NICKE BORG HOMELAND『RUINS OF A RIOT』(2013)
無期限活動休止を2010年に発表したBACKYARD BABIESのフロントマン、ニッケ・ボルグ(Vo, G)が同年からスタートさせたソロプロジェクト、NICKE BORG HOMELANDの2ndフルアルバム。最初のEP『CHAPTER 1』(2010年)および1stフルアルバム『CHAPTER 2』(2011年)では、レイドバックしたカントリー寄りのロックサウンドに傾倒しファンを驚かせましたが、続く本作ではより“BYBのニッケ”のイメージに歩み寄ったロックサウンドを響かせています。
もちろん、ここで鳴らされているサウンド、楽曲はBYBのそれとは異なるものであり、と同時に“BYBの一片”であることも間違いない事実。完全にそのままではないのは当たり前ですが、だからといって大きくかけ離れたものでもない。そういう意味では最初に聴いたとき、少々戸惑ったことを覚えています。
全体的にアメリカナイズされたサウンドで、BYBの音を“北欧ガレージハードロック/パンクロック”と例えるならば、ここで取り組んでいるのは“90年代以降のUSパンク/オルタナティヴロックを通過した、アーシーなハードロック”と言えるかもしれません。過去2作で試みた挑戦は本作の中でもしっかり息づいており、その要素が活動休止前および活動再開後のBYBにも存在するカラーなのではないかと思うのですが、いかがでしょう?
全体的にミドルテンポ中心で穏やかな楽曲が多いため、BYBの派手さを求めるリスナーは肩透かしを食らうかもしれません。もしかしたら、本作の数ヶ月後のリリースされたドレゲンのソロアルバムのほうが、よりBYBらしい……そう感じる人もいることでしょう(とはいえ、あれも完全にはBYBのままではありませんが)。
ミック・ジャガーやスティーヴン・タイラーがソロアルバムを作ったとき、“ストーンズっぽい”、“エアロっぽい”とは感じるもののまんまではなかったことを覚えている方も多いでしょう。これをボーカリストのエゴと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、見方を変えれば「BYB活動再開までの自分にできることは何か?」という現実と向き合ったフロントマンが、アーティストとしての進化や成長を目指して新たな舞台に足を踏み入れた……そう考えれば、この挑戦は非常に納得のいくものだと僕は思っています。
発売当時よりもむしろ、BYBの復活作『FOUR BY FOUR』(2015年)を聴いたあとのほうが本作がより魅力的に聴こえる。そんな1枚ではないでしょうか。事実、あの頃はすぐ聴くのをやめてしまったのに、2015年夏以降徐々に聴く頻度が増えているのがこのアルバムなのですから。
▼NICKE BORG HOMELAND『RUINS OF A RIOT』
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