BODOM AFTER MIDNIGHT『PAINT THE SKY WITH BLOOD』(2021)
2021年4月23日にリリースされたBODOM AFTER MIDNIGHTの、最初で最後のEP。
このバンドは2019年末をもって解散したCHILDREN OF BODOMのフロントマン、アレキシ・ライホ(Vo, G)が、同バンドから完全に手を引き新たに結成したバンド。メンバーはアレキシのほか、チルボド最終作でもギターを弾いていたダニエル・フレイベリ、PARADISE LOSTのワルッテリ・ヴァユリュネン(Dr)、元SANTA CRUZのミトヤ・トイヴォネン(B)の4人。ここにライブサポートメンバーとしてラウリ・サロマー(Key)を加えた編成で、2020年10月23日にフィンランドで初ライブを実施し、この際にはチルボド時代の楽曲も披露していたそうです。
バンドはすでに1stフルアルバムに向けて作業を進めていたようですが、残念ながらアレキシが同年12月末に急逝。この情報が翌2021年1月4日に発表されてからしばらくして、BODOM AFTER MIDNIGHTはすでに完成していた3曲とMV1本を世に送り出すことがアナウンスされたわけです。
結局フルアルバム完成には至らず、このEPに収められた3曲(とタイトルトラック「Paint The Sky With Blood」のMV)がアレキシの遺作となってしまったわけですが、この3曲を聴けば“チルボドのその先”に何を見出していたのか、何を作ろうとしていたのかがご理解いただけるはず。初期からブレイク期までのチルボドの良いとこ取りなサウンド&世界観を2020年代版にビルドアップさせ、新たなメンバーで表現しようとしていたことがタイトルチューン1曲からも存分に伝わります。
本作はもともと、フルアルバムに先駆けたEPとして用意されたもので、オリジナル曲は2曲のみ。残りの1曲はバンドのルーツが垣間見えるカバー曲となっています。これまでチルボドではヘアメタルやコアなメタル、さらには意外な80'sポップスなど、アレキシのルーツを散りばめたカバー曲を楽しむことができましたが、今回チョイスされたのはスウェーデンのエクストリームメタルバンドDISSECTIONの「Where Dead Angels Lie」でした。ブラックメタルの流れを汲む楽曲にここで挑戦することは、続くオリジナルアルバムにもその香りが感じられるのではないか。そう思わずにはいられません。オリジナル2曲でみせたキャッチーなスタイルと、マニアックでダークなカバー曲。この3曲からどんな未来が見えるのか……今となっては叶わぬ夢ですが、聴いてみたかったなあ。
フレイベリはこのEP発表にあわせて、「アレキシなしではBODOM AFTER MIDNIGHTは成立しない」とバンドの活動継続を断念。アレキシのいない“BODOMと名のついたバンド”を続けるのはナンセンスですものね。
あのお家騒動がなくても、健康問題を抱えていたアレキシの運命は変わらなかったのかもしれない。だけど……この未来を感じさせるEPを聴いていると、そんな複雑な気持ちで心がグチャクチャになってしまいます(だから、リリースからしばらく手をつけられなかったんだよね)。
でも、今はこの素晴らしいEPを何度も繰り返し再生することで、アレキシのことを忘れずにいようと、少し前向きになれました。最後まで、本当に素敵な作品をありがとう。
▼BODOM AFTER MIDNIGHT『PAINT THE SKY WITH BLOOD』
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