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カテゴリー「New York Dolls」の8件の記事

2022年6月12日 (日)

STEVE CONTE『BRONX CHEER』(2021)

2021年11月5日にリリースされたスティーヴ・コンテのソロアルバム。日本盤未発売。

菅野よう子ワークスへの参加、NEW YORK DOLLSMICHAEL MONROEでギタリストとして活躍するスティーヴ。そのキャリアのスタートは80年代後半にまでさかのぼります。自身が中心となるバンドやプロジェクトはこれまで数々存在しましたが、純粋なソロ名義のオリジナルアルバムとなるとSTEVE CONTE NYC名義を除けばこれが初となります。

レコーディングはスティーヴがギター&リードボーカルを担当したほか、実弟のジョン・コンテがベース、キース・リチャーズとのコラボレーションなどで知られるチャーリー・ドレイトンがドラムを務めています。基本はこのトリオ編成で録音され、曲ごとに多数ゲストが参加しています(詳しくはこのへんを参考に)。

全11曲中10曲をスティーヴがひとりで書き下ろし、「Flying」のみ共作。マイケル・モンローの下でもアルバムごとに数曲は単独で書き下ろしていましたが、今作はそういった楽曲からも想像できるようなシンプル&ストレートなロックンロール満載の、ご機嫌な1枚に仕上がっています。

基本的には2〜3分程度のアーシーなロックンロールが中心。「The Human Animal」や「Liar Like You」といった冒頭2曲や「Gimme Gimme Rockaway」あたりはマイケル・モンローに似合いそうですが、むしろ本作はカラー的に後期NEW YORK DOLLSのほうに近いのかも。ところどころでパンクロックからの影響もにじませていますが、ブルースやソウルの影響下にあるアメリカンロック主体の作品なので、マイケルのリスナーよりもTHE ROLLING STONESあたりのファンに強くアピールする内容かもしれません。

スティーヴのシンガーとしての力量は菅野よう子ワークスで実証済みですが、本作で聴くことのできる彼の歌声はワイルドなロックチューンよりも「Guilty」みたいにソウルフルなミディアム/スローナンバーで活きるような気がします。また、それにあわせた彼のギタープレイも非常にエモーショナルで、直情的な楽曲が多いマイケルの作品ではなかなか聴くことができないプレイやフレーズも豊富に含まれています。

こういう作品は文字でしのごの説明するより、まずは音から入ってもらうのが一番かな。ストーンズ関連の作品はもちろんですが、イジー・ストラドリンTHE BLACK CROWESの初期作品が好きな方にも十分アピールする内容だと思うので、本文中に出てくるアーティスト名にピンと来た方は迷わずチェックすることをオススメします。

 


▼STEVE CONTE『BRONX CHEER』
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2021年11月15日 (月)

THE HEARTBREAKERS『L.A.M.F.』(1977/2021)

1977年10月にリリースされた、ジョニー・サンダース(Vo, G/ex. NEW YORK DOLLS)率いるTHE HEARTBREAKERSの1stアルバムにして唯一のスタジオ作品。

1975年にNEW YORK DOLLSを脱退したジョニーとジェリー・ノーラン(Dr)。2人はウォルター・ルー(Vo, G)、リチャード・ヘル(B/ex. TELEVISION)の4人でこのTHE HEARTBREAKERSを結成します。のちにリチャードからビリー・ラスへとベーシストが交代。1977年初頭にロンドンで今作のレコーディングに突入します。

楽曲自体はNEW YORK DOLLSの延長線上にあるパンキッシュなロックンロールが主体。ただ、DOLLSがデヴィッド・ヨハンセン(Vo)の華のあるボーカルや煌びやかな味付けによってグラマラスさが強かったところを、THE HEARTBREAKERSではジョニー&ウォルターが歌うこと、シンプルなアンサンブルにより(また時代的なものもあり)パンクロック度が上昇。ともにガレージロックが下地にあるバンドですが、演者によってこうも変わるのかと納得させられるものがあります。

楽曲の1つひとつに関しては文句なしの仕上がり。今やパンクロックのクラシックといえる「Born To Lose」や「I Wanna Be Loved」、のちにRAMONESも取り上げた「Chinese Rocks」を筆頭に、どれもが最高の輝きを放っています。リリース時期もほぼ一緒だし、時代的にSEX PISTOLS唯一のアルバム『NEVER MIND THE BOLLOCKS HERE'S THE SEX PISTOLS』(1977年)と双璧を成すパンクロックのマスターピースと断言できる作品……になるはずでした。

実はこのアルバム、現在までに複数のミックスが存在していることはご承知かと思います。というのも、オリジナル盤のレコード(アナログ盤)のミックスが酷く、曲や演奏の素晴らしさのわりに高評価を獲得することができなかったのです(同じ作品のカセット版は音質が良好だったこともあり、アナログ盤のプレスに問題があったなどの説もあります)。その後、オリジナルのマスターテープ紛失により、同セッションからの別テイクをリミックス&追加レコーディングした『L.A.M.F. REVISITED』や『L.A.M.F.: THE LOST '77 MIXES』、『L.A.M.F.: DEFINITIVE EDITION』といった別バージョンが複数出回ることになります。

筆者がこのアルバムに初めて触れたのは90年代以降、おそらく『L.A.M.F.: THE LOST '77 MIXES』あたりが初めてだったかと思います。その後、新たなバージョンが発表されるたびにCDを購入してきましたが、そもそもオリジナル版を耳にしたことがなかったので、元々の音の悪さを知らないわけです。今ならそのへんの音もYouTubeなどで確認することができますが、もはや別モノといった印象すらあります。

ところが昨年、マスターテープのコピーが発見され、2021年11月5日(日本盤は11月10日)に『L.A.M.F.』が本来の形で再発。『L.A.M.F.: THE FOUND '77 MASTERS』と題されたこのアルバム、確かに音質/音圧含め良質なものかと感じます。ただ、複数の別バージョンでそこそこ音質の良い『L.A.M.F.』を耳にしてきた身にとっては、本来の形と謳われる今バージョンも現存する別バージョンのひとつにしか思えないんですよね。だって、後追い組からすればどれが“ホンモノ”なのか判別がつかないわけですから。

まあ、そうはいっても最高の曲と最高のプレイを最良の音で、アーティストやプロデューサーが本来想定していた形で聴くことができるようになったのは良いことかと。メンバー全員がすでにこの世に存在しない今、これらの作品の印税がどこに行くのかなど気になることもありますが、本来なら1977年のパンクシーンを代表するはずだった名盤を、今は爆音で浴びたいと思います。

なお、『L.A.M.F.: THE FOUND '77 MASTERS』のフィジカル版はCD2枚組仕様で、DISC 1にはアルバム本編(M1〜12)に「Can't Keep My Eyes On You」「Do You Love Me」を追加。DISC 2は「Born To Lose」「Chinese Rocks
」のシングルミックスと、アルバムレコーディングまでに複数実施されたデモセッションの音源がまとめられています。こちらにはリチャード・ヘル在籍時の音源も含まれているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

 


▼THE HEARTBREAKERS『L.A.M.F.: THE FOUND '77 MASTERS』
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2021年9月27日 (月)

NEW YORK DOLLS『'CAUSE I SEZ SO』(2009)

2009年5月5日にリリースされたNEW YORK DOLLSの4thアルバム。日本盤未発売。

2004年に再結成を果たし、2006年にはデヴィッド・ヨハンセン(Vo)とシルヴェイン・シルヴェイン(G)のオリジナルメンバーに元HANOI ROCKSサミ・ヤッファ(B)、菅野よう子とのコラボレーションで知られるスティーヴ・コンテ(G)、そしてブライアン・デラニー(Dr)にブライアン・クーニン(Key)の6人で制作した32年ぶりのオリジナルアルバム『ONE DAY IT WILL PLEASE US TO REMEMBER EVEN THIS』で完全復活を果たしたNEW YORK DOLLS。しかし、ブライアン・クーニーはアルバム発表後にバンドを脱退、以降は残された5人で活動を続けることになります。

レーベルをRoadrunner RecordsからAtlantic Records傘下のATCO Recordsに移籍して、約3年ぶりに届けられた再結成後2作目のアルバムは、バンドのデビュー作を手がけたトッド・ラングレンを再度プロデューサーに起用。前回は新たな門出を祝福するようにさまざまなゲストミュージシャンが参加していましたが、今回は5人のみでがっつりレコーディングに臨んでいます。この時点で、バンドが何を求めていたのかが想像できそうですね。

基本的には前作の延長線上にある、少々硬質感を強めたロックンロール/ガレージロックがベース。ただ、楽曲の質感や適度なユルさが前作以上といいますか、良い形で70年代の往年の雰囲気を取り戻し始めている。そこに楽曲の良さ(R&Bを下地にしたガレージロック)が加わり、良い作用を生み出しています。ぶっちゃけ、前作は30数年ぶりの復活ということもあり、力みも多少あったのかな。このナチュラルさ、随所に漂うユルさこそNEW YORK DOLLSだろうと膝を叩きたくなる仕上がりです。

基本的にはヨハンセン&シルヴェインがソングライティングの基礎を作っているのですが、そこにスティーヴ・コンテが4曲で名を連ねている。のちに加入するマイケル・モンロー・バンドでもその才能を遺憾なく発揮していますが、すでにこの時点で最高の仕事ぶりを見せていたことを再確認できます。

ヨハンセンのボーカルも加齢とともに深みが加わり、誰にも真似できないヘタウマぶりを展開。これに合わせて、バックの演奏も硬くなりすぎず、ヘタウマとまではいかないものの適度な緩やかさを漂わせる。このバランスの取り方が非常に的確で、正直今のAEROSMITHストーンズとは異なる魅力が伝わってきます。これがクセになって、たまらんのですよ。

なお、アルバムには1stアルバム『NEW YORK DOLLS』(1973年)収録の代表曲「Trash」を、レゲエアレンジでセルフカバーしたトラックも収録。こちらも今ならではの味わい深さがあります。この遊び心も嫌いになれません。

初期2作は別格として、再結成後ではベストワークでは?と当時は確信したものですが、実はそのあとにもう1枚、最高な1枚を届けてくれることになるとは……それについては、また別の機会に。

 


▼NEW YORK DOLLS『'CAUSE I SEZ SO』
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2021年9月26日 (日)

JOHNNY THUNDERS『SO ALONE』(1978)

1978年10月にリリースされたジョニー・サンダースの1stソロアルバム。

1975年のNEW YORK DOLLS脱退を経て、一緒に脱退したジェリー・ノーラン(Dr)とTHE HEARTBREAKERSを結成。パンクムーブメントがイギリスで勃発する1977年に唯一のアルバム『L.A.M.F.』を発表しますが、そこから1年に初のソロアルバムを完成させます。

スティーヴ・リリィホワイト(U2、XTC、ULTRAVOX、モリッシーなど)を共同プロディーサーに迎え、レコーディングにはSEX PISTOLSのスティーヴ・ジョーンズ(G)&ポール・クック(Dr)、フィル・ライノット(Ba, Vo/THIN LIZZY)、スティーヴ・マリオット(Harp, Piano, Vo/SMALL FACES、HUMBLE PIE)、クリッシー・ハインド(Vo/THE PRETENDERS)、ウォルター・ルー(G/THE HEARTBREAKERS)などジョニーの交友関係の幅広さを感じらせる面々が多数参加。『L.A.M.F.』の延長線上にありながらも、ソロならではのパーソナルな側面を感じさせる楽曲も含む、バランス感に優れた1枚に仕上がっています。

カバー曲が多いのも彼ならではといったところで、VENTURESの「Pipeline」のカッコよさ(HANOI ROCKSのカバーはこれが元でしょう)をはじめ、THE SHANGRI-LAS「Great Big Kiss」、オーティス・ブラックウェル(THE WHOなどもカバーした)「Daddy Rollin' Stone」、NEW YORK DOLL時代のセルフカバー「Subway Train」など彼らしいセレクト/アレンジで楽しませてくれます。

かと思えば、今日までマイケル・モンローGUNS N' ROSESなどさまざまなアーティストにカバーされてきた「You Can't Put Your Arms Around A Memory」や「Ask Me No Questions」といったミディアムスローのアコースティックナンバー、NEW YORK DOLLSの延長線上にありながらも時代に呼応したサウンドの「Leave Me Alone」、SEX PISTOLSに対するディスソング「London Boys」などオリジナルソングも魅力的。1992年のCD化の際にはオリジナルの10曲に加え、T. REX「The Wizard」のカバーなどを含む4曲が追加されており、こちらも捨て曲なしで楽しむことができるはずです。

『L.A.M.F.』はオリジナル版に音質面で難があり、のちに数々の“別ミックス”が続発するという珍事を生み出しましたが、そういった意味ではジョニー・サンダースのソロワークスにおける入門盤は本作がいいのかなと。『L.A.M.F.』も破壊力も捨てがたいですが、ソングライティング面、アレンジ面での総合力では本作のほうが数歩かなと感じています。事実、僕もジョニーのソロ作品は本作(1992年の初CD化時)からでしたしね。NEW YORK DOLLSからの流れで聴くにもちょうど良い気がします。

ジョニーのヘロヘロボーカルも、どこか初期のキース・リチャーズを彷彿とさせるものがありますし。そういった意味でも本作は“究極のヘタウマ芸術”における、ひとつの到達点ではないでしょうか。

 


▼JOHNNY THUNDERS『SO ALONE』
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2019年10月 2日 (水)

NEW YORK DOLLS『ONE DAY IT WILL PLEASE US TO REMEMBER EVEN THIS』(2006)

2006年7月下旬に発表された、NEW YORK DOLLSの3rdアルバム。日本盤もほぼ同タイミングでリリースされています。

彼らがスタジオアルバムをリリースするのは『TOO MUCH TOO SOON』(1974年)以来、実に32年ぶりのこと。とはいえ、黄金期メンバーのジョニー・サンザース(G)もジェリー・ノーラン(Dr)も90年代前半に亡くなっているし、アーサー・ケイン(B)も2004年夏に白血病で亡くなっており、前作から残っているのはデヴィッド・ヨハンセン(Vo)とシルヴェイン・シルヴェイン(G)のみ。

そんな彼らをサポートしたのが、元HANOI ROCKSのサミ・ヤッファ(B)、日本では菅野よう子とのコラボレーションでも(一部で)知られるスティーヴ・コンテ(G)、そしてブライアン・デラニー(Dr)にブライアン・クーニン(Key)という編成。この6人で新生NEW YORK DOLLSとして本格的活動再開を果たしたわけです。

このアルバムのプロデュースを手がけたのは、AEROSMITHCHEAP TRICKなどでおなじみのジャック・ダグラス。さらにゲストアーティストとしてイギー・ポップやマイケル・スタイプ(当時R.E.M.)、トム・ゲイブル(AGAINST ME!/のちのトランスジェンダーを告白し、現在はローラ・ジェーン・グレイスと改名して女性として生活)といったシンガーや、ボ・ディドリー(G)などがプレイヤーとして参加。NEW YORK DOLLSの復活に華を添えています。

さて、気になる内容ですが……うん、ちゃんとNEW YORK DOLLSです。デヴィッド・ヨハンセンの声が年相応の老け方をしており、往年のグラマラスさはもはや見る影もありませんが、この年齢じゃないと醸し出せない渋みがこの音楽スタイルと見事に合致し、より説得力の強い音楽を生み出すことに成功しています。

楽曲的には初期の彼らにすでに備わっていたソウルやR&B……要するにモータウンの要素が強いロック/ポップスが中心で、オープニングを飾るハードドライヴィングな「We're All In Love」こそゴリゴリ感が若干強いですが、それでも彼らならではのしなやかさもにじみ出ており、最初から好感触。その後も時代を超越したスタンダードナンバー/ロックンロールが続いていきます。

無駄にスキャンダラスな要素がなくなったぶん、楽曲と演奏で勝負するしかないわけですが、本来このバンドはそっち側で戦うべき存在だったのではないでしょうか……そう思わずにはいられないほどに、32年の空白を感じさせない“つながり”が見出せる素晴らしい内容です。

恐らくですが、本作においてはオリジナルメンバーからしたらガキンチョでしかないサミやスティーヴの演奏面&ソングライティングでの活躍が非常に大きかったと思うのです。そしてそれは、続く4thアルバム『CAUSE I SEZ SO』でさらに強くなります(だからこそ、2人の脱退がバンドの寿命を縮めてしまったとも言えるわけですが)。

 


▼NEW YORK DOLLS『ONE DAY IT WILL PLEASE US TO REMEMBER EVEN THIS』
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2019年7月21日 (日)

NEW YORK DOLLS『TOO MUCH TOO SOON』(1974)

1974年5月に発表された、NEW YORK DOLLSの2ndアルバム。

セルフタイトルアルバムで華々しいデビューを飾った……ものの、そのヴィジュアルやチープな演奏により“まがいもの”扱いされていた彼ら。トッド・ラングレンのプロデュースも今でこそトピックとなり得ますが、当時はどこまでの話題性があったのか……。

で、前作から10ヶ月というスパンで発表された本作ですが、ここで一気に確変が起こるんです。不思議なことに。

全10曲中カバーが4曲。前作では1曲のみだったので、急にカバーが増えたことに不安を覚えますが、ここでは気にしないことにします。だって、どれも出来が良いんですから。

このアルバム、とにかくリズムがヘヴィなんです。70年代のグラムロックというとリズム隊のサウンドがチープで、今の耳で聴くと「もうちょっとどうにかならんかったのか?」と思わずにはいられないのですが、このアルバムに関してはそういった心配はゼロ。だってこれ、グラムロックというよりもハードロックのそれですからね、音の太さでいったら。

で、そのヘヴィさはギターにも言えることでして。1stアルバムのサウンドプロダクション、あれはあれで悪くなかったんですけど、本作を聴いてしまうと物足りなさを感じてしまうところもあります。

実は僕、NEW YORK DOLLSの作品に触れたのはこの2ndアルバムからなんです。当時はあまりグラムロックという感覚がなく、「AEROSMITHの初期の作品みたいだな」と思っていたくらいですから。ですから、そこから数年後に1stを聴いたときは「……ん?」と思ったものです。

まあサウンドについてはここまでにしておいて。肝心の楽曲についてですが、オリジナル6曲の大半がデヴィッド・ヨハンセン(Vo)&ジョニー・サンダース(G)によるもの(4曲。ほかの2曲はジョニー単独とデヴィッド&シルヴェイン・シルヴェイン(G)によるものです)。で、どれも悪くないし、正直1stアルバム収録の名曲たちにも負けていない。オープニングの「Babylon」から、GUNS N' ROSESもカバーしたラストの「Human Being」まで捨て曲なし。そりゃカバー曲多いもんね、なんて嫌味は言わない(個人的には、ジョニーが歌う「Chatterbox」がお気に入りです)。

で、カバーが多いからなのかどうかは別として、とにかく楽曲の幅が前作以上に広がっている。グラマラスなロックンロールから前のめりなパンクロック、ハードロック、ポップ色の強いスタンダードナンバー……「Bad Detective」でアジアンテイストあふれるギターフレーズが飛び出せば、「Stranded In The Jungle」では文字通りのジャングルビートまで取り入れている。リズム面での遊びが増えたぶん、聴いていて本当に飽きないんです。そういった点を踏まえて、NEW YORK DOLLSで最初に聴くべきアルバムってこの『TOO MUCH TOO SOON』かもしれませんね。

そういえば、このアルバムを初めて触れたあとにリリースされたZIGGYの2ndアルバム『HOT LIPS』(1988年)を聴いたとき、その元ネタの数々に気づいて思わずニヤリとしたこと、今でもよく覚えています(笑)。

 


▼NEW YORK DOLLS『TOO MUCH TOO SOON』
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2018年10月 8日 (月)

NEW YORK DOLLS『NEW YORK DOLLS』(1973)

1973年7月にリリースされた、NEW YORK DOLLSのデビューアルバム。当時のメンバーはデヴィッド・ヨハンセン(Vo)、ジョニー・サンダース(G)、シルヴェイン・シルヴェイン(G)、アーサー・キラー・ケイン(B)、ジェリー・ノーラン(Dr)。アルバムのプロデュースはかのトッド・ラングレンが担当し、このほかにもトッドはアルバムでピアノやモーグシンセなどでも参加しております。

アルバムジャケットを見ると、そのケバケバしいルックスに驚かされ「グラムロック?」と思ってしまうかと思います。もちろんそれも間違いではありませんが、それよりもここで鳴らされている(記録されている)音の塊はパンクロックそのものではないでしょうか。

例えば、60年代末から70年代初頭のキラキラしたメイクのストーンズ。アメリカではマイナーな存在だったかもしれないけど、デヴィッド・ボウイを筆頭にMOTT THE HOOPLE、T. REXといったお化粧をしたロックアーティスト。そういったバンドたちと肩を並べる存在、あるいはその延長線上にあるムーブメントだったのかもしれない。けど、何か違う。むしろ、ドールズの数年先にデビューしていたTHE STOOGESを、アグレッシヴさをそのままに、もっとキャッチーにした存在。そのほうがピンとくるのは僕だけでしょうか。

オープニングの「Personality Crisis」を筆頭に、「Looking For A Kiss」や「Frankenstein」「Trash」など、ロックンロールのフォーマットに乗ったポップなメロディと、どこか危うさが伴うバンドアレンジ。例えばそれは、本作から数年後に誕生するSEX PISTOLSにも通ずるものがある気がするし、さらにそこから10年後にデビューするGUNS N' ROSESにも共通するものがある。なんていうのは言い過ぎでしょうか?

僕自身がこのアルバムと出会ってすでに30年近く経ちますが、今でも本作と向き合うときは「ジャンルとは?」「カテゴリーとは?」なんてことを考えさせられます。それくらい、括りとかどうでもよくなる1枚。それがNEW YORK DOLLSのデビューアルバムの持つ大きな意味なのかもしれません。

このアルバムから影響を受けて誕生したバンドは、ここ日本にも少なくありません。ジャケットのアートワークを見て「あっ!」と思い浮かべるバンドもいるでしょうし、楽曲の1つひとつを聴いて脳内でイメージできるバンドもいるでしょう。そういった意味でも、国境関係なくすべてのロックファンに一度は接してほしいアルバムです。



▼NEW YORK DOLLS『NEW YORK DOLLS』
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2018年1月23日 (火)

JOE PERRY『SWEETZERLAND MANIFESTO』(2018)

AEROSMITHのギタリスト、ジョー・ペリーが数日前にひっそりと新しいソロアルバムをリリースしていました。あれ、実は大々的に告知されていて、自分だけが知らなかったパターン?とも思ったのですが(昨年11月には告知されていたようですね)、国内盤の予定もなく……まったく気づいていませんでした。申し訳ない!

で、ジョーのソロですよ。彼はエアロに復帰して以降、2000年代半ばまでソロアルバムを作って来ませんでした。それ以前のJOE PERRY PROJECTはエアロを脱退したからこそ生まれた産物だったわけで、メインバンドがある以上はソロで何かをする必要性はなかったと。ところが、2000年代以降のジョーのソロ2作(2005年の『JOE PERRY』、2009年の『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』)には作る理由がちゃんとあった。『JOE PERRY』のときはエアロが無期限活動休止を発表したタイミング、『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』のときはエアロのアルバム『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』(2012年)の制作初期段階で、途中で頓挫してしまった時期にソロへと向かった。クリエイターとしての制作意欲の吐け口として、止むを得ず(かどうかはわかりませんが)再びソロへと向かっていったわけです。

事実、『JOE PERRY』は90年代以降のエアロらしさにジョーならではの渋みが加わった良作ですし、『HAVE GUITAR, WILL TRAVEL』は新たな才能(YouTubeで見つけた無名のシンガーを迎えて制作)から触発された初期衝動がにじみ出た力作でした。それぞれカラーが異なり、個人的にも楽しんで聴くことができたけど、エアロの色が散りばめられていることで「だったらエアロの新作が聴きたいよ……」と思ってしまったのも事実でした。

では、今回発表された9年ぶりのソロアルバムはどうでしょう? 実はこれ、めっちゃ肩の力が抜けているんですよ。バンドとしてのエアロは終わりが近づいている、音楽でたくさん稼げたし、納得のいく作品もたくさん作ってこられた、あとは余生を楽しむのみ……と思ったかどうかはわかりません。でも、数年前にジョーがステージで倒れて意識不明?なんて事故がありましたが、あれを思い浮かべると今回は純粋に好きな音楽を楽しもうという姿勢が感じられるのです。

全10曲中インストが2曲、ジョー自身がボーカルと務めるのが1曲。残り7曲はロビン・ザンダー(CHEAP TRICK)、デヴィッド・ヨハンセン(NEW YORK DOLLS)、テリー・リードというロックファンなら誰もが知るレジェンドたちを迎えて制作しているのです。もちろん、悪いわけがない。基本的にはブルースをベースにしたロック/ハードロックで、エアロを彷彿とさせる曲もあるんだけど、以前のように「これ、エアロでやれよ!」的な“そのもの”ではなくてエアロのフレーバーを散りばめた楽曲をアクの強いフロントマンが歌ってるという印象にとどまっている。ああ、そうか。ジョー本人が歌ったりスティーヴン・タイラーを彷彿とさせるフロントマンが歌ったりするからいけなかったんだ。当たり前の話だけど。けどそれも、アリス・クーパーやジョニー・デップたちと始めたスーパーバンド、HOLLYWOOD VAMPIRESがあったからこそなんでしょうね。フロントに立つよりも、アクの強いシンガーの隣でこそ光ることを再確認できたのかもしれません。

ジョーのギターも非常にリラックスしたプレイを聴かせてくれているし、各ボーカリストに触発されて引っ張り出されたキレのあるフレーズも見受けられる。ぶっちゃけ、エアロの最新作『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』よりも良いんじゃないかと思うほど。いやあ、ジョーのソロアルバムでここまで興奮したの、久しぶり、いや、初めてかもしれない。

現在67歳。まだまだ最前線でやろうと思えばやれるし、若い才能をフックアップすることも可能でしょう。でも、エアロの近況もそうだけど、アーティストとしてはそろそろ“終活”の時期なのかな……もはや『MUSIC FROM ANOTHER DIMENSION!』レベルを保つことすら難しいのだったら、エアロのアルバムはもう無理に作らなくてもいいから、スティーヴンもジョーも自分の好きな音楽を、楽しみながら作ればいいと思うのです。その結果として本作が生まれたのだったら、僕はそれを素直に受け入れるので。



▼JOE PERRY『SWEETZERLAND MANIFESTO』
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