2017/08/15

FOO FIGHTERS『FOO FIGHTERS』(1995)

1994年4月、カート・コバーン(Vo, G)の自殺によりNIRVANAは事実上の解散。メンバーのデイヴ・グロール(Dr)はNIRVANAのツアー中などに書き溜めた楽曲を同年秋からレコーディング。ドラムのみならずギター、ベース、そしてボーカルまですべてをデイヴ自身が手がけた純粋なソロアルバムを完成させました。そしてそれは、FOO FIGHTERSというバンド名のもと、1995年初夏に正式リリースされたのでした。

確かにデイヴはNIRVANA時代にもシングルのカップリングに曲を提供したり、歌ったりしていましたが、正直そこまで印象に残るものではなく。なので、こういったプロジェクトを立ち上げたと知り、ぶっちゃけ「大丈夫かよ?」と不安視したのをよく覚えています。

が、完成したアルバムは“NIRVANAのフォーマット”をうまく用いつつ、アメリカンハードロック的な“陽”の空気に満ちた作品集でした。冒頭2曲(「This Is A Call」「I'll Stick Around」)の突き抜け感、ポップでキャッチーな「Big Me」。正直、この3曲を聴いただけで完敗でした。「やるじゃん、デイヴ」と。

ただ、聴き進めるうちに、やはり心のどこかでNIRVANAと比較してしまう自分がいたのも事実。「カートならこんなアレンジにしないだろうな」とか「カートならこんなギターフレーズにしてたはず」とか「カートならここはこう歌てったんじゃ」とか。

いやいや、歌ってるのカートじゃないし。カートまったく関係ないから!

でも、当時は無理だったんですよ。亡くなってから1年ちょっとしか経っておらず、NIRVANAの時間が止まったのと相反して、SOUNDGARDEN『SUPERUNKNOWN』でバカ売れし、PEARL JAM『VITALOGY』という新たな傑作を世に放った1994年。いろんな場面でカートの不在を実感し、そのたびに遺作となった『IN UTERO』(1993年)ばかり聴いていたものです。

というわけで、FOO FIGHTERSのデビュー作を素直な気持ちで聴けるようになったのは、2ndアルバム『THE COLOUR AND THE SHAPE』(1997年)がリリースされてから。完全な“バンド”となった同作で、ようやく僕らもNIRVANAの呪縛から解き放たれた気がします。

今や完璧なスタジアムロックバンドにまで成長したFOO FIGHTERSですが、その原点は間違いなく本作。現在の質感とは異なるものの、デイヴ自身もNIRVANAの呪縛、グランジの呪縛から解き放たれようと必死で本作と向き合ったんでしょうね。完全には抜けきれてないこのアルバムを聴くと、なぜひとりで全部作らなくちゃいけなかったのかが、なんとなく理解できたりして。

実質1stアルバムではあるものの、その後の活動スタンスを考えたら本作は“プレデビュー盤”という位置付けがぴったりかもしれませんね。



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投稿: 2017 08 15 12:00 午前 [1995年の作品, Foo Fighters, Nirvana] | 固定リンク

2017/08/14

NIRVANA『NEVERMIND』(1991)

NIRVANAが1991年9月に発表した通算2作目にしてメジャーデビューアルバム。発売直後はそれほど大きな話題となりませんでしたが、年明け1992年くらいから一気に注目が集まり、気づけば全米1位、全英5位まで上昇。アメリカでは現在までに1000万枚以上、全世界で3000万枚以上も売り上げたメガヒット作であり、同作と同時期に発表されたPEARL JAMのデビューアルバム『TEN』とともに“グランジムーブメント”を一気にブレイクさせた起爆剤です。

思えばNIRVANAを前年末〜同年初頭くらいに知り、西新宿を何度もさまよってついに見つけた1stアルバム『BLEACH』(1989年)を聴くも、そのチープなサウンドと、やりたいことが整理しきれていない作風にギョッとしたのですが、まさかそれから1年経たずに2枚目のアルバムが到着し、その作品にグッと心をわし摑みにされるなんて、当時は考えてもみませんでした。

とにかく1曲目「Smells Like Teen Spirit」からラストの「Something In The Way」まで(さらにその後のシークレットトラック「Endless, Nameless」まで)、一寸の隙もない完璧なハードロックアルバム(と、あえて呼ばせてもらう)。スタイルとしてはパンクなんだろうし、本作がアメリカで初めて1位を獲ったパンク作品というのも頷ける。けど、展開されている楽曲そのものはハードロックだと思うんです。カート・コバーンには悪いけど。

そもそも本作のサウンドメイキングは完全にハードロックのそれだし、前作発表後にバンドに加わったデイヴ・グロール(Dr)の豪快でパワフルなドラミングはHR/HMそのもの。そんな彼がNIRVANA解散後、FOO FIGHTERSで徐々にハードロック色を強めていったのも納得ですね。

だからリリース当時、無条件で本作に手を出し絶賛したメタルファンは少なくなかった。少なくともリリース直後(1991年秋〜冬)、自分の周りにいたメタラーはみんなこのアルバムを気に入っていたよ。

でも、売れに売れて、“グランジ”なるものがそれ以前のメタルシーンを駆逐したことで、状況は一変しちゃったんだけどね。そういう意味では1992年以降しばらくは旧来のメタルファンにとって踏み絵的な作品だったのかもしれない。今じゃそんなことまったくないんだけどさ。

歌詞については、国内盤に付属の対訳やネット上に溢れている翻訳サイトにてご確認を。実際どれが正しい歌詞なのかは不明だし、そもそもが難解なものばかりなので、どこまでカートの意図したものに近いかは不明ですが。

ここで展開された音、歌、歌詞、そしてカートの生き様。あれから26年経った今触れてみても、何かを突き動かすほどのパワーと可能性を秘めた強烈な作品だと思います。本当、僕がここで改めて語るまでないけどね。

最後に余談。当時僕はこのアルバムをまず輸入盤で購入。その後、友人が国内盤を購入したので、ライナーノーツを読みに彼の家に行って、本作を聴いていたんですが……「Something In The Way」終了後に10分の空白があり、そのあとにシークレットトラック「Endless, Nameless」が始まるんだけど、当時の僕はこれにびっくりして。だって、自分が持ってる輸入盤にはこの曲、入ってなかったんだもん。てっきり日本盤だけのボーナストラックなのかと思ってたら、実はファーストプレスにはこのシークレットトラックは未収録だったとのこと。

というわけで、現在我が家には輸入盤ファーストプレス(シークレットトラックなし)、のちに購入した国内盤(シークレットトラックあり)、1992年前半イギリス滞在中に現地で購入したカセットテープ(シークレットトラックなし)、2011年にリリースされたリマスター盤デラックスエディション、そしてアナログ盤の5仕様が存在します(苦笑)。これから聴こうって人は、リマスター化された1枚モノか、貴重なデモ音源や当時シングルなどで聴くことができた定番曲などをまとめた2枚組デラックスエディションをオススメしておきます。



▼NIRVANA『NEVERMIND』
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投稿: 2017 08 14 12:00 午前 [1991年の作品, Nirvana] | 固定リンク

2017/06/28

NIRVANA『BLEACH』(1989)

1989年初夏に発表された、NIRVANAの記念すべきデビューアルバム。バンドの結成が1987年なので、約2年後には本作をリリースしているんですね。もっとも彼らが今のような知名度を獲得するのは、そこからさらに2年以上要するわけですが(それにより、本作に対する評価も激変します)。

米・シアトルを拠点とするインディーレーベル「Sub Pop」から発表された本作は、当時ほとんど話題になることなく、当然日本盤が発売されるのも次作『NEVERMIND』(1991年)の大ヒット以降ですし、自分が記憶してる限りでは1990年夏時点では輸入盤すら都内でもほとんど見かけることはなかったはずです(だって、当時彼らのことを知ってアルバムを探し回ったんですから)。

1989年当時はまだグランジなんて言葉すら耳にすることはなかったし、かのSOUNDGARDENがようやくメジャーから『LOUDER THAN LOVE』を発表した程度。MUDHONEYやMELVINSといったバンドはすでに活動していましたが、ここ日本では“知る人ぞ知る”な存在でした。

しかし、ここで聴けるサウンドは初期グランジムーブメントにおいて非常に重要なもの。確かに『NEVERMIND』以降ですべてが変わってしまいましたが、それでも多くのリスナーが「グランジと聞いてイメージするもの」は『NEVERMIND』よりもこの『BLEACH』に詰まっているのではないか……あのムーブメントから25年も経った今だからこそ、余計にそう思うわけです。

決して録音状態が良いとは言えない、インディーズならではのチープな音質にラフな演奏。楽曲もニューウェーブを通過したようなものから、当時のマニアックなインディーロック、どことなくハードロックの色合いもあったりなかったり……と一筋縄でいかない印象が強いですが、歌メロはこの時点で非常にポップなものが多いのも事実。1曲目「Blew」からしてそうですし、きわめつけは「About A Girl」。このあたりのカラーを強めていくことで、のちの『NEVERMIND』へと続いていくんだなと実感させられます。

それと、久しぶりに本作を聴いて思ったのは……カート・コバーン(Vo, G)という人は本当にMELVINSが好きだった(リスペクトしていた)んだな、と。たまたま初期MELVINSの作品を聴いていた流れで本作を聴いたからか、余計にそう感じたのでした。そういえば本作にはそのMELVINSのデイル・クローヴァー(Dr)も参加してますしね。当時、短期間でも一緒に活動できたことは嬉しかったんじゃないか……なんて、本作を聴いて勝手に想像するわけです(まぁ実際、MELVINSと出会って自分の人生は変わった、なんてこと言ってましたしね、カート)。全体的にヒリヒリとした作風なのに、今となってはそういう微笑ましさも感じられる奇跡の1枚。何周も回って、彼らの作品の中で今一番気に入っているのが本作だったりします。

NIRVANAをこれから聴くなら、「もちろん最初は『BLEACH』から」……とは言いませんよ。素直に『NEVERMIND』から聴けばいいと思います。そこから『BLEACH』にさかのぼるか、『IN UTERO』(1993年)に進むかはあなたの自由。どちらを選んだとしても、きっと驚くことでしょうから(苦笑)。



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投稿: 2017 06 28 12:00 午前 [1989年の作品, Nirvana] | 固定リンク

2016/08/26

「一番好きなHR/HMギターソロ」について考える(80年代〜90年代前半編)

仕事の合間だけど、現実逃避ついでに「一番好きなギターソロ」について考えてみた。あくまで主観だが、HR/HMにおけるギターソロはライブで一緒に「口ギターソロ」ができる、つまり口ずさめるものがベストだと思ってる。

最初に思いつくのはやっぱりオジー・オズボーン「Mr.Crowley」だろうか。適度に速弾きしていて、かつ口ずさめるメロディ。これ以上速くても、音数が多くてもダメ。だって弾けないもん。俺が。

そういう意味じゃEUROPE「The Final Countdown」もベスト候補。いや、こっちはシンセのメインリフのほうが印象的か。シンセのフレーズは口ずさんでも、ギターソロを口ずさむことは少な……いや、そんなことはなかった。口ずさむ。好き。

主メロ自体がリフ?なゲイリー・ムーア「Wild Frontier」も、個人的には「Mr.Crowley」と同じくらい好きな楽曲&ソロ。結局、こういうマイナーコードで泣きのメロを持つ楽曲が好きんなんだろうな。ザ・日本人。

泣きメロかつ「誰もが知ってるフレーズの引用」というドーピング感満載のACCEPT「Metal Heart」は反則。これこそ全力で日本人泣かしにかかってるだろと。

「Mr.Crowley」と同じくらい重要かつベストだと思ってるのが、KISS「Detroit Rock City」。あのクソシンプルなのに最強なツインリードは、この先何百年も語り継がれるべきだと思う。結局「コピーできそうだけどちょっと難しい」くらいの、あの絶妙なレベル感が自分の求めるギターソロなのかもしれない。あと、長すぎてもダメ。2分とか続いちゃうようなのはね、覚えられない。

……ってよくよく考えたら70年代じゃん、「Detroit Rock City」。却下却下。代わりにKISSのコピーバンド始めた頃にやってた「Crazy Crazy Nights」を挙げとく。このコンパクトだけど印象に残り、口ずさめて適度なテクニックが凝縮されてるというのは非常に重要。そういう意味じゃBON JOVIのこの時代の楽曲はほとんどこれに当てはまる。選ばないけど。

もうちょっとヘヴィな方面についても。

METALLICA「One」は随所にソロが登場するけど、後半の畳み掛けるようなソロパートは難しいながらも覚えやすいメロディがちゃんと備わっているし、この手のバンドのものとしてはベストクラスなんじゃないかなと。

逆にMEGADETH「Tornado Of Souls」までいくと、ちょっとやりすぎ感が。もちろんこれは個人的なさじ加減の問題だけど。リスニング的にはMEGADETHのほうだけど、「コピーしたくなる」という点においてはMETALLICAかなと。なかなか共感しづらいだろうけど。

PANTERAのギターソロも実はすごくメロウなものが多くて、個人的にはリフ以上に推していきたいと思ってる要素。スローな曲はもちろんなんだけど、「Mouth For War」はあのリフとグルーヴにこのソロが乗るから最強なんだと。

最後に国内のバンドからも。

80年代半ばに青春時代を過ごした人なら、きっと誰もがコピーをしたんじゃないだろうかっていうLOUDNESSから選ぶならば、やっぱり「Crazy Doctor」だろうか。「In The Mirror」も捨て難いけど。って、どっちも弾けないんだけど。

で、結局最後はEARTHSHAKER「More」に行き着くと。この呪縛から逃れられないんだな、あの時代に10代を過ごしてしまった者は。でもイントロのアルペジオのほうが印象深い? かもしれない。

以上10曲。KISS以外は結局泣きメロなんだな。わかりやすいぞ自分。

……でもさ、ああだこうだ考えたけど、結局この曲のこのソロがいろんな意味で最強かもしれないと思うんだよ。

グランジ以降、ギターソロの重要度が低くなったと言われたけど、ここまでシンプルで印象的なソロは逆にメタル脳では作れなかっただろうな。だって歌メロをそのまま弾いてるだけだし。その後の歴史を変えてしまったという意味ではとても皮肉な1曲。

90年代後半以降についても、いつか考えてみたい。10曲も挙げられるかどうか微妙だけど。

投稿: 2016 08 26 11:56 午前 [Accept, Earthshaker, Europe, Gary Moore, KISS, Loudness, Megadeth, Metallica, Nirvana, Ozzy Osbourne, Pantera] | 固定リンク

2006/05/31

V.A.『ALL APOLOGIES』(2006)

 今年はカート・コバーンが亡くなってから12年。日本でいうところの「十三回忌」ってことになるのかな? 偶然のタイミングで映画「ラスト・デイズ」が日本公開になったのもあり、日本でも2枚のトリビュートアルバムがリリースされたわけだけど、これはそのうちの1枚。純粋なトリビュートアルバム、というか、単なるカバー曲集という言い方もできるんだけどね。

 この手のアルバムは、大まかに2タイプあるじゃないですか。ひとつは、原曲に忠実な作品集。そしてもうひとつが、原曲を大きく崩して、各アーティスト流に仕上げてしまった作品集。この「ALL APOLOGIES」というアルバムは、どちらかというと前者に限りなく近い作品。前半を聴いて、やはりカバーアルバムの域を出てないなぁとガッカリしたんだけど‥‥あの名曲 "Smells Like Teen Spirit" をメジャーコードでリアレンジし、印象的なリフすらぶちこわしてしまったB-DASHのカバーに、思わす吹き出しちゃって。このアレンジ、賛否あるかと思うんだけど、俺は逆に「やっちゃった」感が強い彼らを支持したいなぁ。好き嫌いは別にしてね。

 結局、MO'SOME TONEBENDERの百々和宏のコメント、「NIRVANAを演ってみて、これらの曲はカートが歌ってないと意味が無いんだと気付きました。」がすべてを物語ってるように思いませんか? ま、当たり前の話っていえば当たり前なんだけどね。

 その相手がMO'SOMEだろうが、Dr.StrangeLoveだろうが、吉井和哉だろうが、KING BROTHERSだろうが、答えは全部一緒なんだよね。いや、それぞれに愛情が感じられて、俺は好きなんだけどさ。でも、結局トリビュートアルバムって最後はそこに行き着いちゃうんだよね。無い物ねだりっつーかね。

 演奏がシンプルすぎればすぎる程、それを崩したり自分の色を付け加えるのが、実は難しいのかもしれないね。ましてやNIRVANAみたいに情念がこもった音楽なら尚更っつーかさ。あとはもう‥‥NIRVANAをリアルタイムで知らない世代が、ここに参加した若手バンドのカバーを聴いて、原曲に興味を持ってくれるのなら、これほど嬉しいことはないよね。

 改めて、12年ってあっという間なのか、それとも長い時間なのか、考えさせられました。



▼V.A.「ALL APOLOGIES」(amazon:日本盤

投稿: 2006 05 31 01:52 午前 [2006年の作品, Compilation Album, Nirvana] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/12/07

NIRVANA『WITH THE LIGHTS OUT』(2004)

 NIRVANAの3CD+DVDからなるボックスセット「WITH THE LIGHTS OUT」が、昨日我が家にも到着しました。日本盤リリースのギリギリまで、輸入盤を買うか日本盤を買うかで迷っていたのですが、結局日本盤は「US盤に解説等を付けた仕様」だということで、どうやらUS盤のDVDはリージョンフリーみたいですね‥‥ってことで、金曜夜にUS盤を注文、日曜朝に我が家にこのボックスが到着したのでした。

 ボックスとはいっても箱にCDやDVDが入っているのではなく、横長のブックケース風デジパックというか。メンバー3人の顔とNIRVANAのロゴマークが印刷されたスチールプレートが表面に貼られていて、かなり重厚な印象。ってパッケージの話は別にいいか。みんなが知りたいのは、肝心の中身なんだから‥‥

 俺ね。正直な話、全然期待してなかったのよ、このボックスには。既出音源は数曲のみで、その大半がスタジオデモや、カートが弾き語りをするデモ、スタジオアルバムのアウトテイクという事実。これを知って‥‥どうせアルバムから漏れた曲とか、音質の悪い、ブートレベルの音源だろ?と高を括ってたわけ。それもこれも全部、俺自身がNIRVANAというバンドを、カート・コバーンという人間を、心のどこかでバカにしてた‥‥信用してなかったんだと思う。やっぱり、先に逝ってしまった‥‥てめぇの人生をてめぇの手で終らせるような奴‥‥くらいの気持ちだったんだと思う。口ではリスペクトしてる、とか、今年で10年かぁ淋しいなぁ、とか言いながらも、やっぱりずっとわだかまりがあったんだよね、うん。だからってわけでもないけど‥‥パッケージを開けても、なかなか聴く気になれなくてね。そのまま夜まで放ったらかしにしてたもん。

 ところが。そんなの、ディスク1をプレイヤーのトレイに載せて、プレイボタンを押した後、ものの数秒でどこかに吹き飛んじまった。ただただ、無言でスピーカーから放たれる爆音、轟音、叫び、囁きに耳を傾けるだけで、微動だにできなかった‥‥それが約3時間半、ディスク3枚を聴き終えるまで、緊張感をずっと保ったまま続いて。聴き始めたのが深夜の3時過ぎで、聴き終えたら朝の7時になってた‥‥そう、一晩中これを全部聴いてしまったわけ。それだけ人を惹き付けるものが、このボックスセットの中にはあったんだよね。

 既に持っている音源、何度か別のブートレグで耳にしたことがある未発表曲、知ってる代表曲のバンドデモやカートの弾き語りデモ等、音質のクオリティーはまちまちだし、中にはカセットテープからそのまま起こしたような音源も結構な数あって。けど、それらが見事にマッチしてるんだよね。テープのヒスノイズやら、痛んだ部分から発するノイズが、またその曲のエフェクトだったり味になってたりして。ベックが初期にリリースしたアコースティック作品みたいなローファイさ、というか。特にカートの弾き語りデモにはそういった匂いを感じ取ったり。

 そして、未発表に終った楽曲の数々。それがバンドテイクだろうが弾き語りだろうが、既にその時点で輝いてるんですよ。カートがギターを握って、声を発した時点でそれらが全て「カート・コバーンの曲」、「NIRVANAの曲」として成立しちゃってるんですね、驚いたことに。恐らく数ある音源の中から、そういうものを選んだ結果なんだろうけど、それにしても‥‥なんなんだ、これは!?

 多分。多分だけど‥‥NIRVANA、そしてカート・コバーンって、彼が初めてバンドを組んで、初めてギターを鳴らして、フィードバックさせた瞬間。その時点でNIRVANAってバンドは(まだバンド名が違っていても)既に始まっていて、そして既に完成していたんだな、と。ディスク1の1曲目に収録された "Heartbreaker"(ご存知、LED ZEPPELINの名曲カバー)を聴き始めた瞬間に、俺はそう悟りました。多分‥‥間違ってないと思う。

 NIRVANAが好きで、あるいはNIRVANAに興味を少なからず持っていて、今、このボックスを買おうかどうか迷ってる人がいたら‥‥俺はそんな人達の背中を押してあげたい。まだNIRVANAを聴いたことがないって人には、これを聴く前にまずオリジナルアルバム3枚(「BLEACH」「NEVER MIND」「IN UTERO」)を聴いてもらいたいんだけど、既に彼等のことをある程度知ってる人なら、間違いなくこのボックスセットを楽しめるはず。つーかむしろ、聴くべき。いや、聴く義務があるんだよ。

 そして‥‥DVDな。これは本当に必見ですよ。1988年、カートやクリス・ノヴォセリックの故郷、アバーディーンにあるクリスの自宅で録画された演奏はホント見物だし(壁に向かって歌うカートの姿は、ある意味不気味。まるで「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」を彷彿させる)、その後の1991年‥‥これはDVDだけではなく、CD音源にも言えるんだけど‥‥デイヴ・グロールの加入で、このバンドの「質」が一変するんだよね。チャド・チャニング時代も独特なノリがあって味わい深いんだけど、やはりデイヴのドラミングは完全に別ものであって、本当に最強だな、と。田舎のガレージバンドから、一気に(異論はあるだろうけど)世界最強のハードロックへと導いたんだから。その変化の瞬間(デイヴ加入後初ライヴ映像も入ってます)を、自宅にいながら目撃することが出来るんだから。あと、ジェイソン・エヴァーマン在籍時(4人時代)の映像もあった。パット・スメアが参加した末期の映像で4人編成は見慣れているはずなのに、やっぱり狭いハコで寄り添って激しく演奏する若々しいバンドは、ちょっと感慨深いものがあったりなかったり。

 とにかく。日本盤が20%オフの時に買うか、それより2,000円安く解説なしを買うか。どっちにしろ、買うなら今のうちだから。限定版だしな。後で後悔しないためにもさ(NIRVANAは過去にも「HORMOANING」を日本でリリース後、数ヶ月で廃盤にしたことがあるしね)。

 これを聴いて、俺みたいに悔い改める輩が増えるんじゃないかな‥‥そんなことないか。



▼NIRVANA『WITH THE LIGHTS OUT』[3CD+DVD]
(amazon:日本盤US盤

投稿: 2004 12 07 02:07 午前 [2004年の作品, Nirvana] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/12/03

ボーナスシーズンにボックスセット

 年末時期になると、日本でも海外でもそうなんですが、まぁ‥‥あれですよ、ベスト盤とかが多くリリースされるんですよね。特に海外の場合は「クリスマス・シーズン向け」ということもあり、パーティーでかけるもよし、プレゼントにあげるもよし、といった感じでリリースされることが多いみたい。実際、何かの記事で読んだんだけど、DEF LEPPARDのアルバム「HYSTERIA」が毎年年末になると数万枚売れるそうなんですよ。リリースから5年以上経ってからのお話ですよ。これ、厳密にはオリジナルアルバムですが、シングルヒットが全12曲中7曲も入ってるってことで、まだベスト盤が出る前は重宝されてたんでしょうね。

 というわけで、洋楽に限らず日本でも年末年始にベスト盤をリリースするというアーティストは意外と多いようで。

 ところが。ここ最近はベスト盤だけでは飽き足らず、ボックスセットをリリースするアーティストが増えてるんですよね。数年前にKISSが5枚組ボックスを出したかと思うと、昨年はSLAYERがDVD付き5枚組ボックスとか出したし、今年はBON JOVIやNIRVANAといった目玉商品が人気を呼んでるし。

 というわけで、幾つか気になるボックスセットを紹介。



▼NIRVANA「WITH THE LIGHTS OUT」[3CD+DVD](amazon

 その殆どが未発表テイクという貴重音源満載のボックス。ブートとかで流出した曲もあれば、代表曲のデモテイク、'80年代のライヴ音源まであるので‥‥正直クオリティが心配ではあるんですが、まぁ‥‥コアなファンには嬉しい1品かな、と。当然買いますが。



▼BON JOVI「100,000,000 BON JOVI FANS CAN'T BE WRONG」[5CD+DVD](amazon

 こちらも代表曲は殆ど入っておらず、あっても一部のヒット曲のデモテイクのみ。後は完全未発表のスタジオアウトテイクや映画のサントラにのみ収録された曲、去年出たアコースティック盤に収録される予定だった新曲2曲等、とにかく初聴きの音源てんこ盛り。更に日本盤はB面曲10曲入りのボーナスディスク付き。これも選曲かなり良いので、絶対に日本盤で買い!


▼岡村靖幸「岡村ちゃん大百科」[8CD+2DVD](amazon

 リリース自体は来年2月だけど、これから岡村ちゃんのアルバム揃えようって奴らは、正直これを買いなさい! エピック時代のオリジナルアルバム&未収録曲全部揃うし、DVDもレアなやつ満載だし。当然俺も予約済み!


▼モーニング娘。「モーニング娘。EARLY SINGLE BOX」[9CD](amazon

 8cmシングル時代("モーニングコーヒー" 〜 "恋のダンスサイト")までの8枚を12cm化、それぞれに貴重な未発表音源&テイクを収録。更に人気曲&アルバム曲のカラオケディスク付き。これもマニア向けですけど、"ふるさと" や "真夏の光線" のボーカル違いとか初期テイクとかって聞くと、それだけでもうヨダレものなんですが‥‥

 とりあえず、上の4つは全部予約済みのもの。アホだな相変わらず‥‥


投稿: 2004 12 03 12:40 午前 [2004年の作品, Bon Jovi, Nirvana, モーニング娘。, 岡村靖幸] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/11/10

とみぃ洋楽100番勝負(84)

●第84回:「Where Did You Sleep Last Night」 NIRVANA ('94)

 ゴメン、NIRVANAから何か1曲選ぶって、俺的には非常に難しい作業なのよ。世間的には "Smells Like Teen Spirit" なんだろうけど、俺的には「非常に優れたハードロック」としてしか機能しないし、あの曲(少なくとも俺にはあれは「パンク」ではないな、と)。反則だけど、アルバム「IN UTERO」まるまる1枚を1曲としてカウントさせて欲しいくらいで(俺的には、人生の中で大切なアルバム3枚のうちの1枚だからね)。

 で、自分が一番カート・コバーンという「才能」を愛おしいな、と感じた曲を選んだなら、このカバー曲になってしまったと。

 ご存知の通り、現在までカートの、そしてNIRVANAの「公式な」形で最後のライヴ音源。もうすぐボックスセットがリリースされるから、そこにはもっと後の、死の数ヶ月前のライヴ音源が収録されているかもしれないけど、やはりこのアルバムの、このテイクに敵うものは他にはないだろな‥‥と。まだボックス聴いてないけど、そう実感するわけですよ。

 死んでしまった奴のことをとやかく言うつもりもないし、言いたくもないけど‥‥やはり生き続けてこそですよ。この歌を聴くと、いつもそう思う。そして、NIRVANAが大好きだった大切な友人のことを思い出すんだよな(彼はカートが亡くなってから4年後の同じ日に、やはり自ら命を絶ってます)‥‥彼もこの曲の、一番最後の絞り出すように歌うパートを聴くと鳥肌が立つ、って言ってたっけ。いつか一緒にNIRVANAみたいなバンドやろうぜ、とか言い合ってたけど‥‥

 曲の評価とは全く関係ないけど‥‥やはり死んでしまうのはズルい。ある意味「勝ち逃げ」であり、そしてある意味では「永遠の負け」なんだから。その人にとって、それがその時一番の選択だったのかもしれない。でも、俺は自ら命を絶つ奴は絶対に許さないし、認めない。

 死んで伝説になるなんて、糞だ。



▼NIRVANA「UNPLUGGED IN NEW YORK」(amazon

投稿: 2004 11 10 12:00 午前 [1994年の作品, Nirvana, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/04/05

NIRVANA『INCESTICIDE』(1992)

NIRVANAが「NEVERMIND」で大ブレイクした'92年、次のアルバムまでの穴埋めとして(かどうかは知らないけど)、メジャーデビュー以前にインディーズからリリースしたシングル、コンピレーション盤にのみ収録されていた楽曲を1枚にまとめ、同年12月に発表されたのがこの「INCESTICIDE」というアルバム。当時、恐らく多くのロックファンが「NIRVANAの新しいアルバム!」を期待してたんだけど、その期待をいろんな意味で裏切ったのが、このアルバムだったといえるでしょう。だって、多くのロックファンは「NEVERMIND」で見られたNIRVANAを期待したはずなのに、ここにあるのはどちらかというとインディーズからのファースト「BLEACH」に近い印象の内容。特にここのみで聴ける未発表3曲に多くの人は「次の一手」を期待したのに‥‥

けどね、このアルバム。聴けば聴く程クセになる1枚なんですよ。そりゃね、「NEVERMIND」での彼らがどうしようもなく好きだ!って人にとっては少々厳しい内容かもしれません。けど、この1年後にリリースされることとなるサード「IN UTERO」を通過してしまえば、ここで聴ける楽曲が如何にポップに響くことか‥‥本来「BLEACH」と「NEVERMIND」との橋渡し的作品として制作されたはずなのに、気づいてみればこれは「NEVERMIND」と続く「IN UTERO」への橋渡し的作品になっていたというね。カート・コバーンからの「次はもっとピュアになるから、覚悟しとけよ!」という新規ファンへの親切なテキスト‥‥それがこの「INCESTICIDE」だったのではないでしょうか。ま、死んでしまった今となっては、そんなこと彼に聞く事も出来ないわけですが‥‥

クオリティーの高いシングル曲 "Dive"、"Sliver"、"Stain"、"Been A Son"、"Aneurysm" といった辺りは「NEVERMIND」にも通ずるポップさと硬質さを両方備えた、非常に高品質な楽曲群。まぁ「NEVERMIND」の域には達していないのかもしれませんが、俺はこっちの方が好きなんですよね。そうそう、その「NEVERMIND」にも収録されていた楽曲のパンクバージョン、"(New Wave) Polly" ってのもありますね。どこがニューウェーブなのかは疑問ですけどね。

それ以外にも、'92年2月に来日記念盤としてリリースされたものの、すぐに廃盤になってしまった幻のミニアルバム「HORMOANING」にも収められていた英・BBCラジオでのセッション(DEVOやVASELINESのカバーも含む)も数多く収録されていて、特にアルバム前半は比較的ポップで勢いのある曲が多く、かなり聴きやすくなってると思います。

が、後半(9曲目 "Beeswax")辺りから雲行きが怪しくなるんですよね‥‥どちらかというと前半部が「NEVERMIND」的としたら、後半部は「BLEACH」的といいますか‥‥特に未発表曲の3曲("Hairspray Queen"、"Aero Zeppelin"、"Big Long Now")の怪しい雰囲気は「NEVERMIND」にはなかったもの。ポストパンクやニューウェーブの色合いさえ感じられ、如何にこのバンドが「ただのパンクバンド」では済まされないいろいろな要素を持ったバンドだったかが伺える一面ではないでしょうか。残念ながらこういった色合いは後の「IN UTERO」からはそれ程感じられず、ある一過性のものだったのかな‥‥けどカバーセンスにもこの辺の色合いは表れてるし、後に出演することとなる「MTVアンプラグド」でもその辺のセンスはしっかり感じられたので、やはりこれらもバンドの持ち味と呼ぶ事ができるでしょう。そう、何もグランジはBLACK SABBATHやKISSやCHEAP TRICKやアングラ・パンクだけから影響を受けてたいわけじゃないんですよね。

多分NIRVANAをこれから聴く人はベスト盤だったり「NEVERMIND」といった代表作から手を伸ばし、このアルバムになんて見向きもしないんでしょうけど‥‥もし彼らの本質的な部分に触れたいのなら、是非このアルバムを聴いて欲しいなと思います。そう、どうせ聴くならベスト盤と一緒にこの「INCESTICIDE」も買っちゃいなよ!



▼NIRVANA『INCESTICIDE』
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投稿: 2004 04 05 02:17 午前 [1992年の作品, Nirvana] | 固定リンク

2002/04/05

NIRVANA『FROM THE MUDDY BANKS OF THE WISHKAH』(1996)

カート・コバーンの死後2年半経ってようやくリリースされたのが、このライヴアルバム。これまでもNIRVANAのライヴ音源はシングルのカップリングとして数曲、そして死後発表されたアンプラグド盤等があったわけだが、まるまる1枚バンド形態でのライヴというのは、今のところこれが最初で最後の作品となっている。そういう意味では初来日を体験した者にとってはあの衝撃を思い出すのにいいサンプルとなるし、結局実現しなかったサードアルバムでの来日公演を疑似体験したり、あるいは彼等を知った時には既に存在しなかったという新参者にとってもその凄みを体験するのにいい内容になっていると思う。

録音は1本のライヴをまるまる収録したものではなく、古いものは'89年12月の音源から、最新のものは'94年1月5日‥‥亡くなる3ヶ月前の音源まで、幅広く収録されている。楽曲もメジャーデビュー後の2枚(「NEVERMIND」、「IN UTERO」)からの曲がメインとなっているが、要所要所でファースト「BLEACH」やその前後のシングル曲が登場する辺りに、実際のライヴ・セットリストと同じような流れを感じる。これは編集に参加したベースのクリス・ノヴォゼリックのアイデアだったのだろう。だからこそ、頭の方で最大のヒット曲となってしまった "Smells Like Teen Spirit" が早々と登場してしまうし、最後はファーストアルバムのトップを飾った "Blew" で終わる。ありがちなロックバンドだったら、最大のヒット曲は最後の最後に取っておくだろうし、ライヴの一番盛り上がるエンディングにインディーズ時代の曲なんて持ってこないだろう。まぁそういう姿勢こそがNIRVANAが支持された要因のひとつだったのだろう(俺は別にその辺は拘らないが)。

サブタイトル通り、俺は結局一度も彼等のライヴに足を運ぶことが出来なかった。チケットは確保出来ていたのだ、クラブチッタでの公演のものを。しかし、チケットを確保した数日後に、彼等の来日時期('92年2月)に俺は日本にいない事が決まったのだった‥‥結局、「次があるさ」と素直に諦めて友人にチケットを譲ったのだった。その時は「NIRVANAはまた観れるだろうけど、間違いなくイギリスやドイツに行く機会は二度あるか判らない」と思い、素直に英国短期留学を選んだのだが‥‥世の中には「絶対」なんてことはあり得ないということを、その2年後に嫌と言うほど味わった。まさかあんなことになるなんて、誰に想像できる!?

そういう事があったから、それ以後シングルやブートで彼等のライヴ音源に接すると、嫌な気分になったりしたもんだった‥‥所謂トラウマだったのだろうか? しかし、死後半年経って発表されたアンプラグド盤を聴く頃には気持ちの整理もつき、素直に楽しむことが出来るようになっていた(変に湿っぽくなることもなく、だ)。そしてそれから2年経ってから我々の元へ届けられたのが、このライヴ盤だったというわけだ。

NIRVANAのライヴの魅力は俺が言葉で説明するよりも、実際に音を聴いてもらった方が判りやすいと思うし、その方が一番説得力があるだろう。「それじゃあ書いてる意味ないじゃん?」と思われるだろうが‥‥俺が今回言いたかったのは‥‥俺はこのアルバム最大の魅力は、52秒に渡る冒頭のイントロでの、カートの生々しいまでの叫びだと思っている。アンプラグドのところでも書いたが、俺は結局カートの声に惹かれたようなものなのだ。だからこそ、その彼が身体の底から絞り出すようにシャウトするあのイントロこそが、俺にとってはこのアルバムの「全て」だったりする。日本のAIRがそのデビューアルバムの冒頭でこれに似たようなことをやっていたが、そもそも根本的にコンセプトが違うのだがら追いつくわけがない(てゆうか、比べる事自体が間違っているのだが。ちなみに俺は車谷を貶しているわけではない。NIRVANAもAIRも大好きなのだから)。

NIRVANAはカート・コバーンという「才能」と「カリスマ性」、クリスとデイヴ・グロールの強靱なリズム隊、そしてあの「声」があったから最強だったのだ。この声がなかったなら、きっと俺にとってNIRVANAは特別な存在にはならなかっただろう。

この文を読んで、久し振りにNIRVANAを聴いてみようかなぁと思ったそこのあなた。是非これまで聴いてきた中で最大級のボリュームで聴いてみて欲しい。もし深夜で近所迷惑だというのなら、ヘッドフォンを付けて割れんばかりの爆音で聴いて欲しい。このライヴ盤でのカートの歌は、そしてNIRVANAのライヴはそうやって消費されるべきだと思うから。



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投稿: 2002 04 05 02:23 午前 [1996年の作品, Nirvana] | 固定リンク

NIRVANA『MTV UNPLUGGED IN NEW YORK』(1994)

早いもので、今日で丁度8年経つわけだ‥‥ここ数年は特に4/5だからといって彼を、そしてNIRVANAを意識することはなかったのだが(自分にとっては別の意味で忘れられない日となってしまったので。詳しくは別項「About Kurt Cobain」参照)、先週だったか、たまたまビデオテープの整理をしていたら、そこに見覚えのないテープが一本。消して使おうと思って内容を確認したら、それがこのNIRVANA最初で最後のMTVアンプラグド出演時のものだったのだ。すっかりそのテープの存在を忘れていた俺は、思いっきり最後まで見入ってしまった、深夜の2時過ぎから(しかも平日に)‥‥そして眠れなくなってしまうわけだが。

このライヴが収録されたのは、'93年11月18日。亡くなるまで約5ヶ月のタイムラグがあるわけだが‥‥その5ヶ月間に何があったとか、どう変わってしまったいや変わってなんかない‥‥なんて話題はこの際無視する。そういうスキャンダラスな話題がどうしてもつきまとってしまうのは、カート・コバーンの死に方を考えれば仕方ないことなのかもしれないが、まずはそういう色メガネなしで聴いて欲しい。もしあなたが、まだNIRVANAというバンドの音に触れたことがない人なら、雑誌やネット上での情報を得る前に、まっさらな状態でこのアルバムに接して欲しい。

何度も言うが、俺はカート・コバーンという男の生き方を今でも肯定する気にはなれない。けど、それでも彼が作り出した曲、歌、そしてNIRVANAというバンドは今でも大好きだ。最初に彼等のアルバム「BLEACH」に触れた時は余り熱心に聴き込むことはなかったが、続く出世作「NEVERMIND」ではその楽曲よりも、カートの歌、歌声に一番惹かれたという事実を、今でも良く覚えている。決して上手とは言い難いが、独特なざらついた声で唄われる "Something In The Way" を初めて聴いた時の、あの何とも言い表しがたい気持ち‥‥あれは何だったんだろう?って今でも思う。聴き終えてから急激に鬱になる‥‥ぶっちゃけて言えば、死にたい気分になってしまったのだ。何故か判らないが、俺は「NEVERMIND」というアルバムを初めて聴いた時、興奮せずにどん底の気分を味わうことになったのだ。後にも先にも、こんな気分にさせられたアルバムはこれだけだ(そんなもんだから、その直後に聴いたR.E.M.の「AUTOMATIC FOR THE PEOPLE」でさえもポップに聞こえてしまった)。結局それは、カートの声や唄い方によるものなんだろうな、と今では思う。特にこのアンプラグドライヴで唄われているような曲を聴くと、そういうカートの独特な魅力が際立つわけだ。決して彼は叫んだりスクリームするだけではない、ちゃんと「歌」を知っていたのだ。だからこそNIRVANAは「ポップ」になり得たのだ‥‥そうは思わないだろうか?

このアルバムの特徴はオリジナルアルバム3枚からの楽曲の他に、カート達が影響を受けたアーティスト達のカバーソングがある。VASELINESの "Jesus Doesn't Want Me For A Sunbeam"、デヴィッド・ボウイ "The Man Who Sold The World"(邦題:世界を売った男)、MEAT PUPETSは3曲("Plateau"、"Oh Me"、"Lake Of Fire")でそのメンバーも参加している。そして‥‥一番最後に唄われるのは、戦前ブルーズシンガーの中ではかなり異色の存在だったといえるレッドベリーの "Where Did You Sleep Last Night"。このアルバム最大のハイライトといえるパフォーマンスではないだろうか? 映像で観ると特によく判るが、一番最後の一節を唄う直前のブレイクでの、彼のブレス‥‥そしてその表情。俺が知ってるカート・コバーンという男が見せた、優しい表情‥‥少なくとも俺にはそう見えた。映像でその表情を観てしまった今となると、やはり「ここで終わってよかったのかな‥‥」と思えてしまうのだ。

今でも自分にとって大切なアルバムの1枚にNIRVANAの「IN UTERO」を挙げているが、最もよくプレイヤーにのせるアルバムとなると、実はこのアンプラグド盤だったりする。結局俺は、NIRVANAにロックだとかグランジを見ていたのではなく、「ポップな歌」を求めていたのだろう。



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投稿: 2002 04 05 02:20 午前 [1994年の作品, Nirvana] | 固定リンク