2004/03/27

MY LITTLE LOVER『singles』(2001)

  MY LITTLE LOVERが'01年末にリリースしたシングルコレクション・アルバム。彼らがデビュー('95年)からの6年半の間に発表してきた14枚('01年12月当時)の中から13枚14曲(両A面シングルが1枚)と、このベスト盤の為に録音された "あいのうた ~Swallowtail Butterfly~" の(小林武史にとっての)セルフカバーを含む15曲、約74分に及ぶ長編アルバムになっています。が、これだけの容量にも関わらずすんなり聴けてしまうのは、やはり彼らの魅力によるものなのか、それとも策士・小林武史の力量によるものなのか‥‥

  決して上手とは言えないAKKOのボーカル、過去の手掛けたアーティストでの仕事振りを彷彿さえせる小林の作曲&アレンジによるフレーバー、そして藤井謙二('02年7月に脱退)による時にダイナミック、時に繊細なギター‥‥この組み合わせがMY LITTLE LOVERの個性‥‥とは決して言い難い、少なくともこのベスト盤に収録された楽曲に関しては「小林主導」による作品が大半を占めるのではないでしょうか。いや、それが悪いというわけではなく、元々そういうコンセプトの下にスタートしたプロジェクトなので、全然構わないんですよ。

  でも、こうやって時系列に沿ってシングル曲を順々に聴いていると、最初の数枚は明らかに「MY LITTLE LOVER featuring 小林武史」といった公式が成り立っているものの、曲が進むに連れそれが少しずつ崩壊していき、ヘタウマなりに独自の個性を身につけたAKKOのボーカルと、ミュージシャンとしても幅を広げた藤井の「個」が占める割合がどんどん大きくなっているように感じられます。どの辺りだろう‥‥やはり "空の下で" 辺りからかな? セカンドアルバム「PRESENTS」('98年)制作時期から、いや、勿論それ以前から少しずつ表出してはいたんですが、それが完全に開花したのがこのセカンドの頃なのではないでしょうか? だからなのか、それまでは豪快なサウンドの上でもどこか頼りなさげだったふたりも、この "空の下で" 以降の楽曲では説得力を伴った力強さすら感じさせるんですよね。例えば "DESTINY" ひとつをとっても、初期に演奏してたらただ繊細さだけが目立っただろうけど、ここでは確固とした何かを感じることができます。丁度この頃って、セカンドと同時にサードアルバム「NEW ADVENTURE」('98年)も作ってただろうから、長期の製作期間の中で確かな「何か」を手に入れたのかもしれませんね。

  小林武史はMY LITTLE LOVERのファーストアルバムに「evergreen」というタイトルをつけました。正しくこの「エヴァーグリーン」こそ、このユニットのテーマ。色褪せないメロディーや歌詞達と、小林がこれまでの音楽人生の中で培ってきたノウハウを上手く活かし、誰かのためではなく「自分のため」に始めたユニット。時が経つに連れ、音楽におけるパートナーがプライベートでのパートナーにもなり、2人が3人になり、そして再び2人になった。いろんな変化はあったものの、一貫しているのが上記のポイントでしょう。だから最初に書いたように、74分もあるアルバムでもすんなり聴けてしまう。自分が好きでよく聴いていたというのもあるけど、全部口ずさめるというのも大きいポイントかな。シングル曲ということで上手く消費されつつも、決して廃れるなく、9年も前にリリースされた "Man & Woman" や "Hello, Again ~昔からある場所~" は色褪せることなく、今聴いても新鮮さを失っていない。数歩先に行っていたとか当時から新し過ぎたとかそういったことではなく、どこにも属さなかったからこその普遍性なのかな、と‥‥っていうのは言い過ぎでしょうか?

  このアルバムで唯一残念なのが "Private eyes" が入ってないことかな。俺、この似非テクノポップが凄く好きなんですけどねぇ。6分以上もあるこの曲をカットして、YEN TOWN BANDでCHARAが歌った "あいのうた ~Swallowtail Butterfly~" のカバーを入れたのは、ある意味正解であり、ある意味では失敗だったかな、という気も。原曲のインパクト/イメージが巨大なため、ある種の人にとっては違和感を強く感じさせてしまう大胆なアレンジ。俺も最初は「う~ん‥‥」と唸ってしまった程でして。これをカットして先の曲を収録した「コンプリート・シングルズ」を売りにしてもよかったんじゃ‥‥ま、既出曲だけじゃさすがに厳しいってのも判りますけどね、売る側としては。

  シングル曲をお手軽に楽しむという意味で、そしてこれからMY LITTLE LOVERを知ろうという人にとっては恰好の教科書となるであろう1枚。勿論これを聴いた後にオリジナルアルバムを聴くのも忘れずに。間もなくメンバー選出のベスト盤(このシングルコレクションとは1曲も重複なし。件の "Private eyes" もこちらに収録)も出るので、このシングルコレクションを「表ベスト」、今度のメンバー選出編を「裏ベスト」として楽しむもよし。とにかくこれだけじゃ「本当の魅力」が100%伝わるのかどうか‥‥もっと素晴らしい曲、沢山ありますんで。



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投稿: 2004 03 27 12:00 午前 [2001年の作品, My Little Lover] | 固定リンク