カテゴリー「Oasis」の16件の記事

2021年3月29日 (月)

OASIS『THE MASTERPLAN』(1998)

1998年11月3日にリリースされたOASISのコンピレーションアルバム。日本盤は同年10月28日に先行発売。

全英1位/全米2位/日本3位(オリコン総合チャート)という好成績を残した3rdアルバム『BE HERE NOW』(1997年)を経て、続く4thアルバムまでのつなぎ且つ1998年のクリスマス商戦に向けたアイテムとして制作された、既出のシングルBサイド曲で構成された内容。ファン投票の結果を踏まえ、ノエル・ギャラガー(G, Vo)によって決定した14曲が収められており、「隠れた名曲が多いアルバム未収録曲」による“裏ベスト”的1枚となっています。

本作にはライブでの定番曲だった「Acquiesce」や「Talk Tonight」、ビートルズのカバー「I Am The Walrus」のライブテイクなど、耳馴染みのある楽曲も多数収録されています。当時のOASISファンにとって、毎回アルバム未収録の新曲が複数用意されたシングルはマストアイテム。なので、新曲や未発表曲皆無の本作はある意味スルー案件ではあったものの、こうやってアルバム1枚にまとめられると手軽に楽しめるので重宝した、なんてファンも少なくないはずです。

録音時期や録音環境(スタジオ/ライブテイク)、録音メンバーも異なるため、アルバムとしてのトータルクオリティはオリジナルアルバムには及びませんが、それでも捨て曲なしの本作はOASISに多少なりとも興味があるリスナーなら、避けては通れない1枚。上記のような楽曲に加え、「Underneath The Sky」「Going Nowhere」「Rockin' Chair」「Stay Young」「Headshrinker」、そしてタイトルトラック「The Masterplan」とノエル・ギャラガーの才能が遺憾無く発揮された名曲がたっぷり用意されているのですから。このクオリティでアルバムから漏れるんだ……と当時は驚かされたものです。

あと、ノエルVo曲が多いのも本作の特徴かな。この当時はまだ、アルバム本編では抑え気味だったノエルのシンガーとしての側面は、シングルのBサイドナンバーで発揮されていたわけで、本作では全14曲中5曲(うち「Acquiesce」はリアム・ギャラガーとのツインVo)でノエルの歌を楽しめます。その中でも特筆すべき1曲が、先にも挙げた「The Masterplan」。これ、なんで『BE HERE NOW』から漏れたんだろうと頭を抱えるほど出色の完成度で、あの時期の創作意欲はバンドとしてもピークに達しつつあったことが理解できるんじゃないかと。それこそ「Stay Young」も『BE HERE NOW』期のBサイド曲ですしね。

本作りリースからしばらくして、初期メンバーのボーンヘッド(G)とギグジー(B)が相次いで脱退。残されたリアム&ノエルと、1995年に加入したアラン・ホワイト(Dr)の3人で4thアルバム『STANDING ON THE SHOULDER OF GIANTS』(2000年)を完成させることになります。結果として本作は、初期OASISの節目を飾る1枚となってしまいましたが、ありきたりなシングルコレクションではなく、こうした裏ベストで第1期を締めくくったのも実にOASISらしかったのではないでしょうか。

 


▼OASIS『THE MASTERPLAN』
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2021年3月28日 (日)

OASIS『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』(1995)

1995年10月2日にリリースされたOASISの2ndアルバム。日本盤は同年10月10日発売。

1stアルバム『DEFINITELY MAYBE』(1994年)がイギリスのみで200万枚を超える大ヒット作となり、デビューしていきなりスターバンドへと昇格したOASIS。約1年1ヶ月という非常に短いスパンで届けられたこの2作目のアルバムはその1作目をさらに上回るセールスを記録し、イギリスのみで約500万枚を突破。その勢いはアメリカにまで飛び火し、最高4位/400万枚という快挙を成し遂げます。また、本作からは「Some Might Say」(全英1位)、「Roll With It」(同2位)、「Wonderwall」(全英2位/全米8位)、「Don't Look Back In Anger」(全英1位/全米55位)というヒットシングルも生まれ、そのほかにも「Morning Glory」や「Champagne Supernova」がオーストラリアでシングルカットされともにTOP30入りを記録しました。

久しぶりに現れた破天荒なロックバンドで、リアム・ギャラガー(Vo)&ノエル・ギャラガー(G, Vo)のビッグマウスぶりがゴシップ誌で取り沙汰されることも多い。だけど楽曲は非常にポップ&ロックでわかりやすく、幅広い層にアピールする。そういったトピックがすべて良い方向に作用し、『DEFINITELY MAYBE』というアルバムで最初のピークを迎えるわけですが、それはあくまでイギリスや日本において。続く今作ではそういった話題が世界規模にまで拡大し、国民的バンドから「今、世界でもっとも人気のアイコン」にまで登り詰めることになるのですが、それもこれも楽曲の完成度、アルバムとしてのわかりやすさ/親しみやすさあってこそだと思うのです。

1stアルバムは処女作らしく尖った部分や(良い意味で)未完成/未発達な部分も随所に見受けられましたが、この2ndアルバムではトゲを適度に残しつつも、未開拓だった部分がまったく見つからないほどの鉄壁さを手に入れた。前作にも迷いはまったく感じられませんでしたが、本作でのそれは1作目の比ではなく、無敵さを獲得したからこその「有無を言わさぬ説得力」が備わっているのです。

1曲1曲の出来については僕がここで書くまでもなく、聴いてもらえば重々おわかりいただけるはずです。すべての楽曲がアンセミックな輝きを放っており、気づけば一緒に歌えてしまう。その輝きはリリースから25年以上経った今聴いても、まったく色褪せていないし、もっと言えば古さすら感じられない(そもそもが、最初から時代を先取りした新しい音ではなかったですしね。笑)。エヴァーグリーンってこういうことを示すんだなと、改めて実感させられます。

絶対的なポピュラリティを保ちつつ、随所にマニアックさも散りばめられている。万人を唸らせる王道さがありながらも、実はロックマニアが食いつくような要素も用意されている。この絶妙なバランス感こそ、ブリットポップというブームを超越して広く行き渡った要因ではないでしょうか。もっと言えば、そのバランス感がもっとも保たれているOASISのアルバムって、実は本作くらいなんじゃないかな。本作と前後して発表された1作目と続く3作目『BE HERE NOW』(1997年)はそのバランス感が若干いびつですし、それ以降の作品は良くも悪くもそのバランスを取り戻そうとする感が伝わるし。そういった意味でも、本作は奇跡的な1枚なのかもしれません。だからバカ売れしたんでしょうね。

※追記(2021/3/29):本作を含むOASISのアルバム初期3作やTHE VERVE『URBAN HYMNS』(1997年)などのアートワークを手がけた英国のグラフィックデザイナー/アートディレクターのブライアン・キャノンが3月28日にお亡くなりになりました。このタイミングの訃報に驚きを隠せません。ご冥福をお祈りいたします。 

 


▼OASIS『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』
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2019年9月 1日 (日)

OASIS『DEFINITELY MAYBE』(1994)

1994年8月末に発売された、OASISの記念すべき1stアルバム。ここ日本では約1週間遅れて9月初頭にリリースされています。

ここ日本でも同年初夏ぐらいから音楽誌を中心に、その名前を多く目にするようになっていたイギリスの新人バンドOASIS。とはいえ、実際に音を耳にしたのは7月に日本盤リリースされたEP『SUPERSONIC』でのことでした。同作には英シングル「Supersonic」「Shakermaker」収録曲が1枚にまとめられており、僕自身も冒頭2曲(「Supersonic」「Shakermaker」)で惹きつけられ、早くも同年秋に決定していた来日公演のチケットをどうにか手配した記憶があります(すでに複数枚確保していた友人から譲ってもらったんだっけ)。

で、決定打になったのが第3弾シングルの「Live Forever」。確か当時フジテレビで金曜深夜に放送されていた音楽番組『BEAT UK』で同曲のMVを観て、完璧にノックアウトされたのです(これ、アルバムを購入した後だったか来日公演後だったか、それともその前だったかの記憶が曖昧なのですが)。そこからのアルバム〜初来日公演だったので、そりゃあのめり込まないわけがない。

正直、ブリットポップだとかそんな言葉をまだ認識する前の出来事で、BLURに関しては先に発表されていた3rdアルバム『PARKLIFE』も普通に聴いて楽しんでいたし、それより前にデビューしたRADIOHEADSUEDEも普通に楽しんで聴いていた。OASISに関しても「懐古主義っぽいけど、なんだか面白いバンドがマンチェスターから出てきたぞ」くらいの認識だったと思います。

だって、オープニングからいきなり「Rock 'n' Roll Star」ですからね(笑)。同年春にカート・コバーン(NIRVANA)が自殺し、ようやく「アンチ・ヒロイズム」の時代が幕を降ろすのか……そう思っていたタイミングにこれですから(笑)。しかも、そう高らかに宣言するこの曲のドライブ感たるや。最高じゃないですか。

以降もサイケでグルーヴィーな「Shakermaker」、名曲「Live Forever」と続く。この頭3曲だけで完全に勝利ですよね。そこからもアップテンポの「Up In The Sky」があったり(当時の日本盤はその前に「Cloudburst」が入っていたんですよね。その流れがもはや当たり前になっているんですが)、「Columbia」「Supersonic」というズシリと響く曲が並んでいたり(当時の日本盤はその間に「Sad Song」が挿入されており……って、もうこの説明いらない?苦笑)。その後もハードな「Bring It On Down」やドーピング・グラムロック「Cigarettes & Alcohol」があり、軽快な「Digsy's Dinner」があり、泣き曲「Slide Away」があり、最後はリラックスムードの「Married With Children」で締めくくり。

オリジナル盤は11曲で50分ちょいの程よい長さですが、日本初出時のCDはプラス2曲(全13曲)で62分くらいの長尺作だったんですよ。当時はそこまでシングルも追っていたわけではなかったので(結局、「Whatever」以降英国盤シングルまでチェックするようになるわけですが)、曲の多い日本盤を重視していましたが、コンパクトで内容もギュッと締まっている英国オリジナル盤のほうが今は聴きやすいです。ま、日本盤の13曲バージョンも今聴くといろんな思い出がよみがえってきて、それはそれで懐かしいんですけどね。

良くも悪くも、その後の英ロックや日本のインディーロックシーンに多大な影響を与えた1枚(続く2ndアルバム『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』もか)。リリースから25年も経ってしまいましたが、この勢いと衝撃と完成度を超えるデビュー作がその後どれだけ世に送り出されたのか……いや、本当に数えるほどしかないですよね。そういう意味でも、この先も語り継いでいきたい名盤のひとつです。

 


▼OASIS『DEFINITELY MAYBE』
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2019年4月24日 (水)

THE CHEMICAL BROTHERS『SURRENDER』(1999)

本国イギリスで1位、アメリカでも最高14位という好記録を残した前作『DIG YOUR OWN HOLE』(1997年)に続いて、1999年6月にリリースされたTHE CHEMICAL BROTHERSの3rdアルバム。本国では引き続き1位、セールス的にも前作の倍近いダブルプラチナムを記録する大ヒット作となりました。

基本的には前作の延長線上にある作風といっていいかもしれません。が、いわゆる“デジロック”的なゴリっとしたテイスト(ビッグビート的スタイル)は後退し、より(広い意味での)テクノに接近した1枚なのかなと。それが1999年という世紀末感にフィットしたのでしょうかね、今振り返ると。

少ない音数とチープな電子音で構築されたオープニングトラック「Music:Response」は当時TV CMにも起用されたので覚えている方も少なくないかも。この曲からアッパーな「Under The Influence」、バーナード・サムナー(NEW ORDER)のボーカル(バックボーカルではPRIMAL SCREAMのボビー・ギレスピーも参加)をフィーチャーした「Out Of Control」へと切れ目なく続く3曲の流れは圧巻。これだけでも、本作は“勝った”と実感できる内容かもしれません。

そこからブレイクビーツ/ヒップホップ色濃厚な「Orange Wedge」を経て、ノエル・ギャラガー(当時OASIS)が前作の「Setting Sun」に続いて参加したキャッチーな「Let Forever Be」、8分半にも及ぶ一大抒情詩「The Sunshine Underground」とサイケデリックゾーンへ。前者は二匹目のドジョウを狙ったらより濃いものが生まれてしまったある種偶然の産物(?)でもあり、後者は「俺らが本気出せばこんなもんよ?」的な気合いが感じられる。オープニングからピークの連続みたいな作品ですが、間違いなくこの中盤はこのアルバムのクライマックスと言えるでしょう。

ホープ・サンドヴァル(MAZZY STAR)の気怠い歌声がチルな空気にぴったりな「Asleep From Day」、ブラックミュージックと同じくらいYMOからの影響も見え隠れする「Got Glint?」で少し落ち着いたところで、アゲアゲ(死語)のクラムアンセム「Hey Boy Hey Girl」で再び潮目が変わると、ポップさが際立つ「Surrender」、ジョナサン・ドナヒュー(MERCURY REV)のボーカル/アコギ/ピアノを前面に打ち出した“涅槃からのささやき”的エンドロールナンバー「Dream On」という豪華な構成でアルバムを締めくくります。

久しぶりに聴いても、やっぱりその内容/完成度は随一。ロックサイドからの入門編的には前作『DIG YOUR OWN HOLE』がとっつきやすいかもしれませんが、THE CHEMICAL BROTHERSの本質を知る上では本作から入るのがベストではないでしょうか。リリースから20年経った今も、最強のダンスミュージックアルバムです。

 


▼THE CHEMICAL BROTHERS『SURRENDER』
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2019年3月12日 (火)

THE CHEMICAL BROTHERS『DIG YOUR OWN HOLE』(1997)

1997年4月にリリースされた、THE CHEMICAL BROTHERSの2ndアルバム。前年9月に発売された、ノエル・ギャラガーOASIS)をフィーチャーしたシングル「Setting Sun」が全英1位を獲得(アメリカでも80位まで上昇)。続くアルバムからのリードシングル「Block Rockin' Beats」も全英1位に輝いたことで、アルバム自体も初登場1位という大記録を達成。アメリカでも最高14位/50万枚を売り上げる好成績を残しています。

前作『EXIT PLANET DUST』(1995年)での路線を踏襲しつつ、よりロック色を強めたこと。そして、前作でのティム・バージェス(THE CHARLATANS)やベス・オートンをフィーチャーした歌モノを、“時のバンド”だったOASISのノエル・ギャラガーを(さらには引き続きベス・オートンも)起用することで作品自体のメジャー感を強めることに成功した結果が、この1位という数字に表れているのかなと思います。

とはいえ、昨日取り上げたTHE PRODIGYの『THE FAT OF THE LAND』(1997年)同様に、このアルバムもシンプルでわかりやすく、かつロックファンにも訴求する魅力的な内容なんですよね。

ただ、それはビート的なお話であり、楽曲の構成としてはテクノならではの1コードで延々引っ張るスタイルがベース。THE PRODIGY以上にそういう側面が強いことから、全体的にデジロックと括るのはちょっと違うかなという気がします。まあ「Block Rockin' Beats」はデジロックと言われたらそうかもしれないけど、「Elektorobank」や「The Private Psychedelic Reel」あたりは違いますしね。

あと、THE PRODIGYは1曲1曲がコンパクトなものが多く、そのへんもロック的と捉えることができるかもしれないけど、THE CHEMICAL BROTHERSは4〜5分台の曲もあるにはあるけど、先の「Elektorobank」は8分台、「The Private Psychedelic Reel」にいたっては9分半もありますから。そういった点においても、リスナーの嗜好が分かれそうな気がします。

このアルバムや続く『SURRENDER』(1999年)が素直に楽しめるなら、“こっち側”にもすんなりと入っていけるんじゃないかな。個人的にはこの人たちの持つサイケデリックテイストが本当に大好きで、アルコールを入れて爆音で聴く「The Private Psychedelic Reel」や「Piku」「Where Do I Begin」あたりは気持ちいいって言葉だけでは片付けられないくらいの魅力と効力があるので。

間もなく4年ぶりの新作『NO GEOGRAPHY』がリリースされ、夏にはフジロックで再来日。ライブではハズレが一度もない彼らのこと、きっと今回も最高な“あっち側”を見せてくれるはずです。



▼THE CHEMICAL BROTHERS『DIG YOUR OWN HOLE』
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2018年9月25日 (火)

OASIS『STANDING ON THE SHOULDER OF GIANTS』(2000)

リアム・ギャラガーのソロ活動も、そしてノエル・ギャラガーのHIGH FLYING BIRDSも、おそらくこのアルバム以降の音楽性がベースになっているんじゃないか、と勝手に思っています。ということで、名盤中の名盤である初期2作を差し置いて、このアルバムをピックアップします。

2000年2月にリリースされた、OASIS通算4作目のオリジナルアルバム『STANDING ON THE SHOULDER OF GIANTS』。ボーンヘッド(G)もギグジー(B)も脱退し、残ったのはリアム(Vo)&ノエル(G, Vo)のギャラガー兄弟と、2枚目『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』(1995年)から参加のアラン・ホワイト(Dr)のみ。この3人が中心となって(ノエルがベースを兼務)、新たなプロデューサーとしてマイク・スパイク・ステント(U2ビョークDEPECHE MODEマドンナなど)を迎えて制作された、従来のイメージを覆すような(それまでのファンからしたら)異色作。

前作『BE HERE NOW』(1997年)で顕著になり始めたサイケデリック感が急増。中期ビートルズ感をさらに強めることに成功しただけでなく、適度に打ち込みと同期させることで当時主流だったダンスミュージック側にも接近し、“遅れてきたマッドチェスター”感なんかもにじみ出しちゃったりして、「僕たち、思いっきり売れちゃったから好き放題しまーす」的な意思表示にも感じられる。そんなやりたい放題なアルバムが、この4作目なんじゃないかなと。

だって、5人だったバンドが3人になり、もはやギャラガー兄弟のイエスマンしか残っていない状況なんですから(まあそれ以前も似たようなもんでしたが)、前の3枚である意味一生分稼いだわけだし、ここからは趣味としてOASISを続けていけばいいや……と思ったかどうかは知りませんが、もし本当にそうだとしたら良くも悪くもプレッシャーを一切感じさせない内容に思えてきませんか?

オープニングのインスト曲「Fuckin' In The Bushes」から自信に満ち溢れており、続くシングル曲「Go Let It Out」「Who Feels Love?」での“らしさ”と“新しさ”の融合。前作でのドーピング感を引き継ぐハードロック「Put Yer Money Where Yer Mouth Is」「I Can See A Liar」、リアムが初めて書き下ろしたオリジナル曲「Little James」、6分超えのプログレッシヴな「Gas Panic!」や「Roll It Over」に、ノエル印の哀愁バラード「Where Did It All Go Wrong?」に新境地的アレンジの「Sunday Morning Call」と、聴けば真新しさだけでなく今までのOASISらしさもしっかり残されている。なんだ、ちゃんと気を遣ってるんじゃないの?と思ったり思わなかったり。

まあ、確かに初期2作と比べればパンチが弱いですし、尺の長い曲ばかりで濃厚な前作のあととなると薄味といった印象の本作ですが、それでも嫌いになれない。彼らのアルバムの中でも比較的上位に入るくらい好きな1枚です。

きっと、本作の印象が悪いのはこのアルバムでの来日時のリアムの行動(全然声が出てない→それによるライブ短縮、もしくは5曲で離脱→残りを全部ノエルが歌う)が記憶に強く残っているからかもしれませんね(詳しくは当時のライブレポート参照)。

あ、追記。アルバム完成後に元HEAVY STEREOのゲム・アーチャー(G)と、元RIDE&元HURRICANE #1のアンディ・ベル(B)が加入。このメンツでツアーを重ねることで、次作『HEATHEN CHEMISTRY』(2002年)で再びバンドらしさが復活することになります。

 


▼OASIS『STANDING ON THE SHOULDER OF GIANTS』
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2018年9月24日 (月)

NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS『WHO BUILT THE MOON?』(2017)

リアム・ギャラガーについて書いたのだから、ここはフェアにノエル・ギャラガーの新作についても書いておかねばいけませんね。

ということで、2017年11月にリリースされたNOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS名義による3作目のアルバムです。ノエルはさすがOASISのメインソングライター(そして「Don't Look Back In Anger」の歌い手)ということもあってか、ここまでの3作すべて全英1位を獲得しています。が、シングルは「Holy Mountain」(全英31位)、「It's A Beautiful World」(同77位)、「She Taught Me How To Fly」(同71位)と、リアム同様低調です。

レコーディングは相変わらず豪華で、ジェイソン・フォークナーがベースギターでほぼ全面参加しているほか、ポール・ウェラーがオルガンで、ジョニー・マーがギター&ハーモニカでゲスト参加しております。

打ち込みを積極的に導入しつつも、ベースになるのはやはりロックバンドによる生演奏。そのバンド感をしっかり活かしつつ、派手なロックンロールナンバーやグルーヴィーなソウルチューン、涙腺を刺激するバラードなど、いかにも“OASISのノエル”らしい仕事ぶりで従来のリスナーを楽しませてくれます。

特にこの新作では、プロデューサーのデヴィッド・ホルムスの影響もあってか、ロックンロール色よりもダンス色が強まっているような。「It's A Beautiful World」なんて、その色が顕著に表れた例ですよね。そこに中期〜後期OASISのサイケでリアが加わることで、「まだOASISが続いていたら、こんなスタイルのアルバムも作っちゃったのかも……」と思わされたり。それが良いか悪いかは別として。

ただ、考えてみたらノエルってOASIS在籍時からTHE CHEMICAL BROTHERSやゴールディとコラボしたり、昨年もGORILLAZのアルバムに参加したりと、意外とそっち方面にも積極的に踏み込んでいるんですよね。そりゃあ、こんな音に前向きだったとしても当たり前といいますか。ファンならそのへん、わかってあげたいという気持ちも無きにしも非ず。

従来のリスナー/ファンからは本作、過去2作ほど評価は高くないようですね。実際、セールス的にもどんどん落ちているようですし。が、個人的にはやっと“OASISの幻影を払拭できた”意欲作ではないかと考えています。もちろん“OASISらしさ”は自然とそこに残っているのですが、意識せずにそこを消すことをしなくても今のノエルがちゃんとにじみ出る。それが3作重ねることでようやく無意識でできるようになった。そんな過渡期にある1枚なのではないでしょうか。

個人的にはマンチェスター出身の自分のルーツをストレートに表した「She Taught Me How To Fly」と、“消せないものは消せないんだ”と実感させられる「The Man Who Built The Moon」が好き。ボーナストラックの「Dead In The Water」もOASIS時代のシングルカップリング曲の“隠れた名曲”感があって、お気に入りです。

そういえば、このアルバムのツアーからOASIS時代の盟友ゲム・アーチャー(G)が参加しているんですよね。サマソニ、観ておけばよかったかな(日程的に無理だったけど)。



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2018年9月23日 (日)

LIAM GALLAGHER『AS YOU WERE』(2017)

リアム・ギャラガー、つい数日前まで来日公演を行ってましたね。昨年8月のサマソニ以来で、あのときはフェスと東京での単発ライブのみ(こちらは行きました)、しかもアルバム発売前だったから、これが初の本格的なジャパンツアー。直前になって13日の武道館公演(なんと、1998年のOASIS以来20年ぶり!)に行こうかなと思ったら、なんとその日は夜からインタビュー。仕方ないよね、そういうこともあるか。

というわけで、今日は昨年のリリース時に取り上げ忘れていたリアム初のソロアルバム『AS YOU WERE』を紹介します。

2017年10月にリリースされた本作は、OASIS〜BEADY EYEを経て届けられた正真正銘の初ソロアルバム。BEADY EYE時代に成し遂げられなかった全英1位を見事獲得しております(アメリカでも最高30位にランクイン)。「Wall Of Glass」(全英21位)を筆頭に、「Chinatown」(同56位)、「For What It’s Worth」(同33位)、「Gready Soul」(同56位)と、OASIS時代ほどではないものの、それなりにヒットシングルも生まれています。

THE BIRD AND THE BEEのグレッグ・カースティン(アデル、リリー・アレンFOO FIGHTERSなど)、そしてダン・グレック・マーグエラット(THE VACCINES、ラナ・デル・レイ、KEANEなど)、アンドリュー・ワイアット(カール・バラー、デュア・リパ、ロードなど)といったヒットチャートを賑わすアーティストの楽曲を手がけるプロデューサー陣と、ソングライティング含め本格的にタッグを組んだ本作は、一聴すると似通ったテンポ感で単調に思えますが、聴き込むと1曲1曲の作り込みがしっかりしていることに気づかされる、玄人好みの力作に仕上げられています。

もちろん、“OASISのリアム”の幻影を追い求める人もある程度納得させるだけのポテンシャルは保たれています。さすがにアッパーでドーピングマシマシ感の強いアップチューンは皆無ですが(一番それに近いのが、デラックス版のみ収録の「Doesn't Have To Be That Way」程度)、ミディアムテンポで独特のグルーヴ感でじわじわ攻めるロックチューンや、男臭さ満載で涙腺を刺激するスローナンバーで“OASISのリアム”の幻影を楽しむことができるはず。いや、それ必要なのかなぁ……と個人的には疑問なんですが(どうせライブではOASISの楽曲を披露するんだから)。

そういった楽曲でさえも、モダンなサウンド&トラックメイキングで現代的なポップスへと昇華されている。ずっと同じ場所で戦おうとせず、しっかりポップシーンのど真ん中に飛び込んでいこうとする姿勢はさすがだなと思います。デビュー作としても及第点だと思いますし、あとはOASIS時代並みにとはいわないまでも、今の時代のど真ん中をえぐるような名曲がひとつでも欲しいところ。この人はそういう歌を歌ってこそ、生き生きとするシンガーなんだから。地力がダメなら、一緒に時代を作れるソングライターとどんどんタッグを組むといい。それがノエル・ギャラガーを失った今のあなたにしかできないことなんだから。

別にOASIS再結成は望まないけど(したらしたで嬉しいか)、バンドを2つ潰して最後の砦=ソロにたどり着いたんだから、ぜひでっかい成功を収めてほしいものです。次は本作以上の“傑作”に期待してます。



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2018年1月 8日 (月)

祝ご成人(1997年4月〜1998年3月発売の洋楽アルバム20枚)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今回で4回目を迎えます。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に1997年4月〜1998年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品のうちSpotifyやAppleMusicで試聴可能な作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。

作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちらです)


Björk『HOMOGENIC』(Amazon

THE CHEMICAL BROTHERS『DIG YOUR OWN HOLE』(Amazon

CORNERSHOP『WHEN I WAS BORN FOR THE 7TH TIME』(Amazon

DEFTONES『AROUND THE FUR』(Amazon

EMPEROR『ANTHEMS TO THE WELKIN AT DUSK』(Amazon)(レビュー

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2017年8月21日 (月)

OASIS『BE HERE NOW』(1997)

1997年8月21日に世界同時リリースされた、OASIS通算3作目のオリジナルアルバム。前作『(WHAT'S THE STORY) MORNING GLORY?』(1995年)が本国イギリスのみならず、アメリカでも大ヒット。これを受けて制作された本作もイギリスで1位、アメリカでも2位という好成績を残しています。全世界待望の新作は、ここ日本でもバカ売れ。当初こそ前作を超えるセールスを記録しましたが、実際のアルバムは前作のメガヒットに対するプレッシャーが見え隠れする、非常に“Too Much”な1枚なのでした。

なにせ本作は、全12トラックで71分という超大作。先行シングル「D'You Know What I Mean?」は大ヒット曲「Wonderwall」に似たコード進行のミディアムヘヴィナンバーなのですが、これが約8分という長尺曲。ちなみにこの曲が本アルバムのオープニングトラックなのですから、初めて聴いたときはちょっと面食らってしまうわけです。

かと思うと、続く「My Big Mouth」は攻撃的なハードロックだし、ノエルが歌う「Magic Pie」はサイケデリックなミディアムナンバー(この曲も7分超え)だし。メガヒットした前作とは傾向が異なると同様していると、4曲目にいかにもOASISらしいメジャーバラード「Stand By Me」(約6分)が登場して、若干安心するという。

その後も5〜6分と若干長めの曲がずらりと並び、ジョニー・デップがスライドギターでゲスト参加したヘヴィブルース「Fade In-Out」、1stアルバム『DEFINITELY MABYE』(1994年)収録の「Slide Away」にも匹敵する泣きのバラード「Don't Go Away」、軽快というよりも能天気なタイトルトラック「Be Here Now」、OASIS版「All You Need Is Love」+「Hey Jude」な9分超の大作「All Around The World」(アルバムラストのリプライズを付け加えれば11分超え)など、1曲1曲を取り上げれば魅力的な楽曲が多いのですが……とにかく全体的に長すぎて、1曲目からラストまで通して聴こうという気になかなかなれないのが難点。最初から「アナログでいうところの2枚組」アルバムと納得ずくで聴けばいいのかもしれないけど、にしても……1曲が長いからなぁ。

というわけで、リリース当時は最初こそ「OASISの新作!」と喜んで何度も聴き返しましたが、半年もすれば自然と手が伸びなくなったのは言うまでもありません。

で、あれから20年経った今。現在来日中のリアム・ギャラガーは自身のライブで本作から「D'You Know What I Mean?」と「Be Here Now」の2曲を取り上げているんです。非常に謎な選曲ですが、リリース20周年って意味合いもあるんでしょうか。本当に謎すぎます。

それで、久しぶりに聴き返した本作。1曲の中にあれこれ詰め込もうとした結果、どんどん長くなっていったということなんでしょうね。その諦めの悪さがよろしくない方向に作用してしまった惜しいアルバムだなと、再認識しました。

が、先に書いたように曲単位では印象的なものも多いので、このタイミングにじっくり聴き込んでみるのもいいかもしれませんね。

なお、本作は昨年リマスタリング&3枚組仕様で再発されています。本編がただでさえ長いのに、ボーナスディスク2枚て……まぁこちらはマニア向けってことで(ただ、「Stay Young」などシングルカップリング曲に魅力的なナンバーも多いので、気が向いたらチェックしてみるとよいかも)。

 


▼OASIS『BE HERE NOW』
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