POISON『POISON'D!』(2007)
2007年6月にリリースされた、POISONのカバーアルバム。スタジオ作品としては本作が、現時点での最新アルバムとなります(残念ながら、現在まで日本盤リリースはなし)。
1996年にC.C.デヴィル(G, Vo)がバンドに復帰し、新録5曲を含むライブアルバム『POWER TO THE PEOPLE』(2000年)、オリジナルアルバム『HOLLYWEIRD』(2002年)をそれぞれインディーズレーベルから発表。ライブ活動を精力的に続けることで動員を伸ばし続け、2006年にはデビュー20周年を記念した新録曲「We're An American Band」(GRAND FUNK RAILROADのカバー)を含むベストアルバム『THE BEST OF POISON: 20 YEARS OF ROCK』をリリースして全米17位という好記録を残しています。
そんな好状況を受け、先のベストアルバムから立て続けに制作されたのが本作。全13曲(デジタル盤のみ14曲)すべてが新録とはいかず、5曲(KISS「Rock And Roll All Nite」、THE WHO「Squeeze Box」、ジム・クロウチ「You Don't Mess Around with Jim」、LOGGINS AND MESSINA「Your Mama Don't Dance」、そして先の「We're An American Band」)が既発テイクとなりました。なので、カバー・コンピレーションという呼び方が正しいのかもしれませんね。
新録はデジタル盤のみ収録のジャスティン・ティンバーレイク「SexyBack」を含む全9曲。SWEET、デヴィッド・ボウイ、アリス・クーパー、TOM PETTY AND THE HEARTBREAKERS、THE MARSHALL TUCKER BAND、THE ROMANTICS、THE ROLLING STONES、THE CARSと、2000年代のジャスティンの除けばすべて70年代の楽曲(THE ROMANTICSのみ1980年とギリですが)。つまり、POISONというバンドのルーツナンバー/アーティストということになるのでしょうね。既発の5強もすべて70年代前半の楽曲ですし、そういう意味ではトータル性の高い選曲だと思います。
POISONらしいという点においてはボウイやアリス・クーパー、SWEETといったグラマラスなバンドの存在が挙げられるでしょう。既発のKISS含め、これらのアーティストはバンドのパブリックイメージまんまなので、選曲含めまあ納得かな。
TOM PETTY AND THE HEARTBREAKERSやTHE MARSHALL TUCKER BAND、あるいはジム・クロウチやLOGGINS AND MESSINAはバンドのフォーキーでソウルフルなパートを担っていると捉えることができるでしょう。特に、本作における「Can't You See」は3rdアルバム『FLESH & BLOOD』(1990年)や4thアルバム『NATIVE TONGUE』(1993年)での路線に通ずるものがありますしね。
意外性という点においては、THE ROMANTICSやTHE CARSの存在が挙げられるのではないでしょうか。ニューウェイヴ流れのバンドですが、バブルガム・ポップ的立ち位置で考えると、実は意外とPOISONとの親和性も高い気がしますし。あ、ストーンズやTHE WHOはとりあえずやっておかないと、くらいのポジションでいいんじゃないでしょうか(笑)。
で、本作における最大の聴きどころって実はボーナストラック的立ち位置の「SexyBack」なんですよね。この曲の出来が非常に素晴らしくて、僕はリリース当時よくこの曲を自分のDJ時に使用したものです。思えばPOISONってHR/HMがラウド&ヘヴィやインダストリアル勢に押しつぶされそうになった時期も、一貫として自身のスタイルを崩さなかった珍しい存在なんですよ。そんな彼らが、いわゆるモダンなサウンドと融合したときどうなるのか……その答えがこの1曲に込められているような気がするんです。POISONらしさは皆無かもしれませんが(笑)、僕はこのカバー大好きなんですよね。
さて。そんなPOISONは本作以降、新曲や新録曲を一切発表していません。ブレット・マイケルズ(Vo)はソロ作を発表しているのですが……もはやバンドは集金ツアーのために必要不可欠な存在に成り下がってしまったのかな。それはそれでいいんだけど……1曲くらいは。ね?
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