カテゴリー「Ramones」の6件の記事

2022年8月 4日 (木)

RAMONES『MONDO BIZARRO』(1992)

1992年9月1日にリリースされたRAMONESの12thアルバム。日本盤は『モンド・ビザーロ(狂った世界)』の邦題で、同年10月7日発売。

ディー・ディー・ラモーン(B)が1989年に脱退し、他メンバーよりひとまわり以上若いC.J.ラモーン(B, Vo)を新たに加えた編成で制作。また、デビュー以来在籍してきたSire Recordsを離れ、Radioactive Recordsに移籍して最初のオリジナルアルバムでもあります。

映画『ペットセメタリー』のテーマソング「Pet Sematary」を生み出した前作『BRAIN DRAIN』(1989年)から約3年半ぶりという、それまでの彼らのキャリアでもっとも長いスパンを経て届けられた本作。プロデューサーにエド・スタシアム(MOTÖRHEADLIVING COLOUR、BIOHAZARDなど)を迎えており、その関係もあってかヴァーノン・リード(G/LIVING COLOUR)が「Cabbies On Crack」にゲスト参加しています。

80年代的なサウンドから脱却し、非常に硬質でタイトなサウンドプロダクションが施された本作は、さながら“RAMONES流ハードロック”といったところでしょうか。楽曲自体はどれもキャッチーで、従来の彼ららしさも随所から感じ取ることができるものの、C.J.の加入も手伝ってかフレッシュに生まれ変わった印象も強い。また、全13曲中C.J.がリードボーカルをとる曲も2つ(「Strength To Endure」「Main Man」)も存在し、活動後期に突入し大きな変革期を迎えたことも伺えます。

「Pet Sematary」の流れを汲む「Poison Heart」や、当時のアメリカでの検閲文化に対するアンチテーゼと言える「Censorshit」、BEACH BOYS風コーラスにセンスを感じるポップパンク「Touring」というキャッチーな楽曲があるかと思えば、「Anxiety」を筆頭としたハードコア路線の楽曲もしっかり用意されている。さらに、本作にはTHE DOORSのカバー「Take It As It Comes」なんていう異色曲もあり、ここでの経験が続くカバーアルバム『ACID EATERS』(1993年)へとつながっていきます。

長く続くパンクロックバンドが方向転換することなく、ひとつのスタイルを貫きながらどう“老いて”いくか。このアルバムにはその答えがあるような気がしてなりません。のちにジョーイ・ラモーン(Vo)やジョニー・ラモーン(G)は本作に対して否定的な意見を残していますが、僕は初めて聴いた30年前も今も本作のことが大好きで、常に楽しい気持ちにさせてくれる良作だと信じてやみません。というのも、初めて生で観たRAMONESが本作を携えたツアーだったから、当時の楽しい思い出がそうさせているのかもしれませんね。

なお、RAMONESはその活動を終了させるまでに14枚のスタジオアルバム(うち1枚はカバーアルバム)を残していますが、なぜか本作のみ日本でのストリーミング配信が実現していません。それだけが本当に残念でならないのですが……どうにかならないもんですかね?

 


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2021年1月15日 (金)

RAMONES『RAMONES』(1976)

1976年4月発売の、RAMONESの1stアルバム。日本盤は『ラモーンズの激情』という邦題で知られています。

Wikipediaによると、「ニューヨーク・パンクのシーンにおいてはパティ・スミスに続きレコード契約を得たアーティスト」と記されています。このRAMONESのアンダーグラウンドシーンでの台頭が、ロンドンパンクのSEX PISTOLS誕生の引き金となったなんて言われていますが、本作を聴くとそれも納得の内容/仕上がりだと断言できるでしょう。

すべての楽曲が1〜2分台というコンパクトなショートチューンで、シンプルな3コードをベースにしたアップテンポのロックンロールが中心。全14曲で約29分という潔い内容は、のちのパンクロック作品に大きな影響を与えることになります。パンクロックといっても、のちのハードコア的な攻撃性やハードさ、タフさはあまり感じられず、むしろGREEN DAY以降のポップパンクの下地と言えるようなキャッチーさが備わった楽曲がずらりと並びます。

オープニングを飾る「Blitzkrieg Bop」のシンガロング、親しみやすいメロディはバブルガムポップのそれに通ずるものがあるし、「I Wanna Be Your Boyfriend」の流麗な歌メロ、「Chain Saw」で耳にする“ウーワー”コーラスなんて60年代のポップソングのそれですしね。曲冒頭での「1、2、3、4!」ってカウントや、ハードロックのそれとも異なるパワフルなギターリフやパワーコードにこそパンクロックの無軌道な勢いを強く感じますが、実は楽曲自体は非常によく作り込まれた王道ポップチューンという事実。これこそが、RAMONESが(音楽的にも)長きいわたり愛され続ける要因かもしれません。

USパンクの第1世代と言えるイギー・ポップ率いるTHE STOOGESというよりは、同じく50〜60年代のポップスを下地にしたグラマラスなNEW YORK DOLLSにより近い存在。それがRAMONESのスタートだったのではないでしょうか。このシンプルでキャッチーなロックンロールスタイルを最後まで崩さなかったからこそ、彼らは信頼され、愛され続けた。それがよくわかる原点の1枚だと思います。

RAMONESの真の凄みを味わいたければ、スタジオアルバムではなくてライブアルバムから入るのがベストですが、楽曲の良さをじっくり堪能したければ、まずはこのデビュー作から聴くのが一番。基本的にはどのアルバムも一緒っちゃあ一緒ですが(アルバムを重ねるごとに進化するポイントも生まれますが)、だからこそまずはこの1stアルバムから聴くのが正しいのかな。そんな気がします。

結局RAMONESは90年代前半に数回観たっきりでしたが、それでもあの凄さを毎回クラブチッタクラスのハコで味わえたのは、今となってはいい思い出です。

 


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2019年5月17日 (金)

MICHAEL MONROE『BLACKOUT STATES』(2015)

2015年10月に発表された、マイケル・モンローの同名バンド名義による3rdアルバム。マイケル個人としては通算8枚目のソロアルバムに当たります(JESUSALEM SLIMDEMOLITION 23.を含むと10枚目)。

前作『HORNS AND HALOS』(2013年)から加わったドレゲン(G / BACKYARD BABIESTHE HELLACOPTERS)が早くも脱退(こちらは健康上の理由とBACKYARD BABIES再始動が理由)。ジンジャー・ワイルドハート、ドレゲンとスター性の強いギタリスト、かつソングライターとしても強烈な個性を持つ人間がアルバムごとに変わる状況含め、いかにもマイケル・モンローらしいなと思ってしまいましたが、ドレゲンに代わり加入したのはリッチ・ジョーンズ(ex. THE BLACK HALOS、ex. AMEN、ジンジャー・ワイルドハードなど)。

……あれ、今回地味じゃね?(苦笑)

そう思った人、仲間だね(笑)。リッチは2013年のジャパンツアーに参加できなかったドレゲンの代役として帯同したキャリアの持ち主で、加入も自然な流れだったんでしょう。要は“人間性”が求められたのかな。

前作の時点でソングライティング能力を遺憾なく発揮していたもうひとりのギタリスト、スティーヴ・コンテは本作でも大半の楽曲に名を連ねており、改めてこのバンドのメインソングライターとして手腕を振るっていますが、さて、リッチ・ジョーンズはどうかといいますと……。

全13曲中8曲にクレジットされており、そのすべてがスティーヴとの共作、あるいはその2人とサミ・ヤッファ(B)やマイケルとの共作という形となっています。スティーヴのように単独名義での楽曲はないものの、少なからずバンドの曲作りに貢献できているようです。ひと安心。

さて、肝心の内容ですが、どこからどう切り取ってもマイケル・モンローそのもの。ソロになってから、特にこのバンド編成になってからの彼のパブリックイメージそのままのサウンド/楽曲を楽しむことができます。つまり、「ポップで親しみやすいメロディが備わった豪快なロックンロールとパンクロック、ときどきレイドバックしたカントリーロック風ポップチューンも」楽しめるというわけです。あと、ディー・ディー・ラモーン(RAMONES)が生前書き残した未発表曲「Under THe Northern Lights」が、マイケルの手によって正式レコーディングされているのも本作の特徴かな。

ただ、悪い言い方をしてしまうと、何の驚きもない予定調和とも受け取れる。これはもう、聴き手に委ねるしかありませんが……僕はわりと好きです。いや、かなり好きかな。飛び抜けてすごい!と思える楽曲が1曲くらい欲しかった気がするけど、前作と前々作『SENSORY OVERDRIVE』(2011年)が良すぎたというのも大きいのかしら。ちょっと贅沢ですよね。

そんな中、個人的には「R.L.F.」という高速パンクチューンが大のお気に入り。これ、マイケルが昔から口にしてきた信条「Rock Like Fuck」のことですからね。そりゃ嫌いになれるわけがない。いまだにこの姿勢でロックと向き合ってくれていることに感謝します。

さて、本作リリース後は30年のソロキャリアを総括するベストアルバム『THE BEST』(2017年)をリリースしていますが、オリジナルアルバムは4年待っても届かない状況。そんな中、この夏には『SUMMER SONIC』で3年ぶりの来日が実現……ってことは、そろそろってことですよね? 期待してもいいですよね? 過剰に期待して待ってます。

 


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2018年2月 3日 (土)

SKID ROW『B-SIDE OURSELVES』(1992)

SKID ROWが1992年秋に発表した5曲入りカバーEP。前年初夏に発表した2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』が全米チャート初登場1位という快挙に輝き、同作を携えたツアーも1年以上継続。そのファイナルを控えたタイミングでのリリースだったのですが、収録曲の大半は過去のシングルにカップリングで収録されたものばかり。ですが、こうやって彼らのルーツナンバーを彼らのサウンドで楽しめるというのは、ファンにとっては少なからず嬉しいものがあるのではないかと思います。

カバーされているのは、RAMONESKISSJUDAS PRIESTRUSHジミ・ヘンドリックスと、彼らのサウンドからすれば何にひねりもないセレクト。RUSHに多少こだわりが感じられたりしますが、ピックアップしたのが1stアルバムからというあたりにこだわりがあまり感じられないのでは……という話も(苦笑)。まあ、いいじゃないですか、微笑ましくて。

とにかく、どの曲も原曲に忠実で素直なアレンジ。オープニングのRAMONES「Psycho Therapy」(ボーカルはベースのレイチェル・ボラン)も若干ヘヴィにはなっているものの、基本的なアレンジはまんま。KISS「C'mon And Love Me」は原曲にあったアコースティカルな色合いが消えてしまったものの、メロの良さは完全に生かされており、これはこれでグッド。プリースト「Delivering The Goods」はご本家ロブ・ハルフォードがゲスト参加したライブテイクをそのまま収録。そりゃあまんまですよね(笑)。

で、RUSH「What You're Doing」ですが、実はこれを聴くと「なぜ『SLAVE TO THE GRIND』というアルバムが完成したのか?」という、その理由の片鱗が見えてくるんじゃないかという気がするんです。そして、ここから次作『SUBHUMAN RACE』(1995年)へとつながっていく理由もね。結局、こういうグルーヴィーなハードロックをJUDAS PRIEST的方法論で表現したかったんですね。

最後のジミヘン「Little Wing」のみ、本作で初出のカバー。これも、まぁまんまっちゃあまんまですが、ギタリスト2人が本家に無理やり近づこうと頑張っております。残念ながらそこには到達できてないのですが、いい線いってるんじゃないかなと。これを聴くと、『SLAVE TO THE GRIND』での泣きのバラード(「Quicksand Jesus」「「In A Darkened Room」「Wasted Time」」のルーツも垣間見えるという。なるほどですね。

たった5曲、20分にも満たないEPですが、もしあの当時のSKID ROWがのちのGUNS N' ROSESみたいにフルカバーアルバムを作ったとしたら、ほかにどんなアーティストを取り上げたんでしょうね。



▼SKID ROW『B-SIDE OURSELVES』
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2004年9月16日 (木)

Gabba Gabba Hey!

JOHNNY RAMONE : 1948-2004
ジョニー・ラモーン、逝去
RAMONESのジョニー・ラモーンが前立腺癌のため逝去

 もの凄い偶然で‥‥嫌なんだけど‥‥たまたま今日はRAMONESのロゴT(黒地に円のロゴ‥‥ライヴのバックドロップのやつね)来て出社したんだよね‥‥虫の知らせかな‥‥

 RAMONESは3回くらい観たのかな。全部旧クラブチッタでだったと思う。ラストツアーの時も行ったっけ‥‥

 以前「とみ宮」のニュースでジョニーが癌で入院中、しかも結構重い‥‥という情報を取り上げた時点で「‥‥今年のフジロックで『Hey, Ho, Let's Go!』って大合唱するの、嫌だな‥‥」ってずっと思ってて。時間の問題だとは思ってたけど‥‥よく頑張ったよここまで。

 '90年代半ばで『解散』したバンドだし、主要メンバー(ジョーイ)が亡くなった時点で絶対に再結成なんてあり得ないのは判ってる。だけどさ‥‥やっぱり辛いね。

 RAMONESは俺の青春でした‥‥なんて気の利いたセリフは絶対に、口が裂けても言えないけど‥‥大好きでした。そして今でも大好きです。


▼RAMONES「HEY! HO! LET'S GO : THE ANTHOLOGY」(amazon

2001年8月 8日 (水)

「FUJI ROCK FESTIVAL '01」DAY 1@苗場スキー場(2001年7月27日)

◎JOEY RAMONE TRIBUTE (at GREEN STAGE / 10:30~11:00)

  「ライブ開始30分前に、先頃亡くなったジョーイ・ラモーンの追悼式を、フジロックのやり方でやる」とスマッシュの日高社長(大将)が言っていたので、RAMONES好きだし前行って観てみようと思い、出来るだけ前の方へ。

  まずMCのふたりがしゃべり、その後大型スクリーンを観てほしいと言って引っ込む。すると、聴き覚えのある、あの音楽が。映画「荒野のガンマン」の有名がタイトルナンバーが。ご存じの方も多いと思うが、これこそRAMONESのライブには欠かせない1曲なのである(METALLICAもRAMONESの真似をして、この曲使ってたっけ)。スクリーンには、ジョーイが元気だった頃の姿、RAMONESのライブシーンをコラージュ的にフューチャーしたものだった。と同時に、天井から懐かしのRAMONESのロゴが入った垂れ幕が。これ、本物?

  曲が終わり、拍手。そして大将が現れ、挨拶。ステージ袖から、これまでRAMONESのイラスト・デザインを手掛けてきた人が登場し、挨拶。残りのRAMONESメンバーから預かってきたという手紙を読む。続いて大将がそれを日本語に訳す。ここで先の垂れ幕が本当にライブに使っていたもので、現在「ROCK'N'ROLL HALL OF FAME」に寄与されていたのを借りてきたそうだ、これだけのために。

  続いてツアーマネージャー、そして同じニューヨーカーのパティ・スミス・バンドのギタリスト、レニー・ケイも登場し、それぞれメッセージを観客に伝える。ツアマネはジョーイの母親と弟からの手紙も持参し、読み上げる(全員のメッセージを大将はその場で日本語に訳して伝える)。

  これらのコメントを聞いて、如何にジョーイが日本を、日本食を、日本人を愛していたかが伝わってきたし、単純に感動した。そして大将は最後に「湿っぽく送るのはフジロックらしくない。フジらしいやり方でジョーイを送り出してやろう」と言って、ステージに1本のマイクスタンドが運ばれる。やけに身長が高い人用だなぁと思っていると、流れてきたのは「Blitzkrieg Bop」。スクリーンには再びRAMONES時代のジョーイの姿とライブシーン。曲に合わせて大暴れする俺。当然「HEY, HO, LET'S GO!」のかけ声と共に。RAMONESは1992年だったか1993年だったかに一度観ただけだが、バンドで何度もカバーした経験があるので、それなりに思い入れがある。というより、パンク好きな人でRAMONES嫌いな人っているの? 苗場に来たからには、この曲で暴れるのは義務なのだ。


◎KEMURI (at GREEN STAGE / 11:00~11:50)

  やっぱりフジに来たからには、一番デカいグリーンステージでスタートしなくちゃ。今年は3日間共、日本の「パワーバンド」でスタートする、という話を事前に聞いていた。初日はKEMURIだ。スタートする前に、ボーカルが「再び今日、フジロックに出演でき、さらにこんなに大きな舞台のトップバッターをやらせてもらえることに感謝する」というような喜びと感謝の言葉の述べてから、いよいよ「PMA (Positive Mental Attitude)」という、KEMURIの姿勢を代弁する曲からスタート。のっけからモッシュ&だいぶの嵐。俺もその中に巻き込まれる。笑顔でやんの、俺。ギターのザクザク感も、ブラスの音色も気持ち良すぎ。

  途中、レゲエ調のインストを挟んでヒートアップした観客をクールダウンさせてから、再び代表曲の連発。秋に出る4作目のアルバムからもいち早く2曲を披露。特に目新しい要素は皆無だが、このバンドは変わらずにこのままのスタイル/姿勢で続けて欲しいと思う。そして願わくば、来年もこの大自然の中で感じたい音楽だと素直に思った。正直、こんなに惹かれるとは思いもしなかった。これは大きな収穫だった。


◎EGO-WRAPPIN' (at WHITE STAGE / 14:20~15:00)

  ホワイトステージは2年前とあまり変わっていなかった。あれ、前はスクリーンとかなかったっけ? 客も一昨年とは大違いで、結構入ってる。真ん中よりちょと前あたりで、最初は様子を伺う。印象としては、ジャズやブルーズ、ロック色が濃いジャズやブルーズといった感じ。もし今ビリー・ホリディが音楽をやっていたら、きっとこんな音を出すんじゃなかろうかっていうイメージの音。けどジャズロックとかブルーズロックとか、そういうのともちょっと違う。独特な「色」を持ったユニットだと思った。

  とにかく、踊ってナンボの音楽。日中の炎天下の中で聴くタイプの音楽だとは思わないが、最後まで気持ちよく踊らせてもらった。ボーカルの歌声が気持ちよく伸び、心に響く。その上手さに唸りながら、連鎖するように前へ前へと進んでいき、踊り狂っう自分。お洒落だとかクールだとか、彼らをそういう上品な言葉で表現することは簡単だ。けど、自分にはもっとどぎつい「黒さ」のようなものが感じられた。それは音楽的要素としての「黒さ」ではなく、もっと人間の暗部、決してネガな音楽をやっているわけではないのだが、何故かそういうものを感じてしまう。これは家でCD聴くよりも、クラブや小さい小屋でライブを楽しむ音楽だな。


◎くるり (at FIELD OF HEAVEN / 14:20~15:20)

  昨年のフジロックでは、ここFOHで奥田民生が演奏した際にやはり規制がかかる程人が入ったそうだ。「あのFOHが人でごった返してるって?」と半信半疑だったが、この時くるりを観に足を運んで、それがどういう意味なのかがよく判った。本当に後ろまで人でビッシリなのだ。

  俺が着いた時点でエンディング近くだったようで、すでに「ばらの花」がスタートしていた。この1曲が聴けただけでもよかった。昨年のサマソニにも出演してるが、そのときとは状況が変わってきている。すでに彼らはホワイトやグリーンでも何ら問題のない存在なのだ。

  ステージにはサポートのギタリストを入れた4人。「ばらの花」の後は、この日の為に作ったという「変な曲」(岸田・談)を披露。不協和音や怪しいコーラスが入る、殆どインストと言っていい曲。一応歌っているのだけど、歌詞らしい歌詞はなく、うめき声というか何というか……おふざけソングですな、これ。途中でフロント3人が同じアクションを取って踊ったりして、そしていきなりプツリと曲は終了し、くるりのステージも終了。


◎ミラクルヤング (at FIELD OF HEAVEN / 16:00~17:00)

  ボーカルは元INU、現在作家として活躍中の町田康(元・町田町蔵)、ギターにシアター・ブルックの佐藤タイジ、ベースが現在清志郎のラフィータフィーでも活躍中の藤井裕。このメンツでしびれた人、或いは「町蔵は何をやるつもりなんだ?」といった興味本位でここまで来た人。当日のFOHはこの2タイプの方々で埋め尽くされるはずだった。が、実際にはさっきのくるりでの規制がウソのような閑散振り。裏はグリーンでASIAN DUB FOUNDATION~TRAVISだもん。そりゃそっちに行くわ。

  ドラムとベース、そしてギターが登場して、軽くジャムセッション。カッコイイ! どこからが本番でどこまでがサウンドチェックなのか判らないくらい自然にスタートした。そして町田がアコギを首からぶら下げて登場。「ア~アァアァア~」っていう‥‥何だっけ、ほら、よく耳にする‥‥学校の音楽の授業とかでもやるクラシカル曲‥‥超有名な曲なのに、タイトルど忘れ。とにかくその曲をアレンジして、メロディーラインをア~だけで歌い通す町田。バックの演奏がフュージョン+ハードロックって感じで、ちょっとCHARあたりを彷彿とさせる。けどあそこまでジャジー&ブルージーでもないんだけど。ちょっとアレンジのせいで、ふとRAINBOW版「Somewhere Over The Rainbow」を思い出したのは、俺だけだろうか?

  前半はタイジの魅せ場満載で、町田の影が薄かった。タイジ、チョーキング一発決めれば右手を天に向け仰け反るし。ちょっとリッチー・ブラックモアと印象が被った。ギターヒーローらしいギターヒーローを久し振りに観た感じ。当人は本家であるシアター・ブルックでは歌も歌ってるわけだから、普段はここまで動けないはず。つうことは、フロントマンとして鬱積してたものが多少なりあったってことか。

  曲もリフ主体の70年代的ハードロック。ギターリフに合わせてベースもリフをユニゾンで弾いたり、またバトルしちゃったり。ジミヘンとかツェッペリンみたい。しかも1曲が長い(必ず中盤にジャムセッション風のソロパートが入る)。こういう古くさいハードロックが町田の歌に合っていたのかは最初、疑問を感じていたが。

  MCは完全にタイジの役目。町蔵ぅ~って歓声が湧くと、それにちゃんと受け答えする町田。「黒って何だぁ~?」っていう、例のCMを意識した声が挙がると、たまらずタイジも「うちのボーカルは、怒らせたら怖いぜぇ~」と一言。この後あたりからだろうか、町田もエンジンがかかり始めたのは。

  町田は終始マイペースで、歌い方自体は最近の唱法なのだけど、やっぱり存在感ある人ってのは、そこに立ってるだけで違う。もうステージの上にいるだけでいい。オーラっつうか、そういうのをひしひしと感じる。で、それに対して大袈裟すぎるくらいのアクションで受け答えするタイジ。一見対照的だが、このバランス感がバンドには必要なのだ。

  最後にはノリノリで終了したミラクルヤング。音源が発表されていないため、1曲も知ってる曲はなかったが、それでも十二分に楽しめた。大物ミュージシャンが組んだ「スーパーユニット」というイメージが観る前はあったが、あれを観た後なら誰もが「これはバンドなんだ」と断言できるはず。


◎MANIC STREET PREACHERS (at GREEN STAGE / 19:10~20:30)

  以前から「フェスでマニックスを観たい!」と言い続けてきた俺だが、その願望が遂に実現する日が来た。しかも、大好きなフジロック、苗場の一番大きなステージで。さらにOASISの前座ときた。こりゃ観客もマニックス側も盛り上がらないわけがない。どうOASISを「食う」のか‥‥その1点だけがずっと気になっていた。

  無機質なインダストリアル系っぽいSEに合わせてメンバーが登場し、ジェームズがいつもの挨拶をした後に1曲目のタイトルをコールする。今回のツアー同様、「Found That Soul」からスタート。本ツアーとは選曲・曲順を変えていて、通常は2曲目に「Motorcycle Emptiness」へと流れるのだが、比較的アップテンポな曲を頭に固めた。フェス仕様なのだろうか。個人的にはまだ一度もライブで体験したことのなかった「Faster」に痺れ上がった。

  新作からの曲が激減し、シングルナンバーだけになっていたのはちょっと驚きだった。個人的にはライブで聴きたい曲満載だった新作なのだが、どうやら今夜はグレイテストヒッツ的内容で攻めるようだ。これもOASISに対する挑戦状だろうか。それにしても、新譜や前作からの曲への反応は素晴らしいのだが、「Faster」や初期の曲への反応の寒さといったら。自分の周りだけだったのかもしれないが、明らかにノリきれてない。ボーっとその場に棒立ち状態。前のブロックでは半狂乱に暴れる輩やダイバー続出の「Motown Junk」でも「これ、知らなぁ~い」って今にも言いそうな空気が流れていた。

  内容に関しては文句なし。ジェームズもいつも通りだったし、ショーンもいい感じだったし、ニッキーはこれまで観た中で一番調子良さそうだったし。そのニッキーが爆発したのが、エンディング「You Love Us」でのこと。2コーラス目の途中でベースを床に叩きつけ、マイクスタンドを持って、客を煽りまくる。当然ベースの音がないまま曲はギターソロへと突入。前回来日時の縄跳びといい、この人は……ちなみにこの日の彼は久し振りのワンピース姿。中盤のジェームズ弾き語り前後で衣装替えを行っている。

  アコースティックコーナー前に「A Design For Life」やられちゃったんで、泣くに泣けなかった。っと盛り上がるところでやってほしかった。唯一文句を言うとしたら、中盤以降の曲の並べ方かな。ミディアム~スローな曲が固まっていて、途中から肌寒さを思い出す瞬間が何度かあった。けど、プレイされた曲の大半はシングルとして発表されている曲ばかりなので、もしかしたらこのセットリストってのは、来るべきグレイテストヒッツへの伏線なのかもしれない。

  何にせよ、俺は泣かなかった。きっと泣くだろう、誰もがそう思っていたはず。実際自分でも号泣するんじゃ……なんて思っていたけど、目頭が熱くなることすらなかった。何故? もうマニックスが、俺にとって必要なバンドではない、ということではない。俺がマニックスを越えていったんだろう。そこに俺が込めた思いとか、想い出とか、そういうのを越えていって客観的に見れるようになったのかもしれない。それに後ろのほうで観てたから、とのも大いに関係あると思うが。とにかく、初日のピークだったのには違いない。

  最後の最後で、ニッキーはアンプやモニターにマイクスタンドをぶち込み、ショーンもドラムセットを蹴り倒す。かなり派手にやってる。これこそ俺が知ってるマニックスってもんだ。ただ、初期の彼らを知らない最近のファンはビビっていたようだが。これもOASISへ対する煽り、挑戦状だったのだろうか?


01. Found That Soul
02. You Stole The Sun From My Heart
03. Faster
04. Motorcycle Emptiness
05. Ocean Spray
06. Tsunami
07. The Masses Against The Classes
08. Let Robeson Sing
09. Sweet Child O'Mine ~ Baby Love ~ Motown Junk
10. A Design For Life
11. Raindrops Keep Fallin' On My Head
12. The Everlasting
13. Ready For Drowning
14. Everything Must Go
15. So Why So Sad
16. Kevin Carter
17. If You Tolerate This Your Children Will Be Next
18. You Love Us


◎OASIS (at GREEN STAGE / 21:30~23:00)

  会場に向かう途中、1曲目「Go Let It Out」が聞こえてきた。続く2曲目までは昨年の来日公演と同じ。途中、風の流れで曲が確認出来なかったが、会場のゲートをくぐった時点で「Morning Glory」が終わったところだった。

  グリーンステージに到着して、俺は驚愕の場面に遭遇する。人、人の海なのだ、グリーンステージが。こんなグリーン、観たことないぞ? 一昨年のBLURも確かこんな感じだったけど、あれよりも遙かに人が入っている。恐らく今日苗場を訪れた人の8割以上がここに集まっているんだろう。

  そうそう、こんなOASISが観たかったんだよ! グラストやレディングフェスでの一場面のような光景。本当に鳥肌が立った。前の方で観てた人には判りづらいと思うが、後方から全体を見渡したときの光景といったら、それはもう例えようがないくらいのすごさだった。俺の中の理想像に限りなく近い光景がそこにはあったのだ。

  リアムもかなり調子がよさそうで、他のメンバー(特にゲムとアンディ)も数をこなしたことによって魅せ方が判ってきたような印象を受けた。ゲムがソロを弾く場面もかなり増えていたし。

  けど、みんなが言うほど俺はセットリストはすごいとは感じなかった。結局、要所要所は前回とほとんど変わっておらず、「Wonderwall」をやらない代わりに意外性のある曲が多かったってわけでもない。1998年2月の武道館以外は毎公演足を運んでいるだけに(特に初来日と2回目は何度も観ているし)、それまでに演奏されている曲ばかりだから新鮮味はあまりなかった。とはいえ、大半の曲を一緒になって歌ったんだけどね。

  個人的には前回聴けなかった「Shampagne Supernova」を野外で聴けたことが大きな収穫か。これで天気が良くて流れ星なんか見えたら最高のシチュエーションだったんだけどなぁ(この頃には肌寒いを越え、凍えそうなほどの寒さだった)。

  ラストはお約束の「Live Forever」なのだが、ここであることに気づいた。みんな歌っているのだ! 「Maybe, I don't really wanna know♪」ってちゃんと聞こえる。やっと実現した、3万人が同時に消費するOASIS。ここで2度目の鳥肌。嗚呼、やっぱりOASIS観ておいてよかった。素直にそう思えた瞬間だった。

  アンコールにも応え、懐かしい「I Am The Walrus」を披露して、23時頃には終了。実質90分におよぶステージだった。正直期待していなかっただけに、これはちょっと得した気分だった。見終えたときにはマニックスとの勝負なんてどうでもよくなっていた。特にマニックスの煽りを受けるわけでもなく、OASISはいつも通りのOASISのまま。貫禄なのか、端から相手になってなかったのか。ビッグなバンドのすごさってのを改めて見せつけられた思いがする。


00. Fuckin' In The Bushes
01. Go Let It Out
02. Who Feels Love?
03. Columbia
04. Morning Glory
05. Supersonic
06. Fade Away
07. Acquiesce
08. Gas Panic!
09. Cigarettes & Alcohol ~ Whole Lotta Love
10. Step Out
11. Slide Away
12. Champagne Supernova
13. Don't Look Back In Anger
14. Live Forever
---Encore---
15. I Am The Walrus


‥‥‥‥‥‥To be continued.

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