PRETTY MAIDS『JUMP THE GUN』(1990)
1990年4月20日にリリースされたPRETTY MAIDSの3rdアルバム。日本盤は同年5月21日に発売されています。
1984年にアルバム『RED HOT AND HEAVY』で、CBSから鳴り物入りでメジャーデビューを果たしたPRETTY MAIDS。続く2ndアルバム『FUTURE WORLD』(1987年)では当時のHR/HMブームも手伝って、初の全米TOP200入り(165位)を果たし、近隣のスウェーデン出身のEUROPEに次いでブレイクが期待されました。実際、レーベル側からもかなりのプレッシャーもあったのではないかと思います。
その思惑は本作にも強く表れており、まずプロデューサーにDEEP PURPLEのロジャー・グローヴァー(B)を迎えて制作。ロジャーは「Dream On」のレコーディングにもベースで参加したほか、同じDEEP PURPLEのイアン・ペイス(Dr)が「Young Blood」にゲスト参加。楽曲面ではアメリカのHR/HバンドICONのアウトテイクをカバーしたもの(「Hang Tough」)が含まれており、いろんな政治的施策が見え隠れします。
実際、楽曲も1stアルバムでのパワーメタル感こそ弱まったものの、適度なソフトさとメロディアスさがバランスよく散りばめられた良質な北欧HR/HMアルバムに仕上がっています。オープニングを飾る「Leathal Heroes」や「Jump The Gun」のパワフルさ、「Rock The House」や「Attention」といったファストナンバーのヘヴィさ、適度なヘヴィさとメロウさがバランスよく配合された「Young Blood」、ラジオやMTVでのヒットを狙った哀愁味強めのパワーバラード「Savage Heart」、ポップサイドをひたすら強調した「Hang Tough」、アーシーなロックチューン「Dream On」などと、アメリカナイズ度は過去イチながらもバラエティ豊かな楽曲が揃っており、改めてこのバンドのメロディメイカーぶりに驚かされます。
リリース当時はバンドメンバーの脱退が続いたり、当時予定されていたDEEP PURPLEとのジョイントツアーがポシャったり、結局レーベルから万全のサポートを受けられなかったりと、なにかとネガティブなイメージがつきまとったこともあり、本作に対する評価もあまり高くなかった記憶があります。特に、心機一転&起死回生の次作『SIN-DECADE』(1992年)のインパクトが強かったせいで、本作はスルーされがちですし。ところが、リリースから30年経った今聴くと(ポップさは強いものの)聴き飽きない魅力に満ちた1枚だと気づかされるはずです。いやいや、名盤じゃないですか。今まで邪険にしてごめんなさい。
実は、僕が初めて触れたPRETTY MAIDSのアルバムが本作。某雑誌は読んでいたものの過去2作は田舎でなかなか手に入らなかったため、上京後すぐにリリースされた本作は某誌の巻頭インタビューを読んでからすぐ手に入れたのでした。
ロジャー・グローヴァーが関わっていること、時期的にも近いこともあってか、DEEP PURPLEの『SLAVES AND MASTERS』(1990年)と通ずるものを感じるのは僕だけでしょうか。
ちなみに本作、ストリーミングサービスではなぜか単独配信されておらず、Sony時代の音源をまとめたボックスセットの一部として聴くことができます。なので、本作の12曲だけを抜き取ったプレイリストを作りましたので、気になる方はそちら(↓)をチェックしてみてください。
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