2004/03/05

PRIMAL SCREAM『DIRTY HITS』(2003)

「この程度で俺等のこと、解った気になるなよな!」っていうボビー・ギレスピーの叫び声が聞こえてきそうな気がしないでもないですが、とりあえず本人達の選曲ってことである種の開き直りすら感じられる、このベストアルバム「DIRTY HITS」。既にPRIMAL SCREAMも結成して20年近くが経ち、こうやってベスト盤が出せるまでに成長しました‥‥けど、このベスト盤はいろんな意味で厄介な存在でもあるわけでして。

本来、ベスト盤って「それまでそのアーティストに対して興味がなかった(あるいは知らなかった)初心者が、手っ取り早くそのアーティストの歴史を理解するための教科書的アイテム」なわけですよ。まぁ出す側としては「ここらで活動にひと区切りつけたいし、新しいことにチャレンジしたいから、ベスト出しておくか」とか「レコード会社の移籍も無事決まったし、とりあえず未発表曲が数曲あるから、これを古巣に渡してベストでも出してもらうか」程度の軽い気持ちで出すのかもしれませんが。あるいは「契約残ってるし、消化するために出しますか」とか「んーだよー、契約消化する前に解散すんなよなー! しょーがねー、アルバム2枚しか出してなかったけど無理矢理ベスト盤出して消化しますか」っていう大人の事情でリリースされる場合もありますが(実は大半がこれだったりして)。

プライマルの場合はどうだったか知りませんが、とにかく出ちゃったわけですよ。ま、こうやってベストでも出ればツアーも出来るし、バンド側にとってはいい口実なのかもしれないよね。実際、このベスト出してからUKツアーもやったし、この3月にはまたまた日本にやって来るし(この約1年ちょっとの間に3回くらい来てるしね)。

で、これまでそんなプライマルに「取っ付き難い」という印象を持っていたロックファンにとって、正に「これから聴いてみれば大丈夫かも‥‥」と思わせるような存在が登場した。それがこのベスト盤なのかな、と。しかし、いざ蓋を開けてみると‥‥ファースト&セカンドからは選曲されず、出世作となったサード「SCREAMADELICA」から'02年の最新作「EVIL HEAT」までの5作からしか選曲されておらず、しかもアルバムタイトル通り、その殆どがシングル曲という豪華さ(そしてある意味の手抜き加減)。そりゃね、初心者からするとそういったヒット曲から入って行くのが一番なんだろうけど、ことプライマルに関してはそうはいかないのね。このバンドってアルバム毎にコンセプトやサウンドが異なるでしょ。同じダンスミュージックを背骨に持ちながらも、「SCREAMADELICA」と「VANISHING POINT」とでは全くの別物だし、アメリカ南部への憧れをそのまま体現してしまった「GIVE OUT BUT DON'T GIVE UP」に関してはもう‥‥ねぇ。そんな彼らの(ある意味)代表曲を年代順に並べているんだけど、やはり3~4曲毎にスタイルが変わるっていうのは、初心者的にどう映るんだろうね。その辺はちょっと聞いてみたいかも。

ぶっちゃけ、もしプライマルを本気で知りたいのなら、アルバム単位で聴いていった方が絶対いいと思います。勿論、1曲1曲を抜き出して聴けば当然カッコいいわけですが、これがね‥‥ "Higher Than The Sun" の後に "Rocks" がきたりしちゃうと、さすがにね。勿体ないと思うんですよ。

そうはいっても、何度も言うようにやはりどの曲も優れものなのは確かなので、流し聴きする分には丁度いいコンピレーション盤かもしれませんね。ただ、彼らの歴史を勉強するにはちょっと不向きな気がします。それでも‥‥各アルバム毎にまとまって曲が収録されてるから、気に入った時期があったら、それらが収録されているオリジナルアルバムに手を出す、そういう風に聴いていけば確かに役立つかも。ええ、そういう風に使ってみてください。むしろそうすべきです。

個人的には、もしこれからプライマルを聴こうと思っているのなら、迷わず最新オリジナルアルバムの「EVIL HEAT」を聴けばいいと思うし、彼らのライヴでの爆裂振りを伺い知りたいのなら、昨年日本限定でリリースされた「LIVE IN JAPAN」を聴くのもいいかと。こっちもある種ベスト盤的役割を果たしてくれるのでね。

最後に。もしこれからこのベスト盤を買おうと考えている人がいたら、注意してもらいたい点がひとつ。実はこのベスト盤には初回限定仕様が用意されていて、その特典が日本盤とUK盤(US盤も含む)とでは全然違うのね。日本盤はPV9曲が収録されたDVDが、UK盤は過去のシングルに収録されていたリミックスワークが13曲入ったCDが付いてきます。PVも普段観る機会がない人にはいいだろうけど、ここで声を大にして言いたいのは‥‥「迷わずUK初回限定盤をゲットせよ!」ということ。これから聴いてみようって人、このロックバンドが如何に「ダンスミュージック(テクノ/ハウス/ダブ/ファンク等)」にこだわっているか、それがこのリミックスワークから存分に伝わってくると思います。参加してるリミキサー陣の名前だけ挙げてみても、エイドリアン・シャーウッド、THE ORB、SABRES OF PARADISE、TWO LONE SWORDSMEN、THE CHEMICAL BROTHERS、MASSIVE ATTACK、アレック・エンパイア等々。どうよこれ? 2002年に出たMANIC STREET PREACHERSのベスト盤付属のリミックスCDも凄かったけど(これもシングルに収録されてたものをひとまとめにしたもの。UK盤は初回限定のみ、日本盤は常に2枚組仕様)、こっちも改めて聴いてみて、やっぱり凄いな、と。正直、これだけの為にこのベストを買ったとしても決して高い買い物ではないはず。解説とか歌詞が載ってないけど、それでも2,000円以下でヒット曲も、リミックス曲もそれぞれ70分強楽しめるんだから、絶対にUK盤でしょう!



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投稿: 2004 03 05 03:41 午後 [2003年の作品, Primal Scream] | 固定リンク

2002/12/26

PRIMAL SCREAM『EVIL HEAT』(2002)

PRIMAL SCREAMの通算7作目のアルバム(ダブ・リミックス集「ECHO DECK」は除く)。プライマルはデビュー時と現在とでは比べものにならないくらい別物のバンドになってしまったわけですが、それでも一環している点がひとつだけあるんですね。それは中心人物であるシンガーのボビー・ギレスピーのパンク振り。プライマル以前のJESUS & MARY CHAIN時代(当時はドラマー)から彼のキャリアはスタートしてるわけですが、そこでも終始一貫してパンクしてるわけです。この「EVIL HEAT」のブックレット裏表紙に、革ジャンの背中に「REBEL 25」と書かれた写真があるんですが、ボビー曰く「俺はパンクロッカー歴25年」というところからきてるそうで‥‥もうね、この頭の悪さが最高なわけですよ。

そんなプライマルの新作は、前作「XTRMNTR」を更に強力に、凶悪にした印象を与える楽曲によって構成されています。前作も十分にパンキッシュで攻撃的な作品集でしたが、新作を聴いてしまうともうなんていうか‥‥あれだけ良いと思ってた前作ですらヤワに聞こえてしまうんですから‥‥

まずね、プロデューサー陣からして狂ってるわけよ。前作にも参加していたジャグズ・クーナー("Miss Lucifer")の他に、MY BLOODY VALENTINEのメンバーで現在はプライマルズのサブメンバーでもあるケヴィン・シールズが6曲("Deep Hit Of Morning Sun"、"Detroit"、"Rise"、"The Lord Is My Shotgun"、"City"、"Skull X")、かのアンディ・ウェザオールによるTWO LONE SWORDSMENが5曲("Autobahn 66"、"Some Velvet Morning"、"A Scanner Darkly"、"Space Blues #2"、"Substance D")それぞれプロデュースを手掛けているわけです。また、シングルオンリーですがATARI TEENAGE RIOTのアレック・エンパイアが"Miss Lucifer"のリミックスを手掛けていたりもします(これがまんまアレックといった感じで笑えるのですが)。

そういったバラバラな製作陣が携わったアルバム、やはり音楽的にも結構多岐に渡っています。バンド演奏によるシンプルなパンクソング"City"や"Skull X"もあれば、完全にエレクトロニカしている"Deep Hit Of Morning Sun"や"Space Blues #2"もあるし、KRAFTWERK的なジャーマン・テクノっぽい"Autobahn 66"や"A Scanner Darkly"もあるし、前作に収録された"Swastika Eyes"の発展型的エレクトロ・パンクチューン"Miss Lucifer"、"Detroit"もあるし、初の試みであろうエレクトロ・ブルーズ"The Lord Is My Shotgun"もある。正しく「ELECTRONIC GARAGE BAND FUTURE ROCK'N'ROLL」という表現がピッタリな音だよね。アルバムとして音楽的な一貫性はあまり感じられないのかもしれないけど、俺にはこれが一本筋の通った音楽に聞こえるんだよね。それが先の「パンク」って言葉だったり、「REBEL MUSIC」という表現だったりするんだけど。

ジョー・ストラマーという人はCLASHを通してロックンロールに拘らず、スカやレゲエ、ダブ等多岐に渡る音楽を「REBEL MUSIC」として表現してきたわけだけど、正しくプライマルというバンドはこのCLASHの後継者的存在なわけですよ。'87年という時代にサイケ色の強いファーストアルバムでデビューし、'89年に時代錯誤なガレージロックを、'91年にはロックバンドとしてはいち早くレイヴ・カルチャーに接近し、かと思えば'94年には祖先帰り的なアメリカン・ルーツミュージックに接近し、トム・ダウドやジョージ・クリントンまで引っ張り出してしまう。'97年にはレゲエやダブ等に影響を受けたエレクトロミュージックを我々に提示し、'00年には更にそれらの音楽を拡大/拡散したような作品を生み出す‥‥アルバム毎に音楽的変化を繰り返しながらも、常にボビーの頭の中には「パンク」というキーワードがあったはずなんです。それは社会に対する怒りであり、ロックシーンに対する挑戦状であったり、我々ファンに対する啖呵であったり。人によっては「こうコロコロとやってること変えるなんて信用ならない」と思うでしょうけど、俺は逆に「だからこそ信用できるんだよ、この男は」って感心しちゃうんだわ。

音楽的にはもう、何も言うことはないよ。聴いて肌で感じで欲しい、そんな狂った音が満載。是非大音量で聴いて欲しいですね。そして出来れば日本盤の英詞を読みながらもう一度聴いてみてください(ボビーの意向によって対訳は載せていないそうです。が‥‥当初は全曲対訳が付くはずで、実際それに当たった人が全訳したそうですが、内容があまりに過激で酷かったそうで、日本のレコード会社側が掲載を中止した、という裏話も耳にしてます)

これがロックンロールの未来だとは言わないけど、間違いなくこれもロックンロールやパンクロックのひとつの形だと思います。人によってはこれを「エレクトロ・ロック」と呼ぶかもしれないし、あるいは「テクノ」もしくは「エレクトロニカ」と呼ぶかもしれない。もっと酷い人になると「クズ」と言い切ってしまうかも‥‥それでいいと思います。そういう風に一筋縄でいかない、ホントにイカレたアルバムだと思うので。個人的には2002年の10枚に入る作品ですね。



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投稿: 2002 12 26 03:37 午後 [2002年の作品, Primal Scream] | 固定リンク