‥‥いよいよ禁断の扉を開けてしまいますよ。今年の夏フェスで2度彼等を観る機会を得て、その際に比較的好意的(そうか!?)な感想を書いてきたORANGE RANGE。昨年12月の2ndアルバム「musiQ」からたったの10ヶ月で発表された3rdアルバム。全19曲、77分超という大作に仕上がってます。考えてみればこの10ヶ月の間にもシングルを連発("*〜アスタリスク〜"、"ラヴ・パレード"、"お願い!セニョリータ"、"キズナ")し、アメコミ映画「ファンタスティック・フォー」サントラにデビュー曲 "キリキリマイ" のリミックス収録(今回のアルバムにも収録)等、音楽面での話題づくりも絶え間なく続きました。そんな中でのドラマー脱退等トラブルもありましたが、このペースでこの熱量・力量を持った作品集を作り上げてしまう勢いは、ただただ圧巻ですわ。
俺、世間が言う程このバンドのことをバカにしてないのね(ネタにはするけどさ)。パクリ云々は、それすらひとつの才能だと思うし(彼等のことをパクリバンド呼ばわりしてバカにしてる洋楽ファンの方々は、LED ZEPPELINの初期作収録曲の多くがブルーズナンバーからの大パクリ大会してるっていう事実はご存じなんですよね、当然ながら)、まぁただパクリだけでここまできたんなら、そろそろボロが出てもおかしくないですよね。そういう意味も含めて、今回この新作を手に取ってみたわけですよ。
全19曲中、既出曲は先のシングルナンバーとリミックス曲の5曲。他の14曲が今回のアルバム用にレコーディングされた楽曲ということになるのでしょうか。最初聴いた印象ですが、思った以上に物腰の柔らかい、柔軟性を持ったバンドだなぁと。いや「バンド」というより「ソングライター」と置き換えた方がいいのかしら。アレンジ含めて、いろいろ遊んでるのが判る。ラップボーカルが多いけど、だからといってヒップホップ中心というわけでもなく、また初期みたいなゴリゴリのヘヴィロック色も後退してるように感じられる。その代わりに前面ににじみ出てきてるのが、テクノポップ的な要素と、昨年の大ヒット曲 "花" に代表されるようなメランコリックなミドルポップチューン。"上海ハニー" や "ロコローション" 的な要素はそこまで高いってわけでもないのね。あくまでシングル用の「判りやすさ」ってことなのか。
77分という時間は確かに俺みたいに移動中に音楽を聴く頻度が高い人間には少々厳しいものがありますが、それだけ「出来たものを全部詰め込みたい」っていう衝動があったのか‥‥GUNS N'ROSESの「USE YOUR ILLUSION」みたいなもんか。ま、あれよりはちゃんとアルバムの構成しっかりしてますが。全てが全て高品質とは言い難いけど、でもその勢いみたいなものは十分伝わってくる。だから怖いんだよな、このバンド。正直嘗めてた部分もあったと思う。ライヴで聴いたアルバム曲(前作収録曲か?)はピンとこないものが多かった中、ここで耳にできる新曲群は個人的ツボにハマる曲が多いし、アルバム通して聴けばその勢いに圧倒される。
周りが言うほど、実はパクリパクリした曲が今度のアルバムの中には少なくなってるように思うんだけど、どうだろう? スパイスとしての「インスパイアされた元ネタ」はあるんだろうけど、あからさまなのは正直なかったと思う(俺が気づいてないだけか)。俺、前からいろんなところで書いてきてるけど、結局'90年代以降の音楽って「ヒップホップ以降」‥‥つまり「サンプリング文化」だと思うんですよ。ある程度出尽くしてるわけじゃないですか、音楽って。まっさらな新しいジャンルなんてそうなかなか出てこない。結局は何かと何か、既存のものを掛け合わせたり足したり割ったりして工夫してる。そういうのが当たり前のようにまかり通るようになったのって、結局ヒップホップの功罪だと思ってるんですよ。そういう意味でこのORANGE RANGEを考えると、もっとえげつなくやってる、だけど意外とスマートに聞こえる(のは俺だけか?)。そこに若さなりルックスなり話題性なりも加わり、現在のような成功を手にした。たったそれだけのことなんですよね。ま、その「たったそれだけ」が一番難しいことなんですけど。
「ちゃんと聴いて批評しろよ!」というのは簡単ですよね。表面的な部分(テレビやラジオから流れるシングル曲やそのルックスや発言等)だけで彼等を判断するのも、まぁ仕方ないことではあるんですが、やっぱ俺のスタイルじゃないわけですよ、そういうのは。余所の掲示板とかでみんなでワイワイやればいいじゃない、そういうのは。別に俺は音楽そんなに詳しいとは思わないし、俺よりももっといろんなジャンルを数多く聴いてる人も沢山いるし。そういった人達がORANGE RANGEをどういった形で批評しようがそれはその人達の自由。だったら俺も自由に書くよ、と。こういう見方もあるよ、と。いいじゃん、俺みたいな「判ってない奴」がひとりくらいいても。感情的で結構。暑苦しくて結構。ウザくて結構。「好きなものを好きと言える場所」がここなんだから。今後も好き放題書かせてもらいますよ。
というわけでこの「ИATURAL」、決して今年のベスト10枚に入るような代物ではないけど、結構気に入って頻繁に聴いてます。シングル曲を飛ばして、アルバム曲のみを聴くっていう傾向が強いですが。これよりクオリティの高い「ポップアルバム」は、今年の日本ではそんなにないんじゃないのかな?(っていうのは言い過ぎか)

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