GINGER (GINGER WILDHEART)『A BREAK IN THE WEATHER』(2005)
2005年1月31日にリリースされたジンジャー(現ジンジャー・ワイルドハート)のコンピレーションアルバム。日本盤未発売。
本作は2001年からスタートした、ジンジャーのソロ名義CDシングル12ヶ月連続リリース企画「Singles Club」で発表された音源をまとめたもの。この企画は文字通り、毎月新曲3曲を収録したシングルを連発し続けるというものでしたが、2001年6月に第1弾「I'm A Lover Not A Fighter」を発表するものの、続く第2弾「Cars & Vaginas」(タイトルよ……)が同年12月発売といきなり半年も遅れる事態に(苦笑)。
その後も着実に制作/リリースが遅れていき、2002年には第3弾「And This Time I'm Serious」、第4弾「The Saga Of Me & You」を何とか届けるものの、2003年発売の第5弾「Virtual Love」を最後にリリースが途絶える始末。これ、おそらくリリース元のInfernal Recordsが閉鎖されたか何かが主な理由だったのではないでしょうか。実際、このアルバムは別レーベルのSanctuary Recordsからの発売ですし。
とはいえ、この時期にはすでにTHE WiLDHEARTSが再始動し、2002〜3年に「Vanilla Radio」や「Stormy In The North, Karma In The South」などのシングルを連発。2003年8月には待望のアルバム『THE WILDHEARTS MUST BE DESTROYED』を発表していることから、本当のところはソロ活動にまで手が追いついていなかったのでしょう(ていうか、事前に12ヶ月分36曲できていたわけではなかったのかよ、と。苦笑)。
結局5枚目で頓挫した「Singles Club」を総括する形で、2005年に入って“ジンジャー名義で初のアルバム”と銘打って発表されたのが今作。ただ、内容的に純粋なオリジナルアルバムではないので“コンピレーションアルバム”扱いとなっています。
中身は第1弾「I'm A Lover Not A Fighter」から第5弾「Virtual Love」までの15曲に、第6弾シングルとして制作されていたものの未発表となっていた「T.W.A.T.」「He's A Man」「Dying Art Of The Chorus」の3曲を追加した、全18曲が2枚のCDに各9曲ずつ収録されたもの。シングルごとにコンセプトがある程度あるようなので、こういう形で区切ったのでしょうね。
ジンジャーの本格的なソロ活動はSiLVER GiNGER 5でのアルバム『BLACK LEATEHR MOJO』(2000年)が最初となると思いますが(その前後にCLAM ABUSEでのアルバム『STOP THINKING』や、SUPER$HIT 666でのEP制作などもありましたが)、今作で表現されているサウンドはSiLVER GiNGER 5で体現したハードロック色よりもさらに幅広いものがあり、のちの正式なソロ第1弾アルバム『VALOR DEL CORAZON』(2005年)とTHE WiLDHEARTSでの活動の中間にある楽曲群を楽しむことができます。
王道パワーポップ的な「I'm A Lover Not A Fighter」や「And This Time I'm Serious」もあれば、ブラスをフィーチャーしたグラマラスなバブルガムポップ「Cars & Vaginas」、THE WiLDHEARTS的カオティックさが端的に表れたヘヴィチューン「Not Bitter, Just A Little Disappointed」もある。また、「Blinded By Absinthe」のようにソングライターとして新たな側面を打ち出した楽曲も含まれており、改めてこの人の多彩さ/多才さに驚かされるのではないでしょうか。このこだわりがリリースの遅れにもつながったのかもしれませんね(苦笑)。
未発表となっていた3曲も過去4作のシングルの延長線上にある楽曲群で、アルバムの流れで聴いても違和感なく楽しめるものばかり。この中では、がグルーヴィーなベースラインが耳に残る初期ビートルズ・ライクなパワーポップチューン「He's A Man」が印象的かな。なお、アルバムラストを飾るテクノポップ調「Dying Art Of The Chorus」にはNAPALM DEATHのバーニーことマーク・グリーンウェイ(Vo)がグロウルでゲスト参加。異色のサウンドメイクおよび“らしい”グロウル&スクリームは最高のアクセントとなっています。むしろこのラスト2曲が本作最大の山場かもしれません。これ、なんで当時リリースされなかったんだろうね。
ジンジャーのソロ作は初期3作がストリーミング配信されていないものの、Sanctuary Recordsからリリース/再発されたSiLVER GiNGER 5のアルバムや本作は現在もサブスクで聴くことができます。
▼GINGER『A BREAK IN THE WEATHER』
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