カテゴリー「Queen」の40件の記事

2020年11月24日 (火)

QUEEN『GREATEST HITS』(1981)

1981年10月26日にイギリスでリリースされたQUEEN初のグレイテスト・ヒッツアルバム『GREATEST HITS』。80年代にはこのアルバムからQUEENに入ったというリスナーも多かったのではないでしょうか。かくいう僕も、初めて聴いたQUEENはこのアルバムでした(レンタルだったけど)。

昨日、このアルバムがアメリカBillboard 200(アルバムチャート)で初のTOP10入りを果たしたというニュースが飛び込んできました(ニュース元)。これは、同作のアナログ盤がWalmartのセールで15ドルに値下げセール販売されたことで、1週間で2万3000枚以上もの売り上げを記録したことから、前週の36位から8位まで急上昇したんだとか。ちなみに、同週の1位はAC/DCの新作『POWER UP』。ロックがまったく売れないと言われているアメリカで、AC/DCとQUEENが同時にTOP10入りする2020年。何が何やら(苦笑)。

さて、この記録に関して一部メディアでは「これまで同作の最高位は、1992年に記録した11位だった」と明記されていますが、これ正しくもあり間違いでもあるんですよね。要するに、同じタイトルだけど別内容のアルバムが前回の11位を記録しているのです。

今回のエントリーではレビューというよりも、このへんのややこしさについて記録を残していけたらなと思います。

 

まず、1981年10月発売の『GREATEST HITS』は当時、本国イギリスやここ日本はもちろん、アメリカでもしっかりどうタイミングにリリースされています。が、実はこの3ヶ国で発売された本作、収録内容が微妙に異なるのです。ここからは、イギリスで発売された全17曲入りの内容を“オリジナル盤”として話を進めます。

イギリスではEMIからリリースされた本作。その収録内容は現在も流通している同作と同じ内容です。ところが、当時Elektra Recordsから発売された北米盤は、オリジナル盤には未収録だった当時の最新シングル「Under Pressure」を追加したほか、「Keep Yourself Alive」シングルバージョン追加といった独自の14曲に厳選。これにより「Don't Stop Me Now」「Save Me」「Now I'm Here」「Good Old-Fashioned Lover Boy」「Seven Seas Of Rhye」が選外に。

一方で、日本で発売された同作はオリジナル盤と北米盤のいいとこ取りな17曲収録。こちらはオリジナル盤未収録の「Under Pressure」に加え、日本ならではの「Teo Torriatte」を追加。代わりに「Bicycle Race」と「Seven Seas Of Rhye」がオミットされています。北米、日本から嫌われる「Seven Seas Of Rhye」の立場よ。

ところが、1984年にCD化された際、独自選曲だった日本盤の内容は北米盤にシフト。僕が初めて聴いたのは、まさにこの北米盤CDだったので、「Another One Bites The Dust」から始まり「Bohemian Rhapsody」へと続く構成にしばし慣れ親しんでいました(オリジナル盤は逆です)。さらに北米に倣ってElektraの親会社Warner Musicからだった日本のリリース元が80年代半ばに東芝EMIへと移行。これにより1988年に再々発された日本盤『GREATEST HITS』は、オリジナル盤と同じ17曲入り/オリジナルセットリストへと落ち着くのでした。なので、『A KIND OF MAGIC』(1986年)までにQUEENを聴き始めたリスナーと『THE MIRACLE』(1989年)以降にQUEENに触れたリスナーとでは、この『GREATEST HITS』の思い出がまったく異なるわけです。なんなら、1981年のオリジナル盤リリース当時に日本盤に触れていたリスナーとも異なるわけで、1つのアルバムに対してたった10年の間に異なる大出を持つ3つの層が生まれるという、なんとも不幸な出来事が起きてしまったのでした。

 

話題を再びアメリカ(北米)に移します。『THE WORKS』(1984年)を機にそれまでのElektraからCapitol Recordsへと発売元を移したQUEENでしたが、90年代に入るとディズニー資本の新興レーベルHollywood Recordsへと移籍。Capitol Records移籍以降廃盤状態だった旧譜が、新作『INNUENDO』(1991年)に続いて次々と再発されていきます(その際、各盤に貴重なボーナストラックが追加されていたのは、個人的にもうれしくて。思わず全部揃えちゃったんだよね。苦笑)。そして、1991年11月24日以降……フレディ・マーキュリーの死、映画『ウェインズ・ワールド』に使用されたことで「Bohemian Rhapsody」が再ヒット。それと前後して、本国ではベスト盤第2弾『GREATEST HITS II』が発売されるのですが、こちらはアメリカでは当時未発売。『GREATEST HITS II』まで絡むと話がさらにややこしくなるのですが、これに関しては北米盤を語る際に欠かせない1枚なので、このまま進めさせていただきます。

さて、Hollywood Recordsからはオリジナルアルバムのリイシューこそあったものの、ベスト盤はしばらく未発売。ところが、上記の“1991年11月24日以降”QUEENに注目が集まり、手軽にQUEENの代表曲を楽しめるコンピレーション盤を求める声が高まります。こうして、(フレディ追悼の意も込めて)1992年3月にようやく北米独自盤『CLASSIC QUEEN』が発売されるのです。


▼QUEEN『CLASSIC QUEEN』
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ジャケットの方向性こそ『GREATEST HITS II』とほぼ同一ですが、タイトルと収録内容が異なるという、非常にやっかいな本作。全17曲入りで、『GREATEST HITS II』を軸にしつつ『GREATEST HITS』オリジナル盤から数曲抜粋した非常にいいとこ取りという、「今からベスト盤2枚買うには金銭的に厳しいけど、これなら便利!」という当時のビギナーにはありがたい1枚でした。だって、「A Kind Of Magic」から始まり「Bohemian Rhapsody」へと続き、そこから「Under Pressure」「Hammer To Fall」、当時METALLICAがカバーしたことで再注目を浴びた「Stone Cold Crazy」と新旧の代表曲/隠れた名曲がズラリと並ぶわけですから、それを輸入盤として1000数百円で購入できるのは学生にはありがたいったらありゃしない。本作はアメリカでも最高4位まで上昇し、300万枚以上もの大ヒットとなりました。

そして、この『CLASSIC QUEEN』大ヒットに味をしめたHollywood Recordsは、同作から半年後に今度は『GREATEST HITS』と題した新規コンピレーション盤を発売します。そう、これが先に述べた、全米11位を記録した『GREATEST HITS』の正体です!(ここまで2000字以上。長かった。苦笑) 以降、こちらを“1992年北米盤”と称することにします。

似たようなデザインからシリーズ連作と感じさせるものの、濃い青を基調にした『CLASSIC QUEEN』に対して1992年北米盤は小豆色。内容は『CLASSIC QUEEN』から漏れた『GREATEST HITS』オリジナル盤収録のヒット曲を軸に、これまでどのエディションにも未収録だった80年代前半の小ヒット「Body Language」、そして『GREATEST HITS II』から「I Want To Break Free」を含む全17曲入り。思えば代表曲中の代表曲「We Will Rock You」も「We Are The Champions」も「Another One Bites The Dust」も「Killer Queen」も、『CLASSIC QUEEN』には未収録だったんですよ。そりゃあ二匹目のドジョウでも、それなりにヒットするわけです。


▼QUEEN『GREATEST HITS (1992 US EDITION)』
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北米では10数年にわたり、この2作品がロングヒットを続けることになるのですが、2004年に事態が急変。なぜかオリジナル盤と同内容の『GREATEST HITS』がHollywood RecordsからCD化されるのです(どんどんややこしい話になってきた。笑)。ここでは、これまでの各国盤にはないボーナストラックも用意され、ボーナストラックとしてロジャー・テイラーが歌う「I'm In Love With My Car」や、「Under Pressure」「Tie Your Mother Down」のライブテイクなどを追加収録。「I'm In Love With My Car」が追加された理由は当時、QUEENの楽曲を題材にしたミュージカル『WE WILL ROCK YOU』が上演されたことも関係しており、「I'm In Love With My Car」は同ミュージカルの中でも登場するためと思われます。また「Under Pressure」「Tie Your Mother Down」は『ON FIRE : LIVE AT THE BOWL』(2004年)からのテイクで、同時期に発売されたため宣伝の意味もあったのでしょうね。


その頃日本では、長らくQUEEN作品をリリースし続けた東芝EMIが親会社の変更によりEMI Music Japanへと改名(2007年)。さらに、本国のEMIグループがUniversal Musicグループに吸収合併(2012年)。同じ頃、しばらく動きの止まっていたQUEENも新たにアダム・ランバートを迎えて“QUEEN + ADAM LAMBERT”としてライブ活動を開始したこともあり、2012年からは日本やイギリスなどでのリイシューが進むことになります。

その一環として、『GREATEST HITS』および『GREATEST HITS II』も世界共通仕様/同内容として、北米盤はHollywood Recordsから、それ以外の国ではUniversal Musicよりリリースされました。なお、日本盤のみボーナストラックとして(ややこしいわ。笑)、1981年盤の名残ともいえる「Teo Torriatte」が追加され、こちらはストリーミングバージョンでも耳にすることができます。以降、2020年に至るまでこの仕様は統一されており、先ごろアメリカでバカ売れした『GREATEST HITS』は現行のオリジナル盤と同じ内容となっております。

<完>

 

……以上が“『GREATEST HITS』戦争”ともいえなくもない、約40年にわたる同作のややこしい歴史です。なので、簡単に「これまで同作の最高位は、1992年に記録した11位だった」と言ってほしくないわけです。以上、面倒くさいQUEENオタクのたわごとでした。

追記:今回は世界中でもっとも流通しているであろう、かつ日本で手軽に入手しやすいイギリス盤、北米盤のみについて言及しました。このほかにも『GREATEST HITS』は国によってさまざまな“収録曲違い”や“独自ボーナストラック”が存在するので、そのへんはQUEENの私設ファンサイトやWikipediaDiscogsなどでチェックしてみてください。

 


▼QUEEN『GREATEST HITS』
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QUEEN『QUEEN FOREVER』(2014)

2014年11月にリリースされた、QUEENのコンピレーションアルバム。CD1枚ものとCD2枚組の2仕様が流通しており、本稿では2枚組エディションについて触れていきます。

本作はクイーンの“ラブソング”に焦点を当てた作品集で、新たな未発表曲/テイクが加えられたことで大きな注目を集めました。当初本作について、ロジャー・テイラー(Dr, Vo)は「ブライアン・メイ(G, Vo)と新たなQUEENのアルバムを制作する」と発言していましたが、それはのちに「フレディ・マーキュリー(Vo)や、すでに引退したジョン・ディーコン(B)が参加した80年代の音源を用いて、新たにギターとドラムを追加した『MADE IN HEAVEN』(1995年)と同じ方式の未発表曲」を含むコンピ盤であることが明らかになります。

本作のために準備された新曲/未発表テイクは3曲。アルバムのオープニングを飾る「Let Me In Your Heart Again」は『THE WORKS』(1984年)のセッションから、これまで未完成だった楽曲を新たに完成させたもの。フレディのボーカルパフォーマンスも本チャン作品と何ら差を感じさせない完成度で、そこに80年代以降のQUEENらしい厚みのあるダイナミックなバンドサウンドが重ねられています。確かにこれは『THE WORKS』や、それ以前の『THE GAME』(1980年)に収録されていても不思議じゃない1曲です。

続く「Love Kills」は、1984年にフレディがソロシングルとして発表した楽曲。もともとは映画『メトロポリス』のためにジョルジオ・モロダーとともに制作したディスコ調の楽曲でしたが、ここではバラード調にリアレンジされています。レコーディングクレジットにはジョン・ディーコンの名前も見つけられるので、おそらく『MADE IN HEAVEN』制作時のアウトテイクではないでしょうか。原曲のキラキラ/ピコピコ感のイメージが強いだけに、最初こそ違和感が残りましたが(曲後半にその名残が感じられます)、それって『MADE IN HEAVEN』でのリテイク曲を初めて聴いたときと同じ印象なんですよね。慣れれば「こういう曲」と納得するんでしょうけど、そこまでいくにはだいぶ時間がかかりました(苦笑)。

3曲目の「There Must Be More To Life Than This」はフレディのソロアルバム『MR. BAD GUY』(1985年)収録曲のQUEENバージョンなのですが、これがちょっと複雑でして。もともとこの曲、QUEENのアルバム『HOT SPACE』(1982年)収録曲として制作されたものでしたが、なぜかお蔵入り。そこからマイケル・ジャクソンが1983年に制作予定だったデュエットアルバムの候補としてQUEEN側から提供され、マイケルのボーカルもレコーディングされたものの、『THRILLER』(1982年)の爆発的ヒットの影響などもあって制作中止に。最終的にフレディが自身のソロアルバムに自身のソロバージョンとして収録することで、世の中に初めて放たれます。

で、今回ここに収録されたのはその幻の“QUEEN feat. MICHAEL JACKSON”バージョン。フレディの声に並ぶと、マイケルの存在感も多少弱まってしまうといいますか、のちのマイケルほどのオーラがやや感じられないといいますか。完成バージョンというよりはデモに近い状態だったのかもしれませんね。その音源を、かのウィリアム・オービットがミックスすることで、本作にて日の目を見たわけですから、聴けただけありがたいのかもしれませんね。

以降はおなじみのQUEENナンバーが目白押し。“ラブソング”という括りなので、バラードに限らずさまざまなタイプの人気曲/隠れた名曲が30曲以上にわたり詰め込まれています。いわゆるグレイテストヒッツ・アルバムに飽き飽きしているQUEENリスナーにとっては意外な選曲も少なくないので、個人的にも長きにわたり愛聴しているコンピ盤のひとつです。

なお、日本盤のみボーナストラックとして「Teo Torriatte (Let Us Cling Together)」を追加収録。とはいえ、2枚組バージョンはインストの「Forever」で綺麗に締めくくられるので、多少蛇足のように感じられます。1曲でも多く聴きたいというリスナーは日本盤でもいいかもしれませんが、個人的には「Teo Torriatte (Let Us Cling Together)」なしの海外盤およびデジタル盤でも十分な気がします。

2021年でフレディ没後30周年。今年はこの手の発掘モノはリリースされませんでしたが、きっと来年はいろいろ続きそうな予感です。

 


▼QUEEN『QUEEN FOREVER』
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2020年10月 5日 (月)

QUEEN + ADAM LAMBERT『LIVE AROUND THE WORLD』(2020)

2020年10月2日にリリースされたQUEEN + ADAM LAMBERTのライブアルバム。

本作は2014年から2020年にかけて、200公演以上にわたり行われた同組み合わせのワールドツアーの中から、選りすぐりのテイクをひとつのライブのような形で構成したもの。もっとも古い音源が2014年夏の『SUMMER SONIC 2014』で、最新が今年頭のオーストラリア公演から。サマソニ幕張公演からは「Now I'm Here」「Another One Bites The Dust」「I Was Born To Love You」という、(特に「I Was Born To Love You」に関しては)非常に日本らしいセレクトがなされています。

僕は2014年のサマソニはスケジュールの都合でどうしても足を運ぶことができなくて涙を飲みましたが、2016年の日本武道館公演には参加することができました。そのときの記憶と本ライブ作品を重ね合わせながら楽しんでおりますが、はやりアダム・ランバートQUEEN楽曲との相性は抜群。ここに関してはまったく文句はありません。

そもそも、フロントマンがまったく異なるわけですが、同じもの(=QUEENの完全再現)を求めてライブに足を運んでいたわけではありませんし。ブライアン・メイとロジャー・テイラーが選んだ「QUEENという音楽を最適な形で、独自の形で表現してくれるエンターテイナー」が、QUEENを表現しつつも新しいものを確立させていく、それがこのQUEEN + ADAM LAMBERTというプロジェクトなんだと解釈しています。

もちろん最初は「懐メロ気分やQUEEN復活」をイメージして痛い目を見たし、多少の違和感は拭えませんでしたが、そもそもジョージ・マイケルが歌おうがQUEENフォロワーのほかのシンガーが歌おうが、それはもう完全にQUEENとは別モノなわけで、フレディ・マーキュリーに寄せにいけば事故を起こすし、ポール・ロジャースのように完全なる別個性をぶち込めばそれはそれで消化不良を起こす。その絶妙な距離感をしっかり取ることができて、なおかつQUEENとしてもフロントマンとしても個々のオリジナリティをしっかり見せることができる。そういった稀有な才能に長けた超人でもなければ、この偉業を務めることは難しいと思うんです。

それがアダム・ランバートという人間には8年以上にわたり完遂できている。その結果がこのアルバム(とライブ映像)には最良の形で収められています。ロックだなんだとか、そういったイメージの話、この際どうでも良いです。これが楽しめるか否か、それだけだと思います。

そのシンプルな観点でいえば、本作は“Fun”以外の何モノでもないし、究極のエンタテインメント作品に仕上がっていると断言できます。いい曲といい演奏といい歌、そして映像では最高のパフォーマンスとエンタテインメント性。これがダメならフレディが残した過去の音源だけを死ぬまで聴き続ければいいわけです。

それでも、彼らはショウを続ける。その選択肢を僕は支持しますし、この素敵なライブ作品を全面的に肯定したいと思います。

 


▼QUEEN + ADAM LAMBERT『LIVE AROUND THE WORLD』
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2020年1月 2日 (木)

banned songs of US radio after 9.11

つい先日、今年の9月11日に配信されたKERRNG!の記事「HERE ARE THE 164 SONGS THAT WERE BANNED FROM AMERICAN RADIO AFTER 9/11」がTwitterで流れてきたんですね。このリスト自体、これまでも完全版・不完全版問わずさまざまな形で流出していたと思いますし、実際僕も学生時代に湾岸戦争をテーマに「表現の自由」や「自主規制」について卒論を書いていたので、常に気になってチェックしていました。今回の記事も特別目新しさはなかったのですが、急にふと「そういえば、卒論書いてた90年代前半は実際にそういう曲を全部聴くのに相当苦労したけど、今ってストリーミングサービスがあるし、もしかしてこのリストの曲全部聴けるんじゃないかな……」と思ったんですね。

で、実際にプレイリストを作ってみようと思い、検索を開始……始めたのが明け方だったのですが、気づいたら1、2時間でプレイリスト完成。記事中に登場する曲名やアーティスト名に多少の間違いがあったので、ネット上で公開されている同様の記事(結局Wikipediaが一番便利でした)とも照らし合わせつつ、完全なるプレイリストを完成させました。

さすがに全曲ありました。すごいですね、Spotify(今回はApple Music版は作成せず。だって2つも作るの時間かかるし)。RAGE AGAINST THE MACHINEのみ全曲放送禁止だったので、本来なら彼らの楽曲はすべて入れるべきなんでしょうけど、それだと埒が明かないので各アルバムから主要ナンバー1曲ずつ、計4曲を入れることにしました。そこに「Knockin' On Heaven's Door」のみボブ・ディラン版とGUNS N' ROSES版の2曲を用意して、全168曲/11時間14分というアホほど長いプレイリストが完成したわけです(笑)。

一応、アーティスト名アルファベット順、複数の曲がリストにあるアーティストに関しては曲名もアルファベット順で並べてあります。なので、AC/DCみたいにいきなり7曲も続いてしまうこともありますが、シャッフル再生すると普通にラジオ感覚で楽しめるのではないでしょうか……しかも、いい曲ばかりですし。

こんなご時世だからこそ、こういった楽曲を手軽に楽しめる自由をかみしめつつ、今の生活に感謝したいと思います。またいつ、これらの楽曲やほかのヒット曲が放送禁止になるか、本当にわかりませんしね(しかも、あの当時よりも状況的には最悪ですから)。

 

2019年11月24日 (日)

FREDDIE MERCURY『NEVER BORING』(2019)

2019年10月上旬に発表された、フレディ・マーキュリーの最新ベストアルバムおよびボックスセット。CD単品のベストアルバムは6曲の最新リミックス&リマスター音源と「Time Waits For No One」未発表バージョンを含む全12曲から構成。ボックスセットはこのベスト盤に加え、フレディの初ソロアルバム『MR. BAD GUY』(1985年)の最新リミックス&リマスター、『BARCELONA』(1988) の2012年オーケストラ・エディション、ミュージックビデオなどを収めたBlu-ray/DVD『NEVER BORING』と写真集にて構成されています。

今回はこのうち、最新ベストアルバム『NEVER BORING』について述べていきたいと思います。

フレディのベストアルバムは3年前にも『MESSENGER OF THE GODS: THE SINGLES』(2016年)がリリースされていますし、さらにさかのぼれば『LOVER OF LIFE, SINGER OF SONGS: THE VERY BEST OF FREDDIE MERCURY SOLO』(2006年)、『THE FREDDIE MERCURY ALBUM』(1992年)といったコンピレーションアルバムも発表されています。オリジナルソロアルバムを『MR. BAD GUY』と『BARCELONA』の2枚と考えると、いかに編集盤が多いかに気づかされるはずです。

どれが決定版か、というのは視点によって異なると思います。例えば、シングルカットされた楽曲にこだわれば前回の『MESSENGER OF THE GODS: THE SINGLES』がベストですし、トータルバランスで言えば最初の『THE FREDDIE MERCURY ALBUM』に対する思い入れが強い。語り手が変われば、それだけ異なる答えがあるわけですが、そこを踏まえても今回の『NEVER BORING』は『THE FREDDIE MERCURY ALBUM』にも匹敵するバランスに優れた1枚ではないかと思います。

「The Great Pretender」から始まり「Made In Heaven」で締めくくる構成も良かったですし、何よりもフレディの歌とマイク・モーランのピアノのみで構成された「Time Waits For No One」未発表バージョンが素晴らしいのなんの。新たにリミックス&リマスタリングされた『MR. BAD GUY』からの打ち込み主体の楽曲(特に「I Was Born To Love You」とか)も「あれ、今までそんな音入ってた?」と驚かされるはずですし、これまでフレディの作品に散々接してきたリスナーにとっても新鮮な気持ちで向き合える1枚ではないでしょうか。

フレディ逝去後にQUEENを知ったリスナーにはソロバージョンの「I Was Born To Love You」はチープに聞こえるかもしれませんが、僕にとってはこっちこそが真の「I Was Born To Love You」。ノエビア化粧品のCMが脳内で再生できるくらいには思い入れが強いんです(笑)。

フレディが亡くなってからあと2年でまる30年。きっと2021年にはもっといろんなQUEENやフレディの秘蔵音源集や焼き直しベストアルバムが発表されるのかもしれませんが、もちろん“新曲”や“新作”が発表されることは二度とありません。こういう編集盤には生前のアーティストの意向が反映されているとは考えられませんが、悲しいかな、ファンはそういう作品が発表されるたびに手を出し、二度と叶わない“新作”に思いを馳せるわけです。

でも、こういう形で編集された既存の楽曲には何の罪もない。いろいろ複雑な思いはあれど、今日この日だけは素直な気持ちでこのアルバムと向き合いたいと思います。

 


▼FREDDIE MERCURY『NEVER BORING』
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2019年1月11日 (金)

QUEEN『A DAY AT THE RACES』(1976)

1976年末にリリースされた、QUEEN通算5作目のスタジオアルバム。前作『A NIGHT AT THE OPERA』(1975年)の全英1位/全米4位獲得およびシングル「Bohemian Rhapsody」(全英1位/全米9位)の大ヒットにより、ついにトップアーティストの仲間入りを果たしたQUEEN。このへんは、現在もロングランで公開中の映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観た方ならご理解いただけるかと。そんな絶好調の彼らが続いて発表した本作も、全英1位、全米5位という好記録を残しております。

タイトルからも想像がつくかと思いますが、本作は前作『A NIGHT AT THE OPERA』と対になる印象の1枚。こう書くとヒット作の続編と受け取られがちですが、実は内容的には前作の延長線上にあるものという感じでもなく、あくまでQUEENらしさを追求した現在進行形の作品集と言えるでしょう。

興味深いのは、前作や前々作『SHEER HEART ATTACK』(1974年)にあったような組曲スタイルを排除していること。全10曲が単独した形を取っており、それが80年代以降の方向性にも通ずるものを感じさせます。

また、楽曲スタイル的にも次作『NEWS OF THE WORLD』(1977年)を彷彿とさせるものがあり、ここにパンクのスタイルをかけ合わせることであの方向性につながっていくのでは……なんてことも考えたり。そういう意味においては、実は大ヒット作2枚(『A NIGHT AT THE OPERA』と『NEWS OF THE WORLD』)に挟まれた過渡期的1枚と言えるかもしれません。事実、本作はチャート的には成功しましたが、セールス的には(特にアメリカでは)半分以下に落ちてますしね。

とはいえ、オープニングを飾るブライアン・メイ(G, Vo)のギターオーケストレーションからパワフルなハードロック「Tie Your Mother Down」(全英31位/全米49位)へと続く流れや、そこからメランコリックな「You Take My Brath Away」への流れ、ゴスペル調の名曲「Somebody To Love」(全英2位/全米13位)やシリアスかつヘヴィな「White Man」、美しくも軽やかな「Good Old-Fashioned Lover Boy」(全英17位)など、良曲目白押しな内容。音楽的にはより幅が広がった印象があります。

実は本作、初のセルフプロデュース作なんですよね。前作での成功を機に、バンドがやりたい邦題やってみました、というのもあったのかな。それにより、アルバムトータルとしては若干散漫さも目立つ結果となりましたが、これが調整されることによって80年代のQUEENにつながっていくという(そういう意味でも、やっぱり客観視できるプロデューサーは必要になるわけですが)。いろいろ難しいです。

でも、全10曲中8曲をフレディ・マーキュリー(Vo, Piano)が単独歌唱している(あ、「Good Old-Fashioned Lover Boy」ではエンジニアのマイク・ストーンも歌ってますが)ことで、何気に統一感が強いような。このへんも、80年代以降の彼らに通ずるものがありますね。

あ、最後に。本作のラストナンバー「Teo Torriatte (Let Us Cling Together)」に触れないわけにはいきませんよね。タイトルおよびサビの一部を日本語で書かれたこの曲は、1975年の初来日時に大歓迎してくれた日本のファンへの感謝の気持ちから、こういう形になったとのこと。今なら日本盤のみのボーナストラックになるんでしょうけど、これを世界共通盤に入れてしまう当時のQUEENの勢いと心意気。素敵すぎます。今から40数年前に、QUEENが日本人に対してここまでしてくれたことを忘れてはいけません。このアルバム、日本人として誇りに思ってもいいのではないでしょうか。そういう意味でも大切な1枚です。



▼QUEEN『A DAY AT THE RACES』(
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2018年12月 1日 (土)

QUEEN『FLASH GORDON』(1980)

今から20年前の1998年12月1日、「とみぃの宮殿」というテキストサイトがオープンしました。2004年12月1日に同サイトは完全閉鎖するものの、同日から今ご覧になっている「TMQ-WEB」がスタート。間10年くらい不定期更新でしたが、ここ3年くらいは連日レビュー更新が続いており、現在は「とみ宮」時代のレビューやレポートもこちらに完全移行し、3000エントリー近い読み物を“記録”として残すことができています。

20年前は完全に暇つぶしで始めたこの「音楽について何か書く」という作業でしたが、気づけばそれでメシを食う生活を送っているわけで、本当に人生何が起こるかわかりません。いや、それ以上に20年前とほぼ同じマインドでこうやって何か書いていられることが奇跡じゃないかと思うわけです。体を壊したりしながらも20年続けてこられたことに感謝。そして今このテキストを読んでくださっている方々に感謝です。

* * * * *

さて、20周年ってことで、まず1発目のレビューで何を取り上げようかと1ヶ月くらい前から考えていたわけですよ。自分のルーツになる重要な音楽やアルバム……は、結構この20年で書き尽くした感があるし、かといって何事もなかったかのように新譜を取り上げるのも違う気がする。今の気分的にはQUEENなんだろうけど……と、数日前まで頭を悩ませていたら、ふと「そういえば、このサイトで最初に書いたテキストってなんだっけ?」と思ったわけです。で、掘り起こしてみたら、やっぱりというか、QUEENとフレディ・マーキュリーについて書いた「QUEENと僕」というコラムでした(ディスクレビューだと、MANIC STREET PREACHERSの当時の新作『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』になります。こちらに関しては間もなく20周年盤が発売されるので、その際に再び執筆したいと思います)。

じゃあ、やっぱりQUEENだなと。けど、オリジナルアルバムに関しては残すところあと2枚なんですよね。別にベストアルバムやコンピレーション盤でもよかったんだけど、せっかくならオリジナルアルバムのほうがいいのかなと。で、どっちにするか……となると、やっぱりこっちなわけですよ。

* * * * *

はい、ここからが本編です。前置き長くてごめんね(笑)。

本国イギリスで1980年12月、日本やアメリカでは翌1981年1月にリリースされたQUEEN通算9作目のスタジオアルバム『FLASH GORDON』。アメリカでメガヒットを記録した前作『THE GAME』(1980年)から半年あまりで発表という驚くショートスパンですが、これは『FLASH GORDON』という作品が同名映画のサウンドトラック盤として制作されたため。内容自体は非常にコンセプチュアルなもので、全19曲(アナログA面が10曲、B面が9曲)という彼らのオリジナルアルバムとしてはもっとも曲数が多いのですが、トータルランニングは35分と短いのも特徴。しかも、歌モノはそのうち2曲、オープニングとエンディングのみという、ライトユーザーはおろかマニア的にもハードルの高い内容となっています。

シングルカットされたメインテーマの「Flash」(アルバムでは「Flash's Theme」名義)こそ全英10位/全米42位というまずまずの成績を残しましたが、アルバムは『THE GAME』のあとにも関わらず全英10位、全米23位と低調で終わりました。

QUEEN=フレディの歌、と認識しているリスナーには確かに本作はハードルの高い作品です。それは間違いない事実でしょう。事実、僕自身もここ2〜30年、この作品とマトモに向き合ってこなかったのですから。だけど、映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットによるここ最近の流れで、久しぶりにオリジナルアルバムをすべて、リリース順に聴き続けたら……この『FLASH GORDON』、不思議とスルスル聴き進めてしまったのです。いや、むしろこのアルバムばかりリピートしている自分がいて、素直に驚いております。

確かにフレディの歌モノはオープニングの「Flash's Theme」とラストの「The Hero」のみです。しかし、そのほかの17曲も間違いなくQUEENそのものであり、むしろプレイヤーとしてのブライアン・メイ(G)、ジョン・ディーコン(B)、ロジャー・テイラー(Dr)、そしてフレディ(Vo, Key)の技量やセンスを存分に楽しめる。前作『THE GAME』から導入したシンセサイザーも全面的に導入されており、メンバー4人が至るところで、楽しみながらそれらを弾いているのも微笑ましい。

そして何より、本作は初期QUEENが持っていたプログレッシヴ・ロックバンドとしての側面を、80年代的に昇華させた貴重な1枚でもあります。『THE GAME』でポップバンド的な側面が強まり、アルバムをコンセプチュアルなものにするよりも単曲で楽しめるシングル志向の楽曲の寄せ集めにする方向にシフトしたQUEENが、映画のサントラを盾に好き放題趣味に走った。そう受け取ることもできないでしょうか。そう考えると、実は本作ってもっとも“QUEENらしい”アルバムなんじゃないか……そうより強く思えるわけです。

ちゃんとクラシカルな要素も含まれており、ところどころにフレディの声やハーモニーも用いられている。ストリングスを使った仰々しい、いかにも映画のサントラといった要素もあり、ただモダンなだけではない。もちろん、QUEENらしいポップさと、ハードロックバンドらしさも混在する。プログレバンドとして語られることが少ないQUEENですが、このアルバムこそ当時時代遅れになっていたプログレを現在に蘇らせた、なんて受け取ることはできないでしょうか。まあ、それもリリースから40年近く経った2018年だからこそ言えることなのかもしれませんが。

正直、今頃になってこのアルバムにここまでハマるとは思いもしなかった。これも、20年もこんなサイトを続けてこられたからこそ気づけたことなのかもしれませんね。そういう意味でも、今でもこうやって音楽テキストを書き続けていられることに心から感謝したいと思います。

追記:
ちなみに、皆さんがよく知る「Flash」ですが、アルバムバージョンとシングルバージョンは内容が若干異なります。アルバムのほうの「Flash's Theme」が映画で使われたバージョンで、意外と淡々としたアレンジ。シングルバージョンの「Flash」は映画のセリフを多用したもので、コラージュ色が強まっています。僕はベスト盤から入った人間なので、「Flash」の印象が強かったため、最初にアルバムバージョンを聴いたときは「あれ? こんなに薄味だっけ?」と驚いたものです。なので、ストリーミングなどで聴く際にはぜひ2枚組のデラックス・エディション(ボーナスディスクにシングルバージョンやデモ音源、ライブバージョンを収録)をオススメします!



▼QUEEN『FLASH GORDON』
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2018年11月24日 (土)

FREDDIE MERCURY『MESSENGER OF THE GODS: THE SINGLES』(2016)

2016年9月にリリースされた、フレディ・マーキュリーのシングルコレクションアルバム。フレディのソロアルバムは、生前に残した『MR. BAD GUY』(1985年)とオペラ歌手モンセラ・カバリエとのコラボ作『BARCELONA』(1988年)の2枚のみで、それ以外のアルバムはすべて彼の死後に制作されたもの。『THE FREDDIE MERCURY ALBUM』(1992年)を筆頭に、数々のコンピ盤が発表されていますが、今作はフレディの生誕70周年を記念してシングルの表題曲とカップリング曲を2枚のディスクにまとめたものになります。

収録内容は実に幅広く、QUEENのデビュー前にラリー・ルレックス名義で1973年に発表された「I Can Hear Music」(THE BEACH BOYSのカバー)から始まり、映画『メトロポリス』のサウンドトラックに提供された「Love Kills」(1984年)、「I Was Born To Love You」や「Made In Heaven」などといった『MR. BAD GUY』からのヒットシングル(この2曲はのちにQUEENバージョンも制作)、ミュージカル『タイム』に使用された「Time」(1986年)、『BARCELONA』からのシングル、アルバム未収録だったソロシングル「The Great Pretender」、そしてフレディの死後に発表されヒットした「In My Defence」(ミュージカル『タイム』より)や「Living On My Own」のリミックス(1993年に全英1位獲得)など、全13枚のシングルがカップリング含め網羅されています。

『MR. BAD GUY』や『BARCELONA』収録曲は各アルバムのレビューを読んでいただけばいいし、それ以外の曲も『FREDDIE MERCURY SOLO』に収録されているものが多いので、ここでそういった曲の解説はあえて避けておきます。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』の中では、フレディのソロがバンドの及ぼした悪影響が表現されており、パーティ三昧だったレコーディング期間を目にするに“いかにも失敗”だったように描かれています。もちろんこれはストーリー的にも、絆を再確認するクライマックスを盛り上げるために必要な描写だったわけですが、じゃあ本当にフレディのソロが駄作ばかりかというと……聴いていただけばおわかりのとおり、QUEENの『HOT SPACE』(1982年)期をサウンド的により推し進めたポップソングが目白押しなわけですよ。その究極形が、「Living On My Own」のリミックスだと個人的には思っています。

もちろんフレディのソングライターとしてのセンスはしっかり証明されていると思うし、「Time」や「The Great Pretender」のようなスタンダートナンバー的な楽曲では彼のシンガーとしての資質が余すところなく表現されている。『BARCELONA』なんてまさにそんな作品集ですし、死後にヒットした「In My Defence」はそれがベストな形でパッケージされた1曲ですしね。

シングルコレクションとはいえ、本作は時系列を無視した構成になっています。アルバムとして楽しむことを想定した曲順だと思うのですが、至るところからフレディのエネルギーを感じ取ることができるし、その歌の深みにじっくり浸ることができるはず。QUEENとはまた違った形で、シンガーとしてのフレディの魅力を堪能できる、手軽な1枚ではないでしょうか。

P.S.
ストリーミングでは肝心の「In My Defence」や「Time」など、デイヴ・クラーク楽曲がすべて聴けない状況です。残念極まりない……。



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2018年11月23日 (金)

QUEEN『JAZZ』(1978)

1978年11月発売の、QUEEN通算7作目のスタジオアルバム。前作『NEWS OF THE WORLD』(1977年)が全英4位/全米3位と本国以上にアメリカで成功を収めた彼らでしたが(アメリカでは400万枚以上のセールス)、続く本作は全英2位/全米6位と再びその勢力が逆転しています。「Bicycle Race / Fat Bottomed Girls」(全英11位/全米24位)、「Don't Stop Me Now」(全英9位/全米86位)と、シングルにおいてもその傾向は同様だったようです。

コテコテとした『A NIGHT AT THE OPERA』(1975年)、『A DAY AT THE RACES』(1976年)を経て、シンプル・イズ・ベストな方法論を取った前作『NEWS OF THE WORLD』。そこから今作では、3rdアルバム『SHEER HEART ATTACK』(1974年)的なごった煮感覚を取り戻し、音楽的にもより拡散方向へと進み始めます。

オープニングの「Mustapha」ではアラビア音楽を思わせるメロディを持つアップチューンで、歌詞にも英語のほかアラビア語、ペルシャ語が用いられ、聴き手を驚かせます。かと思えば、QUEENらしい重厚さの目立つ「Fat Bottomed Girls」やフレディ・マーキュリー(Vo, Piano)作の美しいバラード「Jealousy」、展開の激しいポップチューン「Bicycle Race」、ジョン・ディーコン(B)作のストレートなロックナンバー「If You Can't Beat Them」やフレディ作の豪快なハードロック「Let Me Entertain You」、ブライアン・メイ(G, Vo)作の前のめりなハードロック「Dead On Time」など、ロック/ハードロック色の強い楽曲が並びます。

そういえばジョンは本作でもう1曲、美しいメロディのミディアムチューン「In Only Seven Days」も提供しています。改めて優れたソングライターであることを実感させられますね。

後半ではブライアンのギターオーケストレーションをフィーチャーしたヴォードヴィル風ブルース「Dreamer's Ball」や、80年代のQUEENを先取りしたロジャー・テイラー(Dr, Vo)作のディスコソング「Fun It」、ブライアンが単独で歌うミディアムポップチューン「Leaving Home Ain't Easy」、名曲中の名曲「Don't Stop Me Now」、ヘヴィかつコラージュ的アレンジも用いられた“らしさ”満載の「More Of That Jazz」と、とにかく聴き応えのある楽曲が目白押し。統一性は前作より薄いものの、改めて“QUEENとはなんぞや?”という命題と向き合った意欲作ではないかと思っています。

アメリカでバカ売れした前作『NEWS OF THE WORLD』と次作『THE GAME』(1980年)との間の1枚ということで、全キャリア中インパクトの薄い作品かもしれませんが、混沌の80年代を迎える前に彼らが今一度QUEENらしさを取り戻したという意味では、実は非常に重要な1枚だと思っています。

ちなみに、タイトルの『JAZZ』。本作にはジャンルとしてのジャズは1曲も収録されていません。これはスラングで、「くだらない話」や「ほら話」「ナンセンス」を意味する言葉なんだとか。自身のスタイルを皮肉った、これもある意味彼ららしいタイトルなのかもしれませんね。



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2018年11月22日 (木)

QUEEN『HOT SPACE』(1982)

1982年5月に発売されたQUEEN通算10作目のスタジオアルバム。前作『FLASH GORDON』(1980年)が同名映画のサウンドトラック盤だったこともあり、全英10位/全米23位と、前々作『THE GAME』(1980年)の英米1位と比べて低調な結果で終わっていました。それもあり、続くこの『HOT SPACE』に対する期待は相当大きなものがあったと思われますが、誰もがそのサウンドの変貌ぶりに腰を抜かした……のではないかと想像します(なにせこのへんはリアルタム組ではないので)。

『THE GAME』でシンセサイザーを解禁し、続く『FLASH GORDON』では全面的にフィーチャーした彼ら。この『HOT SPACE』ではその路線を踏まえつつ、当時のヒットチャートを賑わせていたダンスビートやディスコサウンドを軸に楽曲制作を敢行するのです。

「Another One Bites The Dust」の大成功がバンドにどれだけの影響を及ぼしたのかわかりませんが、彼らはこのアルバムで(それまでも随所から感じられた)ブラックミュージックへと本格的に傾倒します。オープニングの「Staying Power」なんてブラスをフィーチャーした、これぞファンクミュージック!と言いたくなるファンキーな楽曲で、ドラムは打ち込み、ベースもシンセベースを導入するなど、とても70年代のQUEENとは比べようがないほどの変貌を遂げています。

その後も「Dancer」「Back Chat」「Body Language」と、時代を感じさせる黒っぽいダンスミュージックが満載。「Dancer」のサビ後ろで鳴っているブライアン・メイ(G, Vo)のディストーションギターを聴いて、ようやく「自分はQUEENのアルバムを聴いているんだ」と思い出すくらい、しばらくQUEENという存在を忘れさせてくれる。そんな1枚です(笑)。

ところが、アルバム後半に入ると突如従来のQUEENがよみがえってきます。「Put Out The Fire」のようなハードロックチューンを聴くと、彼らは自分たちがどんなバンドであったか決して忘れたわけではないことに気づかされるし、ジョン・レノンを追悼するピアノバラード「Life Is Real (Song For Lennon)」も我々がよく知るQUEENが表現されているのですから。

「Calling All Girls」のようなポップロックも『THE GAME』の流れを組む良曲ですし、シンセが全面フィーチャーされているものの「Las Palabras De Amor (The Words of Love)」だってコーラスを聴けばQUEENそのもの。フレディ・マーキュリー(Vo, Piano)のファルセットがセクシーなソウルバラード「Cool Cat」なんて、アルバム前半の打ち込みサウンドと比べたら全然受け入れられるし、アルバムのラストはデヴィッド・ボウイとのデュエット曲「Under Pressure」ですから。あれ、これ完全にQUEENじゃん。俺、QUEENのアルバム聴いてたわ!って、最後の最後でしっかり満足させてくれるのですよ。

序盤で濃厚な実験作を並べてリスナーを引かせてしまう本作ですが、通して聴くと実はちゃんと“QUEENらしい”内容だって気づかされる。「Action This Day」でロジャー・テイラー(Dr, Vo)が、「Las Palabras De Amor (The Words of Love)」でブライアンがそれぞれ一部歌唱していますが、メインボーカルを務めるのはほぼフレディのみというのも、バンドの作品というよりものちにリリースされることになるフレディのソロアルバム『MR. BAD GUY』(1985年)に通ずるものがあるなと、今聴くと思うわけです。

QUEENの歴史上、どうしても駄作だとか失敗作だとかそういうネガティブな印象の強い1枚ですが(チャート的には全英4位、全米22位。シングルも全英1位の「Under Pressure」を除けば、「Body Language」が全英25位/全米11位、「Las Palabras De Amor (The Words of Love)」が全英17位、「Back Chat」が全英40位と低調な結果に)、本作があったからこそ80年代後半以降の“マジック”が確立するわけですから。80年代のQUEENを語る上では欠かせない1枚であることは間違いありません。



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