TANK『RE-IGNITION』(2019)
NWOBHM(=New Wave Of British Heavy Metal)シーンが勃発して今年で40周年。そんなタイミングにDIAMOND HEADが最高な新作『THE COFFIN TRAIN』を発表するなど興味深い動きがありますが、今回紹介するTANKも同シーンから誕生したバンドのひとつ。彼らも今年4月にニューアルバム『RE-IGNITION』をリリースしています。
“ニュー”とはいうものの、正しくは最新スタジオアルバムと呼ぶべきなんでしょうか。だってその内容は、初期4作の収録曲を現編成でリレコーディングしたものなんですから。
いわゆる全盛期メンバーはミック・タッカー&クリフ・エヴァンスのギタリスト2名しか残っておらず(その彼らもデビュー時からのメンバーではなく、ミックは1983年の3rdアルバム『THIS MEANS WAR』、クリフは1984年の4thアルバム『HONOUR & BLOOD』から参加)、オリジナルシンガーのアルジー・ワード(Vo, B)もTANK名義で別バンドとして活動しているという……RATTやQUEENSRYCHEあたりで見られた厄介なケースですね。
さて、このタッカー&エヴァンス版TANKですが、このアルバムで歌っているのは現PINK CREAM 69のデヴィッド・リードマン。そりゃ悪いわけがない。しかもドラムは元SODOMのボビー・シュトコウスキー、ゲストボーカルでSODOMのトム・エンジェルリッパー、CRADLE OF FILTHのダニ・フィルスが参加していると聞けば。ねえ?
楽曲自体はもちろん最高ですよ。暴走戦車なんてたとえられた初期の勢いこそ減退していますが、それでもパワフルさは健在。MOTÖRHEADのレミーと比較されたアルジーのボーカルはここにはありませんが、デヴィッド・リードマンのディストーションボイスもなかなかのものがあると思いますし、ツインリードを活かした極上のパワーメタルとの相性も抜群です。
僕自身、TANKってそこまでしっかり聴いてきた人間ではないので、ここに収められている楽曲のうち数曲程度しか知らないライト層。そんな人間が聴いても純粋に「カッコいい!」と思えて、何度もリピートしたくなる内容なんですから、推して知るべし。
録音状態は悪いけど勢いや初期衝動性の強さは随一のオリジナル音源と、現在の耳にも耐えうる最新のサウンドで安定感の強いプレイが楽しめる再録盤。どちらも一長一短あると思いますが、7月13日に控えた来日公演のことを考えたら、ここはまず現編成での再録盤を手にとっておきたいところ。オリジナル盤はそのあとからでも全然間に合いますし、あとから「やっぱり原曲のほうが最高だ!」って言えばいいだけの話ですから(笑)。