み合わせたカラフルなイメージなのに対して、「シフクノオト」がどこかモノトーン/セピアなイメージが強い。そう考えると "Any" は‥‥楽曲の地味さ加減は「シフクノオト」っぽいかな?という気がしたけど、いざアルバムの中に入れてみるとハッキリと「IT'S A WONDERFUL WORLD」だよな、と感じる。制作側はそこまで考えてない/感じてないのかもしれないけどさ‥‥ま、いち個人の感想ですけどね。

◎M-10. 天頂バス
  中盤の穏やかなノリから大ヒットシングルで転機を迎え、いよいよラストに向けて大きな盛り上がりをみせるこのアルバム‥‥個人的にはこのアルバム一番のハイライトだと思っているこの曲。ROLLING STONES的アーシーなロックンロール調アレンジのA~Bメロはどこか "光の射す方へ" を彷彿させるアレンジ。けどサビになるといきなりエレクトロな四つ打ちに。どこか一時期のスーパーカー的で面白い。更に中盤の展開部ではまた違った印象のアレンジ‥‥どこかニューウェーブ的というか。ぶっちゃけ、3つの異なるアレンジの曲を合体させたような1曲になってるのよ。この辺は何となく「Q」的ですよね。凄く面白い曲だなこれ。バンドというより、桜井とプロデューサーの小林武史のふたりで遊んでみました的楽曲というか。

◎M-11. タガタメ
  で、ラストに向けて更に盛り上がっていくこのアルバム。ラス前に持って来たか、この曲を‥‥ま、詳しくはこちらでね。もはや何も言う事はないでしょう。この曲に感動/共感できない人とはちょっと距離を取りたいな、と思える程圧倒的な1曲。やっぱりこのポジション(アルバム最後ではなく、ラス前)しかあり得ないよな、うん。

◎M-12. HERO
  最後の最後はこの超名曲を持ってきたか‥‥"タガタメ" の余韻を引きずったまま、歌い出しの「例えば誰か一人の命と/引き換えに世界を救えるとして」って歌詞聴いて、思わず目頭熱くさせちまったよ。ったく、反則! 桜井自身もこの曲でアルバムを終えるという構想が最初からあったみたいですね。詳しくはこちらで。そういえば既出シングル曲で終わるアルバムってのも、「BOLERO」以来で随分と久し振りだね(ま、「BOLERO」の場合はボーナストラック的位置なんだっけか、"Tomorrow never knows" は)。


◎まとめ

  実は今回、歌詞についてあまり深く突っ込まなかったのは意図的です。というのも、桜井自身も「ミスチルというと『歌詞が~』と言われることが多く~」と初回盤付属DVDの中で述べていたので、今回は(っていうか毎回だけど)特にサウンド/アレンジ面中心で語ってみました。いや、もうね、大体そうじゃない、他所のサイトもさ、歌詞云々って。だったら俺らしいやり方でアルバム語ってみようかな、と。

  最初に書いたように、良いアルバムだとは思うけど傑作とは言い難いなぁ‥‥と感じたのは、アルバム全体のトーンが地味目なのが大きいでしょうね。一聴してカラフルなイメージがない。全体が似たようなトーンでまとまっているし。いろんなギミックは仕掛けられているものの、それは聴き込んでいく内に発見していくといったような感じ。ホント、細部にまで拘って制作されているのは何度も聴いてよく判りました。

  何だろ‥‥「ポップ」という要素に拘ったことで外に向けて放った「IT'S A WONDERFUL WORLD」とは真逆にあるのかな、「シフクノオト」って。極端な話だけどさ。歌われる対象だったり、聴いて欲しい対象がもっと限定されているように感じるのも、このアルバムの特徴かもしれませんね。勿論「ポップ」なんだけど、前作ではいろいろ計算されていたからこその作風だったのに対し、今回は好き放題やったものをまとめたような、そんなイメージ。そうか、だから「コミック」であり「私服ノート」なのか。妙に納得。

  あとさ‥‥これはもう仕方ないことなんだけど、前作でツアーをやらなかった(出来なかった)のも、このアルバム制作に大きく影響してるように思います。最後に大掛かりなツアーをやったのが2001年夏。2002年12月に単発でライヴはやったけど‥‥やっぱり「バンド」としてこれは大きいと思うな。「作家」としては然程大きな影響はないと思うけど(‥‥いやあるな。絶対あるわ)。

  以前‥‥「掌/くるみ」のレビューで書いたんだけど、次のアルバムは「Q」みたいな作風になるんじゃないか?っていうの‥‥あながち間違ってなかったように思います。勿論完全にあの路線の延長線上にある作品だという意味ではなくて、振り幅/前作からの流れという意味でね。「DISCOVERY」~「Q」という流れと、「IT'S A WONDERFUL WORLD」~「シフクノオト」という流れ/作品の振り幅が、俺には似たように映るんですよね‥‥

  さて、改めて。最高傑作かどうか‥‥という問いに対しては、正直まだ自信を持って答えることはできません。聴けば聴く程、どんどん好きになっていくアルバムではあるんだけど、まだそこまで言い切れない。多分‥‥ライヴ観たいんだろうな。ライヴ観て、セットで判断したいんだと思う。「IT'S A WONDERFUL WORLD」みたいな一聴して「傑作!」と言い切れる作品とは違う、非常にデリケートな作品集だからさ、これ。



▼Mr.Children『シフクノオト』
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投稿: 2004 04 11 12:00 午前 [2004年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2004/04/10

Mr.Children『HERO』(2002)

  Mr.Children 24作目のシングル「HERO」は、アルバム「IT'S A WONDERFUL WORLD」の流れを組む、正しく「ポップの究極型」と呼べる最高のナンバーを収録した作品になっています。桜井和寿の小脳梗塞によるバンド活動の休止から5ヶ月、実質レコーディングはこの年(2002年)の9月頃から行われていたようですから、復帰後すぐに作業に入ったようですね。とにかく手の込んだ、魂のこもった1曲に仕上がったタイトル曲 "HERO" といい、地味ながらも非常に完成度の高い "空風の帰り道" といい、非常に純度/濃度が高いシングルに仕上がってます。

  桜井の悲劇というフィルターを通すことで、どうしても深読みしてしまいがちの歌詞ですが‥‥それがなくても、いろいろ考えてしまう "HERO" の歌詞は、ちょっと切なくて、それでいて胸が熱くなるような内容。同年代の男性だからこその共感というのもあるでしょう。そして「ヒーローになりたい」相手である「君」を誰に想定するかで、また聴こえ方も違ってきます。恋人、妻、あるいは子供‥‥残念ながら自分は後者ふたつを持った経験がないので想像でしか理解できませんが、それでもそれらを当てはめて歌詞を読んでいると‥‥不覚にもウルッときてしまう。そういう「ズルい」曲なんですよね、全く。

  「IT'S A WONDERFUL WORLD」でのラヴソングやバラード曲は、その歌われる対象が恋人だったように感じたんですが、ここではもっと広い意味を持たせている。「IT'S A WONDERFUL WORLD」が「ポップソングとしての匿名性」を意識した為にそういう風に書かれたのかどうかは判りませんが、そういう意味ではこの "HERO" は明らかに歌われる対象を絞っているように感じられます。にも関わらずここまで「ポップの究極型」として成立してしまうのは、それ以外の要素がしっかりしているからなんでしょうね。

  演奏のアレンジにしても、シンプルなバンドサウンドの上に温かみのあるストリングスが乗ることで、デジタルな側面よりもアナログな側面が強調されている(実際には打ち込みも導入されてるんですが)。しかしシンプルながらも書く楽器のプレイはしっかり練られているんだよね。特にベース。自分がベース弾くからってのもあるけど、特に「DISCOVERY」以降の中川のベースフレーズには目を見張るものがあります。地味なんだけど味わい深い、印象に残るフレーズが多いのね。今回は特にそれが際立っているように感じますね。

  カップリング曲 "空風の帰り道" は如何にもカップリング/アルバム収録曲といった感じの地味目の1曲なんだけど、これも今のミスチルじゃなきゃ上手く表現できない楽曲なんじゃないでしょうか。この曲の歌詞も "HERO" 同様「~以後」を意識して(させて)しまう内容なんですよね‥‥地味なトーンのまま淡々と進んでいく曲調は、正に前シングル "Any" の延長線上にある路線なんですよね。ただ、明らかに響き方が以前とは違う。いや、違って聴こえるだけなのかな‥‥意識してないつもりでもやはり‥‥全く厄介なもんに巻き込まれたもんだよな、桜井も。

  とまぁ、駆け足でこのシングルについて書いてきたんだけど‥‥「ポップの究極型」と書いてはみたものの‥‥実は初めてこの曲を聴いた時、俺さ、全然頭に思い浮かべる事が出来なかったのよ、これらの曲を桜井が、ミスチルが歌い演奏している姿をね。明らかに「ミスチルの歌」だと聴いて判る内容なのに、それをバンドとして演奏している姿がね、全然イメージ湧かなくて。もしかしたら、この2曲に関しては‥‥「桜井和寿の歌」としてしか見れなくなっていたのかな、と。ソロとかそういう意味じゃなくてさ、もっとこう‥‥シンプルな意味で、別にミスチルである必要ないよな、と。良くも悪くもね、そう思ってしまったのよ。

  ま、そうは言ってみても、やはりこれも間違いなく「Mr.Childrenの楽曲」の一部なんだけどね。そしてこの後にリリースされた楽曲が "タガタメ" であり「掌/くるみ」だったというのも、何となく頷ける話ですよね。そういったことも含めて、俺は続くアルバムが『「Q」みたいな作風の作品集になるんじゃないか?』って書いたんですけどね。さて、実際にはどうなってましたかね‥‥。



▼Mr.Children『HERO』
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投稿: 2004 04 10 12:00 午前 [2002年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2004/04/08

Mr.Children『Any』(2002)

  Mr.Children 23作目のシングル「Any」は、非常に可哀想なシングルだったと思う。会心の一撃となったアルバム「IT'S A WONDERFUL WORLD」から2ヶ月しか経っていないのにドロップされたこの曲は、まだまだミスチルの快進撃は続くんだよ‥‥というダメ押しの1曲になるはずだったのに。いや、実際にはいつも通り1位も取り、そこそこのヒットを記録したんだけど‥‥2002年7月、桜井和寿が小脳梗塞の疑いで緊急入院、及びMr.Childrenの活動休止。やはりこの事実を前にして、この曲のインパクトは薄まってしまったように思います。

  実はこのシングルのレビューをリリース当時に試みようとしたことがあったのですが、その矢先にあの出来事。結局まともな判断がつかないだろうなぁと感じたので、取り止めに。で、気づいたら桜井もミスチルも復活し、既にアルバムまでリリースしている始末。そろそろ本腰入れて『「IT'S A WONDERFUL WORLD」以降』について書いてもいい頃だよな‥‥ということで、「シフクノオト」と向き合う前に今一度、そこへ向かうまでの道のりを再確認しておこうかと思います(主に俺内で)。

  表題曲となる "Any" はイントロのピアノが印象的な、メロディアスなミドルチューン。サビで被さってくるブラスも気持ちいいし、田原健一によるギターも味わい深いし、リズムトラックのアレンジも地味ながらも凝ったものがある。そして桜井の歌詞/メロディ/歌唱。熱くなりすぎず、それでいて醒めてるわけでもない。サビでの盛り上がりはあるものの、以前のような劇的なまでの盛り上げがあるわけでもない。決して抑えて歌っているわけでもないのにそう感じてしまうのは、彼なりのテクニックなのか、それとも作戦なのか‥‥

  イントロからの流れを追っていくと、ふと "Tomorrow never knows" とイメージを重ねてしまうんだけど‥‥この曲って、もしかして "Tomorrow~" へのアンサーソング?なんて思ったりして。「心のまま」進んだ青年が「誰も知ることのない明日」を目指して迷走し、大人になった彼は「真実からは嘘を/嘘からは真実を/夢中で探してきたけど」、最終的には「今/僕のいる場所が/探してたのと違っても/間違いじゃない/きっと答えは一つじゃない」というひとつの真理にたどり着く。そんな一種悟りのようなものさえ感じさせる歌詞にしろ、言い方は悪いけど‥‥煮え切らないような劇的盛り上がりに欠ける展開/アレンジにしろ、桜井自身が当時感じていた「余裕」のようなものが生んだ産物なのかもな‥‥その先に待ち受けている「真実」が彼にとって辛いものであったとしても、ね。まぁその辺は結果論でしかないですけど

  散々「煮え切らない」「盛り上がりに欠ける」とか書いてるけど、決してそれを嫌ってるわけじゃないですよ。この曲にはこういうアレンジがピッタリハマっていて、全然アリだと思うし。むしろこのアレンジだからこその1曲だと思うし。決してシングルだけを想定して作られたものではなく、この先に待ち構えている次のアルバムへの布石‥‥パズルのピースみたいに考えて制作されてると思うしね。

  それはカップリングの "I'm sorry" にしても同様で、決してシングルのタイトルナンバーに持ってくるようなタイプではないものの、アルバムやカップリングとしては最高に良い役割を果たす作品として完成しているし。サビでのちょっと風変わりなコード進行とコーラスが印象的で、やはりブラスが被さっているんだけど "Any" 程目立ってない。曲も決して派手な盛り上がりをするアレンジではない。けど、何度もリピートして聴いてしまうし、気づけば口ずさんでしまう‥‥

  このシングルでの2曲って、共通してそういう「地味」「劇的な展開がない」「煮え切らない」みたいなイメージがあるんだけど、この辺が当時桜井及びMr.Childrenとして目指していた「ポップ」の、「IT'S A WONDERFUL WORLD」みたいな王道とは違った追求の仕方だったのかもしれませんね。勿論、ヒットメイカーでもある桜井のこと、頑張って抑えてみたものの、しっかり王道になっちゃってるんですけどね。

  あのアルバムとこの曲を引っ提げて長期のツアーをしていたら‥‥その後に "HERO" は生まれなかったかもしれない。いや、生まれたとしても、ああいった形にはならなかったかもしれない。そういう意味ではこの "Any" という曲及びこのシングルがひとつの分岐点になってしまったようですね。歌詞通り、正に「いつも答えは一つじゃない」わけだしね‥‥ 。



▼Mr.Children『Any』
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投稿: 2004 04 08 12:00 午前 [2002年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2004/01/12

Mr.Children『Everything』(1992)

  Mr.Childrenが'92年5月に発表した、記念すべきデビューアルバム。メンバー4人、そしてプロデューサーである小林武史という布陣はこのデビュー時から出来上がっていて、現在に至るまで不動のチームとしての仕事振りを発揮しているわけです(ま、ホントの裏事情は本人達じゃないと判らないでしょうけどね)。7曲入りということでミニアルバムという解釈もできると思いますが、彼らが所属するレコード会社「TOY'S FACTORY」ってこういう形態でのアルバムリリースが結構多いんですよね。例えばJUN SKY WALKER(S)や筋肉少女帯も7曲前後入りのアルバムというのを過去何枚か出しているし。値段的にも2,000円程度で通常のアルバムよりも1,000円近く安くてお手軽。そういう意味では手を伸ばしやすいデビュー盤かもしれませんね。

  俺とこのバンドとの出会いは、ここに収録されている "君がいた夏" のPVをTVKで目にして。ああ、フリッパーズ・ギター以降の流れを汲む、ネオアコ・チックな音を出すバンドだな、とか、ロックというよりもポップバンド‥‥BEATLES初期の、ある時期を彷彿させるイメージを持ってるな、とか、そういった印象を持ったのを思い出します。俺が彼らに注目し出したのはその数ヶ月後にリリースされた "抱きしめたい" からなので、当然このアルバムは後追いで聴いたことになります(アルバム自体を購入したのは「versus」が最初ですから)。

  個人的にこのアルバムを最も聴き込んだのは、多分「Atomic Heart」以降‥‥ツアーでいうと'95年夏のスタジアムツアー「空」辺りまでかな。当時は彼らのポップサイドよりもロック的側面に興味が集中していた時期なので(俺内でね)、またライヴでもこのアルバムでの曲はあまり披露される機会が少なくなっていった時期ということもあり、どうしても手が伸びる回数が少なかったんですよね。ミスチルなら何でもいいの!的純粋なファンの皆さんとは違って、非常にひねくれた聴き方をしてましたからね、俺(ここのコードがどうだとか、この転調が凄いだとか、ここのフレーズが○×の "~" って曲に似てる、とかさ)。

  というわけで‥‥来るべきニューアルバムを前に、改めて彼らの足跡を追ってみようかと思い、こうしてファーストアルバムから取り上げてみようかと思ったわけでして‥‥正直、ミスチルを語る時って、もの凄いパワーを使うわけですよ。通常のレビューの数倍も時間をかけて書くわけでして(すんなり書けない・書きにくいというのもあるんですが)。ま、手始めに曲数が少ないこのアルバムから‥‥ってのが真相なんですが(ホントは「Atomic Heart」から手を出そうとしたんですが‥‥やっぱり無理でした。一番思い入れが強い時期ですからね。それだけに‥‥)。


●M-1:ロード・アイ・ミス・ユー
  イントロでのギターのストロークが印象的な、ミドルチューン。誰もが指摘するでしょうけど、明らかにTHE POLICE(かのスティングが在籍したロックバンド)のデビュー曲、"Roxanne" のメインリフからアイディアを拝借しているかな‥‥と。小林の手が加わる前のバージョンがどうだったのか判りませんが、どちらにしろよく小林がOKを出したな、という気が。で、イントロ~Aメロでは "Roxanne" の影を引きずりつつも、Bメロでマイナーコードからメジャーコードに転調、そのままスケール感が大きな展開を見せます。特にサビでの流れるようなメロディには、その後の桜井和寿を彷彿させる冴えを感じます。「プロのミュージシャン」というよりは、まだこの時点では「ロックファン」といった視点の方が強いのかな、という気も。その後も彼らは幾度となく海外の有名アーティストの楽曲からアイディアを拝借していましたからね。

●M-2:Mr.Shining Moon
  スウィング感が気持ちいい、ポップチューン。コード使いやブラス/オルガン/パーカッションの挿入の仕方がどことなくブラックミュージックに通ずるものがあって、ギターポップのスウィング感というよりも、もっとファンキーな要素を強く感じますね。この辺のアレンジの妙技は正に小林によるものでしょう。サザンオールスターズ辺りで試した手法を、ここでも遺憾なく発揮しています。新人のそれとは思えないくらいに。

●M-3:君がいた夏
  後にシングルとしてリカットされ、PVも制作された1曲。アルバムより後発だけど、これを「デビュー曲」と認識する人が多くいるのはそのためでしょう。後に尾崎豊や佐野元春のような「言葉を詰め込みすぎた譜割り」が目立つようになるミスチルですが、それを聴いた後にこの曲を聴くと間延びしすぎた印象を受けますが‥‥まぁ、その辺は個々の趣味もあるでしょうからね。個人的にはこのゆったりとして一言一句を大切に歌う姿勢に、当時から好感が持てたし、更に'50年代のアメリカン・ポップスを彷彿させる大らかさがとても気に入っています。これがシングルとして選ばれたのは、何となく理解できますね。後のヒット曲にも通ずるものがありますし。

●M-4:風 ~The wind knows how I feel~
  ドラムが印象的な1曲。これもアメリカンロックに通ずる大らかさを持っていて、例えばブルース・スプリングスティーンみたいなノリを感じるわけ。ミスチルというとエルヴィス・コステロ等のブリティッシュ・ロック/ポップからの影響をよく耳にするかと思いますが、後に「深海」以降で見られるように、アメリカン・ロック/ポップからの影響も大きいわけで、これはその辺の要素を強く出した1曲かなという気がします。

●M-5:ためいきの日曜日
  アルバム唯一のバラードナンバー。とにかく「オシャレ」という印象が強いアレンジで、例えば後に発表される "抱きしめたい" とも違った流れにあるタイプ。勿論これもミスチルの持ち味なんだけど‥‥どちらかというと、小林武史の持ち味だったのかな?なんていう気も。それを上手く桜井が吸収していったのでは‥‥後にこの辺の路線や音楽性の延長線上からスガシカオやaikoといったアーティストが登場したのと同時に、ミスチル本人達がこの手の路線を封印してしまったのが、非常に印象的ですね。あ、あとこの曲って意外とサイケなのね。特に後半の盛り上げ方が‥‥安直な例えだけど、中期BEATLESのそれに近いものがあるかな、と。意外とヘヴィなギターと、それに被さるストリングス系シンセ、レズリースピーカーを通したかのようなウネウネするサウンド、等々。後に「深海」というアルバムを作ることを考えると、ホント興味深いですね。

●M-6:友達のままで
  アコーディオンぽい音色のシンセ(本物?)とソフトな音色のオルガン、ビブラフォンが心地よい、アップテンポのギターポップ。間奏でいきなり飛び込む変拍子が程よいアクセントになればよかったんだけど、なんか空回りしてるような気も。ま、若気の至りということで。アコギの音が前面に出てることで、ネオアコっぽさを強調してる感じが、完全にその辺を狙って(狙わせて)いたことが伺えますね。

●M-7:CHILDREN'S WORLD
  アルバム中、最もロック色の強いストレートな1曲。メインフレーズとなるアルペジオが心地よく、アコギにも中盤(サビ)ではエフェクトがかけられていたり等、ただのロックチューンで終わらないような工夫が要所に見つけられます。とにかく仕事が細かいね、小林武史って人は。バッキングのディストーションギターもちょっとキース・リチャーズが入った刻み方をしてて、ああこの辺は桜井が弾いてるんだろうな、なんて勝手に想像して楽しんでます。


●総評
  というわけで駆け足でコメントしましたが、ある点において「何故コメントしないの?」と疑問に思われるかもしれません。そう、これまでのミスチル・レビューでは必ずといっていい程触れてきた「歌詞」について。意図的に解説中では語らないようにしたんですが‥‥正直なところ、非常に幼いかな、と。いや、そりゃ現在30歳をとうに越えた俺からすれば、ここにある歌詞は幼いと感じるかもしれませんが‥‥それでも、セカンドアルバム以降と比べてもちょっと幼すぎる気がするんですよね。多分、アルバム用に作った楽曲というよりは、それ以前からライヴで幾度となく演奏されていた持ち歌の中から厳選された7曲なんでしょうけど‥‥デビュー時のメンバーが22歳とすると、それ以前‥‥20~21歳頃に書かれた曲が多いのかな? ふと、自分がハタチの頃ってどうだったかな?と思い浮かべてみたんですが‥‥ゴメン、思い浮かばなかった。奇遇にも成人式シーズンにこれを書いてるわけですが、もし今ハタチ前後の男性がこのアルバムを聴いて(歌詞を読んで)どう思うのかなぁ‥‥なんてね。自分もその位の年齢から自分で曲を作って歌詞を付けたりしてたけど、その当時の自分の作品と比べると‥‥音楽性や路線が全く違うから、比べるのはちょっとか‥‥って気がしないでもないけど、それでもやっぱり子供っぽさを強く感じるのね。それは決して悪いとは思わないし、これがデビュー前の彼らの「売り」だったのかもしれないけど‥‥セカンドやサードから入っていった者からすると、ちょっと厳しいかな、と感じちゃう、と。「アホー、そこがいいんじゃないか!」というお叱りの声が聞こえてきそうですが、ま、そういう奴もいるんだよってことでお許しください。

  そういう意味からしても、このアルバムってのはデビュー盤にして「過去との決別」の印でもあったわけか‥‥と続く作品群を聴いて思うわけですよ。同じ「少年の心」を歌うにしても、見せ方・聴かせ方が変わるとこうもグレードアップするもんなのか‥‥と、まざまざと見せつけられるわけですね‥‥って、おっと。その続きはまた今度、「KIND OF LOVE」のレビューで‥‥。



▼Mr.Children『Everything』
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投稿: 2004 01 12 12:00 午前 [1992年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2003/11/19

Mr.Children『掌 / くるみ』(2003)

  この9月に "タガタメ" というラジオでしか聴けない新曲を発表したMr.Children。CD音源としての新曲は昨年末の "HERO" 以来、約11ヶ月振り。メディアにも少しずつ露出が増えていき、いよいよテレビの歌番組にも登場するというし、ゆっくりですが順調に「転がり」始めているようですね。

  今回は初の両A面シングル。タイプの違う2曲を敢えて両方ともリーダートラックとして選び、それぞれにPVまで制作。しかもそのPVがCD-EXTRAとして2曲分収録されているんだから、ホント豪華。DVDというフォーマットを選ばずに敢えて「エンハンスド仕様」にした辺り、何となく『今の風潮』に対する主張のような気が‥‥ってのは深読みし過ぎでしょうか。

  そうそう、これまでうちでやってきたミスチル関連のレビュー。某雑誌みたいな深読みばかりでしたが、今回はそれを止めようと思います。面白がってくれてる人が少なからずいるのは知ってるんですが、今の俺にはああいうのは書けません。いや、書きたくないんです。この先とか過去とか今はどうでもよく(本当はよくないけど)、ただ目の前にあるこの2曲とだけ触れ合っていたい。そう強く思うんですよ。ああいうのは俺よりもっと上手く書ける人が沢山いるだろうから、そういう人達にお任せします。

  さてさて、本題に入りましょう。まず1曲目の "掌"。「攻撃的なロックチューン」という話を聞いていましたが、実際にはそんな攻撃的な曲というわけではなく、ミドルテンポで心地よい跳ね気味なリズムを持つポップロックといった印象。アレンジ的にも "ニシエヒガシエ" 以降の流れを組むもので、スティングとかU2辺りを彷彿させる色合いかな。サビの「ひとつにならなくていいよ」という歌詞が非常に印象的な、いろんな意味で「ミスチルらしい」‥‥いや、「桜井和寿らしい」楽曲に仕上がっています。最初聴いた時は幾分地味な印象を受け、「これ、シングルっていうよりアルバム曲だよな‥‥」と思ったりもしたんですが、もしかしたら今のミスチル/桜井がこういったモードなのかもしれませんね。

  2曲目の "くるみ" はこれまた彼等らしいバラードナンバー。これもシングルにするには地味過ぎて、かといってカップリングにするにはよく出来すぎてる1曲で、やっぱりアルバムの5曲目とか8曲目辺りに登場しそうなタイプの曲かな、というのが第一印象。勿論悪い意味ではなくてね。使われているシンセやアコーディオン、ストリングスといった音色が「従来のミスチルらしさ」を醸し出しているので、何となく懐かしい香りもしつつ、それでいてずっと大人な「色気」も感じる。これは「IT'S A WONDERFUL WORLD」にも通ずる要素であるんだけど、ここで聴ける2曲はその前作ともちょっと違った色合いが見え隠れする。勿論それは成長なんでしょうけど、それだけじゃない気もするし。

  2曲に共通して言えるのは、「IT'S A WONDERFUL WORLD」周辺のシングル曲と比べて、まず第一印象が「地味」に感じられるという点。所謂シングル特有の「キラーチューン」的側面が完全になりを潜め、もっと「深さ」を追求してるように思えますね。さっき「成長」と書きましたが、これは『進化』というよりも『深化』といった方が近いかもしれませんね。Mr.Childrenを総括しつつ追求していったのが「IT'S A WONDERFUL WORLD」だとしたら、現在制作されているアルバムは更に重心の低い作風になるんじゃないのかな‥‥という気がしますね、このシングル2曲や "タガタメ" を聴いてしまうと。振り幅が非常に大きかった前作に対し、トーンは同じなのにいろんな形をしてるような‥‥そんな新作が期待できるんじゃないでしょうか? そういう意味では俺、「Q」に比較的近い作品が誕生するんじゃないかな、と読んでるんですが‥‥

  あっ、いけね。深読みしないとか最初に宣言したのに、結局調子に乗ってやっちゃったよ。まぁいいか、いつものことだし。

  アルバムが来年の早い時期にリリースされるとは思いますが‥‥個人的にもう1枚、シングルが欲しい気がします。上に書いたような「同じトーンで奏でる異形の楽曲」をもうワン・パターン欲しいかな、と。まぁあんまり既出曲が増えると、アルバム聴いた時の驚きが少なくなるからなくてもいいような気もするけどね。

  今回のシングル、これまでミスチルをバカにしてきたような人にこそ聴いて欲しいかな、と思ってます。この正反対なようで1本筋の通った2曲の「従来のミスチルみたいだけど、それでいて新しいミスチル」を聴いて、どういう反応を示すのか‥‥ちょっと楽しみですね。



▼Mr.Children『掌 / くるみ』
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投稿: 2003 11 19 12:00 午前 [2003年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2003/09/01

Mr.Children『タガタメ』(2003)

  まずはオフィシャルサイトに目を通して欲しい。この曲を聴く前に、何故彼等は「CDリリース」という形体を取らずにまずラジオでオンエアしてもらうことを選んだのか、どうしてこの曲だったのか、そういったことをちょっとだけ考えて欲しいな、と。そこにはスタッフの説明(何故この曲が通常のプロモーション形体を取らずリリースが決まる前にラジオでオンエアすることを決めたのか)、桜井和寿本人からのメッセージ、そして最後に問題の楽曲、"タガタメ"の全歌詞が載っています。

  Mr.Childrenの新曲がそろそろ出るぞ、という噂はちょっと前から耳にしていました。早ければ年内には何らかの形で聴くことができると。しかしそれは我々が想像していたような形での発表ではありませんでした。CDとしての発表でもなく、ましてやライヴを行うのでもなく、まず出来た曲をラジオで流すというこれまでには考えられないような手段を取ったのです。

  オンエア解禁は9月1日。未だリリース日程も、本当にリリースされるのかも決まっていない曲。とにかくただ早くみんなの耳に届けたかった。それだけの理由で、彼等はラジオオンエアという手段を選びました。

  幸運にも、本日某FM局で放送されたその音源を手に入れることができました。6分40秒以上にも及ぶ大作。およそシングルには選ばれそうもない、彼等にしては地味な曲。単調な曲進行とメロディ、そこには「メガヒットを飛ばすミスチル」の姿はありません。ただ、彼等をよく知る人ならこれが「彼等の別の側面」であることもご存じでしょう。過去の楽曲のタイプでいえば"Hallelujah"や"終わりなき旅"に通ずる、曲自体はシンプルなのに桜井の歌とバンドの演奏でドンドンと熱く盛り上げていくタイプ。アルバム後半のハイライトになるようなタイプの楽曲、それがこの"タガタメ"だといっていいでしょう。

  何故桜井が、そしてバンドがこの曲を早く世に出したいと願ったのか。それは歌詞の内容も大きいでしょうけど、俺はそれと同時に「如何に今このバンドのポテンシャルがもの凄いことになってるか」というのを上手く表現できているから、この曲を選んだんじゃないか‥‥そんな気がします。曲としてはAメロがあってBメロがあってサビがある、そしてその繰り返しというシンプルさが耳につくタイプなんですが(最初はカントリー調のアレンジで‥‥と桜井も書いているし)、バンドの4人+キーボード(小林武史か?)+ブラス&ストリングスという壮大な楽器隊。更に曲が進むにつれてドンドン盛り上がりを見せるアレンジ。レコーディングの現場が非常にいい状態にあることが何となく伺えますよね、これ聴いちゃうと。

  そして‥‥やはり桜井のボーカルは今まで以上に強く、そして優しく、時には刺々しく我々の胸に飛び込んできます。後半、特にエンディングでのリフレインで声を枯らしながらシャウトする桜井は、これまでには見られなかったような一面ではないでしょうか?

  曲の歌い出しの一声で、フッと肩の力が抜けて、ああミスチルがホントに帰ってきたんだな‥‥という安心感を感じ、しかし曲が進むに連れてそういう安堵感は高揚感へと変化していき、最後には‥‥自分でも上手く表現できないような、何とも言えない気持ちに。それがこの曲を最初に聴いた時の第一印象でした。かれこれこの数時間で何度リピートしているでしょうか、モニターに映る歌詞とにらめっこしながら、何度も、何度もこの曲を噛みしめています。

  これはシングルにすべき曲ではない。だからこういう形でまず世に出したんでしょう。今制作しているアルバムの中で、間違いなくハイライトのひとつとなる曲。一体今度のミスチルはどういうことになっているのか‥‥何の不安要素もないですね、これを聴いちゃったら。「深海」の方へも行かないでしょうし、かといって「Atomic Heart」へも行かない。「IT'S A WONDERFUL WORLD」を更に濃厚にしたような、そんな凄いモノが我々を待ち受けているんでしょうね。

  最後に‥‥この歌詞を斜に構えて斬ることはいくらでもできるでしょう。単純に曲が好みでない人もいるでしょう。けど俺は目の前にある、この楽曲と素直に向き合っていくつもりです。



▼Mr.Children『シフクノオト』
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投稿: 2003 09 01 11:30 午後 [2003年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2002/05/10

Mr.Children『IT'S A WONDERFUL WORLD』(2002)

  1992年5月10日にアルバム「Everything」でデビューしたMr.Children。前作「Q」から約1年8ヶ月振りのこの新作は、そのデビュー作がリリースされてから丁度10年後の2002年5月10日にリリースされた、いわば記念盤だ。「Q」とこのアルバムとの間にもツアーを2本行い、昨年7月には2枚のベストアルバム、同年8月にはシングル"優しい歌"、同11月には"youthful days"、そして今年1月には"君が好き"という具合に、近年希にみるリリース攻勢を仕掛けてきた。その裏にはベスト盤とそれに伴うツアーによってそれまでのミスチルに区切りをつけ(或いはそれまでの自分達を再検証し)、既に見え始めていた「新しい地平」へと向かって走り出し、その合間に出来たてのシングルをドロップしていきながら、じっくりとアルバムを作っていったというわけだ。

  今度のアルバムは事前から「ポップの再検証」のようなテーマが掲げられていた。ここに収められた15曲(内1曲が小林武史作曲のインスト、2曲が同じ曲をモチーフにした異曲なので、実質的には13曲といっていいだろう)は全てが全て、ある意味バラバラな作風を持った楽曲ばかりだ。そしてそれらは究極的に「ポップ」だ‥‥しかし、ミスチルが、桜井がポップを追求すればするほど、そしてよりポップになればなるほど、実はかなり「ロック」していたるいう現実。どっちがどっちを包括している、どっちの方が偉大だなんて言いたいのではない。結局このアルバムは「ポップ」というものを多方面から、多角度から覗いた結果なのだ。だからそこ究極に個性的な楽曲が並び、その全てが名曲揃いなのだ‥‥

  もう、いきなり言い切ってしまおう。このアルバムこそが、ミスチルの最高傑作なのだ、と。


★アルバム「IT'S A WONDERFUL WORLD」全曲解説★

◎M-1:overture
  小林武史作曲のインスト小楽曲。ここ2作はこういった始まり方をしていなかったが、改めてこういった始まり方をされると、やっぱり「次にどんな音がくるんだ!?」とドキドキする。オーケストラとサンプリングが共存する、いわばアナログとデジタルの融合。これはある意味、このアルバム全体に通して言えることかもしれない。

◎M-2:蘇生
  そして切れ目なく、ごく自然に流れるように始まるのが、このアルバム最初のハイライトといえる名曲。既に3月末から某コーヒー飲料のCMソングとしてテレビでバンバン流れていたので、聞き覚えある人が多いのではないだろうか。イントロのギターや曲の印象がNEW ORDERの"Regret"をイメージさせるが、あの曲以上に大きなノリを持った壮大な1曲。正直、なんでこの曲をアルバム先行シングルにしなかったんだ!?と思わせる程の出来(桜井は「シングルばかりが入ったアルバムというイメージよりも、ああ、アルバムにはこんなにいい曲が入ってるんだって思って欲しかった」からシングル化せずにタイアップのみにした、と語っている)。
  とにかく曲名と歌詞と演奏とメロディ全てが完璧な曲としか言えない。"youthful days"と並ぶ21世紀ミスチルの代表曲と言えるだろう。

◎M-3:Dear wonderful world
  「深海」における"手紙"のような流れを作る小曲。打ち込みとエレピをバックに唄われるこの曲、最近のRADIOHEADのようだ(パクってるって意味じゃなくて、雰囲気がという意味)。「この醜くも美しい世界で」という行と曲のタイトルが、雰囲気のせいか逆説的な、ある意味皮肉のように感じられる。まぁそういう風に取らせるための表現なのだろう。頭2曲の緊張感を持った流れ、凄いなぁ‥‥

◎M-4:one two three
  緊迫した空気をブチ破るのは、ブラスが気持ちいい軽快なポップナンバー。こういうタイプの曲、久しくなかったなぁ‥‥無理矢理例えれば、「Atomic Heart」までに存在した、ふざけ心満載の軽薄ポップナンバーといった感じか(いや多分違う)。こういう曲を敢えてやらなくなったミスチル。それに取って代わるように、時代はスガシカオやaikoという才能をこの世に生んだ。この3組は地続きだということを改めて認識させる1曲。いいなぁ、こういう曲。あ、曲タイトルの関係からか、アントニオ猪木が登場します(笑)

◎M-5:渇いたkiss
  続くこの曲もブラスをフューチャーしたミディアムナンバー。やはり初期の彼等をイメージさせる曲調が今となっては新鮮。こういう曲を聴いて、「DISCOVERY」以降離れていったファンは何を思うのだろう‥‥サビのコード進行といいメロディの持ってき方といいアレンジといい、初期ミスチル完全復活というよりは、更にレベルが高まってる感じ。これは進化でも退化でもない、「深化」なのだ。

◎M-6:youthful days
  シングルレビュー参照。それにしても、この3曲の並びは強烈だ。それこそ「KIND OF LOVE」のアルバム冒頭から"抱きしめたい"への流れや「Atomic Heart」のアルバム冒頭から"innocent world"への流れに匹敵するスムーズ且つ完璧な構成だ。

◎M-7:ファスナー
  実はこの曲、当初シングルの候補として挙がっていたらしい。実際、"君が好き"のカップリングとして起用するかどうかの瀬戸際までいったらしい(結局アルバム未収録の"さよなら2001年"が収録された)。それも頷ける出来。ミスチルのアルバム未収録カップリング・ナンバーというのは、実は隠れた名曲が多い。地味で渋い曲が殆どなのだが、これはそんな例えをしたら罰が当たりそうな程にポップな曲。イントロのコード進行が「versus」収録の"my life"を思い出させる。このタイトルのファスナー、ダブルミーミングとなっていて‥‥歌詞にも出てくる通り、女性のスカートのファスナーと、デパートの屋上でショーをするウルトラマンや仮面ライダーの着ぐるみ背中のファスナー。両者に言えるのは「ファスナーを下ろすと、中から僕の知らない顔を持った君がいる」ってこと。知らずにいるから幸せにいれること、見ずにいるから胸がドキドキするってこと、日常には沢山あるんじゃないかな?
  それにしても、唄い出しの「昨日/君が自分から下ろしたスカートのファスナー/およそ期待した通りのあれが僕を締めつけた」って歌詞‥‥どうよ?(笑)

◎M-8:Bird Cage
  初期ミスチルを更に昇華させたような高純度の名曲が4曲も続いた後、再びアルバムは中期ミスチル的シリアスナンバーへと突入する。PINK FLOYDやRADIOHEADのようなプログレッシヴなバンドを愛するミスチルの側面を端的に表した1曲。イントロでのJenのドラミングは圧巻だし、曲中の各楽器のプレイ、そしてこのアルバム中唯一桜井が「叫んで」いる点から、アルバム中盤の山場と言えるだろう(丁度ここが中間地点だし)。「深海」や「BOLERO」の頃のような痛々しい叫びではなく、「DISCOVERY」での、力強い「生」が漲った叫び‥‥鳥籠というタイトルも、アルバム「Q」でのツアーセットを思い出させる。「唄わせるミスチル」から「聴かせるミスチル」へ‥‥緊張感と説得力。前半は歌を楽しんでいたあなた、この曲ではどうか「バンドとしてのMr.Children」をじっくり堪能して欲しい。そう、ヘッドフォンを付けて、目を瞑って‥‥

◎M-9:LOVE はじめました
  そして続けざまにシリアスモードか‥‥と思いきや、「冷やし中華はじめました」みたいなふざけた曲名、RADIOHEADやアブストラクト系みたいなリズムトラックに、コードをかき鳴らすアコギが被さる辺りが、やはりミスチルらしいかな。曲調やバックトラックだけ取り出せば、完全にシリアスモードなのだけど、歌詞や唄い方はコミカルというか皮肉混じりというか。「殺人現場にやじうま達が暇潰しで群がる/中高生達が携帯片手にカメラに向かってピースサインを送る」‥‥日常によくある風景。しかし歌は続く。「犯人はともかく/まずはお前らが死刑になりゃいいんだ」‥‥ネガモード復活か!?とドキリとさせられるフレーズ。一瞬耳を疑う。が、ちゃんとオチは用意されている。「でも/このあとニュースで中田のインタビューがあるから/それ見てから考えるとしよう」改めて、桜井というストーリーテラーの狂気さを確認できる1曲。そう、ここには甘く切ない世界も、薄汚い世界も、全てが存在する。だからこその「It's a wonderful world」なのだから‥‥

M-10:UFO
  一転して、アップテンポのポップナンバーへと流れていく。中盤でのシリアスモードを経て、再びアルバムは甘美なモードへと移行していく。なんてことのない1曲かもしれないが、この1曲があるとないとでは大違い。演奏のテンションは改めて感心するばかり。気まずい雰囲気になったとき、場の空気を変えようとして空を見上げ「あ、あれあれ‥‥UFOじゃない?」‥‥なんて例え、歌詞に使おうなんて考えてもみなかった。このセンス、やっぱり好きだわ、俺(そして最後の「UFO来ないかなぁ」ってフレーズも)。

◎M-11:Drawing
  シングルレビュー参照。ここにきてやっとバラードらしいバラードが。ミディアム~スロウナンバーが中心だった「Q」と比べると、曲数も多いし収録時間も過去最長(約70分!)なのにも関わらず、全くダレた印象を与えないこのアルバム。1曲1曲の完成度が高いのもあるのだけど、やはり今回は曲の配置や構成・バランスにとても気を遣ってるように思える。長い分、飽きさせないような作りにしたんだろうけど‥‥ホントにベスト盤みたいな流れだな、これ。

◎M-12:君が好き
  シングルレビュー参照。バラード2連発。しかも究極のバラード。この位置に持ってこられると、やっぱりググッときちゃうんだよね‥‥切ねぇなぁ‥‥恋したいなぁ‥‥(涙)

◎M-13:いつでも微笑みを
  アナログレコードのようなノイズに乗って流れ出すシンセが、何だかポール・マッカートニーの"Wonderful X'mas"みたい。口笛も気持ちいい、軽快なナンバー。しかし唄い出しが凄いな‥‥「狭い路地に/黒いスーツの人達/急な不幸がその家にあったという/命は果てるもの/分かってはいるけど」って‥‥だから、そういう時にこそ「いつでも微笑みを」ってことなのだけど。「DISCOVERY」における"Simple"のような比喩のセンスが桜井らしいや。

◎M-14:優しい歌
  シングルレビュー参照。全てはここから始まったのだ。昨年夏のツアーでも一番最後に演奏されたのが、この曲。何度聴いても、この曲の力強さには胸を打たれるばかり。

◎M-15:It's a wonderful world
  3曲目"Dear wonderful world"のバージョン違いといえる1曲。2曲でひとつといった感じなのだろう。あちらが機械的だったのに対し、こちらは躍動的というか肉感的。向こうが皮肉混じりに「Dear wonderful world」と唄っていたとするなら、こちらからは「それでも世界は素晴らしい」という前向きさが強く滲み出ている。この「正も負も飲み込んで、吐き出して、消化して、それでも僕らは進んでいく」‥‥これこそがMr.Children、そして桜井和寿という人間なのだと再確認。そう、「深海」だろうが「Q」だろうが、全て一貫しているのだ。


◎最後に

  面白いことに前作「Q」レビューの内容は、その後のインタビューでの発言で、俺が予想してたようなことを桜井自身が当時考えていたことと見事に一致していたことが判った。「Q」でのソングライター桜井の成長、相反するように伸び悩むバンド、そして解散まで考えたこと等‥‥面白いように当たった。ならばまた予想してみよう‥‥夏のツアー開始前後に、新曲が出るだろう、そう、アルバム未収録の新曲が‥‥ってこれは桜井が既に雑誌で「早くも新曲が出来て、4月にスタジオに入る」って言ってたのを受けてですが(苦笑)。ということで、このアルバムのツアーは7月からスタートし、小~中規模のホールを中心に10月まで回り、その後11~12月にツアーファイナルとしてアリーナクラスの会場を回る、久々の長期間、大規模なツアーとなる。現時点で35公演前後が発表になっているが、間違いなく追加公演が出るだろうから、都合45公演前後か‥‥数にしたら「DISCOVERY」のツアーと同等か(42公演)。で、改めて‥‥きっと次のアルバムは、俺らが考えている以上に早い時期に発表されるんじゃないかな? 今のミスチル及び桜井を見ていると(そしてこのアルバムを聴くと)、何かツアー中にリハーサル重ねて新曲をバンバン作っちゃいそうなイメージがあるんだが‥‥ツアー中にアルバム制作‥‥案外、今回のツアー中盤辺りでは出来たての新曲をライヴで演奏してたりして。それくらい今のミスチルからは「なんでもあり」的空気と勢いを感じる。そう、「ハヤブサ」で完全復活したスピッツみたいに。そうなったら面白いのにな‥‥

  このアルバムを初めて通して聴いた時、俺はあるバンドのあるアルバムを思い浮かべた。それはU2の「ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND」。U2も紆余曲折ありながら、このアルバムで完全復活したと言っていいし、アルバム全体に漂う温かみも両者に共通する。デビュー10周年と20周年というキャリアの違いはあれど、実は共にそういう時期に来ていたのかもしれない。学生時代の友人が作った4人組バンド、一切のメンバーチェンジなし、共通点は幾らでも挙げられる。そう、ミスチルがU2を愛しているという点も。だから似てしまうのかな‥‥

  時期的に、ナンバーガールのアルバム「NUM-HEAVYMETALLIC」という傑作とどうしても比較してしまうが、そんなのナンセンスなのは百も承知だ。が、共に今のロックシーンを象徴する名盤/最高傑作を作り上げたという点では共通するものがある。乱暴な例えだが、ナンバガのアルバムをジョン・レノン的とすると、このミスチルのアルバムはポール・マッカートニー的、いや、ジョージ・ハリスン的ではないだろうか? とにかく、今日本のミュージックシーンは最高に面白い。アンダーグラウンドからはdownyのようなバンドが台頭し、メジャー(レーベルではなく、一般認知度の意)に切り込もうとする予備軍からナンバガやROSSOのようなバンドが孤軍奮闘し、トップクラスのメジャーバンドであるミスチルがこんなにも力強い「肯定」のアルバムを発表する。かと思えばアイドルが「そうだ!We're ALIVE」みたいな爆裂ナンバーを平気な顔してリリースするんだから‥‥

  というわけで、ナンバガを5月のオススメ盤として推したばかりだが、急遽このアルバムと2枚一緒に推すことにした。両方を楽しめる人ばかりじゃないのは重々承知だが、気になった人は騙されたと思って聴いてみて欲しい。「いい曲ってなんだろう?」という命題の答えは、この中に詰まっているのだから。



▼Mr.Children『IT'S A WONDERFUL WORLD』
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投稿: 2002 05 10 11:10 午後 [2002年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2002/05/08

Mr.Children『君が好き』(2002)

  ドラマの挿入歌としてリリース前から流れていたので、多くの人が「あれは何て曲!?」って興味を持ったことだろうこの曲。リリース自体はドラマが終わった後だったにも関わらず、タイミングが良かったのか(2002年1月1日リリース。今回は年末年始テレビに出まくったからね)それでも50万枚以上ものセールスを記録。これはドラマ云々以上に、そうシンプルに「楽曲の良さ」が評価されたのだと俺は思っている。

  ミスチル久々のラブ・バラードってことで、多くの人が待ちわびた楽曲が遂にリリースされてファンのみならず大喜びだったのではないかな? 俺もそのひとりで、ここまでシンプルな作風で(バックの音像が「KIND OF LOVE」~「Atomic Heart」の頃を彷彿されるアレンジ)ストレートに「君が好き/僕が生きるうえでこれ以上の意味はなくたっていい」と桜井に唄われれば、誰だって心揺らぐはずだ。そう、男の俺でさえ。ここまで直球勝負が出来るようになったのも、やはり心の底から納得のいく曲が書けた、変な拘りや虚勢がなくなったってことなのかもしれない。これは巡り巡って一回りしたというよりも、やはり全てを包括する程に大きくなったということなのだと思う。

  以前、「ミスチルは以前程のセールスを記録出来なくなったので、仕方なしにシングルで過去の作風を踏まえた曲を出してる」みたいなアホな意見を目にしたことがあったが、そんなのナンセンスだろう。今となってみれば、確かに"口笛"辺りにはそんな空気を感じなくもないが(まぁこれもセールス云々ではなくて「周りが求める自分達」に素直に応えてしまった結果だが)、この2作‥‥"youthful days"と"Drawing"、更には"君が好き"は過去の焼き直しに留まった楽曲だろうか? いや、そんなわけないのは普通の耳と感性を持ったリスナーなら判るはずだけど(これって暴言になるんですかね? いやね、すぐこの手の発言に食いつく暇な方がたまにいらっしゃるんで)。

  今回の新曲群は確かに初期の潤いと同等のものを感じることが出来る。と同時に、活動再開後、「DISCOVERY」以降に発表してきた楽曲群とも地続きで生まれていることも感じ取れる(実際、最近友人のために「DISCOVERY」以降の楽曲とこれらのシングル曲をシャッフルして収録したCD-Rを作ったが、特に違和感は感じなかった)。つまり、これはバンドという「生き物」の、とても素晴らしい成長例なのではないだろうか?

  そして、ミスチルは何も以前のシリアスな顔を捨ててしまったわけではない。 c/wでは"さよなら2001年"という、ニューヨーク同時多発テロ以降に書かれた曲も収録している。坂本龍一監修の「非戦」という本にこの曲の歌詞がリリース以前に掲載されたが、社会派バンドのようになりつつあった中期ミスチルの顔はここにもまだ存在する。ただ、あの頃のようにささくれ立った音や言葉はここにはなく、普通に日常を暮らす我々レベルの歌詞が連ねられている。

  タイトル曲で甘い汁を吸わせ、c/w曲で日常の苦みを味わせる。このバランス感が今のミスチルを物語っているようで、本当にいいシングルだなぁと実感。「NOT FOUND」の時にあのシングルを「ミスチル史上、最強のカップリング」と俺に言わしめたが、今回もそれに匹敵する2曲だと思う。



▼Mr.Children『君が好き』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2002 05 08 12:05 午前 [2002年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

Mr.Children『youthful days』(2001)

  2001年8月末にリリースされた「優しい歌」に続く、同年11月リリースの通算21枚目のシングル。c/wには同じくドラマ内でも使用された"Drawing"を収録。

  とにかくね‥‥最初にこの曲をテレビのCMで(サビのみだけど)聴いた時の衝撃といったら‥‥これがミスチルかよ!?っていう驚きの方が大きかった。いや、そんなに意外性のある曲ってわけでもないんだけど、とにかくこれまでにないようなメロディの持ってき方にまずヤラれたわけ。そうね‥‥ラルクが"winter fall"をリリースした時みたいなインパクト? あんなパンチを食らったわけですよ(そういえば、互いに曲のタイプが何となく似てない?)

  で、いざフルコーラスで聴いた時‥‥多くの人が「ミスチル完全復活!」と叫んだと思うんだけど(いや、俺も最初はそう感じたんだけど)‥‥それ以上に「更に高いとこへ行っちまったな、こいつら‥‥」っていう気持ちの方が強かった。演奏のテンションの高さはある意味、前作「Q」に匹敵する、あるいはそれ以上にも関わらず、メロディやボーカルパフォーマンスのいい意味での肩の力の抜け具合がかなり絶妙。確かに、多くの人がイメージする「KIND OF LOVE」や「Atomic Heart」の頃の質感が戻ってきてるように感じられるが、実はもっと先へ行ってるという。計算なのか、本気で自然体なのか判らないけど、「Q」では「聴き手が求めるイメージを敢えて与える」的空気が感じられたけど、ここではそれが皆無だということ。この辺りが今のミスチルの強みなんじゃないだろうか?

  それは同じc/w曲"Drawing"にも感じられることで、この曲こそ「KIND OF LOVE」に入ってたとしてもおかしくなさそうなイメージなのに、実はかなり復活後のミスチ ル的構造を持った楽曲と捉えることもできる。作為性を感じさせない、本当に生き生きとした楽曲。これは前作では少しズレが生じてきていた「ソングライターとしての桜井」と「バンドとしてのミスチル」がようやくここにきて再び混じり合ったということなのかもしれない。バンドは1年間に二度のツアーを経験することで、またその勢いのまま休みなくスタジオ入りしたことで、更に一体感を掴むことが出来たのだと思う。そういう意味では、「優しい歌」以降の楽曲というのは全て、アマチュアバンドに戻ったかの心境で作り出された歌なのかもしれない。ここ数作の楽曲が桜井というソングライターが生み出したものに肉付けしていく手法で作られたのと違い、今回は桜井が持ってきたラフなアイディアに対し、全員が一丸となってまとめあげるという形‥‥いや、これはあくまで俺の想像でしかないんだけど。そんな印象があるな、この一連の作品には。

  歌詞に目を向けても「表通りには花もないくせに/トゲが多いから/油断していると刺さるや」とかいろいろ深読みできる箇所があるんだけど‥‥今回はそういう読みはやめてみた。つうか、この曲はそのタイトルにも表れているように


「I got back youthful days」


ここに最後は終着すると思うんだな。けど、俺的には「I got back~」というよりは


「I finaly got youthful days」


な気がする。だって、これまでのミスチルって(初期も含めて)いい意味でも悪い意味でも全てが「意識的に/作為的に」っていう面が感じられたんだもん。けど、今回は本当に「natural」なものを手に入れた。それが上のようなアマチュアバンド的なものなのかも‥‥って俺は思うわけです。

  正直な話、"優しい歌"と"youthful days"と"Drawing"、この3曲だけで「今度のアルバムは久々の超名作になる!」って確信した。まだ去年の11月の時点でさ。



▼Mr.Children『youthful days』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2002 05 08 12:00 午前 [2001年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2001/10/24

ジョンレノン音楽祭@さいたまスーパーアリーナ(2001年10月9日)

  今更という感じだが、先月行われた「ジョン・レノン音楽祭」、通称・レノン祭りについて、俺なりの感想、そして「カヴァー」について思うことを綴っていきたいと思う。


◎オープニング<吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)、ゆず、押葉真吾>

  1曲目は何か?という予想を同行したsuzukiくん、れいくさんとしていたが、誰かが予想した通り"Come Together"だった。基本的にはカヴァーというよりも、コピー。いや、ギターなんてまんまだった気が。ドラムには元JUDY AND MARYのコータさん、キーボードにはモーニング娘。のデビュー時のアレンジ等を手掛ける桜井鉄太郎氏等、豪華なメンツ。

  メインはロビンが、時々ゆずの二人と分け合いながら唄う。イエモン休止前よりも声が艶やかな気がするのは会場の音響のせいだろうか? ゆずは相変わらずいい仕事してる。特に目新しいアレンジもなく、淡々と終わる。


◎押葉真吾

  ビートルズのファンクラブ主催コピーバンドコンテストの優勝者だそうだ。要するにアマチュアに毛が生えたセミプロといったところだろうか。特にビートルズに誰に似ている(似せている)といったわけでもなく、まぁよくある「ビートルズを極め続け、気づけば結構な歳になってた」オヤジの典型なような‥‥(もし俺より若いんだったらスマン、謝るよ/笑)

  オープニングでもベース&ボーカルで出ていたが、今日の出演者の中では最も真っ当な「コピー」を聴かせる、悪く言えば最も華がない存在だった。トップバッターってことで、これはこれでよしかな?


◎ゆず

  最初、たった二人でギター抱えて登場し、ドーム公演以降のスタイル(たった二人の弾き語り)で行くのかと思いきや、途中からバンドが加わり、至極真っ当なコピーを聴かせる。ゆずとビートルズというのも何となく繋がらなかったのだが、まぁビートルズに影響を受けてないアーティストなどいない、ってことか? "Don't Let Me Down"はまぁゆずらしいかな?と思ったが、他は特に彼らがやる必要が感じられない選曲だったように感じた。けど、"All You Need Is Love"なんかは彼らがやらなきゃ他にやる人が今日のメンツの中にはいなかったので、これはこれでいいのかも。彼らによる日本語詞が「いかにも」なものだったのが、そしてメドレー形式でそのまま"Happey birthday, dear John!"と続いた辺りが微笑ましかった。


◎白井貴子

  俺世代の中には、中学生の頃に彼女を通過した人がいるのではないだろうか? かくいう俺もそのひとりで、山下久美子や中村あゆみといった「女性ロッカー」の第一人者としての認識がある。勿論、ここ数年はロックというよりもフォークやニューミュージック色が強い音楽性なのも知っていた。だからこそ、その彼女がどういう選曲をしてどういうアレンジを施すのかが気になっていた。

  "Love"を選んだのは少々意外だった。女性がこの歌を唄うと、また違った見方ができることに気づかされた。基本的には長年連れ添ったギタリストとの二人でのステージ。アコースティックメインということもあってか、アメリカンフォークっぽいイメージ‥‥キャロル・キングとかリンダ・ロンシュタットといった人達をイメージさせるアレンジだった。もっとも、バンドが加わると急に真っ当なコピーへと早変わりしてしまうのだが。


◎和田唱(TRICERATOPS)

  ここまではゆったりとした、和やかな空気感で進んできたが、いきなり「Woh~Yeah!」っていう、あの雄叫びが(笑)。和田はバンドを離れようが「トライセラトプスの和田唱」のままだった。選んだ"Instant Karma"もまた彼らしい選曲、そして彼にピッタリだった。"I Am The Walrus"はこの夏に2度‥‥OASISとPEALOUTのカヴァー‥‥聴いているが、和田には悪いがごく普通だった。思った以上に盛り上がらなかったし(フジやひたちなかでは、お約束の如く「フゥ~♪」って息が合ってたのに)。


◎和田唱、奥田民生

  これまで各アーティスト3曲ずつだったので、ここで和田も引っ込むのだろうと思ったら、エレキをアコギに持ち替えて、もうちょっとやりそうな感じ。ファンならご存じの「中学生の頃、買ったばかりのギターの弦が切れて渋谷の楽器屋に買いに行ったら、そこにユニコーン時代の民生がいた」という話。つうわけで、ここで奥田民生登場。大歓声。けど民生、マイペース(笑)。この人はどこでも、どんな舞台でも(フジロックでもひたちなかでも)気負いすることなく、本当にマイペース。そこがカッコイイんだけど。

  ちょっと前に山崎まさよしと民生の1日限定ユニットが話題になったが、さしずめこれは「和田奥田」といったところだろうか? 演奏されたのが、特にふたりで唄う必要も感じられない"You've Got To Hide Your Love Away"だったのは如何かと思うが‥‥


◎奥田民生

  で、その民生。何をやるのかが非常に期待されたところだが、まぁシングルのカップリングでカヴァーしてる"Hey Bulldog"はやるだろうとは思ってたけど、それ以外の2曲も"I'm Only Sleeping"と"She Said She Said"という、3曲全て中期ビートルズという拘り方(って拘ってたのか?)。他のどのアーティストにも言えることだが、ビートルズ初期のロックンロール時代かソロ以降に逃げてるような気がしてならなかった。ジョンが覚醒し出した‥‥「RUBBER SOUL」以降の楽曲を選ぶ人が少なかったように思える。個人的には奇をてらって"Tomorrow Never Knows"や"Lucy In The Sky With The Diamonds"辺りを選ぶ奴がいてもいいと思ったのに(特に桜井辺り)‥‥

  まぁそれはともかくとして、とにかくこの日の民生は頼もしかった。すっげー気持ちよかったし。この人の場合は下手にいじくり回すよりも、真っ当なカヴァーの方が合ってるようだ。


◎ムッシュかまやつ、押葉真吾

  ジョージ・マーティンとリンゴ・スターからのメッセージ・フィルムが上映された後、いよいよ後半戦に突入となった。御大・ムッシュかまやつの登場だ。

  が‥‥悪いけど、失望した。リハ不足が目に見て明らかなのだ。たった2曲、シンプルなロックンロールを選んだにも関わらず、歌詞はうろ覚え(というよりも、ムニャムニャと誤魔化す)‥‥それがロックンロールだというのなら、そんなもん糞食らえだ。ここにいる2万人近くのオーディエンスは、自分目当てではない。ゆずやロビン、桜井のファンであったり、ただ純粋にビートルズやジョンの名曲をいろんな有名アーティストが唄うのを楽しみにしてきた音楽ファンなのだ。この行為は正直、そういったお客を舐めてるとしか思えなかった。「ムッシュクラスはそこにいるだけでいい」っていう庇護の声もあるかもしれない。けど、この日の俺はそういうのを求めていたわけじゃないので。何か押葉バックに合いの手を入れるムッシュが、頼りないキース・リチャーズのように見えた‥‥勿論あそこまでの存在感は皆無だったが。へっ、曲の評価!? そんなの覚えてないよ。ただ気分悪かった‥‥


◎吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)

  口直しには豪華すぎる、ロビンの初ソロステージ。ひとりだと心細いのでベースを連れてきた、と言った途端に大歓声。みんなヒーセだと勘違い。俺もてっきり勘違い。何のことはない、現在活動を共にしているベーシストだった。

  "Be Bop A Lula"のようなシンプルなロックンロールを唄うロビンってのも意外と美味だった。続くジョンのソロ2曲は‥‥特にどうってことのない演奏。ただ、"God"の前のMCが邪魔だった。そしてこの曲を選んでしまった彼のエゴも。それだったらまだ、デヴィッド・ボウイとジョンの共作曲"Fame"をやってくれたほうが、彼らしくてよかったのに。


◎Acid Test(小林武史、桜井和寿、田原健一)

  さて‥‥この日最大の問題となったAcid Test。恐らくこの日限りのユニットなのだろうけど‥‥小林がキーボードとサンプリング、桜井は歌のみ、田原はリバーブのかかりまくったギターをかき鳴らす。それに加え、ストリングスが数名。演奏されたのは"Mother"1曲のみだったが、これが他のアーティストの3曲分くらいの演奏時間だった。環境音楽というか、テクノというか‥‥とにかくユニット名の通り、小林武史の実験室といった感じで、桜井と田原はそれにつき合わされてるといったところか。正直、桜井の「色」はあまり感じられなかったし。ただ、歌は相変わらず凄いと思ったけど。

  この日、殆どのアーティストが完全コピーに近い形だったのに対し、このユニットのみ「解体~再構築」カヴァーを行っていた。桜井は歌メロをかなり崩して唄っていたし、それなりの拘りのようなものは感じ取れた。まぁ(ミスチルがあんなに順調な活動をしてるのを見ると)今後続くとは思わないので、小林くんのお遊びにつき合ってあげました、って事でいいのではないだろうか?


◎オノ・ヨーコ from NY

  直前になってニューヨークに残ることを決めたヨーコ。衛星中継くらいあるだろうと思っていたら、予想通り。歌こそ唄わなかったものの(まぁ最後のオールスターズでの時は口ずさんでたけど)、この時が一番ググッときたな、俺は。このライヴの計画を立てた時、そして我々に発表した時はまさか世界情勢がこんなことになってるとは、夢にも思わなかっただろう。そしてジョンの誕生日の数日前に、アメリカの報復攻撃が始まることも。皮肉っちゃあ皮肉だが‥‥


◎出演者勢揃い

  最後は出演者勢揃いで"Happy X'mas (War Is Over)"を大合唱。ってみんなカンペ見ながらだけど(苦笑)。そのまま"Real Love ~ Give Peace A Chance"というメドレーへ。俺は帰りの都合があり、結局"Give Peace A Chance"に切り替わった辺りで会場を後にした。駅で電車を待っている間に、会場から"Imagine"がうっすらと聞こえてきた。やっぱり最後はこれか‥‥


◎総評

  バンドでの出演者が殆どなく、どのアーティストも固定バックバンドに合わせて唄ったりギターを弾いたりしていた。そのバックバンドも皆、有名なセッションミュージシャンだったこともあってか、オリジナルに忠実に演奏していた。ビートルズの曲はそれらしく、ジョンの曲は雰囲気を損なわずにそれらしく、と。それはそれで素晴らしいことだと思うのだが、やはり俺は先にも書いたようにAcid Testのような「解体~自分なりに再構築」したカヴァーを聴きたかった。まぁこんなもんだろうとは思っていたが‥‥それにしてもLOVE LOVE ALL STARSでも、もっと自分流のアレンジや演奏をしてたんじゃなかろうか? 良心的と捉えることもできるが‥‥やっぱり「コピー」と「カヴァー」は別物だと思うし。端から「完全コピー」を謳い文句にしてるなら文句言えないけど。

  どのアーティストも個々の活動の合間にリハーサルをしたんだろうけど、もしまたやるのなら今度は違った形態の「ジョン・レノン音楽祭」を開いてもらいたいと切に願う。


[SET LIST]
01. Come Together(吉井和哉、ゆず、押葉真吾)
02. Bad Boy
03. Cold Turky
04. Glow Old With Me(以上、押葉真吾)
05. Don't Let Me Down
06. Jelous Guy
07. All You Need Is Love ~ Happy Birthday To You(以上、ゆず)
08. Love
09. Watching Wheels
10. Mind Games(以上、白井貴子)
11. Instant Karma
12. Oh My Love
13. I Am The Walrus(以上、和田唱)
14. You've Got To Hide Your Love Away(和田唱&奥田民生)
15. I'm Only Sleeping
16. Hey Bulldog
17. She Said She Said(以上、奥田民生)
  ---message from George Martin & Ring Starr---
18. Little Child
19. I Should Have Known Better(以上、ムッシュかまやつ&押葉真吾)
20. Be Bop A Lula
21. I'm Losing You
22. God(以上、吉井和哉)
23. Mother(Acid Test)
  ---message from Yoko Ono in NYC---
24. Happy X'mas (War Is Over)
25. Real Love ~ Give Peace A Chance(出演者全員)
  ---encore---
26. Imagine(出演者全員)

投稿: 2001 10 24 12:00 午前 [2001年のライブ, John Lennon, Mr.Children, TRICERATOPS, ゆず, 吉井和哉, 奥田民生] | 固定リンク

2001/08/31

MR.CHILDREN : TOUR "POP SAURUS"@千葉マリンスタジアム(2001年8月25日)

  3週間前に観た「ROCK IN JAPAN FES.」での勇姿が忘れられず、断念していた今回のツアーを結局観ることにしてしまった‥‥ダメな俺(苦笑)。さぁ、30代突入後、最初のライヴだ‥‥最初のライヴがミスチルってのも、何か‥‥いや、いいんです。

  当日は16時開場、18時開演ということもあり、また家から電車で行くよりも車で行った方が時間的にも早いし気持ち的にも楽なので、12時過ぎに家を出て14時過ぎには幕張に到着していた。14時半には千葉マリンスタジアム前に到着し、とりあえず誘った友人と15時半にマリン前で待ち合わせしていたので、それまで会場周辺でボーッとすることにする。場内からはサウンドチェック&リハーサルの音が聞こえる‥‥あっ、"抱きしめたい"だ‥‥桜井、手を抜いて唄ってるなぁ、やっぱり(笑)。それを聴きながらパンフレット(今回は2種類あって、5000円の写真集+αと、3500円の写真+10年間総括個別インタビュー。当然3500円の方を購入)とツアーTシャツを購入。飲み物を片手にリハの音に耳を傾ける。"Dance Dance Dance"、"深海"、"Hallelujah"、"花"、"独り言"、そして"優しい歌"‥‥最後まで通しで演奏されたものもあれば、ワンコーラスのみ確認ってのもあった。笑ったのが、"Hallelujah"のエンディングのコーラス部(「ハッハレッハレッハレェ~ルゥ~♪」ってとこ)に乗せて"花"のサビ(「負けないようにぃ~枯れないようにぃ~♪」ってとこ)を唄う桜井。リハ特有の冗談なのだろうか?(笑/過去にも"Everything (It's you)"のサビでウルフルズ"バンザイ!"を唄った経験の持ち主だけに‥‥)

  そうこうしてたら、友人から着信が。久し振りの対面を果たし、そのまま幕張ショッピングモール街へと出向く。CD屋があったので、俺は地元で売ってない品物を手にし、その後軽く食事をする。再びマリンには17時過ぎに戻り、友人はビールを、運転して帰る俺はジュースを片手にしばし歓談。

  今回のステージセットは、「regress or progress」ツアーのものに比較的似てるかもしれない。ステージ左右には大型スクリーンがあり、その両脇には恐竜の骨。ステージ中央にも後方にスクリーンがあり、やはりその両脇に肋骨のようなものが床から突き出ている。天井には今回のツアーTシャツにも描かれている恐竜の、首から背骨にかけてがぶら下がっている。恐竜の頭蓋骨は顔と判るような代物ではなく、どことなく花のつぼみのような形をしている(これが今回のポイント。つうか俺、いい読みしてたよな?)。開演まであと15分というところで、大型スクリーンにアニメキャラのような猿が現れる。顔だけドラムのJENで(実写)それにサングラスをかけさせ、それ以外が猿。そいつがツアーグッズの説明をしたり、公演中は携帯はOFF!とか注意したり、客を煽ったりする(笑)。最近、ステージ上でのMCコーナーがなくなったJENだけに、ちょっとだけ嬉しかった(笑)。

  さて、開演時間を8分程過ぎた頃、スタジアム内の照明が消え、大歓声。スクリーンには「MR.CHILDREN : POP SAURUS」の文字が‥‥それはオルゴールの蓋に書かれたものだった。どうやらオープニングで、大がかりなCGを見せる演出のようだ。オルゴールからは"優しい歌"が流れる‥‥そして場面は変わり、博物館。例の恐竜の骨が展示してあり、そいつが動いて逃げ出す。そこからは過去のミスチルを振り返るような演出。アルバム「BOLERO」のジャケ絵が展示してあり、その絵の中に飛び込む‥‥向日葵の花が風にそよぐ‥‥場面が変わり、青バックに化学式が‥‥そう、「Atomic Heart」だ。そこからひたすら大地を進み、石油の採掘機が(「DISCOVERY」)。恐竜は大地を走り回る。そして採掘している穴へ飛び込み、そのまま場面は海の中へと‥‥深い深い海の底にたどり着くと、そこには椅子がひとつ(「深海」)‥‥そして海から上がると、潜水服の頭部が4つ(「Q」)‥‥ここまで約10分(苦笑)。長い、長いってば‥‥最初は大歓声で応えていたファンも、途中で飽きていたようだし‥‥この映像の後、シンセの音と共に大歓声が‥‥ステージ上にはアコギを抱えた桜井が。ストリングス系のシンセに合わせ、ギターをかき鳴らし、そしてそれはあるフレーズへと続く‥‥「やがて全てが散りゆく運命にあっても~」そう、"花"である。いきなり"花"のアコースティックアレンジだ。その後サビへと続き、大合唱で応える俺達。ちょっと鳥肌立ったね。

  そして、他のメンバーがぞろぞろとステージ上に現れる。桜井はアコギを持ったまま、聞き覚えのあるフレーズを‥‥おお、頭から"I'll be"かよ! しかもアルバムバージョン。セットリストは既に知っていたのだけど、やはりこうやっていざ直面すると、やはり我を失いかけるよ。今日の桜井は青いTシャツの上に同じ色のシャツを羽織っている。下はいつもの黒皮パン。この日の幕張は開演前から曇りだし、今にも雨が降りそうな感じだった。まだ日は完全に落ちていないものの、今にも暗くなりそうな空気の中で聴く"I'll be"に、思わず涙しそうになる‥‥いきなりかよ、俺(苦笑)。観客もド頭から大騒ぎしたかったに違いないだろう‥‥けど、いきなりこんな鬼気迫る演奏を聴かされて、言葉も出ないようだ(って俺もだけど)。

  続いて同じ「DISCOVERY」から"ラララ"を披露。これまでの3曲は前回のツアー「Q」では演奏されなかったものばかり。2年振りとはいえ、何か前とは別の曲を聴いてるような感じがする。やはり室内と野外の違いだろうか? こういうポップでフォーキーな曲は、野外の方が合ってる気がする。当然エンディングでは大合唱となる。今日の桜井、笑顔が素敵だ。

  少しの間を置いてから、あの流れるようなスライドギターの音色が‥‥何と、ファーストシングル"君がいた夏"だ‥‥確か最後にプレイしたのは前回の夏ツアー「空」以来だから‥‥丁度6年振り、「深海」以降は演奏してないことになる。こういう曲を(例えそれがベスト盤のプロモーションとはいえ)サラリと、しかも笑顔で楽しそうに演奏してしまう今のミスチル、恐るべし。とにかく桜井の笑顔が眩しすぎる。この曲辺りからようやくスクリーンに桜井のアップが映されるようになったのだが、みんな桜井のアップになると「キャー♪」だもん。判るよ、その気持ち(笑)。

  続けて初期の名曲"LOVE"の登場。いいのか、ここまで勿体ぶらずに披露しちまって!?って位に笑顔。この曲辺りになると、お約束ともいえる「動き」(手扇とか)があるのだけど、どうもいまいち客の動きに統一感がない‥‥要するに、ベスト盤以降、或いは「DISCOVERY」以降のファンが多く詰めかけたってことだろうか? いろんな意味で旧曲での客のリアクションが新鮮だった。

  そしてベスト盤から初期名曲3連発の"星になれたら"。アコギを置いた桜井は、右へ左へと動きまくる。走りながら唄うもんだから、そりゃ息も上がる。けど、今日の桜井も別段コンディションが悪いとは感じない。むしろここ最近の「調子良さ」が続いてるように思える。さすがに初期のポップな歌が続くので、笑顔も絶えない。ひたちなかでの狂気じみた表情が嘘のように‥‥

  ここにきて、ようやくMCが。「今日は日が暮れるのがいつもより早かったので、みんなの表情がちゃんと把握できてなくて、どういう感じになるんだろうと思ってましたが‥‥大体把握できました(笑)。ちょっと手を抜いていこうと思います(笑)」要するに、客のリアクションが思った以上だったので、あんまり熱くやらなくてもいいよね?って意味だろう。そしてこの日の模様もビデオシューティングしているそうだ。「インターネットの、覗きページにアップして‥‥おっと、下品な話をしてしまいました(笑)」とギャグをかました後に「何らかの形で発表されると思う」と言っていたので、前回のツアー「Q」同様、ビデオ&DVDとして年末辺りにリリースされる可能性大だ。初期の曲のライヴ音源って意外と少ないから、これは喜ばしい限りだ。

  そしてMCに続いて、静かめの曲が続けて演奏された。セカンドアルバム「KIND OF LOVE」からのバラード2曲、"車の中でかくれてキスをしよう"と"抱きしめたい"だ。特に前者は'97年2月に横浜アリーナで聴いて以来だったので、とにかく嬉しかった。あの頃の「力尽きつつある桜井」によるものと今の桜井が唄うものとでは、全く印象が違った。全てを包み込むような包容力‥‥あの頃の桜井に足りなかったもの、それはこれだったのかもしれない。そしてそれは、同じく"抱きしめたい"でも感じたことだ。前回(2月)に聴いた時よりも、ずっと優しい空気感がステージ上にはあったような気がする。とにかくこの2曲で、完全にオーディエンスの心を掴んでしまったようだ。

  バラード2曲が終わり、再び照明が消え、場内にインダストリアル風効果音が流れる‥‥そしてそれがカメラのシャッターを切る音に変わっていく‥‥アルバム「Atomic Heart」冒頭を飾るS.E."Printing"だ‥‥ということは‥‥あのエフェクトがかかりまくった、印象的なリフが静寂を切り裂く。そう、"Dance Dance Dance"だ。ドラムが入るところでパイロ(花火)が上がる。おお、今回のツアーはマジで大がかりだ。いつの間にか羽織っていたシャツを脱いだ桜井は、ここでも右へ左へと大忙し。「今夜もひとりLonely Play」という歌詞の所では、マイクを股間に当て、アレに見立てて擦りまくる(笑)‥‥キャーキャー騒ぐ婦女子達‥‥って俺もだが(笑)ってこれ、ツアー「DISCOVERY」でもやってたの、こないだのDVDを観て初めて気づいた。

  そして勢いをそのまま引き継ぎつつ、同アルバムから"Round About ~孤独の肖像~"へ。ドーム公演以来だから、4年半振りの演奏か? ソロパートが本来サックスなのだけど、上手いことキーボードで対応していた。けど、この曲の時だけ反応が弱かった気がしたのは、俺だけだろうか? 今回のツアー、ベスト盤に伴うものだけど、内容としてはそれオンリーというわけではなく、むしろミスチルの10年を総括するような内容となっている。だから演奏されないシングルヒットもあれば、アルバム中の隠れた名曲も登場する。ベスト盤からの新規ファンが多いこともあるのだろうか? それにしても、最大ヒット作からの楽曲なのに‥‥まぁ俺はひとりノリノリだったが(隣にいた友人に呆れられたが/笑)。

  ここで再び照明が消え、S.E.が流れ始める。スクリーンにも何か薄暗い映像が映し出される。映っていたのは海の中のようだ。そして聞き覚えのあるバイオリンの音色‥‥ここから「ダーク・サイド・オブ・ミスチル」に突入というわけだ。CGは海の中を泳ぐシーラカンスが映し出され(ツアー「regress or progress」とは異なる映像)、そのシーラカンスに導かれるように、後ろには先程の恐竜の骨が‥‥青白い照明がステージを包み、あの印象的なアコギのコードストロークが‥‥アルバム「深海」メドレーのスタートだ。まずは"シーラカンス"。ひたちなかで聴いた時のような衝撃はそれ程感じなかったが(免疫がついてしまったのだろうか)、スクリーンに映し出される桜井の表情はやはり鬼気迫るものがあった。しかもそれが白黒なもんだから余計だ。田原のギターが、ひたちなかの時よりも前々良かった。そういえば桜井、この曲でも歌詞間違えてたっけ‥‥さすがにシリアスな曲だから、笑って誤魔化すこともできず、新しい歌詞が誕生してたような‥‥(苦笑)。

  アルバム同様、エンディングをギターとピアノで引っ張り、そのまま"手紙"へと繋ぐ。歌詞を噛みしめながら唄っていると、ふと涙が‥‥まさかこの曲で泣くことになろうとは‥‥何か、ググッとキたんだよなぁ、何故かは判らないけど。俺の席の周りでは、この曲は大好評だったらしく、女の子も男の子も皆唄っていたのが印象的だった。曲が終わった時の拍手も盛大なものだったと記憶している。
  ピンと張りつめた空気を切り裂くかのようにJENのドラムがスタートし、その上に桜井がアコギを被せる。ひたちなか同様、"マシンガンをぶっ放せ"だ。この曲の時は後半、スクリーンに風刺的アニメが流され、それまでとはちょっと違った空気を放っていた。そして最後のサビの時には歌詞がスクロールして、更にその空気感を強調していた。前半のピースフルな流れがまるで夢だったかのように(そういえば、ここで引いてる若い女の子が多かった気が)。

  この後"ニシエヒガシエ"~"光の射す方へ"という、まんま「ROCK IN JAPAN FES.」と同じ流れが続く。特に目新しい要素はなく、せいぜい"光の射す方へ"ラストの花火くらいだろうか? ここまでの5曲の流れだけで言ったら、個人的にはひたちなかの方が上だったように思う。

  そして「深海」メドレー(間にそれ以外の曲も挟んだが)最後を飾るのは、"深海"。個人的にはアルバム中それ程印象に残った方ではないのだが、こうやって楽曲単体として聴いてみると、やはりいいんだわ。特に後半の盛り上がるパートにくると、何かこう、ググッとくるものがあった。ドームで最後に聴いた時とは全く別次元の感動がそこにはあった。曲が終わるとオーディエンス、大拍手。きっと初めてこれらの曲を聴いた人も多いんじゃなかろうか?

  曲が終わってもキーボードとギターが怪しい和音を奏で続ける。そして、ひたちなかでも3万人を湧かした、あのピアノのフレーズが‥‥"Tomorrow never knows"である。当然ここマリンスタジアムでも大歓声が上がる。そしてイントロのリズムに対して、あの手拍子‥‥それだけはやめてくれ(怒)。しかし、さすがに桜井が唄い出すとみんな聞き入ったのか、自然と静かになる。活動休止前の「痛みを伴った表現方法」もググッとくるものがあったが、やはりそれら全てを踏み越えた今の方がより説得力がある。自然と目頭が熱くなりやがる‥‥畜生。事前にひたちなかのレポートを読んでいた友人は、俺の顔を覗き込んでニヤニヤしてやがる(苦笑)。やっぱり何時聴いても名曲だと思う。300万枚近いセールスは、決して伊達じゃないと思う。上昇気流が後押しした結果とはいえ、それだけじゃこんな数字は出せないはずだ。ロックとかポップとか、そういう次元を超越した単純に「いい曲」‥‥それで十分じゃないか?

  エンディングから続くように、あの印象的なゴスペル隊のコーラスが‥‥"hallelujah"だ。いよいよクライマックスに突入。スクリーンに教会のステンドグラスのようなカラフルな画像が映され、神聖な空気が流れ始める。前回のツアーでは半音下げだったが、今回はノーマルチューニング。かなりキーの高い曲だが、そこまで辛そうな印象は受けなかった。前回のツアーで聴いた時よりも、ずっとずっとググッとくるものがあった。何もそれはチューニングだけのせいではないだろう。新曲も初期の曲も同じ視点で表現しようとする今回のツアーだからこそ、成せた結果なのかもしれない。2月に観た時は全然だった後半のオーディエンスによるコーラスワークも、今回はバッチリだった。「Q」から演奏されたのはこの曲だけだったが、そこに他意はないだろう。「Q」は前回散々やったから。問題は次のアルバムに伴うツアーだ。あのアルバムの曲をどのように散りばめるのか、そして来るべき新作はどういう作風になるのか、非常に気になるところだ。

  エンディングパートの「はっ、はれっ、はれっ、はれぇ~るぅ~」ってコーラスを観客に唄わせ、その上に「負けないようにぃ~/枯れないようにぃ~」と"花"のサビの歌詞を乗せていく。なるほど、開場前にリハしてたのはこのパートだったのか‥‥遊びじゃなかったわけね?(苦笑)するとスクリーンいっぱいに向日葵の花が映し出され、天井にあった恐竜の頭蓋骨がパカッと口を開き、更にもうひとつ中にあった口もクロスするように開き、それがまるで花びらのように十字を描く。そう、恐竜は最後に花へと変わった。中からは赤い光を放つ‥‥冒頭で書いた通り、俺の読みが当たったのだった。というわけで、本編最後の曲は"花"のリアレンジバージョンだ。前回ひたちなかで聴いた時はパッとしなかったが、その後シングルを何度も聴く内に、次第にその新鮮さに惹かれていき、改めてこの日ライヴで聴くと、完全にそのアレンジにハマっていた。"hallelujah"からの流れというのも一因だろう。歌そのものから凄いパワーを感じた。ただ、これでエンディングってのもちょっと‥‥って感じたことも付け加えておこう。ミスチルって本編ラストに、それっぽくない曲を選ぶことが多いんだよなぁ(過去にも"CROSS ROAD"や"Tomorrow never knows"で終わるツアーがあった)。

  一旦メンバーは袖へ引っ込む。この時点で丁度2時間。まだまだやるだろ、ミスチルさんよぉ‥‥ってことで、アンコールを求める手拍子が延々続く。「お祭り」のような特別なツアー。いつもアンコールは淡泊なミスチルも、今回ばかりはサービスしてくれるに違いない。

  数分後、メンバーが再び現れる。桜井は「それじゃあ気持ちも新たに行きますか!」って気合いを入れ直そうとすると‥‥虫が桜井を襲う(笑)。それを払い除ける。会場大爆笑。「こういうのが野外の醍醐味なんですけど(笑)」と言い訳。確かにあんなに焦った桜井はそう見れないだろう(笑)。

  気合いを再び入れ直してアンコールに突入。まずはお祭りソング"everybody goes"。お約束の如く、イントロのリズムインの瞬間にパイロがドカン! もう大騒ぎ。この曲も前回のツアーでプレイされていたが、今回の方が全然いい。昔みたいに気合いの入ったこの曲も好きだが、今回みたいに肩の力が抜けた、単純に楽しみながらプレイするのもまたいい。中間のブレイク部(ソロ導入前)で曲調が変わり、メンバー紹介に突入。メンバーひとりひとりを紹介すると、その人のソロプレイに突入。その際にスクリーンに「踊る大走査線」や「エヴァンゲリオン」ばりに「桜井和寿」が画面左縁縦書き、「vocal」が画面下縁横書きで垂直を描く。しかも明朝体で(笑)。マイブームなんでしょうか? にしても5年位出遅れてるような気が‥‥(苦笑)サポートメンバーの後にミスチル各メンバー、最後に桜井。そのままギターソロに突入。悲しいかな、田原よりも桜井の方がギタリスト然としてるんだよなぁ‥‥頑張れ、田原!(涙)

  そのまま続けて、JENがカウント。あの印象的なギターフレーズ‥‥久し振りの"innocent world"だ! この時ばかりはみんな大興奮。桜井はステージ左側に駆け寄る。そして1コーラス全てをオーディエンスに唄わせる。完璧に唄いきるオーディエンス(!)、そして俺(笑)。ツアー「DISCOVERY」の時も同じことやってたが、今回の方が客の数が倍以上いるせいか、より鳥肌モンだった。2番から桜井が唄うが、やはりどこか余裕がある。この曲がリリースされた頃は、あんなにも辛そうに唄っていたキーが高いこの曲も、今の桜井にとっては「楽しく唄える曲」へと変わっている。いや、桜井が変わった(成長した)のか‥‥やっぱりいつ聴いても心にググッとくるなぁ‥‥涙こそ流さなかったが、心に染みた。気付けば、友人も唄ってるし(笑)。

  ここで一旦サポートの3人が袖に引っ込み、桜井がアコギ、田原がエレキ、中川がベース、そしてJENが前に出てきて踊る(爆)。鶴のように構えてから、何やら拳法のようなアクションを取る。オーディエンスだけでなく、メンバーもツボに入ったようで大爆笑。暫くして桜井が語る。「これから演奏する曲は、アルバムに入ってない、シングルのカップリング曲です。一般的にカップリング曲やB面曲って『捨て曲』と呼ばれてるんですが‥‥はっきり言って、ミスチルには『捨て曲』は1曲もありません!」そう言い切って、ミスチルのメンバーだけで演奏されたのは、シングル「光の射す方へ」c/w曲"独り言"だ。勿論、ライヴで演奏するのは初めて。イントロのハーモニカをJENが吹き、大歓声。オリジナルの音源は、'70年代のストーンズを彷彿させるアーシーなナンバーだったが、ここでは完全に「ミスチル以外の何ものでもない楽曲」になっていた。演奏も、コーラスも全て4人で。ツアー「Atomic Heart」での"ロード・アイ・ミス・ユー"もたった4人で演奏してたっけ。ある意味「初心忘れるべからず」的ナンバーなのかもしれない。だって、普段コーラス取らない田原も唄ってたし(笑)。

  「最後に、できたばかりの新曲を披露します」といってスタートしたのは、数日前にリリースされたばかりの"優しい歌"だった。CDではストリングスからスタートするが、ライヴでは浦の弾くアコーディオンが代わりを果たす。逆にこっちの方が素朴な感じがして、いいんじゃないかな? 次のアルバムに入れるなら、是非アコーディオン・バージョンで! そして歌が始まると‥‥スクリーンに下から上へと歌詞がスクロールしていく。歌詞を目にしながら口ずさむと‥‥何故か知らないけど、頬を伝うものが‥‥桜井自身の決意表明であるこの曲が、何故か今の俺とシンクロしてしまった。すっげー伝わったよ。古くからのファンには賛否両論のようだが(つうか「自称・古くからのファン」って結局、活動再開後のミスチルを認めたくないだけじゃないの?)、俺には十分すぎる位に伝わった。たった3分ちょっとの曲はすぐに終わったしまった。嗚呼、また夏が終わった‥‥最後は天に向かって打ち上げ花火が連発される。「また夏が終わる/もうさよならだね」‥‥"君がいた夏"じゃないが、本当に俺の夏はこの曲で終わっていった。


  結局時間にして2時間半ちょっとだったが、曲数にして23曲。しかし曲数以上に濃い内容だった。ベスト盤を受けてのツアーということだったが、結局はベストから半分、各オリジナルアルバムから半分といった感じで、単純に「グレイテスト・ヒッツ」ツアー以上のものを見せてもらった。ショウとしてのスケールは6年前のスタジアムツアー「空」に匹敵する、或いはそれ以上のものだったし、選曲もシングルとアルバムの隠れた名曲・人気曲とのバランスが絶妙だったように思う。残念ながら「BOLERO」からは1曲も選出されなかった("everybody goes"と"Tomorrow never knows"を収録曲と見ることもできるが、敢えてシングル以外の曲を演奏して欲しかった)。「深海」からあれだけやったんだから‥‥って気持ちもあるが、この流れに"タイムマシーンに乗って"は入れにくいかもしれない。今後二度と演奏されないかも‥‥とアルバムレビューで語っていただけに、やはり実際に無視されると悲しくなる。好きなアルバムだけに。

  今回のツアーは「これまでの10年を総括する」という意味だけではなく、「これまでのミスチルをリセットする」という意味も含まれている。確か前回の夏ツアー「空」の時もそういうコンセプトがあったはずだ(「空(くう)」は「空(から)」とも読める)。そうしてリセットした結果が「深海」「BOLERO」だったわけだが、さて、今回のリセットはどういう作品を生み出すのだろうか? 既に新曲がバンバン出来上がってるようで、その第1弾が"優しい歌"だったわけだが‥‥今後暫く、それらの新曲をこまめにシングルとして切っていくそうだ。まずは年末~年始辺りにもう1枚リリースされるという次の新曲に期待だ。

  今回のツアー、ミスチルを観たことない人にこそ観て欲しい内容だと思う。関東ではまだ横浜スタジアム公演(9/15&16)が残ってるので、チャンスがあったら是非足を運んで欲しい。ここ数回のツアーの中でも、最も「楽しさ」に重点を置いたライヴになっているから。きっとみんな、あの桜井の笑顔にやられるはずだから(笑)。


[SETLIST]
01. 花(vocal, acoustic guitar & synth. only)
02. I'll be
03. ラララ
04. 君がいた夏
05. LOVE
06. 星になれたら
07. 車の中でかくれてキスをしよう
08. 抱きしめたい
09. Printing ~ Dance Dance Dance
10. Round About ~孤独の肖像~
11. Dive ~ シーラカンス
12. 手紙
13. マシンガンをぶっ放せ
14. ニシエヒガシエ
15. 光の射す方へ
16. 深海
17. Tomorrow never knows
18. Hallelujah
19. 花(2001 version)
---encore---
20. everybody goes-秩序のない現代にドロップキック-
21. innocent world
22. 独り言
23. 優しい歌



▼Mr.Children『Mr.Children 1992-1995』
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▼Mr.Children『Mr.Children 1996-2000』
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投稿: 2001 08 31 12:00 午前 [2001年のライブ, Mr.Children] | 固定リンク

2001/08/22

Mr.Children『優しい歌』(2001)

  ミスチル1年振りの新曲は、3分半程度のシンプルなロックナンバー。そしてそのカップリングは、過去のヒット曲のニューアレンジ。これだけを目にすれば「うわぁ、夏の野外ツアーのために無理矢理ひねり出したのか?」なんて疑いを持ってしまう。が、これはMR.CHILDRENというバンドの今後を考える上で、非常に重要なシングルとなるのではないだろうか?

  リリースの1ヶ月前にラジオで聴いた時、とてもシンプルで何のひねりもない曲だなぁ、そういう方向にまた向かってるのかなぁ、なんて思ったのだが、次の瞬間‥‥耳に飛び込んできた歌詞に耳を疑った。


後悔の歌 甘えていた 鏡の中の男に今 復讐を誓う


この歌詞が何を意味するか判るだろうか?

  彼らの過去の楽曲に、下記のような歌詞がある。


窓に反射する(うつる) 哀れな自分(おとこ)が
愛しくもある この頃では


そう、彼らを大ブレイクへと導いた名曲"innocent world"の一節だ。この曲は後に「僕は僕のままで/ゆずれぬ夢を抱えて/どこまでも歩き続けて行くよ/いいだろ?」と続く。「窓」と「鏡」という違いはあるものの、この歌詞には繋がりがあるように思えてならない。

  この"innocent world"という楽曲を発表した後のインタビューで「CMにフィットするような15秒、30秒に収まるサビを持った、キャッチーな曲を何曲もプールしている」と彼は語っていた。ヒットチャート上での成功を「国盗りゲーム」に例え、にこやかに受け答えしていた男がそこにはいた。しかしそれから数年後、彼は「その男」を恨むようになる。そして彼はもがき続け、苦悩の日々を送ることとなる。更に数年後、それらの「ネガ」も「ポジ」も全てありのまま受け入れられるように成長した彼がそこにはいた。

  勿論、その「彼」とは桜井のことであり、また「その男」も彼自身のことである。売れた後に彼が見たもの、それを表現したのが「深海」や「BOLERO」であったことは今更説明の必要もないだろう。そして1年の活動休止の後、彼らは再び前進することを選び、成長し、進化し、そして平穏な生活やポジティヴな心を再び手に入れた。それをまるごと表現したのが「Q」であった。

  気づけば来年でデビュー10周年。「Q」で人間としても、またミュージシャンとしてもひと回りもふた回りも大きく成長した4人(特に桜井)にとって、ここで一旦これまでの作品にケリをつける必要があった。ツアー「Q」では現在進行形の彼らの魅力を余すことなく表現した。だからこそ、今一度過去を精算する必要があったのだ、と。それが2枚同時発売のベスト盤であり、活動休止前、復活後、そして現在進行形のそれぞれのツアー映像を収めた作品群であり、そうした過去と現在を結ぶための新しいマテリアルとしてのこのシングルだったのだと、憶測ながらそう感じている。

  この"優しい歌"中のサビ3回で、桜井は「魂の歌」「後悔の歌」「優しい歌」と唄っている。「魂の歌」の後には「くすぶってた/照れ隠しの裏に忍ばせた/確信犯の声」と続く。何となく先の「15秒で収まる~」云々のエピソードを彷彿させるし、「後悔の歌」については先に書いた通り。

  しかし、最後のサビ前に桜井はこう唄う。


群衆の中に立って 空を見れば 大切な物に気付いて 狂おしくなる


そして「優しい歌/忘れていた/誰かの為に/小さな火をくべるよな/愛する喜びに/満ちあふれた歌」という風にこの歌は締められる。

  当然、これらの歌詞の抜粋だけで語るのが危険なのは承知している。しかし、俺にはどうしてもこの曲が何かの決意表明のように受け取れるのだ。最後の行を読むと、何となくアルバム「DISCOVERY」を経た後に発表された"口笛"を思い出させる。過去を清算する上で再確認した、以前の自分達の魅力。それは決して恨むべきものではなかった。彼は悟ったのではないだろうか? 「憎むべきは楽曲ではない、あの日の『自分』だったのだ」と‥‥

  そういうことを踏まえた上で改めてこの曲の歌詞を読むと、また違った風に受け取れる。勿論、こんなのいちファンの単なる深読みに過ぎない。けど、俺は思うのだ。その「愛する喜びに満ちあふれた歌」に対して、自分の第一子の名前をもじったタイトルを付けるということは、何を意味するのだろうか?と(桜井には別れた前夫人との間に「優歌」という名の娘がいる)。

  改めて自分達の魅力に気付いたからこそ、更に自由度が増す。昔の曲を、今の現在進行形の俺達が表現するとこうなる、という自信の表れがカップリング曲の"花"ニューアレンジだろう。ライヴで聴いたものよりもアコースティック色が強いことが驚きだ。アコギの音もよく聞こえるし、サックスも入っている。更に女性コーラス(小林武史夫人でMY LITTLE LOVERのボーカル、AKKOによるもの)もよいスパイスとなっている。オリジナルバージョンよりも多少ゴージャスになり、演奏にもパンチが増し、より一層歌の世界観に広がりが感じられる。ライヴで聴いた時は「オリジナルの方が好きかなぁ」と思ったものの、こうやってスタジオテイクで聴き比べると、いやはや、甲乙付けがたい。

  このレビューのタイトル通り、このシングルは「復讐と再生の記録」である。復讐することは決してネガな気持ちからではない。再生も単なる焼き直しではない。このシングルからは何か新しいことが始まろうとしている、そんな高揚感を感じ取ることができる。そしてこれら2つの収録曲は、その一瞬を捉えたポートレートのようなものなのだ。現在行われている野外ツアーでは、デビュー曲"君がいた夏"に始まり、ベスト盤に含まれていない初期の名曲と一緒に、「深海」からも4曲、4年半振りに披露されている。更にライヴ本編は"花"から始まり、"花"で終わり、アンコールの一番最後にこの"優しい歌"が登場する。惜しげもなく連発されるメガヒット曲群の影に隠れてしまいがちだが、この「事実」が今のミスチル、今の桜井の勢いを物語っているとは思えないだろうか?

  大丈夫だ。ROCK IN JAPAN FES.でも感じた、あのアンコール時の笑顔。そしてこのシングルから鳴らされる、祝福の鐘。夏のツアー終了後、桜井と田原は10/9の「レノン祭り@さいたまスーパーアリーナ」に挑むものの、バンドは間髪入れずにレコーディングに入るようだ。次の作品は10周年を祝う年にリリースされることになる。間違いなく、次のミスチルは更に面白いことになるだろう。「ATOMIC HEART」とも、「深海」とも、そして「Q」とも違う、何か新しい極みを表現してくれるはずだから。



▼Mr.Children『優しい歌』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 08 22 12:00 午前 [2001年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2001/08/18

「ROCK IN JAPAN FESTIVAL '01」DAY 2@茨城・国営ひたち海浜公園(2001年8月4日)

  昨年スタートした「rockin'on」社主催の(と思ってたら違って、企画がrockin'on、主催はニッポン放送、運営ディスクガレージとパンフに書いてある)国内アーティスト最大規模のフェス『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』。昨年は2日目が台風に見舞われ、最後まで続けることができなかった(演奏できなかったアーティストは、そこでベールを脱ぐ予定だったAJICOと、生涯初ライヴのはずだった中村一義の2組)。今年は日付を8月中頃から頭に移し、2日間から3日間に延び、「ロックか否か?」と批判的な声が大きかったゆずやミスチルの出演、更に出演アーティストの中には海外のバンドの名前もある。さて、一体どういうことになるのだろうか‥‥

  というわけで、俺が参加した2日目(8/4)と3日目(8/5)をレポートしてみたいと思う。20代最後のライヴという意味では、非常に印象に残る、いいライヴを見せてくれるバンドが多かった‥‥まぁ例の如く、全部いつも通りにやるとなかなか終わらないので(笑)、かなり簡単な紹介になると思うが、そこはご了承を‥‥


◎ゆず (at GRASS STAGE)

  さて、ゆずである。初の生ゆず。つうよりも、そもそも彼らを好意的に受け入れるようになったのは昨年からなので、それ以前の楽曲にも興味があったし、何より先日のドーム公演をたったふたり(歌とギターとハーモニカのみ)で行ったことから、何となくRIJFでも「弾き語り」でやってくれるんじゃないかと密かに期待していた。

  いきなりラジオ体操第一の音楽が流れ始めた時には失笑したが(どうやら、ゆずのライヴ開始前のお約束らしい)、いざステージに北川と岩沢のふたりが登城すると「あぁ、始まるんだ」とワクワクしてくる。やっぱりふたりだけのようだ。岩沢は白Tシャツに「ROCK AND ROLL」タオルを頭に巻き、北川はこの日のために作った「SAKU」Tシャツのパクリ(桜庭選手のオフィTね)で「YUZU」、オリジナルが「39」なのに対し、北川のは「804」という、単に今日の日付の入った、他に使いようのない無駄な(笑)Tシャツに、「フォークデュオ」と書かれた手ぬぐいを頭に巻いている。俺的にはこれで「あり」だった(笑)。

  いきなり北川の軽快なトークからスタートし(笑)俺が知らなかった曲を2曲(恐らく初期の曲だろうか?)披露。両方北川がリード。如何にもフォークソングといった感じだが、悪くない。この炎天下の中聴いてると、ふとそよ風が吹くとそれが心地よく感じられる。もう1曲北川が新作より"シャララン"を唄った後に、今度は岩沢リードでヒット曲"飛べない鳥"を披露。いい曲だとは常々思っていたが、こうやって装飾をできる限り減らした、まさしく歌とギターとハーモニーのみで綴られる歌の世界が、この青空にマッチして気持ちいい。しかも岩沢の声の伸びが抜群に良い。ハスキーな北川とは対照的で、本当に清々しい(前は苦手だったくせに/苦笑)。

  続く"心のままに"ではふたり向き合ってギターをかき鳴らしながらスタートするのだが、北川がミスる。堪えられなくなり、ふたりして笑う。こっちまで笑顔になっちまう。プロとしてあるまじき行為なんだけど、今日は特別。それにしても‥‥この2曲で俺は完全にノックアウト状態。マジ泣けた(実際には泣いてないけど)。

  大の苦手だと思い込んでた"夏色"も気持ちよく聴けたし(前フリの北川トークのお陰もあるかも)、最新シングル"3カウント"も改めて聴くと、やはりいい曲だと感じる。そしてお待ちかねの"嗚呼、青春の日々"。もうこの時点で俺が聴きたかった新作「トビラ」からの曲は全部聴けたようなもんだ。やっぱりこの曲の歌詞は泣ける。男泣きの世界。オープニングじゃなかったら、マジ泣きしてそうな勢い。ホントいい。

  何故か岩沢が"蛍の光"を弾き出し、それに合わせて北川がパチンコ屋の閉店の挨拶の如く、またお近くに寄った際には是非声をかけてやって下さい的トーク(笑)をかます。そして最後にもう1曲‥‥ってことで、ファーストアルバムの"てっぺん"で勢いよく終了。初めて聴いた曲だけど、非常に攻撃的な歌詞だなと感じる。どうしても柔なイメージがあった彼ら、決してここ数年で硬派に鞍替えしたわけではなかった。ストリートからスタートした時点で、彼らは地面から上を睨みつけていたのだ。

  「ロック」と銘打たれたフェスで、しかもミリオンクラスのアーティストが前座をする。そしてやるのはフォーク‥‥これ、3日間通しての出演者の中で、ある意味最も「パンク」だと思うんだけど‥‥彼らの新作にはかなりハードは曲も収録されているし、それはロックの範疇に入るものだと思う。しかし、精神性だけを取ってみれば、その辺のヘヴィロックバンドよりもよっぽど「パンク」だと思う。オフィシャルの掲示板でウダウダ言ってる奴らは、彼らの演奏を観て聴いて、何も感じなかったのだろうか? オープニングから最高のステージを観てしまった。こりゃ濃い2日間になりそうだ‥‥


01. する~
02. 贈る詩
03. シャララン
04. 飛べない鳥
05. 心のままに
06. 夏色
07. 3カウント
08. 嗚呼、青春の日々
09. 蛍の光
10. てっぺん


◎MO'SOME TONEBENDER (at LAKE STAGE)

  フジでは無愛想な印象だった彼らも、今日は熱心なファンに支えられいつも通りの演奏ができたようだ。MCも前回よりも冷たい感じがしなかったし。終わりも唐突な感じがせず、ちゃんと「ありがとう」って言ってたし。何かまた違う一面を観た感じで、興味深かった。

  演奏された楽曲はフジにかなり近い感じ。ただ曲順は全く違っていたし、9月にもうリリースされる新作(しかもメジャーから!)からも2曲披露されていた。曲名はオフィシャルサイトでのBBSで、メンバー自身が書き込んでいたものなので、間違いないはず。

  前回は全く知らない状態で挑んだので衝撃もその分大きかったが、今回は「DAWN ROCK」と「echo」をこの1週間何度も聴き込んだので、なかり余裕を持って楽しむことができた。前回はスタンディングだったので、今回は後方のシート席でまったりと‥‥(笑)

  ただ、レイクステージ出演のアーティスト全般に言えるんだけど‥‥音が悪すぎ。特にこういうバンドにはキツかったんじゃないかな? それを抜きにすれば、かなりいいステージだったと思う。リズム隊がしっかりしてるので、ギター&ボーカルの調子さえよければかなり安定したステージを毎回観せてくれるんじゃないかな? 今度は是非、単独で味わってみたいものだ。


01. FLOWER
02. 9
03. パルス玉
04. PARADE
05. 冷たいコード(新曲)
06. echo
07. 壊れてるよ
08. DAWN ROCK
09. HigH(新曲)


◎PEALOUT (at LAKE STAGE)

  一昨年のフジロック以降‥‥シングル"爆裂世界"以降のPEALOUTはマジで凄いと思っていた。だからずっと観たかったんだけど‥‥チャンスがなかなかなかった。一昨年、昨年とフジには出演してるので、さすがに今年はなかった。フジ直前にズボンズとのカップリングツアーがあったが、それも日程的にきつかったので、諦めた。そしてRIJFに出演と耳にした時、絶対に観てやろうと心に決めていた。

  体力が回復したので、スタンディングエリアに入り、踊る準備をしていたら‥‥いきなり1曲目から"心臓が動き出すとき"だもんなぁ‥‥反則だって! 思いっきり踊り、暴れたさ。それにしても‥‥マジでカッコイイ! 下手なUK勢を聴くよりも、最近はMO'SOME TONEBENDERとかPEALOUTといったバンドを聴いていた方が心地よい‥‥決して日本語だからとか、そういうのは全く関係ない。単純にそのサウンドに惹かれるのだ。

  そして続けざまに、ルースターズのカヴァー"C.M.C."! ルースターズのトリビュートアルバムに収録されていたナンバーをこんなところで、しかも初ライヴで聴けるとは‥‥個人的にここでグッときて、最前ブロックまで進んでしまった(笑)。そのくらい、キてた。当然、サビパートでは拳を振り上げ、唄い叫んだ。

  続いて、10月にリリースされるという新曲"ソウルライダー"が披露。アップテンポの、ニューアルバムの路線に近いポップなメロディーを持ったロックナンバー。続けざまにそのニューアルバムから"JET DESIRE"がプレイされ、ここまでの流れは本当完璧。フェスの掴みとしては完璧じゃなかろうか?

  ちょっとしたMCも挟みつつ(ドラムの高橋が主にしゃべるのだが、「レイク・エンジェルです」ってのはちょっと滑ってました。レイクステージだけに‥‥すかさず「伝わったよ」と近藤のフォローが入ってたのが、ちょっと泣けた/笑)、OASISのカヴァーでもお馴染み、BEATLESの"I AM THE WALRUS"の直線的ビートロックバージョンをプレイ。今までもやってたの? 知らなかったけど、ちょっとこれはこれで好き。考えてみれば、PEALOUTはついこの間まで英語詞で活動してたんだから、こういうカヴァーも当たり前っていえば当たり前なんだわな‥‥なんて妙に納得してみたりして。

  ここで近藤がベースを置き、エレピの前に座る。ギターの岡崎はギブソン・エクスプローラーからフェンダーのプレシジョンベースに持ち変える。ここからはピアノ曲パートのようだ。こうやって後半にまとめてやってくれると、楽器チェンジの無駄な空白が減って、テンションも落とすことはない。お見事。そんなこんんなでニューアルバムから"HEIDI"(そう、「アルプスの少女ハイジ」をイメージした曲だ)。途中で近藤がブルースハープを吹き、テンションは一気に上がる。そこに間髪入れずに名曲"爆裂世界"! 正直、空からの暑さとステージからの熱さで、失禁寸前でした(苦笑)。血管切れそうな程にハイテンション。さっきまでのバテ気味の俺はどこへやら‥‥"FLY HIGH"を挟み、最後に"BEAT FOR YOUR RIGHT"で終了。40分程度のステージだったが、大好きな新作と前作からの曲、そして知ってるカヴァー曲中心に進められたことで、個人的には大満足だった。これならフルステージ観てみたいよ。こんなことなら先月の「激ロック」withズボンズ、観ておけばよかった‥‥(涙)


01. 心臓が動き出すとき
02. C.M.C(cover of ROOSTERZ)
03. ソウルライダー(新曲)
04. JET DESIRE
05. I AM THE WALRUS(cover of BEATLES)
06. HEIDI
07. 爆裂世界~世界に追い越されても~
08. FLY HIGH
09. BEAT FOR YOUR RIGHT


◎SUPERCAR (at GRASS STAGE)

  結局フジでは全く観ることもなく(しかも30分で終わったそうだし)、考えてみれば2年振りに観るスーパーカー。その2年の間にこのバンドも随分と変わったものだ‥‥新曲ではとうとうギターレスだもんなぁ(苦笑)。新作やその周辺のシングル、大好きなだけに今日のステージはとても期待していた(しかも1時間も観れるしね)。

  まずはアルバムオープニングのインスト"Changes"に乗せてメンバーがステージに登場する。メンバー4人の他に、サポートのドラマーが1人。彼がシンセドラムを叩くようだ。そして実質1曲目となったのが、いきなり"White Surf Style 5."! のっけから大歓声‥‥のはずだが、俺の周辺は棒立ち状態。盛り下がってるし‥‥明らかに「場所取り」ですな、民生orミスチルの。責めるつもりはないけど‥‥がっかり。こんなに素晴らしい、テンションの高い演奏や楽曲を突きつけられても、何も感じないなんて‥‥「ロックファン」ではないんだね、君達は‥‥「民生ファン」であり「ミスチルファン」でしかないんだね、きっと‥‥いろんな意味で憤りを感じた瞬間だった。

  基本的にニューアルバム「Futurama」からの楽曲が殆どで、それらがアルバム通り忠実に再現されていく。ドラム2人の意味も、ライヴを通して聴くと妙に納得できた。それにしても、このバンド。いつからMC担当がミキちゃんになったの?(笑)個人的にはそっちの方が嬉しいけど♪ 当然この日も、あの2年前の「悪夢」(苦笑/詳しくは、'99年6月のライヴレポ参照)同様、ミキちゃんコールを飛ばす俺‥‥30目前ですが、全然恥ずかしくはないです。むしろ、前へ前へと積極的です。いいんです、もう引き返せませんから‥‥(涙)

  やはり圧巻だったのは、"Karma"~"FAIRWAY"の流れ、そして新作以外からの"Be"。ギターノイズの渦、カオス状態の中、ステージからひとり、またひとりという風に消えていき、最後に床に置かれたギターだけが残る。正直、スーパーカーごときで(って別にバカにしてたわけじゃないけど)こんなにググッとくるとは思ってもみなかった。これまで俺にとってのスーパーカーはポップな楽曲にミキちゃん、それだけだった(笑)。正直、ギターレスになろうがテクノに走ろうが、曲が親しみやすいものであれば何の文句もない。けど‥‥今日この日のステージは、2年前のあのブリッツ公演を忘れさせるくらいに素晴らしいものだと思った。これは成長なのか、単に変化しただけなのか‥‥自分達にできることしかやってこなかったイメージのある初期と比べて、今の彼らからは試行錯誤だとかチャレンジだとか、そういった「前進したい」という心意気みたいなものを感じる。それが個々のソロ活動だったりDJだったりするのだろう。既に「ロックバンド」という形態をも取っ払って「自分達が気持ちよくなれる、いい曲を作りたい」っていう、至極シンプルな結論に達したのかもしれない。俺はそれを支持するし、今後も見守っていきたいと思う。また機会があったら観たいなぁ‥‥そう思わせるに十分なアクトだった。お見事!


01. Changes
02. White Surf style 5.
03. ReSTARTER
04. Baby Once More
05. Strobolights
06. PLAYSTAR VISTA
07. Seven Front
08. Karma
09. FAIRWAY
10. BE


◎JJ72 (at GRASS STAGE)

  ライヴ開始前に再び渋谷陽一が現れ、「彼らはこのためだけに来日した。イギリスではメディアで大絶賛の新人で、そこら中で引っ張りだこ。そんな彼らに対して暖かい拍手で迎えてあげてください」という、とても日本一売れている音楽雑誌社の社長の発言とは思えないような言葉を耳にして、絶句。しらけることが判ってるなら、何で呼ぶの? 前日のジョンスペだって、散々だったっていう話じゃないか!? そんなくらいなら呼ぶなよ‥‥マジで怒りを覚えた。

  そして、ステージにメンバーが現れる。バンドメンバー3人と、サポートのキーボードひとりの計4人。ボーカルの声の線が細く、それでいてかなり高音。最近、この手のボーカル、多いよな‥‥マニックス云々ってポップをレコード屋で目にしたが、単にプロデューサーが一緒、3人編成って位しか共通項は見受けられない。悪くはないけど‥‥はっきり言って、こんなんじゃアルバム2~3枚で消えるな、そう感じた。よくいる「今年のブライテスト・ホープ」ってやつだろう。しかしここ数年、この手のバンドがどれだけ生き残ってる? MUSEのような力強さ(音楽的にではなく、バンドとしての)を感じさせることもなく、個性のようなものも感じることができなかった。周りが完全に無関心を決め込んでいるという環境も災いしているのだろう‥‥正直、個人的には何の接点も感じられなかったし、今後も必要ないだろうと思った。好きな人には申し訳ないが、こういうバンドばっかりだから、英国ギターロックシーンに面白味を感じられなくなったんだろうなぁ‥‥と何となくそんなことまで考えてしまった。

  それにしても、お客の寒いこと、寒いこと。曲中は完全に棒立ち、曲が終わるとお情け程度の拍手ときたもんだ。曲間、シーンとしてたもんなぁ‥‥声援もなければ、キャーって声もなし。本当、この日一番の静寂を感じたよ。


01. OCTOBER SWIMMER
02. LONG WAY SOUTH
03. SURRENDER
04. FORMULAE
05. SNOW
06. ALGERIA
07. DESERTION (ACOUSTIC VER.)
08. WILLOW
09. OXYGEN
10. BUMBLE BEE


◎BOOM BOOM SATELLITES (at LAKE STAGE)

  今年のフジロック前夜祭にシークレットゲストとして出演し、俺を失望のどん底に陥れたブンブン。そういう噂は耳にしていたが、まさか本当だったとは‥‥行けたのに、前夜祭‥‥ガッカリ。そんななので、やっぱり今日は観ておこうということに。素晴らしいアルバム後のライヴだけに、やっぱりタイミング的にはいいんじゃないかなぁ‥‥

  驚いたことに、彼らのライヴはアルバム以上にロック然としていたこと。つうか、ありゃ完全にロックバンドだよ。下手すりゃヘヴィ系と言われても違和感ないもん。ダンサブルなロックバンドがテクノロジーを導入しました、しかもそれが機能的に上手くいってます‥‥そういうイメージのライヴだった。勿論アルバムからも、そういうロックアプローチを存分に味わうことができたが、こりゃライヴの方が数段素晴らしい。ドラムが素晴らしかったね、特に。ある意味、フュージョン的とも言えなくはないが、それよりはロックだね、ライヴ。

  タテノリもあれば、腰にググッとくるリズムもある。曲間も上手く繋ぎ、間を空かせることがない(この辺がDJ感覚っていうか、ダンスバンドなんだなぁと実感させた瞬間だった)‥‥聴き手を全く飽きさせない。特にキーボード/コンピューター/ベースの中野がよかったなぁ。コンピューターいじってる最中、曲の途中でいきなり前に出てきて踊って暴れて客を煽るし(笑)。何で彼らが海外でウケたのか‥‥その理由が何となく見えた一時だった。薄暗いクラブで踊るのもいいけど、夕焼けバックに野外でこの手の音楽で踊るのも、また気持ちいいね♪


01. SHINKYOKU(新曲)
02. SOLILOQUY
03. DIG THE NEW BREED
04. SINKER
05. PUSH EJECT
06. SCATTERING MONKEY


◎MR.CHILDREN (at GRASS STAGE)

  さぁ、ミスチルですよ、奥さん!(笑)ミスチルがフェスに出演する‥‥それだけで俺はこのRIJF行きを決めたようなもんなんだから‥‥5月中旬の発表後、すぐに振込したもんなぁ(笑)。そのくらい、俺はミスチルがフェスに出演することを熱望していたし、ぴったりだと思っていた。どうせならフジロックに‥‥とも思ったが、まぁそれは現実問題として難しいだろう。エゾロック(RISING SUN ROCK FESTIVAL)だったらまだなきにしもあらずだが。珍しく今年の夏、ミスチルは夏のスタジアム(野外)ツアーを決行している。その一環としての出演ということになるのだが、果たしてセットリストはどういうものになるのだろうか? 先日発売されたばかりの2枚のベスト盤を中心としたものになるのだろうか、それとも「rockin'on」リスナーを意識した「ロック然」としたものになるのか‥‥どっちにしろ「ミスチルなんかロックじゃねぇ」とのさばる輩を黙らせなくてはならない、そう、今日の彼らにはそうした命題が課せられていたのだった。

  予定のスタート時間を30分遅れ(19時スタート予定だったが、実際にはこの日、セッティング等で徐々に徐々にと遅れていき、結果30分押しとなってしまった)、照明が消える。大歓声‥‥真ん中よりはかなり前の方に陣取っていたのだが、後ろを振り返ると‥‥人の海。前の週に苗場で体験したOASISを彷彿とさせる、そんな人混みだった。そして例の如く、後ろから押され、どさくさ紛れにけっこう前の方まで流れていった。メンバーの顔を目視できるポジション。こんな位置で彼らを観るの、どれくらい振りだろうか?
  暗転した場内に流れ始めたのは、アルバム「深海」のオープニングを飾るSE"Dive"‥‥おいおい、ま、まさか‥‥「あれ」をやるのか???

  メンバーがひとり、またひとりとステージ上に登場。最後に赤いTシャツに黒い皮パンツを履いた桜井が登場する。風貌的には半年前にさいたまスーパーアリーナで観たときと余り変わらない姿で(髪の長さも前と同じくらいかな)、見た目かなり気合い入ってるように感じられる。アコースティックギターを受け取り‥‥ということは、やっぱり「あれ」から始めるのかよ、おい‥‥!!!

  桜井がコードを弾く‥‥やはり、1曲目は「深海」から"シーラカンス"だ。すっげ‥‥鳥肌立ったよ。封印したとは言ってないが、明らかに演奏することを拒んでいたように思える「深海」からの曲をオープニングに、しかも「rockin'on」相手にぶつけてくるとは‥‥この男の決意みたいなもんを「これでもか!?」って位に感じた。4年半振りに演奏されるこの曲だが、前のような悲壮感や疲れは感じることはなく、むしろ力強さを更に感じる歌声だった。何度でも言うが、復活後の彼ら‥‥特に桜井は本当に調子がいいようで、この日の歌も最後まで完璧に近かった。後半のPINK FLOYD「吹けよ風、呼べよ嵐」的パート(笑)での川口氏のスライドプレイも4年半前以上にググッときたし‥‥ってここで書いておくが、サポート陣も半年前と全く同じ。つまり「DISCOVERY」ツアー以降の固定メンバーということになる。バンドとしてもかなり脂の乗りきった、安定感ある的確なプレイを聴かせてくれた。

  アルバム通りに"手紙"へと流れる。ピアノと桜井の歌だけという小バラード、既に数万人のオーディエンスの心を完全に鷲掴みしたようだ。つうか、本当に前みたいに痛々しさを感じさせない、聴いててググッとくるよなぁ、今日の「深海」楽曲群は。

  更にもう1曲「深海」から、シングルカットもされた"マシンガンをぶっ放せ"で、観客を煽る。と、ここまでベスト盤の楽曲は1曲もプレイされていない(笑)。完全に「rockin'on」相手の選曲ってことになるのだろうか?(後に判明したが、今回の野外ツアーでもこれらの「深海」メドレーはプレイされているそうだが、決してオープニングからというわけではない。これからスタートするってのは、やはり相手になめられたくないという気持ちが働いたのだろう)

  続いて、テクノ的4つ打ちサウンドが聞こえてきた。一瞬、新曲か?とも思ったが‥‥そこに桜井が歌を乗せる‥‥"ニシエヒガシエ"のニューアレンジだ。ワンコーラスそれで唄い切った後、バンドが加わりいつも通りのアレンジに戻る。最初はアコギを持っていたものの、バンドが加わってからはギターを置き、右へ左へといつものように動き回り、客を煽り、そしてセクシーなポーズ(笑)で女性達を悩殺する。きっと、ミスチルを"innocent world"や"シーソーゲーム"なんかのイメージで捉えていた人達にとって、まさかミスチルがこんなにも攻撃的なライヴをやるなんて思ってもみなかっただろう。ファンにしてみれば、これはいつも通りのことなのだが‥‥がしかし、今日の桜井はいつもとちょっとだけ違う。そう、笑顔が一度もないのだ。気負い過ぎだよ、って思えるくらいに今日の彼は熱い。考えてみれば、直前まで尊敬する奥田民生が演奏しているのだ。しかも彼らは、それをずっと袖から観ていたと聞く‥‥そりゃ負けられないよな。俺でもきっと、そうすると思うし。

  再びテクノチックなシーケンス音に導かれ、新たなアレンジの"光の射す方へ"を披露する。この曲でもワンコーラス終わった時点でバンドが加わり、いつも通りのアレンジへと戻っていく。考えてみれば、ここまでの5曲、まぁシングル曲が内3曲とはいえ‥‥「みんなが望むミスチル」をまだ演じていないんだよなぁ‥‥つまり、初期の"innocent~"や"抱きしめたい"といった、ベスト盤でいえば「肉(通称)」の方の曲をまだ1曲も披露してないのだ。しかし、それでも多くのオーディエンス‥‥ミスチル目当て以外の人達も含めて‥‥を惹きつけている。小川くんが後に「メガヒットバンドの恐ろしさを目の当たりにした」と語っていた通り、これが百戦錬磨、常に数万人ものオーディエンスを相手に戦ってきた、そしてチャート上では常に上位入り、ミリオンヒットを当たり前とされてきたバンドの「凄み」なのだ。まさかこういう時に、彼らが本領を発揮するとは思ってもみなかった。善戦するだろうとは思っていたが、ここまでやるとは‥‥ファンながら、あっぱれあっぱれと思ったよ。

  そして、遂にここで、あのピアノのメロディーが‥‥ここにきてようやく、メガヒット曲"Tomorrow never knows"が登場! 大歓声というよりも「オオォ~」っていう、低音に近い驚きの声がそこら中から上がる。相変わらずうざったい手拍子があったが、桜井が唄い出すとその手拍子もいつの間にかなくなり、みんな歌に聴き入ってしまっていた。そして‥‥気づくとそれが大合唱に変わっている。サビの「Wow~wow♪」では老若男女、誰彼問わずにみんなが唄う。これはある意味、OASISと同等の凄さを感じた。「俺は唄ってない!」と否定する人もいるだろう。しかし、そんなのがごく僅かだということは、あの日あの場所にいた何万もの(3万5千人と聞いているが‥‥)ミスチルに惹きつけられたオーディエンスが証明してくれるだろう。当日購入した公式パンフレットにも「OASISに対抗できるバンド、日本にはもはやミスチルしかいないのではないだろうか?」なんてことが書かれていたが、それは全面的に同意する。あれだけのメガヒット、そしてライヴをやれば動員数は常に下がることはなく、そして売れているからこそ貶す「自称・ロックファン」も多い。昔の方がよかったと嘆く「元・ファン」も数多く、そしてなんだかんだ言いながら多くの人間が代表曲を口ずさめる‥‥そんな「ロックバンド」は、俺が知る限りでは数少ない。少なくとも、ここ日本には‥‥どれだけいる? それを否定するのは誰にでもできる。しかし、何故彼らがロックなのか、何故彼らがこれだけ受け入れられるのかを真剣に考えたことがあるのだろうか? 口当たりのいい曲をシングルに持ってきてるから? そんなの、当たり前だろう。その為の「シングル」でしょ? アルバム聴けって、アルバム。「DISCOVERY」や「Q」を越えるアルバム、どれだけあるのさ!?

  さすがにね、俺‥‥この曲の時にマジ泣きしてしまった。どうしてもこの曲だけは、俺の涙腺を弱めるだけの何かを持っているようで‥‥まぁいろいろあったからなぁ、この数年。この曲にも助けられたし‥‥そんなことを考えながら、声を振り絞って一緒に唄う。俺の周りにいた、AIR JAM系のTシャツを着た少年達も口ずさんでたっけ。

  それにしても‥‥前回のツアーの時に感じられた「違和感」を、今日は全く感じられなかった。メンバー自身が楽しんでいるのが判ったし(そこに笑顔はなかったが)、惹きつけてやろうって意気込みも感じられた。そう考えると、前回の「温度差」ってのは、やはりそれだけ新作「Q」に対する自信の表れだったのかもしれない。「何でもっとみんな、新しい曲を求めてくれないんだよ!?こんなに素晴らしい曲ばかりなのに」っていう。それが受け手と送り手との間で空回りしてしまっていた。しかも会場は3万人前後も入るような、当時のツアーで最大のキャパシティー。上手く伝達していなかった‥‥今ならそう考えることができる。

  バンドは続けて、今月末に発表される新曲のカップリングとなる、"花-Memento-Mori-"のニューアレンジ・バージョンを披露した。原曲ではアコギだった桜井がエレキを持ち(しかも珍しくストラトだ)、代わりに川口氏がアコギにスイッチ。アレンジ的には'80年代前半の産業ハードロック・バラード的になっており、FORIGNER "Waiting For A Girl Like You"やJOURNEY "Who's Crying Now?"を彷彿とさせるピアノメインのアレンジに変わっていた。そしてサビになるとギターのパワーコードが入るという、ハードロックにありがちなバージョンだった。前のシンプルで、歌を伝えるのに十分な演奏とは違い、ここには単純に歌が持つ力強さをより強調したようなパワーを感じる。個人的な好みで言わせてもらえば‥‥やはりずっと親しんできたということもあって、どうしても新アレンジには馴染めなかった。まぁもうじきシングルもリリースされるので、それを聴き込んだ上で改めて発言することとしよう。けれど、オーディエンスにはこの大ヒット曲も好意的に受け入れられ、最後のサビではみんな大合唱となっていた。

  ここで初めて桜井がMCを取る。「できたばかりの新曲を演奏します」という言葉に続いて、いよいよ1年振りに発表される新曲"優しい歌"が披露される。浦氏のアコーディオンに続いてバンド全体の演奏に入る。曲調としては"名もなき詩"や"旅人"タイプといえる。タイトルとは裏腹に、歌詞には「甘えていた鏡の中の男に復讐を誓う」なんて尖った言葉もたびたび登場する。内容についての俺の解釈はまた後程、シングルレビューでやるのでここでは控えるが、これはある意味画期的な内容となっている。完全に「ああ、ベスト盤で一区切りつけたんだな。「Q」ってアルバムはそれだけメンバーにとっても重要な作品だったんだな」ってことを意識させる内容となっているからだ。

  桜井が途中、何度か袖の方に確認の合図を取っているように見えた‥‥残り時間の確認だろうか? 当初19時スタート予定だったことから、この日の彼らには90分近い演奏時間が与えられていたはずだ。しかし、実際には30分遅れでスタート。どう考えても、60分で終了せねばなるまい‥‥ということは‥‥時計に目をやる。現在スタートして約40分。どうやらこの曲で終了するようだ‥‥短い、短すぎる! これだけ素晴らしい楽曲と素晴らしい演奏を前にして、もう帰れっていうのか!? ソープに行って前戯だけ散々やって、いざ本番って時に「延長なしよ。もう終わり」と宣言されたようなもんだ、こりゃ!(笑/って行ったこと、ないですけどね、俺)桜井の「バイバァ~イ!」も今日だけは空しすぎる‥‥そりゃ、アンコールを求める声もいつも以上に大きくなるわな?

  暫くして、再び照明が明るくなる‥‥おおっ、さすがトリだ。ちゃんとアンコールが用意されているんじゃないか。さすがに桜井もこのときだけはホッとしたような笑顔。「今日出演した全バンドを代表して言わせてください。今日は本当にどうもありがとう!」ステージで微笑んでいるその男が桜井和寿だと確認できるような位置でミスチルを観ること自体久し振りだが、こんなにピュアなMCをかます桜井も随分久し振りじゃないかな?(いや、そうでもないか/苦笑)

  「月がキレイだね‥‥」と言って、ステージとは反対側にある月を指さす。みんな振り返る。本当に綺麗だ‥‥こんなに月を大きく感じたの、久しくないな。いや、こんなマジマジと月を見たのも随分なかった‥‥そして「次の曲は月とは前々関係ない曲なんですが‥‥」と言って桜井がギターをかき鳴らす‥‥アンコールとして選んだのは、復活後のミスチルにとってとても大切な曲と言える"終わりなき旅"だ。やはりここでも低音に近い「オオオォ~」っていう声が響く。どうやらこの曲で今日のフェス2日目を終えるようだ。この曲は今日を含めて3度ライヴで聴いているが、毎回違う表情を見せ、そして毎回ハズレがない。これだけ唄うことが難しい楽曲を、今日も桜井は全身の力を振り絞って唄う。そしてそれが痛い程に伝わってきて、また男泣き。ミスチルだけはひとりで観ようと決めていた。それは‥‥絶対に泣くから。ここ2回、確実に泣いてたからね、俺(苦笑)。だからひとりで行ってるんだよ、いつも。この曲、ここ数年の俺のテーマ曲みたいなもんだったから、尚更響く。30になっても、40になっても、壁にぶつかったら、俺はこの曲の歌詞を噛みしめて、再び前進しようと決めた。そしてこれを書いている今この瞬間も‥‥

  エンディングでは例の如く、ステージ上のメンバーが皆向かい合って一丸となり演奏する。ちょっとニール・ヤングみたいだ。そして演奏終了。この日一番の拍手が彼らに送られる。使命を果たした桜井に再び満面の笑みが戻った。「気を付けて帰ってね。バイバァ~イ!」と、いつもの桜井がそこにはいた。そのミスチルを、そして我々を祝福するかのように、花火が上がる。気づけば、今年初の花火だった。同じこの日、地元では花火大会だったが、俺にはこっちの方が似合ってる。今も、そしてこれからも‥‥

  結局、この日演奏された曲は全て今回のツアーで演奏されている楽曲群だが、それらを並び替えることによって、また厳選することによってここまで「rockin'on」リスナーをも圧倒することになるとは。いや、これは楽曲だけの力ではなく、バンドの気力がそれを上回ったということになるのだろう。久し振りにバンドの底力をまざまざと見せつけられた。圧巻。やっぱり桁違い。スケールが違うって。バカにする奴は死ぬまでそうやってればいい。桜井は自分達のことを「ポップをやっていく恐竜」と例えた。「恐竜」が何を意味するのか、ちょっとロックを好きな人間なら判るはずだ。彼らは選んだ、いや、決意したのだ。今後も「俺達はポップをやってくロックバンド」なんだってことを‥‥たった50分程度だったが、それを感じられただけでも、ひたちなかまで来た甲斐があったってもんだ。


01. Dive ~ シーラカンス
02. 手紙
03. マシンガンをぶっ放せ
04. ニシエヒガシエ
05. 光の射す方へ
06. Tomorrow never knows
07. 花 -Memento-Mori-(再録音バージョン)
08. 優しい歌(新曲)
  ---encore---
09. 終わりなき旅

投稿: 2001 08 18 03:49 午前 [2001年のライブ, BOOM BOOM SATELLITES, MO'SOME TONEBENDER, Mr.Children, PEALOUT, ROCK IN JAPAN FESTIVAL, ゆず, スーパーカー] | 固定リンク

2001/02/11

MR.CHILDREN TOUR '00-'01 "Q"@さいたまスーパーアリーナ(2001年2月3日)

  複雑な心境。1週間経った今でもその気持ちは変わらない。通算16回目のライヴ観戦。しかも(俺にとってもミスチルにとっても)初めての会場となる「さいたまスーパーアリーナ」。
  まずぶっちゃけた話をしてみよう。「複雑な心境」とは‥‥ズバリ、観客とバンドメンバーとの体温の差。そして新作「Q」の楽曲群と過去の楽曲との温度差。このふたつが最後までつきまとったような気がする。

  さいたまスーパーアリーナがあるのは大宮のひとつ手前。昨年出来たばかりでライヴで使用されることはまだ少なく、昨年11月にあのGLAYが数日間のライヴを繰り広げた事は記憶に新しい。サッカーやバスケット、プロレス等のスポーツに適した作りの室内競技場で、マックスで37,000人前後入ると聞いたことがある。多分、ライヴでも特別なセットを組まない限りは3万人以上入るのだろう。

  となると、この会場でのライヴ。ここ数年のミスチルのライヴとしては最もキャパの大きい会場という事になる。ドーム以来か‥‥そう考えたら、少し不安になってきた。

  上野から高崎線を利用して25分。「さいたま新都心」駅に16時半に到着。開場が18時だったので、とりあえずグッズを購入し、それまでの時間を「ジョン・レノン・ミュージアム」で過ごす事にした。これについては別項で書くとして‥‥正直、ライヴの前に行かなきゃよかった、とさえ思った。ヘヴィな気持ちのまま、18時が過ぎ、入場を待つ列に加わった。入り口は1つ。これだけの人数が入るにも関わらず‥‥アリーナ席のみ別の入り口らしいが、どうなんだろう?

  俺のポジションは2階席の19列目(5階まであり、2階と4階が通常のアリーナを囲う形で、3階と5階がバルコニーのような形で席数自体は少ない。要するに4階が通常の3階みたいなもんだ)。ステージ向かって左側サイドの後方といったところだろうか。前回が代々木の右側サイド後方だったから、全く反対側というわけだ。けど、今日は横浜アリーナをちょっと大きくしたような作りのため、ステージがかなり遠くに感じる。しかもスクリーンを使用しないミスチルのこと。絶対にその表情まで確認する事はできないだろう。

  今回のステージもシンプルなものだ。鳥かごをあしらったようなステージセット。その天井には前回同様ミラーボールが3つぶら下がっている。鳥かごの前方には勿論柱はなく、その中でバンドメンバーが演奏するというような形になる。BGMにはマーチングバンドの演奏。何故、何故に‥‥!?

  19時を10分程回った頃、BGMの音量が大きくなり、暗転。黄色い歓声。久し振りだ、黄色い歓声なんて‥‥って確か前回も書いたような‥‥すると鳥かごの天井からスクリーンが降りてくる。そこに映し出される無機質な早送り映像。工場か何かの作業だろうか? バックの音楽がインダストリアル風のシンセサウンドに変わる。歓声が一層大きくなる。そしてアリーナ前方から悲鳴が。どうやらメンバーが現れたらしい。そして真っ暗のステージの上に動き回るひとりの男?の姿が‥‥恐らく桜井だろう‥‥そしてBGMは聴き覚えのあるコーラスが。1曲目は「Q」2曲目収録の"その向こうへ行こう"だ。イントロにはサビのバックトラックをアレンジしたものだった。そこから馴染みのあるギターへと。桜井は手ぶらだ。声はよく出ている。前回のツアーにおける"DISCOVERY"のような役割なのだろうか、この曲は。ミドルテンポのこの曲、ギターを持ってない桜井はとにかく動き回る。それが逆に浮いてるんだけど。こうやって聴いてみると、アルバムではそれ程印象に残らなかったこの曲も、前作での習作があったからこそこうやって完成型にたどり着いたんだな、という気もしてくる。習作とは勿論、あのRADIOHEADのパクリと言われてしまった、先の楽曲だ。今回の方が明らかにミスチルらしい。けど、これが1曲目というのはどうなんだろう? 客のノリはハッキリって悪い。ただ1曲目という事もあって、歓声は凄かったが‥‥

  ここでバンドメンバーについて説明しておこう。サポートメンバーは前回と全く同じ面々。「深海」ツアーから加わったギターの河口(こうぐち)修二。最近はゆずとも関わりがあるようだ。そして古くから繋がりのあるキーボードの浦清英。スキンヘッドで一見強面だが、気は優しい男だ。しかもこいつ、俺と同い年ときた(笑)。最後に前回のツアーから参加している、自身もソロシンガーとして活躍しているキーボードのSUNNY。ゆずの前回のツアーまで参加していたそうだ(今回はミスチルとバッティングしてしまったため、こっちに参加)。シンガーソングライターとしてアルバムも出しているだけあって、今回はこの人がコーラスの要となっていた。このサポートを含む7人で、今回も前回以上に息の合ったプレイを最後まで聴かせてくれた。

  続いて桜井がアコギをぶら下げて、聴き覚えのあるサンプリング音が‥‥前作からの"光の射す方へ"だ。この難しい曲を楽々唄い上げる桜井に、思わずため息。どうやら復活後の彼らは本当に調子がいいようだ。サビの部分ではお約束の手を左右に振るアクション。俺は絶対にしねぇぞ!と代わりに腰を振る(笑)。そういえば、前回のツアーでも思ったが‥‥ミスチルってこんなに音小さかったっけ? サウンド極悪のドームは除いて、横浜アリーナや武道館での彼らの音はもっとデカくて、しかも歌も聴き取りにくいものだったと記憶していたが‥‥前回のツアーもそうだったが、とにかく歌がクリアーに聞こえて、歌詞まで聴き取れた。今回は更にギターの1音1音ハッキリしていたし、キーボードの音もしっかりしていた。けどリズム隊‥‥ベースはモコモコして聞き取りにくく、ドラムに至っては遠くで鳴ってるような音‥‥アリーナ特有のミックスのような気がした。ドームで観るBON JOVIなんかはもっとリズムが効いてたような気が‥‥それを抜きにすれば、今日のサウンドは問題なかったように思う。

  エンディングでのスローになるパート(テンポが半分になる所ね?)を変えて、ずっと同じテンポのままエンディングへ。桜井の「光の射すほぉ~えぇ~♪」の一節で終了。大きな拍手。賛否両論の多かった前作からのこの曲も、ライヴでは人気曲のようだ。なぜこの曲が40万枚程度しか売れなかったのか‥‥そのままバンドは同作からの"ニシエヒガシエ"へ。この2曲の流れは絶品だった。前回のツアーでは桜井がアコギを持ってトリプルギター体制だったが、今回は桜井手ぶら。右へ左へど動き回る。中間パートでは、原曲に忠実なスローでダークなワウワウを使ったソロへ。そういえば前回は全然違うアレンジだったんだよな、このパート(詳しくは、限定ライヴアルバム「1/42」を聴いて欲しい)。やっぱこの曲はライヴ向きだわ。今後は「Atomic Heart」における"Dance Dance Dance"の役割を果たしてくれるんじゃないかな、この曲。是非これからもやり続けて欲しい。

  この曲が終了し、暗転したステージにひとつのピンスポが桜井を照らす。テレキャスターをぶら下げている。適当にコードをつま弾いた後に、彼が唄い出す。「息を切らしてさぁ~♪」弾き語りアレンジでスタートしたのは、やはり前作からの"終わりなき旅"だ。どうやら前半に前作の楽曲をまとめたらしい。つうか、唄うのが難しいこれらの楽曲は前回のツアーでは後半にプレイされていたから、今回は前半の、調子がいい時に完璧な状態でやってやろうってな気合いを感じた。アルペジオに合わせて唄う桜井の歌にはいつも以上の説得力を感じる。言葉のひとつひとつが胸を突き刺す。俺自身の「第2のスタート地点」ともなったこの曲を久し振りに聴いて、本当に目頭が熱くなってきた。どうしてもミスチルのライヴに来ると、それぞれの楽曲と自分との思い出がオーバーラップする。何か嫌だな‥‥(苦笑)ワンコーラスを弾き語りで唄いきった後、バンドが加わる。ちょっとスロー気味だった気がするが、この方が歌に説得力があるような気が。前回のツアーでは、この曲が「バンド・ミスチルを取り戻す」演奏だったのに対し、今回はそういうものを感じなかった。どちらかと言えば「シンガー・桜井を全面に出した」演奏のように感じた。最初の弾き語りにしろ、歌を大切にしたテンポにしろ‥‥何かが変わってきているような気がした。とにかくこの曲がこの日最初のピークだったことには違いない。

  この後、この日最初のMCに。初めての会場で気合いが入っているとか、この会場が今回のツアーで最大のキャパだとか。そうそう、この日はカメラが入っていたんだった。ステージサイドにカメラクレーンがあった事から、会場に入ってすぐに気付いていたが。桜井は「僕のポケットマネーでビデオ収録してます。個人的趣味で後で一人で観て楽しみます(笑)。裏ビデオとしても流通しますが(笑)。だから僕より大きな声で唄わないでね?」ってあんた、そんな弱気でどうする!?(苦笑)

  更にMCは続き、「今日は大宮って事で、家から車でここまで来たんだけど、会場周辺に変なおばさんがいっぱいいてね。みんなクルクルパーマで、すっごいボリュームがあるんだよね(笑)。で、みんな白だとか青だとか紫だとか色染めててさ。で、よく考えてみたら‥‥今日は節分なんだよね?」‥‥はぁ~‥‥小話かよ(苦笑)。会場から薄ら寒い笑い声が‥‥桜井「いくら滑ってもMC部分はビデオからカット出来るからね!」(笑)こらこら‥‥もともと桜井のMCってこんな感じなんだけど、今日は今までとちょっと違って、更に落ち着いていたような‥‥やっぱビデオ収録を意識しての事か? そういえば、この翌日(2/4)の同会場でのライヴはインターネット中継されるんだよね。その為ビデオが入ってたんだと思う。まぁ出来が良ければ今年後半あたりに初のDVDソフトなんてのもリリースされるかもね?

  と、彼らにしては長いMC(笑/とはいっても、5分もないけど)の後は、ちょっとクールダウンした楽曲で綴られていた。まずはシングル「口笛」のカップリングでアルバム未収録の"Heavenly Kiss"。タイプとしては初期ミスチルが得意としていた、ちょっとお洒落で落ち着いたイメージの楽曲。初めて聴いた時は「Atomic Heart」の"クラスメイト"に似ているな?って思ったけど、まさかライヴではその"クラスメイト"に間髪入れずに繋ぐとは‥‥確信犯だな、こりゃ。で、その"クラスメイト"、多分'94年12月以来じゃないかな、演奏されたの。少なくとも俺が聴いたのは、同年同月の武道館以来だわ。ブラスのパートは意識的にカットされ、ちょっと短くなってたような気も。そういえば、この曲が始まった時、歓声とか奇声ではなく、「オォ~」っていう低い声でどよめきが起きたのが印象的だった。誰もやるなんて思ってなかったんだろうね? やるならもっとメジャーなシングル曲だと思ってたのかも。"CROSS ROAD"とかさ(結局、インタビューでは散々やるだの何だのと言ってたこの曲、今日の今日まで披露されてない)。

  この2曲に続いて、新作からの"ロードムービー"がスタート。前2曲では手ぶらだった桜井も、この曲ではアコギを弾いている。どうやらこのパートは「みんながイメージする初期ミスチル的楽曲」パートのようだ。そうそう、この曲への歓声が新作の楽曲の中では一番多きかった事も付け加えておく。俺も大好きな曲だ。桜井はここまで、特に辛そうだとも思わず、楽々こなしてるような印象を受けた。

  そしてその「初期ミスチル的楽曲」パートの最後を閉めるのは、初期の名曲"抱きしめたい"‥‥恐らく、この日最大の歓声だった。ここが第2のピークかな。この曲も俺にとっては大切な曲。丁度この曲がリリースされた頃、最初に彼らを知る切っ掛けとなった曲であり、当時辛い恋愛をしていた思い出とオーバーラップする。そしてその恋愛が終わった時期に発表されたのが"終わりなき旅"だった‥‥ミスチルにとっても、そして俺自身にとってもこれらの楽曲は人生の節目節目に発表されているのだった。ちょっと感傷的になってウルウルしてしまう。よかった、ひとりで来て(苦笑)。そうえいばこの曲、前回のツアーでは最後の数回でしか演奏されなかったような記憶が‥‥毎回セットリストの一番最後に載っていたらしいんだけど。ライヴアルバムにもボーナストラックでその音源が入ってるけど、サックスは誰が吹いているのかがずっと気になってて。その前まではブラス2人が参加してただけに、この7人体制でどうこなすのか‥‥答えは簡単、浦くんがソプラノサックス吹いてたのね。お見事!

  8曲を終え、一段落。何かここまでもの凄い盛り上がりを見せていない気がする。例えばみんなが望む、活動休止前の大ヒットナンバーが1曲も披露されていない点。"抱きしめたい"をやったものの、これはみんなで盛り上がるってタイプの曲じゃないしな。どうも今回の選曲を見てみると、「シンガー・桜井」をこれまで以上に前面に打ち出した内容のように感じる。これまでは桜井が嫌でも前面に出てしまっていたが、やっぱり最後には「バンド・ミスチル」というのが残ったのだけど‥‥俺が新作を聴いて感じた点を、今回のツアーでも感じてしまうとは‥‥どうやら、本当に彼らは変わりつつあるのかもしれない。考えすぎだろうか?

  ここでもMCを。「今演奏された"抱きしめたい"って曲は'92年にシングルで発表された曲で、もう9年も前の曲なんですね‥‥早いもので、僕らももう9年、バンドを始めてからもう16年近く経ってしまって、人生の半分以上をバンドで過ごしています」これは結構感慨深かった。そうか、来年で10年なんだ、ミスチル‥‥「何でも長くやればいいってものでもないんで、これからも凝縮した濃い音楽活動が出来たらな、と思ってます」って何真面目な話してんの? 解散か?(苦笑)

  更に「シングルのカップリングナンバーってのは、結構A面やアルバムにも入らないような、意外といい加減に作った曲が多かったんですよ。でも、そういう曲にこそそのバンドの旨みみたいなものがあったりするんですよね? 食堂や料亭でいうと、料理人の賄い飯にこそ、その料理人の腕が端的に現れるというか‥‥って何僕は真面目な話してるんでしょうね?(笑)」言いたいことはよく判った。奥田民生もこないだテレビで同じような事言ってたな。狙って作った曲よりも、適当に作った曲の方がヒットしてしまうって‥‥

  こういうMCの後、「次の曲はそういう曲で、歌詞にコーヒーが出てくる曲です」‥‥そうか、なる程。前作に伴うシングルのカップリングにも関わらず、新作に入ってしまった"Surrender"か。ここでドラムとベースは1回休み。河口氏がアコギを弾き、SUNNYがピアノとコーラス、途中から田原の渋いギターソロが挿入される。桜井は今日、本当にギターを弾く比率が低い。前回のツアーでも最初から結構ずっとギター持ってたような‥‥この曲で、初めてSUNNYの歌の実力が発揮された。いい声してて、しかも上手い。桜井の声と上手くマッチしている。そして何より、田原のギターソロ。こいつ、こんなに上手くなったのか‥‥てっきり桜井が弾いてるもんだと思ってたが(笑)。ま、レコーディングでは桜井なのかもしれないけど、それを抜きにしても味があって上手いと思った。前回のツアーあたりからいよいよその実力を発揮しだした彼だが、今日の田原はひと味違う。そう、堂々としてる感じなんだな。段々とギタリスト然としてきたというか。ま、それでも他のリードギタリストと比べれば雲泥の差だが(苦笑)。

  しんみりしたこの曲の後は、アルバムと同じ流れで"つよがり"へ。オーケストレイションはキーボードでのサンプリングではなくて、どうやらテープ(所謂A-DATか?)を使用しているようだ。楽器構成は前の曲と全く同じで(河口がアコギ、田原がエレキ)、今までの彼らにないくらいしっとりと聴かせる。前作のツアーでは"Simple"や"ラララ"が同じような役割を果たしていたし、その前のツアーではアコースティックコーナーがあったので、この2曲はそれに匹敵する、いやそれ以上の役割を果たしていた。桜井の無理のない唄い方が非常に印象的で、ただ叫ぶだけでない、ロートーンで感情を込めて唄うという意外と難しいこの方法をモノにしたようだった。男として、そしてミュージシャンとしての転機をこの1~2年の間に迎え、この人は更に前進しているようだ。そしてそれに食い付いていくかのように、他の3人のメンバーの実力もアップしていることを、この2回のツアーでひしひしと感じた。未だにアイドルバンドと見なされる事の多いミスチルだが、もう佐野元春とかその辺と同じレベルで語られてもいいように思う。


  2曲のアコースティックコーナーが終わり、ちょっとの間の後、バンドがジャムセッション風の即興演奏を始める。ギターとピアノの絡みが渋くてカッコイイ。そしてTシャツに黒の皮パンツ姿の桜井が登場し、"十二月のセントラルパークブルース"がスタート。ここでおやっ?っと思う‥‥チューニングを下げているのだ。違和感を感じたのはキーが下げられていたためだった。確かにサビが相当高いキーで唄われているので(新作の楽曲はこれまで以上にキーが高い曲と、これまでよりも低いキーで唄われている点が非常に印象的だった)、こういう事も必要だろう。これまでもミスチルは、「深海」ツアーで数回、"花"を半音下げで演奏した事が何度かあったが(ツアー始まって1ヶ月経った頃かな?後半は元のキーに戻ってたけど)、ライヴやツアーが長丁場になると、こういう必要性も出てくるだろう、ボーカルの負担を減らす為に。こういうシンプルなロックンロールでは特に気にならなかった。桜井はギターも持たずに右へ左へと、息を切らしながら走り回る。ここでも田原のギターが良かったな。

  続いて再び新作から、ロックンロール曲"スロースターター"へ。桜井がギターを持つ。原曲のキーのままだが、サビでの桜井のシャウトが少々厳しそうだ。けど、それも取るに足りない問題だ。数年前程酷いとは感じないし、常にサビで辛そうだったとも感じなかったし。今回は"ラヴコネクション"を削っているので、この2曲が後半戦のロックンロールメドレーの役割を果たしているようだ。レコーディングでもジャムっぽい雰囲気を残す事に力を入れたらしいこの2曲は、やはりライヴでは生き生きとしている。ちょっと客の反応が鈍いようにも感じたが‥‥

  エンディングを引っ張るだけ引っ張って、そのままメドレーっぽく間髪入れずに"everybody goes"へ突入。久し振りに聴く曲だが、なんかもったりした演奏だな?と感じた。ライヴで聴くのは好きな曲だけど、今日はそれ程感動とか嬉しさとかを感じなかった。演奏し慣れてる曲のはずなのに、どうもぎこちなさを感じた‥‥何故だろう? サビでは手を左右に振るお客。嬉しくて仕方ないらしい。けど、ステージに目を向けるとそれ程盛り上がってない(ように俺のポジションからは感じられた)メンバー。「お仕事」として演奏してるのだろうか?

  この曲もエンディングを引っ張り、その間に桜井はエレキからアコギに持ち替え、ドラムがカウントを取ってメドレーっぽく"名もなき詩"に突入。この日3回目のピークが‥‥サビでは当然「手扇」の嵐‥‥正直に話そう。この曲は「深海」ツアー以来毎回聴いて/観てきたが、今日の演奏が一番ピンとこなかった‥‥感動もしなければ、嬉しくもなかった。前の曲からの繋ぎにもちょっと違和感を感じたけど、それ以上に感じたのは最初に書いた通り、演奏する側の「新曲」と「代表曲」との体温差に違和感を感じたのだ。俺の思い違いであって欲しいとは思うが、俺にはそう感じられてしまったのだ。歌詞だけは空で歌えるものの、なんかこれといった感慨深いものは何もなかったなぁ‥‥俺自身が今年に入ってから既に5本目のライヴって事で、感覚的に麻痺でもしてたのだろうか? それにしても‥‥嫌な感じだった。

  ここまで特にMCもなく、この後もアンコール時まで桜井が話すことはなかった。アコギを持ったままの桜井が奏でたのは、新作「Q」のトップ"CENTER OF UNIVERSE"だ。そうか、このポジションに持ってきたか‥‥正直、アルバムを最初に聴いた時は「あ、この曲がライヴのトップだな?」と実感したが‥‥個人的には徐々に徐々にと盛り上がっていく、如何にも復活後の彼ららしい楽曲なのでライヴのトップバッターにはピッタリだと思っていたが。特に最新作にはアップテンポの楽曲が少ないので、後半に山場を作るという意味ではこのポジションもありかもしれない。この辺に如何に最近の彼らが過去の楽曲に頼っていないかという姿勢が伺える。リズムがテンポアップするところで桜井はギターをローディーに預けて暴れ回る。今の彼(ら)の前向きな姿勢を端的に表したこの楽曲は、観客にも受け入れられているようだ。現時点で、最新作の中で俺が最も優れた楽曲だと思っているのがこの曲だ。

  このテンションを受け継いだまま、桜井は馴染みのあるテレキャスターを抱える。河口がアコギでコードストロークを‥‥最新シングル"NOT FOUND"だ。この曲でもキーが下げられていた。特にテレビでも感じたが、この曲は特別唄うのが難しいように思う。その上キーも高いのだから仕方ない。特に違和感はなかったが‥‥何か桜井がエレキをがむしゃらにかきむしる様に、今までの彼らから感じたことのない狂気のようなものさえ感じた。そしてその佇まいに、アリーナロック然としたオーラすら見えたような気がした。そうか‥‥何となく判ったような気がした。彼ら(特に桜井)は、俺達聴き手が認識しているミスチルのポジションよりも、更に上を目指し、結果(この日観た感じでは)そこへとたどり着きそうな勢いなのだ。どんなに大会場で演奏しようが、常に手が届きそうな存在。前回までは常にそんなイメージがあったが‥‥今の彼らにはそれが感じられない。何故だ? 彼ら自身、偶像だとかヒーロー視される事を拒否し、あくまでひとりの人間として、そしてミュージシャンとしてあろうとした結果、見つけたものが前作「DISCOVERY」には確かにあった。しかし、「Q」というある意味もの凄く個人的なアルバムを発表した後、彼らが向かった先‥‥彼らが求めた答えは「DISCOVERY」の時とは違うもののように思える。いや、本人達は同じものを手にしようとしてるのかもしれない。しかしこの日見せられたものからは、何か別のもの‥‥もっと巨大化した「何か」をイメージした。俺自身、最も考えたくない結果が‥‥もしかしたらこの先には待ってるのかもしれない。近い将来、そう、本当に近い将来にその結果が出されるのかも‥‥この俺の「勝手な想像」が間違っている事を祈るばかりだ。

  そんな事がこの曲が演奏されている間中、俺の頭の中を駆けめぐった。そうこうしてる内に曲は17曲目、"Everything is made from a dream"へ。初期ミスチルと現在の彼らが融合したかのようなこの佳曲もチューニングを下げられていた。はやり後半かなりキツイのだろう、最新作の楽曲は。桜井は再びギターを持たずに右へ左へと走り回る。中盤のナレーションパートでは、再び天井からスクリーンが下りてきて、そこにはこの楽曲の中にも出てくる手塚治虫作の「鉄腕アトム」誕生シーンが映し出される。ジョン・レノンの記念館が隣にある会場で、鉄腕アトムを上映する‥‥この曲にピッタリのシチュエーションだ。が、しかし‥‥この映像、そしてナレーション(アルバムで朗読されているパートの前にも更にいろいろ付け加えられていた。しかもそのナレーションもアトムをやってる声優さんと同じ人?に読み直してもらったようだ)がとてもクドく感じたのだ。とても説教臭く‥‥何か、「Atomic Heart」ツアーでの"Asia"や、「深海」アルバム再現時の映像みたいで、何かとても嫌ぁ~な空気を感じた。勿論、そんなの俺だけだろうが‥‥桜井自身、ああやって映像に頼るのは嫌がっていたにも関わらず、今回またしても映像を(たった数カ所であるにしろ)使った事に、余計危機感を感じてしまった。前の曲で感じた危機感が、ここで更に拍車がかかった。

  本編最後の曲は、アルバムの核となる大作"Hallelujah"。この曲もやはりキーを下げられている。この曲で本編を終える事には俺も大賛成だ。しかし、どうにもメンバーのその思いは聴き手にまで伝わっていないようだ。前の曲でのあの映像が、まだヘヴィな空気を残したままなのだ。エンターテイメントは説教臭くなってはいけない。説教自体はいろんなところに散りばめられているだろうが、それをああいう形であからさまに表現する事には疑問を感じる。しかもそれをエンディング間近にやるとは‥‥この曲のエンディングパートでは観客に「はっはれっ、はれっはれ~るぅ~、はぁ~れ~るぅ~や、はぁ~れるぅ~♪」と唄わせるのだけど、どうにもノリが悪い‥‥楽曲自体がそこまで浸透していない事もあるだろうし、この曲が核となっている事も伝わっていない。観客は"innocent world"や"Tomorrow never knows"といった楽曲を求めているのだ。

  曲が終了し、桜井の「またね~♪」という声が空しく響く。会場からは「エ~!?」というブーイングに近い声が。誰もがこの曲で終わるとは思っていなかった。誰もがこんなに重い空気のまま終わるとは思っていなかった。不満が残る。だから大きな手拍子が会場を包む。アンコールを求める声‥‥

  バンドメンバーが現れる。桜井「もう2,3曲やってから帰ります!」といって披露されたのは、新作の中でも最もコミカルな"友とコーヒーと嘘と胃袋"だ。一休みしたためか、この曲はオリジナルのキーに戻っていた。ファンキーなベースラインを刻む中川にやっとスポットライトが当たる。桜井の節回しもどことなく演歌チックで、会場からも笑みがこぼれる。さっきの不満が嘘のように‥‥中盤の桜井の独断場となる「しゃべり」パートはカットされ、その代わりにメンバー紹介の場となっていた。曲にあわせて河口、浦、SUNNYの順に紹介され、最後に「そして俺達、フニャちん男4人集。We are MR.CHILDREN!」‥‥って‥‥珍しく下ネタかい、桜井‥‥(苦笑)エンディングのリフレインでは「飲み込んで~消化して~♪」と観客に唄わせる。ちょっと声が小さかったように思ったが、それでも前よりはましだ。かなり唄えている方だろう。桜井のアドリブも上手い具合に絡んでくる。そうそう、彼らにはこういうファンキーな面もあったんだよな、そう思い出させるに十分な楽曲だった。

  続いて披露されたのは、名曲中の名曲、"口笛"だ。原曲のキーのまま、桜井はアコギをつま弾きながら唄う。この時期にぴったりな、心温まるナンバーは会場をも暖かい空気で包み込んだ。泣けてくる。何だかとても泣けてくる曲だ。昨年、最もヒットしたサザンの"TSUNAMI"と同じコード進行を持ち、しかもほぼ同時期にリリースされたこの曲。方や300万枚近い空前の大ヒット、方や100万枚にも満たない中ヒット(でも共に1位取ったけど)。10年経った時、どっちを聴きたいと思うかは判らないが、俺にとってはどっちも大切な、心に響く曲。こうやってミスチルがこの曲をこのポジション(結果的に一番最後)に持ってきたという事は、それだけこの曲に拘りを持っているという事に違いない。もし‥‥もし彼らに「続き」がなるのなら、もっともっと、普遍的な、みんなに届く歌を作り続けて欲しい。そう願って止まない。

  暖かい香りを残したまま、彼らのライヴは終了した。前回が2時間ピッタリのステージだったことを考えると、今回の約2時間半という時間はかなり長く感じた。けど、それも実際に時計を見て気付いた事であって、ライヴの最中には時計なんて気にならなかった。全部で20曲演奏、しかもその内の13曲は新作、及びそのシングルのカップリング曲だ。前作「DISCOVERY」収録曲を足すと16曲。つまり、活動休止前の楽曲はたったの4曲という事になる。穿った見方をしてしまえば「聴き手/オーディエンスを無視したライヴ構成」という事も出来る。まぁ今の彼らにとって如何に新作が大切が物か、自信作かというのが伺える内容でもある。

  ただ、どうしても気になってしまうのは、曲の並べ方。これははっきり言ってあまり良くないと思った。アンコールはあれで問題ないだろう。ただ、もう1曲‥‥代表曲と呼べる過去の曲が欲しくもないな、とも思った。"innocent world"をやって、その後に"口笛"やられたらもう鳥肌モンだったろうなぁ、なんて今言っても仕方ないが‥‥

  それと、最初に述べたように、新曲(「DISCOVERY」の曲も含む)と活動休止前の曲との温度差がどうしても気になってしまった。いっその事、ライヴ本編は新曲のみにして、アンコールを少し長めにして代表曲をやるってのはどうだったのかな?と考えてみた。けど、それも彼ららしくないかな。新作は特にコンセプトアルバムというわけでもないので、あの曲順通りに演奏する必然性も感じられない。間に過去の大ヒット曲を挿入するというのは正しいが、そうなるとやはりこういう温度差‥‥特に演奏する側の‥‥を感じてしまう。観客は最新作よりも過去のヒット曲を求め、バンドは過去の曲よりも最新の曲に力を入れる。これはどのバンドでもそうだろうけど、ここまでそれが端的に現れたライヴも久しくなかったように思う。

  ミスチルが今後どこへ向かっていくのかは判らないし、そもそもこのまま活動を続けるのかも判らない。現時点ではツアー終了後の予定は不明だ。新曲を発表するのかも、今回のツアーのビデオが商品として流通するのかも判らない。もしかしたら最も「らしく」ないベスト盤ってのもあるかもしれない。こうやって同時期に登場したバンド達(LUNA SEA, YELLOW MONKEY, シャ乱Q, JUDY AND MARY)が解散もしくは活動休止する中、最も順調な活動を送っているミスチルには現在、その噂はない。一度あった危機を乗り越えて、今は違った態度で臨んでいるのかもしれないが‥‥ちょっと今後の動向には目を離せない。俺自身、今後彼らがどこへ向かっていくのかを見届けたいと思う。何となく、ここまでくるとそれが使命のような気もするし‥‥(苦笑)


[SETLIST]
01. その向こうへ行こう
02. 光の射す方へ
03. ニシエヒガシエ
04. 終わりなき旅
-MC-
05. Heavenly Kiss
06. クラスメイト
07. ロードムービー
08. 抱きしめたい
-MC-
09. Surrender
10. つよがり
11 .十二月のセントラルパークブルース
12. スロースターター
13. everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-
14. 名もなき詩
15. CENTER OF UNIVERSE
16. NOT FOUND
17. Everything is made from a dream
18. Hallelujah
[encore]
19. 友とコーヒーと嘘と胃袋
20. 口笛



▼Mr.Children『Q』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 02 11 12:00 午前 [2001年のライブ, Mr.Children] | 固定リンク

2000/11/21

Mr.Children『BOLERO』(1997)

  前作「深海」から約8ヶ月後というハイペースでリリースされた6作目のアルバム。内容的には4作目「Atomic Heart」('94)以降に発表されたにも関わらず、コンセプトから外れるという理由で「深海」からオミットされたシングル曲4曲と、「深海」の楽曲と同時期に書かれた曲を1枚にまとめたもので、考えようによってはバラバラの内容になってもおかしくないのだが、これが意外といい流れをつくっている。新曲群のレコーディングは前年('96)8月から「深海」のツアーが続く中、その小休止ともいえる11月末~12月にあったオフのほんの数週間を使って、ビートルズで有名なイギリスの「アビーロード・スタジオ」でその骨格部分を録音、残りは続くツアーの合間に日本国内で作業されたようだ。

  この「BOLERO」は内容的に、前作「深海」と正反対でありながら「対」のような存在である。「深海」がアナログ録音なのに対して、「BOLERO」はデジタルを駆使している点。前者がアメリカで制作されたのに対して、後者はイギリス。前者はコンセプトアルバムとしての流れを持っているのに対して、後者はナンバー1ヒットを5曲も収録したポピュラーな作り、等々。桜井は当時のインタビューで「本来は2枚組としてリリースされるべき2枚だった」と発言していて、「『深海』というのは『BOLERO』というアルバムの中の、1曲として考えている」とも表現していた。こういう事からも、「BOLERO」というアルバムが決して"Tomorrow never knows"や"シーソーゲーム"を収録するだけの為に作られた『やっつけ仕事』ではない事が判る。楽曲が作られた時期はほぼ同時期であり、たまたま「深海」の流れにはそぐわなかっただけで、捨て曲でもアウトテイクでもない。残念ながら現在(2000年11月現在)ではこのアルバムからはこれらのシングルナンバーしか演奏される機会がないが、決して侮れない、ある意味『今のミスチル』を知る為には通過せねばならぬ「踏み絵」のような存在なのだ。


★アルバム「BOLERO」全曲解説★

◎M-1:prologue
  そのタイトル通り、このアルバムのプロローグともいえるインタールード。オーチャードホールで収録されたオーケストラパートの、ほんの一コマなのだがアルバムタイトルの如く、徐々に、徐々にと盛り上がっていくのが印象的。次の曲への期待感を、いや、このアルバムへの期待感を膨らますに十分な役割を果たしている。

◎M-2:Everything (It's you)
  このアルバムの為の新曲群の中から、唯一シングルとしてリリースされたバラードナンバー。ドラマ主題歌に起用されていたので、ご存知の方も多いだろう。この曲に関しては逸話があって、当時のインタビューで桜井は「AEROSMITH辺りがやりそうな、男っぽいアメリカンHR的バラードをイメージしてアレンジした。レコーディングでも(ギターの)バッキングにVAN HALENモデルのギターを使ってそういう質感を出そうとした」と語っていた。桜井のイメージからは想像も出来ないバンド名が登場したが(笑)、なる程、そうイメージして聴いてみると、そう聞こえなくもない。ギターソロの枯れた感じ(最初の4小節が田原、残りは桜井が弾いているそうだ)がどことなくジョー・ペリーを思わせる、かな?(笑)
  そういえばこの曲の歌詞に関しても、いろいろな憶測がある。何故「愛する人よ」ではなく「愛すべき人よ」なのだろうか? 「~すべき」という表現は「~しなくてはならない」という義務感を感じさせる。つまり「愛さなくてはならない存在」に対してこの歌は唄われているのか? この曲の歌詞にはそういう義務感のようなものが多々見受けられる。その象徴ともいえるのが、サビの「自分を犠牲にしても/いつでも/守るべきものは/ただ一つ/君なんだよ」という表現。当時の桜井の状況を考えるといろいろ深読みも出来るのだが‥‥さて、みんなにとっては「愛する人」=「愛すべき人」なのだろうか? そしてあなたの「何を犠牲にしても、守るべきもの」とは何?

◎M-3:タイムマシーンに乗って
  滑り落ちるようなコード進行のギターリフからスタートする攻撃的なロックナンバー。何が攻撃的か? そのサウンドもさることながら、やはり歌詞‥‥何処に向かって発しているのか理解に苦しむ、自暴自棄な内容にギョッとする。「時が苦痛ってのを/洗い流すなら/タイムマシーンに乗って/未来にワープしたい」現状への不満・疑問、そしてそこからの逃避。逃避した「僕」は現代の「僕」に対して「この世に生まれた気分はどんなんだい?」と問いかける。しかし最後に逃避した「僕」は「どうか水に流してくれ/愚かなるこのシンガーのぼやきを」と呟く。ぶっちゃけた話、これはシンガー・桜井の愚痴で成り立っているようなもんだ。しかし、そんな中にもいろいろなひねりがある。「タイムマシーン」という事もあって、問いかけの対象は過去の偉人にも及ぶ。宮沢賢治、ルイ・アームストロング。そして恐らく、サビの「How do you feel?」「どんなんだい?」というフレーズは、ボブ・ディランの名曲"Like A Rolling Stone"の一節「How does it feel?」から派生しているのではなかろうか?
  正直、このからは「諦め」しか感じられない。それが衝撃だった。「管理下の教室(こや)で/教科書を広げ/平均的をこよなく愛し/わずかにあるマネーで/だれかの猿真似」「恋の名の元に/少女は身を売り/プライドを捨てブランドを纏った」といった事を「それが僕たちの世代です」と言い切ってしまう。それに対して逃避した「僕」は「どんなんだい?」と問いかける。「君に幸あれ/きっと明日は晴れ/本心で言えるならいいですね」と言いながらも「どうか水に流してくれ」と前言を打ち消す。俺が言った(唄った)ところで何も変わらないよ、とでも言いたいのだろうか? 桜井はどういう気持ちでこの歌詞を書いたのだろうか? そしてどういう気持ちでこの歌を唄ったのだろう? 是非とも伺ってみたいもんだ。「気分はどんなんだい?」って。

◎M-4:Brandnew my lover
  アルバム冒頭からネガティヴ2連発。これまたエフェクトかけまくったギターが印象的。Aメロの静かに流れるパートとサビでの爆発振りが対照的で、ふとNIRVANAでいう「強弱法」を思い浮かべた。間違いなくこのアルバムの核となる楽曲の1つであるのだけど‥‥もう間違いなく、この曲はミスチルの歴史の中で最もネガティヴな内容の歌だ。何せ「Fuckする豚だ」なんてフレーズまで登場してしまうのだから‥‥
  この曲といい、前の"タイムマシーン~"といい、ちょっと内容や背景を説明するのが難しい。勿論、歌詞というのは聴き手それぞれのイマジネーションによっていろんな解釈が出来る。仮に作者が唱える「正解」のようなものがあったとしても、それは聴き手にとっては無効だったりする事もある。所謂「歌詞の一人歩き」だ。ある歌詞は曲解され、ある歌詞は深読みされる。ではこの曲はどうだ? 今の桜井なら何て答えるだろうか。「“答え”なんてどこにも見当たらない」とでも言うのだろうか‥‥と、上手いこと次の曲へと繋いだな?(笑)

◎M-5:[es] ~Theme of es~
  '95年5月にシングルとしてリリースされた、同名のドキュメント映画の主題歌。ドキュメントとは勿論、ミスチルが成功を収めたアルバム「Atomic Heart」と、それに伴う2本のツアーを収録し、更にメンバーがコメントしていくというもの。この手のロック・ドキュメント映画としては'88年のU2「魂の叫び」が記憶に新しいが‥‥といっても12年前か。(苦笑)それだけこの手の映画というのが興行的に成り立ち難いかもしれない。過去にもTHE BANDやニール・ヤング、ツェッペリンがこの手のツアードキュメントを「映画として」発表しているが、大きな成功を収めたなんて話、聞いたことないし。特に現在のようにビデオやDVDなんて便利なものが流通していると、実際にライヴに足を運ぶよりも面白い、なんて事にもなりかねない。そういう意味ではあの絶頂期にああいうドキュメントを「映画で」発表したという事実に、拍手を送りたい。
  さて、楽曲について。一時期のポール・マッカートニーに通ずる壮大なバラード。「“答え”なんてどこにも見当たらない」この世の中、「何が起きても変じゃないそんな時代」だからこそ「流れるまま進もう」‥‥結局「栄冠も成功も地位も名誉も/たいしてさ/意味ない」んだし、単純に僕は「よろこびに触れたくて明日へ」走っていく。一転してここでは前向きさを感じ取る事が出来る。まぁ書かれた時期が違うというのも大きいが、実はこの歌詞を書いている時('95年1月頃)にあの「阪神大震災」があったというのも大きく関係していると思う。その頃、バンドはツアーで札幌にいたそうだ。歌詞を書きながら目にしたあの惨事。「何が起きても変じゃない」というのは桜井の正直な気持ちなのだ。そして「そんな時代さ覚悟はできてる」と決意表明。この曲辺りからミスチルが変わった、という声も少なくないが、果たして本当にそうなのだろうか? 苦悩の時代である中期ミスチルへの過渡期的作品と俺は解釈している。

◎M-6:シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~
  '95年8月にシングルとしてリリースされた大ヒットナンバー。つうかさ‥‥これってハッキリ言って、セルフパロディーだよね?(苦笑)過渡期の中、いろいろ進むべき道を模索してるっていうのがひしひしと伝わってくる。自分達がやりたい事とファンが求めるモノとの間で揉まれた結果が、この自らをパロったようなナンバーなのでは?
  それとこの曲、ビデオクリップでもお判りの通り、モロにエルヴィス・コステロをパクってるって。それは本人(桜井)もインタビューの中で言ってたしね。ただ、この頃から「プロデューサーやエンジニアに『○×風のアレンジで~』っていう表現はいい加減に止めたい」といろんな所で発言し出してた気がする。ここまであからさまにやっておいて、そりゃないだろう‥‥(笑)

◎M-7:傘の下の君に告ぐ
  THE SMITHSの"This Charming Man"をマイナーコードに転調したようなイントロが印象的な、アップテンポな小楽曲。ボーカルに絡みつくようなサックスのメロディーが気持ちいい。意外と今までなかったタイプの楽曲かも。
  ずっと気になってたのだけど、このタイトルの『傘の下の君』って誰なんだろう? 明らかにその『君』に向かって唄っているのだけど、その内容はと言えば消費社会(昨今の音楽業界も含む)に対する警告のようなもの。いざ頂点に立ってみたものの、そこには何もなかった、ただ真っ白な世界だった。過去に桜井はインタビューで、自身の成功についてこう表現した事があった。「100万枚売れたらどうなるんだろう?そこには何があるんだろう?」と。そしてその答えは『虚無』だった。その空しさを唄った楽曲群を収録したアルバムがまた350万枚近くものセールスを記録してしまうのだから、世の中皮肉というか何というか‥‥1年間の活動休止が既に決まっていたとはいえ、このアルバムの楽曲を前にした当時は「やっぱり解散なのかな‥‥」と感じたものだった。そう、誰もが二度と戻って来ないと思ってたのだ。"終わりなき旅"に出会うまでは‥‥
  そう考えると、ここで唄われている『傘の下の君』って、「100万枚売れたら~」って期待に胸膨らませていた頃の桜井自身なんじゃないだろうか?

◎M-8:ALIVE
  このアルバムの中で最も好きな曲は?と問われれば、真っ先にこの曲を挙げるだろう。それくらい好きな曲。恐らくミスチル全楽曲の中でもベスト3に入ると思う。きっと二度と唄われる事はないかもしれないが、これはあのネガティヴモードの中にあったミスチルが、間違いなく'90年代後半を突っ走って生き抜いたという『証』なのだ。
  この曲は何も俺にとってだけではなく、桜井にとっても意味のある楽曲のようだ。最後のテレビ出演での、一番最後に唄ったのはこの曲だったし、後に発売されたビデオクリップ集のタイトルもこの曲から取られた。活動休止前のドームツアーでも、クライマックスとなるパートで唄われたのがこの曲だ。サウンド的にはベースの和音をサンプリングしてループに使い、後半にいくにつれて大きな盛り上がりをみせる。どことなくU2を思わせるリズム隊や田原のギターワークが抜群だ。
  「自分を押し殺したはずなのに」「全部おりたい/寝転んでたい」なんてネガティヴな言葉が目立つが、俺はこの曲の中に微かな希望を見出したのを今でも覚えている。とはいってもそれに気付いたのはリリース後暫く経ってからだが。それに気付いた時、俺は「あぁ、大丈夫。ミスチルはちゃんと戻ってくるわ」と直感で感じた。確かにこの曲を唄っている今('96~7年当時)は「夢も希望もない」し「報いも救いもない」けど、「目の前の遙かな道を」ただ突き進んでいれば「やがて何処かで/光は射すだろう/その日まで魂は燃」やし続けていなくちゃ‥‥そして彼等は光を見出し、『光の射す方へ』目一杯走っていったのだ。そう、桜井は既にこの時点で『光は射す』という表現を使っているのだ。つまりあの"光の射す方へ"というのは、まさしくこの"ALIVE"に対する回答なのだ‥‥と俺は信じたい。

◎M-9:幸せのカテゴリー
  従来のミスチル的楽曲でありながらも、歌詞が結構痛烈だったりする。"シーソーゲーム"が単なるセルフパロディーに終わったのに対して、ここでは初期ミスチル的ナンバーに皮肉混じりの歌詞を乗せるという荒技に出ている。このアンバランスさというかぎこちなさが、当時は気持ち悪かったりした。投げやりな内容の歌詞が多い新曲群の中で、これもそのひとつかと思って歌詞に目をやると‥‥桜井的『男の弱さ』が最後に溢れんばかりに爆発してたりするところに、ちょっと安心。(笑)男の弱さって意味では「Atomic Heart」における"Over"をふと思い出すが、あっちが恋人同士の別れだったのに対し、こっちの"幸せのカテゴリー"には‥‥別に桜井と重ね合わせている訳じゃないが(苦笑)‥‥もっと深い関係、例えば同棲していたカップルとか、あるいは結婚していた夫婦だったり、そういうものを感じる。『重み』を感じるのだ、言葉のひとつひとつに‥‥まぁその辺の解釈は、あなた方自身の私生活と重ね合わせてみると、また変わってくるのだろうけどね。(笑)

M-10:everybody goes -秩序のない現代にドロップキック-
  '94年12月にリリースされたシングルナンバー。当時桜井は「サザンでいう"勝手にシンドバッド"的お祭りバカナンバーが欲しかった」とこの曲を表現していた。プロデューサーの小林武史氏は「サウンド的には桜井から『ストーンズ的ロックンロールをJESUS JONESみたいなデジタルでダンサブルなアレンジでやりたい』という注文があったが、出来上がったものはそれとはまた違った形だった」と後にインタビューで発言している。ライヴでも必ずエンディングの山場で演奏される事の多い、まさしくバカ騒ぎナンバー。
  本来この曲って"Tomorrow never knows"のカップリングとしてレコーディングされたのだが、桜井の思い入れが"Tomorrow~"より勝ってしまい、カップリングから両A面に、そして終いには単独のシングルとしてリリースする事になってしまったのだった。それ位彼はこの曲に思い入れがあるらしい。「ノンタイアップでこういうストレートなロックナンバーがナンバー1になったら爽快じゃない?それこそ『退屈なヒットチャートにドロップキック』してるようなもんだよね?(笑)」なんて当時も言ってた程だ。
  やっぱり歌詞なんでしょうな。ミスチルが今のような路線にシフトチェンジする為の、記念すべき第1歩だったように思う、今となっては。だって「秩序のない現代に水平チョップ」だもん。(笑)

◎M-11:ボレロ
  そもそも「ボレロ」というのはスペインの民族舞曲のひとつで、同じ単調なリズムの繰り返しの中から静かに始まり、徐々に盛り上がっていく種類の音楽だ。「愛と哀しみのボレロ」という映画があったが、あそこでのメインテーマを思い浮かべてもらえば、それがどういったものかお判りいただけると思う。
  さて、ミスチル流ボレロは‥‥このアルバムの(ある意味)最後を飾る、そして当時のライヴでもアンコールの1番最後に唄われた曲だ。「もう神も仏もない」「君しかいない/君こそ未来」「いつだって年中無休で/君を愛してゆく/七転八倒の人生も/笑い飛ばしてゆく/感情をむき出しにして/朝から晩まで/裸のまんまで/暮らしたい」「本能のまんま自由にして」‥‥何か、最後にこの曲を聴くととても空しくなるのは何故だろう? 普通に唄われたらきっと、凄く熱いラヴソングだな?位にしか感じないのだろうけど‥‥何故だろう。ある意味このアルバムのテーマともいえる楽曲のはずなのに、ここにあるのは‥‥自らの『迷い』とか『憤り』『怒り』『諦め』。そういったものを必死で『他者を愛する』事で拭い去ろうとしている、ひとりの男の情けない呟きのようなもの。「結局さ、俺にはお前しかいないし。もういいよ、全部どうでも。ただお前が傍にずっといてくれてさ、ずっと抱き合っていれればいいよ‥‥」的ムードを感じてしまうのだ。これってきっと深読みなのは判ってる。けど、この流れで聴いていると、俺にはどうしてもそう感じてしまうのだ。何故なら‥‥当時の自分も、正にそういうモードだったから‥‥という独白をしてどうする、俺!?(苦笑)

◎M-12:Tomorrow never knows (remix)
  桜井自身が「この曲はここに入れるしか収まりがつかなかった。まっ、ボーナストラックだと思って下さい。アルバムは一旦"ボレロ"で終わるけど」と言っているように、確かにこの楽曲群の中ではここしかないわな? '94年11月にリリースされた、ミスチル史上最大のヒット曲。ドラマ主題歌としても有名。このバージョンはアルバム用に一部再録音・リミックスされている。シングルではドラムが打ち込みだった事、もっと深いリバーブが全体にかかっていた事が特徴として挙げられるが、ここではライヴで培われた経験から、ドラムを生ドラムに、そしてアルバムのトータル性を考えてリバーブを極力抑えて生々しさを全面に打ち出している。
  『痛み』を唄ったこの曲がこれだけ支持されたのは、なにも当時のミスチル人気だけがその理由ではなさそうだ。これだけ多くの人間に共感を与えた歌詞、そして耳に馴染みやすいメロディが一体となった時に生み出すパワーが、正にピークに達したのだと思う。"innocent world"がピークだと思っていた我々は、正直腰を抜かした。そしてこの時点で「桜井は本物」と認識したのだった。


◎最後に

  桜井和寿という男は、常に前だけを見据えてきた。どんな窮地に追い込まれようと『明日』を信じてきた。しかし、ここにいる男は『明日』を待つのではなく、『今日』が行き過ぎる事を待っている。しがらみに足を取られている、そんなイメージを受ける。確かに『希望』や『光』を少しだけ見出すことは出来るが、それもほんの一瞬の事で、気がつくとネガな自分がいる。とにかく今は待つしかない‥‥そんな『受け身』な桜井を垣間見る事ができるような気がする。今となっては「深海」と共に闇に葬り去られそうな作品だが、決して恥じる事はないと思う。これだけ振り幅の大きい作品が作れるという事は、それだけ人間として色々な経験をしてきたって事だし、それが血となり肉となって今の『再び前向きくん』モードを作っているのだから。

  俺は前に「『Atomic Heart』以降のアルバムは、全部名盤・名作」と言ったが、それは全てが特徴の違う、その時代時代を象徴する個性的なアルバムだからだ。しかもそれらが全く古くさくなっていない。現にもう4年近くも前にリリースされたこの「BOLERO」というアルバムも、今こうやって聴いていても非常に興味深い内容だと思う。ミスチルの歴史を考えると「最もネガティヴモード」な、重要な1枚と言えるんじゃないだろうか?



▼Mr.Children『BOLERO』
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投稿: 2000 11 21 12:00 午前 [1997年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2000/10/02

Mr.Children『Q』(2000)

  前作「DISCOVERY」から約1年8ヶ月振りとなる新作(限定ライヴ盤「1/42」を含めると通算9作目)。その間の彼等と言えば、前作発表後に42本4ヶ月半に及ぶアリーナツアーに挑み、全公演ソールドアウトを記録。内容も「歌」と「演奏」に再び焦点を当てた素晴らしいものだった。その内の1公演を完全収録した初のライヴアルバムを'99年9月にリリースし、彼等は10月よりニューヨークに完成した小林武史のスタジオにて長期レコーディングを開始した。そこでのセッションを収めたシングル「口笛」を'00年1月にリリース。多くのファンを驚かせた。そこから溢れ出すピースフルな音には、ここ数年の殺伐とした彼等の姿はなかったのだ。初期の作風を思わせる新曲は、多くのファンに「今度のアルバムは凄い‥‥」と期待させる事となる。レコーディングはそのまま6月末にまで及び、7月には完成。8月にはドラマ主題歌となるシングル「NOT FOUND」を発表。桜井曰く「過去最高の楽曲」というこの曲は、久し振りのミリオンセールスに達する勢いだ。

  そして発表されたこの「Q」。「最高傑作」とも「問題作」とも言われるこの新作、皆さんはもう聴かれただろうか? 何故問題作と呼ばれるのか、俺には何となく判るが、楽曲の出来や開放感は過去数作にはないものばかりだ。一聴して思ったのは、前作よりも地味ではないか?という事。前作はモノトーン調の中に初期を思わせる曲が登場したり、デジロックやらファンクやらグランジやら、復活に賭ける彼等の意気込みみたいなものを感じさせる力作だった。しかし今度のはどうだ? 肩の力が抜け、いい意味で自由度/セッション度が高い内容になっている。メジャーキーのポップな楽曲が多い事もあってカラフルな印象を与えているのに、聴き終えた第一印象が「地味」というのも、何だかなぁ‥‥

  まずこのアルバムの前情報として桜井の「rockin'on JAPAN」でのインタビューを目にしたのだが、そこでの発言にギョッとした。「ダーツを投げた合計点で曲のテンポを決めてきました。あ、コード進行もくじ引きでね(笑)」「バンドを生かしながら僕のソングライティングを成熟させてくってのは、非常に難しいバランスになってると感じてた」ど、どうしたんだ!?とも思ったが、逆に考えればそれだけ今の桜井自身がアーティストとして充実しているという事なんだろう。いや、私生活が充実してると言った方がいいか?(苦笑)まぁ冗談はさておき‥‥ある意味楽観的に物事に向き合えるようになった結果、これだけ自由度が高い作品が産まれたのなら、万々歳ではないだろうか?

  更に‥‥前回の同誌でのインタビュー(「DISCOVERY」完成時)の最後に、"Image"や"Simple"みたいな曲が書けるようになったなら、今度は"君がいた夏"(ミスチルのファースト・シングル)みたいなピュアなラブソングが出てくるんじゃない?なんて聞かれて笑っていた桜井だが、ここにはそれに匹敵する"口笛"がある。それだけでも大きな違いだ。ここ最近のシングル曲はどちらかというと「等身大の桜井和寿」を唄った曲を聴き手が受け入れる、というパターンが多かったが、"口笛"は匿名性の高い、ピュアな曲だ。だからこそ、聴き手が自分を重ねやすいのかもしれない。そういう初期の彼等のスタイルがここにはある。意識したわけではないだろうが、これは大きい。俺はこの曲を初めて聴いた時の衝撃を今でも覚えている。

  さて、それでは手っ取り早く‥‥恒例の「全曲解説」に入りますか‥‥簡単に、そう、至極簡単に、ね?


★アルバム「Q」全曲解説★

◎M-1:CENTER OF UNIVERSE
  やけに落ち着いたムードで始まるんだな、新作は?と思わせた曲。どことなく彼等がよく流用する(笑)レニー・クラヴィッツを思わせるサイケなムードがあるけど、2コーラス目で一変。派手なドラムが入り、テンポアップ。ドラムの細かいフレーズと打ち込みの混ざり合ったバックトラックが、どことなくドラムンベース調に聞こえなくもない。狙ったな?と最初からニヤリとさせられる。曲全体のイメージが初期の熱かった頃のU2を思わせる。こういう実験性、前作にもあるにはあったけど、ちょっと質が違うように思う‥‥どっちかっていうと、今回のには「Atomic Heart」の頃の、波に乗った絶頂期と同質のものを感じるのだが‥‥
  それにしても何なんだ、この幸福に満ちた音は?「総てはそう/僕の捕らえ方次第だ」という歌詞といい、最後の「僕こそが中心です/あぁ世界は素晴らしい」といい‥‥言葉遊び(韻の踏み方)も更に磨きがかかっているし。音楽的には前作の成功とツアーの大成功がもたらしたモノが大きかったのだろうが、そこにプラスして私生活の充実振り(ってしつこいか?/苦笑)が大きいんだと思う。こんな前しか見てないような曲、前作にはまだなかったしな‥‥思い出した。このアルバムのタイトル、最初は「Hallelujah」だったんだっけ。それが総てを物語ってるわな?(結局その後に生まれてくる楽曲群にはそのタイトルに当てはまらないものも増えたので、意味性を持たせない為に「Q」というタイトルに変更になった)

◎M-2:その向こうへ行こう
  これまた今までにないようなタイプの楽曲。こういう曲を2曲目に持ってくるから「落ち着いてる」とか「地味」なんて印象を与えちゃうんだよな?(なんて言ってるのは、俺だけか?/笑)珍しくこの曲、作曲クレジットが「Mr.Children」名義になってる事から、セッションで生まれた楽曲なのだと推察できる。それにしても‥‥バンドがセッションして生み出すような楽曲か、これ!? どっちかっていうと、スタジオワークを結集して作り上げたようなイメージの曲なのだけど‥‥サビで一転する、あのゴージャスなパートが大好き。曲の感じとしては前作に入ってても違和感はないような気もするけど、どうだろう?
  それにしても、この新作に伴うツアーではこういう楽曲をどうやって演奏するのかが非常に気になるところ。アルバムではミスチルの4人にプロデューサーの小林氏がキーボーディストとして参加、基本的にはこの5人でのセッションで作られているわけだけど‥‥そうか、小林武史がセッションから絡んでるから、初期の作風(音使い)に近いのか‥‥!?
  あ、この曲での「ギター・田原健一」(笑)と中川のベースはなかなかのもんだと思うのだが‥‥

◎M-3:NOT FOUND
  アルバム3曲目に持ってきたか、この曲を。しっかし‥‥地味に持っていく流れだなぁ。(笑)いや、純粋に「歌と楽曲と演奏」で勝負っていう意気込みが感じられて、俺は嬉しいんだけどね?
  この曲に関しては別項でシングル・レビューやってるので、今回はパス。あれから何十回、何百回聴いたけど、やっぱ名曲中の名曲。そして、カラオケでの難易度高し。(爆)

◎M-4:スロースターター
  またもや地味渋なロックナンバー。ギターの歪み具合やドラムのリズムの引きずり具合が、まんまストーンズ。いや、キースのソロ。(笑)そして歌が入ると‥‥まんま(奥田)民生!(爆)これ、是非民生にカバーして欲しいんだけど‥‥そういえば5~6年前に、民生と桜井が某誌で対談した事があったけど、その後も桜井は「もし今後ソロをやることがあったら/やることになったら、是非一度民生さんとやってみたい」って言ってたっけ。
  それにしても‥‥桜井のストーンズ好きは今に始まった事ではないが、こんなに「まんま」な曲って少なかった、いや、なかったよなぁ‥‥無駄に作り込んだり、考え込んだりしてないんだろうな、きっと。いや、考えてないように計算し尽くされてるのかも‥‥それは俺が考えすぎなのか?(苦笑)とにかく、是非ストーンズの次のジャパンツアーではミスチルに前座を‥‥(爆)

◎M-5:Surrender
  一番古い音源がこれ。レコーディング自体は前作でのセッションでのアウトテイクらしく、昨年5月のシングル「I'LL BE」にカップリングとして収録されている。"I'LL BE"はさすがに前作に別バージョンで収録されてるから、こっちには入れられないだろうし。だったらカップリングだけでも入れておくか、いい曲だし‥‥っていう流れで決まった、のかどうかは知らないが(笑)、非常にいいスパイスとなってる曲だと思う。イントロを聴いた瞬間、ビリー・ジョエルの"Stranger"を思い出す。口笛のせいか?
  そうそう、この曲のタイトル。「I surrender」と「愛されんだ」を引っかけてるの、知ってましたか?(笑)

◎M-6:つよがり
  超名曲、マジで。俺の中では"抱きしめたい"を越えた。何でこれをシングルカットしない!?って思わせるような素晴らしいバラード。多くのファンがきっと、こういう曲を彼等に望んでいたのに、彼等は出来るだけそこから離れようとしてきた。けど、肩の力を抜いた今、ようやくここにたどり着いたわけだ。
  内容的にも"抱きしめたい"のその後みたいなイメージを受けるし、ここは是非、シングルとしてリリースしてもらいたいものだ。絶対に大ヒットするだろうから(いや、だから彼等はそうしないのかも?)。とにかく一度、何も言わずに聴いて欲しい。純粋にいい曲。それ以上でもそれ以下でもないから。

◎M-7:十二月のセントラルパークブルース
  "スロースターター"よりもこっちの方がモロにストーンズだわ。あっちはストーンズっていうよりも、キースのソロに近いかも。こっちは桜井の唄いっぷりもミック・ジャガーに近いし。小林氏のアーシーなホンキートンク調ピアノがまたいい味出してる。
  歌詞の内容は、レコーディングの為に滞在していたニューヨークでの、どうでもいい日常の出来事を唄っているらしい。こういう風に「どうでもいい事」を歌にして唄ってしまう姿勢に、今の彼等の楽観振りっていうか、力の抜け具合が伝わってくる。この楽曲を境に、アルバムの色合いが少しずつ変わってくる。

◎M-8:友とコーヒーと嘘と胃袋
  一種のおふざけソングなのだが‥‥こういうコミカルな曲も、「Atomic Heart」での"雨のち晴れ"かもしれない。中盤に挿入される桜井の語り‥‥というか、セリフ!? これには爆笑させてもらった。(笑)そういえば彼、落研だったんだよな?(爆)歌い方も他の曲とは意図的に変えてるのがよく判る。ラストのシンセの音がどことなく、クリスマスシーズンになると必ず耳にする「例の曲」(笑)を彷彿とさせるのはいいとして、それに絡むコーラスが初期のミスチルっぽくて、ちょっと嬉しかったりする。

◎M-9:ロードムービー
  イントロを聴いて、顎が外れそうな程に驚いた。こ、これは‥‥正しく"君がいた夏"じゃないか!? 小林が製作段階から絡んだ事が大きく影響してるように思うのだが‥‥ちょっとホロリとさせられてしまった。
  曲の内容は大陸的な、いかにもアメリカをイメージさせる曲。浜田省吾にもありそうだな、こういう曲。きっとこういう小楽曲、ライヴじゃ受けるんだろうな‥‥って思わせる、本当にイイ曲。

M-10:Everything is made from a dream
  これまた、バンド名義での作曲。セッションというよりも、先の「ダーツでテンポ」「くじ引きでコード」で作られたような‥‥前半の実験的な曲調から一転して、サビで大爆発。っていっても爆走ロックではない。これこそ初期の彼等が持っていた「甘いポップ感」っていうようなメロディ。ファーストの彼等的とも言えなくもない。中間部にはまたセリフが挿入されるが、これはメンバー全員と女性の声をごちゃ混ぜにしている。ライヴでは間違いなく盛り上がる曲だ。
  このアルバムには昔の彼等が持っていた「純粋にいい曲」という楽曲が沢山入っている。勿論あの頃よりも成長している桜井が歌詞を書いているので、あれと同じものは期待出来ないが、それでも‥‥ここ数作で離れていったファンは、これらの楽曲を聴いてどう思うのだろうか?

◎M-11:口笛
  問題の楽曲。(笑)何故この時期に彼等はこういうピュアなラブソングを送り込んだのだろう? これはミスチルがミッシェルみたいなガレージロックをやるよりも衝撃だった。(爆)
  最初にこの曲を聴いた時、最初に書いた「~JAPAN」での行を思い浮かべた。そうか、桜井はとうとうそこまで行き着いたか、とうとう一周したんだ、と。こういう個人の思想が入らない、匿名性の高い曲ってのは、意外と書くのが難しい。もしかしたら今、こういう時期だったからこそ、今の桜井だからこそ書けた曲なのかもしれない。そして小林氏はプロデューサーという立場から「何故復帰第一弾にこういう曲を持ってこれなかった?」と思った事だろう。(笑)下らないポップロックが乱立する中、どれだけの曲が1年後、5年後、10年後に俺達の心に残っているのだろう? そう考えた時、こういう曲こそが「エヴァーグリーン」と成り得るのではないだろうか? そう、"Innocent World"での「いつの日もこの胸に流れてるメロディー」という行のように‥‥

◎M-12:Hallelujah
  アルバムを象徴する1曲ではないだろうか? ハレルヤ。中村一義にも同名曲があるが、どっちも名曲だわ、こりゃ。きっとライヴでは1番最後に演奏されるのではなかろうか? そんな気がする。
  当初、このタイトルがアルバムタイトルにもなるはずだった。という事は、当初このアルバムには「喜び」が沢山詰まっていたはずなのだ。それが何故桜井は「それだけじゃない」って思ったのだろうか? 「それだけじゃない」ってのは、多分彼が「喜び」だけでは今の自分を表現しきれなかったからだろう。"Everything is made from a dream"からはほんの一握りの危機感をも感じさせるし。これまでのネガ・モードのミスチルが好きだった人には、ただ「ハレルヤ」だけだったらきっと退屈なアルバムになっていたのかもしれない。けど、ここにはプラスの方向へと向かっている人間の感情の動きが、総て詰まっているように感じる。だから人生って面白いんだよ、愛するって事は楽しいんだよ、幸せっていいもんなんだよ?って。

◎M-13:安らげる場所
  うわっ、この流れってセカンド「KIND OF LOVE」における"いつの日にか二人で"じゃねぇか!? 感動的に終わらせるなぁ、今回も。ここにもピュアなラブソング。「孤独とゆう暗い海に/ひとつの灯台を築こう/君はただそれを見ていればいい/一番安らげる場所で」なんて歌詞‥‥キィ~ッ!(笑)まぁ‥‥そういう心境なんでしょう、きっと。けど、こういう詞が素直に出てきて、それを歌として表現出来るというのは、これまでとの大きな違いだろう。今までだったら、きっと却下されていた歌詞だと思うから。
  このアルバムには禁じ手なんて存在しない。これまでなら「こういうピュアな歌詞は今の僕には‥‥」といって却下していた。ところが、今は違う。ダメでもともと、とりあえずやってみようとなる。だから彼等は今度のツアーで、ここ5年くらいやってない‥‥"Cross Road"や"Love"のような初期の楽曲を進んで演奏しようとしてるのかもしれない。つまり、今の彼等は無敵なのだ。失うものは何もない、怖いものなんて何もない‥‥


◎最後に

  ざっと簡単に感想を書いてきたけど、如何だっただろうか? 掲示板にも書いたが、俺はこのアルバムを「桜井和寿のソロアルバム的内容」と表現した。そして「ソングライター桜井VSミスチルというバンド」としての限界が見え隠れしてるとも書いた。もしかしたら、これがバンドとしては臨界点なのかもしれない。桜井自身はどんどん成長している。それに対して他のメンバーは「今までは割と曲に対して、それを支えるポジションを捜す作業が多かったが、今回は強い曲に対してはドラムやベースがなくても成り立つ事を再確認したし、その反対の要素の曲もあった。いちプレイヤーとしては考えさせられる事が多かった」(中川)というように、相当苦労したらしい。これまでは桜井が雛形となる楽曲を持っていき、それにアレンジという形でバンドで肉付けしていったのに、今回は小林を含めた5人でゼロからスタートする事が多かったのだから、面食らったのだろう。しかも、セッションを繰り返して行く中で「別にこの曲、ドラムなくてもいいじゃん」って思うようになったり‥‥バンドとして順調に流れてきただけに、今が過渡期なのは一目瞭然だ。そうなると、今度のツアーで何かを得ない限り、バンドとしては非常に辛いのではないだろうか? きっと桜井は今後暫くは枯れる事はないだろう。この人はある意味天才だし。けど、ひとりの突出したメンバーを含むバンドの行く末を俺達は幾つも目にしている。ミスチルだってそうならないとは限らない。更に前進する為には、ここで再び休止した方がいいのではないだろうか? そう思えて仕方ない。

  もっとも、そういう危惧と作品の評価とは別物だ。一聴した時は「最高傑作?う~ん‥‥」と考え込んでしまったが、これはスルメ的アルバムだ。聴けば聴く程味が出る。うん、今なら言えるわ。これは最高傑作だって。きっと同じ日にリリースされた浜崎あゆみに1位の座は獲られてしまうんだろうけど(笑)、純粋に作品として評価される事を望む。J-POPの歴史に残したい名盤の1枚。いや、4枚目以降のアルバムは全部、歴史的名盤だからね?(笑)



▼Mr.Children『Q』
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投稿: 2000 10 02 12:00 午前 [2000年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

2000/08/09

Mr.Children『NOT FOUND』(2000)

  今月(8月)のお薦めには、やはりというか何というか、結局ミスチルの新曲を選んでしまったよ。DECKARDを取り上げるはずだったんだけどね、最初は。でも、やっぱり俺がこれをお薦めせずに誰がお薦めするのさ??って具合に(笑)サクッとやりましょう。2曲入りだけど、マキシシングルです(所謂12cmシングルね?)。過去に彼等は「Mr.Children Bootleg」というタイトルの、"マシンガンをぶっ放せ"をリーダートラックに2曲の「深海」('96年)レコーディング時のアウトテイクを収録したマキシをリリースしているけど、これは4年振りのマキシ形態って事になるのかな? 拘ってたわけでもないのだろうけど、意外と8cmシングルから12cmシングルに移行するのが遅かったかな?って気がする。まぁそんな話はどうでもいいけど‥‥

  内容について語りましょう。2曲。「月9」ドラマの主題歌として既に至るところで耳にしてるだろうタイトルトラック"NOT FOUND"と、7分半もある大作"1999年、夏、沖縄"という、ある意味対極にある2曲が収録されているんだけど‥‥恐らくシングルとしては、過去最高の組み合わせじゃないかな? ここ数年の彼等はカップリングにもアルバム未収録曲を使う傾向があって、意外と「隠れた名曲」が多いのね。アルバム先行シングルの場合だと、そのままアルバムにもC/W曲が入っちゃう場合が多いのだけど、今回はどうだろう? 例えば次のアルバム(2000年9月27日リリース決定)の傾向を想像した場合、前シングル"口笛"や今回のリーダートラックを聴く限りでは、「みんなが望む、最良の形での『現在進行形の』ミスチル」が詰まったアルバムになると思うのだけど‥‥この、"1999年、夏、沖縄"という曲は結構曲者だよ。これまでも桜井和寿が影響を受けたと思われる長渕剛や桑田佳祐の色を感じさせる曲はあったけど、これは‥‥拓郎、そう、吉田拓郎なのですよ。楽曲のタイプや唄い回し・節回しは明らかに拓郎を意識しているんですよ。で、歌詞がかなりプライベートな感情を唄った内容。なのだけど‥‥不覚にも俺、このシングルを買った帰り道に車で早速聴いたのだけど‥‥不覚にも俺、この曲のエンディングで涙してしまった。何故か桜井の書く歌詞に、自分自身を投影してしまうんだよねぇ、何故だか。置かれた立場や環境は全く違うのだけど、意味が凄く理解できるし、共感出来る。年齢が近いからってのもあるのかもしれない。自分と同年代のアーティストでこんなに共感出来る歌詞書く人、他に思いつかないもんなぁ?

  カップリング曲がメインなわけではないのだけど、凄くインパクトが強い曲なのよ。これといった大袈裟な盛り上がりはない曲だけど、歌詞でどんどん盛り上げるタイプの曲‥‥う~ん、うまく言えないけど、とにかく聴いて欲しい。この曲だけの為にこのシングル買っても損はしないと思うからさ。

  さてと、ここで終わるか‥‥って、タイトル曲について殆ど触れずに終わるとこだった。(苦笑)俺はこの曲、とあるルートから既に6月中旬に入手していたのね。けど、殆ど聴いてなくて(忙しくてさ、その頃)初めて通して聴いたの、6月がもう終わるって時期だったかな? 既に新聞とかでは「ミスチル最強の楽曲」「桜井曰く『この曲にたどり着く為に今までがあった』」なんて騒がれてたね? 「月9」の主題歌ってのも話題としては十分だったし、まさ最近桜井のプライベートでのおめでた(再婚)の話題や、9月末に8作目のアルバムリリース、10月からツアー開始の話題とかで盛り上がってた時期だけに、待望の新曲って感じだったのかな? しかも前のシングル"口笛"がいい意味で「闇を抜けて、元いたところに成長して戻ってきた」ような内容だったので、否が応でも期待してしまうって。

  確かに、これは凄い曲だよ。曲のタイプとしては今まであまりなかった6/8拍子のロッカバラードなのだけど、リズム隊のグルーヴ感が今まで以上に強力に感じるし、バックのストリングスも見事にマッチしてる。けど、一番強力なのは桜井の書く「目の前にあるネガティヴなものも受け入れて(引き連れて)前進していこう」っていう、前アルバム「DISCOVERY」('99年)以降からの共通するテーマの完成型ともいえる歌詞と、それを盛り上げるメロディだと思う。「DISCOVERY」より前の、活動休止するまでの歌詞だったら、「ネガならネガで仕方ない。どうしようもないさ。それでも進むしかないし‥‥」てな、一種『迷い』ともとれる内容が多かったが、復活後の桜井は「楽しく生きてくイメージを膨らまして暮らそうよ」「何度へましたっていいさ/起死回生で毎日がレボリューション」と唄い、人生は「もっと大きなはずの自分を探す/終わりなき旅」だと言ってポジティヴ・シンキング出来るまでに成長していた。勿論音楽的にも。そして従来の(「ATOMIC HEART」('94年)辺りの)彼等を彷彿とさせる前シングルでそれは決定打となった。「俺の歌」ではなく「みんなの歌」、あるいは「自分を癒す為に唄う」のではなく「聴き手を温かくさせる為に唄う」歌。それが"口笛"だったように思う。そして今度の"NOT FOUND"。確かに"口笛"よりも歌い手の主張が強い歌詞だけど、これは「DISCOVERY」でやりたかった事のひとつの「答え」なんじゃないだろうか?なんて思うのだけど‥‥「私的歌詞」と「みんなのうた」のギリギリライン、じゃないかなと。"口笛"が「みんなのうた」のマックスで、"1999年、夏、沖縄"が「私的歌詞」のマックス。そして"NOT FOUND"はその両方を兼ね備えた、バランス感覚を持った高性能楽曲。いい意味で桜井のソングライティング力が暴走してるような気がする。だからこそ、次のアルバムが本当の意味での最高傑作になるんじゃないか?と今から毎晩眠れずにドキドキしてるわけよ。(笑)

  冗談はともかく、そういう意味でも本当にこのシングルは優れものだと思うのよ。とにかく歌詞、歌詞読んでよ! レンタルでもいい。歌詞読んで欲しい。そしてアルバム、恐らく10月度のお薦めになってるような気がする(いや、絶対にやってるね!?/笑)



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投稿: 2000 08 09 11:30 午後 [2000年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

1999/12/01

Mr.Children『1/42』(1999)

  『邦楽史上、最強のライヴ実況盤』これが全て。これ以上何を言えばいい!?(苦笑)けど、これで終わってしまうのもなんだしなぁ‥‥そうだ、何故ミスチルが今回、ライヴアルバムをリリースすることになったのか?その経緯でも書けばいいか?

  まず、今年2月にリリースされたアルバム「DISCOVERY」に伴なるプロモーションツアーは2/13、幕張メッセイベントホールからスタートし、7/11沖縄で終了した。今回のツアー後半戦にあたる5/8&9の代々木体育館ではビデオシューティングされており、6月末の北海道・真駒内アイスアリーナでの2公演(6/25&26)はライヴレコーディングされた。今回リリースされたアルバムはこの真駒内アイスアリーナでの、2日目(6/26)の音源と思われる。また、先にビデオシューティングされた映像は既に「ニシエヒガシエ」のライヴPVとして、音楽番組でオンエアされている。今のところ、このライヴ映像の商品化の予定はないとのこと。

  前回の「深海」のツアーは映像化されているが(東京ドーム公演最終日)、何故今回は「ライヴアルバム」にこだわったのだろう? 答えは今回のツアーに足を運んだ方なら判ってもらえるはずだ。前回のツアーは映像(ビジュアル)を駆使した、『見せる』ライヴだった。が、今回のツアーはセット自体もこじんまりしていたし、下手な細工もなかった。そう、あのライヴレポートで俺が書いたように、桜井が何度も口にした『聴かせる』ライヴ‥‥それが今回のテーマだったのではないだろうか? これは「DISCOVERY」というアルバムの、一貫したテーマなのかもしれない。

  ここに、如何に今回のライヴアルバムに力を入れているかが伺える文章を転載したいと思う。ライヴアルバムに封入されている写真集の最後の方に載っている、ミスチルのプロデューサーでありMY LITTLE LOVERのメンバーでもある小林武史氏のコメントである。


  今回のツアーをライヴアルバムにすることを決めて、2日間ある収録を、僕は初めて録音車の中で過ごしたのだが、視覚に頼らないライヴの醍醐味を1日目の段階で僕はしっかりと感じることができた。と同時に、多少のミスもちょっとした固さも残る1日目のライヴにも、何か尊さの様なものを感じて、ベストなライヴアルバムとはどういったものなのかと、少し考え込んだりもした。

  2日目のリハーサルの後、桜井君と楽屋にいて、例えばツアーが42本あったのなら、その42分の1というものにこだわる潔さ、そして残りの41本をこのアルバムの時間軸の奥に込めるような、そんなイメージの持ち方がミスチルらしいのではないか、といった話をした。ただ、その時は視覚抜きの音楽だけのパワーでベストといえるライヴを作れる集中力が持続できるか、という話にもなり、まあ今日も気楽にやろうか、ということで本番を向かえることになった。

  その日のライヴ中、録音車の中で、僕はこのアルバムに収められている全てのプレイを聞く事ができた。僕だけじゃなく、長い間彼等の音を録音しているエンジニアの平沼君も、他の人も含めて、完全試合に向かっている野球に立ち合っているような興奮を感じた。本番前に言っていた事とは裏腹な、桜井君の狙ってくる負けず嫌いな感じに、何だか笑いが込み上げてきていた。彼等のプレイは自由で、常に音楽を感じ続けながら進み、みんな心が開かれ、そして終わった。僕は中盤以降、鳥肌が立ちっぱなしだった。ウソみたいな話だけど。

  一本のライヴとしてこれだけ充実したプレイを完全収録できたことは、僕にとってちょっと不思議な体験でもあった42分の1だが、やっぱり、このアルバムの向こう側に、残りの41が、それぞれの会場で、毎日違うグルーヴを起こしていたことも想像してもらえたら、などと欲張りな願いも持ってしまう。


  まぁ、そういう事ですわ。(笑)とにかく聴いて欲しいなぁ‥‥ってこれ、完全限定盤(50万枚)だったんだ‥‥。(苦笑)確かにリリースされてからもう2ヶ月、市場では殆ど見かけません。でも、もし見かけたら‥‥即、買いです。これはライヴアルバムとしても絶品だけど、ミスチルのベストアルバムとしても機能するので、初心者にもうってつけの作品ですから。ミスチル3大ヒット曲、「innocent world」も「名もなき詩」も「Tomorrow never knows」も収録されているし、ボーナストラックとして沖縄公演から「抱きしめたい」までもが収録されているんだから‥‥

  結局、うまい事言えなかったレビューだけど(笑)まぁ、全てはプロデューサーの小林氏が的確に語ってくれてるから、これでヨシとしよう。(爆)こういうレビューもたまには如何!?(笑)



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投稿: 1999 12 01 11:30 午後 [1999年の作品, Mr.Children] | 固定リンク

1999/05/09

MR.CHILDREN TOUR '99 "DISCOVERY" @国立代々木競技場第一体育館(1999年5月5日)

  既に掲示板などに書いた事なので多くの方が知ってる事と思うが、今回でMR.CHILDRENのライヴへ足を運んだ回数が15回目となった。(笑)いや、我ながら凄い数である。最初が'93年11月だったから既に5年半というわけか‥‥前回のツアー「regress or progress」(アルバム「深海」のツアー。'96年8月~'97年3月まで、約50回以上の公演数だった)には合計6回(恵比須でのシークレットライヴ含む)も行ったし。何故、彼等のライヴにこれだけお金を‥‥(笑)いや、足を運んだのだろう? それは、国産のバンドでここまで「アリーナ」を意識したライヴバンドはそうはいないから‥‥海外のバンドは数年に1度しか来日しない。(ちなみに僕が最も好きな「ライヴ」バンドはBON JOVIである。彼等のライヴにも13年で10回足を運んでいる)こんな身近に、こんなに素晴らしいバンドがいるのに‥‥まぁそういう風に考えるようになったのは、彼等がブレイクした後の事だが。勿論、ここ日本にはMR.CHILDREN以外にもLUNA SEAのようなバンドもいる。だが何故MR.CHILDRENなのか?は‥‥彼等のルーツの多くが僕と「被って」いるからだ。U2、エルヴィス・コステロ、BEATLES、ROLLING STONES、PINK FLOYD‥‥そういったバンドの音を彼等なりに消化した「日本のロック」を聴かせる‥‥そういう所に非常に共感を覚えるし、同世代というのもあるのかもしれない。だが‥‥理屈抜きで好きなんだろうね?(笑)じゃなきゃ「全曲唄えるライヴ」にならないだろうし、そんなライヴに何度も足を運ばないって!

  今回のアルバム「DISCOVERY」に伴う約2年振りのツアーの日程については「Monthly Pick-Up Artist」にて触れているが、僕はチケットが全く取れなかった‥‥最も取り難かったツアー「Innocent World」の時でさえも20分で武道館立見だったが、今回は10分でソールドアウトだったりとか‥‥だから今回のツアーは完全に諦めていた。が‥‥ネットで知り合った方から幸運にも譲っていただく事ができ、無事行くことができたわけだ。

  5月5日、こどもの日。おお、まさにこんな僕にピッタリの日に2年振りにMR.CHILDRENのライヴが見れるとは♪ だが、実は心配だったりした。直前に行われた横浜アリーナ公演(4/29~30)でのボーカル・桜井和寿の出来があまり良くなかった、と聞いていたからだ。正直、過去14回の桜井の歌唱には首を傾げたくなる出来の日が多かった。(特に「regress or progress」の中~後半は‥‥見ていて辛かった‥‥)2年振りのツアー、いろいろな噂を聞いてはいたが、やはり今まで通りのMR.CHILDRENを見せつけられるのだろうか? それとも‥‥アルバムが新境地を開いた力作だっただけに、ライヴにはどう挑むのかが今回のキーポイントのような気がした。

  18時30分頃、僕は会場に入った。まずステージセットが目に入った。「うぅ、シンプルぅ!」これが第1声。セットをデザインしたのは過去のセットを手掛けるのと同じマーク・フィッシャー。そう、U2やストーンズなどのセットを手掛ける、この世界では有名な方だ。(日本でも氷室京介が前回のツアーで彼を起用している)本当にシンプルで、セットらしきものはバックに大きくそびえ立つ石油掘削機。その掘り起こす部分ともう1ケ所別の場所に4桁の数字が。僕が入場した時には「1160」くらいだった。その数字が数秒毎に1つずつ増えていく。何を意味するのか?

  19時10分、「1971」で会場暗転。そう、この数字は西暦を表しているのだ! しかし、僕が生まれた「1971」で何も暗転しなくても‥‥(笑)そしてS.E.には「第九」が‥‥盛り上がりが最高潮の中、数字はいよいよ「1999」に‥‥大歓声。そう、メンバーがステージに現れたのだ。僕の席は1階スタンド席のかなり後方だったが、2列目だし傾斜もついた位置だったので、全体を見渡す事ができた。が、今回はモニタースクリーンもないので、メンバーの表情は全く判らず終い。(笑)まぁ、そこまでミーハーなファンじゃないからいいけどね‥‥。

  そして、あの印象的なギターの音が聴こえてきた‥‥ニューアルバム同様、ライヴ1曲目は"DISCOVERY" だ。「おお、RADIOHEADをアリーナクラスで見ると、こんな感じなのかなぁ?」(笑)などと不謹慎な事を考えつつ、ライヴスタート。あ、言っておかなきゃ‥‥僕が大嫌いなライヴ会場。第3位、NKホール。理由;会場の作りと場所(笑)。第2位、リキッドルーム。理由;会場の場所(笑)。もし火事が起きたら‥‥よく消防法をクリアしたなぁ? そして第1位、ここ代々木体育館。理由;音が滅茶苦茶悪過ぎ! 実はこれまでで1番足を運んだ回数が多い会場がここなのだけど、1度も満足した音のライヴに遭遇したことがない。ミスチルもここでは'95年の「LIVE UFO」と翌年の「regress or progress」の2回を経験してるが、余り良くなかった。それ以外となるとハードロック系のアーティストが多い。音のデカいバンドばかりだからかもしれないが‥‥それと、ここって空調がないんだよね? いつもむちゃくちゃ熱いなぁ、と感じる。まぁ、もともとライヴを想定して作られてないしね?(元はプールだもんなぁ?)

  しかし‥‥今日、音よくないか? 確かにハードロック系のアーティストと比べると音が小さいのがすぐに判ったが、それにしてもここまで分離が良いのは久し振りだな。今回のMR.CHILDRENのライヴメンバーは4人の他に、サポートにもうひとりのギタリストと2人のキーボーディストを入れている。前回はこのギタリストとキーボードの浦くん(セカンドアルバムから参加)の他に、サックスとトランペット、そしてマニピュレーター松本氏が参加していた。そう考えてみても、今回がいかにシンプルかが判ってもらえるかも‥‥いや、派手か?(笑)とにかく、ギター3人(多くの曲で桜井はギターを弾く)にキーボード2人でここまでひとつひとつの音が確認できるとは‥‥驚きだ。一体どんなスタッフを迎えたのだろうか? それとも今までと同じ人? とにかく聴いてて気持ちいい。自然と身体が動き出す。が‥‥なんで邦楽ファンの方々って、何でもかんでも手拍子するんでしょうねぇ‥‥(苦笑)これはどのライヴでも思う事なのですが。それと所謂「海外の大物アーティスト」の時もそうだよね? 昔、エリック・クラプトンを東京ドームで見た時、あの "Wonderful Tonight" に手拍子をしてるのを聴いた時、本気で帰ろうかと思った。ノってるのは判るんだけど、何とも思わないのかなぁ? その辺のギャップはこの日、ずっと付きまとっていた。まぁMR.CHILDRENに関しては、昔からずっとそうだったけどね。

  なんて事を考えてる内にエンディング。(笑)あの印象的な、イントロと同じギターフレーズがシークエンスする中、ドラムのJenがカウントを始め、そのまま2曲目"アンダーシャツ" に突入。うぉ~、ヘヴィ系2連発。いいのか、新生MR.CHILDREN?(笑)それにしても‥‥やっぱり気持ちいい。音が‥‥1曲目では気にしてなかったが、桜井の歌声がこれまた気持ちいい。まず、声が出ている。上(高音)がちゃんと出てるし、抜けがよい。今までの桜井は上に行けば行く程、フェイクしたりお客に唄わせたりってのが多かったが、今日は上手い! この曲のギターソロは何と桜井。ここのところ、彼がソロ弾く曲、増えてないか? 正直言って、田原との差別化をちゃんと考えた方がいいと思うのだけど。今の2人のそれぞれのソロからは、その必然性(何故桜井が弾くのか?といった)が感じられない。つまり、2人の「色/個性」みたいなのが出てない気がするのだ。例えばストーンズやエアロのようなギタリストが2人いるバンドは、ちゃんとその「色/個性」が出てるのだが‥‥これは今後の課題だろうか? というか、田原にもっと頑張ってガンガン弾きまくって欲しいのだけど、どうも彼は前に出てってタイプじゃないからなぁ‥‥(笑)

  新作からの2連発後、聴き覚えのあるドラムフレーズが‥‥桜井の「one, two, three, four!」カウントに続いて唄い出すのは「♪ちょっとぐらいの汚れ物ならば~」‥‥そう、"名もなき詩" ! しかし本当に今日の桜井は調子よさそうだなぁ。前のツアーではこの曲、辛そうだったけど、やっぱ最初の方にやってるからここまで声が出てるのかなぁ?なんて考えてたら、不覚にも涙がこぼれてきた。何故? 彼等不在のこの2年の内に僕の身にはいろいろな事が起こった。2年前の僕と今の僕は明らかに違う人生を歩んでいる。そんな過去を思い浮かべて涙を流したわけじゃない。純粋に、彼等の一音・一句がちゃんとこの胸に届いたのだ、そう信じたい‥‥それにしても、最近音楽を聴いて涙を流す機会が増えたなぁ。涙もろくなったのかなぁ? それとも歳か?(爆)とにかく、改めてこの曲の歌詞はすばらしいなぁと感じた一瞬だった。僕もまた誰かの為に唄いたい‥‥(照笑)

  この曲が終わって、この日最初のM.C.。桜井の第1声‥‥「今日は、はっきり言って僕ら、調子いいです。」おお、あんなヘヴィ系2連発の後に、こんなに前向きな、ポジティヴなお言葉が‥‥! こんな頼もしい発言をかます桜井は随分久し振りじゃないか! そうか、やっぱり調子いいのか♪ 「後ろの方、盛り上がってる?」はい、勿論大声でそれに答えた僕なのだった‥‥(爆)

  M.C.で和んだ後、4曲目はしっとりと"Prism" 。一音・一句を丁寧に聴かせる、そのおかげで今まで以上に説得力のある演奏・歌を聴かせてくれる。そんな勢い以外のMR.CHILDRENを見るのはいつ以来だろうか‥‥いや、今回が初めてかもしれない。田原のギターソロもこれといって目立ったものではないが、曲に合っている。あくまで「歌」を聴かせるためのソロ、といった感じのソロがおおいなぁ、彼の場合は。それにしても‥‥手拍子、どうにかならないものだろうか? 折角しっとりといい曲聴かせてくれてるのに。

  落ち着いた雰囲気を引き摺って、続いた曲は前作「BOLERO」からのシングル、"Everything (It's you)" だ。東京ドームなどの前回のツアーよりも格段にいい。とにかく演奏が気持ちいいし、桜井の声の伸びが素晴らしい。Jenのドラムが本当に気持ちいい。僕、この人はもっと評価されてもいいと思うのだけど‥‥確か、まだこの時点では彼は上半身裸ではなかったはずだ。(爆)そしてこの曲でも桜井がソロを取る。どちらかというと、桜井の場合は和音を使ったソロが多い気がする。キース・リチャーズが好き、って言ってたしなぁ‥‥エンディングで桜井が深々と頭を下げる。

  ここでこの日2度目のM.C.。桜井「あの~、ものすごく(調子が)いいです。今日から4日間ですか? みんな4日間ともおいでよ!」ここで女性ファンから大歓声!!(爆)いやぁ~、本当に調子いいんだ? おいおい、いいのか桜井? この先、もっと(唄うのが)難しい曲が出てくるんじゃないのか‥‥そして「今日は1音1音、大切に心を込めて、皆さんの心に届くように演奏し唄います。最後まで楽しんでいって下さい。」というような事を言ったはず‥‥その心意気が嬉しかった。「楽しんでってね!」とは今までもよく言っていたが、ここまで言い切ったのは初めて聞いたなぁ‥‥本当、充実振りが伝わってくる。

  6曲目、アルバム「DISCOVERY」、そして今回のライヴの山場とも言える"I'll be" が静かに始まる。桜井がアコースティックギターを弾きながら、一言一句を丁寧に、心を込めて唄っているのがよく伝わってくる。この曲、ハッキリ言って唄うのが難しい曲のひとつだ。それはアルバムを(そして5/12発売のシングルバージョンを)聴いてもらえば判ると思うが‥‥なのに今日の桜井はひと味違う。いや、こんなパーフェクトに近い桜井は‥‥初めてだ。何だ、どうしたんだ!? 「♪僕もDead, Dead, Dead~」の高音部分も素晴らしくて、鳥肌が立った程。演奏も至極シンプルなのだが、逆にそれがこの曲に(いや、このアレンジに)ぴったりと合っている。アルバム全曲解説のページでも書いたが、本当にこの曲は素晴らしすぎる。僕の中では過去の彼等の楽曲の中でも�1の楽曲だと思うのだが‥‥とにかく、歌詞を読めって! 10分近くある大作だが、全く飽きさせない、時間を感じさせない名曲だ。エンディングの盛り上がりも凄まじい‥‥そうそう、この曲でも歌に入る前までは手拍子が少しあったのだが、桜井が唄い始め暫くすると、シーンと静まり返ってしまった。さすが、である。

  "I'll be" の余韻を引き摺るピアノ/オルガン。そのまま違うコード進行へと変わる。ファンなら聴き覚えのあるフレーズが‥‥7曲目、"花 -Memento-Mori-" だ。アルバム「深海」からのシングルナンバーだが、シングルにしてはとても地味な部類の楽曲。しかし名曲には違いない。今回のツアーでは「深海」からの楽曲は先の"名もなき詩" とこの曲のみ。しかも両方とも大ヒットシングル。単に前回のツアーで嫌という程、しかもアルバム全曲を毎日演奏したからかもしれない。それに今回のアルバムの歌詞の内容と比べてみても、やはり「深海」や「BOLERO」の歌詞というのは、やはり‥‥それにしても、こんなに素晴らしい"花 -Memento-Mori-" を聴いたのは、前回1度もなかったはず。中盤のうねるパートでの桜井のシャウトも絶品。長年のファンとして、こんなライヴに遭遇できた事に感謝である。この曲で、この日2度目の涙。やはりこの頃の楽曲には思い入れも強いし、想い出も多い。でも‥‥そう、ただいい曲だから、それが聴けて嬉しかったから涙が出てきただけだ。そう自分に言い聞かせて‥‥。

  大感動の中、エンディングを迎えた。桜井はアコースティックギターを"I'll be" から抱えたままだ。このまま次の曲もいくつもりだ。そして続くは"Simple" 。本当にシンプルな楽曲だが、それが嬉しかった。まるで「昔の」MR.CHILDRENのようで‥‥こういう曲が再び、何のてらいもなく書ける桜井が羨ましいと思ったし、こうやってライヴで聴いてもやはり何の違和感もない。「♪10年先も/20年先も~」のサビにジーンとくる。前2曲が静かに盛り上がっていく楽曲なのに対し、この曲は静かなまま、ほんわかとした雰囲気を残してエンディングを迎える。人によっては大した事ない曲と取られる可能性もあるが、いや、こういう曲があるからその他のヘヴィな楽曲が映えるのだ。とにかく、ここまでの楽曲の流れ・構成は完璧だと思う。

  続いて田原とサポートギタリスト(河口氏)がステージ中央に揃う。Jenがスネアが頭になるリズムを叩き始める。それに合わせてギタリスト2人がギター合戦を始める。おお、かっこいい! ちょっとしたジャムといった感じか? そしていつの間にか田原があの有名なギターリフを弾き始めた。そう、"ラヴコネクション" だ! ここからはロックンロール・コーナーだぁ♪ この日初めて桜井はギターを置いた。もうそれは、今まで溜めたものを吐き出すかのように動き回った。(笑)そうか、今まで桜井の歌が完璧だったのはあまり動かなかったからか!?(爆)右へ左へと走り回り、息切れ寸前の桜井。ステージサイド席のお客と握手。(笑)いつもこの曲はライヴ用にエクスパンドされるのだが、今回はイントロ以外はアルバム通り忠実に演奏されていた。ブラスがいない分はもう一人のキーボーディストがフォロー。

  すかさず続くは、あの印象的なリフ。そう、アルバム「Atomic Heart」1曲目の"Dance Dance Dance" だ。今までのライヴではアルバムとは違ったブラスを加えたアレンジだったが、今回はこの曲もアルバムに忠実だった。この曲でも桜井は動き回っていた。やはり唄い慣れた曲だけに、安心するのだろう。(笑)が、動き回っていても昔みたいな「オヨヨ」な歌は聴かせない。おお、やっぱり本物だ!!!(爆)

  このノリを引っ張りつつ、続くはニューアルバムから"ニシエヒガシエ" に突入。TVでも披露されたことのないこの曲、桜井とサポートギタリスト(スライド担当)がアコースティックギターを持ち、田原がエレキでメインリフを弾く形に。あ、気がついたらJenは上半身裸だ。(笑)「♪胸やけしそうなら/この指とまれ」の歌詞を「このギターにとまれ」に変えて唄い、大歓声。中間部の6/8拍子になるパートはそのまま8ビートのままで、新たなアレンジがなされている。まるでスパイ映画のサウンドトラックを聴いてるようだ。かっこいい‥‥。

  ロックンロール3連発に続いて、エンディングに向かう為の小休止? いや、まとまりをひとつにする為に必要不可欠の名曲、"ラララ" の登場。桜井、ギターを置く。田原もアコースティックに持ち替える。本当にほのぼのとして、聴いてて/唄ってて気持ちいい曲だ。が、ここで大問題発生‥‥エンディングでお客に「♪ラ~ララ~ラ~、ララ~ラ~ララ~ラ~」と唄わせる中、桜井の問題発言が‥‥「Hey! ヨコハマぁ~っ!」‥‥次の瞬間どよめきが、そして大爆笑!(爆)おいおい、桜井。調子よすぎて空回り?(爆)バツ悪そうな顔で(勿論笑顔で)「ヨヨギぃ~!(笑)」会場大爆笑。Jenがシンバルでツッコミを入れる。(笑)更に桜井「大好きな代々木ぃ~!」って‥‥(苦笑)

  お客に唄わせたまま、尻切れとんぼのように"ラララ" が終わるかと見せ掛けた中、あの印象的なピアノのフレーズが‥‥そう、ラストに向けての盛り上がり1曲目は"Tomorrow never knows" だ! この曲もドーム公演では演奏されず、寂しい思いをしたもんだ。今日の桜井なら完璧に唄いこなしてくれる‥‥その思いは正しかった。サビでの「♪Wo Oh~!」もちゃんと唄っていたし。これでもかって位に感情を込めて唄っているのが、よく伝わってきた。新作のインタビューの中で桜井が「昔の歌はもう唄えないよ。歌詞が幼すぎるし、最近の楽曲とバランスがとれないし」というような事を言っていたが、この辺の時期までが限度なのだろう。しかし、未だにこうやって聴けるって事は喜ばしいことだ。サックスによるソロパートはオルガンが代役を果す。これはこれでいいんじゃない? 僕はこっちの方が好きだ。何だか"蒼い影" みたいで。名曲はやはりどうやって料理しても名曲なんだ、そんな気がした。「♪優しさだけじゃ生きられない/別れを選んだ人もいる~」やっぱりこの歌詞は何時聴いてもジーンとする‥‥でも涙は出なかった。今の僕にはこの歌詞よりもむしろ「♪心のまま僕はゆくのさ/誰も知る事のない明日へ」の歌詞の方がしっくりくる。そう、いつまでも感傷的になってはいられないのだ。人は前に進まなければ‥‥。

  大感動のエンディングを迎え、続くは最新作からの超名曲"終わりなき旅" の登場。いよいよ本当に終わりが近付いている‥‥一音一音を丁寧に奏で、一言一句を丁寧に、感情を込めて唄う桜井。ここまで14曲唄い、桜井の歌は幾分荒くなったものの、それでも十分に素晴らしい。褒め過ぎか?(笑)ストリングスもシンセでカバー。曲が進むにつれて転調を繰り返し、どんどんキーが上がっていくが、それ程苦しそうに見えないぞ、桜井。最後の「♪終わりなき旅~」のリフレインを終え、再び桜井のコードストローク。バンド全体がドーンと爆発。ふとこの時気がついたのだけど、メンバー4人が向かい合って演奏する瞬間が多い。このエンディングでも桜井、田原、中川の弦楽器隊がステージに背を向けて、Jenの方を向いて目を合わせて(?;ステージが遠すぎてそこまでは確認出来なかったが、きっとそうしてるはずだ)演奏する。正にバンドの基本形である。「再びアマチュアに戻ったみたいだ」とインタビューでメンバーが語っていたのを思い出す。そう、これだからバンドはやめられないのだ!

  大きな拍手の中、エンディングを迎え。いよいよ本編最後の曲、"光の射す方へ" である。一番最後に一番難しい曲を持ってくるとは‥‥そういえば桜井は2度目のM.C.の時に「セールス的・興行的には今回大成功だったけど、音楽的にはどうだったのかは‥‥」のような事を言っていた。その答えは今日、僕らが確認した。そう、ハッキリと。この実験的かつ普遍的なメロディーを持った曲を最後に持ってくる事自体、彼等の音楽に対する自信が伺える。それにしても、本当によく声が出てるなぁ‥‥この曲、僕はMR.CHILDREN史上、最も「唄いこなすのが」難しい曲だと思ってるのだが、それをこうも軽々と、しかもライヴ終盤に唄われてしまうと‥‥格の違いを見せつけられた気がした。「プロってのはこういうもんなんだぜ!?」って。もう‥‥「すごい‥」って言葉しか出てこない。一番最後の「♪光の射す方へぇ~」のシャウトに鳥肌が立つ。うわぁ‥‥そしてイントロと同じシーケンスリズムのブツ切れ(笑)で本編は終了。「またねぇ~、バイバイ~!」と桜井。メンバーがお客に手を振って袖に戻っていく。あっけない結末かな?とも思ったが‥‥いやいや、感動である。

  アンコールを求める大歓声・拍手の中、再びメンバーが登場する。桜井「横浜の皆さん、どうもありがとう!」(爆)‥‥もう判ったって!(笑)「あのですねぇ、本当にベストです! 後はこれから(調子が)落ちていくだけだから。(笑)残りの3日、友達で来る人がいたら、そういうふうに伝えといてください」どう伝えろっちゅうねん!(爆)本当に調子よかったんだろうなぁ‥‥ここまで何度も言うんだから。ここでメンバー紹介。サポートメンバーのサニー(彼はDaily-Echoのサポートでも有名らしい)、浦くん、こうぐち氏。そして「いつもの4人です。」(笑)

  桜井が手ぶらだ。実はアンコール1曲目には2パターンある。手ぶらという事は‥‥あ、こうぐし氏がアコギを持ってる! も、もしや‥‥「それでは続いての曲はですねぇ‥‥スペシャルゲストに代々木の皆さんをお迎えして‥‥」観客、大歓声! そしてJenのカウントに続いて始まったのは‥‥"innocent world" ! ずっと聴きたかった‥‥(涙)これこそMR.CHILDRENという名曲。前回のツアー後半ではこの曲すら演奏されなかったが、やったね?って気分だ。(ちなみにもう1曲のアンコール予定曲は "everybody goes" であった。前の横浜2デイズはこっちだったそうだ)1コーラス目をお客に全部唄わせ、桜井はドラムの前に座り、笑顔で手拍子をしている。サビが終わると笑顔で「サンキュー!」2コーラス目からはちゃんと唄う。やっぱり君が唄った方がいいよ。(笑)エンディングでも全く苦しそうな顔を見せなかったし。あぁ、来れてよかった‥‥深々とお辞儀をする桜井。

  どうやら本当に最後の曲のようだ。何故なら‥‥次の曲は新作最後の曲、"Image" だからだ。ここでも桜井はアコギを持って、丁寧に感情を込めて唄う。うわぁ~、また涙が‥‥やっぱりこの曲の歌詞は身に染みる。今の僕のテーマ曲だもん。「♪楽しく生きて行くImageを膨らまして暮らそうよ/さぁ目に写る全てのことを抱きしめながら」この歌詞に最近は助けられている‥‥桜井が復活したように、僕も‥‥そう思いながら、毎日を送っている。そしてこの日、僕は自分の考えが間違っていなかった事を実感した。そう、目の前の桜井を見て。もうここまでくると、レポートどころじゃないな?(笑)主観でしか書いてないよ‥‥いや、それでいいんだよな? 雑誌じゃないんだし。要は「そのバンドが好きな自分がどういう人間か?」って事だし‥‥僕がどういう人間かはこれを読んでいただければ‥‥。

  そして、しっとりと"Image" は終わった。これで全てが終わりだ。客電がつき、メンバー全員がステージ中央に集まり手を挙げて挨拶。「ありがとう。また次に会いましょう。それじゃあまたね、バイバ~イ!」その声を背に、僕は出口へと走っていた。(笑)そう、終電に間に合わすために。2時間きっかりのショウ。以前の彼等と比べれば確かに短い。(以前は3時間が当たり前だったし)でも今回はこれで十分だし、そういうコンセプトなのだという事がよく判った。コンセプトは「シンプル」。それはステージセットからも歌からも伺えた。飽くまで「歌」が中心なんだ、という事が。

  こうして僕の「DISCOVERY」は完全に終了した。そして、僕が探してたものがちゃんと見つかった気がする。僕が求めるべきものが今、ハッキリと判った‥‥10日前に僕のバンドの相方が1年振りに帰国した。さぁ、僕の第2の人生はまだ始まったばかりだ。30代に向かって「必死で猛ダッシュ」してやる!


[SETLIST]
01. DISCOVERY
02. アンダーシャツ
03. 名もなき詩
-MC-
04. Prism
05. Everything (It's you)
-MC-
06. I'll be
07. 花 -Memento-Mori-
08. Simple
09. ラヴコネクション
10. Dance Dance Dance
11 .ニシエヒガシエ
12. ラララ
13. Tomorrow never knows
14. 終わりなき旅
15. 光の射す方へ
[encore]
-MC-
16. innocent world
17. Image



▼Mr.Children『DISCOVERY』
(amazon:国内盤CD

投稿: 1999 05 09 12:00 午前 [1999年のライブ, Mr.Children] | 固定リンク

1999/02/12

Mr.Children『DISCOVERY』(1999)

  このアルバムをこういう形で取り上げる事が出来る事、そしてこのアルバムに出会えた事を大変喜ばしく思います。Mr.Childrenというバンドは現在、俺がここ日本で(バンドをやる上で)目標とするバンドです。いわば「敵」となる訳ですが、そんな事この際どうでもいいです。この「日本を代表する名盤」を目の前にしてそんなちっぽけな事でウダウダ言う程、俺は心の狭い人間ではないので。

  いつもならここで「俺がそのアーティストを好きになった過程」やその他の分析などをするのですが、それはまた別の機会に‥‥このバンドについてはまだまだ書くべき事、紹介すべきアルバムが山程あるので。という事で、今回は純粋に『アルバム全曲解説』をしてみようと思います。前回のhide「Ja,Zoo」同様、偏見を持った洋楽ファンにこのアルバムを聴く切っ掛けになってくれれば、これを書いた意味があるというもんです。


◎「DISCOVERY」発売までの経緯

  96年6月に約2年ぶりの5thアルバム「深海」を発表後、同年8月より翌年3月まで50本以上のアリーナツアー(福岡/東京ドーム公演を含む)「Progress or Regress」を敢行。ツアー終了後にMr.Childrenは活動休止、1年以上に及ぶ初の長期休暇に突入した。勿論、その前には97年3月に6th「BOLERO」を発表。両作品共に300万枚を超えるセールスを記録した。文字どおり「モンスターバンド」となった彼等にはしばしの休息が必要だったのだ。

  活動休止中の97年に3本のビデオが発売された。1本目は「深海」以降のビデオクリップ集「ALIVE」、2本目はツアードキュメントビデオ、最後がそのツアー最終日の東京ドーム公演を完全収録したライヴビデオ。「このまま解散してしまうのでは‥」などと噂されたりしたが、翌98年2月には新曲「ニシエヒガシエ」を発表。が、ドラマとのタイアップ以外はノンプロモーション。まだまだ復活には時間が掛かりそうな予感がしたが、実は水面下ではレコーディングが進められていた。

  同年10月に再びドラマ主題歌として「終わりなき旅」リリース。この曲より本格的に活動再開。雑誌・テレビやラジオへの出演など、今までを取り返すかのようにメディアへの露出が多くなった。そしてとうとう「来年始めにはアルバムも出るし、ツアーも始めます!」と宣言。99年1月にはアルバムからの先行カット「光の射す方へ」リリース。そして同2月に約2年振りとなる7th「DISCOVERY」がいよいよリリースとなった‥‥


★アルバム「DISCOVERY」全曲解説★

◎M-1:DISCOVERY
  記念すべき1曲目はミスチル史上ここまで「ヘヴィ&ダーク」な曲があったか?ってなナンバー。テレビCMで流れている印象的なギターフレーズの曲がこれだ。4thアルバム「Atomic Heart」以降、アルバム1曲目は1,2分のインストナンバーが収録されるのが定番だったので、正直収録曲が発表になった時、アルバムタイトルと同名のこの曲を見た時はまたインストだと勘違いしていた。が‥‥これが噂に聞いていた「RADIOHEADに影響受けまくった曲」か?と、一聴して判った。(笑)まんま、RADIOHEADの「OK COMPUTER」1曲目の "AIRBAG" である。特にリズムの取り方(ドラムパターンとベースの入り方)が酷似している。
  そもそも彼等のアルバム1曲目には他アーティストからの影響受けまくりの曲が多く見受けられる。3rd「versus」の "Another Mind" はどことなく初期のU2の香りがするし、「Atomic Heart」の"Dance Dance Dance" は明らかにU2「ACHTUNG BABY」収録の "Zoo Station" を模写してるし、「深海」の "シーラカンス" はレニー・クラヴィッツ、「BOLERO」の "Everything (It's you)" はAEROSMITHのバラード‥‥こういう風に書くと「何だ、ミスチルってパクりバンドじゃん」って思われるだろうが、飽くまで「~風」というだけで、パクリのレベルには達してないと思う。寧ろ「ミスチル印」のメロディーが乗ってしまえば、それはもう彼等のオリジナルでしかない。それだけの説得力があるしオリジナリティーもあるバンドだと思うし。騙されたと思って聴いてみて欲しい。
  ところで、今作のキーワードとなる「DISCOVERY」という言葉に、彼等、いや桜井和寿という男はどういう意味を持たせたかったのだろうか?‥‥ジャケットを見てもらうと判るが、メンバーの前には白い鳩が、バックには油田を掘り当てる掘削機。文字どおりの『開拓/発見』、それとも『自由を見つけた』という意味か‥‥歌詞を読む分には、何となくだが「前向きな」イメージを受ける。そう、曲調とは相異なって。

◎M-2:光の射す方へ
  続く曲は先行シングルナンバー。ノンタイアップ/約7分もあるこの曲がヒットチャートの1位を取った事を大変嬉しく思う。この曲も彼等の新境地と言えるだろう。実はこの曲と前の "DISCOVERY" は一番最後に書かれた曲だそうだ。そして出来上がった曲を前に「これはアルバムの1,2曲目を飾る、代表的なナンバーになる」と確信したそうだ。こういう曲をシングルに切る事自体が現在の日本では冒険な訳だが、それをやりのけてしまう今の彼等には迷いなどないようだ。
  イントロから流れるメインリフがどことなく「POP」アルバムでのU2を思い浮かべるが、そこにアコギが絡むあたりがいかにもキース・リチャーズ好きの桜井らしくて、逆に微笑ましい。Aメロ、Bメロが今までのミスチルらしくない、という声もちらほら聞かれたが、サビに入ると一転してポップになる辺りに僕は「今のミスチルの充実度」を感じてしまう。ライヴでも盛り上がるナンバーとなるだろう。

◎M-3:Prism
  昨年のシングル「終わりなき旅」のc/w曲として既に発表済み。実は俺、この曲がアルバム中で1,2を争う位に好きだ。リリース当時の俺の心境とピッタリだったのだ。「転んだ時だけ気付く混凝土の固さ」だとか「自分に嘘をつくのがだんだん上手くなってゆく」‥‥聴いてて凄く胸を絞めつけられる思いがしたのも事実。聴いてて自然と涙が流れそうになる‥‥勿論今でも。これを書いてる今、アルバムを何度も通して聴いてるのだが、やっぱりこの曲になると辛く悲しい昨年の出来事を思い出してしまう‥‥なんて書いたら、レヴューにならないか。(苦笑)
  アルバムの中でも地味な部類の楽曲に入るが、実はこの曲が復活第1弾シングルになる予定だったそう。だがプロデューサーの小林武史氏が「復活1発目にしては地味だ。やっぱり1曲目は『いかにもミスチル』な曲‥‥"Innocent World" や "Tomorrow never knows" みたいな曲がいいのでは?」と忠告し、結局c/wに落ち着いたそうだ。これをシングルに持ってこようとした桜井の意図‥‥ここに復活後のミスチルのスタンスを垣間見る事が出来るのでは?

◎M-4:アンダーシャツ
  珍しくファンク色が強い、ソウルフルなナンバー。どちらかと言えば「BOLERO」の流れに近い気がする。「DISCOVERY」には「深海」や「BOLERO」にあったダークサイドの曲も数曲収録されているが、アルバムを通して聴くと、2年前に感じた「圧迫感」は感じられない。
  この曲の一節「"高価い物がいいもん"の理論」の韻の踏み方には感動すらした。桜井の書く歌詞にはよくこういった「日本語での韻」を踏んだものが多いが、やっぱりこの一節は過去最高の出来だと個人的には思うのだが‥‥(笑)

◎M-5:ニシエヒガシエ
  昨年2月にリリースされたシングル曲。ドラマ「きらきらひかる」の主題歌として耳にした方も多いのでは? 実はこの曲、アルバムの為に書かれた曲ではない。「Monthly Pick-Up Artist」のコーナーでも書いたが、最初のアルバム収録予定にこの曲は入っていなかった。桜井が意図したことなのか、手違いなのかは知らない。でも、入れて大正解だと思う。
  最初、この曲のリリース当時に聴いた時、俺は「あぁ、復活はまだまだ先だなぁ」と実感した。それはこの曲の歌詞を読んでそう思ったのだ。歌詞の内容がいまいちピンとこなかったし、何より「深海」~「BOLERO」の流れのような気がして‥‥ダークなミスチルではなく、"Innocent~" や "Tomorrow~" の流れを組む、これらを超えるような名曲を待っていたのに‥‥まだ桜井は「何かにせかされるように」生きてるのだろうか? そんなに「こんなやっかいな人生」を休養中にも送ってるのだろうか?と。曲調がヘヴィな分、余計にそんな事を考えさせる楽曲である。ところが、アルバムを通して聴くと、そこまでネガティヴなイメージが薄らいでいるのに気付く。寧ろ「必死で猛ダッシュです」という歌詞ですら前向きさを感じてしまうのは僕だけ?

◎M-6:Simple
  ここで今までの流れを変える曲が登場。小休止ともとれるが、そうとも言い切れないこの曲‥‥何と、「Atomic Heart」以前の彼等らしいアコースティックナンバーなのだ! こういう曲を今書けるという事自体が驚き。だけど、歌詞は今のミスチル。(笑)「マイナス思考で悩みまくった結果 この命さえも無意味だと思う日があるけど」って歌い出しが既に重い。(苦笑)でも、基本的にはラヴソング。「『考え過ぎね』って君が笑うと もう10代の様な無邪気さがふっと戻るんだ」って続きにホッとする。(笑)
  この曲から「アナログでいうB面になる」と桜井が言っていたが、本当にここでイメージがガラッと変わる。A面での「やっかいな人生」を「必死で猛ダッシュ」して、辿り着いたのが「探してたものは こんなにシンプルなものだったんだ」と気付く‥‥これもひとつの『DISCOVERY』なのだろう。桜井、ここまで辿り着くのに時間がかかったけど、よかったな‥‥

◎M-7:I'll be
  アルバム中盤を代表する名曲。9分を超える超大作だが、全くだれる事なく時間を忘れさせてくれる。本当の名曲とはこういう曲を指すのだよ。
  この曲には別バージョンが多数ある事が知られているが、実は僕は「DISCOVERY」発売前にこのアルバムのデモテープを聴く機会を得た。そこにはこの曲の別バージョンが収録されていた。この曲も元来、シングル用として書かれた曲で、デモに入っていたのは過去の彼等のイメージ通りの曲調‥‥例えれば "名もなき詩" や "Tomorrow~" の流れを組むアレンジだった。「あれでも十分にいけるのに」と思ってたら、何とこっちのシングルバージョンがこの春にシングルとしてリリース決定したそうだ。機会があったら是非聴き比べて欲しい。
  実はこの曲が僕の1番好きな曲。この曲に関しては‥‥とにかく歌詞を読んでいただきたい。その為には買っていただくのが1番なのだが、そうもいかないだろう。(笑)別室に歌詞を用意したのでここをクリックしてもらえば読めるようになってる。彼の詩の世界を是非堪能してもらいたい。

◎M-8:#2601
  もう、ここまであからさまにハードロックした曲は初めてだろう。これも「吹っ切れた」からこそ出来る技なのかも? まぁ、これを初期のミスチルファンが聴いたらどう思うのだろうか‥‥1度ちゃんと聞いてみたいものだ。
  久しぶりにJen(Dr.)が作曲に参加した楽曲。AメロをJen、残りを桜井が書くという初の共作。サビなどはもうメロディーを無視して叫びまくる桜井を堪能して欲しい。(爆)この曲のゾクゾクする箇所、それはAメロからメインリフに入る直前のギターのカッティング音‥‥是非聴いて下さい。で、これ、何かに似てると思ったのですよ。あの入り方、何だっけ?‥‥‥あっ、RADIOHEAD "Creep"だ!(笑)やっぱりRADIOHEADかい? でも曲調は全くの別物ですのであしからず。
  歌詞がまた‥‥しもネタ?(笑)Jenのツアー中のプライベートを歌った(笑)と桜井は言っていたが、ミッシェル・ファイファーを「ずりネタ」(爆)にするというのは‥‥と思ったら、実はAVだったらしい。(爆)品よくミッシェル・ファイファーにしたそうな。ま、まぁねぇ。よい子の皆さんも聴いてる訳だし‥‥
  「だって僕、AV女優詳しくないですから」(桜井;談)

◎M-9:ラララ
  一転してまたまたフォーキーなナンバー。この曲が好きだというミスチルファンが多いみたいだ。エンディングに向けての小休止的意味合いも感じられる。
  最初この曲を聴いた時、思い浮かべたのが「ゆず」だった。(笑)そう、ミスチルと同じレコード会社の、あの2人組のフォークデュオ。イメージ的なもんだけど‥‥歌詞も「日常にある、日頃気付かないような幸せ」を歌っている。「そんなラララ~探してる」これも所謂ひとつの『DISCOVERY』なのかも。

M-10:終わりなき旅
  いよいよエンディングに向けて盛り上がる。この曲、俺の中では "Innocent~" や "Tomorrow~" に初めて並んだ名曲だと確信している。これ以上、何を言えというのだ? とにかく聴いて欲しい。言葉では伝わりにくい曲のイメージ‥‥転調に次ぐ転調、流れるようなメロディー、そして「素晴らしいはずの自分を探す」終わりなき旅‥‥最後の『DISCOVERY』はもうすぐ、そこに近付いている‥‥

◎M-11:Image
  「混乱した時代」を駆け抜け、最後に辿り着いたのは「楽しく生きて行くImageを 膨らまして暮らそうよ さぁ目に写る全てのことを抱きしめながら」‥‥この一言を言えるようになるまでに、人間はどれくらい回り道をしなければならないのだろうか?なんて事を真剣に考えた。桜井和寿という男はここに辿り着くのに何年もの月日を費やした。自分を犠牲にし、家族を犠牲にし、大切なものが何なのか見えなくなり‥‥やがて「大切なものいつだって 目の前に転がっている」ことを悟り、「全ては自分自身なのだ」と気付く。彼と同世代(余談だが、マニックスのメンバーとミスチルのメンバーは同級生(笑)だったりする。この2組を比較してみるのもまた面白いのでは?)の僕らなら、このアルバムを聴いた時に何か「指針」となるものが見えてくるような気がするのでは‥‥そんな事を考えさせながら、このアルバムは終了を迎える。


◎最後に

  私情を挿みつつ各楽曲の感想を述べていったけど、やっぱり1番よいのは、これを読んだあなたが自らこのアルバムを手にする事だと思います。全ては聴く事から‥‥批判/批評はその後で。若い方よりも寧ろ、俺と同世代の20代後半以上の方に、是非このアルバムを聴いてもらいたいと思っています。勿論、それ以外の世代の方にも、純粋に「邦楽史上に残る名盤」を堪能して欲しいと思ってますが。

  これを切っ掛けに、洋楽ファンが邦楽に興味を持ち、邦楽オンリーの方が洋楽に興味を持つ切っ掛けになれば‥‥「DISCOVERY」と「ja,Zoo」というのはそういうアルバムになりうると確信しています。



▼Mr.Children『DISCOVERY』
(amazon:国内盤CD

投稿: 1999 02 12 12:00 午前 [1999年の作品, Mr.Children] | 固定リンク