PRETTY BOY FLOYD『LEATHER BOYZ WITH ELECTRIC TOYZ』(1989)
MOTLEY CRUE、特に初期3作の彼らに影響を受けたことがあからさまなのが、今回紹介するPRETTY BOY FLOYという4人組ハードロックバンドのデビューアルバム『LEATHER BOYZ WITH ELECTRIC TOYZ』です。アメリカでは1989年末、ここ日本では1990年1月にリリースされた本作、僕も日本盤がリリースされた直後に入手したことをよく覚えています。
まず、そのルックス。GUNS N' ROSESの登場を機にHR/HMシーンがグラム路線からより肉感的な路線へと完全移行したタイミングに、この完全に勘違いしたケバケバしさ。ヴィンス・ニールを彷彿とさせる甲高い歌声と、決して上手とは言い難い楽器隊のテク、深めのリバーブがかかったサウンドプロダクションに初期MOTLEYやPOISONのような薄っぺらい(最高の褒め言葉)楽曲の数々。完全に時代に逆行しているその肝の座り具合に呆気にとられたし、これを80年代が終わろうとするタイミングに発表したメジャーレーベルの心意気(あるいは気の迷い)にも拍手を送りたい。いやいや、本気で。
仰々しいオープニングSEから静寂を打ち破るドラム、そこからスタートするアルバムタイトルトラック「Leather Boyz With Electric Toyz」は完全に初期MOTLEYそのもの。「Oh〜Ooooh〜」とシンガロングしたくなるコーラスといい、ヘタウマなボーカルといい、80年代の悪しき部分を完璧にサンプリングしております。続くリード曲「Rock And Roll (Is Gonna Set The Night On Fire)」の“未完成ならではの、勢いのみで作られた”感も悪くない。
その後もそういった楽曲がずらりと並ぶのですが、特筆すべきは5曲目の「Toast Of The Town」。この曲はMOTLEY CRUEが1981年、デビューアルバム『TOO FAST FOR LOVE』のインディーズ盤を発表する前にリリースしたシングル『STICK TO YOUR GUNS』のB面曲で、当時は廃盤状態で入手困難だった1曲。そのレア曲をセレクトするあたりに、彼らのマニアックぶりというか「俺たち、初期のMOTLEY CRUEになりたいんや!」という健気な気持ちが感じ取れて好感が持てます。だって、上手にカバーしようとせず、完全に“ヘタウマだった時代のMOTLEY CRUE”を完璧に、下手なままコピーしてるんですから。
また「Wild Angels」や「I Wanna Be With You」といったバラードタイプの楽曲も含まれていますが、いわゆるパワーバラードというよりは“アコースティック色強めのミディアムポップチューン”という印象が強いかな。全10曲で36分程度という長さも初期L.A.メタルを踏襲しているし、実際適度な長さで飽きる前に終わるからちょうど良いんですよね。
なんだか褒めてるのか貶してるのか微妙かもしれませんが、個人的にはお気に入りの1枚。万人にはオススメしませんが、あの時代のL.A.メタルが好きで、B級バンドに対しても寛容なリスナーにこそ聴いてほしい“隠れた名盤”です。
▼PRETTY BOY FLOYD『LEATHER BOYZ WITH ELECTRIC TOYZ』
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