NICKELBACK『ALL THE RIGHT REASONS』(2005)
2005年10月にリリースされたNICKELBACKの5thアルバム。
Roadrunner Records移籍第1弾アルバム(通算3作目)『SILVER SIDE UP』(2001年)が本国カナダとイギリスで1位、アメリカでも2位まで上昇し、全世界トータル1000万枚を超える大ヒットを記録。同作からは「How You Remind Me」という全米No.1シングルも生まれ、一躍「時の人」となったNICKELBACKですが、続く『THE LONG ROAD』(2003年)は全体的にセールスを半分にまで落としてしまいます(それでも全米300万枚、全世界で500万枚以上売り上げているのですが)。
そんな彼らが起死回生とばかりに本領発揮させた5作目は、全曲がシングルカットできそうなモンスターアルバムに。実際、同作からは「Photograph」(全米2位)、「Animals」(同97位)、「Far Away」(同8位)、「Savin' Me」(同19位)、「Rockstar」(同6位)、「If Everyone Cared」(同17位)、「Side Of A Bullet」と全11曲中7曲ものヒットシングルが生まれています。これはまさに「21世紀の(DEF LEPPARDにおける)『HYSTERIA』」と言える内容ではないでしょうか。
実際、その中身も初期のポスト・グランジ的作風からよりアリーナロック〜スタジアムロックへとスケールアップしており、適度なハードさと大衆性をバランスよくミックスさせた聴きやすい内容ですし、王道のハードロックとしても、90年代以降のオルタナ/グランジの進化形としても、はたまた2000年代のニューメタル経由でも楽しめる1枚だと断言できます。こういう鉄壁さこそ、まさに「21世紀の『HYSTERIA』」と呼ぶにふさわしいものでしょう。
『HYSTERIA』もそうなんですが、結局は楽曲の良さ/ポピュラリティであり、その次にくるのが「ボーカルの声質」だと僕は思っていて。ジョー・エリオットのハスキーさと、あの何十、何百にも重なったコーラスワークには敵うものはないのでは?と思ってしまうんです。そこと比べると、このNICKELBACKのアルバムには何層ものハーモニーこそないものの、それを補って余りあるほど魅力的なチャド・クルーガー(Vo, G)の歌声が存在する。このチャドの声みはグランジ以降のロックとシンクロする魅力が備わっており、個性的だけど不快ではない、むしろ心地よさを覚える……それが高性能な楽曲群とミックスされるわけですから、悪いわけがない。プラスとプラスの掛け算、その答えは我々の想像を絶する数値になったわけです。
なもんですから、本作がアメリカだけで1000万枚を超えるメガヒット作になるというのも頷ける話。チャートでも初のアルバム全米No.1を獲得し、全世界でトータル1900万枚を超える最大のヒット作となるのでした。この成功を機に、続く『DARK HORSE』(2008年)ではかの『HYSTERIA』を手がけたジョン・マット・ラングとタッグを組むことになります。やっぱり、そこに行きたかったんだね、君たち……。
なお本作、今年でリリース15周年を迎えることを記念して、10月2日にボーナスディスクを付けたエクスパンド・エディションが発売されるとのこと。全編リマスタリングが施され、QUEEN「We Will Rock You」のカバーをはじめとするシングルC/W曲の追加に加え、2006年8月8日のライブ音源(12曲)を収めたボーナスディスクが付属するそうです。こちらも楽しみですね。
▼NICKELBACK『ALL THE RIGHT REASONS』
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