2003/05/24

PEALOUT『原始進化』(2000)

  日本が誇る独特な個性を持つトリオバンド、PEALOUTが'00年4月にリリースした5枚目のアルバム。このアルバムから現在所属するビクターに移籍したわけですが、ただ移籍したから心機一転といった簡単なものではない、もっと興味深くて恐ろしい程の変化を味わえる1枚になってます。というよりも、恐らく現在の彼等を支えているであろう多くのファンは、このアルバムからPEALOUTに入っていった人が多いんじゃないでしょうか? かくいう俺もこのアルバムで彼等にハマッたひとりですしね。

  現在も頻繁に行われている「激ロック」という対バン・イベントがスタートしたのも、この前後から。正しくその「激ロック」という言葉に相応しい「轟音の壁」を堪能できる作品集で、けど、だからといってウルサイだけなのかというと、実はそんなことはなく、初めて近藤のピアノをフィーチャーした楽曲を全面導入したのもこの作品からなんですね。まず先行シングル"爆裂世界~世界に追い越されても~"の存在があるわけですが、これがもうこのバンドにとってはエポックメイキングな作品となり、実際この曲で彼等に興味を持ったって人も多いようですね。ベース&ボーカルの近藤がピアノに、ギターの岡崎がベースにシフトチェンジするギターレス編成になるわけですが、まぁこういう編成自体が別にロック界では特別なことではなく、数年前にもBEN FOLDS FIVEがこういうスタイルで大成功を収めているので(実際、このアルバムの歌詞にも彼等の名前が登場するしね)、「何だよ、パクリかよ‥‥」って思うかもしれないけど‥‥これがね、全然違うのよ。メロディアスだけど激しい。ギターレスなんだけど、全然そのデメリットを感じさせない音圧。そして日本語詞‥‥それまで英語詞だった彼等が、この辺りから積極的に日本語詞に取り組み始めます。実際、アルバム収録曲8曲中6曲が日本語ですからね。この辺の意識革命もその後の彼等の人気に大きく影響するわけですし。

  ピアノ導入だけが大きな出来事ではなく、先にも書いたように「轟音の壁」ともいうべき激しいサウンド、そしてハードコアにも近い暴走ナンバー‥‥アルバム1曲目"瞬間のカーニバル"でゆらゆらと始まりながら、それをぶち破るかの如く走りまくる"心臓が動き出すとき"でのハードコアサウンド、続くピアノ曲4連発("爆裂世界~世界に追い越されても~"、"BEAT FOR YOUR RIGHT"、"PIANOMAN R&R SHAKE, SHAKE, SHAKES"、"あてのない手紙")のバラエティ豊かさ。特に"BEAT FOR YOUR RIGHT"でのテンションの高さ、ピアノバラード"あてのない手紙"の切なさ。この曲はストリングスまで導入してますからね。如何にこのバンドが当時「変化」を求めていたかが、こんなナンバーからも伺えるんじゃないでしょうか。そして再び疾走ギターロックチューン"BEFORE TODAY"で盛り上がり、最後にシングル曲"YOU"で爆裂したまま終わるという、非常に素晴らしい、ロックバンドとしては理想的な構成になってるんですよね。

  未だにライヴでの定番となっている"心臓が動き出すとき"や"爆裂世界~世界に追い越されても~"、"BEAT FOR YOUR RIGHT"といった人気曲が多く収録されていることから、このアルバムが一番好きという人も多いみたいですね。確かにその後の2枚のアルバムはちょっと‥‥って声、たまに耳にしますし。このアルバム、セルフプロデュース曲と上田ケンジプロデュース曲が半々で収録されてることも、作品のバランスに大きく影響してるんじゃないかと思いますね。最近の作品は完全にセルフプロデュース作みたいだし。もうひとりくらい「客観的に物事を見れる人」がいたら、また面白い方向に行くんじゃないかなぁ‥‥と個人的には感じているのですが‥‥

  そういう意味で、このアルバムは本当によく出来た作品集だなと思うわけです。勿論その後のアルバムも素晴らしいですし、その辺のバンドの数倍素晴らしい内容になってるわけですが‥‥8曲で35分程度というトータルランニングが全く短く感じさせない、本当に濃い作品になってるんですね。こういうバランス感覚に優れた作品を作れるというのは、ある種ロックバンドにとっては理想的なことですよね。ホント、完璧ですわ。最強。この時期のライヴ、是非観たかったなぁ‥‥

  このアルバムを「第二期PEALOUT」の始まりとするのならば、今現在の4人編成(サポートベーシストを入れ、近藤はギターやピアノに専念している)は「第三期」になるんだろうから、また新たな展開が見れるのかもしれませんね。好きなバンドだけに今後の動向から目が離せませんね。



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投稿: 2003 05 24 12:00 午前 [2000年の作品, PEALOUT] | 固定リンク