2018年12月11日 (火)

PAUL STANLEY『LIVE TO WIN』(2006)

2006年10月(日本では11月)リリースの、KISSのフロントマンであるポール・スタンレー(Vo, G)通算2作目のソロアルバム。『PAUL STANLEY』(1978年)から28年ぶりのソロ作となりますが、前作は当時のKISSメンバー4人同時ソロアルバムリリースという企画の一環だったので、純粋なソロアルバムという意味ではこの『LIVE TO WIN』が今のところ唯一の作品と言えるかもしれません。

2000年代半ばはKISSとしての新作が途絶えていた時期で、その2年前にはジーン・シモンズ(Vo, B)も2ndソロアルバム『ASSHOLE』(2004年)をリリースしています。そちらに対するフラストレーションも多少なりともあったと思うのです(事実、本作リリース後にはソロでショートクラブツアーも行っていましたし)。

さて、内容ですが、我々がイメージするポール・スタンレーそのままの、メロディアスなハードロックアルバムに仕上がっています。80年代のHR/HMテイストのKISSをよりモダンな質感にして、ゼロ年代のアレンジでアップデートした、と書けばよりイメージしやすいかもしれません。

そういった楽曲を手がけるのは、ポールのほかにデズモンド・チャイルド、アンドレアス・カールソン、マーティ・フレデリクセン、ホーリー・ナイトなどといった80年代〜ゼロ年代を代表する職業作家たち。さらにジョン・5(ROB ZOMBIE、ex. MARILYN MANSON)もソングライターとしてだけでなく、ギタリストとしてレコーディングにも参加。かつてのKISSメンバーでもあるブルース・キューリックはベーシストとして3曲でプレイしており、そういった意味ではこれまでの絆と新たな血を交えた実験的な1枚と言えるでしょう。

オープニングを飾る「Live To Win」は“いかにも”なメロディアスハードロックだし、「Everytime I Se You Around」は「Forever」を彷彿とさせるパワーバラード。「Lift」からはモダンなヘヴィロックからの影響が感じられるし、「It’s Not Me」はオールディーズ風のメロディを持ちながらもアレンジは現代的。「Where Angels Dare」あたりはKISSでそのまま演奏すれば間違いなく“KISSの楽曲”になるはずなのに、ここでは“ポールが歌ってるけど、KISSとはまた違ったテイスト”が感じられる。

そう、本作はポール・スタンレーのパブリックイメージそのままの内容なのに、完全にはKISSっぽくなっていない。そのさじ加減がミソなのかなと思うのです。そりゃあソロアルバムを作るんだからKISSとの差別化は考えるでしょう。それがアンドレアス・カールソンやマーティ・フレデリクセンといったモダンなソングライターと、ジョン・5など若手プレイヤーの導入に端的に表れていると。頭ではわかっていても、実はそのへんを理解するのが濃いKISSファンになればなるほど難しさを伴う1枚かもしれません。

ハードロックアルバムとして考えれば、本作は非常によく作り込まれた1枚です。が、KISSファンとして接しようとすると肩透かしを食らう。リスナーのポジションによって若干の評価の違いが生じてしまう、悲しい1枚と言えるでしょう。少なくとも、KISSの新譜に植えていた2006年という時代においては。

けど、リリースから12年経った今聴くとすんなり楽しめる。時代が一周したのもあるし、KISSがその後2枚のオリジナルバムを発表しているのも大きいでしょう。とにかく、KISSのイメージを持ちつつも、ポールひとりでやりたいことをやったらこんなアルバムができるよと。そういう接し方が一番素直に楽しめるのではないでしょうか。



▼PAUL STANLEY『LIVE TO WIN』
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投稿: 2018 12 11 12:00 午前 [2006年の作品, KISS, Paul Stanley] | 固定リンク