OBITUARY『DYING OF EVERYTHING』(2023)
2023年1月13日にリリースされたOBITUARYの11thアルバム。日本盤未発売。
セルフタイトルとなった節目の10作目『OBITUARY』(2017年)から約6年ぶりの新作。当初は2021年に発表予定だったそうですが、ご存じのとおり昨今のコロナの影響が災いし、予定よりも2年近くも多くの時間を要することになってしまったようです。しかし、ただ遅延させるだけでは物足りなかったのか、2022年夏には1stアルバム『SLOWLY WE ROT』(1989年)と2ndアルバム『CAUSE OF DEATH』(1990年)のそれぞれ完全再現スタジオライブ音源+映像入りBlu-rayセットをリリースし、見事に間をつないでいます。
こうして、ようやく届けられた新作ですが、オープニングの「Barely Alive」のスピード感にまず圧倒されます。うん、これは素直にカッコいい。ジョン・ターディー(Vo)のボーカルもシンプルにカッコいいし、ギター2本の絡みも、リズム隊の土台を固める鉄壁さも文句なし。
続く「The Wrong Time」以降はミディアムテンポ中心の、いわば王道のOBITUARY節の連続。M-3「Without A Conscience」でののたうち回るようなリフワーク&グルーヴィーなリズムは“これぞOBITUARY”と断言できるもので、この冒頭3曲で掴みは完璧です。かと思えば、M-4「War」ではジョンの獣のような咆哮を存分に味わえ、タイトルトラックとなるM-5「Dying Of Everything」では小気味良いリフの刻みと疾走感の強いビート、ジョンの雄叫びがひとつの塊となって脳天を直撃します。
アルバム後半も、ストレートなヘヴィメタル的リフと彼ららしいリズム感で聴き手を魅了する「My Will To Live」や「Torn Apart」、重戦車のようなリズムセクションと“ギターの壁”のアンサンブルが気持ち良い「By The Dawn」や「Weaponize The Hate」などの王道ナンバーが連発され、最後は地獄の底から死者が這い上がってきそうなおどろおどろしさを醸し出す「Be Warned」で締めくくり。全10曲/約44分があっという間に感じられる構成です。
目新しさは皆無。いつも通りちゃあいつも通りの内容ですし、それなりに聴きやすいといえば確かにそう。もはや4thアルバム『WORLD DEMISE』(1994年)あたりで試した実験的要素で道を踏み外すこともありません。それ故に、人によっては退屈と感じるかもしれない。デスメタル自体はもはやHR/HMの枠内では特殊なジャンルではないものの、ここまでピュアなデスメタル自体は聴き手を選ぶかもしれない……本作はそんなことを感じさせる1枚でした。OBITUARYに求める要素は完璧に揃っているはずなので、その手の方向性が好きな方は心置きなくお楽しみください。
……でも、初期の作品と比べたらだいぶ聴きやすいので、OBITUARY入門にも最適だと個人的には思っているのですが、いかがでしょう?
▼OBITUARY『DYING OF EVERYTHING』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)