カテゴリー「Night Ranger」の9件の記事

2020年2月 9日 (日)

REVOLUTION SAINTS『RISE』(2020)

2020年1月下旬にリリースされたREVOLUTION SAINTSの3rdアルバム。日本盤は当初の予定より約1ヶ月遅れ、同年2月後半に発売予定です。

REVOLUTION SAINTSは再結成後のJOURNEYにスティーヴ・スミス(Dr)の後任として加入し5枚のオリジナル作品に参加したディーン・カストロノヴォ(そのほかBAD ENGLISHHARDLINEなどでも活躍)がボーカルを務め、NIGHT RANGERのジャック・ブレイズ(B, Vo)、THE DEAD DAISIESやBURNING RAINに在籍し、過去にはLIONBAD MOON RISINGWHITESNAKEDIOなどでも活躍したダグ・アルドリッチ(G)の3人で2014年に結成したスーパーグループ。これまでに『REVOLUTION SAINTS』(2015年)、『LIGHT IN THE DARK』(2017年)と2枚のアルバムを発表しています。

JOURNEY時代にもアルバムやライブでボーカルを披露し、その“らしさ”と歌唱力の高さでファンを驚かせたディーン。このバンドでは、その素晴らしい魅力が余すところなくフィーチャーされています。

以前もいろんなところで書いてきましたが、80年代から90年代前半にかけて登場したこの手のスーパーバンドって意外と長続きしないんですよね。理由のひとつとして挙げられるのは、過去のバンドで成功したメンバーたちによるエゴのぶつかり合い。あとはお金(笑)。ところが、ここ最近は2枚目、3枚目と長続きするスーパーバンドも増えている。それは、以前のように「1人1バンド」みたいな過去の常識が通用しなくなり、別に複数のバンドに籍を置いてもいいんだという風潮が当たり前になったことも大きいのでしょう。上に書いたように、ジャックは現在もNIGHT RANGERのメンバーですし、ダグに至ってはディーンとTHE DEAD DAISIESとしても活動しているわけですから。

そんなこのバンド。実は影の功労者が存在します。正式メンバーではないものの、レコーディングやツアーには必ず参加し、アルバムのプロデュースまで手掛けるアレッサンドロ・デル・ヴェッキオという人物。実はこれまでのアルバム収録曲すべてのソングライティング・クレジットに彼の名前が記されている(カバー曲を除く)ことから、REVOLUTION SAINTSはむしろ「アレッサンドロが書いたJOURNEYっぽい曲をディーンがスティーヴ・ペリーっぽく歌う」プロジェクトと呼ぶほうが正しいのかもしれません。

そんな本作ですが、オープニングの「When The Heartache Has Gone」から突っ走りまくってます。曲調といいシンセの音色といい、“あの頃のJOURNEY”。ぶっちゃけ、曲の完成度は過去2作より高まっているように感じます。しかも、バラードも含まれているけど基本的にはロックしまくりのスタイル。悪いわけがない。

適度なポップさが伴ったミドルナンバーとアップチューンが交互に飛び出す前半と、らしいピアノバラード「Closer」以降の緩急に富んだ構成。非常に聴きやすいです。しかも、曲によってはディーンとジャックのツインボーカルになっているし(ジャックがNIGHT RANGERのときほど声を張り上げていないのも好印象)、特に今回は曲によってはNIGHT RANGER色が強まっているのも興味深い。先の「Closer」なんて完全にそれですよね。かつ、アルバムラスト(ボートラ除く)のピアノバラード「Eyes Of A Child」がジャック&トミー・ショウの元DAMN YANKEES組による書き下ろし。そのほかにも、それっぽさが至るところに散りばめられているので、聴き込んでみると面白いかもしれません。

それにしても、本作でのダグのギタープレイ、素敵ですよね? THE DEAD DAISIESでもなかなか良いなと思っていたけど、本作におけるプレイはその比じゃないくらいに素晴らしい。実はダグってブルースベースのハードロックよりもこういったタイプのほうが合っているのかしら。

ということで、個人的にも非常のポイントの高い1枚。一回生で観てみたいです。

 


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2019年4月26日 (金)

NIGHT RANGER『DAWN PATROL』(1982)

1982年11月にリリースされたNIGHT RANGERのデビューアルバム。70年代末にファンクバンドRUBICONに参加していたブラッド・ギリス(G)、ジャック・ブレイズ(B, Vo)、同バンドのツアーメンバーだったケリー・ケイギー(Dr, Vo)を中心に、MONTROSEのメンバーだったアラン・フィッツジェラルド(Key)とその友人ジェフ・ワトソン(G)という5人でRANGERというバンドを結成し、のちに現在のNIGHT RANGERへと改名。デビュー前にはランディ・ローズ急逝後のオジー・オズボーンのバンドにブラッドが一時参加するなどして、知名度を上げてからのデビューとなりました。

アーミングを多用したストロングスタイルのプレイを聴かせるブラッドと、両手タッピングによる“8フィンガー”奏法が話題となったジェフという異なるタイプのギタープレイヤー、ジャック&ケリーのリズム隊がリードボーカルを務めるという異色のスタイル、なおかつ楽曲が適度にハードで歌メロがポップ、親しみやすいバラードも要するという絶妙なバランス感はこのデビュー作の時点ですでに完成の域に達しつつあります。

特にオープニング2曲「Don't Tell Me You Love Me」(全米40位)、「Sing Me Away」(同54位)を聴けば、このバンドの魅力の大半が伝わるんじゃないか……というのは言い過ぎでしょうか。でも、個人的にはそれくらいこのバンドの個性を端的に表した2曲だと思っています。

かと思えば、「Call My Name」のようなピアノバラードがあったり、「Eddie's Comin' Out Tonight」みたいにドラマチックなハードロックナンバーがあったりと、どの曲も個性が強い。次作『MIDNIGHT MADNESS』(1983年)以降、能天気なアメリカンロック色を強めていき、パブリックイメージ的にもそっち側とパワーバラードのバンドと印象付けることになってしまいますが、まだこのデビュー作の時点ではマイナーキーの楽曲でドラマチックさや仰々しさを打ち出している。「Can't Find Me A Thrill」なんて適度なメジャー(コード)感がありつつも泣きの要素が備わっているし、「Young Girl In Love」はそこまで能天気ってわけでもない。この感覚をもっと保ち続けてくれたら、その後の歴史もまた変わったんじゃないかな(と同時に、あそこまでヒットしなかったかもしれないけど)。

圧巻はラストの「Night Ranger」。スタジオ音源も素晴らしいですが、この曲は特にライブテイクが素晴らしく。ライブでこの曲をやってくれないと、個人的には非常にがっかりするくらい、個々のプレイヤーの個性が輝く1曲なんですよね。気になる人がいたら、ぜひYouTubeで同曲のライブ映像を探してみてください。

というわけで、ポップさでは次作以降より若干劣るものの、ハードさという点においてはキャリア中1、2を争う仕上がり。そりゃいきなり全米38位という好成績を残すわけです。

 


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2018年8月17日 (金)

NIGHT RANGER『BIG LIFE』(1987)

1987年春にリリースされたNIGHT RANGERの4thアルバム。前々作『MIDNIGHT MADNESS』(1983年)のミリオンヒットおよび「Sister Christian」(全米5位)や「When You Close Your Eyes」(全米14位)のシングルヒット、続く前作『7 WISHES』(1985年)のトップ10入り(全米10位)および「Sentimental Street」(全米8位)、「Four In The Morning」(全米19位)、「Goodbye」(全米17位)といったバラードシングルのヒットで、“産業ロック”やら“バラードバンド”やら揶揄され続けた彼ら。そんな彼らが「俺たちはれっきとしたロックバンド。次はハードにキメる!」と宣言してから制作に向かったのが本作『BIG LIFE』でした。

前3作を担当したパット・グラッサーから、全盛期のJOURNEYEUROPE『THE FINAL COUNTDOWN』(1986年)、のちにMR. BIGの諸作品を手がけるケヴィン・エルソンにプロデューサーを交替。さらに映画『摩天楼はバラ色に(原題:THE SECRET OF MY SUCCESS)』のサウンドトラックに提供した同タイトル曲「The Secret Of My Success」のみ、CHICAGOなどで知られるデヴィッド・フォスターとの共作&プロデュースで完成させた本作は、確かに“バラードバンド”の汚名を払拭させるくらい、ドラマチックでトータルバランスの取れたハードロックアルバムに仕上がっています。

が、そこまでハードなのか?と問われると、答えに困ってしまうのも事実。オープニングを飾る「Big Life」や続く「Color Of Your Smile」の持つ激しさからは確かにハードロックバンドらしさが感じられますが、と同時にやはり彼らはメロディアスでポップが信条のバンドであることも浮き彫りになっており、そこは生まれ持った性なのかな、消しようがないのかなと。けど、それこそが彼ら最大の個性にして魅力なのだから、ねえ。

そういった意味では、先にも書いたように本当にバランス感に優れているのですよ。正直、大ヒットした過去2作よりもそのバランス感は高いと思いますし、個々の楽曲も非常に考えて作り込まれたものばかり。バラードタイプの楽曲にしても、これまでのシングルヒットやラジオヒットを狙ったキャッチーでコンパクトなものから、「Rain Comes Chrashing Down」や「Hearts Away」みたいにハードロック特有のドラマ性を意識して制作されたものへとシフトチェンジ。それがこのアルバムに合っているんですよね。だからこそ嫌いになれないし、意外と聴く頻度の高い1枚だったりします。

シンセの使い方などに時代を感じるものの、ハードさ/ポップさのバランス感は随一。HR/HMとAORの良いとこ取りみたいな楽曲も多く、それでいて1987年というUS HR/HMブーム元年らしさも存在する。残念ながら全米28位でゴールドディスク(50万枚)と前作、前々作には及ばず、シングルも「The Secret Of My Success」の全米64位と「Hearts Away」の全米90位とヒットに恵まれず、本作をもってアラン・フィッツジェラルド(Key)はバンドを脱退してしまうのでした。



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2017年11月10日 (金)

NIGHT RANGER『7 WISHES』(1985)

1985年春に発表されたNIGHT RANGERの3rdアルバム。前作『MIDNIGHT MADNESS』(1983年)が全米15位のヒット作となり、また同作から「Sister Christian」(全米5位)、「When You Close Your Eyes」(全米14位)とバラード/ミディアムナンバーのヒットシングルが誕生したこともあり、続く本作もその傾向を踏まえた作風に仕上げられています。

オープニングを飾る「Seven Wishes」のずっしりしたリズムとギタープレイは本当にお気に入りで、中高生の頃何十回、何百回と聴き返したことか。かと思えば「This Boy Needs To Rock」みたいな疾走ハードロックもあるし、ちょっとダークな「I Need A Woman」もある。ブラッド・ギルス(G)とジェフ・ワトソン(G)の派手なギタープレイはもちろんなんだけど、本作をカラフルに彩っているアラン・フィッツジェラルド(Key)のシンセも聴き逃せない。ギター一辺倒のヘヴィな作風になってもおかしくないところを、シンセが乗ることで適度にソフィスティケイトしてくれているんですよね。そこが良くも、そして人によっては悪くも“NIGHT RANGERらしい”わけですが。

そういったハードな曲もありつつ、ポップなミディアムチューン「Four In The Morning」(全米19位)やドラマチックなバラード「Sentimental Street」(全米8位)、「Goodbye」(全米17位)もある。実は本作からシングルカットされたのはこの3曲のみで、いわゆるハードロックサイドの楽曲(前作までで言えば「(You Can Still) Rock In America」「Don't Tell Me You Love Me」タイプ)のシングルカットが皆無だったんですね。シングルカットはある程度レコード会社側の思惑が働いているでしょうから、バンドの意思が100%反映されたものではないとはいえ、これはないですよね。だって、“ハードポップ”バンドじゃなくて“ハードロック”バンドなんですから。

結局、こういったシングルの傾向が彼らに“バラードバンド”というレッテルを貼ることになってしまい、80年代半ば以降の一大HR/HMブームに乗ることができず、89年に解散してしまうわけです。

とはいえ本作、キャリア中唯一の全米トップ10入り(10位)を果たしており、ミリオンセールスも記録しています。先月の来日公演で久しぶりに彼らのライブを観ましたが(東京公演2日目)、いきなり「This Boy Needs To Rock」「Seven Wishes」の2連発で始まり、同作から計5曲も披露してくれたのは嬉しかったなあ。以来、このアルバムを20年ぶりくらいに聴きまくってました。



▼NIGHT RANGER『7 WISHES』
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2017年4月 1日 (土)

NIGHT RANGER『DON'T LET UP』(2017)

NIGHT RANGER通算11枚目(“MOON RANGER”呼ばわりの1995年発売『FEEDING OFF THE MOJO』を含めたら12枚目)のスタジオアルバム『DON'T LET UP』。2011年の『SOMEWHERE IN CALIFORNIA』、2014年の『HIGH ROAD』と同じラインナップ……ジャック・ブレイズ(Vo, B)、ケリー・ケイギー(Vo, Dr)、ブラッド・ギルス(G)、ジョエル・ホークストラ(G)、エリック・レヴィー(Key)の5人で制作し、やっとバンドとしても固まってきたかなという2014年夏、『HIGH ROAD』リリースからしばらくしてジョエルが脱退し、WHITESNAKEに加入というニュースが流れます。バンドは一時期ライブにサポートメンバーとして参加したケリ・ケリー(VINCE NEIL、RATT、WARRANT、L.A.GUNSなど)を加えてライブを続け、ケリはそのまま正式加入。前作から3年の歳月をかけ完成させたのが、本作『DON'T LET UP』となるわけです。

とはいえ、昨年にはケリを含む編成でのライブアルバム&映像作品『35 YEARS AND A NIGHT IN CHICAGO』もリリースされていたので、そちらに触れていた人にはこの編成の移行はすんなり行くものだったのかもしれません。僕もたまたま、今年に入ってからその映像作品を観る機会があり、最初こそ違和感があったものの、見終える頃には不思議とケリの存在に馴染んでしまっていたのをよく覚えています。

さて、気になる新作ですが……『SOMEWHERE IN CALIFORNIA』以降の流れを組む、“これぞNIGHT RANGER”な仕上がり。ハードドライヴィングなロックチューン「Somehow Someway」からスタートするところは、若干の落ち着きを見せた前作『HIGH ROAD』よりも期待度を高めてくれるはず。「Truth」のような『HIGH ROAD』の流れにあるポップチューンもありますが、パワフルなビートとツインリードギターのミックスが気持ち良い「Running Out Of Time」、ギターがのたうちまわるハードロック「Day And Night」、ギターのフレーズやボーカルの泣きメロがNIGHT RANGERとしては新鮮なタイトルトラック「Don't Let Up」、疾走感あふれる「Say What You Want」など、基本的にはハードロック路線の作風です。

しかし、先の「Don't Let Up」のようにメロディはどれも親しみやすくキャッチーなものばかり。その極め付けが、ビートルズを彷彿とさせるハーモニーが心地よい「We Can Work It Out」でしょう。バラートとまではいかないものの、穏やかなテンポ感とアコースティックギターを用いたアレンジがバンドの軸にある“グッド・メロディ”を浮き彫りにし、これもNIGHT RANGERの持ち味のひとつだと再認識させてくれます。こういう曲が再びヒットチャートを賑わせる時代が訪れるといいな……と純粋に思わせてくれる1曲です。

さらに、アルバムラストを飾るのはアコースティック調のバラード「Nothing Left Of Yesterday」。こういったパワーバラードもこのバンドの大きな武器のひとつなのは紛れもない事実で、しばらく新曲としては封印されていたこの要素をアルバムの最後に持ってくるあたりに、今のNIGHT RANGERの好調ぶり、自信の強さが表れているように感じます。

例えば「Don't Tell Me You Love Me」や「(You Can Still) Rock In America」「Sister Christian」「Sentimental Street」などのような“決定的な1曲”はこのアルバムには存在しないかもしれない。しかし、それに匹敵する高レベルの楽曲がずらりと並ぶ、平均点以上のアルバムなのには違いありません。過去にとらわれることなく、本作が正当に評価されることを望みます。



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2017年2月12日 (日)

NIGHT RANGER『SOMEWHERE IN CALIFORNIA』(2011)

NIGHT RANGERが2011年初夏に発表した、通算9枚目(“MOON RANGER”と呼ばれる特殊編成で1995年にリリースした『FEEDING OFF THE MOJO』を含めると10枚目)のオリジナルアルバム。再結成後もしっかり参加していたジェフ・ワトソンが脱退し、新たにジョエル・ホークストラ(G)が加わって最初のアルバムになります。と同時に、NIGHT RANGERがついに“らしさ”を取り戻した記念すべき1枚ではないかと思っています。

1996年のオリジナル編成での再結成以降、1人抜け、また1人抜けとメンバーチェンジを繰り返しながら新陳代謝を続けてきた彼ら。一時は新作を10年近くもリリースできない期間もありましたが、ジェフ・ワトソン脱退後にバンドとしてのエンジンに再び火がついたのか、ジャック・ブレイズ(Vo, B)、ケリー・ケイギー(Vo, Dr)、ブラッド・ギルス(G)のオリメン3人に先のジョエル、そしてエリック・レヴィー(Key)という新たな布陣で4年ぶりのオリジナルアルバムを完成させるのです。

いざ完成した本作は、まずオープニングの「Growin' Up In California」でノックアウトさせられます。往年の「(You Can Still) Rock In America」を彷彿とさせる曲調、そしてあの“時代錯誤なシンセ”はないもののイントロのツインリードでぐっと心を鷲掴みにされ、ジャックのボーカルとジャック&ケリーのハーモニー、テクニカルなギターソロの応酬とすべてが“全盛期のNIGHT RANGER”をイメージさせるものばかり。『NEVERLAND』(1997年)も『SEVEN』(1998年)も良かったんだけど、待ってたのはこれなんですよね、うん。

その後もNIGHT RANGERらしい楽曲が続きます。ヘヴィな「Lay It On Me」、軽快かつキャッチーな「Bye Bye Baby (Not Tonight)」、ポップながらお豪快なハードロックチューン「No Time To Lose Ya」、イントロの泣きメロにグッとくるマイナーキーの「End Of The Day」、そしてNIGHT RANGERにとってもうひとつの“大きな武器”である王道パワーバラード「Time Of Our Lives」と、とにかく粒ぞろい。80年代の“バラードバンド”的レッテルを払拭しようと意識したのか、バラードは先の「Time Of Our Lives」のみ。基本的にはキャッチーなメロディを持つアップテンポ〜ミドルテンポのロックナンバーが中心で、彼らが今何をしたいのかが明確に理解できる1枚に仕上がっています。

思えば、バラードはあれだけヒット曲があるんだから、ぶっちゃけ過去の楽曲のみでことが済む気がするし、それだったらロックバンドとしての“今”を形として証明したほうがいいのではないか……きっとそんな思いが強かったんでしょう。「俺たち、まだまだやれるし!」って。「Growin' Up In California」から始まって、ドラマチックでスケール感の大きい「Say It With Love」で幕を降ろす構成もバッチリですしね。

僕自身もこのアルバムを聴いて「NIGHT RANGER、やっぱりイイじゃん!」と改めて思えたし、きっと同じように感じた往年のファンは多かったんじゃないかと信じています。大人の貫禄と「まだまだやれる!」っていう若々しさが混在した良作です。



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2017年2月 8日 (水)

DAMN YANKEES『DAMN YANKEES』(1990)

ここ数日続いたスーパーバンドの紹介、ひとまず今回が最後となります。1989年にBLUE MURDER、BADLAND、MR. BIG、BAD ENGLISHとデビューが続いたスーパーバンド、翌1990年初頭にその究極と言えなくもない存在のDAMN YANKEESが華々しくデビューを飾ります。

DAMN YANKEESは元NIGHT RANGERのジャック・ブレイズ(Vo, B)、元STYXのトミー・ショウ(Vo, G)、ソロアーティストとして知られるテッド・ニュージェント(Vo, G)、セッションドラマーでのちにLYNYRD SKYNYRDに加わるマイケル・カーテロン(Dr)の4人組。マイケル以外はそれぞれバンドやソロで一時代を築いた人ばかりで、3人ともボーカリスト。ということで、この『DAMN YANKEES』ではジャック&トミーのボーカルを軸にしつつ、曲によってどちらかがリードを取る形となっています。テッドはコーラス以外にも、アルバムラストの疾走ナンバー「Piledriver」でリードボーカルを聴かせてくれます。

楽曲は各メンバーの個が強く打ち出されたものばかり。どの曲を誰がメインで書いたかを考えるだけでも面白いんじゃないでしょうか(基本的に全曲ジャック、トミー、テッドの連名でクレジットされています)。ギタープレイを前面に打ち出しつつも、あくまで楽曲の完成度の高さを大事にしているのはBAD ENGLISHにも通ずるものがありますが、DAMN YANKEESの場合はとにかくフロント3人の色が濃いぶん、主張の強さが曲のいろんなところから感じられるのが面白いところ。それでいてストリングスを取り入れた美しいバラード「High Enough」みたいな曲もあるんだから、興味深い存在です。

基本はオープニングトラック「Coming Of Age」で聴ける、豪快なアメリカンハードロックが軸にあって、そこに「Come Again」のような叙情性の強い曲、「Piledriver」みたいにメタリックなブギー、「Runaway」のように美しいハーモニーが楽しめるアーバンなポップロックが織り交ぜられている。「Mystified」みたいなアメリカ南部のテイストは完全にテッドの持ち味でしょうし、ストレートなハードロック「Rock City」はジャックのテイストな気がするし。でも、ちゃんとひとつのバンドとして、1枚のアルバムにすべて収めることができているんだから、さすがとしか言いようがない。

このバンド、何がすごいって、やっぱりライブなんですよね。だって、「(You Can Still) Rock In America」も「Don't Tell Me You Love Me」も「Renegade」も「Blue Collar Man (Long Nights)」も「Cat Scratch Fever」も「Free-For-All」も聴けるんですから、悪いわけがない。ある意味、アメリカンハードロックの歴史を垣間見れる、貴重な場でもあったわけです。

ちなみに本作は全米13位まで上昇し、200万枚ものセールスを記録。シングルカットされた「High Enough」は全米3位と彼らの代表曲となり、ここ日本でもリーバイスのCMソングとしてオンエアされ話題となりました。

なおこのバンドも例に漏れず、1992年に2ndアルバム『DON'T TREAD』をリリースしてから解散。一時は3rdアルバムを制作するために再集結も計画されましたが、実現に至りませんでした。勿体ない。で、トミーとジャックは一時期SHAW BLADESを組むも、それぞれSTYX、NIGHT RANGERを再結成させ、活動を続けています。



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2017年1月 8日 (日)

個人的に気になるメタル系職業作家15選

先日KIX『BLOW MY FUSE』を紹介した際、知人が文中に登場したテイラー・ローズやボブ・ハリガンJr.といった職業作家に興味を持ったらしく、「デズモンド・チャイルドやホリー・ナイトあたりは調べたことあるんですが、メタル職業作家の存在すごく気になります」というコメントをいただきました。

実際80年代後半、特にBON JOVIAEROSMITHの大ヒット以降こういった職業作家の存在はメタル系アーティストにとっても欠かせない存在になっています。90年代に入ると、SCORPIONSオジー・オズボーンといった大御所ですら採用し始めるわけですからね。それまでバンドの力だけですべてをまかなおうとしていたところ、「もっといい曲を!」というバンド自身の姿勢から積極的に、もしくはレコード会社からの圧力からイヤイヤこういったアクションに移行するようになったのかもしれません。

また、職業作家の楽曲をアーティストが取り上げるケースには幾つかのパターンがあり、

①作家が以前発表した楽曲をカバー。
②作家とアーティストが共作(アーティストが書いた楽曲をテコ入れする、あるいは逆のケース)。
③プロデューサーとして制作に加わり、楽曲制作にも携わる。
④作家が書いた新曲をそのまま取り上げる。

の4つが考えられるかと。現在のメタルシーンでは多くの場合②が主流だと思いますが、まれに④で大ヒットを飛ばすケースも見受けられます(AEROSMITHの「I Don't Want To Miss A Thing」など)。

そこで今回は、CDのブックレットでよく目にする作家さんをピックアップしつつ、その中から個人的にピンとくる方々をここで紹介。作家の特性を上記の①〜④で分類し、代表曲な楽曲を紹介していきたいと思います。

 

<70年代〜>

●ラス・バラード(特性:①②)
この人の場合は楽曲提供というよりも、彼が自身のバンドや他のアーティストに提供した曲をメタル系アーティストがカバーしたことにより、その名が知られるようになったと言ったほうがいいかもしれません。きっかけはグラハム・ボネット期のRAINBOWがカバーした「Since You Been Gone」ですよね。RAINBOWは続くジョー・リン・ターナー期にも「I Surrender」をカバーしてますし。そのRAINBOWの数年前に、当時KISSのエース・フレーリーもラス・バラッド作「New York Groove」をカバーして全米トップ20入りのヒットを記録。KISS自身も90年代に「God Gave Rock And Roll To You」を「God Gave Rock And Roll To You II」と改題してカバーしてますしね。

それと今回いろいろ調べて初めて気づいたのですが、NIGHT RANGERが最初の解散前に発表したアルバム『MAN IN MOTION』(1988年)からのリード曲「I Did It For Love」もラス・バラッド作。加えて、これも全然気にしてなかったんですが、BAD ENGLISHのラストアルバム『BACKLASH』(1991年)収録曲「So This Is Eden」はジョン・ウェイト(Vo)、ジョナサン・ケイン(Key)との共作曲。時代的に90年代に入ってからの作品なので、世の中的に職業作家との共作が当たり前になった時期にそれまでのカバーとは違った形でのコラボレーションが実現したわけです。

代表作品:ACE FREHLEY「New York Groove」「Into the Night」、BAD ENGLISH「So This Is Eden」、GRAHAM BONNET「Liar」「S.O.S.」、KING KOBRA「Dream On」、KISS「God Gave Rock And Roll To You II」、NIGHT RANGER「I Did It For Love」、PETER CRISS「Let Me Rock You」「Some Kinda Hurricane」、RAINBOW「Since You Been Gone」「I Surrender」

 

●リチャード(リッチー)・スパ(特性:①②④)
AEROSMITH「Chip Away The Stone」の作者として知られる彼は、もともとソングライター兼ギタリストとして活動していたアーティスト。ソロアーティストとして70年代にアルバムも発表しており、この中からジョニー・ウィンターが「Stone County Wanted Man」をカバーしています。また、エアロにはその後も楽曲提供を幾つかしているだけでなく、ジョー・ペリーが脱退した際にはレコーディングにも参加(1979年のアルバム『NIGHT IN THE RUTS』収録の「No Surprize」「Mia」)。それ以外に目立った共演は、元BON JOVIのリッチー・サンボラの2ndソロアルバム『UNDISCOVERD SOUL』(1998年)での共作ぐらい。メタル系以外では、P!NKやMIKAといったアーティストにも楽曲提供しています。

代表作品:AEROSMITH「Chip Away The Stone」「Lightning Strikes」「Amazing」「Pink」、OZZY OSBOURNE「Back On Earth」、RICHIE SAMBORA「Hard Times Come Easy」

 

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2004年6月23日 (水)

TMG『TMG I』(2004)

  B'zのギタリスト/コンポーザーである松本孝弘のソロ・プロジェクト、「TMG(TAK MATSUMOTO GROUP)」のファーストアルバム。参加メンバーはギター/作曲が松本、ボーカルに元MR.BIGのエリック・マーティン、ベース&ボーカルにNIGHT RANGERのジャック・ブレイズ、ドラムにザック・ワイルドやスラッシュとの共演等セッション活動がメインとなるブライアン・ティッシーという、一部の属性の方々にとっては非常に豪華な面々(一部の曲で、レニー・クラヴッツのツアーメンバーとしても有名な女性ドラマー、シンディ・ブラックマンも参加)。特にエリックとジャックという「'80年代のMTVハードロック世代」にとっては懐かしいメンツの参加は、ある意味親しみやすいんじゃないかな。

  基本的には'80年代~'90年代前半によく聴けた「アメリカン・ハードロック」。そこに松本らしいアイディア(B'z的なリズムやリフを導入等)を散りばめつつ、普通に「洋楽ハードロック」として楽しめるクオリティを保っています。これは松本云々というよりも、エリックが歌っているからってのが大きいように思います。

  けど、これをMR.BIGやNIGHT RANGERといったバンドと比べた場合、やはり若干見劣り(聴き劣り)するのは否めないかな、という気も。またメロディに関していえば、本家であるB'zよりも‥‥って書いたらファンに怒られるんでしょうか? 正直なところ、そこが一番気になりましたね。シングルとなった "OH JAPAN ~OUR TIME IS NOW~" は聴き慣れたこともあって結構キャッチーに感じられるんですが、他のアルバム曲は‥‥正直、似たり寄ったりなイメージが強いですね。曲調やテンポ的なもの、そしてキーなんかが似通った楽曲が並んでいる、しかも14曲という曲数もそれに影響してるのかな、と。10曲くらいでもっとメリハリある選曲/曲順だったら、ファーストインパクトももっと強烈なものだったんじゃないかな‥‥って気がするんですが。そういうわけで、1~2回聴いた感じでは非常に散漫な印象を受けました。

  勿論、聴き込んでいくうちに「らしさ」が見えてきて、ドンドン気に入っていくんだろうとは思うけど‥‥そこまで熱心なファンでもないしなぁ、俺。

  ただ、演奏に関してはさすがと言わざるを得ないかな、と。意外と過小評価されているジャックのベースプレイも、一時期のNIGHT RANGER以上に活かされているし。松本のプレイもソロ・プロジェクトの割にB'zの時みたいな派手な弾きまくり感があまり感じられず、どちらかというとバランスを重視したプレイになってるような気がしますね。最近のB'zのアルバムとか聴いたことがないから比較のしようがないですが‥‥最近は隙間を埋めるようなプレイよりも、ワザと隙を作るようなプレイに目覚めたんですか、松本は? いや、よく判らないけど‥‥少なくともこのアルバムでの彼のプレイからは、そういう雰囲気を感じました。

  個人的に気に入っているのは5曲目辺りから‥‥"I wish you were here" みたいな王道アメリカンロック路線、そして如何にもB'zチックなアレンジを持つ "THE GREATEST SHOW ON EARTH" が特に気に入ったかな。後者のアレンジなんて、普通の欧米ハードロックでは考えられない味付け(アレンジ)ですからね。日本人的というか、フュージョン的というか、ホント独特ですよね。こういう曲を聴いちゃうと‥‥どうせなら、B'zの代表曲を英語詞でセルフカバーしたアルバムでも作ればいいのに、とか思っちゃうんですが。それは稲葉の手前できないのかな、なんて。実はB'zの楽曲をセルフカバーした方がよりポピュラーなハードロックアルバムになったんじゃないかな‥‥って思うんですが。如何でしょう?

  思ってた程派でではなく、どちらかといえば地味な部類のアルバムですよね。MR.BIGでいったら4作目の「HEY MAN」、NIGHT RANGERでいったら同じく4作目の「BIG LIFE」とか(って両方共ファンからは駄作扱いされることの多い1枚じゃないか! いや、俺は気に入ってるんですけどね)。あ、そうか。その分ツアーでは派手な曲‥‥NIGHT RANGERの "(You Can Still) Rock In America" とかMR.BIGの曲をカバーすればいいのか!(って実際やるみたいな発言をエリックはインビューでしてますよね。さて、どうなることやら‥‥)

  最後に‥‥このアルバムをここ日本でのみリリースすることによって、一番「得」をする人って誰なんでしょうね? いや、金銭面での話じゃないですよ。松本がこのアルバムをリリースすることで、B'zを小馬鹿にするようなハードロック・ファンから受け入れられるとも思えないし、逆にB'zしか眼中にないようなファンにエリックやジャックがどう受け入れられるのか‥‥結局その答えって、2作目を作って初めて見えてくるものなのかも。というわけで、何年先になるか判らないけど、セカンドアルバムを熱望します。勿論、今回のメンバーでね!



▼TMG『TMG I』
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