PRONG『RUDE AWAKENING』(1996)
1996年5月にリリースされたPRONGの5thアルバム(メジャー4作目のして最終作)。成功を収めた前作『CLEANSING』(1994年)から引き続きテリー・デイト(SOUNDGARDEN、PANTERA、DEFTONESなど)がプロデュースを手掛け、チャート的には前作の126位を上回る全米107位にランクインしました。
前作から加入のキーボーディストは早くも脱退し、トミー・ヴィクター(Vo, G)、ポール・レイヴン(B/KILLING JOKE)、テッド・パーソンズ(Dr)というトリオ編成で制作された本作。インダストリアル色はここでも健在で、プログラミングやキーボードをNINE INCH NAILSやMARILYN MANSONとの仕事で知られるチャーリー・クラウザーが担当しています。
スラッシュメタル色が若干残っていた前作から完全に脱却し、本作ではグルーヴメタルやインダストリアルメタル、あるいはグランジ以降のダークなラウドロックに特化した作風へとシフト。前作の時点でその予兆はあったとはいえ、ここまで潔く変化したのはグランジブームも終焉を迎え、KORNやDEFTONESをはじめとする“ヒップホップ以降のヘヴィサウンド”に注目が集まり始めたのも大きかったのでしょう。もともとKILLING JOKEのポール・レイヴンが加入した時点で、こういった“スピードよりも重さを重視した、オルタナ以降のヘヴィロック”へと移行するのは時間の問題だったでしょうしね。
オープニングの「Controller」から絶妙なテンポ感のヘヴィチューンが続く構成は、ただただ気持ち良い。アルバム1枚の中でミドルテンポをベースに多少のアップダウン度で変化を付ける構成は、なかなかの難しさがあるとは思います。特に彼らのようにスラッシーなサウンドを下地にしていたバンドにとっては、スピードを殺すことは困難を極めるのではないでしょうか。しかし、段階を踏むことでこうした“ミドルテンポのグラデーション”が楽しめる作品集を完成させられたのは、ミュージシャンシップの賜物かもしれません。
とにかくドラム&ベースが生み出すグルーヴ感と、そこに絡み合うプログラミング=インダストリアルサウンド。絶妙な歪みで印象的なリフを刻み続けるギター。「Mansruin」のリフからはスラッシュメタルがルーツであることが垣間見えるし、決して彼らはルーツを葬ったわけではない。表現手段が増えた結果、スラッシュ色をメインにしなくてもよくなっただけの話なんですよね。
評価的には前作のほうが上かもしれませんが、前作での試みがひとつの完成を見たという意味では、本作も見過ごせない1枚だと思います。いやはや、2019年の今聴いてもめちゃめちゃカッコいいですから!