2015/06/10

MUSE『DRONES』(2015)

マット・ラングとの共同プロデュースに妙な安心感を覚えた新作は、セルフプロデュースの前2作よりもハードロック色濃厚。現代的な重々しいミドルチューンを連発しながらも近作にあったエレクトロの要素も味付け程度に登場し、後半にかけてはQUEEN風オペラコーラスも健在。

しかしあくまでもこのアルバムの主役は、原点回帰とも言える「トリオ編成のバンドサウンド」であることが近作との大きな違いだ。アルバムタイトルには日本で旬なキーワードが用いられているがその内容はとてもシリアスで、コンセプトアルバムとして各曲のストーリーが連なっていく。

アッパーな楽曲が少なくてもテクニカルなギタープレイやアレンジによって全体に起伏を付けており、「内面の死」を歌った1曲目から劇的な結末へと流れるように続く構成は過去の作品以上に筋が通ったものといえる。個人的には4作目がピークと思っていたが、ここにきてまた新たな高みに到達したのではないだろうか。どうせならアルバム完全再現ライブにも期待したい。

※このレビューは同作リリース時に『TV BROS.』に掲載されものを一部修正して掲載しております。



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投稿: 2015 06 10 12:00 午前 [2015年の作品, Muse] | 固定リンク

2006/07/01

MUSE『BLACK HOLES AND REVELATIONS』(2006)

 前作「ABSOLUTION」から3年ぶり、通算4作目となるMUSEのニューアルバム「BLACK HOLES AND REVELATIONS」なんですが‥‥これまたスゴいことになっちゃってますわ。何度か書いてきてるから覚えている人もいるかもしれないけど、俺スッゲーこのバンドが苦手だったんだよね、初期の頃。ま、1st「SHOWBIZ」の時期限定ですが。それが2nd「ORIGIN OF SYMMETRY」で一気にヤラレてね。その後は言うまでもなく。どのアルバムも今では大好きですよ(けど1stだけは今でも違和感残るかな)。

 そんな彼らがメジャー「Wea」移籍して、アメリカや日本でも本国イギリスとほぼ同時期に新作がリリースされる‥‥それだけ力入れてるってことでしょうね。実際、これはそれだけの内容だと思います。

 前作、前々作にあったようなメタリックな要素は若干後退して、その分ニューウェイブチックなアレンジの曲が増えたような気がします(例えばM-2〜4辺りの流れ)。かと思えばM-5〜6だけを何も知らずに聴かされたら「へっ、トム・ヨークのソロアルバムってもう出たの?ていうかこんなサウンドなんだ?」って思っちゃうんじゃないかな、と。実際、俺も店頭でM-5を聴いたときは焦ったもん。

 前作までがどちらかというと「シングル曲並みの完成度の高い曲を並べた作品集」という印象が強かったのに対し、このアルバムはもっとこう、アルバム・オリエンテッドな作風な気がしますね。流れがすごい良い。新機軸もあるんだけど、聴けばそれがMUSEの曲だとわかる。ダンサブルなシングル曲 "Supermassive Black Hole" みたいな異色作でもね。マシュー・ベラミーの声の強みだったり、あの変態的なキターサウンドだったり、そういったものの強みもあるけどね。RADIOHEADフォロワーみたいなことを今更言う人もいないだろうけど(単純に裏声のひっくり返り方がトムとマシューが似てるんだよね)、今から10年前に腐る程いたフォロワー予備軍の中では完全に一人勝ちな気がする(だからフォロワーじゃないってば)。

 でね。ものすごく純度が高くなってる分、やはり「Very British」な部分は隠せないんだよね。そういう意味では、この音がどこまでアメリカで善戦するのかが気になるところ。もしかしたら完全に拒絶されるかもしれないし、その逆に面白がられるかもしれない。可能性はゼロじゃないしね。ま、日本ではウケる音ですよ、こういうメロやサウンドは。ますますファンが増えるんじゃないかな、この夏のサマソニで。

 そうそう。やっぱりこのサウンドをどうライブで再現するのか、あるいは崩すのかが気になるね。そして過去の曲との対比も。並んだ時にどう聞こえてくるのか‥‥ま、そんな違和感はないだろうけどね。突出した出来というわけじゃなくて、順当にいい方向に成長してるサウンドだからさ、彼らの場合。

 いやぁ‥‥それにしても、本当に良いアルバムを作ったなぁ。良いバンドが期待以上のものを作ってくれた時の嬉しさって、何ものにも代え難いっていうか、表現難しいよね。とにかく、このアルバムがより多くの人に受け入れられることを願います。



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投稿: 2006 07 01 12:30 午前 [2006年の作品, Muse] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2003/12/23

MUSE『ABSOLUTION』(2003)

前作「ORIGIN OF SYMMETRY」から約2年3ヶ月振りに届けられた、MUSEのサードアルバム「ABSOLUTION」は前作以上に『深化』した、非常に過剰で味わい深い1枚に仕上がっています。前作にみられた北欧系ヘヴィメタル的な色合いは若干後退しながらも、シアトリカルな側面は更に激化。ロック的な攻撃性よりもズッシリと構え、腰を据えたかのような重さを感じさせる印象を全体から受けます。

例えば、前作ではまだ飛び道具的存在だったピアノメイン曲が、この新作ではいきなり1曲目から登場します。ミディアムテンポで激しいピアノが印象的な "Apocalypse Please" がそれで、ボーカル/ギター/ピアノ担当のマシュー・ベラミーのオペラチックなファルセット・ボーカルもここで存分に堪能できます。更に従来の路線を追求したシングル曲 "Time Is Running Out" や "Hysteria"、ヘヴィなリフが印象的な "Stockholm Syndrome" や "The Small Print"、ミディアムバラード "Sing For Absolution"、劇的な盛り上がり方をする "Falling Away With You"、ストリングスを導入した新境地 "Blackout"、ちょっとだけダンサブルな要素がみられる(けど予想の範疇内な) "Butterflies & Hurricanes"、これまた新境地といえる "Endlessly"、ありそうでなかったタイプの "Thoughts Of A Dying Atheist"、ちょっとだけここ数年のRADIOHEAD的な方向性を感じるラスト曲 "Ruled By Secrecy"‥‥確かに新境地といえるような新たな曲調もあるにはあるんだけど、それら全てが予想の範疇内であり、つまりは前作の延長線上にある作風なわけ。ファースト「SHOWBIZ」からセカンドへと移行する時に見られた劇的な変化/成長は今回見られず‥‥しかしながら、大成功を収めたセカンドの路線を更に追求した形での成長がこの新作で大きくクローズアップされてるんですね。

基本的にはこのMUSEというバンド、RADIOHEAD以降のバンドの中でもかなり特異な存在で、UKギターロック的な色合いよりも、ダークでゴシック調でヘヴィメタリックな側面をフューチャーしたバンドなんですよね。ポップで判りやすい歌メロに、ラウドロック真っ青なヘヴィリフ、時にはギターレスでピアノやシンセをメインに据えた耽美な楽曲まで登場する。決してポストロック的な方向へは行かず、あくまで判り易さ全面に出す。実はこのバンド、THE DARKNESS辺りに通ずるバンドなんじゃないかって気がするんですよね。伝統的ブリティッシュロック・バンドという意味でね。プログレッシヴでヘヴィで、メロウで耽美でゴシックで。ただ、こういう表現の仕方をするバンドが同時代に存在しなかったから目立ってしまったという。それとファルセットを多用したヒステリックで線の細いボーカルが、如何にも「RADIOHEAD以降」という風に捉えられてしまった。タイミング的なものも大きいし、まぁ登場の仕方も大きいし。世が世なら、間違いなく「時代錯誤」とか「'70年代のレトロック・リバイバル」なんて呼ばれてハイプ扱いされてたんでしょうね。アートワークにストーム・トーガソン(元ヒプノシスのメンバー)を起用する辺りにも、その筋の匂いがプンプンするし。

多分‥‥2003年にこのアルバムを持ってデビューしてたら‥‥絶対にTHE DARKNESSと比較されてたと思います。ライヴを観ても判るように、このMUSEも非常にアート面とエンターテイメント面をバランス良く強調したステージを繰り広げるし。そういう意味でも比較されるべき対象なのかもしれませんね。本当はRADIOHEADではなく、THE DARKNESSと肩を並べるべき存在。それが2003年に於けるMUSEの在り方なのではないでしょうか。前作同様、非常に気に入っている1枚です。しかし、癖が強い為‥‥THE DARKNESS同様、好きな人にはとことんアピールするものの、苦手意識のある人にはとことんダメな1枚にもなるでしょう。万人にはオススメしないものの‥‥実はハードロック・ファンにこそ聴いて欲しいアルバムだったりして。



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投稿: 2003 12 23 02:36 午前 [2003年の作品, Muse] | 固定リンク

2001/07/07

MUSE『ORIGIN OF SYMMETRY』(2001)

何時からメタルと疎遠になったのだろう。何時メタルという音楽に見切りをつけたのだろう。ふと考えてみたが、ハッキリと覚えていない。何時何時から、とかその日を境に聴かなくなったというわけではなく、徐々にだったのだろう。が、その決定打となった1枚は今でもハッキリ覚えている。RAGE AGAINST THE MACHINE「EVIL EMPIRE」。これを聴いたことで、それまでの価値観が変わってしまったのだった。その頃からだろうか、それまで創刊号から毎月買っていた「BURRN!」が立ち読みで済ます月が出てきたり、CDラックにあった山程のメタル系CDを売り払ってしまったのは‥‥

今でもこの手のジャンルはよく聴くし、たまに思い出したかのように中古で買い戻しているアルバムもある。決して‥‥嫌いになったわけではないのだ。ただ‥‥『NO FUTURE』‥‥メタルを聴いていると、こういう言葉が頭を過ぎるのだ。メタル好きやメタル肯定派を否定するつもりは毛頭ない。じゃなければ「猿メタル」なんてコーナーを作ったりしないし、ロブ・ハルフォードやJUDAS PRIESTの新譜に期待したりもしないだろう。

ただ‥‥以前この「猿メタル」コーナーに対して「メタル復権の為に頑張って下さいね!」という励ましのメールをいただいたことがあった。正直、どう返答していいのか困ってしまい、結局返事を書かず終いにしてしまった(殆どのメールに対して、例えそれが誹謗中傷であれ、俺はキッチリと返事を書くのだが、このメールのみ返事を書くことができなかった)。だって‥‥俺はメタルがメインストリームに立ったことなんてないと今でも思っているし、今後もそんなことはないと確信している。15年程前、確かに全米を巻き込んだムーブメントがあったが、あれはバブルのようなものだったと、今では思っている。「ブリットポップ」と同じようなもんだと俺は捉えている。

当然、その恩恵を受けてデビューしたバンドの中には素晴らしいものも幾つかいたが、その殆どは‥‥判ってるだろ?

さて、そんな俺ではあるが、たまにメタルと全く関係ないジャンルのアルバムを衝動的に購入した時に、そこから「メタル臭」や影響を発見してしまうと、無条件でニヤリとしてしまう。別にメタルが好きだったとかではなく、そのルーツとなるバンドが同じだったというケースが殆どなのだろうけど、なかなか興味深いものがある。

さぁ、やっとここからが本題だ。何故イギリスのトリオバンド‥‥雑誌や メディアでは「UKロック期待の新星」等と呼ばれているこのMUSEの新作「ORIGIN OF SYMMETRY」レビューに際し、こういうことを書いたのか‥‥聴いた人、判るでしょ?(ニヤリ)

1曲目 "New Born" を聴いた時の俺の感想‥‥「うわっ、これってメタルじゃんか!しかも北欧辺りの!!」ヤられた。ぶっ飛んだよ、マジで。俺はそれまでMUSEに対してそれ程いい印象を持っていなかったし、ちょっとしか聴いたことのないファーストアルバムに対しても、それ程いいとは思わなかった。昨年のサマーソニックでのステージも、環境が悪かったせいもあってか(朝イチで、しかも炎天下の中)その良さに気づくことなく終わった。

そんな俺が何故、このアルバムを買ったのか‥‥今となっては「血迷った」としか言いようがないが、とにかく今年に入って「何の期待もせずに衝動的に買ったアルバム」の中ではダントツの1位だ。

前に‥‥REEFの「GETAWAY」レビューの時だったと思うが‥‥「逆猿メタル」という表現を使ったことがある。本来の「猿メタル」が「メタルに疎い・毛嫌いしてる人にも受け付けられる可能性がある、メタル寄り/メタルとカテゴライズされるアーティスト」をオススメする枠なのに対し、この「逆猿メタル」というのはその言葉通り‥‥「普段メタル以外の音楽と接する機会があまりない方々に対して、他ジャンルにもそれに匹敵する素晴らしい作品があるんだよ」という意味合いで語っている。REEFがMR.BIG辺りの土着的ルーツロック好きにアピールするように、このMUSEも‥‥ドラマチックな展開が盛りだくさんのメタルに匹敵する内容だと思っている。

前作を手掛けたジョン・レッキー(STONE ROSESやRADIOHEAD等を手掛けたことで有名だが、その昔はXTCといったバンドも手掛けている)だけでなく、TOOLやKING CRIMSON、ピーター・ガブリエルといったプログレ・チックなアーティストを手掛けるデヴィッド・ボトリルにもプロデュースを依頼したことによって、前作から一皮も二皮も剥けた‥‥いや、化けた内容となっている。「MUSEってこんなに凄かったっけ!?」アルバムを聴き終えた時、誰もがそう思うに違いない。

キーボード類を効果的に多様している点、トリオの利点を上手く機能させたバンドアンサンブル等から、カナダのRUSHを彷彿とさせるイメージもあるが、むしろあっちよりも攻撃的であり、同時に耽美性も十分すぎる程にある。ボーカル&ギターのマシュー・ベラミーの、ファルセットを多用した歌唱法から前作では「トム・ヨークのフォロワー」、あるいは「RADIOHEADフォロワー」と呼ばれることが多かった(実際俺も最初はそう思ってたし)が、ここでは既にオリジナルとして、独特な存在感を醸し出している。ファルセットと同様に、独特なブレス(息継ぎ)も印象的だ(これがダメって人もいるだろうけど)。むしろそれらの要素が、こういう耽美性を更に高めているように感じる。メタルだ、プログレだ、という割には「弱さ」「儚さ」が強すぎるのだ。もしこの演奏に対してボーカルがジェームズ・ラブリエ(DREAM THEATERのVo)やジェフ・テイト(QUEENSRYCHEのVo)だったら、正しく正統派メタルとして機能するはずだ。

1曲1曲の作りがしっかり作り込まれているにもかからず、非常に自由度が高いアンサンブル。この辺に'70年代辺りのブリティッシュ・ロックとの共通点を見出せるような気がするのだが、如何だろうか? その観点からすれば、タイプは全く違うが初期のマニックスやMANSUN辺りとも共通するものを持っているバンドだと、今回このアルバムを聴いて実感した。

とにかく、起承転結がしっかりしてるのだ。1曲目 "New Born" や3曲目 "Spece Dementia"、6曲目 "Citizen Erazed" 辺りは、その代表的楽曲だろう。同時に、シーケンサーを多用したパワーソング "Bliss" や、ストレートな "Plug In Baby"、オペラチックな "Micro Cuts" のような曲もある。アルバムの流れとしても非常に振り幅の大きい構成となっている前半と、一聴して地味な印象を受けるものの非常に味わい深い後半というように、飽きさせない作りとなっている。

以前、マシューのギターワークについて「KING CRIMSONのロバート・フリップやRATMのトム・モレロからの影響が大きいのでは?」と書いたことある。その時はリズム隊について特に触れなかったが、このセカンドではそのリズム隊の存在感が非常に大きい。特にベース。トリオってこともあって、CREAM時代のジャック・ブルースとイメージが重なった。ギターよりもベースがメインリフを刻む曲が多く見られるが、それもこのバンドの特徴だろう。ギター2人ではなく、敢えてトリオという形態を取ったのも、実はこの辺からの影響が強いのかもしれない(って実は友達がこの3人だけだったとか!?)。こうなると、当然ライヴが観たくなってくる。当初はフジロックへの出演が決まっていたが、アルバムリリースの遅れやプロモーション計画の変更で流れてしまった。単独来日は年末辺りだろうか? 久し振りに「本気で観たい」と思わせてくれたアルバムだ。このアルバムの曲をどうステージで再現するのか? 或いはぶち壊すのか? 非常に興味深い。

最近「ギターロックがつまらない」「UKロックが面白くない」と言い続けてきた俺だが、これには本当に「やられた!」感が大きい。ある意味、今年前半にリリースされたイギリスのアーティストの作品の中ではダントツかもしれない。大穴、マジで。俺の中ではWEEZERよりもASHよりも面白かった。これはマジでいいアルバムだ。メタルファンもUKロックファンもプログレファンもそうでない人も‥‥とにかく聴いて欲しい1枚である。



▼MUSE『ORIGIN OF SYMMETRY』
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投稿: 2001 07 07 02:31 午前 [2001年の作品, Muse] | 固定リンク