PIXIES『SURFER ROSA』(1988)
1988年3月にリリースされたPIXIESの1stフルアルバム。
前年10月に発表されたEP『COME ON PILGRIM』(1987年)から半年という短いスパンで届けられた本作は、かのスティーヴ・アルビニがレコーディングエンジニアを担当した、数年後にオーバーグラウンドへと本格浮上するUSオルタナティヴロックシーンの夜明けを宣言する記念碑的作品。極端な話、本作がなければNIRVANAの『NEVERMIND』(1991年)も『IN UTERO』(1993年)も誕生しなかったはず。
轟音ギターの分厚い壁と美しくポップなメロディ、強弱を効果的に取り入れることでバンドのダイナミズムを的確な形で表現したアレンジ、そしてブラック・フランシス(Vo, G)とキム・ディール(Vo, B)の男女ツインボーカル編成という……90年代以降のUSのみならず日本のオルタナティヴロックシーンにも多大な影響を与えたスタイルは、本作の時点でほぼ完成の域に達しています。きっと初めて本作を聴いた邦楽リスナーは、「あれ、この曲のここって○●に似てる!」とか「この音色って○●のあのアルバムじゃん!」と特定のバンド名を思い浮かべるかもしれません。そう、すべてはこのバンドがルーツと言っても過言ではないのです。
オープニングを飾る「Bone Machine」の、破天荒なんだか気が抜けてるんだか、その波が交互に押し寄せるアレンジといい、ちょっとコミカルなのに異常にカッコいい「Broken Face」といい、90年代以降のロックにおける“雛形”のひとつとなった「Where Is My Mind?」といい、名曲揃いな本作。キムがリードボーカルをとる「Gigantic」も、のちにデヴィッド・ボウイがカバーすることになる「Cactus」も、鬼気迫る「Vamos」「I'm Amazed」も、すべて色褪せていない。全13曲でトータル35分にも満たないトータルランニングといい、完璧の一言なのです。
とはいっても、僕はリリース当時このアルバムに触れていながらも、そこまで心惹かれなかったんですよね。同じ学校にいた交換留学生のアメリカ人から勧められて聴いた記憶があるんですが、その頃はマッチョなメタル脳(笑)だったので、このナヨっとしたテイストが肌に合わず。ところが、数年後に上京してNIRVANAの『BLEACH』(1989年)に初めて触れ、かつその直後にリリースされた『NEVERMIND』に触れることで「あれ、このテイスト知ってるぞ?」と……PIXIESのことを思い出すわけです。そこから、自分が聴いていなかった時期に発売された『DOOLITTLE』(1989年)も『BOSSANOVA』(1990年)も、そして当時発売されたばかりの(結果的に最終作となった)『TROMPE LE MONDE』(1991年)も後追いで聴いたわけです。そういやあ、のちにWEEZERが登場したときも、PIXIESのことを思い出したっけ。あとは(以下キリがないので省略)。
ライブは再結成以降、何度も観ています。2004年のフジロックは、まさにこのアルバムの1曲目「Bone Machine」から始まったんでしたっけ(前半10数曲で東京事変に移動してしまったこともよく覚えています)。翌年末の単独来日にも行ったなあ(そのときも「Bone Machine」始まりでしたね)。そういった意味でも、本作は再結成以降により思い入れが強くなった1枚かもしれません。
▼PIXIES『SURFER ROSA』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)