PAUL WELLER『TRUE MEANINGS』(2018)
2018年9月リリースの、ポール・ウェラー14作目のスタジオアルバム。12thアルバム『SATURNES PATTERN』(2015年)でParlophone Recordsに移籍して早くも3作目となります。前作『A KIND REVOLUTION』(2017年)が去年の5月発売だったので、1年4ヶ月という非常に短いインターバルにも驚きです。そういやあ、来日公演なんて今年の1月でしたものね。
5月25日に還暦を迎えてもなお、いや、還暦に向けてその活動ペースが再びアップしだしているポール・ウェラー御大ですが、今回のアルバムはアコースティックギターを軸にした、非常に穏やかな作品集に仕上がっています。
確かにエレキギターも使ってはいるものの、その音色はほとんど歪んでおらず、あくまで味付け程度。アコギを爪引きながら落ち着いたトーンで歌うポールの声に、ところどころでストリングスや美しいハーモニーが重ねられていく。なんですか、これは(笑)。最初に聴いたときは正直驚きました。前作『A KIND REVOLUTION』がどこかそれまでの集大成感が漂っていたのもあって、その延長線上で来るのかと思いきや、これですから。
もちろん、曲を聴けばメロディや節回し、ソウルの影響下にあるアレンジからウェラー翁らしさを存分に味わえるのですが、終始同じトーンなので……もしかしたら聴き手を選ぶ1枚かもしれません。
それは言い方を変えれば、今までポール・ウェラーという人にある種の暑苦しさを感じていた層にこそ触れてほしい1枚とも言えるわけで。THE STYLE COUNCIL時代とまではいわないものの、あの頃にあったクールダウンした(ちょっとオシャレな)世界観に近いものが再び展開されている、とも言えなくはないのかな。ただ、その表現方法は80年代のそれとは異なるわけですが。
“ロックスター:ポール・ウェラー”の姿はここにはないのかもしれない。あるとしたら、60歳になった男の等身大の姿と生きざま。THE JAM、THE STYLE COUNCIL、そしてソロと何周もしてきたこの音楽界で何度目かの“上がり”を経て、彼はようやく今、心の底からリラックスして音楽を楽しめているのかもしれない……そう受け取れなくもない1枚かな。
にしても、そのものズバリ「Bowie」なんてタイトルの美しいバラードもあったりして、本当に泣かせてくれます。
今年はむちゃくちゃ暑かったし、気象状況もヘンテコだったし、本当に散々な夏だったな……そんなことを思い返しながら、この秋じっくり浸りたい。僕にとってはそんなアルバムになりそうです。
もし、本作で来日公演が実現したら、この世界観を忠実に再現した編成になるのかしら。それはそれで観てみたいかも。
▼PAUL WELLER『TRUE MEANINGS』
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