2018年10月30日 (火)

PANIC! AT THE DISCO『PRAY FOR THE WICKED』(2018)

2018年6月にリリースされた、PANIC! AT THE DISCO通算6枚目のスタジオアルバム。初の全米No.1を記録した前作『DEATH OF A BACHELOR』(2016年)から2年半ぶりの新作で、引き続き今作も全米1位を獲得しています。

前作からブレンドン・ユーリー(Vo)のソロ体制となったPANIC! AT THE DISCOですが、そのアルバムではソロだからこそなし得た「エレクトロ+サンプリング+ソウルフルな歌モノ」という、過去のスタイルをより推し進めた新たな個性を確立。もはやバンドだとかエモだとか、そういった括りがどうでもよくなるほどにポップで親しみやすいサウンドへと進化し、初期のちょっとゴシックなスタイルはどこへやら……と、『A FEVER YOU CAN'T SWEAT OUT』(2005年)が大好きだったリスナー(自分含む)は置いてきぼりを食らうのです。

が、その後に観たライブ(2016年のサマソニ)では、ビジュアルこそ変化したものの、芯にあるスタンスは変わっていないことに気づかされたりもして。そこから再び『DEATH OF A BACHELOR』に触れるとなるほど、と納得させられる部分も多かったのでした。

この新作も基本路線は変わっていないように思います。いや、むしろ初期の『A FEVER YOU CAN'T SWEAT OUT』を愛聴していた層にもひっかかるフックが豊富に用意されているように感じられました。

古き良き時代のアメリカンポップスやスタンダードナンバーを現代的な解釈(サンプリングを用いることでモダンさとエヴァーグリーンな感覚を残す、かつエレクトロという現代的な要素も忘れない)でビルドアップし、それをブロードウェイミュージカルのような手法で提供する。これこそがPANIC! AT THE DISCOが本来やろうとしていたことではないでしょうか。

それを初期はバンドという形で表現しようとしたものの、あるタイミングに歪みが生じ、1人離れ、また1人離れ、気づけばブレンドン1人になった。結果、ブレンドンが本来やりたかったことを、作品ごとに適したブレインとともに具現化していく。特に今作は前作での成功を踏まえ、全体的にポジティブさに満ちているように感じられ、それがショーアップされたスタイルに散りばめられることでより一層多幸感に満ちた内容となった。前作よりも即効性が強いのはそこも影響しているのかな。そりゃあ売れるわけですよ。

正直、『PRETTY. ODD.』(2008年)以降のPANIC! AT THE DISCOに関してはどこか誤解していた(あるいは、表現する側の焦点がぼやけていた)ところもありましたが、この新作は一点の曇りもない極上のポップアルバムであり、気持ちよく楽しめる1枚です。



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投稿: 2018 10 30 12:00 午前 [2018年の作品, Panic! at The Disco] | 固定リンク

2006年7月 9日 (日)

PANIC! AT THE DISCO『A FEVER YOU CAN'T SWEAT OUT』(2005)

今年の「PUNKSPRING」で初来日を果たしたPANIC! AT THE DISCOというバンド。デビュー時代は昨年秋なんだけど、ブレイクした感が強いのは今年に入ってから、特にこのイベント前後からじゃないかな。4人組でエモの流れにあるサウンドを上手いこと打ち込みダンスビートと組み合わせたりして、心地よいナンバーを聞かせてくれるのが、この『A FEVER YOU CAN'T SWEAT OUT』という作品。

実は彼らもビジュアルイメージが派手で、もしかしたら昨今の「ゴスメイク系」の流れになるのかな、という気も。ただ世間的に今注目されている「ゴス」というよりは、モロに「ゴシック」系という感じかしら。THE DRESDEN DOLLSなんかもゴスの流れにあるけど、NINE INCH NAILSとの対バンツアーでもわかるように、やっぱり「ゴス」じゃなくて「ゴシック」なんだよね。ま、同じジャンルだとは思うけど、ちょっと流派が違うみたいな? わかりにくいかもしれないけど。

俺、最初に彼らの楽曲を聴いたとき、MY CHEMICAL ROMANCEからパンクやハードロックが持つ攻撃性みたいなにを取っ払って、もっと芸術性を高めた……みたいなイメージを受けたのね。実は地続きなんだけど、到着点が違ったみたいな。そういう意味では、ルーツはみんな一緒なんだと思う。けど、それぞれが違った方向性を見つけ、到着点がバラバラだったと。それが一気にシーンに登場した時期が重なった、と。そういうことなんでしょね。恐らく年代的には近いんじゃないかしら。

エモコアともスクリーモとも違う、もっとゆったりしたテンポの楽曲が多く(とはいっても、その流れにある疾走感の強いナンバーもあるにはあるけどね)、シンセサウンドや打ち込みダンスビートを重ねることでバンド名みたいにフロアでかかっていても違和感のないナンバーも見受けられる。中世っぽいビジュアルイメージも面白いし、単純に売れる音なんじゃないかと。もちろん、それだけでは終わらない「something special」も存分に感じられますけど。もっとも、それを見出せるかは、聴き手の接し方次第だと思いますが。

あー、ライブ観たいね、小さい会場で。サマソニで再来日すると思ってたんだけど、年内にもう1度、O-Eastくらすで来日しないかしら(AXだとデカい気もするので)。



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投稿: 2006 07 09 06:31 午後 [2005年の作品, Panic! at The Disco] | 固定リンク | コメント (1)