カテゴリー「Prince」の13件の記事

2024年3月21日 (木)

PRINCE & THE REVOLUTION『PURPLE RAIN』(1984)

1984年6月25日にリリースされたプリンスの6thアルバム。PRINCE & THE REVOLUTIONでは本作が最初の作品となります。

前作『1999』(1982年)が初の全米トップ10入り(最高7位)を記録したほか、同作からは「1999」(米12位)、「Little Red Corvette」(同6位)、「Delirious」(同8位)、「Let's Pretend We're Married」(同52位)とヒットシングルが多数誕生。そんな勢いづいた彼の人気の決定打となったのが、1984年に公開された自伝的映画『プリンス/パープル・レイン』と同作のサウンドトラック的役割を果たすアルバム『PURPLE RAIN』でした。

同アルバムからは「When Doves Cry」「Let's Go Crazy」という2つの全米No.1シングルが生まれ、このうち「When Doves Cry」は1984年のBillboard年間チャート1位。このほかにも「Purple Rain」(同2位)、「I Would Die 4 U」(同8位)、「Take Me With U」(同25位)と計5枚のヒットシングルが生まれ、アルバム自体も彼のキャリア中初の全米1位に輝き、現在までに1300万枚以上を売り上げる最大のヒット作となりました。また、映画自体の興行収入も週間ランキング1位、年間ランキングでも11位という好成績を残しています。

THE REVOLUTIONというバックバンドを携えているものの、「When Doves Cry」などを筆頭に基本路線としてはこれまでと変わらず。そんな中、「Let's Go Crazy」や「Take Me With U」「Purple Rain」などバンドサウンド色が強まった楽曲も含まれており、そうした側面が従来のリスナー層からさらに拡大させる鍵となったのかなと思います。事実、当時はそうした“聴きやすさ”が入り口として十分に役割を果たし、僕のような中坊にもしっかり届いたのですから。と同時に、プリンスという唯一無二の才能が適度な大衆性を取り入れたことで、結果的に『THRILLER』(1982年)が当時バカ売れし続けていたマイケル・ジャクソンにも匹敵する存在にまで登り詰めることになります。

取っ付きにくさを伴うかもしれないプリンスの作品において、実は本作が異色の存在であることは、その後のキャリアを見れば一目瞭然。しかし、彼の魅力の一端を知るという点では入門編としてもっともわかりやすい1枚なのも確か。本作や『SIGN O' THE TIMES』(1987年)、あるいは1990年代のTHE NEW POWER GENERATION期あたりから触れていけば、自然と馴染んでいけるのではないでしょうか。

あと、アルバムラストの「Purple Rain」で聴ける、プリンスのギタリストとしての腕前にもぜひ注目してもらいたい。以降もさまざな局面でその技量の高さを遺憾なく発揮してきましたが、この曲のギターソロは歴史に残すべき名演だと断言したいです。

ちなみに、2017年に発売されたデラックス・エディションには本作りリース後の1985年3月にニューヨークで行われたライブを収めたDVDが付属していので、こちらもオススメです(2022年には同ライブ映像がBlu-ray化、しかもライブCD付きで単独発売されていますが、それはまた別の機会に)。

 


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2021年8月11日 (水)

PRINCE『WELCOME 2 AMERICA』(2021)

2021年7月30日にリリースされたプリンスの未発表音源集(アルバム)。

2016年にプリンスが亡くなって以降、数々の編集盤や既発アルバムのデラックスエディションが発売されており、中でも『PIANO AND A MICROPHONE 1983』(2018年)や『ORIGINALS』(2019年)はオリジナルアルバムに近い立ち位置で編集され、多くのファンを唸らせてきました。今回の『WELCOME 2 AMERICA』もその2作の延長線上にある作品ですが、これらと異なるのは今作がすでに1枚のアルバムとして完成されていたにも関わらず、現在までお蔵入りとなっていたことです。

『WELCOME 2 AMERICA』は2010年にレコーディングされた作品集とのことで、年齢的には51〜2歳の時期。リリースタームでいえば新聞や雑誌の付録として発表された『20TEN』(2010年)と『PLECTRUMELECTRUM』『ART OF OFFICIAL AGE』(ともに2014年)の間。『20TEN』は2010年初頭まで制作していた楽曲が含まれているので、タイミング的にはその直後にレコーディングされたものということになるのかもしれません。

プレスリリースによると、本作は「変化しつづける世の中や政治的分裂、マスメディアによる情報コントロール、人種やジェンダーなどあらゆる差別や偏見など、今まさに2021年日本をはじめ全世界が直面している社会問題に対し、プリンスが抱いた懸念、心願った希望、描いた未来が記録されたパワフルかつメッセージ性の強い作品となっており、プリンス本人は2010年に『世の中は偽情報に溢れかえっている。ジョージ・オーウェルが警告していた未来そのものだ。僕たちはこのようなチャレンジングな時代を信念曲げずに生きなければならない』と語って」いたそうです。11年前よりも状況はさらに悪化していることを考えると、時代を先読みした内容とも言えるかもしれません。

『MUSICOLOGY』(2004年)前後から再び勢力的なリリースが目立ち始め、作風的にもファンキーかつロックなテイストを強めに散りばめた安定感の強い作品が続いていたプリンスですが、この『WELCOME 2 AMERICA』は冒頭3曲(「Welcome 2 America」「Running Game (Son Of A Slave Master)」「Born 2 Die」)が非常に落ち着いたテイストでまとめられており、いささかダークさが目立つ作風。ロック色が若干強めのSOUL ASYLUMのカバー「Stand Up And B Strong」(原曲タイトルは「Stand Up And Be Strong」)やポップなアップチューン「Hot Summer」も含まれているものの、前半は全体的に肩の力が抜けたプリンスを楽しむことができます。

アルバム後半はパワフルなファンクチューン「Check The Records」で、それまでの世界観を一転。以降もクールな「Same Page, Different Book」、ジャジーなソウルバラード「When She Comes」、ハンドクラップが良いアクセントの「1919 (Rin Tin Tin)」、軽やかなファンクロック「Yes」、サイケデリックなポップチューン「One Day We Will All B Free」と緩急に富んだ選曲で最後まで楽しませてくれます。

力みすぎない落ち着いた作風は全体を通して貫かれていますが、序盤のダークさも相まってどこかそれまでのプリンスとは違った印象を受ける本作。もし本作があの当時、このままリリースされていたらどんな評価を受けたのかも気になりますが、11年寝かしておいてもまっく聴き劣りしないということは、それだけ普遍的なソウル/R&B/ポップアルバムだったということなのかもしれませんね。

 


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2020年12月27日 (日)

PRINCE『ORIGINALS』(2019)

2019年6月7日にリリースされたプリンスの未発表音源集。日本盤は同年6月21日に発売。

本作はプリンスが他アーティストに提供した楽曲の、プリンスによるオリジナルバージョンを集めたアルバム。全15トラック中14トラックが未発表音源で、プリンスの死後発表された数々の未発表音源の中でも特に本作は非常に興味深い内容と言えるのではないでしょうか。

収録曲の中でもっとも知名度が高いのが、THE BANGLESに提供した「Manic Monday」とシネイド・オコナーのカバーで知られる「Nothing Compares 2 U」でしょう。なにせ前者は全米2位、後者は全米1位という高記録を残しているわけですから。「Manic Monday」はもともとAPOLLONIA 6のためにプリンスが書き下ろしたで、オリジナルバージョンではプリンスとのデュエットが聴けたそうですが、結果として世に出ることなくお蔵入り。のちにTHE BANGLESが取り上げ大ヒットを遂げるわけです。また、「Nothing Compares 2 U」もオリジナルはファンクバンドTHE FAMILYのアルバム収録曲で、原曲のリリースから5年後にシネイドがヒットさせています。

「Manic Monday」のプリンス・バージョンですが、あの印象的なピアノのリフはそのまんま。全体の雰囲気もほぼ一緒でキーも同じ。THE BANGLESバージョンのほうがロックバンドならではの躍動感が強く出ており、プリンス版のほうはアクの強さが印象的といったところでしょうか。

「Nothing Compares 2 U」のプリンス歌唱版のみ既発ですが、改めてシネイド・オコナー版のアレンジのシンプルさと個性的な歌声のおかげでオリジナリティを確立させることに成功したのではないでしょうか。ちょっと大げさな表現になりますが、プリンス版はゴスペル、シネイド版は賛美歌……どうでしょう?

他の楽曲に関しても、どれもプリンスの作品として「実はシングル『○○』のカップリングとして198○年に発表済み」と言われても信じてしまうぐらい、“普通にプリンスのオリジナル曲”。バックトラック的には楽曲提供された歌唱アーティストのバージョンとほぼ一致しますし、当たり前か。それに、他人に提供する楽曲というのもあってか、自身のヒットシングル並みにキャッチーな楽曲が並んでいるんですよね。ここまでキャッチーな楽曲がズラリと並ぶアルバムという点においても、本作は“聴いておくべき1枚”と言えるのではないでしょうか。

とはいえ、先の「Nothing Compares 2 U」以外は世に出す予定はまったくなかったわけですから、きっと彼が亡くならなかったらこの先何年、何十年と聴く機会は生まれなかったんだろうな。彼にとっては「何してくれてんねん」案件でしょうけど、ファンからしたら「ずっと聴きたかったものが聴けた!」といううれしい1枚。複雑な心境にもなりますが、出していただいたからには素直に楽しみたいと思います。

各オリジナルアルバムに付随した未発表曲や未発表テイクも良いですが、やっぱり「余りもの」だったり「作りかけ」という印象が強い。それだったら、こうしたコンセプトのしっかりしたコンピ盤のほうが出す意味が大きいのかな。この先、ここまでコンセプチュアルな未発表曲集やコンピが世に出ることはないんでしょうね。

 


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2020年7月18日 (土)

INTER ARMA『GARBERS DAYS REVISITED』(2020)

2020年7月上旬発売の、INTER ARMAのカバーアルバム。日本盤未発売。

INTER ARMAはバージニア州リッチモンド出身の5人組みスラッジ/デス/ポスト・メタルバンド。2006年の結成以降、これまでに4枚のオリジナルアルバムを発表しており、今作は4thアルバム『SULPHUR ENGLISH』(2019年)に続くスタジオ作品となります。

このバンドに関してはほぼ知識がなく、本作で初めて触れることになります。カバーの内訳は以下のとおり(カッコ内は原曲アーティスト名)。

01. Scarecrow [MINISTRY]
02. Southern Man [ニール・ヤング]
03. Hard Times [CRO-MAGS]
04. March Of The Pigs [NINE INCH NAILS]
05. The Girl Who Lives On Heaven Hill [HÜSKER DÜ]
06. In League With Satan [VENOM]
07. Runnin' Down A Dream [TOM PETTY & THE HEARTBREAKERS]
08. Purple Rain [PRINCE & THE REVOLUTION]

メタルというよりはオルタナ・メタル/インダストリアル系、ブラックメタルやクロスオーバー系ハードコアが中心で、そこにニール・ヤングやトム・ペティ、プリンスといった王道(かな?)をミックスしたセレクト。カバー自体も比較的原曲に忠実なものが多く、MINISTRY「Scarecrow」やNIN「March Of The Pigs」なんてマシーンビートをそのままヒューマンビートに置き換えたくらいで、まんまですよね。

かと思えば、ニール・ヤング「Southern Man」はスラッジ色かつエモ味が激増したヘヴィバージョンに生まれ変わっている。「Runnin' Down A Dream」も原曲よりハードロック色が増しており好印象だし、素直に歌うあたりにバンドとしてのカバーのこだわりが垣間見えます。

「Hard Times」や「The Girl Who Lives On Heaven Hill」あたりのどハードコアなカバーも捨てがたいし、その流れで取り上げた元祖ブラックメタルVENOMのカバーもナイスセンス。そんな中、最後の最後にスラッジー&サイケデリックなテイストに仕立てた「Purple Rain」も素晴らしい。全8曲で37分という短さと合間って、腹八分目で楽しめる好カバー集です。

このアルバムが入口となって、ここから過去作をさかのぼって聴いてみようかなと思える、そんなきっかけを与えてくれた貴重な1枚です。アルバムタイトルはMETALLICA名カバー集が元ネタなのもご愛嬌。そこも含めて愛すべき良作ですね。

 


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2019年4月21日 (日)

PRINCE & THE REVOLUTION『PARADE』(1986)

1986年春に発表された、プリンス通算8作目のオリジナルアルバム。PRINCE & THE REVOLUTION名義では『PURPLE RAIN』(1984年)、『AROUND THE WORLD IN A DAY』(1985年)に続く3作目にして最終作に当たります。本作からは「Kiss」が全米1位(同年間19位)、「Mountains」が同23位、「Anotherloverholenyohead」が同63位を記録し、アルバム自体も全米3位まで上昇しています(ミリオンセールス達成)。

同年に公開されたプリンス主演映画第2弾『アンダー・ザ・チェリー・ムーン』のサウンドトラックとして制作されたという点においては、メガヒットとなった『PURPLE RAIN』(同名映画のサントラ)と同じポジションの1枚ですが、音楽性や内容的にはロック色が濃厚だった『PURPLE RAIN』とは異なり、よりファンク色が強く、かつ『AROUND THE WORLD IN A DAY』でのサイケデリック色、さらにジャズの色合いも加わった、音楽性が一段と広がりを見せた1枚に仕上がっています。

どうしても大ヒットした「Kiss」の印象が強くなってしまいますが、ジャンルレスな1〜2分台のショートチューンが矢継ぎ早に繰り出される前半(アナログA面のM-1〜7)の構成はなかなかに気持ち良いものがあり、だからこそ唯一5分台の楽曲「Girls & Boys」(ヨーロッパのみでシングルカット。MVも制作)が非常に強く印象に残るというのもあります。

後半に入ると前作の流れを汲む「Mountains」もあるし、代表曲「Kiss」もあるし、何よりもアルバムラストを飾る名バラード「Sometimes It Snows In April」もある。特に7分近い大作の「Sometimes It Snows In April」は、彼が去って以降はこの季節になると毎年聴きたくなる1曲でもあります。そろそろ暖かくなってきたなって季節なのに、急に真冬のような寒さまで気温が落ち込む1日には、ふとこの曲が脳内で流れ始めるんですよね。

映画のサントラということを抜きにしても、アルバムとしてなかなかにバラエティに富んだ本作。映画の大失敗&酷評もあり、このアルバムに対する評価も一時は決して高いものではありませんでしたが、改めてプリンスのキャリアを振り返るとすごく充実した1枚であることが理解できるはず。特に、ここからTHE REVOLUTION解散〜『SIGN O' THE TIMES』(1987年)でソロ名義での活動再開という流れを考えると、本作はひとつの区切りであり大きな分岐点でもあるのかなと。

まあとにかく、良い曲が多いし、アルバムとしても聴きやすく優れているので、80年代の代表作のひとつとして今このタイミングにオススメしておきたい1枚です。

 


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2019年2月13日 (水)

PRINCE『BATMAN』(1989)

昨日からの続きになってしまいますが……それでは、レニー・クラヴィッツがデビューした当時のプリンスはどうだったかといいますと、実は意外と伸び悩んでいた時期なのかなと。それはセールス面はもちんのこと、音楽面においても。THE REVOLUTIONを解散させ、ソロ名義で動き始めた2枚組アルバム『SIGN O' THE TIMES』(1987年)、発売直前に急遽お蔵入りとなった『THE BLACK ALBUM』(1987年/1994年に正式発売)、その代案として制作された異色の“ワントラック”アルバム『LOVESEXY』(1988年)……創作意欲こそ右肩上がりでしたが、それと反比例するかのようにチャートの成績や売り上げは下降線をたどる一方。『LOVESEXY』に至っては全米11位、50万枚というそれ以前の作品よりもひどい記録を残すことになります。

そんな中、1989年6月に発表されたのがこの通算11枚目のスタジオアルバム『BATMAN』。本作は同時期に劇場公開されたティム・バートン監督作品『バットマン』のサウンドトラック的立ち位置の1枚ですが、実際には映画からインスピレーションを得て作られたオリジナルアルバムと言ったほうが正しいのかもしれません。

楽曲中に映画のセリフなどがサンプリングされているものの、かといってサントラ的なインストは皆無。どれもプリンスらしい歌モノで、近作と比べると非常に“わかりやすい”内容となっています。

それは、各楽曲が非常にシンプルな構成・アレンジで、良い意味で作り込みを緩めている、悪い意味で簡素と受け取れるものなんですね。だけどプリンスの場合、これくらい“抜いた”ほうが世の中の流れに沿うんじゃないか……そう思わせてしまうのも、この作品の罪作りな部分といいますか。

コアなプリンスファンからしたら、ここで展開されているサウンドや楽曲群は茶番でしかないのかもしれません。だけど、我々がイメージするプリンス像がディフォルメして表現されているという点においては、一般層・ライト層にとって取っつきやすい。実際、文字通り派手なパーティチューン「Partyman」やファンキーな「Trust」は“いかにも”だし、ファルセットを多用したセクシーな「Scandalous」も“いかにも”。シーナ・イーストンとデュエットしたバラード「The Arms Of Orion」しかり、クールなファンクロック「Electric Chair」しかりです。

そして、アルバムのラストを飾るのが歌モノというよりも、開き直りも甚だしい“サンプリング”ナンバー「Batdance」。6分を超えるこの曲は、プリンスらしいフレーズやフレイバーを凝縮させたプログレダンスチューンで、この曲が「Kiss」(1986年)以来の全米1位を獲得することになろうとは、なんとも皮肉な話です。

なお、このアルバム自体も『AROUND THE WORLD IN A DAY』(1985年)以来の全米No.1を獲得し、アメリカだけで200万枚を超えるセールスを記録しました。さらに本作からは「Partyman」(全米18位)、「The Arms Of Orion」(同36位)というヒットシングルも生まれています。前作『LOVESEXY』からは「Alphabet St.」(全米8位)のみだったことを考えると、本当に皮肉というかなんというか。

このアルバムで息を吹き返したプリンスですが、続く次作『GRAFFITI BRIDGE』(1990年)では再び迷走に突入することになります。



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2018年1月 1日 (月)

PRINCE『LOVESEXY』(1988)

さて、新年一発目にふさわしいジャケットのアルバムを紹介したいと思います(笑)。

プリンスが1988年初夏に発表した、通算10枚目のスタジオアルバム『LOVESEXY』。1987年春に2枚組アルバム『SIGN O' THE TIMES』をリリースし、早くも同年末に『THE BLACK ALBUM』を発表しようとしますが、諸事情で発売中止に。そういったトラブルを経て日の目を見たのが本作でした。リードシングル「Alphabet St.」は全米8位とヒットを飛ばすも、続く「Glam Slam」「I Wish U Heaven」はチャートインせず。アルバムも全米11位と、前作までと比較すれば低調に終わりました。

内容がそこまで悪かったのかと言われると……いやいや、全然そんなことないんですよ。プリンスらしいファンキーさとポップさが両立した内容で、非常に聴きやすいし。むしろ、『PURPLE RAIN』(1984年)以降では一番ポップで親しみやすい内容なんじゃないでしょうか。前作『SIGN O' THE TIMES』が雑多な実験作だったこともあり、ここまで統一感の強い作品は久しぶりなような気がしますし。

1曲1曲をピックアップしても、オープニングの「Eye No」から「Alphabet St.」へと続くファンキーなポップチューンの連発はさすがだと思うし、サイケデリックな「Glam Slam」はなんでこれがヒットしなかったんだろうってくらい良曲だし。セクシーなミディアムナンバー「Anna Stesia」、文字通りダンサブルな「Dance On」、本作中もっとも地味な印象のタイトルトラック「Lovesexy」、『THE BLACK ALBUM』から唯一持ち越されたバラード「When 2 R In Love」、浮遊感漂うサイケポップ「I Wish U Heaven」、前曲から心地よく続く「Positivity」……改めて聴き返すと、どれも悪くないんですよね。いや、“悪くない”止まりなのがいけないのかな。確かに殿下にしては“飛び抜けて”良い曲が少ない気がするし。でも、そこまで悪いとも言い切れない。う〜ん。

で、何がいけなかったのか考えてみたんですが……もうおわかりですね。ジャケットが災いしたとしか思えない(笑)。そりゃあみんな敬遠しますわ。正直、当時高校生だった僕も本作の購入、躊躇しましたもん。しかも地元では買いにくくて、上京した際にタワレコで輸入盤を買ったのでした(しかも、当時は縦長の箱に入っての販売だったから、余計に恥ずかしかった……)。

あと、本作はCDやストリーミングで聴いている人ならおわかりのように、全9曲を1トラックとして収録という聴きにくさもあります。曲を飛ばすなよ、という殿下からの無言の圧を感じずにはいられませんが、こういうご時世だからこそ本作がストリーミングでも1トラック方式を採っているのは妙に納得してしまうといいますか。うん、黙って通して聴いてください。



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2017年10月 1日 (日)

PRINCE『SIGN O' THE TIMES』(1987)

1987年春に発表された、プリンス通算9作目のスタジオアルバム。“PRINCE & THE REVOLUTION”名義で発表された『PURPLE RAIN』(1984年)、『AROUND THE WORLD IN A DAY』(1985年)、『PARADE』(1986年)を経て、ソロ名義では1982年の『1999』以来4年半ぶりのアルバム。しかも同作以来の2枚組作品(『1999』はアナログ2枚組でしたが、CD化の際に1枚に。『SIGN O' THE TIMES』はCDでも初の2枚組)でした。

世代的に『PURPLE RAIN』からプリンスの音楽に触れ、「曲はカッコ良いのに声が気持ち悪い」と思っていた、あの頃10代前半だったリスナー、多かったんじゃないでしょうか。まさに自分がそうで、『AROUND THE WORLD IN A DAY』は苦手意識のほうが勝ってしまいしばらく放置(高校生くらいまで)。が、『PARADE』収録の「Kiss」のファルセットはなぜかイケて、ハマってしまったクチでした(もっともアルバム自体は当時、そこまでのめり込めませんでしたが)。

で、『SIGN O' THE TIMES』。先行シングルのタイトルトラックの淡々とした曲調、まずこれにヤラレました。もはやこの頃になると声の気色悪さはほとんど気にならず、むしろこの声じゃないとダメ!とすら思えるように。確か、レンタルではなく初めて購入したプリンスのアルバムが本作だったと記憶しています。

全16曲、約80分というボリュームは当時の自分にとっては相当なものがありました。だって、情報量が多すぎて……単なるファンクや R&Bだけでなく、ポップやロック、ハードロック、ヒップホップ、サイケ、ソウルetc…いろんな要素詰まりまくりで、すべてを理解するには相当の時間を要したことを、今でもよく覚えています。ぶっちゃけ、今でも完全に理解しきれているかと言われたら微妙ですが、少なくとも20代になってしばらく経ってから、このアルバムの本当の凄味に気づいたんじゃないでしょうか。

本来は3枚の別々のアルバムだったものを、 THE REVOLUTION解散などを経てひとつの作品にまとめ込んだのが本作。これまでも1枚のアルバムの中にいろんな要素を詰め込んむ人ではありましたが、本作が過去の作品の比じゃなほどに雑多なのは、そういった理由もあるのかもしれません。にしても、やりすぎだろ!と思っちゃうほどに遊びまくり実験しまくり、なのに自然とするする聴けてしまう。

プリンスの声色も曲によってカラフルに変わっており、時には爬虫類系の声色で歌い、時にはファルセットでセクシーに歌い、ある時にはエフェクトかけまくりの歌声を披露する。もはや自身の声すらも楽器のひとつとして、自身の楽曲を最高の形で演出する。そういった意味では、この人はシンガーというよりも音楽家だったんだなと。

昔はハードでロック色が強く、パーティ感もにじませていたディスク2を気に入っておりましたが、最近はもっぱらいディスク1にやられまくり。やっぱりタイトルトラックの無機質感(密室ファンク!)といい、そこからパーティチューン「Play In The Sunshine」を経て「Forever In My Life」まで続く怒涛の流れは、本当に圧巻。これがあるから、ディスク2がより映えるということにも、改めて気づかされました。

本作をプリンスの最高傑作に挙げるファンも多いようですが、それも納得の内容。本作と続く『LOVESEXY』(1988年)、そしてその間にリリースされる予定だった『THE BLACK ALBUM』(1987年12月発売予定だったものの、直前に発売中止。1994年にようやく日の目を見ました)の3作は本当に神がかっていたんだなと、今さらながら時間しているところです。

ただ、ひとつだけ難点を挙げるとしたら、曲ごとに録音レベル(音量)が異なること。1曲目「Sign O' The Times」を基準に聴き始めると、続く「Play In The Sunshine」で急に音量が小さくなるし、その後も変動を繰り返し続けるという。まあこれすらも、聴き手を惹きつけるための戦略なのかな、なんて邪推してしまうわけですが(そんなことないでしょうけどね)。



▼PRINCE『SIGN O' THE TIMES』
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2016年4月22日 (金)

R.I.P. Prince

世代的には『Purple Rain』が最初。以後、毎年のように新作を発表してくれる、律儀な人だった。ライブは1回だけ。

つい最近、引越しの際に手放していた1stアルバム『For You』と2ndアルバム『Prince』を買い直したばかりで、iTunesの中にはこの2枚と『1999』以降の80年代のアルバムが常に入ってる状態だった。

もし無人島に10枚だけ……みたいな質問をされたら、絶対に選ぶのが『Sign O' The Times』だと思う。「私を構成する9枚」にもマストで選ぶくらい、本当に影響を受けた1枚(2枚組だけど)。

もうこれ以上、言葉が出てこない。夜中に近所迷惑で申し訳ないけど、今晩だけは大きな音で聴かせてほしい。

ご冥福をお祈りします。


2006年12月31日 (日)

MY BEST OF 2006

古いMac bookに10数年ぶりに電源を入れて、中に残っていたファイルをサルベージしていたのですが、2006〜2009年の年間ベストアルバムのデータを見つけることができました。たぶん、このへんは当時mixiか何かで公開していたのかもしれませんが(mixi自体ずいぶん前に解約しちゃったしね)、ここで改めてその10枚を公開してみたいと思います。

まずは2006年の年間ベストから。アルバム10枚中、洋楽5枚/邦楽5枚のセレクトとなります。コメントが残っていたものは、限りなく当時のまま残しておきたいと思います。(執筆:2020年5月21日)

 

・DELOREAN『INTO THE PLATEAU』

・JUSTIN TIMBERLAKE『FUTURESEX/LOVESOUNDS』

・MUSE『BLACK HOLES AND REVELATIONS』

・MY CHEMICAL ROMANCE『THE BLACK PARADE』

・PRINCE『3121』

・BOOM BOOM SATELLITES『ON』

・ELLEGARDEN『Eleven Fire Crackers』

・YUKI『Wave』

・ムック『極彩』

・吉井和哉『39108』

 

意外に思われるようなアルバムもあるかもしれないけど、純粋に今思いついた2〜30枚から選んだら、こんな感じに。気持ちよく洋邦半々になった。漏れた中にはベンジーとかクロマニヨンズとかDEFTONESとかTOOLとかいろいろあったけど、でも自分の中で「2006年を代表する音」はこの10枚でいいかもしんない。

あとね、MUSEとMY CHEMICAL ROMANCEとムックは、実は地つながりだと思う。んで、その真ん中に吉井和哉がいて……っつーのはちと違うけど、昨今のビジュアル系〜ゴスがウケるという日本や海外のシーンが、何となくMUSEとマイケミとムックに集約されてるように思った。それぞれイギリスとアメリカと日本のバンドなんだけどね。そんな中、MY CHEMICAL ROMANCEのUSツアーにMUSEが同行するなんて話も決まって、なおさら「なるほどー」な流れに。マイケミの前座でムックとか出ればいいのに。AFIのオープニングというのも、今回のアルバムを聴いてしまうとなんとなく頷ける話かと思います。

あと、絶対に「とみぃがエルレ選んでる!」って笑われると思うけど、偏見なしによいロックアルバムだと思ったから、素直に選んだだけ。そんな偏見クソ食らえだっつーの。相変わらずライブは苦手かもしれないけど、この作品については素晴らしいと思いますよ。

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