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カテゴリー「Pearl Jam」の23件の記事

2022年4月16日 (土)

3RD SECRET『3RD SECRET』(2022)

2022年4月9日にデジタルリリースされた3RD SECRETの1stアルバム。現時点でのフィジカルリリース未定。

突如発表され、今週後半からさまざまなWEB媒体で騒がれ始めた3RD SECRET。VOID、SOUNDGARDENNIRVANAPEARL JAM、そしてGIANTS IN THE TREESとワシントン/シアトル・シーンの1980〜2010年代の歴史を象徴するようなアーティストたちが一堂に会したスーパーバンドなのですが、その存在はこれまで告知されることはなく、このリリースを持っていきなり我々の前に現れたわけです。

メンバーはクリス・ノヴォセリック(B/ex. NIRVANA、GIANTS IN THE TREES)、キム・セイル(G/SOUNDGARDEN、ex. AUDIOSLAVE)、マット・キャメロン(Dr/PEARL JAM、SOUNDGARDEN、HATER)という90年代のグランジ界隈を席巻した面々に、80年代前半のDCハードコア界伝説のバンドVOIDのババ・デュプリー(G/マット・キャメロンのHATERにも参加)、クリスのサイドプロジェクトGIANTS IN THE TREESの一員でもあるジリアン・レイ(Vo)&ジェニファー・ジョンソン(Vo)という6人編成。楽器隊のメンツからどんなエグい音が飛び出すのかとワクワクしつつも、女性ツインボーカルという構成からまったく想像がつかなくなったりと、非常に想像力を掻き立てるバンドなんです。しかも、アルバムの共同プロデューサー&エンジニアが、かのジャック・エンディノ(シアトルのバンドSKIN YARDのギタリストにして、SOUNDGARDEN『SCREAMING LIFE』、MUDHONEY『SUPERFUZZ BIGMUFF』、NIRVANA『BLEACH』などのプロデュースで有名)ですからね。期待しないわけがない。

いざアルバムに触れてみると……アルバム冒頭を飾る「Rhythm Of The Ride」のオルタナフォーク的世界観にいきなり打ちのめされます。なんぞ、このサイケデリック感!? ああ、確かにSOUNDGARDENにもNIRVANAにもこのタッチ、あったもんな。女性Voということもあり、どこかTHE VASELINESを彷彿とさせるものもあるし。予想の斜め上を行く意表をついたオープニングに呆気にとられるものの、続く「I Choose Me」での王道グランジ/オルタナロックサウンドに「そうそう、これこれ!」と膝を叩くのでした。

アルバムはこのように、オルタナフォークとグランジロックの二極で進行していきます。キム・セイルのドロドロしたギタープレイを存分に活かした「Lies Fade Away」のようにグランジリスナーを納得させるナンバーもありながら、むしろ印象に残るのは「Live Without You」のようにフォーキーでメロディアスな楽曲群。このスタイルも“あの時代”そのものなんですよね。何もダークでゴリゴリした音だけがグランジじゃないんです。

収録曲のメインソングライターはクリス&マットということもあり、2人のそれぞれのバンドの色もにじませつつも、彼らがサイドプロジェクトで進めてきたバンドやソロ活動からの影響がより濃厚に表れている印象。それらを個性の異なる2人の女性シンガーが歌い分けたり、ときに2人でハモったりすることで独特の空気を生み出していく。特にGIANTS IN THE TREESのシンガー2人が参加していること、アコースティック楽器もふんだんに取り入れられていることも影響し、個人的には「NIRVANAのキャッチーさとストレンジさ、SOUNDGARDENのサイケデリックさ、PEARL JAMやGIANTS IN THE TREESのアーシーさを程よいバランスでブレンドした、クリス&マット中心のポストグランジ/オルタナフォークバンド」というイメージかな。あと、クリス・コーネル急逝以降、SOUNDGARDENが止まってしまったことで他アーティストの客演でしか聴くことができなかったキムのギターを存分に味わえるという点においても、本作は非常に価値の高い1枚ではないでしょうか。

各メンバーが参加する歴代のバンドをイメージして聴くと、もしかしたらコレジャナイ感に面食らうのかもしれません。が、これはこれで全然アリだし、むしろすでに何度もリピートするほど自身に馴染んでいる。傑作や歴史的名盤の類とは異なるものの、忘れた頃に心の隙間を埋めてくれるような、そんな必要不可欠な1枚になりそうです。

 


▼3RD SECRET『3RD SECRET』
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2022年2月13日 (日)

EDDIE VEDDER『EARTHLING』(2022)

2022年2月11日にリリースされたエディ・ヴェダーPEARL JAM)の3rdソロアルバム。

昨年8月にはキャット・パワーやアイルランドの詩人グレン・ハンサードとのコラボレーションによる映画『FLAG DAY』のオリジナル・サウンドトラックも制作していますが、純粋なソロアルバムは意外にも『UKULELE SONGS』(2011年)以来10年ぶりの新作。特にここ数年はPEARL JAMの新作『GIGATON』(2020年)もあったので、コロナ禍ながらも精力的なリリースが続いている印象です。

本作のプロデュースを手がけたのは、オジー・オズボーンの最新作『ORDINARY MAN』(2020年)でのタッグも話題になったアンドリュー・ワット(そのほかにポスト・マローンやマイリー・サイラス、ジャスティン・ビーバーなど)。レコーディングにはそのアンドリューのほか、チャド・スミス(Dr/RED HOT CHILI PEPPERS)やジョシュ・クリングホッファー(G, Key, Vo/ex. RED HOT CHILI PEPPERS)、スティーヴィー・ワンダー、リンゴ・スター、エルトン・ジョンなど豪華な布陣が参加しています。もはやメインストリームのロック/ポップスターらしいメンツと言えるのではないでしょうか。

サウンド的には非常にメジャー感の強いアメリカンロックが中心。アルバム冒頭を飾る「Invincible」や「Power Of Right」などからはニューウェイヴの流れを汲むアリーナロック的な香りも伝わり、その質感はグランジ以前の80's MTVライクなメインストリームロックと重なるものがあります。極端な話ですが、それこそブルース・スプリングスティーンやジョン・メレンキャンプ、ヒューイ・ルイスなどのMTV世代には懐かしいアーティストたちとリンクするものがあるんじゃないかなと。そのへんはPEARL JAMの最新作『GIGATON』にも含まれていた要素のひとつでもあるので、あの色合いはエディによるものだったのかな?と今さらながらに感じています。

良くも悪くも、開き直りが伝わるこのスタイル。昨年12月に57歳になったばかりのエディにとってはもはや「最新のスタイルを作り上げるより、自分の成長期に慣れ親しんだロックを再構築する」ことが活動の主軸なのかもしれません。もちろん、活動のメインにPEARL JAMがあるぶんソロではこういったスタイルを追求することができるわけで、それ自体は否定しません。実際、僕自身も中高生の頃に慣れ親しんだアメリカンロックやMTVで流れていたヒット曲を聴いている感覚で楽しめましたし。

ただ、前作『UKULELE SONGS』はもうちょっと遊び心に満ち溢れていた印象もあっただけに、真の意味で“老いて”しまった感が伝わり、そこだけが残念だったかなと。アルバム自体の完成度が非常に高いだけに……。とはいいつつ、実はエディってもともと“そっち側”の人で、こういったスタイルに回帰するのは実は自然な流れなのかもしれません。

個人的には日中延々とリピートするよりも、たまに聴くぶんには申し分なしな1枚。「あのPEARL JAMのフロントマンによるソロアルバム」という視点ではなく、「純粋に良曲揃いのアメリカンロック&ポップス集」として接するのがベストかな。

 


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2021年10月16日 (土)

TOM MORELLO『THE ATLAS UNDERGROUND FIRE』(2021)

2021年10月15日にリリースされたトム・モレロの最新ソロアルバム。日本盤(輸入盤国内仕様)は同年10月20日発売予定。

個人名義では『THE ATLAS UNDERGROUND』(2018年)に続く3年ぶり2作目のソロアルバムですが、THE NIGHTWATCHMAN名義を含めるとこれが6作目。RAGE AGAINST THE MACHINEAUDIOSLAVE、STREET SWEEPER SCIAL CLUB、PROPHETS OF RAGEとは異なり、曲ごとにコラボレーターが異なるという点においては、『THE ATLAS UNDERGROUND』同様に真の意味でのソロ作品と言えるでしょう。

今作も相変わらずゲスト陣が豪華で、ブルース・スプリングスティーンエディ・ヴェダーPEARL JAM)、BRING ME THE HORIZON、PHANTOGRAM、クリス・ステイプルトン、グランドサン、マイク・ポズナー、ダミアン・マーリー、フェム、プロトハイプ、デニス・リクセゼン(REFUSED)、サマ・アブドゥルハーディとジャンルも多岐にわたる人選。トムはそれぞれのコラボレーターに合わせた作風、曲調で楽曲制作を進め、その中でいかにも彼らしいギタープレイを披露しています。

オープニングを飾る「Harlem Hellfighter」ではEDM調のトラックに日本語で歌う女性ボーカル(おそらくボーカロイドか?)に、いきなり度肝を抜かれる。かと思えば、続くAC/DCのカバー「Highway To Hell」ではブルース・スプリングスティーン&エディ・ヴェダーという新旧“Voice of America”が暑苦しいボーカルバトルを繰り広げる(笑)。ここではさすがにトムの個性がボーカルに負けてしまっていますね。さらに、BMTHを大々的にフィーチャーした「Let's Get The Party Started」もBMTHの色が強すぎる。あれれ、大丈夫かトム・モレロ……。

PHANTOGRAMをフィーチャーしたエレクトロポップ「Driving To Texas」以降も、ギターの活躍頻度はそこまで高くない。というより、ギターをギターと聴かせないようなエフェクトが施されていたり、楽曲を構築する上での素材と化していたりと、むしろトムはコンポーザー/アレンジャーとしての個性を発揮しているような作品なのかなと、聴き進めていくうちに感じました。いわゆるRATM的なテイストを期待すると痛い目に遭いますが、彼が制作してきた楽曲の色は至るところに散りばめられているので、聴く人が聴けば「トム・モレロらしい1枚」と理解できるかもしれません。

ラップボーカルものよりも、しっかり聴かせる歌モノのほうがらしい色を発揮しているし、「Naraka」や「The Achilles List」で聴くことができるエレクトロ調エフェクトのギターソロに今のトムがやりたいことが表れている気がしたりと、過去にとらわれずに前進を続ける彼にリスナー側がどこまでついていけているのか……。個人的にはベースはいかにもRATMテイストながらもエレクトロな味付けを施すことで新鮮味が増した「Charmed I'm Sure」や「Save Our Souls」、女性ボーカルならではの艶やかさが心地よい「Driving To Texas」や「Night Witch」みたいな楽曲がお気に入りです。

統一性の強いスタイルではなく、あくまで現代的なプレイリスト風の作風もいかにもソロらしくて好印象。この手の作品はコラボ相手の人選やネームバリューに多少左右されがちですが、今作においてはバランス感に優れていると思うし、前作以上なんじゃないかなという気がしました。しばらくは難しいことを考えずに、大音量で楽しみたいと思います。

 


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2020年12月20日 (日)

TEMPLE OF THE DOG『TEMPLE OF THE DOG』(1991)

1991年4月16日にリリースされたTEMPLE OF THE DOG唯一のアルバム。日本盤は同年6月21日にポニーキャニオンから発売、その後1993年12月にポリドール(現ユニバーサル)から再発されますが、以降2020年まで一度も再発されていません。

TEMPLE OF THE DOGはクリス・コーネル(Vo)&マット・キャメロン(Dr)のSOUNDGARDEN組とマイク・マクレディ(G)、ストーン・ゴッサード(G)、そしてジェフ・アメン(B)というPEARL JAM組(当時はデビュー前)からなるプロジェクトバンドで、クリスのかつてのルームメイトだったアンドリュー・ウッド(Vo/MOTHER LOVE BONE)がオーバードーズで亡くなったことを受け、彼のトリビュートのために結成。ストーンとジェフはMOTHER LOVE BONEのメンバーでもあったことから参加が決まり、そこにクリスの盟友マット、ジェフ&ストーンが新たに結成するPEARL JAMの一員マイクが加わり、クリスが書き下ろしたトリビュートソングを中心にアルバム制作がスタートします。

アルバム全10曲中、クリスの書き下ろし曲が7曲、ジェフ&ストーン書き下ろし1曲(「Pushin' Forward Back」)とジェフ単独書き下ろし2曲(「Times Of Trouble」「Four Walled World」)という構成で、歌詞はすべてクリスによるもの。ブルースやサイケデリックロックをベースにしたそのサウンドは、ある意味ではSOUNDGARDEN的でもありPEARL JAM的でもある。さらには、ジェフ&ストーンがいることでMOTHER LOVE BONE的でもある、と。でも、SOUNDGARDENやPEARL JAM、さらにはMOTHER LOVE BONEそのものといった印象を受けることもなく、結果として3者のよいとこ取りで収まっているのが興味深いのではないでしょうか。そういった意味では、ここで展開されているサウンドってのちに一大ムーブメントを巻き起こすグランジの範疇に含まれるものと言えるのかもしれません。

SOUNDGARDENのようにBLACK SABBATHLED ZEPPELIN的オールドスクール・ハードロック色は薄く、どちらかといえばPEARL JAMがのちにデビューアルバム『TEN』(1991年)で展開するオーソドックスな土着的ロックの色が強い。なのに、「Reach Down」みたいに11分以上におよぶジャムセッション的長尺ドローンナンバーがあったりするから面白いんですよね。SOUNDGARDEN的な尖った要素は薄く、クリスのダイナミックなボーカルをおおらかでオーソドックスなUSハードロックに乗せてみたらこうなりましたという、ある意味ではクリスのプレ・ソロアルバムと言えなくもないのかな。その作品で、デビュー前のエディ・ヴェダーも「Hunger Strike」で歌声を聞かせていたりするのは、今思うと非常に貴重なコラボレーションだなと思わずにはいられません(30年近く経った今の目線だと、マットがPEARL JAM入りしたことで、「PEARL JAM feat.クリス・コーネル」にも見えてしまうしね)。

本作はリリース当初こそあまり話題になりませんでしたが、1991年後半……PEARL JAMが『TEN』を、SOUNDGARDENが『BADMOTORFINGER』(1991年)をそれぞれ発表し、1992年にかけてじわじわとヒットを飛ばすことで本作もチャートを急浮上。「Hunger Strike」や「Say Hello 2 Heaven」のラジオヒットも手伝って、アルバムは全米5位という好記録を残しています。

にしても、この時期のボーカリストとしてのクリス・コーネルの神がかりっぷりは、飛び抜けたものがありますよね。僕はリリース当時、ポニーキャニオン盤を購入していたものの、当初はそこまで真剣に聴き込めていなくて。ところが、『TEN』や『BADMOTORFINGER』リリース後にクリスのボーカルやPJのカッコよさにヤラれてから聴き返したら、「もっと早く気づけよ……」ってくらい本作の魅力にどっぷりハマッてしまったくちなんです。グランジという文化を語る上でも、そしてシアトル界隈の当時の人間関係を知る上でも本作は絶対に欠かせない1枚。リリースから30年近く経った2020年に聴いても、まったく色褪せない傑作です。

なお、本作は2016年秋に発売25周年を記念して、別ミックスやデモ音源を含むデラックス・エディションも発売。こちらはストリーミングなどでも手軽に聴くことができます。デモ音源はスタジオライブ的な生々しさが強く、ただでさえ正式音源の少ないこのプロジェクトの真の顔を見極める上では非常に貴重と言えるでしょう。まあ、ビギナーはまずアルバム本編をじっくり聴きこんで、そのあとにデラックス版の追加音源に触れることをオススメします。

 


▼TEMPLE OF THE DOG『TEMPLE OF THE DOG』
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2020年12月19日 (土)

PEARL JAM『MTV UNPLUGGED』(2019/2020)

2019年11月29日にRecord Store Dayの一環として、アナログ限定でリリースされたPEARL JAMのアコースティックライブアルバム。2020年10月23日にはCDおよびデジタルでの一般リリースがスタートし、日本盤も同年11月9日に限定発売されました。

本作は1992年3月16日に収録された、MTVの名物番組『MTV Unplugged』での音源をまとめたもの。これまでさまざまな形態でブートレッグが発売されてきましたが、昨年アナログ限定、かつ数量限定という形で初めて正式リリースされたわけです。その際、(どうせ1、2年したら正式リリースされるだろうと見込んでいたので)僕はアナログ購入は見送りましたが、やはりという感じですね。

この日はアンコール含めて計10曲が演奏されています。

<セットリスト>
01. Oceans
02. State Of Love And Trust
03. Alive
04. Black
05. Jeremy
06. Porch
07. Even Flow
08. Rockin’ In The Free World [Neil Young cover]
---ENCORE---
09. Garden
10. Leash

アルバムにはこのうち、アンコールの2曲とカバー曲を除く計7曲が採用されており、かつ曲順も最後の2曲(「Porch」と「Even Flow」)が入れ替わっています。アンコールを除く8曲の映像は、YouTubeなどで探せば見つかるはずです(実際に放送されたものとは異なる流出映像かと思いますが、僕も過去に目にしたことがあります)。

タイミング的には1stアルバム『TEN』(1991年)がチャートをグイグイ上昇し始め、「Even Flow」や「Jeremy」といった楽曲のMVがMTVでヘヴィローテーションされていた時期。僕はこの頃海外にいたので、特にNIRVANAとPEARL JAMのブレイクしていく様を間近で感じることができたのは、ある意味ではラッキーだったかもしれません。特にPEARL JAMは日本と海外とでは認知度の高低差が著しく、帰国後にその人気の低さに驚いたものです。

そんな勢いに乗った時期のアコースティックライブ、悪いわけがありません。エディ・ヴェダー(Vo)のボーカルは若さを前面に押し出した一本調子が目立ちますが、それもまた一興といったところでしょうか。そもそも「Oceans」や「Alive」「Jeremy」「Even Flow」などといった1stアルバム収録曲を惜しげも無く披露しまくるライブ自体、今や貴重ですからね、そういった意味でも本作のレア度は高いのではないでしょうか(まあ時期的に1stアルバムの曲しかなかったしね)。

また、次作『VS.』(1993年)以降どんどん捻くれたテイストが加わり、楽曲が難解になり始めるという意味でも、素直なロックを鳴らしていた時代のアコースティックライブはかなり貴重かもしれません。「やっぱりこの頃がよかった……」なんて懐古主義的なことは言いませんが、良い曲をシンプルな編成で披露する本作はやはり彼らの歴史を語る上で欠かせない1枚ではないでしょうか。

 


▼PEARL JAM『MTV UNPLUGGED』
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2020年9月 3日 (木)

ACE FREHLEY『ORIGINS VOL.1』(2016)

2016年4月にリリースされたエース・フレーリーのカバーアルバム。スタジオ作品としては通算7作目のソロアルバムとなります。

本作はエースに多大な影響を与えてきたアーティストたち(CREAMTHE ROLLING STONESジミ・ヘンドリクスFREETHIN LIZZYLED ZEPPELIN、THE TROGGS、STEPPENWOLF、THE KINKSと無難なセレクト)の名曲に加え、KISS時代の楽曲も3曲収録。自身が作詞作曲した「Parasite」および「Cold Gin」(ともにジーン・シモンズVo曲)はわかりますが、彼がレコーディングにほぼ関わっていない『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)から「Rock And Roll Hell」(ジーン、ブライアン・アダムス、ジム・ヴァランス作)をセレクトしているのには思わず「?」となってしまいました(苦笑)。

全12曲中11曲でエースがリードボーカルを担当しており、「White Room」と「Bring It On Home」ではドラマーのスコット・クーガン(L.A. GUNS、ex. BRIDES OF DESTRUCTIONなど)がコ・リードボーカルを披露しています。エースのボーカルは今さら述べるまでもなく(笑)、味わい深いヘタウマぶりで、もはや安定感すら漂っています。うん、もうこれはこれでアリだし、これじゃなきゃいかんわな。

で、本作の注目点はもうひとつ、多彩なゲスト陣が挙げられると思うのです。先に述べたボーカル曲のうち、エースが歌っていない「Fire And Water」ではKISS時代の盟友ポール・スタンレーが参加。なにやら最初はジーンに声をかけたんだけどスルーされ(笑)、続いてポールに声をかけたらOKをもらえたんだとか。かわいそうだけど(苦笑)、結果いいコラボレーションが楽しめたので良しとしましょう(その後、ジーンは次作『SPACEMAN』にソングライティング&ベースで1曲参加しているので、めでたしめでたし)。

このほかにもスラッシュGUNS N' ROSES)が「Emerald」でエースとツインリードを披露し、リタ・フォードは「Wild Thing」でツインボーカル&リードギター、ジョン・5(ROB ZOMBIE)は「Spanish Castle Magic」と「Parasite」でリードギター、マイク・マクレディ(PEARL JAM)は「Cold Gin」でギターソロを聴かせてくれます。「Emerald」は意外とエースのボーカルがハマっているのと、スラッシュが良い仕事をしてくれていることで、個人的にもベストテイクかな。KISSナンバーの数々はさすがにボーカル含め小慣れた感強し(笑)。そんな中で、やはり「Rock And Roll Hell」だけはジーンのクセの強さが脳裏に焼き付いているので、ちょっとした違和感が。でも、慣れると悪くないですよ(実はギターソロがなかなかエースらしさ満載で、良テイクではないかと)。

今年9月にはカバー集第2弾『ORIGINS VOL.2』のリリースも控えており、すでに「Space Truckin'」(DEEP PURPLE)が公開中。こちらも楽しみにしております。

 


▼ACE FREHLEY『ORIGINS VOL.1』
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2020年4月 6日 (月)

PEARL JAM『GIGATON』(2020)

2020年3月末にリリースされたPEARL JAMの11thアルバム。

彼らの新作発売は2013年10月発売の前作『LIGHTNING BOLT』以来、実に6年半ぶりのこと。ここ最近は4年くらい感覚が空くことが続いていたけど、約7年というのは思った以上に長いスパンでして。その間、バンドはツアーをしたりライブ作品『LET'S PLAY TWO』を発表したり、マット・キャメロン(Dr)はソロアルバム『CAVEDWELLER』(2017年)をリリースしたりなどの活動がありましたが、やっぱり長かったよね。

ブレンダン・オブライエン(STONE TEMPLE PILOTSRED HOT CHILI PEPPERSRAGE AGAINST THE MACHINEなど)の手を離れ、新たにジョシュ・エヴァンス(THUNDERPUSSYSOUNDGARDENエース・フレーリーなど)とタッグを組んで制作された本作は、良い意味でマンネリ感の続いたここ数作を打破するような、若干のフレッシュさを感じらせる意欲的な内容に仕上がっています。

まず、リードトラックとなったM-3「Dance Of The Clairvoyants」を初めて聴いたとき、誰もがその変化に驚いたのではないでしょうか。ニューウェイヴ色の強まった質感とアレンジは、確かに過去の彼らのサウンドにも包括されていたものですが、このタイミングにここまであからさまな形で表現するのか、しかも7年ぶり新作のリードトラックとして……と良い意味で期待を裏切ってくれました。

アルバム自体は肩の力が抜けたロックチューン「Who Ever Said」から始まり、キャッチーなメロディが印象的な「Superblood Wolfmoon」、そして新境地の「Dance Of The Clairvoyants」、ヘヴィ&グルーヴィーな「Quick Escape」へ。意外とバラエティに富んだ構成なんですよね。

その後、彼ららしいムーディーなースローナンバー「Alright」へと続くのですが、この曲もアレンジ(サウンドメイキング)が新鮮で、このへんの味付けの妙は新プロデューサーの手腕によるものなんでしょうか。「Seven O'Clock」のアレンジも興味深いし(楽曲のテイスト自体はいつもどおりなんですが)、7年空いたことでリフレッシュされたのかなど含め非常に気になります。

アルバム後半は「Never Destination」「Take The Long Way」を筆頭に、タイトなロックチューンが並びます。このへんは従来のPEARL JAMファンが喜びそうな楽曲・構成かな。そんな中、ほぼアコギのみで構成された「Comes Then Goes」をはじめとするスローナンバーも充実しており、エディ・ヴェダー(Vo)の成熟しまくったボーカルを思う存分味わうことができます。

アレンジ面での斬新さが要所要所に散りばめられることで、“PEARL JAMらしい楽曲”に新たなフックを与えることができた本作。ある意味では“いつもどおり”安心安全の内容なんだけど、ここからの10年(2020年代)に向けて新たなステップを踏み出したと捉えることができるんじゃないかな。これはまだほんの序章にすぎないんだろうな、と“これから”が楽しみになる1枚です。

 


▼PEARL JAM『GIGATON』
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2019年4月 8日 (月)

PEARL JAM『BINAURAL』(2000)

2000年5月発売の、PEARL JAM通算6作目のスタジオアルバム。前作『YIELD』(1998年)同様に全米2位まで上昇するものの、セールスは前作の半分となる50万枚程度止まり。シングルカットされた「Nothing As It Seems」が全米49位のヒットを記録しています。

前作で改めて“PEARL JAMであること”を引き受け、過去のスタイルも今やりたいことも絶妙なバランスで織り込むことに成功した彼らですが、その後ジャンク・アイアンズ(Dr)が健康上の理由で脱退。サポートで参加していたマット・キャメロン(当時、元SOUNDGARDEN)がそのまま正式メンバーとしてバンドに加わり、本作からレコーディングに参加することになります。

本作ではそれまでタッグを組んできたブレンダン・オブライエンから、新たにチャド・ブレイクを共同プロデューサーに起用。ブレンダンもミキシングのみ参加し、最強の布陣で制作に臨むことになりました。

実際、オープニング「Breakerfall」からヒットシングル「Nothing As It Seems」、穏やかな「Thin Air」までの6曲流れは最強の一言で、ぶっちゃけ1stアルバム『TEN』(1991年)以降ではもっともスムーズで気持ち良い構成なんじゃないかと思います。要するに、我々がイメージする“PEARL JAMらしさ”が現代的にアップデートされつつも納得できる形で体現できている、と。デビュー10周年を目前に、バンドはまだまだ成長を続けている、だけど一周回ろうとしている。そんな現実が見事に表現された流れだと思いのです。

もちろんそれ以降の流れも文句なしで、大陸的なノリを持つ「Insignificance」やどこか新しさを感じさせるモダンな「Of The Girl」、ドラムのフレーズが気持ち良い「Grievance」、なんとなくアンビエントっぽさも伝わる「Sleight Of Hand」、最後の最後に奇妙なシークレットトラック(これ、アルバムタイトルにちなんだバイノーラルサウンドが表現されているってことなんでしょうか。実際バイノーラル収録されたのは「Of The Gril」「Rival」「Sleight Of Hand」「Soon Forget」の4曲)を含む「Parting Ways」など個性的で“らしい”楽曲が満載。『YIELD』を気に入ったリスナーなら、間違いなく楽しめる1枚かと思います。

ただ、前半の完璧な流れ、楽曲の完成度の高さと比べると、後半は若干ムラがあるのは否めません。捨て曲とまでは言わないまでも、インパクトは弱いかな?と感じる楽曲もいくつかあり、そういう意味ではアルバム全体としての完成度は『YIELD』から少しだけ劣る。だからなのか、当時そんなに聴き込んだ記憶が薄いんですよね。今聴いても悪くないんだけど、だからといって傑作かと問われると正直微妙と答えてしまう。そんなどっちつかずの作品じゃないでしょうか。

迷いとまでは言わないけど、新たなドラマーを迎えデビュー10周年を目前に再び過渡期に突入した……前作でも覚悟からさらなる一歩を踏み出すための準備期間、のような1枚なのかもしれません。

 


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2018年9月 5日 (水)

PEARL JAM『YIELD』(1998)

1998年2月にリリースされた、PEARL JAMの5thアルバム(日本では同年1月末に先行発売)。プロデューサーは過去3作同様にブレンダン・オブライエンとバンド自身。3作連続で続いた全米1位の記録は、本作で途絶えることに(最高2位)。また、セールス的にも初期3作のマルチプラチナムには程多く、前作『NO CODE』(1996年)同様に100万枚程度にとどまっております。

グランジブームの終焉を経て、いろいろな呪縛から解き放たれたのが前作だとすると、本作は「PEARL JAMとは?」というシンプルな命題と向き合った意欲作のように思えます。

より大らかな土着的アメリカンロックへと進化した『NO CODE』の延長線上にある作品と言えなくもないですが、この『YIELD』ではもっと“PEARL JAMらしさ”や“PEARL JAMっぽさ”を俯瞰で見た作品ではないかと思うのです。それは言い換えると、メンバー自身が“PEARL JAMであることを、引き受ける決意をした”と解釈することができるかもしれません。

前作の要素を踏まえつつも、バンドとして肩の力が抜けた状態で我々のイメージするPEARL JAMを演じる……いや、“演じている”は違うな。PEARL JAMであることを楽しんでいる、そんなアルバムのような気がするのですが、いかがでしょう。

オープニングの「Brain Of J.」こそシリアスモードですが、2曲目「Faithful」以降はかなりリラックスモードですし、シングルカットされた「Given To Fly」や「Low Light」の王道感、ちょっとおふざけ気味な「Do The Evolution」、スティールパンをフィーチャーした1分程度の「」(「The Color Red」や「Red Bar」などと呼ばれています)、実験的な「Push Me, Push Me」など、新しくもあり、と同時に他のアルバムに入っていても不思議ではない雰囲気もある。そう、聴けばやはり「あ、PEARL JAMだ」と瞬時に理解できる楽曲ばかりなんですよね。

『NO CODE』よりも親しみやすく大衆的、だけど過去の焼き直しになっていない。『NO CODE』以降の彼らは「いかにグランジから距離を置くか」という現実と常に対峙し続けたわけですが、この『YIELD』はそういった不遇の期間を突き抜ける糸口になった重要な1枚だと思っています。

 


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2018年6月28日 (木)

THUNDERPUSSY『THUNDERPUSSY』(2018)

CDショップで久しぶりにジャケ買いした1枚。そのアートワークのセンスと「THUNDERPUSSY」という思い切ったバンド名から、てっきり70年代のB級C級ガレージバンドのリイシューかと思ったら、今年の5月下旬に発売されたばかりの新作。しかも、メジャーレーベルのRepublic(Universal Records傘下)配給だと知り、迷わずレジまで走ったわけです(ウソ走ってはいないです)。

日本盤すらリリースされていないこのバンドですが、2013年に結成されたシアトル出身の4人組ガールズバンド。同郷のマイク・マクレディ(PEARL JAM)に見出され、彼のプライベートレーベルからシングル「Velvet Noose」を発表しています。このシングルはマイクがプロデュースを手がけたほか、ギターでも参加(本アルバムにも彼が参加した「Velvet Noose」「The Cloud」を収録)。これが話題となり、現在のメジャーレーベルと契約し、TOOLRED HOT CHILI PEPPERSSYSTEM OF A DOWN、ジョニー・キャッシュなどのプロデュース、ミックスを手がけてきた女性エンジニア、シルヴィア・マシーをプロデューサーに迎えて完成させたのがこのアルバムです。

聴く前のイメージとしてはガレージロック的な側面が強いのかなと思っていました。実際、そういったカラーも存在するのですが、それ以上に全体を多くのは70年代のハードロック的なテイスト。曲によってはLED ZEPPELINを彷彿とさせるものもありますが、それ以上にもっとカラッとしているというか。ジャニス・ジョプリン以降、ジョーン・ジェット以前というイメージ(伝わるでしょうか?)のボーカルと、音の隙間を効果的に聴かせるアンサンブルが、古臭くもあり、どこか新鮮でもあるのが不思議です。

……で、冷静になって考え直してみると、ああそうか、これってPEARL JAM以降のアメリカンロックなのかなと。グランジの中でもBLACK SABBATHに影響を受けていない側のバンド、そちらに近い存在なのかもしれないなと。マイクがこのバンドに引っかかったのも、そういったところにあるのかもしれないな、なんて思ったわけです。

それでいて、このヴィジュアルの華やかさ。ジャケットのエログロチックな世界観とはちょっと違うものもあるんだけど、このキラキラ感もどこか70年代のそれに近いものがあるんじゃないかなと。決して80年代的煌びやかさではない、そこの小さな違いがすごく大きいと思うのですが、いかがでしょう?

アメリカではすでにGRETA VAN FLEETと共演しているようです。それもすごく納得。グランジすら後追いの世代が、気づいたら70年代的な音楽を“今の音”として作り上げてしまった。その結果が、このTHUNDERPUSSYやGRETA VAN FLEETなのかなと。もっと言えば、イギリスのTHE STRUTSあたりもそこに含まれますよね。ロックの歴史が何サイクルも経て、またここにたどり着いた。我々おっさん世代にはウェルカムですが、今を生きる若い世代にはどう響くのか。これからが見ものです。



▼THUNDERPUSSY『THUNDERPUSSY』
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