2002/11/04

OUTRAGE『LIFE UNTIL DEAF』(1995)

「日本のロック史に残る傑作」と書いたのは、現在でもHM/HR専門誌「BURRN!」にて記者をしている前田岳彦氏だったけど、この言葉に偽りなし。それがこのOUTRAGEが'95年に残した通算6作目のフルアルバム「LIFE UNTIL DEAF」。

このアルバム、ずっと前から紹介したかったんだよね。以前、余所のサイトの管理人さん達と3人で合評でこのアルバムを取り上げようとしたことあったんだけど、それが結局流れてしまって。その後、「猿メタル」でも『モダンヘヴィネス/ラウドロック好きにもアピールするアルバム』として紹介しようと考えたこともあったけど、それも何か違うような気がして。そんな枠を作って偏見を持たれてしまうには、本当に勿体ない作品だと常々思っていたので。

で、何故かここ最近になってまたこのアルバムや一連の作品群(傑作「THE FINAL DAY」や問題作扱いされることの多い「SPIT」等)を聴き返す機会が何度かありまして。何でかなぁ‥‥と思い返してみたら、そうか、伊藤政則のテレビ番組観たからだ、と。「BEAST FEAST 2002」の特集やってたんですよ。で、昨今のラウド系のPVをいろいろ観ていたら、急にOUTRAGEが聴きたくなってきて‥‥

OUTRAGEを知らない人の方が多いと思うので、ここで簡単に紹介を。'80年代前半に名古屋にて結成された4人組で、当初はスラッシュメタル・バンドとして紹介されていました(既に「スラッシュメタル」なんてジャンルすら死語のような気がしますが‥‥要するに、METALLICAやSLAYERといったバンドがその初期にやっていた、スピード感あるビートに切り刻むようなギターリフを持ったタイプのメタルのことを言います。それまでのメタルよりもパンク的要素が強いのも特徴)。中には「日本のMETALLICA」なんて声もあった程で、音楽的にもそれらのバンドが影響を受けたようなマイナーなブリティッシュメタルバンドからの影響を色濃く出していて、またボーカル・橋本直樹('99年9月に脱退)の歌唱法もMETALLICAのジェームズ・ヘッドフィールドのそれに似ていたことも大いに関係してまして。

バンドは'87年に自主制作EP「OUTRAGE」で話題を呼び、翌年メジャーから「BLACK CLOUDS」でデビュー。その後「BLIND TO REALITY」('89年)、「THE GREAT BLUE」('90年)と順調にリリースを重ねた後、'91年にリリースした4作目「THE FINAL DAY」でメタルファンの間でも大ブレイク(このアルバムは初の海外レコーディング/初の海外プロデューサーという初づくしの作品だった)。このアルバムはヨーロッパでもインディーレーベルからリリースされ、それを切っ掛けに初期の3作もリマスターされて再発。

'92年にはPANTERAの初来日公演のオープニングを勤めたり等して知名度を更に上げ、レコード会社もポリドールからイーストウエストに移籍。翌年にはミドルテンポ中心の異色ヘヴィ作「SPIT」を発表。今でいうモダンヘヴィネスを彼等流に解釈した内容だったんだけど、ファンからは問題視されることが多かった1枚でもあったりして(ちなみに俺、楽曲や演奏は凄く好きなんだけど、ミックスが‥‥)。

バンドは'95年に今回取り上げた「LIFE UNTIL DEAF」の後に同年末にポリドール時代のベスト盤「DAYS OF RAGE」、'97年にオリジナル7作目「WHO WE ARE」、同年7月にデビュー10周年を祝う企画盤「IT'S PACKED」(2枚組ミニアルバムで、1枚に最新ツアーの音源5曲、もう1枚に'87年にリリースされた自主制作盤「OUTRAGE」の初CD化音源という豪華盤)をリリース。そしてこれからという時期に‥‥'99年9月にボーカルの橋本脱退。これによって当時完成していたミニアルバムもお蔵入り。現在は新ボーカルを入れることなく、残された3人で活動している(ギターの阿部がシンガーを勤めている)。

‥‥とまぁ、こんか感じです。メタルの範疇で語られることの多かった彼等だけど、イーストウエストに移籍後の作品‥‥「SPIT」「LIFE UNTIL DEAF」「WHO WE ARE」の3枚は、メタルの枠に留まらない、今でいえばそれこそニューメタル/ラウドロック/モダンヘヴィネスとして扱われる音楽性なわけですよ。つまり、彼等の登場~成長が時代よりも早すぎたんだと思うんですよ。

確かにメロディやギターソロのフレージング、アレンジ等はよりメタリックだけど、例えばこれらの音って、今のMAD CAPSULE MARKETS辺りに大いに影響を与えているんじゃないでしょうか? 勿論、OUTRAGEもMADも同時代を生き抜いてきたバンド達であって、どちらがどちらをパクッたとか影響を与え合ったとか一概には言えないと思いますが、少なくとも昨今のMADのスラッシーでメタリックな楽曲を聴く度に、俺は「もしかしたらOUTRAGEがこのポジションにいたかも‥‥」なんて思ってましたし。橋本直樹という類い希なるシンガーが起こした奇跡、それがこの「LIFE UNTIL DEAF」だと思ってます。

勿論、橋本だけじゃありません。リズム隊のプレイも的確でグルーヴィーだし、何より特筆すべきなのは阿部のギターワークですよ。メタル好きの人にはたまらないツボを押さえたソロプレイは勿論、やっぱりこのバンドの要となるリフワークはかなりのものがあると思います。"Megalomania"でのコードを崩したようなプレイ(文字では上手く表現できないので、是非一聴を!)なんて当時は「おおっ!」と唸ったものです。

MADとの比較をしましたが、MADにあってOUTRAGEにないもの。それは「デジタル」と「ヒップホップ」の要素でしょう。逆に、それらふたつがあったからこそ今のMADがあるのであって、これらふたつのバンドがこれまで比較されることが殆どなかった理由となっているのでしょう。パンク的なものからスタートしたMAD、メタルからスタートしたOUTRAGE。双方出発点は違いますが、この時期('90年代半ば)にやっていたことには意外とクロスオーバーする点があるのではないでしょうか?

さて、話題をアルバムの方に戻しまして‥‥とにかく捨て曲なし、ファストでラウドでメロウでヘヴィ。確かにこれよりもラウドでヘヴィなアルバムはその後幾つも登場しましたが、歌詞の面においてもここまでヘヴィな作品はそうはないのでは? 勿論、全て英語詞で唄われているので全てを完全に理解することは出来ませんが、封入された英訳される前の原詞に目を通すと、かなり精神的にグググッとくる内容なのに気付きます。

そしてそれらの歌詞を更に重いものへと導くサウンド。こっちも凄いことになってます。HM/HR界での大御所プロデューサーであるマイケル・ワグナー(METALLICA「MASTER OF PUPPETS」のミックスやSKID ROWの1st & 2ndのプロデュースで有名)が手掛けたサウンドの素晴らしさは、当時の日本にはまだなかったような「音像」を作り出すことに成功しています。

楽曲の素晴らしさは言うまでもなく、特筆すべき曲は幾つもありますが、OUTRAGEを知らない若い世代に特に聴いて欲しいのは歴史的名曲である1曲目"Megalomania"、泣きのメロディが心を打つ"Vanishing Fully From The World"、日本の和太鼓集団「鬼太鼓座」のプレイをフューチャーした9分もあるヘヴィ大作"In Union With Earth"、サイケなパンクナンバー"Echo"、BLACK SABBATHや当時のPANTERAも真っ青なスロウヘヴィな"Draggin' Me Down (Fear Is)"、デビューから8年経っても基本は忘れない高速スラッシュナンバー"You Suck"等々。勿論、ここに名前を挙げなかった楽曲も特に劣るわけではないのでご心配なく。「ラウド系は嫌いじゃないけど、最近のラップっぽい歌が苦手」という人。大丈夫です。彼等はラップに逃げません。ちゃんとメロディを唄っています。しかも、かなり胸を打たれるようなメロもあるので、聴く人が聴いたらハマッたまま抜けられなくなるかも

厳密にいえば、確かにここに収められた音はヘヴィメタルのそれ、そのものかもしれません。しかし、今流行っている(流行ってるのかホントに?)ニューメタルというバンド達の音だって、この俺からすればOUTRAGEの音と何ら変わらないわけですよ。呼び名やジャンルこそ細分化されているものの、基本的に彼等がやっているのはハードロックでありヘヴィメタルなわけですよ。ならば、このOUTRAGEだってメタルであって、また逆にメタルでなくてもいいわけです。間違いなく「rockin'on」辺りでは取り上げられることのないタイプのバンドだと思いますが、'90年代の日本の音楽シーンを語る上で欠かすことのできないアルバムだと個人的にはずっと思っていました。

多分廃盤にはなっていないと思いますし、中古盤屋で見つけるのも難しくない作品だと思います。昨今のヘヴィ系好きも、メタルに縁が薄い人も、まずはこのアルバムから聴いてみて下さい。ホント、いいアルバムなんで!



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投稿: 2002 11 04 03:06 午後 [1995年の作品, Outrage] | 固定リンク