PRIMUS『CONSPIRANOID』(2022)
2022年4月22日にリリースされたPRIMUSの最新EP。日本盤未発売。
新録音源としては、現時点では最新アルバムとなる『THE DESATURATING SEVEN』(2017年)以来4年7ヶ月ぶり。アナログ盤とデジタルのみでのリリースとなり、全3曲と曲数自体は少ないながらも中身は約20分という、非常に濃厚な仕上がりとなっています。
タイトルトラック「Conspiranoia」は約11分半と、PRIMUSのキャリアで最長の1曲。タイトルは“Conspiracy(=陰謀)”と“Paranoid(=偏執性)”を掛け合わせた造語で、フロントマンのレス・クレイプール(Vo, B)は「現代世界における誤った情報や陰謀論を取り巻く文化の批判と風刺」としての警告物語をこの大作で表現しているんだとか。ダークさ漂う世界観と、ダウナーなファンクテイストも感じられるアレンジ(コーラスのフレーズ含め往年のTHE ROLLING STONESと重なる部分も)、常に一定の温度感で進行する構成含め、この時代ならではのプログロックと言えるのではないでしょうか。
カップリングには「Follow The Fool」「Erin On The Side Of Caution」という、非常にPRIMUSらしいストレンジな2曲を用意。前者は本作の制作に入る前から完成していた楽曲とのことで、いかにもPRIMUSといった仕上がりではないでしょうか。やっていることは1980年代末からほとんど変わっていないんだけど、今でも新鮮に響くということは、常に時代の先を進んできた表れでもあるのかな。
もう一方の「Erin On The Side Of Caution」はこのEPのために制作された新曲。「Conspiranoia」が最初から長い曲を作ることを心がけていたのに対し、こちらはおそらくそういった決め打ちなしで制作されたものかなという気が。ベースラインといいギターのバッキングといい、相変わらず一筋縄ではいかないフレージングの連発で、デビューから30年以上経った今もPRIMUSという奇跡のトリオに誰も追いつけていないことを再確認させられる1曲です。
本当なら『THE DESATURATING SEVEN』に続くフルアルバムに期待したいところですが、このコロナ禍でアルバムというフォーマットでの制作から興味が失せてしまたっという彼ら。この先状況が少しずつ回復することで、長い間隔が空くことなくまとまった作品誕生の可能性も高くなるんじゃないかと予想しています。
▼PRIMUS『CONSPIRANOID』
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