RAMMSTEIN『ZEIT』(2022)
2022年4月29日にリリースされたRAMMSTEINの8thアルバム。
前作にあたる無題アルバム(2019年)から3年ぶりの新作。前作が約10年ぶりだったことを考えると、この短期間でニューアルバムが届けられたことは奇跡に思えてくるから不思議です。その前作が比較的聴きやすい楽曲で固められ、バンドとしては新境地を伝える内容だったことを考えると、本作はその延長線上にある、さらに“極めた”1枚といえるでしょう。
リードシングル「Zick Zack」あたりはまさにその前作の流れを汲むテイストで、衝撃的(笑)なMVとともにかなりのインパクトを与えてくれました。ほかにもオープニングトラック「Armee der Tristen」や「OK」あたりも、シンプル路線にある好例といえるでしょう。かと思えば、「Dicke Titten」のように陽気なファンファーレをフィーチャーした楽曲も用意。この曲タイトルが「大きいおっぱい」という意味なのも実に彼ららしくて最高です。
もちろん、最初に配信されたシングル「Zeit」や続く「Schwarz」、「Meine Tränen」のようにムーディさに磨きがかかった楽曲群もしっかり収録されています。前作では後半に多く配置された楽曲と同ラインで、90年代から2000年代の彼ららしい独特の世界観を構築しながらも、以前と比べるとシンプルさが際立つ作風は前作譲り。このタイミングにオートチューンを用いた異色作「Lügen」も良い味を出していますし、さらに「Angst」のような従来の王道曲もあり、新たな側面を広げつつもRAMMSTEINというバンドに対する広義のパブリックイメージもしっかり保たれています。
前作同様、過去の彼らならではの猟奇性や変態性はさらに薄まりつつあり、その結果が前作の大成功(本国ドイツ1位はもちろんのこと、全英3位&全米9位と英米で初のTOP10入り)につながったことは間違いない事実。濃厚さという点でも、今作は無題アルバム以上に薄まりつつあり、もはや過去にこだわるよりも変化を重ねることに喜びを得ているようにも映る。だからこそ、この短期間での新作完成に至ったのだと考えると、僕は彼らの創作意欲と前進しようとする意志をポジティブに受け取りたいです。
……とカッコいいこと書いてみたんですが、やっぱり「Zick Zack」や「Dicke Titten」みたいなおバカソングは外せないなと思うと同時に、実は「OK」が「Ohne Kondom」の略で、「Without A Condom(=コンドームなしで)」の意味だと知ると、本当は何も変わっていない/成長していないんじゃないかと思えてくるから不思議(笑)。いいぞもっとやれ!
▼RAMMSTEIN『ZEIT』
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