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カテゴリー「Paul McCartney」の10件の記事

2020年12月22日 (火)

PAUL McCARTNEY『McCARTNEY III』(2020)

2020年12月18日にリリースされたポール・マッカートニーの18thアルバム(ポール&リンダ・マッカートニー名義の『RAM』を含めると、通算19作目のソロアルバム)。

36年ぶりに全米No.1を獲得した前作『EGYPT STATION』(2018年)からほぼ2年ぶりという、最近のポールにしては非常に短いスパンで制作されたオリジナルアルバムですが、2020年というコロナ禍の中だったからこそ生まれた、偶然かつ必然の1枚なんでしょうね。

『McCARTNEY』(1970年)でのソロデビューから今年で50年というのも大きいのでしょうか。『McCARTNEY II』(1980年)以来40年ぶりにセルフタイトルシリーズ第3弾を制作するということで、今作でも過去2作での通例にならって、ほぼすべての楽器をポールひとりで演奏。ただ、過去作とは異なり、今作では「Slidin'」でのみラスティ・アンダーソン(G)とエイブ・ラボリエル・Jr.(Dr)の2名が参加しております。また、過去2作ではセルフプロデュースで臨みましたが、今作では『EGYPT STATION』でタッグを組んだグレッグ・カースティンが「Slidin'」のみコ・プロデュースで名を連ねています。かなりモダンなハードロック的色合いのカッコよさを持つこの曲、メンツ的に考えて『EGYPT STATION』制作時のアウトテイクなのかもしれませんね。

ロックダウン期間に自宅スタジオにこもって制作された本作ですが、良い意味で派手さを伴った前作と比較すると非常に地味です。ですが、その地味さは『McCARTNEY』の頃とはまた質感の異なるもので、最近のポールらしいポップさは随所に散りばめられているものの、もっと玄人好みな仕上がりというのが正しいのでしょうか。一聴して「おお、すげえ!」と感動するような仕上がりではないものの、何度も聴き返したくなる作風なんですよね。

また、過去2作が当時置かれた環境からの打破、解放を狙ったものだったのに対し、今作は単純に「やりたいことに徹底し、細部にまでこだわり作り込む」といった気概がより伝わります。もちろん前2枚にもそういった姿勢は備わっていたかと思いますが、過去作はそれ以上に実験的要素が強かったと思うんです。それに対し、本作は実験というよりは“信念の追求”というテイストが強い……そんな印象を受けました(8分半におよぶ「Deep Deep Feeling」のみ実験色が強めですが)。だからなのか、聴いていても難しいと感じることもないし、多少マニアックではあるものの非常に“ポールらしい”と受け取ることができるのです。

なお、本作には1992年9月に制作された「When Winter Comes」がラストに配置されています(オープニングナンバー「Long Tailed Winter Bird」からのエピローグ的構成の「Winter Bird / When Winter Comes」名義で収録)。タイミング的には『OFF THE GROUND』(1993年)を完成させたあとでしょうか。この曲のみポールの声が若干若いくて、思わずクスッとしてしまいますが、いかにも90年代前半のポールらしいメロディの運びはほかの楽曲と質感が異なるものの、「Long Tailed Winter Bird」のワンフレーズとくっつけることでこの作品に合ったテイストに生まれ変わっていて、違和感なく楽しめるしエンディングにもぴったり。全然アリだなと思いました。

確かに即効性の強さはないかもしれませんし、軽く触れただけだったら駄作の烙印を押されてしまう可能性もはらんでいます。しかし、何度も聴き込むことで、表層からは伺えない深みを味わえる。ある意味では2020年という時代にもっとも反した作風かもしれませんが、それでも僕はこういう良作を支持したいと思います。

 


▼PAUL McCARTNEY『McCARTNEY III』
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PAUL McCARTNEY『McCARTNEY II』(1980)

1980年4月にリリースされたポール・マッカートニーの2ndアルバム。ポール&リンダ・マッカートニー名義での『RAM』(1971年)を含めると、通算3作目というカウントになります。

純粋なソロ名義では『McCARTNEY』(1970年)以来10年ぶりですが、その間にはWINGSとしての活動に注力しており、7枚ものスタジオアルバムとライブアルバム&ベストアルバムを各1枚ずつ発表。相変わらずその多作ぶりには驚かされるものがあります。

そのWINGSの、結果としてラストアルバムとなった『BACK TO THE EGG』(1979年)のリリース時期には制作に取り掛かっていた今作。『McCARTNEY』の続編という意味を示すタイトルからもわかるように、『McCARTNEY』同様すべての楽器をポールが演奏するというDIY精神に満ちた内容になっています。ただ、前作から10年も経ったことで、録音技術や楽器テクノロジーも進化し、1970年当時は4トラックだった録音機材も1980年前後には16トラックにまで進歩。さらにシンセサイザーといったハイテク(笑)機材も大々的にフィーチャーされるようになりました。

このアルバム、オープニングを飾る「Coming Up」(全米1位/全英2位)のキャッチーな印象が強いものの、実はここまで突き抜けた1曲というのはこれくらい。もちろん全体のクオリティは高く、ポップ/ロックアーティストとしてのポールの魅力は存分に伝わるのですが、WINGSを離れてのガス抜きという側面も含まれていることから、やはり本作は『McCARTNEY』の続編なんだなと強く実感させられます。

そういったこともあって、本作ではポールの根っこの部分にある地味で落ち着いた側面も描かれているのですが、前作がアコギベースだったのに対して、今作では「Waterfalls」などに見られるようにエレピをはじめとする電子機器を軸にしているのは大きな違い。「Temporary Secretary」や「Front Parlour」では当時流行していたテクノ/テクノポップからの影響が伺える、シンセ中心の派手な楽曲に仕上がっており、そういった意味では本作もまた実験的な1枚と言えるのではないでしょうか。

また、「Front Parlour」や「Frozen Jap」のようなインストナンバーからは、ドイツのKRAFTWERKや当時海外でも注目されていた日本のYELLOW MAGIC ORCHESTRA(YMO)からの影響も見え隠れします。特に「Frozen Jap」は日本を題材にした楽曲ということもあって、和テイストのメロディ含めYMOからの英曲が強いのではないでしょうか。ただ、タイトルに“Jap”という蔑称を用いているあたりに、当時のポールの日本に対するイメージも感じ取ることができます(本作リリースの数ヶ月前、ポールは1966年のビートルズ初来日以来となる日本公演をWINGSとして行う予定でしたが、税関で大麻所持を摘発および日本公演中止。以降、ポールの再来日公演は1990年3月まで待たねばなりません)。

さらに、本作リリースの約半年後となる12月8日には、ビートルズ時代の盟友ジョン・レノンが射殺されこの世を去るという衝撃的な事件も起こります。全米3位/全英1位という好成績を残した本作をドロップした年ではあったものの、ポールにとっての1980年は非常に暗い影を落とす、大きなターニングポイントになったのではないでしょうか。

なお、2011年にリイシューされた本作のリマスター盤のスペシャル・エディション(CD2枚組)およびデラックス・エディション(CD3枚組+DVD)には、この時期にはおなじみのクリスマスソング「Wonderful Chrismastime」も追加収録。オリジナルの10曲(現在は「One Of These Days」を加えた11曲)仕様ももちろん良いですが、アウトテイクや同時期に制作されたアルバム未収録曲を含むこちらのエディションもオススメです。ストリーミングでも気軽に楽しめますので、ぜひ本編を存分に味わったあとにお楽しみください。

 


▼PAUL McCARTNEY『McCARTNEY II』
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PAUL McCARTNEY『McCARTNEY』(1970)

1970年4月にリリースされたポール・マッカートニーの1stソロアルバム。

ジョン・レノンの内々での脱退表明(1969年秋)により、ほぼ解散確定となったTHE BEATLES。残されたアルバム『LET IT BE』(1970年)の追加レコーディング(1970年初頭)をジョン抜きで行うのと前後して、ポールは初のソロアルバムの準備に取り掛かります。

ビートルズの喪失という彼にとって非常に大きな影を落とすことになった出来事が影響してか、本作で表現されているサウンドや楽曲は非常に内省的で落ち着いたトーンのものばかり。バンドという形態をとらずに、すべての楽器をポールひとりで担当したというのも、その孤独さを体現するのにぴったりだったのかもしれません。

もちろんポールらしいポップさは随所に感じられますが、突出した特別な1曲というのは終盤に配置された「Maybe I'm Amazed」くらいか。「Oo You」などいかにも彼らしいロックナンバーも収録されているものの、いかんせん地味さが優っており、『LET IT BE』や『ABBEY ROAD』(1969年)からの流れ(制作順。リリースは『ABBEY ROAD』〜『McCARTNEY』〜『LET IT BE』の順)で聴くと精彩さに欠ける印象も受けます。全13曲中5曲がインストナンバー、かつアコースティックベースの穏やかな楽曲が多いこともそういったイメージに拍車をかけているのかもしれません。

ただ、人間関係のもつれで終焉を迎えたビートルズから解放された感も伝わる1枚でもあり。自身ですべてのソングライティング/演奏を手がけたトータルプロデュースはジョンとのコンビ時代にはなし得なかったことで、そういった鬱憤が一気に爆発した結果、やりたいことを全部やったら意外と地味だったということなんでしょうね。シングル曲皆無ですし、今でもほぼ必ず演奏される名曲「Maybe I'm Amazed」を除いてはライブで披露される機会もあまりない楽曲ばかりですが、ポールのソロがここから始まったという意味では非常に重要な1枚と言えるでしょう。また、のちの宅録系アーティストの先駆者的存在としても、本作は歴史に名を残すべき1枚なのかもしれませんね。

そんな作品が、周囲からの期待の大きさもあって全米3週連続1位という結果を残したのも興味深いところ(イギリスでは2位止まり)。シングルヒットなしでこの成績というのも、当時の注目度の高さが伺えます。

 


▼PAUL McCARTNEY『McCARTNEY』
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2020年1月 2日 (木)

banned songs of US radio after 9.11

つい先日、昨年の9月11日に配信されたKERRNG!の記事「HERE ARE THE 164 SONGS THAT WERE BANNED FROM AMERICAN RADIO AFTER 9/11」がTwitterで流れてきたんですね。このリスト自体、これまでも完全版・不完全版問わずさまざまな形で流出していたと思いますし、実際僕も学生時代に湾岸戦争をテーマに「表現の自由」や「自主規制」について卒論を書いていたので、常に気になってチェックしていました。今回の記事も特別目新しさはなかったのですが、急にふと「そういえば、卒論書いてた90年代前半は実際にそういう曲を全部聴くのに相当苦労したけど、今ってストリーミングサービスがあるし、もしかしてこのリストの曲全部聴けるんじゃないかな……」と思ったんですね。

で、実際にプレイリストを作ってみようと思い、検索を開始……始めたのが明け方だったのですが、気づいたら1、2時間でプレイリスト完成。記事中に登場する曲名やアーティスト名に多少の間違いがあったので、ネット上で公開されている同様の記事(結局Wikipediaが一番便利でした)とも照らし合わせつつ、完全なるプレイリストを完成させました。

さすがに全曲ありました。すごいですね、Spotify(今回はApple Music版は作成せず。だって2つも作るの時間かかるし)。RAGE AGAINST THE MACHINEのみ全曲放送禁止だったので、本来なら彼らの楽曲はすべて入れるべきなんでしょうけど、それだと埒が明かないので各アルバムから主要ナンバー1曲ずつ、計4曲を入れることにしました。そこに「Knockin' On Heaven's Door」のみボブ・ディラン版とGUNS N' ROSES版の2曲を用意して、全168曲/11時間14分というアホほど長いプレイリストが完成したわけです(笑)。

一応、アーティスト名アルファベット順、複数の曲がリストにあるアーティストに関しては曲名もアルファベット順で並べてあります。なので、AC/DCみたいにいきなり7曲も続いてしまうこともありますが、シャッフル再生すると普通にラジオ感覚で楽しめるのではないでしょうか……しかも、いい曲ばかりですし。

こんなご時世だからこそ、こういった楽曲を手軽に楽しめる自由をかみしめつつ、今の生活に感謝したいと思います。またいつ、これらの楽曲やほかのヒット曲が放送禁止になるか、本当にわかりませんしね(しかも、あの当時よりも状況的には最悪ですから)。

 

※ブラウザ(記事上)でプレイリストを再生すると100曲しか表示されないようなので、プレイヤー右上のSpotifyロゴをクリックして、自身のSpotifyプレイヤーで再生することをオススメします。

2018年12月24日 (月)

THE MONKEES『CHRISTMAS PARTY』(2018)

前作『GOOD TIMES!』(2016年)で本格的復活を果たしたTHE MONKEESが2年ぶりの新作として発表した、初のクリスマスアルバム。相変わらず正式メンバーはミッキー・ドレンツとピーター・トークの2人ですが、前作同様に脱退しているオリジナルメンバーのマイク・ネスミスも参加。さらに、2012年に亡くなったデイヴィ・ジョーンズのボーカルテイクを使った楽曲も含まれており、完全に“あのモンキーズ”のアルバムとして仕上げられています。

内容的にはクリスマスソングのスタンダードと、ポール・マッカートニー「Wonderful Christmastime」やBIG STAR「Jesus Christ」といったロック/ポップスのクリスマスソングカバーが中心。そこに、前作でもオリジナル曲を提供したアダム・シュレシンジャー(FOUNTAINS OF WAYNE)やアンディ・パートリッジ(XTC)、リヴァース・クオモ(WEEZER)がオリジナル曲を書き下ろし。さらに、今回は元R.E.M.のピーター・バックもソングライティング&ギターで参加するなど、アメリカンロック/パワーポップ界的には今回もたまらない内容となっています。

全体のプロデュースを手がけたのは、今回もアダム。演奏面でも全面的に彼が関わっており、プレイヤー陣の中にはジョディ・ポーター(G)やブライアン・ヤング(Dr)といったバンドメイトの名前も見つけることができます。今や解散状態のFOUNTAINS OF WAYNEなだけに、こういう形で再び共演が楽しめるのはファンとしては嬉しいかぎり。

数少ないオリジナル曲4曲は、オープニングを飾るアンディ・パートリッジ作「Unwrap You At Christmas」こそ“らしい”クリスマスソングですが、リバース・クオモ作「What Would Santa Do」はハンドベルこそ用いているものの、基本的にはWEEZERっぽいパワーポップ。アダム・シュレシンジャーによる「House Of Broken Gingerbread」もFOW風パワーポップで、特にクリスマスソングという印象は薄いかもしれません。

そしてもう1曲、ピーター・バックが関わるアルバムタイトルトラック「Christmas Party」もそのギターフレーズのせいもあってか、どこかR.E.M.を彷彿とさせるもの。これを歌うミッキー・ドレンツの声もどこかマイケル・スタイプっぽいような……気がしませんか?

もちろん、それ以外のカバー曲も原曲が素晴らしいですし、それを演奏するプレイヤー陣も優れているので、安心して楽しめるはず。若々しいデイヴィのボーカルを用いた「Mele Kalikimaka」や「Silver Bells」には、ちょっとウルっとしてしまいますけどね。アコースティックテイストにアレンジされた「Wonderful Christmastime」も素敵な仕上がりですし。安心安定の1枚として、この時期にお楽しみくださいませ。



▼THE MONKEES『CHRISTMAS PARTY』
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2018年11月23日 (金)

PAUL McCARTNEY FRESHEN UP JAPAN TOUR 2018@東京ドーム(2018年11月1日)

Img_3736おそらくこれが最後の来日なんじゃないかという気もしているので、時間が経ったものの記録として残しておこうかなと。なので、ひっそりと載せておきます(笑)。

ポール・マッカートニーのライブを初めて観たのは、『OFF THE GROUND』(1993年)を携え行われた二度目の来日となった「THE NEW WORLD TOUR 1993」での東京ドーム。そこからしばらく時間が空いて、2010年代に入ってからは2013年以降毎回観てるんじゃないかな(中止となった2015年は日本武道館公演のチケットも確保していましたし)。なので、前回が2017年4月だから1年半ぶりと非常に有り難みがないわけでして。とはいえ、今回は5年ぶりの新作『EGYPT STATION』を引っさげてのツアーですし、それに……毎回毎回思うわけですが、「これが最後の来日かも……」と。特に2015年に体調不良で中止になって以来、その思いはより強いものになり、毎回行くかどうかギリギリまで悩みながらも、なんだかんだで足を運んでしまうという。完全に思うツボですね、はい。

そんなわけで、公演数日前にチケットを購入して東京ドーム2日目へ。年々チケットを買うタイミングがギリギリになっているので、当然座席も回を重ねるごとにステージからどんどん遠くなっていくという。今回なんて、完全なる点空席でしたからね。ま、そのおかげでじっくり座って楽しめたわけですが。

18時半スタートの予定が、なんだかんだで19時前後に会場暗転。ほぼ昨年のツアーと似たような演出のもと、ビートルズの「A Hard Day's Night」からライブはスタート。相変わらず、ライブ序盤の東京ドームは音が小さいな、なんて思いながらビール片手に名曲を堪能していくわけですが……頭4曲終わった時点で、ものすごい既視感に気づくわけです。


「あれ……前回とセトリ、まったく一緒じゃね?」


そうなんです。僕が昨年観た2017年4月28日の東京ドーム公演と、セットリストがほぼほぼ一緒だったのです頭4曲に関してはまったく同じ。そこに『EGYPT STATION』からの新曲を数曲散りばめつつ……ああ(苦笑)。今回のドーム初日はちょっとセトリが違ったようですが、個人的好みは今回のほうだったので結果オーライなんですが。まあ、良い曲、良いセトリはいつ何度観ても楽しいって結論でよろしいのではないでしょうか。

ポール御大の声はまあまあ出てるほう。そりゃあ5年前と比べたら確実に高音の伸びや深みが衰えているものの、それでもキーを下げることなく、ある曲ではベースで、ある曲ではエレキギター、ある曲ではアコギ、ある曲ではピアノ、ある曲ではウクレレと……どんだけエネルギッシュでアクティブな76歳だよ!とツッコミ入れつつ、名曲の数々をビール飲みながら味わいました。

Img_3740「Got To Get You Into My Life」ではブラス隊がアリーナ客席内から登場したり(あれ、ブラスって前回いましたっけ? ちょっと記憶が曖昧)、お客をステージに上げたりと今回のツアーならではの演出もあり。それでも、基本的には前回と一緒。ジミヘンパートも、ジョージ・ハリスンパート(「Something」)もまったく同じで、新鮮味はやっぱり皆無。でも、ビートルズ曲もポールのソロもWINGSナンバーも30年以上何十回、何百回とリピートしてきたものなのに、やっぱり生で聴くと印象が変わってくるんだから不思議です。

そんな僕ですが、やっぱり「Band On The Run」や「Back In The U.S.S.R.」が始まればテンションが上がるし、もはやガンズの持ちネタと化している「Live And Let Die」を聴けば一緒に歌うし、ベタだと思いつつも「Let It Be」や「Hey Jude」には涙腺が緩む。これはもう業みたいなものです。

そして、アンコール。久しぶりに聴く「I Saw Her Standing There」はやっぱりカッコいいし、「Helter Skelter」でのポールのシャウトには鳥肌が立った。で、「Golden Slumbers」「Carry That Weight」「The End」とおなじみのクライマックス。もはや有り難みすら感じなくなったこのエンディングも、やっぱり生で観たらジワジワくるから不思議。これはもう、DNAレベルで感動することが刷り込まれているんでしょうね。だったら仕方ない。

ライブ中盤で披露された「From Me To You」にはさすがにグッと来ましたし(そこから続く、前回も演奏した「Love Me Do」もしかり)、「Maybe I'm Amazed」は何度聴こうが色褪せることのない名曲中の名曲だし。そういったロック/ポップスの50年史を今もこうやって生で楽しめるのは、なんだかんだで幸せ以外の何者でもないわけです。また来年も来日するんじゃないかとか、毎回一緒なのに劣化したポールに2万近く払うのはいかがなものかとか、いろいろ意見があるのもわかります。けど、それでも足を運んでしまうのは、なんと言おうと業なのです。だから、毎回毎回「これが最後」と思いながらも高いチケット代を払って、会場でビールを飲みながら歌い楽しむ。そういう接し方が自分には合っているのかなと。

それともうひとつ。これは完全に個人的事情ですが、自分は数年前に耳を患い、その際ビートルズが雑音にしか聞こえず「これはもうライター引退なのかな……」と本気で泣いたことがありました。それを思えば、こうやって来日のたびにライブに足を運べるのはラッキーなことだし、「人生みっけもん」だなと。「ああ、まだこの曲で感動できるんだ」と確認しに東京ドームまで足を運んでいる気すらします。この気持ちだけは絶対に忘れたくないな。そういう意味では、現在のスタンスの原点を確認しにいく作業の一環でもあるのかもしれません。


[SETLIST]
01. A Hard Day's Night
02. Junior's Farm
03. Can't Buy Me Love
04. Letting Go
05. Who Cares
06. Got To Get You Into My Life
07. Come On To Me
08. Let Me Roll It
09. I've Got A Feeling
10. Let 'Em In
11. My Valentine
12. 1985
13. Maybe I'm Amazed
14. We Can Work It Out
15. In Spite Of All the Danger
16. From Me To You
17. Love Me Do
18. Blackbird
19. Here Today
20. Queenie Eye
21. Lady Madonna
22. Eleanor Rigby
23. Fuh You
24. Being For The Benefit Of Mr. Kite!
25. Something
26. Ob-La-Di, Ob-La-Da
27. Band On The Run
28. Back In The U.S.S.R.
29. Let It Be
30. Live And Let Die
31. Hey Jude
<ENCORE>
32. I Saw Her Standing There
33. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)
34. Helter Skelter
35. Golden Slumbers
36. Carry That Weight
37. The End


2018年9月20日 (木)

PAUL McCARTNEY『EGYPT STATION』(2018)

2018年9月発売の、ポール・マッカートニー通算18枚目のソロスタジオアルバム。前作『NEW』(2013年)からもう5年も経っていたんですね。ここ最近、2年おきに来日している気がして、そこまで時間が経っていると思いませんでした(よく調べたら、来日公演自体は2013年、2015年、2017年に実施していて、2014年は中止になった国立競技場公演があったのでした。実質4回も来てたのか。そりゃ来過ぎた! しかも2018年にもやってきますし)。

6月に先行リリースされたシングル「I Don't Know」「Come On To Me」は、良くも悪くも“いつもの”ポール節。安心安定で、今回も水準以上の作品にはなるんだろうなと信じていました。

で、8月には新しいシングル「Fuh You」が先行カットされたのですが……これがモダンな、“イマドキの”サウンドによるポップチューンでびっくり。おお、こりゃちょっと楽しみかも!と思っていたところに、アルバム到着。全体的には“いつもの”と“イマドキの”が程よくミックスされた、非常によくできた1枚だと思います。

全体のプロデュースはTHE BIRD AND THE BEEのグレッグ・カースティン(アデル、リリー・アレン、シーア、リアム・ギャラガーFOO FIGHTERSなど)、1曲のみライアン・テダー(ONEREPUBLICのシンガー)が担当しています。そう聞くと「なるほどな」と頷けてしまう、そんな内容ではないでしょうか。

ちなみに、僕が非常に気になった「Fuh You」はライアンとの共作&プロデュース曲。これも「なるほどな」と腑に落ちました。キャリアを総括するような作品であると同時に、しっかり“今”と向き合っている。それは手慣れたメンツとタッグを組むのではなく、グレッグ・カースティンやライアン・テダーといった現在のポップシーンを代表するトップアーティストとコラボする姿勢に表れていますし、自身の持ち味をどうモダンに昇華するか、それが2018年に通用するのか。ある意味、これはポールから今のポップシーンに対する“最後の挑戦状”なのかもしれません。

年齢的にも、おそらくこれが最後になってもおかしくないわけで、だからこそここまでゴッタ煮感がありながらも不思議と統一感がある内容になっているのではないかと。ポールが書く楽曲に一度でも心奪われたことがある人なら、絶対にどれか1曲、いや、どこか1ヶ所でもひっかかるパートがあるのではないでしょうか。そんな、76歳のおじいさんが今できることをすべて詰め込んだ、渾身の1枚だと思います。

終盤の「Do It Now」から「Caesar Rock」への流れ、そこからドラマチックな「Despite Repeated Warnings」へと続き、インタールード「Station II」から組曲「Hunt You Down / Naked / C-Link」で幕を下ろす構成は、涙なしには語れません。間違いなく、あのポール・マッカートニーのアルバムです。



▼PAUL McCARTNEY『EGYPT STATION』
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2017年9月16日 (土)

FOO FIGHTERS『CONCRETE AND GOLD』(2017)

FOO FIGHTERS待望のニューアルバムが昨日リリースされました。本作は2014年11月発売の8thアルバム『SONIC HIGHWAYS』から3年ぶりに発表される新作で、THE BIRD AND THE BEEのメンバーにして、シーアやアデル、P!NK、リリー・アレンなどポップス系プロデューサーとしても知られるグレッグ・カースティンと共同制作したもの。それ自体がすでに実験なのに、本作は事前に“MOTORHEAD meets『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』”などと比喩されていたもんですから、そりゃあ期待が高まるってものですよ。

かなり早い段階で本作からの先行シングル「Run」が公開されていましたが、この1曲のみではその真偽は確認できず。で、リリースに先駆けて雑誌レビュー用にこのアルバムを聴くことができたので、今日はその際のメモを元に全曲解説をしていけたらと思います。

 

M1. T-Shirt
ギター弾き語りかと思いきや、大袈裟でスケールの大きなバラードへと変化。1分半程度の短い曲で、どこかQUEENのアルバムを彷彿とさせる。

M2. Run

1曲目から間髪入れずに突入。じわじわと盛り上がる構成と、ヘヴィかつグルーヴィーなサウンド&アレンジに新たな可能性も。とにかくスケールが大きい1曲。

M3. Make It Right [ジャスティン・ティンバーレイク参加曲]
「Run」同様グルーヴィーな楽曲だが、こちらはリズムの1音1音がとにかく重い。コーラスの入れ方が非常にポップで、単なるハードロック/ヘヴィロックバンドにはできない取り組みでは? リズムの抜け感、エフェクトのかけ方もインパクトが強く個性的。

M4. The Sky Is A Neighborhood [アリソン・モスハート参加曲]

“ヘヴィロック版ジョン・レノン”みたいな、強いサイケ感を持つミディアムヘヴィナンバー。ストリングスの入り方、コーラスの重ね方が非常にキャッチー。と同時に、音の抜き方、空白の使い方などアレンジが絶妙。

M5. La Dee Da [アリソン・モスハート参加曲]
歪みまくったベースによるイントロが、どこかQUEENS OF THE STONE AGEっぽい。ヘヴィなガレージロックかと思いきや、ピアノの音色やキャッチーなメロディが合わさることで気持ちよさ急増。拍の取り方が倍になる(テンポが速くなる)と、一気にハードコア感が増す。ここまで実験的要素が強く、ひたすらヘヴィなのにしっかりポップさが保たれているのがFOO FIGHTERSらしいのか、それとも今作のプロデューサーの手腕によるものなのか。

M6. Dirty Water [イナラ・ジョーンズ参加曲]
いきなり爽やかな曲調に(笑)。どこかボッサ調でもあり、ファルセット+オクターブ下の地声で歌う優しい声が耳に残る。複数のコーラスが重なることで生まれるハーモニーの心地よさに驚かされる瞬間も。FOO FIGHTERSらしいのに今までにないような感触もあり……と思ったら、後半でしっかり激しくなる攻めの1曲。女性コーラスが入る(M4〜6)ので、歌の豊かさはこれまで以上では。

M7. Arrows
メロディの流れ、コードの使い方に80年代ハードロック的カラーが。すごくストレートなメロディアスHR。が、どこかビートルズ的でもあり。5thアルバム『IN YOUR HONOR』(2005年)で試した実験の延長線上?

M8. Happy Ever After (Zero Hour)
後期ビートルズ(主にポール・マッカートニー)がやっていたようなアコースティックナンバーのFOO FIGHTERS的解釈。攻めまくりのアルバム前半と、この曲以降の流れのコントラストが素敵すぎ。

M9. Sunday Rain [ポール・マッカートニー参加曲]
完全にビートルズ(笑)。ジョンぽくもありポールぽくもあり、でもジョージぽくもある(笑)。そんな1曲でポール本人がドラムを叩くのも興味深い。テイラー・ホーキンスのボーカルもどこかポールに似てる(意識して真似てる?)。

M10. The Line

前曲のアウトロ?この曲のイントロ?のジャジーなピアノからダークな歌い出し。が、全体を覆うアンセム感がさすがの一言。どんなにアンダーグラウンドな方向に進もうとしても、デイヴ・グロール持ち前のポップネストプロデューサーの仕事ぶりでうまく調和されてしまうのは、もはやこのバンド最高の強みでは。

M11. Concrete And Gold [ショーン・ストックマン参加曲]
ダウナーなヘヴィバラード。どこかNIRVANA時代を思い浮かべてしまう1曲。かと思えば壮大なコーラス&ハーモニーがかぶさり、まるでQUEENの現代的解釈のようでもある。NIRVANAっぽいとはいえ、どこかポジティブさに満ちている気も。これこそデイヴの人柄そのものなのでは。ある種、このアルバムにおける究極の1曲。

 

以上となります。

確かに本作には“MOTORHEAD meets『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』”的なカラーが満載でした。が、個人的には“LED ZEPPELIN+MOTORHEAD×『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』”が正解なのではないかと思います。単なるハードコア(MOTORHEAD)で終わらず、しっかり大衆性を持った王道ハードロック(LED ZEPPELIN)のカラーも維持しながら、新たな実験にも挑んでいる(『SGT. PEPPER'S〜』)。実験要素は足し算ではなく、今回は掛け算なのかなと思いこういう表現をしてみました。

と同時に、これは矛盾するかもしれませんが……本作は“引き算のアルバム”でもあるなと感じました。それはプロデュース方法によるものが大きいのかもしれませんが、音数が多いにも関わらず、しっかり“抜き”の技術が多用されている。そのバランス感が本当に絶妙で、過去のFOO FIGHTERSのアルバムにはなかったものじゃないかと思うのです(これまでも“抜き”はあったけど、それは0か100かくらい大きなものとして使用されていたように思います)。

発売後改めて何度か聴いてみて思ったのは、もしかしたらFOO FIGHTERSは80年代以降のQUEENみたいな存在になろうとしているのではないか、あるいはそうなれるのではないかということ。それくらい大衆性とアーティスティックな実験要素を両立させながら、どんどん大きくなっているんだから。今、周りを見渡してもこんな“ハードロック”バンドなかなかいませんよ。

デイヴのソロプロジェクトから始まったこのバンドが、スタートから20数年でここに到達するとは……ただただ驚きです。そして、こんなアルバムだからこそロック低迷の今、バカ売れしてほしいと願っております。

 


▼FOO FIGHTERS『CONCRETE AND GOLD』
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2015年4月16日 (木)

ポール・マッカートニーの私的ベスト10(ソロ/Wings編)

去年中止になった来日公演がいよいよ来週からスタートしますね。昨年は武道館公演に行く予定でしたが、今回は東京ドーム初日のみになりそうです。が、久しぶりのポール(2013年は行けなかったので)。今から非常に楽しみであります。というわけで、今回はビートルズ時代を除くソロ作品(Wings含む)の中から、私的ベスト10をご紹介します。あくまで“私的なもの”ですので、「ソレジャナイ」などのツッコミはご遠慮を。あと、ライブで聴きたい曲というわけでもないので、そのへんもご了承ください。

1. Maybe I'm Amazed

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2004年11月24日 (水)

とみぃ洋楽100番勝負(98)

●第98回:「Maybe I'm Amazed」 PAUL McCARTNEY ('70)

 俺にとってのポール・マッカートニーとは、"Yesterday" でも "HeyJude" でも "Let It Be" でもない。このソロ1作目「McCARTNEY」に収録された、"Maybe I'm Amazed" なのね。この曲と出会ってなかったら、多分俺はポールのことを一生「ポップスター」的視点で見続けてたかもしれない‥‥それくらい俺にとってこの曲は衝撃であって、その後の自分の考え方を変えてしまった1曲なわけ。

 この転調を繰り返すアレンジといい、ポールのシャウトを通り越したシャウトといい、今聴いてもホントに鳥肌が立つ。初めて聴いたのは‥‥高校を卒業した後くらいかな‥‥ポールの初来日があって、その後に2枚組のライヴ盤が出て。そこにライヴテイクが収録されててさ。なんかスッゲー無理してシャウトしてんなぁ、とか、もの凄い劇的に盛り上げるなぁ、とか、転調凄いなぁ、とか。いろいろ感じながらもその時はそこまでピンとこなくて。

 ところが。それから3年後。自分が初めてポールを生で体験する日が訪れて。その頃からかな、過去のオリジナル・アルバムにも手を出し始めて。そこで最初にソロ1枚目「McCARTNEY」を買って‥‥スタジオテイクのこの曲に思いっきり鳥肌立てて。何だったんだ、あれは?

 自分が音楽をやる時、曲を書く時。アレンジの手本にするのはLED ZEPPELINであり、アティチュードの手本にするのはジョン・レノンなんだけど、歌詞やメロディの手本にする‥‥いや‥‥そうしたい、そうでありたいといつも思っているのは、このポールなんだよね。確かにアルバム/楽曲、駄作も多いポールだけど、一時の多作振りを考えると、まぁそれも許せるかな‥‥とにかく中にあるもの、出て来たものを全部世にぶちまけない質なのかもしれないね、ポールって人は。そういう面では非常に共感する点が多いんだけど。

 だって‥‥こうやって俺も、アホ程文章書いて、まとめてアップしてるわけだからさ!



▼PAUL McCARTNEY「McCARTNEY」(amazon

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