ANGEL DU$T『YAK: A COLLECTION OF TRUCK SONGS』(2021)
2021年10月22日にリリースされたANGEL DU$Tの4thアルバム。日本盤未発売。
ANGEL DU$TはTURNSTILEやTRAPPED UNDER ICEといった米・メリーランド州ボルチモアのハードコア界の重要人物が集った、2013年結成のスーパーバンド。初期こそパンク色の強いテイストでしたが、作品を追うごとにカレッジロックと呼ばれるような作風へとシフト。前作『PRETTY BUFF』(2019年)からはRoadrunner Recordsへと移籍し、TURNSTILEとともにその知名度を徐々に高めています。
約2年半ぶりのアルバムは、ポップロック/ソフトロックをベースにしながらも、BLURをはじめとする90年代のUKロックとの共通点も見受けられる1枚。脱力系ボーカルと随所にアコースティックギターをフィーチャーしていることで、その側面がより強まっているように感じます。そもそもこういったオルタナティヴなテイストはTURNSTILEも包括しているものであり、このANGEL DU$Tではそういった一面をより強調させた結果、パンクやハードコアを超越したスタイルが確立されたのでしょうね。
なお、「Dancing On The Radio」にはRANCIDのティム・アームストロングがゲスト参加。ビブラフォンやらストリングスをフィーチャーしたこの穏やかな曲で、ティムはそれとわかるパンクスピリットあふれるボーカルを披露しています。それでも曲調に引っ張られてか、いつもより穏やかな雰囲気ですけどね(笑)。
本作を聴いていると、中〜後期BLURやVAMPIRE WEEKENDあたりの諸作品を思い浮かべてしまうのは、やはり必然なのでしょうか。脱力系のオルタナティヴ感は前者で、若干トロピカルさも含む底抜けの明るさは後者かな。そのカラーを強める要因として、ジャスティス・トリップ(Vo, Acoustic G)の脱力系ボーカルが非常に大きな役割を果たしているように思います。TRAPPED UNDER ICEというハードコアバンドでは野太いシャウトを轟かせる彼ですが、このギャップもまた良し。まあTRAPPED UNDER ICEを聴いたら、その楽曲スタイル/歌唱法ともに同一人物とは思えないですけどね(笑)。
サイドプロジェクトというよりは、もはやひとつの独立した個性を持つバンドにまで成長したANGEL DU$T。前作の時点でそれは確立されたも同然でしたが、そこからさらに一歩踏み込んだ今作はダメ押しの1枚と言えるのではないでしょうか。メタル耳には刺激が足りないかもしれませんが、逆に普段メタルやエクストリームミュージックとは無縁のリスナーに新世代ハードコアへの入り口として、本作に触れていただきたいなと。もしくは、上記のUK/USバンドを普段愛聴する方にオススメしたい良作。本作を起点にしてTURNSTILEの新作『GLOW ON』(2021年)に手を伸ばすと、より入っていきやすいかもしれませんよ。
▼ANGEL DU$T
『YAK: A COLLECTION OF TRUCK SONGS』
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