PHANTOM PLANET『PHANTOM PLANET』(2004)
アメリカはロサンジェルス出身の5人組、PHANTOM PLANETの約1年半振り通算3作目となるセルフタイトル・アルバム。現時点('04年2月末)ではまた日本盤は出ていませんが(4月上旬リリース予定)、今後いろんな意味で注目される問題作になると思いますよ。
元々はポップでメロディアスなパワーポップを信条とするバンドだったと思うんですが(俺が聴いたことがあったのは、セカンドとなる前作「THE GUEST」のみ)、それを意識してこの新作を聴くと、正直プレイヤーのストップボタンを押して、中に入れたディスクを今一度確認してしまうかもしれません。それくらい、これまでのイメージとはかけ離れた音楽性にシフトチェンジしています。
今作のプロデュースを手掛けているのが、MERCURY REVのデイヴ・フリッドマン。いろんなギターロック/ポストパンク/ポストロック系アルバムで、そしてここ日本ではナンバーガールの諸作を手掛けたことで知られる人です。この人がPHANTOM PLANETのようなパワーポップ系を手掛ける‥‥最初この情報をうちのニュースで取り上げた時は「どんな感じになるのか全然想像つかないだけに楽しみ」と思ってたんですが‥‥こりゃ想像できませんよ。まさかこんなにガレージ色が強いサウンドになるとはね‥‥
一部にデイヴ・フリッドマンらしいポストパンク色も取り入れつつ、けどそれはほんのちょっと味付け程度で、やはり基本になるのはギター中心のバンドサウンド。録音方法にもよると思うんですが、とにかくゴリゴリ且つガリガリしたギターとベースの音が目立った、ある種殺伐とした印象が強い内容になってます。ドラムサウンドひとつを取っても生々しいし、ボーカルのラフな感じからも余計そういった印象を受けるんですよね。また楽曲も以前のようなポップさが減退し、オルタナ/ガレージ系のそれっぽさが強くなって‥‥上手い表現じゃないかもしれませんが、「ブリットポップ3部作」から「タイトル無題」アルバムへと移行したBLURみたいな感じ。あれとイメージが被りますね。こういう変化って雑誌メディアとか喜びそうだけど、それまでの音楽性が三度の飯より好きだったファンからすればいい迷惑ですよね。それが如何に音楽的に優れた作品であっても‥‥
個人的な感想を言わせてもらえば、最初は確かにビックリして、ちょっと引いちゃったんですよ。事前にこういう変化をしている、とは伺っていたんですが、まさかここまでとは思ってなかったもので‥‥しかし、何度か繰り返し聴くうちに慣れたってのもあるんですが、だんだん気に入ってきちゃったんですよね。まぁ自分の場合はこういったタイプの音楽も好きだからってのもありますが、それ以上に「ライヴはどうするんだろう?」っていう意地悪な見方をしちゃってね。ほら、前作までの曲と新作の曲を同じライヴでやると、どんな感じになるのかなぁと。多分バンド側はそこまで考えずに「ちょっとここら辺で一発、ブレイク狙おうぜ!」くらいの気持ちでデイヴ・フリッドマンを迎えて、「俺達、MY BLOODY VALENTINEとかも大好きなんだぜ」なんていう面を強調しつつ(バンドオフィシャルサイトのバイオ参照)こういう方向に進んだのかな、なんて穿った見方をしてしまったりして。いや、悪くないですよ。むしろ良く出来た作品だと思います。それまでの音楽性を知らない人がいきなりこのアルバムから聴いたら、絶対にこういうバンドだと思うし、例えば「THE STROKESがポストパンクに走った」かのようなサウンドに興味を示せるなら、バンド側の勝利でしょうしね。
今後もいろいろ物議を醸し出すと思いますが‥‥きっとそれなりにブレイクするんでしょうね。例えば今夏の「SUMMERSONIC」に出演したりとか(フジロックというよりはサマソニだよな、この音って)。多分もう少ししたら雑誌なんかも騒ぎ立てると思いますし‥‥今回の「化け」がいい方向に進むのか、それとも悪い方向に進むのか、見物なのはこれからでしょうね。