2017/08/26

RADIOHEAD『AMNESIAC』(2001)

2000年9月にリリースされたRADIOHEADの4thアルバム『KID A』は、傑作であると同時に当時の“ロック”リスナーおよび『OK COMPUTER』(1997年)を求めるファンには賛否を呼ぶ問題作でした。だって、音そのものはロックであることを放棄しているにも関わらず、聴けばやっぱりそれがRADIOHEADそのものだと理解できる不思議な作品だったんですから。僕もリリース当時、「ここにギターマジックはないけど、概念としては立派な“ロック”だ」というようなことを書きました。今改めて読み返しても、その考えは1ミリもブレていません。

しかし、この『KID A』発売から約8ヶ月後に早くも次のアルバム『AMNESIAC』がリリースされると聞いたとき、しかもそのアルバムで再びギターロックに回帰するという噂を耳にしたときは、ちょっと興奮したことを覚えています。いやいや、お前言ってることブレブレだろ?と突っ込まれようが、あのとき感じた正直な気持ちに嘘はつけません。『KID A』を通過したRADIOHEADが今、ギターロックで何を、どう鳴らすのか。気にならないわけがないじゃないですか。

しかし、実際に完成したアルバムを聴くとギターロック的楽曲はほんの数曲。ぶっちゃけ、「I Might Be Wrong」と「Knives Out」ぐらいじゃないですか。オープニングの「Packt Like Sardines In A Crushed Tin Box」は『KID A』の流れを汲みつつよりミニマル化してるし、続く「Pyramid Song」はピアノとストリングスを軸にしたスローナンバーだし。そもそも頭2曲にギター入ってないし。

本作自体、『KID A』と同タイミングに制作されたものですし、そりゃあ作風的に似ても仕方ないわな。ただ、あえてギターロック的楽曲は『KID A』からは外して『AMNESIAC』に回したのは、なんとなく理解できる気がします。完全に感覚的な話になるけど、『OK COMPUTER』の後に続くのは『AMNESIAC』ではなく『KID A』じゃなくちゃいけなかったんだと。逆じゃダメだったんですよね。まぁリスナー的には逆のほうが入りやすいんだけど。

正直『KID A』ほどの衝撃は受けなかったし、当時ナップスターに新曲がバンバン流出してたので先にそっちで聴いてしまっていたのもあったけど、確かに入り込みやすさは今作のほうが数段上だと思います。あと、いくら概念的に『KID A』がロックだと力説しても、もはや『AMNESIAC』はロックに括らなくてもいいんじゃないか、そういう気さえしてきます。

そう考えると、『KID A』リリース時のインタビューでトム・ヨークが発した「ロックなんか退屈だ。僕は退屈だと思う。だってホントに、ゴミ音楽じゃないか!」という言葉の重みが、本作ではより増すんですよね。面白いことに。

『KID A』リリースからあまり間隔が空いてないせいか、本作に対する評価ってそこまで高くない気がするのですが、実は『KID A』を語る上では欠かせない重要な存在だと感じています。



▼RADIOHEAD『AMNESIAC』
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投稿: 2017 08 26 12:00 午前 [2001年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2017/07/07

RADIOHEAD『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』(2017)

今から20年前の1997年6月(本国イギリスで。日本では5月末に先行リリースされています)、RADIOEHADが『OK COMPUTER』というアルバムを発表してから今年で20年。おそらくこの20年間で、自分がもっとも再生したアルバムが本作であることは間違いないと思います(次点がMANIC STREET PREACHERSの『EVERYTHING MUST GO』かな。まぁこちらは前年1996年発売だけど、リリース当初は親しめず、しばらく経ってからドハマりしたので)。

『OK COMPUTER』については今から16年前、2001年6月にすでに紹介しているので、改めて書くまでもないかなと。あのとき、散々悩みながら「どうしてこのアルバムがすごいのか?」について書いたので。

で、今回紹介するのは、20周年を記念して先月発売された2枚組アルバム『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』について。これは『OK COMPUTER』をリマスタリングしたディスク1と、当時のシングルにバラして収められた『OK COMPUTER』制作時のアウトテイクと、音源としては初収録となる「I Promise」「Man Of War」「Lift」の3曲を含む11曲入りのディスク2から構成されています。

ディスク1の内容については改めて書くまでもないですが……そう、書くまでもないのに、そしてこれまでに何百回と聴いてきたのに、バカ正直に再生してしまうという(しかも「Airbag」から「The Tourist」までじっくり聴き入ってしまうという)。久しぶりに大音量で聴いてみたら……やっぱり良いアルバムでした。と同時に、このリマスター盤がとてもえげつない。音の分離がかなり良くなっているためか、オリジナル盤よりもきめ細やか。言い方は悪いけど、見たくなかったものまで見えてしまうくらいの生々しさを感じさせる仕上がりなのです。恐ろしい。

で、問題のディスク2。当時のライブでも披露されていた「I Promise」「Man Of War」「Lift」の3曲は、ファンならご存知のナンバー。特に「Lift」に関しては何度も「ついに正式レコーディングされるか?」という噂が上がり、昨年の最新作『A MOON SHAPED POOL』の際にもそんな噂が出たくらい、ファンの間では音源化が熱望されていた1曲なのです。

『OK COMPUTER』という完成され尽くした傑作のあとに、これらの未発表曲やアウトテイクをがっつり聴くと……このディスク2の方向性って、要はその前の2ndアルバム『THE BENDS』(1995年)からの単なるステップアップ作だったんだなと実感させられるわけです。

そういえばRADIOHEADは1枚目のアルバム『PABLO HONEY』(1993年)から『THE BENDS』に取り掛かった際にも、一度作った多くの新曲を“破棄”して新たに作り直しているんですよね。そこで“破棄”された楽曲群が『MY IRON LUNG EP』(1994年)や、『THE BENDS』からのシングルのカップリングに収められたわけです。ただ、『THE BENDS』のときと『OK COMPUTER』が違ったのは、『THE BENDS』の頃はツアーなどで時間がない中で納得にいかないものを作ってしまったからであって、『OK COMPUTER』の頃はある程度納得できるものを一度作ってから「もっといけるんじゃないの?」とさらに一歩踏み込んだ。その違いはすごく大きいと思うんです。

「I Promise」も「Man Of War」も「Lift」も、RADIOHEADが好きな人なら絶対に気にいる、彼ら以外の何者でもない良曲だけど、やっぱり『OK COMPUTER』という閉鎖的で神経症気味な作品集には似合わないんですよ。こういう形で聴かされると、それはより強く実感させられるわけで、やっぱり当時の彼らのジャッジは正しかったんだなと納得してしまいます。もし、ディスク2側の方向で進めていたら、きっとここまで大きくなってなかっただろうし、バンド自体もここまで長く続いていたかどうか……。

それにしても、ディスク2を聴くとTHE BEATLESからの影響がいかに強いかが伺えますね。本編における「Paranoid Android」における「Happiness Is A Warm Gun」リスペクトぶりだけじゃなく、アウトテイクからもポール・マッカートニー的センスが伺えたりしますし。そこからPINK FLOYD的方向が加わったことで今の『OK COMPUTER』が完成した……なんていうのは大袈裟かしら。

というわけで本作。『OK COMPUTER』が大好物な方なら間違いなく楽しめる、歴史的価値の高い作品集だと思います。またライト層は、ディスク2を「『THE BENDS』と『OK COMPUTER』の間に、本来発売されるはずだった幻の2.5枚目アルバム」という位置付けで聴くと、スッと入っていけるのではないでしょうか。なんにせよ、『OK COMPUTER』とあわせて聴いておくべき1枚だと思います。だって、ミュージックビデオまでしっかり制作されちゃってるんだから(しかも2本も)。



▼RADIOHEAD『OK COMPUTER OKNOTOK 1997 2017』
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投稿: 2017 07 07 12:00 午前 [1997年の作品, 2017年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2016/06/15

RADIOHEAD『A MOON SHAPED POOL』(2016)

初聴でここまですんなりと体に入り込んできたRADIOHEADのアルバムは、ずいぶん久しぶりじゃないだろうか。それは過去2作(2007年の『IN RAINBOWS』、2011年の『THE KING OF LIMBS』)とは異なり、配信直前にリードトラック2曲「Burn The Witch」「Daydreaming」を(しかもじっくり作り込まれたMVと一緒に!)公開したことも大きい。いや、それ以上に今作が『KID A』以降に彼らが積み重ねてきた音楽的変遷の集大成のような内容というのが一番の理由かもしれない。

とはいえ、ここにあるのは単なる過去の焼き直しではない。そりゃあ過去にライブで披露してきた楽曲の新録も含まれているし、『KID A』などで見せた驚きの新機軸こそないものの、1曲1曲の作り込み方や説得力は近作の中でもベストなのでは。

本人たちに自覚はないのかもしれないが、このアルバムからはメンバー5人が改めて「RADIOHEADとは?」というテーマと向き合いながら、今持ち合わせているアイデアと技術と経験をすべて注ぎ込むんだという気概を感じた。それが最初に述べた入り込みやすさにつながったのだろう。対極な作風かもしれないが、『KID A』以来の大傑作だと断言したい。


※このレビューは同作リリース時に『TV BROS.』に掲載されものを一部修正して掲載しております。



▼RADIOHEAD『A MOON SHAPED POOL』
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投稿: 2016 06 15 12:00 午前 [2016年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2015/01/13

祝ご成人(1994年4月〜1995年3月発売の洋楽アルバム20枚) ※改訂版

新成人の皆さん、おめでとうございます。というわけで今回は、新成人の皆さんが生まれた年(学年的に1994年4月〜1995年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にお手にしてみてはいかがでしょうか。とは言いながらも大半が名盤中の名盤なので、聴いたことがあるものばかりかもしれませんが。

あ、並びはすべてアルファベット順です。

Beastie Boys「Ill Communication」(Amazon

Blur「Parklife」(Amazon

Dinosaur Jr.「Without a Sound」(Amazon

Helmet「Betty」(Amazon

Jeff Buckley「Grace」(Amazon

Korn「Korn」(Amazon

Machine Head「Burn My Eyes」(Amazon

Madonna「Bedtime Stories」(Amazon

Manic Street Preachers「The Holy Bible」(Amazon

Nine Inch Nails「The Downward Spiral」(Amazon / 日本盤1994年4月発売)

Oasis「Definitely Maybe」(Amazon

Pearl Jam「Vitalogy」(Amazon

Pink Floyd「The Division Bell」(Amazon / 日本盤1994年4月発売)

Portishead「Dummy」(Amazon

The Prodigy「Music for the Jilted Generation」(Amazon

R.E.M.「Monster」(Amazon

Radiohead「The Bends」(Amazon

Slayer「Divine Intervention」(Amazon

Suede「Dog Man Star」(Amazon

Weezer「Weezer (The Blue Album)」(Amazon


残念ながらセレクトから漏れた作品も多いです。それこそThe Beatlesの「Live at the BBC」、The Rolling Stones「Voodoo Lounge」、Nirvana「MTV Unplugged in New York」、The Stone Roses「Second Coming」といったものから、Marilyn Mansonのデビュー作「Portrait of an American Family」、Sloan「Twice Removed」、Sick of It All「Scratch the Surface」、The The「Hanky Panky」、Bonston「Walk On」、TLC「CrazySexyCool」、Van Halen「Balance」、Beck「Mellow Gold」あたりまで。カート・コバーンが亡くなって20年なんですね。そう考えると20年なんてあっという間ですよ、本当に。

※1/13 17:40加筆修正
Nine Inch Nails「The Downward Spiral」という個人的に絶対に欠かせないアルバムの存在を思い出させてくれたいっしーさんに感謝。というわけで、セレクトを一部改訂しております。

投稿: 2015 01 13 12:06 午前 [1994年の作品, 1995年の作品, Beastie Boys, Blur, Dinosaur Jr., Helmet, Jeff Buckley, Korn, Machine Head, Madonna, Manic Street Preachers, Nine Inch Nails, Oasis, Pearl Jam, Pink Floyd, Portishead, Prodigy, The, R.E.M., Radiohead, Slayer, Suede, Weezer, 「20年前」] | 固定リンク

2006/06/01

V.A.『EXIT MUSIC : SONGS WITH RADIO HEADS』(2006)

 昨日はアメリカの'90年代を代表するアーティスト・NIRVANAのトリビュートアルバムを取り上げたけど、今日はイギリスの'90年代を代表するアーティストのトリビュートアルバムを紹介したいと思います。あ、OASISじゃないですよ。RADIOHEADの方をね‥‥ちょうどタイミングよく、海外で4月にこの「EXIT MUSIC : SONGS WITH RADIO HEADS」がリリースされたんだよね。本家レディへもこの春からショートツアーを始めて、海外の夏フェスとかに出るようだし(その合間にレコーディングも進めているとのこと。レーベルはまだ決まってないようだけど)、7月にはトム・ヨークのソロアルバムもリリース決定したしね。絶好のタイミングじゃないですかね。

 んでその内容。昨日のは日本のギターロックバンドが中心だったこともあって、そこまで代わり映えのしないストレートなカバー集だったんだけど、こちらはクラブ系アーティストによるカバー集。そう、原曲を良い意味で「壊し」てるんだよね。選曲も通好みというか‥‥あえて超代表曲 "Creep" を外してたりね。ま、あれだけ浮いちゃうもんな。選曲はほとんど2nd〜4thの曲が中心。参加アーティストの多くは、実はよく知らないアーティストばかりなんだけど、そんな中にも例えばMATTHEW HERBERTやMESHELL NDEGEOCELLO、THE CINEMATIC ORCHESTRA、MARK RONSONといった名前をよく知ってるアーティストも参加してる。しかもアレンジがメチャメチャ良いよね。例えば、完全にソウルと化してしまってる "High & Dry" とか、あのヘヴィなギター・オーケストレーションをすべてブラスで再現してしまった "Just" とか。もうやること成すこと、全部カッコよすぎ。原曲の良さは勿論残しつつ、それぞれの色をしっかり出してる辺りはさすがというか。ま、ギターバンドとクラブ系アーティストという大きな違いもあるし、NIRVANAとRADIOHEADという違いもあるから、一概に比較するのは難しいとは思うんだけど‥‥にしても、やっぱりこれ聴いちゃうとね。トリビュートアルバムとかカバー集っていうのは、こういうもんだよな、って改めて考えちゃう。

 そして‥‥ヘンテコな方向に進んでしまった「KID A」以降の曲も、実はちゃんと「良い曲」なんだってことが、改めて確認できるという。そういう意味でも、二度おいしいアルバムというか。久しぶりにRADIOHEADをちゃんと聴き直してみたいと思わされたね、これ聴いたら。

 ま、このアルバムからRADIOHEADに入る・入門するっていう人はまずいないと思うけど、ひと通り彼らの作品を楽しんだ後にこれ聴くと、新たな発見がたくさんあっていいかもしれないよ。

 やっぱりRADIOHEADって‥‥偉大なんだな‥‥当たり前の話だけどさ。俺、彼らのことが死ぬ程好きだったってこと、すっかり忘れてたよ。それを思い出させてくれたという意味でも、これはありがたいアルバムでしたね。はい。



▼V.A.「EXIT MUSIC : SONGS WITH RADIO HEADS」(amazon:US盤日本盤

投稿: 2006 06 01 12:46 午前 [2006年の作品, Compilation Album, Radiohead] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/11/14

とみぃ洋楽100番勝負(88)

●第88回:「Creep」 RADIOHEAD ('92)

 最初ね、他の曲を選んでたのよ、レディヘに関しては。"Just" を。けど‥‥やっぱり自分に嘘はつけないしね。この曲に本気で救われたから‥‥

 言うまでもなく、RADIOHEADというバンドを一気にスターダムに押し上げた、彼等の代表曲。そして同時に忌むべき存在でもあるわけですが。代表曲といいながら、実は最近では殆ど演奏される機会がないという‥‥ちなみに俺、未だに一度も生で聴いたことありませんけどね。タイミング悪過ぎ。

 うーん‥‥この曲に関して語るのは、正直避けて通りたかったんですよね‥‥なんつーか、自分の中の恥部について語るみたいで、恥ずかしいとかを通り越して、凄く嫌悪感があるんですよね。いや、勿論大好きな曲なんですけど‥‥でも大声では大好きとは言いたくない、言いにくいというか。うわぁ‥‥この100番勝負の中で、一番の難関かもしれないよこれ。

 一言で言うなら‥‥本当に死にかかっていた俺を救ってくれた曲。って書くと、何だかロックンロールに過剰な期待をしてる、夢見る奴みたいで嫌なんですが。けど事実だから仕方ないわな。本気で死にたい病にかかってた時、この曲に目を覚まされたっつーの? そんな1曲。そして‥‥そういったロックンロールへの過剰な期待とかロックンロールマジックとか、そういう夢からも目を覚まさせてくれた1曲でもあるんだけどね。

 そういえばこの曲‥‥何度か弾き語りライヴで歌ったことあったなぁ。つい感情が入り過ぎて、力みっぱなしになっちゃうんだよね‥‥良くも悪くも。ライヴで一度も聴けない分、俺が歌うことでバランス取ってるというか‥‥多分、ライヴで聴く日が来たら‥‥また(いろんな意味で)目が覚めちゃうんだろうね。なんかそんな気がするよ。



▼RADIOHEAD「PABLO HONEY」(amazon

投稿: 2004 11 14 12:05 午前 [1992年の作品, Radiohead, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/04/22

RADIOHEAD HAIL TO THE THIEF TOUR@幕張メッセ展示ホール9~11(2004年4月18日)

前回観たのは1998年1月17日‥‥つまりこのサイトが立ち上がる、約1年前。だけどこのサイト内で一番古いライヴレポートは、実はそのRADIOHEAD公演だったりするんだよね‥‥そんなわけで、俺にとってもこのサイトにとっても原点であるレディヘ。この6年3ヶ月の間に彼らは2度(2001年9~10月と、2003年8月)来日してるんだけど。そのどちらにも行ってません。何故か? 多分「KID A」以降‥‥周りの彼らに対する熱が高まれば高まる程、それに反比例するかのように俺の熱が冷めていったと。1997年頃に「レディヘ、すっげーいいよ!」って薦めた時は「何それ!?」ってスルーした奴らが、2001年には「レディヘ、サイコー! 武道館行くよ!」とか俺に行ってくるにつれ‥‥なんだかなぁ、と。だから俺は、自分の人生にとって大切なアルバムの1枚である「OK COMPUTER」を2001年秋で封印して、結局ライヴにも行かなかった。それは昨年のサマソニも同様。たとえその時に "Creep" が演奏されようとも‥‥

「HAIL TO THE THIEF」は、実はあまり熱心には聴いてなかったのね。国内盤はCCCDだからって、頑張ってUS盤(CD-DA)で手に入れたにも関わらず、買った当時は数える程しか聴かなかった。で、そのまま放ったらかし。ちゃんと聴き返したのは、今回の来日が近づいた、2004年の4月に入ってから。リリース当時は「悪くないけど‥‥騒ぐ程の内容か、これ?」と疑心暗鬼だったものの、改めて聴き返すと良い意味で「KID A」と「AMNESIAC」を昇華させた作品集だな、と感じるようになり、結構気に入っている自分がいたりして。ま、嫌いになったわけじゃないからねぇ。

そして‥‥いよいよ(俺にとって)6年振りの来日公演。前回は3,000人に満たないクラブクラスだったバンドが、今回は2万人を軽く超えるキャパシティーのアリーナ、しかもオールスタンディング‥‥ちょっとだけ嫌悪感を感じていたのは、ここだけの話。さて、あの芸術的にも優れた「音楽」を、「万単位のオーディエンス」を前にどう料理するのか‥‥U2が、R.E.M.NINE INCH NAILSがそうしてきたように、彼らも「エンターテイメント」として上手くやってのけるのか‥‥

かなり後方からステージを観ていたんだけど、ステージ前方からほぼ平坦なフロアなため、俺のいた位置からはステージ上のメンバーが殆ど見えないに等しかったのね‥‥ステージ左右にあるスクリーンも演出上の効果を狙って設置されたものなので、後方の俺等のことなんてお構いなし。その「サービス性皆無」な辺りにまずニヤリ。

ライヴは新作から3連発でスタート。"There There" はやはりオープニングにピッタリの曲だと思う。徐々に盛り上がっていくアレンジは圧巻‥‥なんだけど、俺は全然ノレなかったのね。いや、カッコいいと素直に思えたんだけど‥‥構えちゃってさ。周りが熱狂的に盛り上がれば盛り上がる程、ね。大合唱してんだもん、この曲を‥‥それは2曲目 "2 + 2 = 5" にしても一緒でさ。何か違和感を感じちゃったのね。

けど、そんな違和感も続く3曲目で早くも解消されてさ‥‥非シングル曲 "Myxomatosis" がもうね、すっげーカッコ良くて。アルバムでこんなにカッコ良かったっけ!?って思える程にクールだった。で、その後は "Kid A" とか Morning Bell" といった最近の楽曲と最新作からの曲を連発。変拍子曲が多いもんだから、踊り難かったりするんだけど‥‥踊らずにはいられないのね。これは前回('98年1月)の来日時とは大きな違いかも。少なくとも、まだあの頃は「ギターロックバンド」だったもの。けど今は、その要素は残しつつも、完全に「ダンスミュージック」へと昇華させている。とにかくビートが太いのね。それが機械的であろうが単調であろうが、根底にあるビートはぶっといわけ。

で、勿論聴かせる曲では徹底的に聴かせるモード。繊細且つ丁寧なプレイと共に歌われる、懐かしの "Bullet Proof...I Wish I Was" にはちょっと泣きそうになったよ。こっちの要素は「HAIL TO THE THIEF」を通過することで、更に深化してますね。すっごい良かった。けどその反面、旧来のフォーマット‥‥所謂「強弱法」を用いたグランジ的ロックチューンに居心地の悪さを感じたのもまた事実。この日演奏された "My Iron Lung"‥‥全然メリハリみたいなもの、そして鋭さを感じる事ができなくてさ。それってPAのせいでしょ?とも思ったけど、それにしても‥‥あのまったりしたノリは‥‥正直、もうそういう枠からはとっくにはみ出してるだろうし、バンド自身もこういうことをやる必要性をそんなに感じてないんじゃないかな? まぁ "Creep" は別にしてもさ‥‥セカンドまでのこの手のタイプはもう封印してもいいんじゃないかな、と。まぁ俺が勝手にそう思ってるだけど、他の人にとっては全然そんなことないんだろうけどさ。

改めて「HAIL TO THE THIEF」からの曲の良さを実感したのと同時に、「KID A」からの楽曲がライヴだとここまで栄えるのか!ということを再確認。いや、ライヴアルバムとかで気づいてはいたけど、アルバムでのスタイルを若干崩しつつ、新しい空気を取り入れることで全く別の曲のように聴こえてくるんだから‥‥俺、下手したら「OK COMPUTER」よりも「KID A」の方が好きなんじゃないか‥‥とさえ思える時があってね。このライヴを観た後となると、もうそれが確信へと変わってるわけでして。それくらい良いんですよ。

ライヴ後半のハイライトは間違いなくラスト4曲。ライヴバージョンの方が遥かにカッコいい "Sit Down. Stand Up"、やっぱり独特な「違和感」を醸し出す "Paranoid Android"、圧倒的な存在感を持つ "Exit Music (For A Film)"、そして本編ラストを飾ったダンサブルな "Idioteque"。一見バラバラなように感じますが(いや、実際にバラバラな音楽性なんだけど)、これをあの5人が演奏することでちゃんと一本筋が通ってしまうんだから、さすがというか。どの曲も甲乙付け難い名演でした。個人的には特に "Exit Music (For A Film)" で身を引き裂かれそうになる程の切なさと暴力性が未だに健在だったことにひと安心。いつ聴いても涙が出てくるよ(で、実際に泣いてたしな、この日も)。

アンコールは比較的長めで(って彼らの場合はいつもこんな調子だけど)、本編で全く登場しなかった「AMNESIAC」からの曲を連発。いびつなヘヴィファンク "I Might Be Wrong" のノリはやはり彼らにしか出せないノリだし、"Pyramid Song" なんてライヴで聴くと完全にPINK FLOYDの域に達しているし。新作からの "Wolf At The Door" を挟んで懐かしの "Street Spirit (Fade Out)" が登場。うわー、まさか今日聴けるとは思ってもみなかった! 個人的には "Creep" よりも有り難かった。ここで1回目のアンコールが終了。

2度目のアンコールは、今回のジャパンツアーから復活したらしい「THE BENDS」収録の "Planet Telex"。これがまたまた壮大なノリを醸し出して、明らかに6年前とは違うバンドになってしまったなぁと気づかされました。いや、いい意味でよ?

最後の最後は、"Everything In Its Right Place"。これもライヴバージョンの方が遥かにカッコいい。いや、アルバムにはアルバム特有の魅力が十分に存在するんだけど、あれをそのままステージで再現されてもね。そういう意味では本当に「KID A」の曲ってのは恵まれてるというか、凄いというか。この日、新作の次にこのアルバムの曲が多く演奏されていたのも頷ける話(ま、たまたまでしょうけどね)。左右のギタリストが床に座り込んで、足下のエフェクターを弄りまくる姿は圧巻というか‥‥あり得ないね! エンターテイメント性完全無視。折り合いがついてるのかついてないのか微妙。けど、これが「RADIOHEAD流エンターテイメント」なんだろうなぁ‥‥とも思うわけで。多分これが一番レディヘらいし気がする。これ以上に過剰なサービスを提供されてもね‥‥なんか嘘っぽいし。

全23曲でほぼ2時間という構成は、6年前と殆ど一緒。このボリューム間もある意味エンターテイメントなんだろうなぁ。まぁ "Creep" こそ演奏されなかったものの(勿論他にも "Just" だったり "Airbag" だったり "No Surprises" だったりといった初期の楽曲達が演奏されなかったわけだけど)、俺的には全然満足だったな。だって古い曲以上に、ここ数作の曲がこんなにもライヴだと魅力的なんだってことが判ったからね。俺にとってはそれで十分。そうそう、それとやはりバンドの本質的な部分が進化してるな、とも感じた。もう'98年の時点で「ギターロック」という枠組みからはみ出していたけど、2004年の彼らはある意味UNDERWORLDにさえ通ずるものを提供してくれたような気がします。あそこまであからさまじゃないけどね。だって俺、スロウな曲以外はずっと踊りっぱなしだったからね。完全にクラブにいる感覚。ロックのそれじゃなくて、ダンスミュージックのそれね。そこが大きな違いだな、と。

もうね、"Creep" は一生聴けなくてもいいやって思った。少なくともあれから6年経った今の俺はそう感じるわけですよ。それが俺にとっての「6年目の真実」なわけ。正直、ここで最後に "Creep" やられても、なんか上手く誤摩化されたような気がしちゃうんだよね‥‥いや、誤摩化すっていうか、それまでにやってきたことをキレイに洗い流しちゃうというか。未だに "Creep" にはそれだけのパワーがあるからね。普段めったに演奏されない分、その力量は6年前以上だからね。

多分、次に来日したらまた行くと思います。もういいや‥‥とは思わないし、思えない。まだまだ先に進むであろうこのバンドの「行く先」を一緒に見てみたいもんね。


[SETLIST]
01. There There
02. 2 + 2 = 5
03. Myxomatosis
04. Kid A
05. Morning Bell
06. Where I End And You Begin
07. Bullet Proof...I Wish I Was
08. Backdrafts
09. My Iron Lung
10. Sail To The Moon
11. Go To Sleep
12. The National Anthem
13. Scatterbrain
14. Sit Down. Stand Up
15. Paranoid Android
16. Exit Music (For A Film)
17. Idioteque
---encore---
18. I Might Be Wrong
19. Pyramid Song
20. Wolf At The Door
21. Street Spirit (Fade Out)
---encore---
22. Planet Telex
23. Everything In Its Right Place



▼RADIOHEAD『HAIL TO THE THIEF』
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投稿: 2004 04 22 05:23 午前 [2004年のライブ, Radiohead] | 固定リンク

2003/04/05

RADIOHEAD『THE BENDS』(1995)

RADIOHEAD正真正銘のセカンドアルバム。1年間通して2回に分けてレコーディングされたことで、とても充実した内容となったこのセカンドアルバムで、RADIOHEADはいよいよ「イギリスを代表するロックバンド」として頭角を現します。既に「MY IRON LUNG」レビューで書いた通り、本来ならこのアルバムはサードアルバムとしてカウントされるべき内容なのですが‥‥ま、「MY IRON LUNG」はこのアルバムの為の習作ということにでもなるのかな(にしては贅沢な)。とにかく、未だに傑作として挙げられることの多いアルバムだと思います。「OK COMPUTER」以降の、ポストロック然とした路線・作風が苦手だという人にとっては、やはりこのアルバムまでが許容範囲ってことになるようで、『「THE BENDS」は好きな曲が多いんだけどなぁ‥‥』って声は実際によく耳にしました。まぁ確かにギターロック然とした曲もあれば、かなりプログレッシヴな作風の曲もあり、尚かつ歌モノもある。根底にあるものはその後の作品でも変わってはいないはずなんですが、タッチの違いなんでしょうね。

「PABLO HONEY」との大きな違いは、既に1曲目"Planet Telex"のイントロからして、強烈に表れています。ストレートなギターロックが多かったファーストと比べ、リズム的にも凝ったものが増えてきたのがセカンドの特徴かも。ミドルテンポで重厚感のあるリズムを持った"Planet Telex"を頭に持ってきたことは、象徴的かもしれませんね。そのまま比較的ファーストの路線に近い"The Bends"へと続くんですが、ここでの歌の力強さは前作の比ではありません。アレンジ的にもかなり凝った作りになっている辺りは、その辺のギターロック/UKロックバンドと一緒にすんじゃねぇよ!的な拘りを感じさせます。勢いに任せるのではなく、完全に作り込まれた‥‥という印象が全体的に感じられますよね(そしてそれはアルバムに限ったことではなく、ライヴにおいても完全再現されるという徹底振り。圧巻ですよね)。

そしてアルバム最初のハイライトとなるバラードナンバー"High And Dry"と"Fake Plastic Trees"の2曲。共にシングルとしてもヒットしたナンバーで、ファーストに足りなかった「何か」がここで完全に表現されたように感じます。それは「弱さは弱さとして認める潔さ」だったり「メランコリックさを堂々と表現することを恥じない心」だったり「歌本来の持つ力強さ」だったり‥‥とにかく "Creep" という楽曲の大成功によってどこか躊躇していた点をここで完全に克服したといっていいのかもしれません。勿論、ああいった「強弱法」を活用した手法ではなく、もっと違った表現方法を用いることによって、バンドとしては更にステップアップすることになったのです(ま、さすがに今現在、そういった "Creep" 的なものを彼等に求めるファンはいないでしょうけどね)。

最初の山場を迎えた後、独特な節回しを持った豪快なロックチューン"Bones"を経て、再びメランコリックな"(Nice Dream)"へと続きます。後半の展開がやはりプログレッシヴなのが、当時の彼等らしいというか‥‥こういったアコースティックを基調とした楽曲が増えたのも、このセカンドの特徴といえるでしょう。その後のアルバムでよりポストロック方面へと移行していくことを考えると、本当に「歌」を大切にした作品集だな、と今更ながらに実感します。

アルバム後半戦となる7曲目にはレコーディング初期に録音された、グランジ的でプログレチックで狂気すら感じさせる"Just (You Do It To Yourself)"が登場。イントロの天にも昇っていくかのようなコード進行が、かのKING CRIMSONの名曲 "Red" を彷彿させることからも、如何にプログレチックかが伺えると思います。とにかくこの曲はジョニー・グリーンウッドのギタープレイの強烈さでしょう。ここで一気に彼の個性が開花したといっていいでしょう。特にライヴではもっと凄いプレイを聴かせてくれるので、是非ライヴビデオやブートレッグで確かめてみてください(ま、夏の来日で確かめてもいいんですが、その際に演奏されなかったら困るので、とりあえず現存する音源でチェックを)。そのまま同じくヘヴィな"My Iron Lung"へと続き、ヘヴィ&プログレッシヴ2連発。RADIOHEADの新しい二面性(ハートウォーム・サイドとヘヴィサイド)が同居するという意味では、本当に優れた作品だと思いますよこのアルバムは。ここがアルバム第二のピークでしょうね。

激しい曲が続いた後を受けて、同じような空気感を持った穏やかなナンバー"Bullet Proof...I Wish I Was"で、後半戦はあるひとつの方向性が見つかります。前半の温かさと比べ、後半は火傷しそうな程の冷たさを感じます。そういう流れが一環しているかのようなこの曲に続いて、若干前半戦的な色合いの"Black Star"は途中豪快なギターが入るものの、やはり「歌」を大切にしたメランコリックナンバー。こういうRADIOHEADが好きって人、意外と多いんじゃないでしょうか? そのまま"Sulk"へ‥‥こういった曲を聴くと、一時期RADIOHEADをR.E.M.と比べたがる人がいましたが、それよりもU2に表現方法が近いんじゃないか‥‥という気がしてくるんですよね。それはトム・ヨークの歌声が所々、ボノと被る瞬間があるからかもしれませんね。演奏自体は全くの別物で、R.E.M.ともU2とも似てないんですけどね。

最後の曲となる"Street Spirit (Fade Out)"はアルバムを締め括るに相応しい、美しいメロディと、悲しくなるくらいにメランコリックな表現、そしてコンクリートのような冷たさを感じさせる演奏‥‥何なんだろう、この絶望感は!?と初めて聴いた時はよく思ったものですが、その後の路線を経た今聴くと、本当にメランコリックなメロディを持った、美しい曲だなぁと素直に思いますね。初めてライヴで聴いた時はマジ泣きしそうになる程胸を打たれた記憶があります。このアルバムがリリースされた'95年というと、それこそイギリスはOASISやBLURといったバンドが大ブレイクし、ブリットポップなる「姿なきブーム」に踊らされていた頃。と同時にアメリカではGREEN DAYやOFFSPRINGといったパンクバンドがチャートを席巻していた時代。そんな中、RADIOHEADはこういった異色作と呼べるアルバムで全英を制覇し、アメリカでもトップ40に入るヒットを飛ばしたのですから、如何に彼等がブリットポップ・ブームから離れた地点にいたかがご理解いただけるかと思います。大体、OASISなんかはその後、有象無象のフォロワーを生み出したのに、ことRADIOHEADに関しては‥‥ねぇ?

「I~」で歌われることの多かったファーストと比べ、二人称(「YOU」)や三人称で表現される楽曲が明らかに増えたのも、この作品の特徴。基本的なテーマは変わっていないけど、その表現方法がより多岐に渡るようになり、トム・ヨークのストーリーテラーとしての表現力が更に向上した結果、より多くの人に歌が届くようになった‥‥そしてその歌詞には、更に多くの人に届くようなメロディが付いた。ポップソングとしても、そしてロックとしても十分に機能し、更にオルタナティブであり、それでいて王道でもある。いろんな要素を飲み込むことによって、より混沌とした空気感を漂わせるようになったRADIOHEAD。「イギリス人はシェイクスピアの頃から狂ってる」なんて言った人もいましたが、本当にそんな気がします、彼等を見てると。

アルバムとして考えると、最も好みな音を出してるのがこの作品。とりあえずRADIOHEADを聴いてみようって人は、まずはこのアルバムから聴いてみるといいかと思います。それによってギターロック的な方向に進むか(「PABLO HONEY」)ポストロック的な方向へ進むか(「OK COMPUTER」や「KID A」)は、これを聴いたあなたの趣味趣向ってことで。個人的には「OK COMPUTER」と並んで、'90年代のロックを代表する作品だと思ってます。UKロック好きにも、昨今のヘヴィロック好きにも、ポストロックやプログレに興味を持っている人にも、そして歌を愛するあなたにも聴いて欲しい1枚。



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投稿: 2003 04 05 05:02 午前 [1995年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2003/04/04

RADIOHEAD『MY IRON LUNG EP』(1994)

RADIOHEADが'94年秋にリリースしたEP‥‥というか、ミニアルバムがこの「MY IRON LUNG」。日本盤は未発売で、ヨーロッパ諸国にていろんな形態(CDシングルや今回紹介するEP形式等)でリリースされたようだけど、今回は現在でも比較的入手しやすくて、尚かつ最も聴いてもらいたい重要作品として、この8曲入りEPを選びました。だってさぁ、ここに入ってる8曲の内、6曲はその後のオリジナルアルバムにも未収録だし、何しろ‥‥ここが一番重要。本来リリースされるはずだったセカンドアルバムに収録予定だった楽曲群がここで聴けるんだから。

RADIOHEADは'93年リリースのファーストアルバム「PABLO HONEY」に続くセカンドアルバムを'94年からレコーディングし始めました。当初は同年5月にシングルを、9月にアルバムという予定だったらしく、プロデューサーにジョン・レッキー(STONE ROSESやKULA SHAKER等、'90年代のUKロックではお馴染み)を迎え、ファーストとはかなり内容の異なった「真の意味でのファーストアルバム」(トム・ヨーク談)を試行錯誤の中、制作しました。実際、5月にリリース予定だったシングルも"Just"と発表され、同時期に日本を含む極東ツアーの開始も発表されていました。が‥‥急遽、シングルは発売中止。ツアーのみが決行されることとなったのでした(この曲は後のセカンド「THE BENDS」に無事収録)。

この時の日本ツアーでは後のセカンドに収録される"My Iron Lung"、"Bones"、"Black Star"、"The Bends"等といった楽曲が既に演奏されていました。ということは、これらの楽曲は既にこの時点でレコーディングが終了していたということになります(実際に当時のインタビューでもメンバーはそう語っていたし)。にも関わらず、シングル発売は中止になった。何故か? その答えがこのEPと、そして後のリリースされた「THE BENDS」に隠されているのです。

このミニアルバムは後の「THE BENDS」にも収録されることになる"My Iron Lung"をリーダートラックとし、レコーディング初期段階に制作された6曲と、既に発表されていた代表曲"Creep"の弾き語りアコースティックバージョンの計8曲から構成されています。"My Iron Lung"はご存じの通り、その後のRADIOHEADを占うかのような、ファーストとは異なって混沌としていて複雑怪奇で、それでいてグランジっぽい暴力性とセンチメンタリズムが同居した、突然変異のような1曲。この初期段階でレコーディングされた曲の中には他にも"Just"という、やはりその後の代表曲と呼べる硬質ナンバーも含まれていることから、レコーディング初期にはかなり実験的で、UKギターロックバンド的な色合いが後退して、ある種プログレチックな方向へと進もうとしていたように感じられます。しかし同時に、ファーストに入っていそうなストレートな曲やメランコリックなギターロックも制作されていました。"The Bends"等はそのままアルバムに収録されましたが、残念ながら選外となってしまったのがこのEPに収録された6曲ということになるようです。つまり、ここの6曲+「THE BENDS」の一部の楽曲こそが、本来セカンドアルバムとしてリリースされる予定だった曲達なのです。

既に我々は「THE BENDS」というアルバムを知っているし、散々聴いてしまっているわけで、あの傑作を前にするとここに収められたアルバム未収録の6曲は印象が薄いと言わざるを得ません。が、ファーストの楽曲群と比べれば確かにクオリティーが高いし、違った次元に進もうとしていることがちゃんと伺えます。既に「THE BENDS」でやろうとしていることの半分はここに表現できているし。けど、何故「THE BENDS」というアルバムが素晴らしかったかというと、そこには"High And Dry"や"Fake Plastic Trees"、"(Nice Dream)"といった「人間らしい温かみ」が存在するからです。勿論、それまでのRADIOHEADにもそういった要素はあったけど、ここまで包み込むような温かさは正直感じなかったと思うんですよ。けど、レコーディングを中断してツアーをして、そして何が足りなかったのかを把握して改めてレコーディングに向かった時、こういった楽曲が生まれたのかもしれませんね。そういう意味ではこれで正解だったと思うし、だからこそRADIOHEADはああも成功できたのでしょう。そして、そういった楽曲がその後の彼等の重要な要素になったことは言うまでもありません。

如何にセカンドアルバムが重要な1枚となるか、彼等はよく知っていました。だから彼等は2枚分ものレコーディングをした。そして実質上3作目となる「THE BENDS」をセカンドアルバムとしてリリースして、ファーストリリース時よりも更に高い地位を得た‥‥そしてよりアーティスティックに、そしてより混沌とした音楽性を追求することとなるのです。

この続きは「THE BENDS」のレビューで語ることにしましょう。



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投稿: 2003 04 04 04:59 午前 [1994年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2001/06/17

RADIOHEAD『PABLO HONEY』(1993)

今やギターロック・バンドなんて軽々しく呼べなくなってしまったRADIOHEAD。テクノやヒップホップなど、それまで他ジャンルとされてきた音楽の要素を貪欲に吸収し、RADIOHEADにしか作れない音楽を世に発表し続ける「ロック」バンドである彼らにも、未熟な頃があった。そう、どんな大物バンドにもデビュー時は存在するのだ。

今回ここで紹介するのは、そのRADIOHEADが'93年に発表したデビューアルバム「PABLO HONEY」である。

1991年夏、イギリスはオックスフォードでバンドは結成される。メンバーは不動の5人‥‥トム・ヨーク(Vo & Gt, etc.)、ジョニー・グリーンウッド(Gt & Key)、エド・オブライエン(Gt & Backing Vo)、フィル・セルウェイ(Dr)、コリン・グリーンウッド(Ba)。名字から判る通り、ジョニーとコリンは兄弟である(コリンが兄)。幼馴染みともいえるような5人で結成されたRADIOHEAD(当初は「ON A FRIDAY」という名前だったそうだ)はインディーズからのリリースもなくいきなり英EMIと契約、'92年5月にはファーストEP「DRILL EP」(アルバムにも収録されている"Prove Yourself"他)をリリース。同年9月にはその後の彼らの「代表曲」であり、ある意味「トラウマ」でもあるシングル"Creep"を発表。当時はトップ40に入るヒットにとどまった。翌'93年2月にはサードシングル"Anyone Can Play Guitar"を発表した後に、このファーストアルバムがリリースされることとなる。

当時は大ヒットには到らず、アルバム発表後にリリースされたファースト未収録新曲"Pop Is Dead"もヒットには結びつかなかった(ちなみに現在はこの曲、日本盤ファーストにボーナストラックとして追加収録されている)。

しかし、この後彼らをある「大事件」が襲う。誰も予想していなかった出来事‥‥それはアメリカでのブレイクだった。MTVでの"Creep"ヘヴィーローテーションに後押しされる形で、この曲はビルボードシングルチャートで36位まで上り詰める。更にアルバムも32位まで上昇し、50万枚近いヒットを記録するのだ。

このヒットの煽りを受け、イギリスでも"Creep"再リリース。歌詞に入る「fucking」のお陰でラジオですらかけてもらえなかったこの曲が、とうとうトップ10入りするのである。雑誌ではこの曲をNIRVANAと比較したり、あろうことかTHE POLICE "Every Breath You Take"("見つめていたい")と比較するものまで現れる。メディアだけではなく、ミュージシャンからも絶賛される。SUEDEやBLURのメンバー、R.E.M.のマイケル・スタイプまで‥‥この1曲によって全てが変わったのだった。

さて、そんなこのアルバムだが、「OK COMPUTER」以降の彼らしか知らない人にとってはかなり意外な音楽性なのではないか? RIDE辺りからの影響とも受け取れる「WALL OF DISTORTION-GUITAR SOUNDS」、NIRVANA以降多くのアーティストが参考にした「4つのコードを延々繰り返す曲」「強弱法」(Aメロでは静にに、Bメロになると途端に爆発したかのような轟音をならす、"Smells Like Teen Spirit"にみられるあの曲調)等、まだRADIOHEAD特有のオリジナリティーというものはあまり見られない。強いて挙げれば、ジャズからの影響が伺える"Blow Out"や、'80年代後半あたりのU2のような"Stop Whispering"などはとても印象深い。

しかし、このアルバムの目玉といえるのはやはり"Creep"であり、それと同系統といえる"Prove Yourself"、"Vegetable"のような「自己嫌悪ソング」なのではないだろうか? 「グランジ以降」や「グランジに対するイギリスからの回答」とかいろんな解釈ができるだろうが、やはりそこはイギリス。アメリカのグランジに比べると、繊細すぎるのだ。逆に、俺はそこに惹かれたわけだが。

勿論、上に挙げた以外にも「ジム・モリソンになぁれ」な歌詞が印象的な"Anyone Can Play Guitar"や"You"、"How Do You?"、"Ripcord"といった印象的な曲は多い。しかし、どうしても"Creep"という「踏み絵」的存在がある限り、このアルバムは今後も違った見方をされる可能性が高い。純粋に1枚のギターロック・アルバムと考えれば、平均点以上の出来だと思うのだが。

その後、セカンドアルバム以降で開花する「RADIOHEADらしさ」を考える上でも、このファーストアルバムはその後の彼らにとっての「習作」とも呼べる貴重な1枚なのかもしれない。或いは、U2がファーストから「WAR」というアルバムまでの3枚を通過してから「THE UNFORGETTABLE FIRE」という新たな地平へ辿り着いたのを、RADIOHEADというバンドはこの「PABLO HONEY」1枚でそれを成し遂げてしまったのかもしれない。当然「THE BENDS」という作品の音楽性とU2のそれとは全くの別物だが、バンドの成長の度合い/過程というのを考える上でも、これはちょっと興味深いものがあると思うのだが(更にRADIOHEADの場合は、「PABLO HONEY」と「THE BENDS」の間に「1.5枚目のアルバム」を制作し、それを半ばボツにしている過去がある。これも後々触れていきたいと思う)。

まぁインディーズでのリリース経験のない彼らがいきなりメジャーデビューしたことも大いに関係しているのだろうが、やはりこのアルバムはその後のRADIOHEADと比べると最も「らしさ」が薄いのは否めない。それでも、この時期が一番好きという人も多い(特に「OK COMPUTER」以降が苦手という人)。これはこれで素晴らしい作品だと思うので、是非ライヴでもここからもっと披露して欲しいと思うのだが‥‥



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投稿: 2001 06 17 04:56 午前 [1993年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2001/06/16

RADIOHEAD『OK COMPUTER』(1997)

RADIOHEADの通算3作目であり、現在の彼らの基盤となったのがこの「OK COMPUTER」という怪作だという事実は、誰もが認めるところだろう。と同時に、このアルバムでRADIOHEADに対して「好き」「嫌い」という感情がハッキリしてしまったのもまた事実。「PABLO HONEY」や「THE BENDS」でのギターロック・スタイルが好きだった人にとって、このアルバムは「裏切り」だったのかもしれない。しかし、この「OK COMPUTER」への流れは、既に「THE BENDS」の頃から表出していたし、習作をこの時期のシングルのカップリングで発表していた。今でもライヴで必ず演奏される"Talk Show Host"なんて、その代表例だろう。

にも関わらず、彼らは言う。「これは俺達の好きだったRADIOHEADではない」と。そしてメディアは神経を逆撫でする程、声高に叫ぶ。「ロック史上に残る大傑作だ!」「このアルバムが歴史を変えた」と。それを鵜呑みにして、大して聴き込んでもいないのに「やっぱ時代はRADIOHEADだよ!」と知ったかぶりする、なんちゃってロックファン。「これからはRADIOHEADだ」といって散々パクッた二流アーティスト達。そして、今これを書いている俺。更に今、これを読んでいるあなた。俺は全員に問いたい。


・「RADIOHEADらしさって、一体何?」

・「このアルバムの、どこがそんなに凄いの?」


このアルバムを語る時に、俺はどうしてもこの2つの命題とぶつかる。そしてその度に悩み、苦しみ、結局答えを出せずにいた。リリースされたのが'97年5月だったから、既に4年以上もの月日が流れているのだが、このアルバムは未だに輝きを失うことなく、俺の前に立ちはだかる。きっと「20世紀のロック名盤100選」とかやったら、必ず上位5枚に入るんだろう。


本題に入る前に、簡単なデータだけ。'95年3月のセカンドアルバム「THE BENDS」から約2年振りに発表されたこの「OK COMPUTER」は、英国では勿論1位を記録し、更にはアメリカでもトップ20入りしたはずだ(いや、もしかしたら入っていないかもしれない)。そう、今でこそアメリカでも「KID A」や「AMNESIAC」が1位や2位を取っているが、まだあの頃はそこまでブレイクしていなかった。RADIOHEADはデビュー時からアメリカでは恵まれていて、シングル"Creep"がいきなりトップ40入りしたり、ファーストもセカンドもそこそこヒットはしていたのだ。あの時期にデビューした英国勢では、一番最初に。

当時からアーティスト受けや評論家受けはよかったので、当然「ROLLING STONE」誌等でも大絶賛され、翌年のグラミー賞では「BEST ALTERNATIVE ROCK」部門か何かを受賞している。「アメリカのBECK、イギリスのRADIOHEAD」てな例えをされるくらい、評価だけは高かった。

当然、ここ日本でも人気はうなぎ登りで、アルバムはイギリスやアメリカよりも1ヶ月先行という、異例の先行リリース。タナ○ウ大絶賛(苦笑)。'98年1月には3度目の来日も果たし、追加公演も発表される程の大盛況振りだった(当時は国際フォーラムとブリッツ数回、その他地方公演)。

‥‥こんなもんでいい?(笑)まぁこういうのはファンサイトでも読めるし、アルバムのライナーノートでタ○ソウも書いてるだろうから(いや、書いてねぇか?)、そっちもご参考に。


・「RADIOHEADらしさって、一体何?」

一体何でしょう?(笑)こういうのって、聴き手それぞれ感じ方も違うから、個人によって変わってくるものだと思うのだが。だからいち個人が「これはもう、俺が好きだったRADIOHEADじゃないよ」と言ったとしても、それはその人の興味の範疇から外れただけであって、必ずしも俺の興味からも外れるとは限らない。むしろ、この路線に進んだことによって更に好きになった人もいる程だ。いや、俺のことだが‥‥

で、ここで言う「らしさ」ってのを、いち個人の感じ方というよりも、メディアでの「固定観念」として語ってみたい。要するにその「らしさ」って、「NIRVANA以降のギターロック」を意味するんじゃないの? "Creep"を基本として「THE BENDS」へと進んでいった、あの流れを「らしさ」と捉えているんじゃないだろうか? グランジをも、ブリットポップをも巻き込んだスタイル。セカンドの国内盤帯にはTHE SMITHSやQUEEN、STONE ROSESやKING CRIMSONなんかの名前が挙がっていたが、正にそういう「ロック」のいろいろな要素を消化し、再構築したのが「RADIOHEADのロック」だった、と。

きっと多くの人にとっては"Creep"や"Just"や"Fake Plastic Tree"、"Street Spirits (Fade Out)"こそが真のRADIOHEADの姿なのだろう。けどね、俺は思うのよ‥‥


「そもそも、彼らには『らしさ』なんてもの、最初からなかったんじゃないの?」


と。っていうか、固定したスタイルを持たないバンドなのでは? ファーストは確かに未完成な部分もあるが、セカンドではそこから何十歩も何百歩も離れた立ち位置にいた。そしてこのサードでは更に何百キロも離れた場所にいる。路線変更なんて簡単な言葉では片づけられない程、この数年で彼らは急激に成長している。何故こんなに短期間で変化していったのか? それはトム・ヨークを始めとするバンドの5人が、現状維持することを極端に嫌うからだ。覚えているだろう、"Creep"大ヒット後にファンが「第2の"Creep"」を求めたことを。そしてトムはそのことを"My Iron Lung"の轟音の中「これが俺達の新しい曲だよ。前のと同じだろ?」と皮肉混じりに唄っている。

彼らにとって、前と同じスタイルを続けることや現状維持をすることは、恐らく「屈辱」であり「負け」を意味するのではないだろうか? だからトムが「KID A」リリース時のインタビューで「ロックなんか退屈だ。僕は退屈だと思う。だってホントに、ゴミ音楽じゃないか!」と発言したのは、きっと本心なんだろう。多くのロックバンドは延々同じことを繰り返し、前の水増しバージョンを「最新型ロック」と銘打って市場に垂れ流す。トムにはこれは耐えられないことなんだろう。

そう考えると、彼らにとっては「成長」よりも「どうやって変化していくか?」の方が、バンドのモチベーションを上げる大切な要素のように思える。音楽性としてのプログレではなく、精神性としてのプログレッシヴ・ロック。「KID A」レビューでも書いたが、本気で彼らはその姿勢を貫き通しているのだ(「AMNESIAC」は「KID A」と同じようなスタイルでは?という問いが返ってきそうだが、あの2枚はレコーディング時期が一緒なので、俺にとって双子のような存在だということをここで答えておく。詳しくは「AMNESIAC」レビューを参照のこと)。

何度も言う。RADIOHEADには固定されたスタイルなんてものは最初からないのだ。ただ、バンドが曲を作り演奏し、トムが唄えばそれがRADIOHEADの曲として成立する。同じ人間が書いているのだから、曲そのものが180度大変化するとは考えられない。要は装飾の部分なのだ。ギターロックに拘る人にとっては、「OK COMPUTER」以降の作品は辛い内容かもしれない。が、きっと10年も経てばRADIOHEADにとって、ファーストやセカンドの路線こそが「異色だった」ということになってしまうに違いない。逆パターンだが、U2でいえば「POP」の路線が希だったように‥‥


・「このアルバムの、どこがそんなに凄いの?」

このアルバムが苦手だという人の多くは、必ずこう発言する。逆に、このアルバムを絶賛する人間にこの質問をしてみても、答えられないことが多い。実は、俺もずっと答えられずにいた。

雑誌が「凄い」を連発すれば、それを読むことで脳に刷り込まれてしまうことが多い。そしてそれが商業的に失敗してしまうと、数年後に「前作は失敗作だったが‥‥」なんて手のひらを返すんだから、たちが悪い。有名なところでは、ここ2作のOASISがいい例だろう。決して最高傑作とは言わないが、俺はあの2枚はいい作品だと今でも信じているし、実際4作目などは最近になってまたよく聴いてる程だ。

この「OK COMPUTER」に関しても、発売前から「異色作にして大傑作」と各方面で絶賛されていた。時々「これのどこがいいの?」という、どこからどう読んでも見当外れなレビューもあったが、4年経った今でも基本的に「OK COMPUTER」は名作ということになっている。

音楽的に分析すれば、それはもう本当によくできた作品で、ミュージシャン受けがいいのもよく理解できる。特にハードロック系アーティストからそういう声が多く聞こえてきた。実際にこのアルバムから影響を受けているであろうアルバムも何枚か登場した。

勿論、UKロックにも多大な影響を与え、後に「RADIOHEAD型」とまで言われてしまったMUSEなんてバンドも登場した(今思えば、このバンドはまた違う道筋を辿ってきたと思うのだが、それはまた別の頁で)。日本のバンドも少なからず影響を受けているはずだ。

影響力の面で言えば、'90年代に入ってからリリースされたアルバムで、こんなに多方面に影響を与えた1枚は少ないだろう。「rockin'on」方面や「BUURN!」方面両方に影響を与えたという意味では、NIRVANA「NEVER MIND」以来かもしれない。間違いなく、今後もひとつの指針となる作品だろう。

メディアでも未だに傑作扱いされ、ミュージシャンからも支持されているという事実は判った。がしかし、リスナーの立場として考えた時に、このアルバムはどの程度凄いものなのだろうか? いや、どこがそんなに凄いのだろうか??

これを入力しながら聴き始めた「OK COMPUTER」も、既に5順目に入った。で、思ったのだ。


「実はこれ、そんなに凄くないんじゃないの?」


と‥‥って身も蓋もない答えだが(苦笑)。いや、決して「OK COMPUTER」が駄作だとか、過大評価だとか、そういう意味で言っているのではない。肩の力を入れる程凄みのあるアルバムなんかじゃない、聴き流そうとすればできないこともないイージーリスニング的作品でもあるのだが、いざ歌詞を読んでしまうと次からは聴き流すことなんでできなくなる、聴き手を選ぶ作品ではないだろうか?という意味で、俺はこれを凄いアルバムだと思うようになったのだ。だから多くの人間が「RADIOHEAD、凄いよね?」というのとはちょっと違う。その観点からすれば「そんなに凄くないんじゃない?」ってことになるのだが‥‥読み方によってはかなり矛盾した文章になっているが(苦笑)。

現時点で、既にRADIOHEADは「KID A」と「AMNESIAC」という、更に聴き手を選ぶ作品を発表している。実験的作風というのもあるだろうが、多くの場合は「俺的ロック論」から大きく外れていることが「つまらない」とか「興味ない」に繋がっているような気がする。逆に「OK COMPUTER」を当時から気に入っていたファンは、この2枚も好意的に受け入れたようだ(勿論、そうでない人が多いことも知っている)。そういうスタイルの音楽に好意的ではなくても、万人に愛されるアルバムというのは存在する。けど、傑作扱いされながらここまで評価が二分する作品も珍しいのではないだろうか(メディアの評価ではなく、あくまでリスナーの評価という意味で)。そしてそれまでの固定ファンを「ある意味」裏切った作品が、ここまで大絶賛されるのも珍しい。そういう意味でも「凄い」とは思うが‥‥

4年経ったが、未だに俺が納得のいく「理由」には出会っていない。何度か雑誌でも「何故あのアルバムは凄かったのか?」という特集が組まれたが、そこには「答え」は載っていなかった。結局、未だに多くの謎を残したアルバム。それがこの「OK COMPUTER」なのだ。


個人それぞれの「凄い」理由はあるだろう。個人的感情を排除した視点で上のように書いてきたが、個人的にはその他にもごく普通に「"Let Down"や"No Surprises"の、癒されるようなメロディー」とか「自分と向き合うことを迫られる歌詞」だとか「人間本来の情けなさ」だとか挙げることができる。けど、そんな理由を幾つ挙げても、「どこが凄いの?」と聞いてくる人を納得させることはできないだろう。ここまで延々と書いてきたことも、実は大した答えにはなっていないと思う。けど、今一度この作品と向き合うために、こうやって文章としてまとめることが俺には必要だったのだ。

最後に‥‥個人的に俺はこのアルバムを「生涯のベスト3」に入れている。どのくらいこのアルバムが好きかと問われれば‥‥自殺だろうが病気だろうが、俺が死ぬ時はこのアルバムを聴きながら息絶えたい、そう思ってるくらいなのだ。俺にとってはこの「事実」が最も凄みの理由となっているのだが。



▼RADIOHEAD『OK COMPUTER』
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投稿: 2001 06 16 05:07 午前 [1997年の作品, Radiohead] | 固定リンク

2001/05/29

RADIOHEAD OK COMPUTER TOUR 1998@赤坂BLITZ(1998年1月17日)

この時期に改めてRADIOHEADの、しかも3年前の前回来日公演をレビューするというのもどうかと思ったが、やはり9~10月の来日に備えて、一度ちゃんと彼らのライヴについて書いておきたかったのだ。偶然にも俺が観に行った日のセットリストを入手できたので(ここがインターネットの素晴らしい所かも)、それに目を通しながら、当時の記憶を辿ってみたいと思う。3年という月日が経っているので、もしかしたら自身の勘違いや事実誤認などが多少あるかもしれないが、その時はツッコミをお願いしたい。

=====

1998年1月、俺はこのライヴの数日後に約8年生活した東京を後にする事となっていた。という事で、東京在住時最後のライヴがこのRADIOHEADだった。当初、もう2公演分(国際フォーラムとツアーラストのブリッツ)取っていたのだが、引っ越しの準備やらで東京~銚子間を行ったり来たりしていた為、確実に行けるこの17日分だけを残して友人に売却した。

今思うと、この'98年は1月のRADIOHEADと10月のTHE WiLDHEARTSの2公演しか観ていない。そして翌年2月にはMANIC STREET PREACHERSという、ここ5~6年の俺を支えてきたアーティストのライヴを立て続けに観ることとなった。その最初がレディヘなわけだが‥‥いろいろ考えさせられたライヴだった。いや、悪かったとかいう意味ではない。俺が想像していた以上の手応えを感じたし、それに今まで感じたことのない「何か」をこの全身で感じることが出来たのだ。

この日、俺はブリッツ初の2階席を予約していた。フロアで一体になって肌で感じることも出来たが、やはり初めてのレディヘを、椅子付き席で、肌だけではなく頭でも感じたかったのだ。覚醒する感覚‥‥アルバム「OK COMPUTER」で感じることの出来た覚醒感を、果たしてライヴではどのように表現するのか? そして過去の楽曲群と、どのように組み合わせてライヴを構成するのか? この2点がずっと気になっていたのだ。彼らのライヴはビデオやテレビの中でしか知らなかった。このライヴの直前にも'97年6月頃のフランスでのライヴ映像を観ていたが‥‥野外で、何万人もの前で演奏しているにも関わらず、独特な冷たい感覚に襲われた。

俺はこの日のライヴの間中、身体の中に何かが入り込んで居座っているような「異物感」を、常に感じていた‥‥正直な話、フロアにいる方々と一緒になって踊ったり暴れたりするなんてこと、出来そうになかった。こんなライヴ、初めてだった‥‥それが俺にとっての生レディヘ初体験。

新作「OK COMPUTER」同様、"Airbag" からスタートした。トム・ヨークもエレキを抱えていて、ステージにはギタリストが3人。三者三様のリフを弾き、それが見事に調和されている。もの凄く計算されたプレイだ。そしてトムはいつものように首を左右にグラグラ揺すりながら、情緒不安定な声で、囁くように、時にヒステリックに唄う。時々、彼のことを「根暗」とか「病気」なんて表現する人もいるが、逆にそれが彼の持ち味であって、こんなフロントマンには滅多にお目にかかれない。逆に、今後こういうシンガーが続々現れたら、それは間違いなくトムのフォロワーだ、誰が何と言おうと。

ライヴは「OK COMPUTER」を中心にして、前作「THE BENDS」からの代表曲、シングルのカップリング曲を挟んで進められていく。個人的に最初のピークとなったのは、5曲目に登場した、"Exit Music (For A Film)" だろう。殆どトムの独壇場といえる楽曲で、アコギ1本で唄う彼の歌声‥‥時に声にならない声‥‥後半登場するジョニーの効果音的ギタープレイが絶妙な入り方をして、その瞬間鳥肌が‥‥もう本当、泣きそうになる俺。たまらない‥‥

アルバムの中にいろいろな楽器や音を詰め込んだ「OK COMPUTER」の楽曲を再現するにあたり、トムやジョニーはギター以外にもキーボードやオルガン、グロッケン等もプレイしていた。トムは殆どの曲でエレキやアコギを抱えていて、手ぶらで唄ったのはほんの2~3曲だったと記憶している。

この日フロアにいた、がらの悪い外人客のヤジに対し、相当機嫌をそこねていたようなトム。外人客からは「"Creep" やれ、"Creep" をっ!」の声が。みんなそう思ってるよ、みんな。俺だって聴きたかったもの。けど、それを声高に言うことが如何にライヴをぶち壊しにすることか‥‥そういうコール&レスポンスが合ってるバンドならまだしも、レディヘにそれは似合わない。下手すりゃライヴ中断されちまいそうな勢いだ。

これに対して、トム「次は‥‥ "Creep" ‥‥じゃなくて‥‥」みたいにじらす。それを何度も繰り返す。相当頭にきてたようだ。結局、この外人客のヤジは最後まで続き、バンドは最後の最後まで "Creep" を演奏することはなかった。畜生、お前らのせいだからな!!(怒)

その怒りをヘヴィな楽曲にぶつけるトム。"Paraoid Android" や "Just" の演奏は、それまで聴いたどのライヴテイクよりも激しく、そして感情的だった。レディヘというと「感情を切り離した」イメージがあったりするが、いやいや、これは感情の塊だ。レディヘというバンド自体が「感情/情念の塊」であって、トムという人間のコンプレックスの塊みたいなもんだと思う。ライヴではその塊を一方的にぶつけてくる‥‥そうか、あの「異物感」って、これだったのか‥‥結局、それを無視するために皆、踊り狂ってるのか‥‥俺にはそう思えてならなかった。

椅子席で落ち着いて観てしまったが為に、彼らの感情をダイレクトに受け取ってしまった俺。ライヴ後も暫く立ち直れなかったしな。

ライヴ後半は、どちらかというと過去の楽曲の割合が高かった。アンコールでは唯一ファーストから "Lurgee" がプレイされ、1回目のアンコールは超名曲 "Street Spirits (Fade Out)" で終了。当然、アンコールを求める声はまだまだ続く。

再び現れたバンドは感情にまかせ、原曲よりも更に激しい "Electioneering" をぶつけてくる。あぁ、相当機嫌悪いな‥‥それが痛い程伝わってきた。ギターを床に倒してトムはステージを去り、フィードバック音だけがそこに残った。そして場内が明るくなる。約2時間に渡る「生レディヘ初体験」はあっけない終わり方で、その幕を閉じた。

=====

後で聞いた話では、ライヴの一番最後はアルバム通り "The Tourist" で終わることとなっているそうなのだが、やはりこの日は先に書いたように、そうとう感情的になっていたようだ。トムだけが怒っていたのか、それともバンドの全員が怒っていたのか、それともトムに触発される形でどんどん演奏が激しくなっていったのか。今となっては誰にも判らないが、ある意味、滅多に見れないRADIOHEADの姿を見たのではないだろうか、俺は。

結局、俺の人生を変えた1曲、 "Creep" は未だに生体験できていない。いよいよ今年の10月には約4年近く振りに再来日を果たす。今のところチケットは入手できていない。もしかしたら本当に行けないかもしれないし。聞くところによると、今の彼らのステージはこの頃のものとも全く違った、更に「バンドとしての機能を放棄した」楽曲を多く含んだライヴを行っているらしい。それは最新作「KID A」や「AMNESIAC」を聴けばよく判る。きっと、こんなにも情熱的で感情的なステージは、今の体制では観れないのかもしれない。そういう意味では、非常にいい時期に観れたな‥‥今ではそう思えるようになってきた。


[SETLIST]
01. Airbag
02. Karma Police
03. Talk Show Host
04. Planet Telex
05. Exit Music (For A Film)
06. My Iron Lung
07. Climbing Up The Walls
08. Subterranean Homesick
09. Paranoid Android
10. Lucky
11. No Surprises
12. Fake Plastic Trees
13. Pearly*
14. Bullet Proof...I Wish I Was
15. The Bends
16. Bishop's Robes
17. Bones
18. Just
---encore---
19. Let Down
20. Lurgee
21. Street Spirit (Fade Out)
---encore---
22. Electioneering



▼RADIOHEAD『OK COMPUTER』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2001 05 29 05:19 午前 [1998年のライブ, Radiohead] | 固定リンク

2000/09/29

RADIOHEAD『KID A』(2000)

ロックに求めるモノ。それは人それぞれ違うだろうが、大概にして「興奮/恍惚感」と「非日常」のふたつに絞られるのではないだろうか? ロックにもいろいろなスタイルやアプローチがあるから、興奮や恍惚に達するまでの過程はそれぞれ違うものなのかもしれない。けど、そこに達してしまえば最後は一緒なんじゃないだろうか?

以上は前回(2000年9月度)お薦めしたUNDERWORLDのライヴ盤のレビュー書き出しだ。俺は前回、ロックに求めるモノとして「興奮/恍惚感」と「非日常」と書いた。しかし今回お薦めするアルバムから得る/感じるモノ‥‥それは残酷で、ヒンヤリとしてるにも関わらずどこか生暖かい「現実」だったりする。出来れば避けて通りたい、居心地の悪さ。見て見ぬ振りをしてきた目の前の出来事。でも、俺達はそこから逃げられない。だからこそ現実逃避の手段として、俺達はロックから快楽や非日常的な世界を見出す。なのに、ここにあるのは、日常を更に凝縮した、身動きも取れない、思考や肉体をフリーズ状態にする、なのにそれでいてどこか気持ちいい世界。至福と悪夢の50分間がここにはある。それがRADIOHEADの3年4ヶ月振りの新作「KID A」なのだ。

‥‥って書き方はどこかタ○ソウみたいで嫌だな?(苦笑)けどまぁ、俺の言いたい事、ご理解いただけましたか? 俺は掲示板上でこの作品を「万人向けではない『ロック』アルバム」と書いたけど、そもそも前回のUNDERWORLDだって決して万人向きとは言えないし、前々回のDEFTONESだってそうだと思う。今回だって万人向けという意味ではミスチルの新作もあった。けど、ミスチルはシングルレビューを8月にやってるし、全曲解説とかやりそうな勢いだったので(笑)、敢えてこっちにしてみた。きっと多くのHPでこの作品が取り上げられ、絶賛されるのかもしれない。あるいは酷評されるのだろう。けど、ちょっと待った。このアルバムって本当に巷で騒がれているような『問題作』なのだろうか?今回は、俺なりの視点でこの作品について語ってみたいと思う。

確かに最初にこのアルバムを聴いた時は、ステレオの前に座り込んでヘッドフォンを使って聴いた。時間と心に余裕を持たせた状態で‥‥しかし50分後。俺の動悸は激しく、気持ち悪くなっていた。最後の曲"Motion Picture Soundtrack"を聴き終えるまで、一言も発することもなく(いや、発せなかったのだ)ピクリとも動けなくなってしまった。アルバムにはアップテンポの曲なんて1曲もない。なのに俺の心臓はドキドキしている。もの凄い嫌悪感‥‥あぁ、あの時と同じだ。3年前の5月末、小岩のアパートの1室で、ヘッドフォンで聴いた「OK COMPUTER」の時と。あれから4つも歳を取ったのに、彼等に接する時の感情というのは何一つ変わっていない事に驚き、愕然とした。

トム・ヨークはこのアルバムに対してのインタビューの中で、こう発言した。


「僕は、このアルバムにはまるっきり感情的なところが無いと思うんだ」

「ロックなんか退屈だ。僕は退屈だと思う。だってホントに、ゴミ音楽じゃないか!」


これらの発言がどういう会話の中で発されたものなのかは、判らない。rockin'on2000年10月号でのインタビューらしいが、後で読んでみようと思っている。

この「ロックなんか退屈だ」という行だけ読むと、あたかもRADIOHEADがロックを放棄した、と勘ぐる事も出来る。実際にアルバムを聴いていると、そう解釈出来る楽曲が幾つもある(例えば1曲目"Everything In Its Right Place"とかタイトルトラック"Kid A")。これら個々の曲だけを取り上げてみれば、確かにロックではないのかもしれない。音響系だとかエレクトロニカといった表現も出来るだろう。しかしアルバム全体を通して聴いてみると、俺にはそんなに変わったようにも感じないし、十分ロックしてると思う。「THE BENDS」~「OK COMPUTER」の流れを考えてみれば、こういう方向に流れていくのは必然だと思ったし、何の違和感も感じなかった。

しかし、ヘヴィであるのには何の変わりもない。あまりに現実的過ぎるのだ。そう、あまりに生々し過ぎるのだ、彼等の場合。自分に正直すぎるが為に、こんな化け物‥‥奇形児のような作品を産んでしまうのだ。

トムは「このアルバムにはまるっきり感情的なところが無い」と言った。確かに歌唱にはエモーショナルなものは感じられない。"Creep"や"Exit Music"のような感極まるような歌はここにはない。発する単語は機械的だし、メロディーの抑揚は極力抑えられている。

第一、このアルバムにはあの彼等特有のギターマジックは存在しない。もはやギターロックであることすら避けて通ろうとする。リズム隊はテクノのように反復するビートを繰り返す。要所要所に登場する、シンセサイザー。無機質なホーンセクションの音。確かにここには感情というものが存在しないように感じられる。けど‥‥「逆もまた真なり」という言葉もあるように、彼等が無機質であろうとすればする程、情念の塊のようなものを見出す事が出来るのも確かだ。感情を抑える事によって、より深いエモーションを伝える。彼等は既に前作でこの技法を拾得している。

そしてトムは「ロックは退屈。ゴミ音楽だ」と言う。最近の彼はこのアルバムから想像出来るような音楽に夢中になっているそうだ。だから何?と言い返してやりたい。彼等は常に前進してきた。アルバム毎に同じ事を繰り返さずに、もの凄い歩幅で前進してきた。それはトムが考えるところの『ロック』の定義を既に通り越してしまったのかもしれない。だけど今一度言いたい。このアルバムは『ロック』以外の何者でもない、と。

何をもって『ロック』と定義するかは、個人の価値観や思想によって違いが生じるのは確かだ。ここでトムが定義する『ロック』とは一体どういう音楽を指しているのだろう。俺自身は何となく、この答えが見えている。けど、それを言葉に表してしまうのは怖い。何故なら、その言葉は今の俺の価値観や思想を否定する事になってしまうから。だからここでは言わない事にしておく。

先鋭的である事がロックの条件とは言わないが、最近の『ロック』と呼ばれる音楽の多くは先人達のアイデアを拝借した焼き増しモノだったり、右にならえなコンビニ・ロックだったりする。それを打破したのがNIRVANAでありBECKでありUNDERWORLDでありRAGE AGAINST THE MACHINEであった。RADIOHEADは最初こそこれら先人からアイデアを拝借した形だったが、デビュー後に本当の才能が開花した。それが「THE BENDS」であり「OK COMPUTER」であり、今度の「KID A」なのだ。

前回のUNDERWORLDが'90年代のプログレであるのと同じように、このRADIOHEADも真の意味でプログレバンドなんだと再確認した。ロックだ、ロックじゃないなんていう理由付けは後でいい。これが新しいスタート地点になったという事実が数年後に改めて語られる事になるだろう。けど、何度も言うようにこのアルバムはRADIOHEAD以外の何者でもない音楽をやっている、と。この成長は当然であり、必然なのだ。

万人向けではない、と言い表したこのアルバム。改めて思うのは、より多くの人にこのアルバムを聴いてもらいたいという事。ネームバリューで手にするのではなく、あなたの『現実』と真正面から向き合う為に。聴き終えた後に、初めてあなたにとってこのバンドが必要なのか、消したい存在なのかハッキリするはずだから。

最後に‥‥既に3日で10回以上は聴き込んだが‥‥このアルバムを聴いても、今回の俺は死のうとか考えなかった。現実の醜さを克明に表現しながらも、俺は何となくその世界に身を寄せてるのが気持ちいいのかもしれない。



▼RADIOHEAD『KID A』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2000 09 29 05:12 午前 [2000年の作品, Radiohead] | 固定リンク