PRAYING MANTIS『A CRY FOR THE NEW WORLD』(1993)
NWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal)つながりで、まもなく来日公演も行われるPRAYING MANTISからも1枚紹介してみたいと思います。
今回紹介するのは、1990年に再結成を果たした同バンドの通算3作目、再結成後2作目のオリジナルアルバム。ティノ(G, Vo)&クリス(B, Vo)のトロイ兄弟を中心に結成され、1981年に名盤と呼ばれる1stアルバム『TIME TELLS NO LIES』を発表したPRAYING MANTISですが、その後契約上のトラブルなどに巻き込まれて活動休止へ。1990年に日本で行われたNWOBHM10周年コンサートに、元IRON MAIDENのデニス・ストラットン(G)らと参加したことで、デニスを含む編成でPRAYING MANTISとしての活動を再開。1991年発表の2ndアルバム『PREDATOR IN DISGUISE』では専任ボーカルを入れずに制作されましたが、この『A CRY FOR THE NEW WORLD』にはアルバムとしては初めて専任ボーカルを迎えて制作されました。
ここで歌っているのは、新人シンガーのコリン・ピール。決して上手とか存在感の強い歌い手ではありませんが、その適度に湿り気のある歌声はPRAYING MANTISの特徴である「哀愁感の強い泣きメロHR」にぴったり。結果として、この『A CRY FOR THE NEW WORLD』という作品を名盤と呼ぶにふさわしい1枚へと昇華させています。
1曲目の疾走チューン「Rise Up Again」からとにかく圧巻。この泣きのファストナンバーに続くタイトルトラック「A Cry For The New World」も、劇的なバラード「A Moment In Life」も非の打ち所がない名曲。その後もツインリードギターがひたすらカッコいい超絶名曲「Letting Go」を筆頭に、名曲のオンパレード。クライマックスに相応しい大作「Journeyman」から突如不穏な空気に一変するラストのインストナンバー「The Final Eclipse」まで、とにかく最後まで飽きることなく楽しめる1枚です。
サウンドプロダクション的にも前作『PREDATOR IN DISGUISE』から向上しているし(2017年の今聴くと作り込みすぎ感が強いですが)、前作でのボーカルに物足りなさを感じていた人(そういう人もいたんじゃないかなと。僕はアリでしたが、当時自分の周りにそういう人が複数いたので)もコリンのスルメ的ボーカルには満足してくれると思うし。ひとつ難を挙げるとすると、6分を超える長尺曲が複数あることで全11曲で60分超えの大作になっているということ。もしかしたら9曲ぐらいでまとめて50分超えないぐらいに収めていたら、もっと高評価を得ていたのかなとも思えなくもない……けど、良い曲が多いことに越したことはないし、90年代前半という時代を考えればこれはこれで良かったのかもしれませんね。
▼PRAYING MANTIS『A CRY FOR THE NEW WORLD』
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