PINK CREAM 69『GAMES PEOPLE PLAY』(1993)
1993年5月3日にリリースされたPINK CREAM 69の3rdアルバム。日本盤は同年6月17日発売。
日本デビュー作となった前作『ONE SIZE FITS ALL』(1991年)は、そのメロディアスなハードロックサウンドとアンディ・デリス(Vo)のハスキーな歌声との相性も抜群で、本国ドイツでは最高22位まで上昇。ここ日本でも高く評価され、国内未発売だった1stアルバム『PINK CREAM 69』(1989年)の日本盤リリースや初来日公演実現など大きな結果へとつながりました。
そんな好状況を経て届けられた3作目ですが、何やら過去2作とは少し質感が異なります。甘く官能的なメロディラインはどこかモノトーンなものへとシフトし、アルバムを構築する楽曲群もヘヴィでエッジの効いたミドルテンポが中心。要するに、1993年という時代(グランジブームの真っ只中、かつPANTERAやMETALLICAのブラックアルバムを筆頭とするグルーヴメタルがシーンを席巻)がモロに反映された作りへと変化しているのです。
こういう要素も過去2作(特に前作)には含まれていたものなので、突然変異というわけではない。だけど、ここまであからさまに偏ると、さすがに面食らうよね……ってことで、リリース当時は「悪くはないけど、コレジャナイ」と常々感じていた1枚でした。シングルカットされた「Keep Your Eyes On The Twisted」やミディアムバラード「Somedays I Sail」、エモーショナルなアップチューン「Shattered」などは前作までのカラーが感じられるものの、さすがにオープニングを飾る「Face In The Mirror」や、アルバム中盤に配置された「Dyin' Century」のダークさにはたじろぐよね……って話なんです。
確かに「Monday Again」のようなファストチューンや、メロディラインは過去2作には及ばないもののそれに限りなく近い作風の「Till You're Mine」など、仮に前作に含まれていたとしたら普通に楽しめるであろう楽曲も存在するのですが、過去2作にあったキラーチューンが存在しないこと、そしてアルバム冒頭の流れの悪さ(歯痒さ)がこのアルバムをワンランクもツーランクも落としている気がしてなりません。
久しぶりに聴いてみたら、当時ほどネガティブな印象を受けなかったし、最後まで新鮮な気持ちで楽しめたんです。確かにダークさ、モノトーン感は否めませんが、そういうアルバムが3作目に生まれたとしても決して不思議じゃない。ただ、そのさじ加減や見せ方がうまくなかった。ここから3曲くらいダークな曲を間引いて、「Livin' My Life For You」や「Signs Of Danger」「Where The Eagle Learns To Fly」級の名曲がひとつでもあれば、アンディ・デリスはバンドを辞めずに済んだのではないか……だとしたら、その後のHELLOWEENには誰が加入していたのか。たられば話をしたところでどうにもなりませんが、そんな未来もあったんじゃないかと思うと、やはり罪作りな1枚だなと思わずにはいられません。
▼PINK CREAM 69『GAMES PEOPLE PLAY』
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